(集会でアフマディネジャド大統領の肖像を掲げる少女 “flickr”より By nfallahi )
「女性ドライバーだけの250km自動車ラリーがイランで開催された」というニュース【9月6日 AFP】がありました。
なお、家族に限り男性の交代ドライバーが助手席に着くことも許されているそうです。
一方、同日に「シラーズで、21人を公開絞首刑に処した。イランでは「社会の治安改善」を目的とした取り締まりにより、処刑者数が増加している。」【9月6日 AFP】なんてニュースもありましたが。
イランについては8月6日の当ブログでも服装取締りの話題などもとりあげましたが、このような宗教的に堅いイメージもありますが、それだけでもないようなところもあって、外からはイメージがつかみきれない国のひとつです。
先月15日、アメリカがイランの革命防衛隊についてテロ組織指定を行う方針を固めた旨の報道がなされています。
イラクのシーア派武装組織、レバノンのヒズボラ、アフガニスタンのタリバンなどの近隣国への武器・人材・訓練等の供与によるテロ支援がアメリカの怒りをかっているようです。
ネオコン的なチェイニー副大統領の近辺からは“イラン空爆”の強硬論が主張されているとかで、バランンスを重視するライス国務長官が“テロ組織指定”でなんとか収めようとしているとか・・・。【8月15日 朝日】
イラクで泥沼にはまり、アフガンでもうまく進展しない現状で、本当にイラン空爆なんてあるのかな・・・とも思いますが、ブラフなのか何なのか一般人にはよくわかりません。
フランスのサルコジ大統領は27日の外交方針演説で、「イランが核問題の外交解決を図らない場合、同国は空爆される恐れがある」と語っています。【8月29日 AFP】
イランのアフマディネジャド大統領は「経験不足からくる認識不足」と皮肉っているそうです。
主権国家の軍隊がテロ組織に指定されるのは初めて。
もっとも、イランには革命防衛隊とは別組織の共和国軍(本来の正規軍)が存在していますが。
イラクについては、シーア派民兵組織マフディ軍のメンバーが、イランの革命防衛隊から軍事訓練を受けていたことを明らかにした旨が報じられています。「イッティラート」と呼ばれるイランの対外諜報機関を通じ、武器や資金も流れているとか。【8月23日 毎日】
アフガニスタンについて言えば、先月14日アフマディネジャド大統領は初めてアフガニスタン・カブールを訪問し、カルザイ大統領と会談。
米英の“タリバン支援”批判に対し、「まったくの事実無根。わが国は全力を挙げて、アフガニスタンの政治プロセスを支援している」と否定しました。
カルザイ大統領も、「米英両政府の主張を裏付ける証拠は何もない」との認識を示したそうです。
カルザイ大統領はブッシュ大統領との会談前に「わが国が抱える問題にとってイランは支援者であり、テロや麻薬との戦いにおいてイランと協力関係にある」と語り、周囲を驚かせたとか。【8月15日 AFP】
確かに、かつてのタリバン政権時代はイランとタリバンは険悪な関係だったそうですが、“敵の敵は味方”というのがこれまた世の常ですから、お互い欧米と対立するなかで最近はどうでしょうか?
アメリカの革命防衛隊のテロ組織指定はこの後の国連でのイランへの追加制裁論議の進展を見て行うとされていますが、9月1日、イランは革命防衛隊の司令官を、対米強硬派と目されていたサファビ氏から、比較的現実的といわれているジャファリ氏へ交代しました。
アメリカの動きをにらんでの反応とも思えます。
また、革命防衛隊出身のアフマディネジャド大統領の就任以降、隊内で強硬派の影響力が急伸していることに、勢力均衡を重視するハメネイ師が懸念を強め、強硬派のサファビ氏を退けた、との見方もあるそうです。【9月2日 読売】
なお、ジャファリ新司令官は11日、イラン政府がイラクとアフガニスタンに展開する米軍の「弱点」をつかんでおり、「敵が攻撃を仕掛けてくるならば、イランは的確に痛烈な反撃を加えることになる」と警告したそうです。【9月12日 AFP】
「弱点」とは何でしょうか?
表舞台では対米強硬路線のアフマディネジャド大統領の言動が目立ちますが、後ろ盾の最高指導者ハメネイ師やイラン保守派は必ずしも大統領支持で固まっている訳でないことは、8月6日の当ブログでも触れたところです。
核問題で挑発的な反米路線をとる大統領に対し、ハメネイ師は「核問題を大統領が“個人化”している」として不快感を表しているとも言われます。
そんなイランの政局の動きとして、最高指導者の任免権を持つ専門家会議の新議長に、元大統領で保守穏健派、かつアフマディネジャド大統領の最大の政敵であるラフサンジャニ最高評議会議長が選出されました。
「現最高指導者ハメネイ師の後継選びで仕切り役になる可能性もある。イラン政界は、保守強硬派アフマディネジャド現政権に対して穏健派が巻き返す流れにあり、ラフサンジャニ師の発言力が今後増しそうだ。」【9月4日 朝日】
(サッカーに興じるアフマディネジャド大統領 “flickr”より By nfallahi )
テロ支援と並んで懸案の核開発問題については、国際原子力機関(IAEA)の9月定例理事会が10日、ウィーンの本部で始まりました。
核兵器開発疑惑が指摘されるイランは先月、IAEAとの間で、情報開示の日程を示す「行動計画」を策定しました。
しかし、国連が要求するウラン濃縮活動停止に言及せず、重要問題についての解決期限も明示していないことから、イランに対して厳しい声が相次ぐことが予想されています。
IAEAのエルバラダイ事務局長は「(行動計画の実施は制裁回避に向けた)恐らく最後のチャンス」と誠実な履行を求めています。
ただ、イランはそもそもウラン濃縮活動を停止せず、アフマディネジャド大統領も2日の演説で、稼働中の遠心分離器は3000台に到達したと強調するなど、強硬姿勢を改める兆しはないことから、 「(行動計画策定は)時間稼ぎ」(欧米外交筋)との声も強いようです。【9月11日 産経】
国連の制裁論議、アメリカのテロ組織指定など、きわどいせめぎ合いがイランとアメリカの間でしばらく続きそうです。
様々な様相を見せるイラン、最後にニュースが1件。
「中国が昨年、日本を抜いて初めてイランの最大の貿易相手国になったことが4日、06年の通関統計などで分かった。核開発問題で国連制裁下にあるイランへの新規投資に日本企業が二の足を踏む中、中国はイランとの経済関係をさらに緊密化させていることが浮き彫りに。」【9月4日 共同】
イランの最大の貿易相手国は日本だったのですね。