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孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ロシア  広がる反汚職運動とプーチン大統領の高支持率 米世論鎮静化に配意するプーチン大統領

2017-06-25 22:41:04 | ロシア

(デモの参加者を拘束する治安当局者=モスクワで6月12日、AP【6月12日 毎日】)

広がる反汚職運動と存在感を増す活動家ナワリヌイ それでもプーチンが支持される
高支持率を維持するロシア・プーチン大統領は、5月23日ブログ“ロシア プーチン大統領、“管理選挙”で高投票率・高得票率再選?”http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20170523でも取り上げたように、次期大統領選挙では単に圧勝するだけでなく、欧米につけこまれないような形で勝利したい、つまり“不正を疑われず、高い投票率の選挙で圧勝することで、政権の「正統性」を示したい”という思いがあるようです。

そのためには、選挙戦を盛り上げてくれる対抗馬も必要になりますので、プーチン大統領サイドで、適当な“対立候補”を物色しているとも。

しかし、メドベージェフ首相を標的にした最近の反腐敗抗議行動で大きな影響力を発揮しているアレクセイ・ナワリヌイ氏では政権がコントロールできなくなる恐れもあるということで、選挙戦から排除する動きを見せています。

****野党指導者、大統領選出られず=中央選管が発表―ロシア****
ロシア中央選管は23日、反プーチン政権デモを主導し、来年3月の大統領選に立候補を表明している野党勢力指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏(41)について、2月に有罪判決を受けているため、出馬できないと発表した。

ナワリヌイ氏は横領罪で執行猶予付き禁錮5年の有罪判決を受けた。大統領選に関する法律によると、禁錮刑を受けた被告は一定期間、立候補ができない。そのため中央選管は「現時点でナワリヌイ氏には被選挙権がない」と説明した。
 
大統領選にはプーチン大統領が続投を目指して出馬するとみられている。プーチン政権は今月にモスクワなど各地で起きた反政権デモで、ナワリヌイ氏を含む1500人以上を拘束するなど同氏支持の動きを封じ込める姿勢を鮮明にしている。【6月24日 時事】 
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“2月に有罪判決を受けている”というのは、地元の国営木材加工企業から資金を横領したとして、横領罪で執行猶予付き5年の有罪判決を言い渡されている件です。

また今回発表に先立ち、モスクワの裁判所は13日、12日に行われた大規模反政府デモに関し、ナワリヌイ氏が「違法デモを呼びかけた」として、30日間の身柄拘束(行政罰)を言い渡してもいます。

アレクセイ・ナワリヌイ氏が主導する反腐敗抗議運動が大きな広がりを見せている背景には、4月27日ブログ“ロシア 「不正蓄財」疑惑の首相への批判収まらず 背景に格差・貧困などの若者の閉塞感”http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20170427でも触れたように、格差・貧困に苦しむ若者らの共感を得ていることがありますが、その世代はソ連崩壊の混乱も殆ど経験していないことから、“安定を実現したプーチン大統領”の威光もあまり通用しないようです。

政権批判の自由を求めるナワリヌイ氏ですが、その主張はいわゆるリベラル派ではなく、「ロシアのドナルド・トランプ」と言われることもあるように、孤立主義と反移民の立場にあります。

5月23日ブログでも触れたように、“ナワリヌイは12年まで、モスクワで毎年行われるナショナリストと極右の示威行動「ロシア行進」の常連だった。13年にはチェチェン人追放を求めるデモを支持し、北カフカスや中央アジア出身者への侮蔑発言もした。”【5月23日号 Newsweek日本語版】とも。

人々が好むような主張を展開するのに長けたポピュリスト的側面も強いようです。

また、反腐敗・汚職を掲げていますが、“反プーチン”の主張はしていません。(だからこそ、有罪判決など受けるにしても、“抹殺”されることなくこれまでやってこられたのでしょう)

反腐敗・汚職の抗議が広がるなかでも、プーチン大統領が高い支持率を維持し続けるのは、ロシア人の「公的」と「私的」の2つに分裂したアインデンティティーに基づくものだとの指摘も。

****大規模デモは反プーチンか****
広がる反汚職運動と存在感を増す活動家ナワリヌイ それでもプーチンが支持される「矛盾」を読み解けば

ロシア国内の約200都市で先週、汚職に抗議する大規模な反政府デモが行われた。治安当局は1500人以上の参加者を拘束。ウラジーミル・プーチン大統領の最大の政治的ライバルとされる、野党指導者で反汚職活動家のアレクセイ・ナワリヌイも拘束された1人だ。
 
デモの規模と広がり、そして若い参加者の多さは驚きを持って受け止められた。この国で、これほど大きな抗議行動が展開されたのは久しぶりだ。
 
今回のデモは何を意味するのか。プーチンに対抗するナワリヌイをリベラルな人物と見なしていいのか。国民がプーチン政権打倒に動かない真の理由は何か。ロシア政治を専門とする米在住のロシア人ジャーナリストで、プーチンに関する著書があるマーシャ・ゲッセンに、スレート誌記者アイザック・チョティナーが話を聞いた。

-デモに大勢が参加したこと、これほど多くの都市で行われたことに驚いたか。

 驚いたし、衝撃的だった。地理的にここまで広がったのは今回が初めてだ。11~19年の(下院選の不正疑惑を契機とし、大統領選をめぐって高まった)反政府デモは最大99都市で行われた。今回のような規模になったのはものすごいことだ。
 
 ナワリヌイにとっては、政治生命と文字どおり生き残りを懸けた戦いだ。
 デモが行われた6月12日は、11~12年の反政府運動の弾圧開始から5周年に当たる。私を含めて当時のデモの主催者は国外へ逃げたか、投獄されたか、あるいはもう生きていない。ナワリヌイがただ1人の例外だ。彼はロシア国内で目立った動きをしている唯一の反政府活動家で、命の危険にさらされている。

-デモの広がりをどう捉えているか。反プーチンの動きは、首都モスクワの中間層を中心とするものではない?
 
 中間層中心、モスクワ中心だったことは一度もない。それはロシア政府のプロパガンダにすぎないのに、残念なことに欧米メディアはうのみにした。

-私みたいに。
 
 そう。先ほど言ったように、11~12年の反政府運動の際には99都市でデモが行われた。ロシア各地で、さまざまな階層の人々が参加した。ロシアの中開層は実際にはとても規模が小さく、デモという文脈で大きな意味を持つ存在ではない。
 
 今回のデモは、インターネットをメッセージの発信手段とするナワリヌイの能力を証明している。彼は動画やブログを駆使して、自前の「メディア」を確立してきた。政府系の報道機関を除けば、これほど効果的なロシア語メディアはほかにない。
 
 だがその半向、それほど期待が持てない点もある。ナワリヌイの主張が多くの人を引き付けるのは、実のところ反プーチンの主張でないことが一因だ。
 
 ナワリヌイは汚職に抗議するが、ウクライナヘの介入には反対しない。政治的弾圧にも反対せず、民主主義の擁護を主張せず、反汚職活動をするだけだ。そこにリスクがある。
 
 ロシア政府から汚職をなくせと訴えることは、デモの動員に役立つ。と同時に、正統性がない政府でもいい統治ができると言うようなものでもある。
 
 プーチンが正当な手段で選ばれた大統領でないことを、ナワリヌイは口にしない。「彼が私たちのカネを盗むのをやめさせろ」と言うだけだ。

 この2つは別物で、だからこそ反汚職デモの訴求力は高まる。しかしそのせいで政治性が薄まり、革命的な動きとは言い切れなくなる。(中略)
 
 彼は、単純かつ極端にポピュリスト的な考え方に引き寄せられる傾向がある。デモ動員に発揮する創造性や勇敢さ、自由がない国で自由を要求する姿勢はとても尊敬している。でもそうした点を除けば、決してリベラルとは呼べない人物だ。

-プーチンの支持率は今も非常に高いという。政府の汚職にうんざりしているロシア国民の間でも、プーチン人気が持続しているのは本当か。
 
 (中略)ロシアの偉大な社会学者である故ユーリー・レバダと、その弟子に当たるレフ・グドコフの研究によれば、「ソビエト的人間」はアイデンティティーを「公的」と「私的」の2つに分裂させる。私的なものが本物で、公的なものは偽りというわけではない。どちらも本物で、その人の一部になっている。
 
 公的なアイデンティティーにとって極めて重要なのは、「強い国家」を自己同一化の対象とすること。プーチンは他国への軍事的介入によって、そうした心情に訴え掛けてきた。支持率が85%前後で推移し、下がる気配がないのはそのためだ。
 
 一方で国民は、公的アイデンティティーと無関係に、自分は不当な扱いを受けている、政府はいつも自分たちをだますという私的な感情を抱く。そこに訴えているのがナワリヌイだ。

 この2つのアイデンティティーを1つにできた者はこれまでいない。それが可能かも分からない。(後略)【6月27日号 Newsweek日本語版】
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従来の対決姿勢は封印して、アメリカ世論の鎮静化に努めるプーチン大統領
アメリカ財務省は20日、ロシアによるクリミア半島の併合を支援したとして、ロシア当局者2人と36の個人・団体を制裁リストに追加したと発表しています。財務省は「クリミア半島に関連する米国の制裁は、ロシアが同半島の占領を終えない限り解除しない」とも。

「ロシアゲート」疑惑の渦中にあるトランプ政権としては、今この時期にロシアに対して甘い顔は見せられない・・・ということもあるでしょう。

当然にロシアは反発しており、ロシアのリャプコフ外務次官は21日、露北西部サンクトペテルブルクで23日に予定されていた米露次官級協議を中止すると発表しています。

ただ、アメリカで「ロシアゲート」疑惑が取りざたされ、選挙戦に干渉したロシア要人を対象とする対露制裁強化法案が可決されるなかでのプーチン大統領の言動は、アメリカ批判を強めるというよりは、アメリカ世論の鎮静化にのために従来の対決姿勢は封印しているようにも。

****プーチンが対米「低姿勢外交」にひた走るワケ****
米政権や世論に配慮する言動を頻発

米国の「ロシアゲート」疑惑追及が本格化する中、ウラジーミル・プーチン大統領がこのところ、米露関係やロシアゲートで積極的に発言し、米世論の鎮静化に努めている。疑惑が泥沼化すれば米露関係改善は遠のき、孤立が長期化するとの懸念がありそうだ。

米上院は新たに、選挙戦に干渉したロシア要人を対象とする対露制裁強化法案を98対2の圧倒的多数で可決し、議会の反露感情の強さを示した。

米露首脳は7月7、8両日ハンブルクで開かれるG20首脳会議の際に初会談を行う予定で、ロシアは首脳会談の成果に向けてダメージ・コントロールに乗り出した形だ。

プーチン大統領が米男性に語りかけたこと
毎年恒例のプーチン大統領の国民対話「大統領との直通回線」は、政権が万全の準備で臨む最も重要な対外発信装置だが、6月15日の対話は、200万件以上の質問の中から米アリゾナ州に住む米国人男性が登場した。

男性は、「私はあなたの大ファンで、ロシアのシンパだ。米国では国を挙げて反露ヒステリーが起きている。ロシアは敵ではないというメッセージを米国人に送ってほしい」と述べた。

大統領は「あなたの発言に感謝する。ロシア大統領として、われわれは米国を敵とみなしていないことを強調したい。それどころか、過去2回の大戦で米国は同盟国だった。帝政ロシアは米国の独立を支援した。反露ヒステリーは米国内の政治闘争の結果だ。世論調査では、ロシアに好意的な米国人は多いし、ロシアにも米国に好意的な人が多い。米露関係が軌道に乗るよう強く望んでいる」と答えた。(中略)

トランプ政権にすり寄る姿勢
「国民対話」でプーチン大統領は、7月の米露首脳会談の展望に関する専門家の質問にも、「米国とは協力できる分野が少なくない。何よりも大量破壊兵器の不拡散問題がある。米露は最大の核保有国であり、この分野で協力するのは当然のことだ。北朝鮮だけでなく、他の地域についてもだ。貧困問題や環境破壊対策、イラン核問題、ウクライナ問題もある。シリアや中東情勢では、両国の建設的作業なしに進展は考えられない」と述べ、「われわれは米国と建設的対話を行う用意がある」と強調した。

トランプ大統領が脱退表明した温暖化対策の国際化枠組み「パリ協定」についても、「米国抜きでこの分野で何か合意するのは意味がない」とし、トランプ政権に配慮した。

ロシアゲート疑惑でも、トランプ政権にすり寄る姿勢がみられた。(中略)

こうした対米融和姿勢の背景には、欧米の対露制裁強化への焦りが見て取れる。

「ロシアは制裁にいつまでも耐えていけるのか」との質問に、大統領は「ロシアは何度も各国の制裁に耐えてきた。西側はロシアをライバルとみなす時、制裁に打って出る。100年前のロシア革命の時もそうだった」としながら、「米上院が新たな制裁強化法案を策定したのには驚いた。何も起きていないのに、何が理由というのか。米国の内政問題が理由とすれば、ロシア封じ込め政策は常に適用される」と指摘した。

上院の新法案がロシアゲートを理由にしていることに衝撃を受けた模様だ。(中略)

「土下座外交」のような低姿勢発言も
プーチン大統領は6月2日、サンクトペテルブルクでの経済フォーラムで演説し、参加した米国の実業家らを前に、「現在の米露関係は冷戦後記録的な低レベルで推移している」「両国関係の冷却は経済関係に打撃を与えずにはいられない。米露貿易は過去3年で30%減少した」「米国のビジネスマンに言いたい。米露政治関係の正常化を支援してほしい。トランプ大統領を支援してもらいたい。米露関係の正常化は必ず両国の国益に合致すると確信する」などと訴えた。

強気の反米発言を繰り返してきたプーチン大統領だったが、この2~3週間は「土下座外交」のような低姿勢の発言が目立つ。

トランプ新政権誕生で米露正常化が進むと歓喜したのも束の間、想定外のロシアゲートが米議会や世論を硬化させ、対米外交が裏目に出たショックの大きさがうかがえる。

ただし、ロシアがウクライナやシリア問題で具体的な対米譲歩に乗り出す形跡はない。「米政界の反露ヒステリーは、来年の大統領選でのプーチン再選に向け求心力を高める効果がある」(6月6日付『モスクワ・タイムズ』紙)との見方もある。対米融和発言は、欧米の攪乱を狙ったレトリックにとどまりそうだ。【6月23日 名越 健郎氏 東洋経済online】
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敵対国ランキングではアメリカがトップ 昨年調査よりは減少 トランプ大統領への期待も
最後に、ロシア人が「敵」、「友」と考える国のランキング。

****ロシアの盟友ランキング、中国の順位は?****
ロシアのレバダ・センターは5日、本国の「敵」と「友」をテーマとした世論調査を実施した。それによると、ロシアは世界で孤立していると考える人は減少した。2014年11月の調査では、回答者の47%が「孤立している」と答え、その比率は翌年に54%に増加したが、今年5月に46%に減少した。

主な敵対国のランキングでは、上位3国は米国(69%)、ウクライナ(50%)、ドイツ(24%)。そのほかにラトビア(24%)やリトアニア(24%)、ポーランド(21%)、エストニア(16%)、英国(15%)、グルジア(9%)、フランス(8%)が上位にランクイン。

ロシア人の米国に対する好感度の変動は大きく、2010年に米国を「邪悪帝国」と答えた人はわずか26%だったが、2015年の調査では73%が米国を敵視している結果となった。

今年はトランプ氏の大統領就任により、回答者の21%が露米関係は改善されていると考えている。ドイツについては、2006年から2014年までロシア人に敵視されたことはない。

盟友のランキングでは、ベラルーシ(46%)で11年連続でトップを維持した。次は中国(39%)、カザフスタン(34%)、シリア(15%)、インド(14%)、アルメニア(12%)、キューバ(11%)となっている。中国は2012年の16%から39%に順位を上げた。

ウクライナとドイツは、数年前は盟友ランキングに挙がっていたが、現在は敵対国になっている。【6月14日 Record china】
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ロシアのトランプ大統領への期待はまだ大きいようです。

友好関係を強める中国とロシアは、必ずしも利害が一致しないとの指摘もありますが、それでもかなり高い好感度を示しています。

日本は、敵対国でもありませんが、盟友でもない・・・・という位置づけのようです。要するに影が薄いということか。
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