孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アフリカ  年明け早々の混乱が懸念されるコンゴとスーダン

2019-01-04 22:35:15 | アフリカ

(大統領選の投票所の前で抗議するコンゴ(旧ザイール)の人々=12月30日、キンシャサ【1月2日 時事】)

【コンゴ 政府・選管への不信から“混乱必至”】
年明け早々の政治混乱が懸念されているのが、豊かな鉱物資源の利権をめぐって長く紛争が続き、今も多くの武装勢力が跋扈するアフリカ中央部の「資源大国」コンゴ民主共和国。「資源の呪い」という言葉があてはまる国です。

任期が終わっても居座りを続けていたカビラ大統領の後任を決める大統領選挙が12月30日に行われましたが、投票日の延期等を含む不穏な情勢については、12月21日ブログ“コンゴ民主共和国  ノーベル平和賞受賞者を生んだ悲惨な現実 混乱が懸念される大統領選挙”でも取り上げたところです。

通常、こういう場合は上記の12月21日ブログ表題のように“混乱懸念”という表現を使用しますが、不正が強く懸念されるコンゴに関して言えば、平穏に選挙が終了するとは考えにくく、下記記事のように“混乱必至”という方が現実を的確に表しているように思えます。

****混乱必至のコンゴ民主大統領選 30日、公正選挙期待できず****
コンゴ民主共和国の大統領選が30日、カビラ大統領の任期切れから2年遅れでようやく実施される。

だが、野党地盤の一部地域での投票は来年3月まで延期されるなど、公正な選挙が到底期待できないことから、野党支持者らは強く反発。開票結果を巡って混乱するのは必至だ。
 
大統領選は主要3候補の争いだ。17年間にわたって権力の座にいるカビラ氏は腹心のラマザニ前内相を後継者に指名。野党各党は元石油会社役員のファユル氏を統一候補に立てた。だが、直後に分裂し、「民主社会進歩同盟」のチセケディ党首も出馬した。
 
米ニューヨーク大の「コンゴ研究グループ」が28日に発表した世論調査の結果によると、ファユル氏が47%の支持を集め、他候補に大差をつけた。一方で、48%が票の操作などの不正が行われるとみていると回答。さらに過半数は、ラマザニ氏が「勝利した」と発表されたとしても受け入れないとしている。
 
選管は当初23日に予定されていた大統領選を、火災で電子投票機などが焼失したとして1週間延期。さらに、新大統領は1月18日に就任という予定は変えないまま、東部ベニなど野党地盤の3地域では来年3月まで投票を延期するという決定を発表した。エボラ出血熱の流行などを理由としている。
 
野党陣営は、再三の延期は「政権の陰謀」と反発。AFP通信によると、ノーベル平和賞を受賞したムクウェゲ医師も「選挙プロセスは行き詰まっている」と危機感を示した。
 
過去2回の大統領選では、開票後に不正を主張する野党支持者と治安部隊が衝突。今回も同様の事態が想定され、南アフリカ安全保障研究所のステファニー・ウォルターズ氏は「衝突が数日間で収まるかは不明。大規模な争乱に発展する恐れもある」と述べた。【12月29日 毎日】
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コンゴでは、1960年にベルギーの植民地支配から独立して以来、指導者の暗殺やクーデターが続いてきましたが、今回、選挙によって初めて平和的に指導者が交代することになるのか注目されます。

しかし、コンゴ政府は国際的な選挙監視団の受け入れを拒んでおり、「公正な選挙」は期待できない状況です。
投票自体については大きな混乱はなかったようですが、問題はどのように集計され、どういう結果が発表されるかです。

「公正な選挙」が行われたとは思われていないだけに、カビラ大統領の後継候補の勝利が発表されても、野党側が平穏に受け入れるとは思われません。

****コンゴ民主共和国で2年越しの大統領選 初の平和的政権移行なるか****
アフリカ中部のコンゴ民主共和国で30日、大統領選の投票が始まった。現職のジョゼフ・カビラ大統領が任期切れ後も居座ったため、当初予定より2年遅れの実施となった。

選挙での大統領交代が実現すれば、1960年にベルギーから独立して以来初の平和的な政権移行となるが、カビラ氏に対する不信感や選挙への組織的な妨害行為などから混乱に陥る恐れが強いとみられている。
 
暫定的な開票結果は来年1月6日までに発表される見通し。
 
地元カトリック司教協議会は78%の投票所での監視活動に基づき、投票は「比較的平穏」に行われたとしている。一方で、治安が不安定な東部・南キブ州の投票所では、警察官1人、選管当局者1人、市民2人が衝突で死亡したとの情報がある。
 
カビラ氏は30日夜、国営テレビに登場し、国民は「平和的に、尊厳をもって」投票したとたたえた。しかし投票の再三の延期や、投票日の混乱に対する懸念、投票機の不正操作への疑いから、選挙への信頼は揺らいでいる。
 
投票日前日には、暴力行為の回避に向けた野党候補らとカビラ氏の後継指名者の協議も決裂した。野党の有力候補、マルタン・ファユル氏とフェリックス・チセケディ氏は、カビラ氏が後継指名したエマニュエル・ラマザニ・シャダリ元内相との行動規範案に署名することを拒否。選挙管理委員会が同案の変更を妨害していると非難した。 【12月31日 AFP】
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コンゴのような国では、選挙管理委員会は中立ではなく、政権と一体の組織です。
決裂した「投票日前日の協議」というのは、「どんな結果が出てもそれを受け入れ、暴力行為は行わない」といった内容のものですが、不正な操作も懸念されるなかでは、なかなかそういう承諾はできません。

“野党の支持者とカビラ政権の影響が強い治安部隊の衝突は連日続いています。開票結果の発表は来月上旬になる見込みですが、どのような結果が出ても、混乱が広がることが懸念されています。”【12月31日 NHK】

政権側はネットを遮断して、混乱が拡大することを防止しようとしているようです。

****コンゴ政府、全土でネット遮断=大統領選後の騒乱阻止と説明***
コンゴ(旧ザイール)政府は1日、全土でインターネットを遮断したことを明らかにした。12月30日投票の大統領選をめぐり不穏な空気が漂っており「大衆の騒乱」を阻止するためだと説明した。
 
野党は12月31日からネットがつながらないと政府を批判。欧米各国も早急な復旧をコンゴ政府に求めていた。

大統領選は、カビラ大統領の後継候補と野党の有力2候補の計3人が独自の集計に基づき自身の優勢をそれぞれ主張している。コンゴ政府高官は1日、「うその集計結果を大衆に吹き込む者がいて、これが騒乱の元になる」と強調。ネット遮断は政府の「責務だ」と訴えた。【1月2日 時事】
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政府・選挙管理員会への信頼がない状況では、どんな措置も不信感を増長させるだけです。

****コンゴ大統領選、カトリック教会が結果公表を強く要求****
アフリカ中部のコンゴ民主共和国で先月30日に行われた大統領選の投票をめぐり、同国で強い影響力を持つローマ・カトリック教会の組織「コンゴ・カトリック司教会議」は3日、どの候補が勝利したかは明白だと指摘し、開票結果の発表延期を示唆した選挙管理委員会に事実をきちんと公表するよう強く求めた。
 
CENCOの広報担当者は「集計データでは誰が大統領に選出されたか明確に示されている」と述べ、選管委員会に対し、真実と正義に基づいて開票結果を公表するよう求めた。(後略)【1月4日 AFP】
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まともな“出口調査”といったものもないでしょうから、“どの候補が勝利したかは明白だ”というのが、どういう情報に基づくものなのかは知りません。集計作業に関して漏れてくる情報によるものでしょうか。

とにかく、選挙管理委員会が集計結果をそのままストレートに公表してくれればいいのですが、そこが期待できない現実が、コンゴが長く混乱を続けてきたことの原因でもあります。

【スーダン 29年にわたり強権支配を続けてきたバシル大統領の退陣を求める声】
アフリカで、もうひとつ混乱が懸念されているのがスーダン。
(12月27日ブログ“アラブ世界で広がる国民不満による混乱の兆し  チュニジア、イラク、ヨルダン、スーダン、エジプト”)

****スーダンで退陣デモ 物価高不満、200人以上死傷****
アフリカ北東部のスーダンで、パンの価格が3倍に値上がりしたことなどをきっかけに各地で抗議デモが相次ぎ、29年にわたり強権支配を続けてきたバシル大統領の退陣を求める声が強まっている。デモ隊が治安部隊と衝突し、死傷者は200人以上に上っている。
 
AFP通信などによると、抗議デモは北東部のアトバラなどで19日から発生。翌日には首都ハルツームにも拡大し、経済の低迷を打開できていないバシル氏への批判が高まった。
 
25日には、大統領府周辺を行進していたデモ隊と治安部隊が衝突し、身柄を拘束される人も相次いだ。
 
発端は、今年に入って進んだ深刻な物価高だ。市民の生活に直結するパンなどの値段が高騰したほか、ガソリンなどの供給不足も重なり、インフレ率は70%になった。
 
1989年のクーデターで権力の座を握ったバシル氏は、抗議デモを受けて経済改革の実行を約束したものの、「わが国を崩壊させる者は裏切り者だ」と批判。首都などに治安部隊を配置し、地元の記者などを一時拘束するなど沈静化に躍起になっている。
 
スーダンでは、油田の8割を占めていた南部が2011年に南スーダンとして独立。石油関連製品の輸出が約75%も減り、経済悪化の要因となっている。

さらに、政権の国際テロへの関与が疑われ、米国から「テロ支援国家」に指定されており各国からの投資も伸び悩んでいる。【12月29日 朝日】
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****警察に自制要求-スーダン大統領=パン値上げ抗議デモで死者多数****
スーダンのバシル大統領は30日、首都ハルツームに警察幹部を集め「治安を維持してほしいが、警察にはもう少し強権を行使せずにやってもらいたい」と述べ、デモ隊への過剰な対応の自制を求めた。(後略)【12月31日 時事】
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混乱は、年が明けても続いています。今日がひとつのピークにもなっているようです。

(画像は“flickr”より By Etkin Haber

****スーダンの騒擾****
先月にスーダン各地で起こった経済事由による、抗議運動は4日も各地で続いていて、これに対して治安部隊は、ポートスーダン等で、催涙ガスを使って解散させようとしている模様です。

これまでに、治安部隊との衝突で、すでに19名が死亡して、デモ隊側に218名、治安部隊側に187名の負傷者が出ているとのことですが(最大野党によると死傷者の数は、死者45、負傷者1000名に上るとしている由)、労働組合、各種野党、人権活動家等は、経済的要求から、バシール大統領の退陣を求める政治的な要求に、要求を拡大していて、本日(金曜日)を「自由と変革の金曜日」と銘打って、全ての人に高下議デモに参加するように呼びかけている由。

他方、これに対してバシール大統領は3日、スーダンはこの20年外国の陰謀にさらされているとして(ただし、国名は特定せず)、またアラブの春後多くのアラブ諸国が、不安定化とテロの脅威にさらされてきたとして、スーダンはそのような不安定化の試みに直面した7国の一つだが、既に,エジプト、チュニジア、リビア、イエメン、シリア、イラクでは、これらの国の不安定化は成功しているとして、危機感を表明した由。

4日の金曜日と言えば、時差の関係もあり事態が動いているとすれば、まさに今頃のことなので、スーダン情勢の具体的な動きについては、明日まで待つ必要があるかもしれないが、取りあえず【1月4日 「中東の窓」】
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“なお、直近でヤマを迎えそうなのが、スーダン情勢である。スーダンでは昨年来、経済問題をめぐる辞任要求デモが継続し、連立を組む政党の離反や、政権を支えてきた政治家の反発も見られている。スーダン情勢の混乱は石油価格への影響のみならず、アフリカの「飢餓ベルト」で勢力を拡大するテロ組織の更なる伸長を促す可能性もある。”【1月4日 大野元裕氏 Japan In-depth】とも。

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