孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ナイジェリア  止まない「ボコ・ハラム」のテロ活動 再び学校襲撃・女子生徒拉致の報道も

2018-02-22 22:50:29 | アフリカ

(ナイジェリアのイスラム過激派組織ボコ・ハラムが公開した動画の中で演説する、同組織の指導者とされるアブバカル・シェカウ容疑者(2018年1月2日公開)【1月2日 AFP】)

拉致した女性を“人間爆弾”に
西アフリカのナイジェリアでは、イスラム過激派「ボコ・ハラム」が2014年4月に学校を襲撃して276人の女子生徒を誘拐、「奴隷として売り飛ばす」などのメッセージもあって、世界の注目を集めました。

こうした誘拐だけでも非道ですが、さらに拉致した女性を人間爆弾として自爆テロに使うことも頻発しています。

ナイジェリアのブハリ大統領は2016年の12月24日、北東部ボルノ州の軍事作戦でボコ・ハラムの「最後の拠点」を制圧したと発表しましたが、その後もボコ・ハラムによるテロや襲撃・拉致は止んでいません。

支配地域を失っても、ソフトターゲットを狙ったテロに方針を変えて活動を続けているとも指摘されています。

****レイプ拒めば“人間爆弾”、ボコ・ハラムの卑劣なテロ攻撃*****
アフリカ・ナイジェリアの過激組織「ボコ・ハラム」による誘拐した少女らを使った“人間爆弾”(ユニセフ)テロが続いている。

世界の光が当たらない中、こうした爆弾事件はすでに昨年の2倍に上っており、人混みに送り込んで少女らを自爆させる卑劣なテロはいつになったら止められるのか。

“結婚”拒否され自爆を強制
ボコ・ハラムの悪名が広く知られるところになったのは、2014年に同国北東部の学校から276人の女子学生を誘拐した事件。これまでに約80人が解放されたが、なお残りは行方不明のままだ。

ボコ・ハラムは現地の言葉で「西洋の教育は罪」という意味で、とりわけ少女らを自爆テロに利用する卑劣な手口が特徴だ。
 
その少女らの自爆テロが今年に入ってから、ナイジェリアや隣国カメルーンなどで急増。米紙ニューヨーク・タイムズ(25日付)は自爆テロから辛くも逃げおおせた18人の少女とのインタビューを掲載し、その悲惨な実態を明るみに出している。
 
こうした少女の1人ハジザ(16)によると、ボコ・ハラムに誘拐された後、戦闘員に“結婚”を迫られた。“結婚”とは通常の場合、事実上のレイプのことであり、妊娠させることを目的とすることが多い。生まれてくる子供を組織の戦闘員とするためだ。
 
ハジザがこの“結婚”を拒絶すると、2、3日後に幹部のところに引き立てられ、「お前は最高に幸せに包まれるところに行くのだ」と言われた。ハジザは家に帰れると思ったが、幹部は自爆して天国に行くことに言及していたのだ。ある夜、戦闘員らがハジザのところにやって来て、腰に自爆ベルトを巻いた。
 
彼女は同じように自爆ベルトを装着された12歳の少女とともに徒歩で組織のキャンプを出され、ナイジェリア人が暮らす難民キャンプで自爆するよう指示された。

同国北東部は過去8年間のボコ・ハラムとの戦争で200万人もの難民が流出、標的とされたのはそうした難民キャンプの1つだった。
 
「死んで他の人々も殺すのを分かっていた。死にたくなかった」。ハジザらは撃たれることを恐れながら、必死に軍の検問所に近づき、事情を説明。兵士らになんとか自爆ベルトを外してもらって、12歳の少女とともに事なきを得た。(中略)

ユニセフによると、ナイジェリアやその周辺国で今年、110人の子供たちが自爆テロに使われ、うち76人はほとんどが15歳以下の少女だった。中には7、8歳の子供もいる。

クスリで洗脳も
少女たちがテロに利用されるのは、イスラムの民族衣装で体を覆っているため、爆弾を隠しやすく、警戒されにくいからだ。

しかし、少女らはなぜ自爆の命令に従ってしまうのか。国連の報告書などによると、少女らは誘拐された後、ボコ・ハラムのキャンプで麻薬のようなクスリ漬けにされ「天国に行ける」と洗脳されるケースが多い。
 
また少女らは軍の施設やモスク、市場、学校、難民キャンプといったテロの標的まで連れて行かれた後、自爆しないと背後から撃つと脅され、呪縛の中で爆弾のボタンを押す、という。最近は、少女らが人混みに入ったことを確認したボコ・ハラムの戦闘員が遠隔装置で起爆する事件も増えている。
 
しかし、少女らを利用するケースが増えるとともに、検問所などに近づいてくる少女らをテロリストだ、と誤認して射殺する事件も目立つようになってきた。今年はこうした誤認発砲で13人の少女が死亡している。
 
ボコ・ハラムの活動が活発な北東部のマイドグリなどでは、こうして誤って撃たれないよう、女性たちが衣服や体をきれいに洗うようになった。自爆テロを強要される少女らはボコ・ハラムのキャンプ暮らしが長いため、体や衣服が汚れ、異臭を放っていることが多く、こうした少女らと区別するためだ。
 
しかし、ボコ・ハラム側も自爆テロの少女と怪しまれないよう、少女らにマニキュアや鼻ピアスなどおしゃれをする一般女性と同じ格好をさせるようになってきており、市民の中にはテロに巻き込まれることを恐れ、少女を見ると、遠ざかる人も出始めている。
 
国連児童基金(ユニセフ)によると、北東部ボルノ州では学校の半分以上が閉鎖されている。ボコ・ハラムが過激化した2009年以来、教師2300人が殺害され、1400校が破壊されるなど、事実上、無政府状態に近い。

一時、周辺国による多国籍部隊の掃討作戦で、ボコ・ハラムが弱体化、狂信的な指導者のアブバカル・シェカウも交代したと伝えられていた。
 
しかし、ボコ・ハラムは今年に入って再び勢いを取り戻し、テロを活発化させている。このため、米国は5億ドルの緊急軍事援助を行う方針だが、ナイジェリア政府の汚職や機能不全がひどく、ボコ・ハラムを壊滅するのは難しい状況だ。【2017年10月30日 WEDGE】
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南北分断の構造から武装闘争、次第に残虐性を強める
ボコ・ハラムのようなイスラム主義が台頭した背景には、ポルトガル・イギリスによる植民地支配の時代にキリスト教や近代教育を受け入れて近代国家建設を主導した南部、この国家建設において疎外されたイスラム主義を守る北部という国家の分断がありますが、軍部の独裁政治、政治の腐敗なども大きく影響しています。

イスラム主義勢力は、ナイジェリア政府との武装闘争を繰り返すうちに次第にカルト的性質を高め、残虐性を増していきます。

特にボコ・ハラムの転機となったのが穏健派であった初代の指導者が警察の私刑により殺されたことであると指摘されています。

2代目の指導者、アブバカル・シュカウは筋金入りの強硬派であり、彼の手によりボコ・ハラムは国際的なテロ集団へと変貌していきました。【2017年8月8日 鰐部 祥平氏 HONZ “『ボコ・ハラム イスラーム国を超えた「史上最悪」のテロ組織』地域型武装組織から国際テロ組織への変貌”より】

ボコ・ハラム指導者アブバカル・シュカウに関しては、動静がよくわからず、2016年には内部抗争がって、指導者が交代したとも報じられていました。

ただ、今年に入って、再びその健在を誇示する動画メッセージも出されています。

アブバカル・シュカウの動静にかかわらず、自爆テロは頻発しています。

****<ナイジェリア>自爆テロで20人死亡 ボコ・ハラム犯行か****
ナイジェリア北東部ボルノ州の州都マイドゥグリ郊外で16日、3件の自爆攻撃があり、少なくとも20人が死亡し、約70人が負傷した。イスラム過激派ボコ・ハラムによる犯行とみられる。AP通信などが報じた。
 
現場は州都の南東約35キロにあるコンドゥガの魚市場。3件とも実行犯は女とみられ、夜市で買い物客を装って自爆したという。
 
ボコ・ハラムは誘拐した女性や子供の体に爆発物を装着し、人混みで自爆を強制するテロを繰り返している。【2月18日 毎日】
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再び学校襲撃事件も
誘拐・拉致も時折報じられていますが、2014年のボルノ州チボクでの学校襲撃の被害者の多く(112人との報道も)がまだ行方が分かっていません。

ボコ・ハラム側の情報では、一部には帰還を拒否する女性もいるとか。

****ナイジェリアの拉致少女ら、帰還を拒否 ボコ・ハラムが新動画****
ナイジェリアのイスラム過激派組織ボコ・ハラムは15日、約4年前に同国ボルノ州チボクで拉致した女子生徒だとする女性少なくとも14人の新たな動画を公開した。

女性らは動画の中で、両親の元には戻らないと宣言している。
 
2014年にチボクで女子生徒219人が集団拉致された事件は、ナイジェリアで続く残虐な紛争の象徴となった。

ボコ・ハラムは昨年5月にも拉致した女子生徒の一人を撮影したとされる動画を公開しており、この女性も同組織に留まりたいと語っていた。
 
20分に及ぶ今回の動画に登場する女性らは、全員が黒や青のヒジャブをまとい、少なくとも3人は赤ん坊を抱いている。

うち一人は、自分たちはボコ・ハラムの指導者アブバカル・シェカウ容疑者の命令によって結婚したと説明し、「私たちは快適に暮らしている。彼があらゆるものを与えてくれ、何も不自由はない」と語っている。
 
撮影の時期や場所は不明。女性らが動画撮影を強要されたか否かも定かではない。【1月16日 AFP】
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もちろん「強要」の可能性もありますが、強制的な結婚でも子供ができれば“今の生活を選択”することも当然にあるでしょう。「何も不自由はない」云々はほとんど強制でしょうが。

こうしたなかで、ボコ・ハラムによる女子生徒拉致事件が再び報じられています。

****過激派ボコ・ハラム 学校襲撃し再び少女誘拐か ナイジェリア****
ナイジェリアで4年前、学校から女子生徒200人以上を誘拐したイスラム過激派組織、ボコ・ハラムが新たに学校を襲撃し、一部の女子生徒の行方がわからなくなっています。

ナイジェリア北東部のヨベ州で、19日夜、イスラム過激派組織、ボコ・ハラムの戦闘員が地元の学校を襲撃しました。

学校に寄宿する926人の女子生徒の多くが近くの森林などに逃げ込んだということですが、一部の行方がわかっておらず、軍などが捜索しています。

ボコ・ハラムの戦闘員がトラックで女子生徒たちを連れ去れるのを見たという住民の証言もあり、ボコ・ハラムが再び学校から少女たちを誘拐したおそれも出ています。(後略)。【2月22日 NHK】
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拉致犠牲者数などについては
“ボコ・ハラム、再び集団拉致か 学校襲撃で少女111人不明”【2月22日 AFP】
“ナイジェリアで不明の女子生徒76人救出 2人死亡”【2月22日 朝日】
といった報道もありますが、情報がスムーズに伝わらない地域でもありますので、詳細はよくわかりません。

指導力を発揮できていないブハリ大統領
ブハリ大統領は調査のため国防相らを現地に派遣したとのことですが、ブハリ大統領は健康がすぐれず、国政にほとんど関与できていない・・・との報道も昨年ありました。

****<ナイジェリア>大統領に健康不安説 3週連続閣議欠席****
ナイジェリアのブハリ大統領(74)が3週連続で閣議を欠席し、健康不安説が流れている。政府は打ち消しに躍起だが、詳しい病状を明らかにせず、退陣や休職を求める声が高まっている。
 
ブハリ氏は7日、イスラム過激派ボコ・ハラムに拉致されていた女子生徒らと面会。5日の金曜礼拝に続いて公の場に姿を見せたが、7日夜、医療検査のためロンドンへ向かった。1月下旬にも英国での検査名目で休暇を取り、当初は10日間の予定を2度延長。3月上旬に帰国するまで1カ月半不在が続いた。【2017年5月8日 毎日】
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昨年10月には、トルコを訪問してエルドアン大統領と会談など行っていますので、それなりに職務を遂行してはいるようです。

ただ、上記の健康不安に加えて、ボコ・ハラムによる治安悪化を改善出来ていないこと、経済停滞などもあって、国内では不満を高まっているようです。次期大統領選挙は無理と思われていますので、レームダック化は避けられないところです。



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