孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

北朝鮮  非人道的な人権侵害の実態を非難する国連報告書出るも、改善の可能性は見込めず

2014-03-11 22:26:51 | 東アジア

(国際的な批判をよそに、バスケットの試合に興じる金正恩第1書記 取り巻き連中の追随振りも滑稽で悲しくもありますが、そうしないとわが身に危険が及ぶとなると・・・ “flickr”より By Abayomi Azikiwe http://www.flickr.com/photos/53911892@N00/8517714768/in/photolist-dYFvRb-edCTKc-kKYewk)

投票率99.97%、信任率100%
“不思議の国”北朝鮮でも“選挙”はおこなわれるようです。

北朝鮮の国会にあたる最高人民会議の代議員選挙が9日、実施されました。
選挙は5年ぶりで、金正恩(キムジョンウン)体制下では初めて。世代交代を兼ねた新たな人物の登用や、昨年12月に粛清された張成沢(チャンソンテク)・前国防委員会副委員長に近い人物の排除が図られるようです。

****北朝鮮 最高人民会議代議員当選者名簿を発表****
北朝鮮は11日、第13期最高人民会議代議員(国会議員に相当)選挙の当選者687人の名簿を発表した。9日の投票から2日後の発表となった。

北朝鮮の中央選挙委員会はこの日、有権者の99.97%が投票に参加し各選挙区に登録された最高人民会議代議員候補者に100%賛成票を投じたと伝え、当選者の名簿を公開した。(後略)【3月11日 聯合ニュース】
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投票率99.97%、信任率100%・・・・明らかに作為以外の何ものでもなく、とても“選挙”と言えるものではありませんが、そうした数字を誇らしげに掲げるところが“不思議の国”です。

しかし、この“投票率99.97%”は、家族を祖国に残してきた脱北者にとっては、選挙に参加しないと脱北が発覚し、家族に危害が及ぶという脅威となったようです。

****脱北者、投票へ決死の帰国 「不在ばれれば家族が処罰****
北朝鮮で9日に実施された最高人民会議の代議員選挙を前に、中国に逃れていた脱北者の一部が秘密裏に北朝鮮への「一時帰国」を試みた。

投票せずに脱北が発覚すると、残してきた家族に危害が及ぶことを恐れての行動だ。過去の選挙では毎回100%かそれに近い投票率があり、危険覚悟で故郷を目指した。

中国にいる脱北者らの証言によると、過去の選挙でも国民全員の投票が原則だったが、家族らの代理投票が可能だった。ところが今回は投票者の本人確認が徹底され、投票しない場合は理由を徹底調査するとの情報が流れたという。

約4カ月前にブローカーに4千元(約7万円)を払って仲間数人と脱北した30代の男性は2月下旬、知人の北朝鮮商人からこの話を聞いた。

仲間らと「金正恩(キムジョンウン)(第1書記)は選挙で不在者を洗い出し、発覚したら家族が処罰されるだろう」と話し合い、投票のため再び一緒に国境を越えることを決意した。

一方、選挙を無視して中国に残る脱北者もいる。昨年12月に脱北したという50代の男性は「妻とは離婚しており(投票しなくても)影響はない」という。

取材に応じた脱北者らは「過去の選挙でも候補者は知らない人だった。我々にとって投票には何の意味もない」と口をそろえた。【3月10日 朝日】
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家族を残して脱北した時点で、家族への危害云々は割り切ったのでは・・・とも思っていましたが、そうでもないようです。
また、「一時帰国」といったことが実際に可能なのか? その後はどうするのか? 費用はどのように工面するのか?等々、よくわからない話でもあります。

異常な社会を維持する恐怖支配
北朝鮮における恐怖支配は、国連人権理事会の国際調査委員会が報告書で明らかにしており、「委員会が確認した人権侵害は、その多くの事例が人道に対する罪に該当する」「こういった人権侵害の規模・範囲・性質により、今日の世界には他に比類のない国家の姿が浮き彫りになった」と厳しく非難しています。

****恐怖が支配する北朝鮮、国連報告書****
生を受けた時から洗脳され、常に監視されながら全てを支配する国家におびえる。ひとたび規範から逸脱すれば収容所に送られ、二度と一般社会に戻ることはない──北朝鮮による非人道的な人権侵害の実態が17日、国連の北朝鮮の人権状況を調査する特別委員会が発表した約400ページの報告書によって明らかにされた。

報告書は北朝鮮政府が「人間のくず」と呼ぶ脱北者、約320人の聞き取り調査などを基にしている。
北朝鮮に残った親族が処罰されることや、逃げた先の国で自身が北朝鮮関係者に拉致されることを恐れて、証言をためらった人も多かったという。

中でも最も衝撃的なのは、「管理所」と呼ばれる北朝鮮の政治犯収容所からの脱出に成功した人たちによる証言だ。
特別委員会のマイケル・カービー委員長は、政治犯収容所での労役の1つは餓死した収容者たちの遺体を集め、容器に入れて焼却することだったという元収容者の証言を明らかにした。その後は仲間の収容者が遺灰や焼け残った遺体の一部を集め、近くの畑にまく肥料にしたという。

74歳のカービー委員長は「私の年代の人たちならば、第2次世界大戦末期に起きた出来事を想起せずにはいられないだろう」と述べ、ナチス・ドイツによるユダヤ人大量虐殺(ホロコースト)との類似性を示唆した。

■残酷な拷問
北朝鮮政府は収容所の存在を否定しているが、報告書は元収容者や元監視員、近隣住民らの証言や衛星画像から北朝鮮側の主張は真実でないと証明されたとしている。

北朝鮮の収容所には8万~12万人がいるとみられる。政治犯には連座制が適用されるため、家族や親戚全員で収容されている人たちもいる。

過去半世紀で数十万人が収容所で死亡したとみられる。報告書は「意図的な飢餓、強制労働、処刑、拷問により、(収容者たちは)徐々に排除されていった」と記している。

報告書には元収容者が描いた詳細な拷問の絵も含まれている。拷問は、それぞれの残酷な手法によって「ハト」「飛行機」「オートバイ」などの呼び名がついていた。

■全校生徒の前で公開処刑
妊娠した女性収容者は強制堕胎させられ、武術の練習台にされる収容者もいる。飢えた収容者たちはネズミや木の葉を食べているという。さらに報告書は、生物化学兵器の威力を試す医学実験で収容者たちが殺害されている疑いがあると指摘している。

公開処刑や投獄などの手段を用いた恐怖による支配は収容所の外に暮らす人々にもおよぶ。人々は絶え間ない「監視、抑圧、恐怖、処罰」にさらされて、批判めいたことは一切口にしなくなるのだ。

報告書には、学校の全生徒の目前で行われた銃殺刑の詳細も記されている。

経営状況が芳しくなかった工場の責任者が「スパイ」として銃殺された公開処刑を16歳の時に見せられた元収容者は「怖かった。誰でもこんなふうに処刑されることがあるんだと思った」と証言した。工場の労働者もこの公開処刑を見せられたという。【2月18日 AFP】
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内容的には、これまで断片的に報じられてきたものと似たものではありますが、当然のごとく、北朝鮮は今回報告書を全面否定しています。

****国連報告は「でたらめ」=北朝鮮****
北朝鮮のジュネーブ国連代表部は17日、国連人権理事会の国際調査委員会が「人道に対する罪を犯した」と断じた報告を「でたらめ」と非難、「断固、完全に拒否する」と反発する声明を発表した。

声明は、調査委について「米国、日本、欧州連合(EU)という黒幕の悪意に満ちた目的を演じる操り人形」と批判。北朝鮮の体制破壊を意図した「政治的暴力だ」と主張した。【2月18日 時事】
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報告書は北朝鮮指導部の犯罪を国際刑事裁判所(ICC)に付託するように国連安全保障理事会に勧告しているそうですが、中国が「人権状況の改善につながらない」と強く反発していますので、実現の可能性はありません。

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「そもそも内政の話だとして、人権問題と捉えることに懐疑的な加盟国もあった」と、人権擁護団体ヒューマン・ライツ・ウォッチの政策提言ディレクター、ジュリー・デリベロは言う。北朝鮮と友好関係にある中国だけではなく、南アフリカやインドネシア、エクアドルなどがそうだ。「彼らを説得するのに10年以卜もかかった」【3月4日号 Newsweek日本版】
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ということで、今回報告を受けて事態が改善する見込みはなさそうです。

****国連:事務総長 北朝鮮に「人権状況改善」呼びかけ****
国連の潘基文(バン・キムン)事務総長は3日、スイス・ジュネーブの国連欧州本部で開幕した国連人権理事会会合で、日本人拉致など北朝鮮の「人道に対する罪」を指弾した国連調査委員会の報告書(2月17日発表)を受け、北朝鮮に人権状況の改善を呼びかけた。

潘事務総長は開幕演説で、報告書について「重大な人権侵害の多くの犠牲者の証言を提示し、北朝鮮が世界共通の人権基準を満たすための道程を示した」と評価。北朝鮮に対して「人権・生活状況を改善するために国際社会に協力する」よう求め、事務総長としての取り組みを強める決意を表明した。

人権理事会会合は28日までの日程で、北朝鮮の人権状況に関する報告書は17日に提出される。日本の石原宏高外務政務官は3日の会合で演説し、報告書に基づく決議案を欧州連合(EU)と共同で提出すると表明し、各国に支持を訴えた。

国連の人権保護機関のトップであるピレイ人権高等弁務官らは、北朝鮮による人権侵害の責任者を訴追するため、問題を国際刑事裁判所(ICC)に付託するよう国際社会に呼びかけている。【3月4日 毎日】
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金正恩第1書記の暴力的な性格
その“不思議の国”北朝鮮を率い、叔父の張成沢氏を処刑した金正恩第1書記についてはいろいろ憶測されていますが、今日見た記事としては以下のようなものも。

****金正恩氏、祖父に会えず=飼い猫殺す粗暴な性格に―韓国研究所長****
韓国情報機関、国家情報院傘下の劉性玉・国家安保戦略研究所長は11日、ソウルで講演し、北朝鮮の金正恩第1書記について、母の高英姫氏が在日朝鮮人で金正日総書記の正妻でなかったため、祖父の金日成主席に会わせてもらったことがないと明らかにした。

こうした幼少時の処遇に対する怒りが、暴力的な性格の形成につながったとの見方を示した。

金第1書記は幼いころから、飼っていた猫を殺したり、気に入らないと兄の正哲氏を殴ったりする粗暴な性格だったという。劉氏は、昨年12月に義理の叔父の張成沢氏を処刑した背景には、こうした性格もあると分析した。

張氏は妻の金慶喜党書記に「あなたがおい(金第1書記)を止めてくれ」と話し、2012年12月の長距離ミサイル発射と13年2月の核実験を阻止しようとしたが、金第1書記は聞き入れなかったという。【3月11日 時事】 
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国民を飢餓にさらしても核兵器開発にまい進するという異常さも、それを上回る絶対的な恐怖支配をもってすればある程度の期間は維持できるようです。
後ろ盾となっている中国の意向が大きく変わらない限りですが。
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