(首都マニラにあるマラカニアン宮殿(大統領府)で演説するドゥテルテ大統領(2017年6月1日撮影)。【6月15日 AFP】 お疲れのように見えるのはたまたまでしょうか。)
【11日を最後に姿を見せない大統領 健康に関する憶測も】
フィリピンのドゥテルテ大統領が今月11日を最後に公の場に姿を見せておらず、健康不安説などが出ている・・・という報道は周知のところかと思います。
****ドゥテルテ氏に病気説 飛び交う臆測、5日間姿見せず****
フィリピンのドゥテルテ大統領が、今月11日を最後に公の場に姿を見せていない。多いときは日に数回も演説をしていたリーダーの不在に、国民の間では「病気ではないか」などの臆測が飛び交っている。
ドゥテルテ氏は11日、ミンダナオ島で続く過激派組織「イスラム国」(IS)に忠誠を誓う武装組織との戦闘で死亡した海兵隊員の遺族と面会した。
翌12日のフィリピン独立記念日には、マニラ首都圏で国旗掲揚式典に参加するはずだったが「体調が悪い」として欠席し、その後、公の場に姿を見せていない。昨年6月末の就任以来、5日も姿を見せないことは珍しい。
アベリヤ大統領報道官は15日、「大統領は元気。休養が必要なだけ」と強調。大統領側近が同日、ドゥテルテ氏とされる写真を公開した。
だがネット上では、「大統領は働ける状態なのか」「やせたように見え、心配だ」などの声が飛び交っている。16日にはラクソン上院議員が、「どの国でも大統領の健康問題は個人の問題ではなく社会的関心事だ」と述べ、政府に情報公開を迫った。
まもなく就任1年を迎えるドゥテルテ氏は現在72歳。重い持病を抱えているとのうわさも絶えない。【6月16日 朝日】
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“エルネスト・アベリャ大統領報道官は報道陣に対し、ドゥテルテ氏の体調に問題はないと説明した上、「大統領は元気を回復させるため、しばらく休息を取っている」と語った。公務に戻る時期は未定だとしたが、アベリャ報道官は「病気という点では心配することは何もない」と語り、「大統領は健康である」と念を押した。”【6月15日 AFP】とも。
今日もまだ“休養”が続いているようです。
ドゥテルテ大統領はバイク事故の後遺症を抱えていることは以前から報じられています。“がん”の噂は否定しています。
****ドゥテルテ比大統領、強力鎮痛剤の使用認める 健康に懸念も****
フィリピンのロドリゴ・ドゥテル大統領が強力な鎮痛剤のフェンタニルを使用していたこと認めたことから、ドゥテルテ氏の健康に関する懸念が強まっている。議員らは18日、大統領に健康診断を受けてその結果を公表するよう促した。
ドゥテルテ大統領は12日、過去にオートバイの事故で脊髄を痛めたために、がんや慢性疾患の患者に処方されることが多いフェンタニルの貼り薬をよく使用していたと公表した。しかしドゥテルテ氏が処方された量を超えて「フェンタニルを乱用」していると知った医師に、同剤の使用を止められたという。(中略)
フィリピンの議員らは、ドゥテルテ大統領がフェンタニルの使用を認めたことで、同大統領の健康状態に関する憶測が再燃したと主張している。ドゥテルテ氏に関しては大統領選の選挙運動中、がんを患っているとの噂が広まっていた。ドゥテルテ氏は繰り返し噂を否定している。(後略)【12月18日 AFP】
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現地在住の方のブログによれば、脊髄損傷のほか、「私は毎日この片頭痛があります。私は熟睡していない」「癌だと信じてはいけない。私が持っているのは、本当はバージャー病だ。喫煙でのニコチンの影響で、血管を収縮させ、アルコールが血管を拡張する」とも語っているそうです。【http://ameblo.jp/morhicin171816/entry-12228516127.html】
「フェンタニルを乱用」するほどの脊髄損傷後遺症、毎日の片頭痛、更にバージャー病・・・・“満身創痍”の感も。
先月の厳しい禁煙令も自身がバージャー病(発症には喫煙が深く関係するとされています)を有することと関係しているのでしょうか。
****比ドゥテルテ大統領、厳格な禁煙政策をさらに強化 大統領令に署名****
フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領は18日夜、公共の場での喫煙を広範囲で禁止する大統領令に署名した。アジア諸国でも特に厳格な反たばこ政策をより強化する内容で、60日以内に発効する。
喫煙やたばこの販売は、屋内の公共の場に加え、学校や公園など子どもが集まる場所から半径100メートル以内の屋外でも全面的に禁止される。
たばこ広告禁止や屋外の公共の場での禁煙、たばこ包装に健康被害を警告する画像広告の表示を義務付けるなどの施策は、以前から導入されている。【5月19日 AFP】
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【いまだ終息しないミンダナオ島の過激派との戦闘】
政治指導者の健康不安説はしばしば流布しますが、本当のこともあれば、そうでないことも。今回のドゥテルテ大統領の健康状態に関してはわかりません。
健康問題はわかりませんが、ドゥテルテ大統領が内憂外患から多大なストレスにさらされていることは事実です。
“外患”の方は、“麻薬犯罪容疑者への超法規的殺人という強硬姿勢で国際社会から「深刻な人権問題」を指摘され、一方南シナ海領有権問題ではフィリピンによる同海域での資源開発に対し中国から「(そんなことをすれば)戦争になる」と「恫喝」されるなど厳しい状況”【5月27日 大塚智彦氏 Japan In-depth 「ミンダナオ島内戦に突入、ISの影」】ですが、目下の最大の問題は“内憂”、ミンダナオ島でイスラム系テロ組織が蜂起した件でしょう。
この問題で、ドゥテルテ大統領はミンダナオ島などに戒厳令を公布したことは、5月24日ブログ“フィリピン・ドゥテルテ大統領の戒厳令 対象地域・期間も拡大の可能性 暴力の矛先も・・・”http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20170524でも触れたところです。
****ミンダナオ島内戦に突入、ISの影****
■内戦状態のミンダナオ島
フィリピン南部のミンダナオ島周辺地域に対し5月23日にドゥテルテ大統領が戒厳令を布告、イスラムテロ組織と国軍の間で戦闘が激化しているが、現地から伝えられる状況ではもはやテロ組織との戦闘というレベルではなく「内戦状態」という深刻な事態に陥っている。
テロ組織には複数の外国人メンバーの参加も明らかになっており、イラクやシリアでテロ攻撃を続けるイスラムテロ組織「イスラム国(IS)」が本格的な東南アジアの拠点作りにミンダナオ島で乗り出したとの見方が強まる中、ドゥテルテ政権は国内治安対策だけでなく、国際テロ問題への難しい対応に直面している。
■2つのテロ組織vs国軍
ミンダナオ島西部にある南ラナオ州の州都マラウィで同島を拠点とするISともつながりのあるイスラム過激派「アブサヤフ」のイスニロン・ハピロン幹部の捕獲作戦を23日午後に国軍が開始した。
激しい銃撃戦になったところへ現地で勢力を急速に拡大していた「マウテグループ」と呼ばれる別の組織が参戦、二つのテロ組織と国軍で本格的な戦闘に発展した。
両組織は合同してマラウィ市の主要拠点を次々と確保、国軍は一時劣勢に追い込まれた。この状況を国軍首脳から訪問中のロシアで受けたドゥテルテ大統領は国軍の進言を受け入れて23日夜にただちにミンダナオ島と周辺地域に「戒厳令」を布告した。
戒厳令は地方行政の諸権利が治安部隊に統制されるとともに夜間外出禁止、令状なしの身柄拘束、家宅捜索、抵抗者への発砲・殺害が可能となるもので60日間継続される。フィリピンでは1972年のマルコス大統領、2009年のアロヨ大統領に次いで第2次世界大戦後、ドゥテルテ大統領による今回が3回目となる。(後略)【前出 大塚智彦氏】
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ISともつながるとされる「アブサヤフ」は、昔からこの地域で活動している過激派組織ですが、「マウテグループ」は初耳です。
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フィリピンではこれまでドゥテルテ大統領による「和平停戦」の呼びかけに「アブサヤフ」は応じることなく、外国人誘拐、殺害、身代金要求、銃撃戦を続け国内治安問題の最大の「脅威」となっていた。
その掃討作戦中に乗じる形で登場してきたのが「マウテグループ」と呼ばれる組織。
治安当局によると「マウテグループ」は元警察官で麻薬組織を率いるアブドラ、オマール・マウテ兄弟が組織したといわれ、2016年の調査ではメンバーは263人だった。
その後麻薬組織メンバーや地元犯罪者などが加入し、麻薬を資金源として大量の武器も取得、ISとの関係を深めてミンダナオ地方にISの東南アジアの拠点を構築することで「アブサヤフ」とも思惑が一致、今回の共同作戦になったとみられている。【同上】
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一時はマラウィ市の75%を掌握したとされた過激派グループですが、その後は鎮圧が進んでいるようです。
ただ、抵抗は依然として続いてもいるようです。
****IS系武装勢力が市民を奴隷に、逃げれば射殺 フィリピン****
イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」系武装勢力と国軍との間で戦闘が続くフィリピン南部ミンダナオ島のマラウィで、武装勢力の戦闘員らが市民を奴隷として動員し、逃げようとした人たちを殺害していることが分かった。当局が13日明らかにした。
国軍と武装勢力の戦闘は3週間に及んでいるが、フィリピン政府によると、武装勢力の支配下にあるマラウィの一部地域には、いまだに最大1000人の市民が取り残されている。
フィリピン軍は米軍の支援を受け、武装勢力の戦闘員らが身を潜めている住宅地に容赦なく爆撃を加えている。当局によると、マラウィ市内では400人の戦闘員が抵抗を続けている模様。
現地のフィリピン軍報道官は記者団に対し「われわれが救出した住民の証言から、彼らが(戦闘員の)食事の用意や武器弾薬の運搬を手伝わされていたことが分かった」と述べた。
政府によると、これまでの戦闘で少なくとも市民26人、兵士や警察官58人、武装勢力の戦闘員202人が死亡している。
エルネスト・アベリャ大統領報道官は首都マニラで記者団に対し、逃げようとして隠れていた市民5人が12日、戦闘員に見つかり殺害されたことを明らかにした。(中略)
ロドリゴ・ドゥテルテ大統領は、今回の武装勢力による一連の襲撃について、ISが人口約2000万人の同国南部ミンダナオ島に拠点を作ろうとしている企ての一環だと指摘している。【6月14日 AFP】
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13日のフィリピン軍発表では、マラウィ市の20%がまだ過激派支配下にあるとされています。
戦闘を避ける避難民は24万人に及ぶとされ、その衛生面のリスクも懸念されています。
【「米国に接触したことは一度もない」 共産主義反政府勢力には共闘を打診】
興味深いのは、この戦闘を支援するためアメリカが武器を供与したと報じられた件。
周知のようにアメリカ嫌いのドゥテルテ大統領は、昨年9月12日の演説で、ミンダナオ島でイスラム過激派の掃討作戦を支援している米軍特殊部隊に「出ていけ」と撤退を求めた経緯があります。
****米、比に武器供与=IS掃討を支援***
在フィリピン米大使館は5日、対テロ戦支援のため、フィリピン海兵隊に銃や拳銃などの武器を供与したと発表した。武器は南部ミンダナオ島マラウィ市での過激派組織「イスラム国」(IS)系グループ掃討作戦に使われる。
供与されたのはライフル銃300丁やピストル200丁、マシンガン4丁など。米比両国は同盟関係にあるが、「嫌米」のドゥテルテ大統領は自国からの米軍撤退を求め、米国から供与された武器も「中古品だ。要らない」と文句を付けていた。【6月5日 時事】
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さすがに危機的状況にあってドゥテルテ大統領も個人的好き嫌いを棚上げしてアメリカと協力するのか・・・とも思ったのですが、そうでもないようです。
****フィリピン大統領、米支援「要請していない」 IS系勢力掃討で****
フィリピンのドゥテルテ大統領は11日、南部ミンダナオ島マラウィ市での過激派組織「イスラム国」(IS)系武装勢力の掃討作戦で米国が支援の要請を受けたと明らかにしたことに関し、要請はしていないと述べた。
ドゥテルテ氏は武装勢力が占拠するマラウィから約100キロ離れたカガヤン・デ・オロでの記者会見で、支援要請のため「米国に接触したことは一度もない」と強調。米国の支援については「彼らが到着するまで知らなかった」と述べた。
親米派のフィリピン軍が、反米姿勢を繰り返し示しているドゥテルテ氏を通さず米国に支援を要請したかどうかは不明。
フィリピン軍は10日、米軍から技術支援を受けているが、米部隊が地上での作戦に参加しているという事実はないと明らかにしていた。これに先立ち、在フィリピン米大使館は、フィリピン政府に支援を要請されたと発表していた。
米国防総省は声明で、フィリピン軍に治安支援および情報収集、監視、偵察の分野での訓練を提供していると明らかにしている。【6月12日 ロイター】
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アメリカへの支援要請などはしたくないドゥテルテ大統領ですが、政府軍と戦闘を継続している共産主義勢力となら手を組めるようです。ドゥテルテ大統領はかねてより共産党の「理解者」をも自称しています。
****大統領、イスラム組織・共産党組織にも打診****
ドゥテルテ大統領は同じミンダナオ島を拠点とし、反政府武装活動を続けるイスラム過激派の「モロ民族解放戦線(MNLF)」とその分派である「モロ・イスラム解放戦線(MILF)」に加えて、フィリピン共産党軍事組織「新人民軍(NPA)」に対しても政府軍との戦闘の中断と、国軍によるIS勢力一掃作戦への参加を呼びかけた。(後略)【6月7日 大塚智彦氏 Japan In-depth「ドゥテルテ氏、共産勢力と共闘?」】
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ドゥテルテ大統領は、極端な反米左翼だったベネズエラの故チャベス大統領に似たようなメンタリティを持ち合わせているようです。
【「3人レイプしても、私がやったと言うから」】
ミンダナオ島の戦闘に関連する“場外乱闘”的騒動としては、ドゥテルテ大統領の“レイプ容認発言”、アメリカのクリントン元大統領の長女チェルシーさんとの非難合戦も話題になりました。
****兵士に「3人レイプしても・・・」 ドゥテルテ氏に批判集中****
フィリピンのドゥテルテ大統領が、またレイプを容認するような発言をした。性犯罪を軽んじるような問題発言を繰り返す大統領に、国内外で批判の声が上がっている。
問題の発言があったのは26日。戒厳令下のミンダナオ島イリガン市で、過激派との戦いに向かう兵士を前に演説したドゥテルテ氏は「責任は私がとる。任務に専念し、あとは任せなさい。3人レイプしても、私がやったと言うから。4人目の妻ができたらぶん殴るけど」と述べた。
この発言に、国内の人権団体や上院議員から批判が上がった。アベリヤ大統領報道官は27日、「誇張した表現で犯罪を例に挙げたが、兵士の行動に全責任を持つという意味だった」と釈明した。
一方、この発言に海の向こうから激怒しているのが米国のクリントン元大統領の長女チェルシーさん。ツイッターに「全く笑えない」と書き込み、さらに「ドゥテルテは人権に配慮しない残忍な殺し屋(murderous thug)。レイプはジョークではない」とも記した。(後略)【5月29日 朝日】
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チェルシーさんに対しドゥテルテ大統領はビル・クリントン元大統領の大統領時代の不倫スキャンダルに言及しながら口汚く反論しています。
****ドゥテルテ比大統領、レイプ発言非難のクリントン氏娘に暴言連発****
・・・・これを受けてドゥテルテ氏は31日、海軍兵士らとその家族の前で行った長時間にわたる演説の終盤、レイプに関する自身の発言を非難する人々、とりわけチェルシーさんに向け、「売春婦ども」とののしりつつ、「チェルシーは私を非難した。私は冗談など言っていない、ただ皮肉な物言いをしただけだ。私の演説をよく聴いてみろ。私は自分の冗談に笑ったりはしない」とまくし立てた。
さらにドゥテルテ氏はクリントン元大統領と不倫騒動を起こしたホワイトハウスの元実習生、モニカ・ルインスキーさんにも言及し、「彼女(チェルシーさん)に尋ねよう、米国の大統領だった父親が、ホワイトハウスでルインスキーや他の女たちとやっていた時にどう思ったのだ?父親を非難したのか?」と批判した。
またドゥテルテ氏は、詳細を示さずに米兵がフィリピンや日本で女性をレイプしたと非難。最後に「繰り返す、クリントン大統領がルインスキーとやっていた時に何を述べ、どんな反応をしたのだ?」と付け加えた。【5月31日 AFP】
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レイプ発言に関しては、ドゥテルテ大統領は“前科”がありますので、「またか・・・」としか思えません。
ドゥテルテ大統領は昨年の大統領選のさなかにも、外国人女性が被害にあったレイプ事件に触れ、「美人だった。私が先にやるべきだった」と発言して聴衆の笑いを誘っています。
兵士を鼓舞するのにどうして「3人レイプしても、私がやったと言うから」云々の発言になるのか?
性的問題に関しても特殊な(あるいは古臭いマッチョ的な)メンタリティを持っているようです。
男性の多くにそうした面があると言えばそうですが、それを公言するのはまた別問題です。
健康面でいろいろ万全でないところもあるようですから、この際ゆっくり休養されたら・・・とも思うのですが、そういう“休養が期待される”人に限って、すぐに復帰することが多いのも困ったものです。