孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

インド  ヒンズー教徒の暴力に怯え、「集団分離居住」を強いられるイスラム教徒

2024-10-22 17:41:16 | 南アジア(インド)

(2020年 インドで過激派ヒンズー教徒がイスラム教モスクを襲撃、放火【2030年3月4日 Pars Today】)

【中国との緊張関係は改善の動き】
インドと中国は、2020年に国境係争地で衝突して多数の死傷者を出し、今も両国軍が対峙する状態が続いていますが、改善に向けた合意がなされました。

****カシミール地方の中印対峙問題解決へ にらみ合いの軍部隊が撤収、印外務次官が発表****
インド軍と中国軍が印北部カシミール地方の係争地で2020年に衝突し、多数の死傷者を出して両国軍が対峙している問題で、ミスリ印外務次官は21日、ニューデリーで記者団に対し、中国側との数週間に渡る話し合いの結果、「実効支配線(LAC)のパトロールの取り決めについて合意に達した。部隊の撤収、最終的には2020年に生じていた問題の解決につながるだろう」と明らかにした。

インドのモディ首相はロシア中部カザンで開かれる主要新興国による「BRICS」首脳会議に出席するため、22〜23日に訪露する予定で、同会議に出席する中国の習近平国家主席とこの問題で何らかの合意に至る可能性もある。その場合、領土問題で対立する中印関係が改善へ向かうとみられる。【10月21日 産経】
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両国首脳の正式な会談は19年以来行われておらず、実現すれば5年ぶりとなります。
中印関係が改善すれば、インドを取り込んだ日米の対中国包囲網クアッドにも影響が出るかも。

【国内の宗教対立は悪化 「集団分離居住」を強いられるイスラム教徒】
中国との関係改善は喜ばしいことですが、ヒンズー至上主義のモディ政権のもとで、国内の多数派ヒンズー教徒と少数派イスラム教徒の関係は悪化しています。対外関係よりも先に、この国内対立を緩和してもらいたいものですが。

少数派と言っても、イスラム教徒の人口は14億インド人口の14%、日本の人口より遥かに多い約2億人です。

そのイスラム教徒がヒンズー教徒の暴力に怯え、イスラム教徒が多く暮らす地域に引っ越す「集団分離居住」を強いられているとか。

****インドで暴力におびえるイスラム教徒、急増する「集団分離居住」*****
インド首都ニューデリーから北東方向にすぐ近くの場所にある町シブ・ビハールで暮らしていたナスリーンさんと夫トフィクさんは2020年2月、イスラム教徒を標的とした暴徒の襲撃を受け、トフィクさんは自宅2階から突き落とされてしまった。

幸い命は取りとめたトフィクさんだったが、足に障害が残り、リハビリを経て路上で衣料品を販売する仕事に復帰するまで3年弱もかかった。

この暴動直後、2人はニューデリーからより遠いロニに引っ越した。ロニはインフラが整っておらず、良い仕事が得られる見通しも乏しいものの、相当な数のイスラム教徒が住む町だ。

トフィクさんは「シブ・ビハールには絶対戻らない。(今は)イスラム教徒の中に入って安心感が高まっている」とロイターに語った。

ロイターが取材した20人余りの関係者によると、ニューデリーでは20年の暴動や増え続ける反イスラムのヘイトスピーチを恐れたイスラム教徒が、多数派のヒンズー教徒から逃れて一定地域に固まって居住する傾向が強まっている。

インド総人口14億人のうちイスラム教徒は約14%。こうした「集団分離居住」に関する公式データは存在しないが、例えばニューデリー中心部にあるジャミア・ナガル地区は、イスラム教徒襲撃が発生するたびに彼らの一時的な避難場所として存在してきた。

ただイスラム教徒の絶え間ない流入により、ジャミア・ナガルは人口過密化が進行。地域指導者や支援団体、聖職者、不動産会社などの話では、住宅建設が活況を呈しているものの、需要に追いついていない。

ある不動産仲介業者は、イスラム教徒の顧客はほぼ例外なく、ジャミア・ナガルのような同教徒が多数派を占める地区に住むことを希望していると明かした。

ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで長年、インドのイスラム教徒人口に関する実地調査を行ってきた政治人類学者ラファエル・サスウィンド氏は、過去10年で集団分離居住が大幅に増加したと話す。

モディ首相が率いるヒンズー至上主義のインド人民党(BJP)の下でイスラム教を嫌悪する風潮が強まったことが、その主な要因だという。

6人のイスラム教地区の指導者らも、集団分離居住が増えているとするサスウィンド氏の見解を裏付ける話が聞こえてくると述べた。ジャミア・ナガルの聖職者は、モスクで行う朝の礼拝は参加者が過去4−5年で倍以上に増加しており、この地区の人口が膨らんだことを反映しているとみている。

BJP幹部でマイノリティー問題を担当するジャマル・シディキ氏はロイターの問い合わせに対して、相対的に貧しいイスラム教徒が住宅価格の安い分離居住を選択している可能性があるとの見方を示した上で「教育のあるイスラム教徒はそうした地区を退去して他宗徒が混在する発展した地域に住んでいる」と説明した。

ただジャミア・ナガルで野党国民会議派の仕事をしているサイド・サイード・ハサン氏は、ニューデリーにおける分離居住を後押しした大きな力は20年の暴動だったと指摘する。

この暴動で200人が負傷し、少なくとも53人が死亡。犠牲者の大半は、モディ政権が打ち出したイスラム教徒以外の不法移民に市民権を与える「インド市民権改正法」に抗議していたイスラム教徒だった。

野党系のデリー市政府は、BJPの指導者らが抗議運動参加者への暴力をあおる言動をしたことが暴動につながったとの報告書を公表。BJP側は根拠がないと反論している。

<反イスラム発言>
インド政府の犯罪データを収集・分析している機関は、特定コミュニティーを狙った暴力については記録を保持していない。ただ地域社会に起因する暴動の年間発生件数の平均は、国民会議派が政権を握っていた14年以前に比べ、14―22年までに約9%減少したとしている。

しかし米ワシントンのシンクタンク、センター・フォー・スタディ・オブ・オーガナイズド・ヘイトの専門家は、昨年前半に255件だった反イスラムの言論は昨年後半に413件に急増し、BJPの政治家や関連団体が重要な要素だと分析した。

ロイターは以前、イスラム教徒への襲撃を主導しているヒンズー過激主義の「牛を守る自警団」の一部メンバーとBJPにつながりがあると伝えている。

モディ氏は下院選挙戦を展開していた4月、子どもをより多く持つイスラム教徒を多数派ヒンズー教徒に対する脅威となる「侵入者」だと発言。BJPのシディキ氏は、モディ氏は「インドに住んでいて国家を弱体化させる」不法移民ロヒンギャのようなイスラム教徒を指していると付け加えた。

一方これまでモディ政権は、反イスラムに傾いていると言われていることに関して、差別はしていないし、多くの貧困対策はインドで最も貧しいグループに属するイスラム教徒にも恩恵を提供してきたと主張している。

<開発に遅れ>
ほとんどのイスラム教徒居住区は開発が進んでいない。英国と米国、インドの経済学者が昨年行ったインド各地域に対する分析調査では、イスラム教徒が多数を占める地区で水道や学校といった公共サービスが相対的に整備されておらず、子どもたちが教育格差に直面していることが分かった。

ロニに移り住んだトフィクさんも収入は半減し、16歳の娘は新しい学校が合わずに退学した。

それでもナスリーンさんは後悔していない。「シブ・ビハールに帰るつもりはない。住民たちへの信頼を失った」と語り、夫を突き落とした暴徒には近所の人が含まれていたと証言した。

古くからトフィクさん一家の近所で暮らしていたヒンズー教徒のサム・スンダルさん(44)は、暴動ではヒンズー教徒とイスラム教徒の双方が苦しい思いをしており、外部からやってきた連中がいけないのだと説明。ただイスラム教徒が矢面に立たされたことは認め、今ではこの地域にほとんどイスラム教徒の姿が見えなくなったのは良いことではないと打ち明けた。【10月21日 ロイター】
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【市民権付与に関する変更で起きた2020年の暴動】
2020年の暴動・・・・2019年12月、モディ政権は移民を救済するとして「国籍法の改正」(「インド市民権改正法(CAA)」)を打ち出しました。この改正では、迫害を受けてインドに逃れたバングラデシュ、アフガニスタン、それにパキスタンの3か国の出身者に、インド国籍を与えるとするものです。

ところが、その対象は、ヒンドゥー教など6つの宗教の人たちだけで、3か国で多数派のイスラム教徒は対象外としたのです。

この国籍法の改正で、イスラム教徒だけが救済されずに排除されるのでないか、イスラム教徒の怒りが爆発し、抗議デモが行われましたが、2020年2月、こうしたイスラム教徒の政府批判に反発するヒンズー教徒と衝突する事態となりました。

****インドで暴動、18人死亡 不法移民への市民権付与めぐり****
インドの首都デリーで連日、イスラム教徒以外の不法移民に市民権を与える「インド市民権改正法(CAA)」をめぐり、賛成派と反対派が衝突し、これまでに18人が死亡、約190人が負傷した。3夜連続で起きているこの暴動では、イスラム教徒の住宅や店舗が標的になっているという。

発端となったCAAは、今年1月に施行された。
CAAは、インドに不法に入国したヒンドゥー教、シーク教、仏教、ジャイナ教、パールシー教、キリスト教の各教徒について、イスラム教徒が多数を占めるパキスタン、バングラデシュ、アフガニスタンのいずれかの出身だと証明できれば、インドの市民権を申請できるという内容。

一方でイスラム教徒は対象外となるため、差別的だとの声が上がっている。また、インドの世俗的地位が危険にさらされるという不安も高まっている。

ナレンドラ・モディ首相率いる政権側は、反対派のこうした主張を否定。迫害された少数派に恩赦を与えることのみが、CAAの目的だとしている。

宗教ごとに分裂
反イスラム的だと批判されているCAAをめぐっては、法案が可決された昨年以降、大規模な抗議デモが相次いでいる。一部は暴力沙汰につながっていたが、首都デリーでは今回の衝突が起きるまで、抗議デモは平和的に行われていた。

CAA賛成派と反対派の最初の衝突が起きたのは23日。それ以降は、デモ参加者の信仰する宗教によって、攻撃を受けているとの情報がある。

こうした暴力行為は、首都中心部から約18キロ離れた、イスラム教徒が多数を占めるデリー北東部地域に集中して起きている。

ソーシャルメディアには、危険と隣合わせの街を捉えた、ぞっとするような写真や動画が投稿されている。放火や、鉄の棒や石を持って路上をさまよっている男の集団、ヒンドゥー教徒とイスラム教徒が対決しているとの報告が上がっている。

誰が犠牲になったのか
負傷者の多くが入院しているグル・テグ・バハダ病院の関係者によると、死者の中には、ヒンドゥー教徒とイスラム教徒が含まれる。約190人が負傷したという。

病院を取材したBBC記者によると、銃弾によるものなど様々なけがを負った人が、治療を受けようと争っていたという。病院は「ひっ迫」しているようで、負傷者の多くは「怖くて自宅に帰るれない」と言っていたという。

真夜中に異例の審理が行われ、デリー高等裁判所は、政府と警察に対し、治療の設備が備わった最寄の病院へ負傷者を安全に移送するよう命じた。

目撃者によると、暴徒数人が、銃を運んでいたという。建物の屋上から発砲があったとの情報もある。病院関係者は、負傷者の多くは銃弾を受けていると認めた。

破れたコーランを拾い集める人も
BBCヒンディー語のファイサル・モハメドによると、同地域の中心部は、焼けた車両のいやな臭いが漂い、修羅場と化していたという。

また、一部が燃えたモスクや、コーランのページが地面に散らばっているのを確認したという。同記者は、「2人の若い男性が破れたコーランのページを拾い集め、ビニール袋に入れていた」と述べた。

あるジャーナリストは、自分の身元を証明するためにパンツを脱ぐよう暴徒から要求されたという。
イスラム教徒の男性のほとんどは、イスラム教の重要な教えの1つとして、割礼を受けている。割礼に疑問を持つ人は、イスラム嫌悪の罪に問われる場合がある。

「裏切り者を撃て」
デリー北東部で取材するBBC記者は、ヒンドゥー教の暴徒が投石し、スローガンを叫ぶ姿を目撃した。中には、「裏切り者を撃て」と叫ぶ者もいたという。

ヨギータ・リマエ記者は、放火されたタイヤ市場の方から煙が立ち上っているのを確認した。
25日午後には、シャハドラ地域のモスクが破壊された。複数の男が、モスクのミナレット(塔)のイスラム教を象徴する三日月を剥ぎ取ろうとしている様子を捉えた動画が、広く拡散された。

暴力行為の経緯
衝突は23日、デリー北東部のイスラム教徒が多数を占める3つの地域で勃発し、その後も続いている。
デモ隊は宗教ごとに分裂して互いを非難し、衝突した。

この暴力行為は、ヒンドゥー民族主義の与党・インド人民党(BJP)のカピル・ミシュラ党首と関係している。ミシュラ氏は週末に座り込み抗議を展開し、トランプ氏がインドを離れたら強制的に立ち退かせると、CAAに抗議するグループを脅していた。

デリー警察のMS・ランダワ報道官は記者団に対し、事態は制御されており、「十分な数の警察官」が配備されたと述べた。

しかし、同地域で取材するBBC記者は、暴徒はスローガンを叫んだり投石を続けていると指摘した。

ラワンダ報道官は、警察はドローンを配備し、監視カメラ映像を精査しているとした上で、騒動を起こした人物に対して措置を講じる方針だと述べた。同地域では、4人以上での集会を開くことが制限されてる。

目撃者によると、25日朝、ジャフラバードやチャンド・バックといった地域では、黒焦げになった複数の車両が残され、路上は石だらけだったという。警察は、身分証明書の確認ができた人のみ、立ち入りを許可した。
一部の地下鉄駅も封鎖されている。

トランプ氏のインド訪問の最中に
衝突は、アメリカのドナルド・トランプ大統領が24日からインドを初訪問し、首都でインド指導者や外交官、実業家らと会談を行っている最中に起きた。

現在の社会不安によって、トランプ氏の訪問から世間の注目がそれることとなり、モディ首相にとっては決まりが悪い出来事だと、BBC特派員は指摘する。

トランプ氏は記者会見で、今回の暴力行為について質問されると、対処については「インド次第」だと述べ、この問題を煙に巻いた。

一方でトランプ氏は、インド国内の宗教の自由に関する問題を持ち出し、インド政府の対応に感銘を受けたと述べた。【2020年2月26日 BBC】
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当時、衝突・混乱があったのは私も承知していましたが、これがイスラム教徒を「集団分離居住」に追いやるほど激しいものだったとは認識していませんでした。

戦争も恐ろしいですが、昨日まで平和に暮らしていた近所の顔見知り住民が突然襲い掛かる、こうした住民同士の暴力も恐ろしい。ルワンダの大虐殺もそうしたものでした。

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