孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アメリカ  バイデン新大統領就任 改めて連帯を訴える 中国・イランは関係改善に期待するも・・・

2021-01-21 23:15:41 | アメリカ

(【1月21日 ハフポスト日本版

左:およそ90万人が集まったトランプ大統領就任式 中央:20万本のフラッグが並ぶ今回 右:およそ180万人が集まったオバマ大統領就任式 トランプ大統領の「ウソ」で塗り固めた4年間は、オバマ氏より大勢が集まったというウソから始まりました。)

 

【異例ずくめの大統領就任式】

当然ながら、今日はアメリカ・バイデン新大統領就任関連のニュースが山ほど。

そうした中から、いくつかの記事を。

 

新型コロナパンデミックのさなかでお就任式、就任を祝う聴衆に代えて20万本ものフラッグが飾られました。犠牲者への追悼の意味もあるとか。

 

コロナの影響の他に、先日の議事堂襲撃のようなトラン支持者による混乱を未然に防ぐ意味合いもあってのことでしょう。

 

****新型コロナは、百万の聴衆を虹色のフラッグに変えた。大統領就任式の様子****

アメリカ大統領就任式が1月20日(現地時間)に開かれ、民主党のジョー・バイデン氏が第46代大統領に就任した。

 

通常は百万人規模の聴衆が集まる就任式も、今回は新型コロナウイルスの感染拡大や、1月6日に起きた議事堂暴動を受けた厳戒態勢のため、全く違った風景となった。

 

通常であれば、連邦議会議員など配られていた20万枚のチケットも、配布取り止めとなった。

就任式が開かれた連邦議会議事堂前のナショナルモールは閉鎖され、普段のような聴衆の姿はなかった。その代わりに、色とりどりのフラッグの列で埋め尽くされ、虹色を描いた。

 

飾られたフラッグはおよそ20万本。新型コロナウイルスで亡くなった40万の国民への追悼や、就任式に参加できなかった招待客や聴衆を表しているという。

 

過去の風景はどうだったのか。4年前のトランプ氏の就任式には多くの聴衆が集まった。その数は、およそ90万人と推計されている。

 

さらに人手が多かったのが、オバマ氏の就任式だ。ABCニュースによると、初当選した2009年には約180万人が集まったという。

 

3つを比べると、こうなる。(冒頭画像)【1月21日 ハフポスト日本版

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上記の就任式風景に象徴されるように、今回就任式はトランプ前大統領は参列せず“思いやりのある”置手紙を残しただけ、パレードも縮小など、異例ずくめとなりました。

 

****バイデン大統領、トランプ氏の置き手紙受け取る 内容は公表せず****

バイデン米新大統領は20日、同日に退任したトランプ前大統領から置き手紙を受け取ったと明らかにした。「とても思いやりのある手紙をもらった」とホワイトハウスで記者団に述べたが、「私的な内容なので、本人と話すまでは公にしない」として説明しなかった。  

 

トランプ氏はこれまで「新政権の幸運を祈る」と述べる一方、昨年11月の大統領選で戦ったバイデン氏を名指ししての祝意は表明していない。20日の離任演説でも直接の言及を避け、バイデン氏の就任式にも出席せずに首都ワシントンを後にした。

 

バイデン氏も就任式の演説で出席したオバマ、ブッシュら歴代大統領に謝意を示す一方で、トランプ氏については言及しなかった。  

 

米国では政権交代時、退任する大統領が新大統領に宛てた私信を執務室の机に置くことが慣例となっている。【1月21日 毎日】

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【就任宣誓の直後に多数の大統領令に署名】

バイデン新大統領はトランプ政治による「失われた4年間」「逆走の4年間」を取り戻すべく、多くの施策に関する大統領令に署名しています。

 

そのひとつひとつを詳しく取り上げることはできませんので、ここでは項目の羅列だけ。

今後、中身に関して取り上げる機会が改めてあると思いますので。

 

****バイデン新大統領の就任初日、大統領令で「脱トランプ政権」前面に****

地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」への復帰や、世界保健機関からの脱退撤回、環境保護と新型コロナウイルス対策の強化など、米国のジョー・バイデン新大統領は20日、就任宣誓の直後に多数の大統領令に署名した。

 

就任直後のこうした大統領令への署名には、ドナルド・トランプ前政権からの政策転換を打ち出す狙いがある。

 

署名された大統領令の中には、連邦政府の施設でのマスク着用義務化、イスラム教徒が多数を占める国々からの入国禁止の解除、環境保護と新型コロナウイルス対策の強化、メキシコとの国境の壁建設の中止、連邦政府における民族的少数派の多様性と平等性の拡充するための取り組みなどが含まれた。

 

ロン・クレイン首席補佐官は先日、ホワイトハウスの新しい幹部に渡したメモの中で、新型コロナ対策や米国の経済不況、気候変動や国内の人種的不公平について「緊急の対応を必要としている」とし、「バイデン氏は最初の10日間で、これらの危機に対応するため決然とした行動を取り、世界における米国の地位を取り戻す」と述べている。

 

バイデン氏の側近らも、「同氏がトランプ政権が残した最も甚大な傷を修復するためだけでなく、国を前へ進め始めるために行動を起こしていく」と明らかにしていた。

 

バイデン氏が就任初日から署名した大統領令は以下の通り。

■新型コロナウイルス
・「100日間マスクチャレンジ」
・世界保健機関脱退撤回
・コロナ対策で連邦政府の連携を再構築

■経済救済策
・立ち退き・差し押さえの猶予期間延長
・学生ローンの返済猶予期間を9月30日まで延長

■気候・環境対策
・地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」に復帰
・「キーストーンXLパイプライン」の建設許可の撤回、アラスカ州・北極圏国立野生生物保護区の石油・ガス鉱区リース権売却一時停止、気候危機への取り組み

■移民
・「ドリーマー」*計画の保護
・イスラム教徒の入国禁止解除**
・メキシコ国境沿いの壁の建設中止
・トランプ前政権の厳格な移民法執行を変更
・リベリア人グループ強制送還の延期

* 未成年時に親に連れられ不法入国した移民
** 一部のイスラム諸国国民に対する入国禁止令

■人権
・人種間の平等を促進する取り組みに着手
・市民権を持たない住民を米国勢調査から除外するトランプ氏の計画を撤回
・性自認や性的指向に基づく差別の予防・撤廃

■規制
・トランプ政権が退陣間際に発した規制関連の大統領令を見直す大統領覚書を発出

■倫理
・政府に対する国民の信頼の回復と維持(行政府被任命者の倫理誓約)【1月21日 AFP】

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【中国・イランは期待、ロシア・北朝鮮は反応なし】

トランプ大統領に振り回された感もあった各国首脳から多くの祝意・関係改善への期待が寄せられるなかで、トランプ大統領がプーチン大統領に心酔していたとか、何か弱みを握られていたのではいかとか、いろんな話もあったロシアは様子見、北朝鮮は今のところ反応なしといったあたりが目立ちます。

 

****各国首脳、協調に期待 露と北朝鮮は反応なし バイデン米大統領就任****

「米国第一主義」を掲げたトランプ前政権時代に関係が悪化した欧州各国や、貿易戦争など泥沼の対立に陥った中国の首脳は、国際協調や地球環境を重視するバイデン新大統領の就任を歓迎した。

 

フランスのマクロン大統領は20日、バイデン氏が温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」復帰に向けた大統領令に署名したことを祝福。「パリ協定にお帰りなさい。地球を守る行動を取るために、私たちは結束しよう」とツイッターに書き込んだ。ドイツのメルケル首相も、「友好関係と協力の新しい一章を楽しみにしている」と期待を寄せた。

 

バイデン氏は20日、トランプ前政権が7月の世界保健機関(WHO)脱退に向けて進めていた手続きも停止した。WHOのテドロス事務局長はツイッターに「より健康で公正で安全で持続可能な世界に乾杯!」と投稿し、喜びを表現した。

 

中国も、バイデン政権下での関係改善に期待する。中国外務省の華春瑩(かしゅんえい)報道局長は21日、バイデン氏に祝意を示し、「国際社会は中米関係が正しい軌道に戻ることを期待している」と述べた。気候変動問題や新型コロナウイルス対策などの世界的な課題を巡っても連携を呼びかけた。

 

ただ、台湾や新疆ウイグル自治区の問題など、中国が譲れない「核心的利益」を巡る両国の溝は深く、早期に対話を再開できるかは不透明だ。

 

「米新政権が過去4年間の汚点を除去することを期待している」。イランのロウハニ大統領は20日の閣議でこう述べ、バイデン政権の誕生を歓迎した。

 

トランプ氏は2018年にイラン核合意から離脱し、厳しい経済制裁をイランに科してきた。これに対しバイデン氏は、イランが合意上の義務からの逸脱をやめれば米国としても核合意に復帰する姿勢を示している。ただ、イランは核開発を強化する法律を成立させるなど、合意からの逸脱を加速させており、バイデン氏は難しいかじ取りを迫られる。

 

ロシアのプーチン大統領はすぐにコメントを出さず、ペスコフ大統領報道官は20日、「ロシアにとっては何も変わらない」と述べた。

 

ロシアにとって唯一の明るい材料は、2月5日で期限が切れる新戦略兵器削減条約(新START)の延長にバイデン政権が前向きなことだ。露外務省はバイデン氏の就任直後に改めて5年の延長を求める声明を出し、対話を呼びかけた。

 

だが、これ以外の問題では、ロシアに強硬的とみられるバイデン氏への警戒感が広がっている。

 

北朝鮮の国営メディアはバイデン氏の大統領選での勝利や大統領就任に対して、公式な反応をまだ示していない。(後略)【1月21日 毎日】

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【人権・民主主義重視で中国との関係は困難にも】

上記記事にあるように、アメリカとの関係が悪化している中国・イランは期待を寄せていますが、同時に難しい問題が残されているのも事実です。

 

中国との関係では、トランプ大統領の貿易戦争や軍事的緊張の側面はバイデン新政権では和らぐことも推測されていますが、一方で中国が譲れない「人権問題」が前面に出てくることも予想されています。

人権・民主主義は、貿易や軍事のように適当なところで妥協・取引が難しい問題にもなります。

 

****中国、バイデン新政権に不快感 ウイグル族虐殺認定巡り****

中国外務省の華春瑩報道局長は20日の記者会見で、中国政府による少数民族ウイグル族らへの弾圧をジェノサイド(民族大量虐殺)とした米国の認定について「紙くずだ」と強く反発した。

 

バイデン新政権の国務長官候補ブリンケン元国務副長官が認定に同意したことに関し、内政に干渉しないよう求め、不快感を示した。

 

習近平指導部はトランプ政権が、中国が譲歩できない「核心的利益」と位置付ける新疆ウイグル自治区や台湾、香港を巡る問題で次々と強硬政策を取ったことを深刻視。華氏は「米側がこうした問題を利用して中国の利益を損なうことに断固反対する」と述べた。【1月20日 共同】

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また、「中国と対立する民主主義国家」台湾重視のスタンスはトランプ政権から引き続くようで、これも中国を強く刺激します。

 

****台湾代表、米大統領就任式に出席 正式招待は79年断交後初****

20日に行われたジョー・バイデン米新大統領の就任式に、台湾の駐米大使に相当する駐米台北経済文化代表処の蕭美琴代表が正式に招待され、出席した。台湾政府は21日、米中国交正常化により1979年に米台が断交して以来初の正式招待で、今後の先例になるとの見方を示した。

 

蕭代表は、就任式会場で撮影した自身の動画をインターネットに投稿。「台湾の人々と政府を代表して、バイデン大統領と(カマラ)ハリス副大統領の就任式に出席することを光栄に思う」と語り、「民主主義はわれわれの共通言語であり、自由はわれわれの共通目標だ」と続けた。

 

台湾外交部は、台湾の駐米代表が米大統領就任式の実行委員会から「正式な招待を受けた」のは数十年ぶりだと発表。与党・民主進歩党は「42年ぶりの新たな進展」だと評価した。

 

蔡英文総統は、バイデン大統領の就任宣誓後にツイッターを更新し、「より良い方向を目指すための国際的な力として、共に取り組んでいく準備はできている」とバイデン氏に呼び掛けた。 【1月21日 AFP】

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【アメリカとの交渉に向け、圧力をかけるイラン 米国内には強い抵抗感も】

イランは、バイデン新政権との交渉に期待すると同時に、交渉のカードとして新たな挑発も見せています。

 

****バイデン就任直前にホルムズ海峡の緊張高めたイランの狙い****

1月4日、イランは二つの新たな挑発に出た。

 

一つは、濃縮ウランの濃縮度の20%への引き上げプロセスの開始である。濃縮度を5%から一層上げることは、米国が脱退した2015年のイラン核合意に対するさらなる違反であり、兵器級の濃縮ウラン(90%の濃縮度)の生産に一歩近づくことになる。

 

もう一つは、革命防衛隊の海軍が、「海洋汚染防止法に違反し続けた」として韓国(昨年、海賊対策でアデン湾に派遣している艦艇の活動範囲をホルムズ海峡に拡大した)のタンカーを拿捕、5名の韓国人を含む20名の乗組員全員を拘束したことである。(中略)

 

今回、濃縮ウランの濃度を20%に引き上げたり、韓国のタンカーを拿捕したりしたのは、イランが米国との交渉を有利に進めるために国際社会に圧力を掛けて国際社会がバイデン新政権に圧力を掛けるよう仕向けようと目論んだのではないだろうか。(後略)【1月21日 WEDGE】

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中国同様、イランに対しても、単にトランプ氏個人の問題ではなく、アメリカ国内世論・議会に強い抵抗感がありますので、バイデン新大統領としても扱いが難しいと推測されます。

 

【ファウチ所長 トランプ大統領のもとで事実や科学的な知見に基づく姿勢を保つことはたやすくなかった】

バイデン新政権の施策の中身については、改めて別機会で取り上げていきますが、コロナ対策の中心にいた米国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長の発言が印象的でした。

 

ファウチ氏は、WHOのオンライン執行理事会に米国代表として出席、バイデン政権はトランプ前政権が決めたWHO脱退を取り消し、「新型コロナウイルス対策のために協働し、連帯する用意がある」と強調しました。

 

また、トランプ前政権の「米国第一」から転換し、バイデン新政権が新型コロナウイルスワクチンの公平な供給を目的とした国際的な枠組み「COVAX」への参加を検討していることを明らかにしました。

 

****トランプ氏と事実や科学で対立、辛かったと述懐 ファウチ所長****

 米国の新型コロナウイルス対策の推進役の1人であるファウチ米国立アレルギー感染症研究所長は21日までに、トランプ政権下での自らの処し方に触れ、事実や科学的な知見に基づく姿勢を保つことはたやすくなかったと振り返った。

 

米ハーバード・ビジネス・レビュー誌との会見で述べた。「全米向けテレビ放送の前でトランプ大統領と矛盾する発言を示すのは愉快なことではなかった」と指摘。「喜びなどなかった」と述べた。

 

同所長は、自らが奉仕する政権が誰に率いられてあろうとも真実を告げることを信条にしていたとも述懐。

 

トランプ政権下での体験に言及し、大統領が語るかもしれない事柄と感情が絡まず事実に基づいた行動を示したとしても直接的な対立の立場にしばしば追い込まれるようなことは特に辛かったとし、そういう自らの姿勢を貫くのは容易ではなかったとまとめた。【1月21日 CNN】

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【連帯の呼びかけ】

最後に、バイデン新大統領の就任演説から

 

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今日のこの1月の日に、私も全身全霊を込めています。アメリカをひとつにまとめるため。国民の連帯、国の連帯を実現するため。この大義のため、すべてのアメリカ人に協力を呼びかけます。怒り、不満、憎悪、過激主義、無法状態、暴力、病気、失業、そして希望の喪失――。こうした敵に立ち向かうため、みんなで連帯してほしいと。(中略)

 

この時期に「連帯」などと言うと、ばかげた幻想だと思う人もいるのは承知しています。私たちを分断する力は深く浸透していますし、その力は本物です。

 

ただ、決して新しいものではありません。私たちの歴史は、誰もが平等に作られたというアメリカの理想と、その一方で人種差別や移民排斥主義や恐怖によって国が引き裂かれてきたという厳しく醜い現実が、常にせめぎ合う中で作られてきました。この戦いは絶え間ないもので、勝利は決して確実ではありません。

 

南北戦争や大恐慌、世界大戦、9/11、困難と犠牲と失敗が相次ぐ中、それでも常に私たちの善性がまさってきました。

 

大変だったその時々に、必要な人数が集まり、力を合わせて、この国を前進させてきたのです。今回もまたそれができます。歴史と信念と理性が道を示してくれます。連帯の道を。(後略)【1月21日 BBC】

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タイ  王室改革要求に不敬罪適用での力による封じ込めに出る政権側 矛先はタナトーン氏にも

2021-01-20 22:44:13 | 東南アジア

(【1月20日 共同】解党処分になった野党「新未来党」のタナトーン元党首(42) 新型コロナウイルスワクチンに関する発言で王室の名誉を傷つけたとして、不敬罪などの疑いで告発されました)

 

【「王室改革」要求の衝撃】

これまでも取り上げてきたように、タイではタブー視されていた「王室改革」を求める声が若者らを中心に一気に高まり、タイ社会に大きな衝撃を与えています。

 

****前例なき王室批判タイ社会に与えた衝撃とは****

タイ国民にとって、2020年は、政治をめぐり関心高く見守る動きがあった。何万人もの人々が街頭に出てきて王室に抗議するというのは、歴史上初めてのことだったからだ。

タイで王室は宗教に例えられる。国王は歴代、人々の崇拝を集める神格化された存在だ。人々は国王を「父」と呼び、信者が神を敬うのと同じように、国王を深く尊敬している。

王室はタイを外部の脅威から守り、植民地化から救ってきたと広く信じられてきている。多くの人はタイが独立を維持できたのは王室のお陰だと考えている。

そして、そのような脅威がなくなった後も、国王は国民の生活の質を高めるために努力していると信じる人が大半を占めている。それゆえ、タイで王室は非常に尊敬されなければならず、国王を悪く考えることは恩知らずと受け止められるのだ。

王室が敬われるのには、年功序列を重んじるタイの文化とも大きく関係している。王室は序列の最高位にある。このような背景もあり、王室支持者は「善良な人」であり、王室を疑う人は「悪い人」と考える人が多い。

そのため、学生らが街頭に出てきて、国王を名指しし、直接かつ公然と批判したことに、タイ社会は衝撃を受けた。仮に陰で国王を批判することがあろうとも、匿名で行うのが普通だ。

学生らが国王に対してあのように大胆に意見をぶつけた時、タイメディアは報道することをためらっていた。国王の名誉を傷つける報道を繰り返すと、記者も罪に問われることがあるからだ。

一般の人にとっては、2つの意味で衝撃だった。タイでは王室を侮辱すれば不敬罪で罰せられ、最長で15年の禁錮刑が科される。それにもかかわらず、学生らが罪に問われることを恐れていないこと。

 

また、王室改革を求める声明を出したリーダー格のメンバーが学生らに称賛され、王室を明確に批判する、さらに大きな抗議活動につながったからだ。

君主制を支持する王党派にとっても、学生らがタブーをおかしたことは、さらに大きな衝撃をもって受け止められた。王党派の視点では、王室は常に崇拝されなければならない。王室に対する感謝の気持ちは計り知れず、王室を軽視することは罪であり、不幸をもたらすと信じている。

仮に人々が王室に不満を持ったとしても、個人的に、あるいは密かに文句を言えば良いという考えを持っている。このため、学生らが王室を表だって批判していることにショックを受けている。また、学生らの行動は国王から王位を剥奪しタイから追い出す「革命」と見なし、深く動揺している人たちもいる。

一方、王室の問題がようやく公の場で取り上げられたと喜び、デモについて好意的に受け取る人たちも少なからずいる。それは、王室改革が民主化など、タイが抱える多くの政治的問題の解決に役立つ、本質的なステップと考えているからだ。

このように「王室改革」を求める動きは批判的、好意的と視点は違えど、タイの国民の間では大きな衝撃をもって受け止められた。

ただ、国民の間で「王室への思い」が様々あるだけに、合致点を見いだす道のりは決して平たんではない。国民を巻き込み、大きく動き出した流れがどのくらい続くのか、そしてどのように終わるのか。現時点でその道筋は見通せない。【1月2日 日テレNEWS24

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【要求背後に「タイ式民主主義」への批判】

若者らが「王室改革」を正面きってとりあげるようになったのは、王室の権威で軍部クーデターを正当化してきた「タイ式民主主義」への問題提起であり、また、ワチラロンコン国王の“国父とは言い難い”ような行動がこうした動きに拍車をかけています。

 

****異例の王室批判 タイ反政府デモの行方****

「一線を越えた」。タイで続く反政府デモを取材中に感じたことだ。デモを主導する学生らが踏み込んだのは、これまでタブーとされてきた「タイの王室」。この王室の改革を求めたのだ。

タイで国王は「神聖不可侵」と憲法に明記されている。刑法に「不敬罪」があり、王室を侮辱すれば最長で15年の禁錮刑が科される。その絶対的な権威に対して批判の声を上げる学生らの姿は、タイ社会に大きな波紋を広げている。

■タブーの王室改革に踏み込んだ背景
当初、学生らが求めていたのは、軍政の流れをくむプラユット政権の退陣と非民主的な憲法の改正、民主活動家への抑圧をやめることだった。

いずれの要求も根底にあるのは、軍をバックに強権的な統治を続ける政府への反発だ。デモのシンボルとなった3本指を掲げるジェスチャーは、“独裁への抵抗”を示すサインだ。「タイはまだ、真の民主主義を実現できていない」。デモの参加者が口々にした言葉だ。

「全員がリーダー」を合言葉に、複数の学生グループが緩やかに連携しながら行われているデモ。SNSを駆使して警察の取り締まりをかいくぐる手法はイマドキだ。

若者の発想に驚いたことがある。デモが予定されていたある日、主催グループがSNSに「ビッグサプライズを用意しているから駅に集合」と投稿した。現場に着くとスマートフォンの画面を見つめる学生らの姿が。いったい何が起きるのか―。

予定時間になったとき、SNSに投稿されたのは「デモは行わない」。「何もしないことがビッグサプライズ」というのだ。厳戒態勢をとった警察を手玉にとるようなやり方は若者ならではだ。

大規模なデモが始まって1か月ほどがたった2020年8月。タイ社会に衝撃が走った。デモ隊のリーダー格で人権派弁護士のアノン氏が、批判の矛先を王室に向け、公然と改革を訴えたからだ。一線を越えた瞬間だった。

その後のデモでは、王室に対して改革を求める「10項目の要求」が明らかにされた。そこには不敬罪の廃止や王室関連予算の削減、国王によるクーデターの承認の禁止などが含まれている。先鋭化する学生らのデモに、警察が放水車や催涙ガスを使うなど、緊張の度合いは増している。

ただ、王室改革を求める声は突然上がったのではない。これまでの要求の中に、それは暗に含まれていた。学生らは当初から、王室を改革しなければ「真の民主主義」は実現できないと感じていた。その理由は、「タイ式民主主義」と呼ばれる歴史と、現在のワチラロンコン国王の行動に深く関わっている。

タイではこれまで、政治が混乱するたびに軍がクーデターを起こし、新たな政権を時の国王が承認してきた。これまでに起きたクーデターは約20回。武力で権力を奪う非民主的な手段だが、タイでは国王の権威のもと「タイ式民主主義」として容認されてきた。学生らは国王によるクーデターの承認が、真の民主化を妨げる根本にあると考えている。

現在のワチラロンコン国王は2016年の即位後、巨額の王室資産を個人の名義に移したり、軍の精鋭部隊を直轄化したり、権限を強化してきた。またドイツに長期間滞在を続け、タイに戻ることはごくまれだった。

王室改革を初めて訴えた弁護士のアノン氏は、「権力の拡大は民主主義の許す範囲を超えている」と批判する。去年、新型コロナウイルスの感染が拡大する中も、ワチラロンコン国王がドイツに滞在を続け、奔放な生活を送っていると報じられたことで、批判の声が高まることになった。

しかしながら、タイには高齢者を中心に王室を慕う人たちが大勢いることも事実だ。君主制を支持する王党派のグループも各地で集会を開き、「王室を守らなければいけない」と訴えている。

世代間の分断をも生んでいる王室をめぐる議論。賛否を明らかにしていない中間層も大勢いるとみられ、学生らの訴えは広がりに欠ける。このデモは今後、どうなるのか。

■タブーに踏み込んだ反政府デモの行方
これまでのところ、デモを主導する学生らの要求はいずれも実現していない。振り上げた拳を下ろせない状況に、学生らは「2021年はさらに激しさを増して戻ってくる」と予告している。軍にクーデターの口実を与えないよう非暴力的なデモを意識している学生らだが、警察や王党派と不測の事態へ発展する懸念も残る。

今後につながる動きとして注目したいのが、国会が模索している「和解委員会」の設置だ。与野党の議員のほか、学生ら反体制派や王党派、有識者が参加して、問題解決に向け協議する場だ。デモの沈静化を図りたいプラユット首相も設置に同意していて、協議結果には応じるものとみられる。

いまのところ、学生らは問題の先送りだとして、代表を送らない姿勢を崩していない。国のあり方の根本をめぐり対立する者同士が、意見を一致させるのは容易ではないだろう。しかし、民主主義を追求するのであれば、話し合いの場にこそ、その答えがあるのではないだろうか。

“真の民主化を”という思いで始まった反政府デモ。今後、軟着陸するかたちで決着をみるのか、あるいはさらに激化していくのか。その行方が注目される。【1月2日 日テレNEWS24

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【不敬罪適用の強硬策に転じた政権側】

“世代間の分断をも生んでいる王室をめぐる議論。賛否を明らかにしていない中間層も大勢いるとみられ、学生らの訴えは広がりに欠ける。このデモは今後、どうなるのか。”・・・・出口を模索する状況で、政権・当局側が先に「不敬罪適用復活」という形で急な動きをみせています。

 

****王室への不敬容疑でデモ参加の大学生を逮捕 タイ当局、方針を転換****

若者らによる反体制活動が続くタイで、警察は13日、王室を中傷した疑いで男子大学生1人を不敬容疑で逮捕した。地元メディアによると、大学生はデモにも複数回参加していたという。

 

タイ当局は、ワチラロンコン国王の意向で2年以上不敬罪の適用を停止していたが、反体制活動を抑え込むため、方針を転換した。

 

逮捕されたのは21歳の男子大学生で、バンコク近郊のパトゥムタニ県で10日、道路脇に掲げられていた王族の肖像画にスプレーで抗議の言葉を書き込んだとされる。男子大学生は14日に一時保釈され、報道陣に「どんな脅しがあっても、政府と闘い続ける」と話した。

 

不敬罪は有罪になれば、最長15年の禁錮刑が科される。当局は2020年7月からの反体制デモ激化を受けて不敬罪の適用再開を示唆。11月下旬からデモ隊40人以上に出頭を命じるなど、捜査を本格化させていた。

 

政府は、新型コロナウイルスの再拡大を受けて12月下旬に集会の開催を禁止。デモ隊は最近、歩道橋や商業施設に「不敬罪の廃止を」などと記した垂れ幕を設置するなどの活動を続けている。【1月15日 毎日】

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****王室批判をネット投稿し不敬罪 タイの女性、禁錮43年****

タイの首都バンコクの刑事裁判所は19日、王室を批判する内容をユーチューブなどに繰り返し投稿したとして、元公務員の60代の女性に対し、不敬罪で禁錮43年6カ月を言い渡した。弁護士団体によると、不敬罪の量刑としてこれまでで最も重いという。

 

タイでは昨年来、不敬罪の廃止など王室改革を求めるデモが続いており、反発がさらに強まりそうだ。

 

弁護士団体や地元メディアによると、女性は別の人がつくった王室に批判的な内容の音声などをユーチューブやフェイスブックに投稿し、軍事政権下の2015年に逮捕された。

 

裁判所は29件を有罪と認定し、1件につき3年、計87年の禁錮刑を宣告した後、女性が罪を認めたことを理由に量刑を半分に減らした。【1月19日 朝日】

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政権側は、「学生らの訴えは広がりに欠ける」状況で、力での封じ込めを選択したようです。

 

学生らの訴えがどこまで国民に広がっているかを検証するものとして注目された昨年12月20日に投開票された地方選で、反体制デモに参加する若者から人気が高い民主派野党系団体が支持した42県の首長候補は全敗。52県に擁立した1000人超の議員候補も、当選は18県の55人にとどまりました。

 

運動の中核を担った解党された野党・新未来党のタナトーン元党首は選挙後の会見で「支援者におわびする。王室改革を掲げていることを不快に思う人がいるのは否定できない」と謝罪することにも。

 

【矛先はタナトーン氏にも】

こうした状況を受けて、政権側の矛先は一気に野党勢力の「中核」であるタナトーン氏に及んでいます。

 

****不敬罪で元野党党首告発=ワクチン政策に疑問呈す―タイ****

タイ政府は20日、解党された野党・新未来党のタナトーン元党首が新型コロナウイルスワクチンに関する発言で王室の名誉を傷つけたとして、不敬罪などの疑いで告発した。不敬罪で有罪の場合、最高で禁錮15年が科される。

 

タイ政府は英製薬大手アストラゼネカとの間で、ワチラロンコン国王が株主の医薬品製造大手サイアム・バイオサイエンスが技術供与を受け、ワクチンを生産することで合意。タナトーン氏はサイアム社の選定に疑問を呈した。

政府高官は「タナトーン氏は事実をねじ曲げている」と告発の理由を説明。

 

東南アジア諸国連合(ASEAN)人権議員連盟は「あらゆる批判を抑え込むため、不敬罪を武器として利用した新たな実例だ」と告発を非難する声明を出した。【1月20日 時事】 

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政権側の「不敬罪を使った力による封じ込め」が奏功するのか、あるいは、そうした強硬策が不満爆発を招くのか・・・現段階では政権側ペースで推移しているようにも見えます。

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スーダン  表に出ない新型コロナ禍の実情 民主化の道を歩み始めた暫定政権に多くの試練・不安も

2021-01-19 22:57:14 | アフリカ

(スーダンの首都ハルツームで、自由や民主化を求めてデモをする女性たち=2019年4月24日【1月16日 論座】)

 

【富裕国のワクチン独占にテドロスWHO事務局長怒る】

中国寄り云々の批判もあるWHOのテドロス事務局長ですが、「率直に言わせてもらう。世界は破滅的なモラル崩壊寸前にある。そしてその代償として払われるのが、世界の最貧困諸国の人々の命と生活になるだろう」と、先進国・製薬会社の現状に強い不満を表明しています。

 

****ワクチンの公平な分配「失敗の危機」 WHO事務局長*****

先進国を中心に新型コロナウイルスのワクチン接種が進む現状について、世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム事務局長は18日、途上国との間で分配の不平等が起きていると懸念を示した。

 

「世界は悲惨な道徳的失敗の危機に瀕(ひん)している」として、先進国や製薬企業に公平なアクセスへの貢献を求めた。

 

この日始まったWHOの執行理事会であいさつしたテドロス氏は、WHOなどが主導する、ワクチンを共同調達して途上国にも公平に分配する枠組み「COVAX(コバックス)ファシリティー」で20億回分を確保できるめどが付き、2月からワクチンの供給を始められる見通しだとした。

 

一方、一部の先進国は自国分をまず確保するために製薬会社との二国間の取引を進め、ワクチン価格を押し上げている、と苦言を呈した。

 

また、これまでに少なくとも49の高所得国で計3900万回分以上のワクチンが投与された一方、アフリカのギニアを想定して「最低所得国での投与はたったの25回だ」とも指摘した。

 

テドロス氏は「豊かな国の若くて健康な成人が、貧しい国の医療従事者や高齢者より先に接種を受けるのは正しくない」と語った。

 

公平なアクセスを確保するため、先進国に対し、製薬会社から直接購入するワクチンの価格や数量、納期といった情報を公開することや、自国内の医療従事者や高齢者への接種が終わったら残りのワクチンはCOVAXと分け合うことなどを求めた。

 

製薬会社に対しても、途上国での利用を前提にした審査を速く進めるため、ワクチンの安全性や効果についてのデータをWHOに速やかに提出するよう求めた。【1月19日 朝日】

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WHO事務局長として、しごくもっともな怒りでしょう。

 

欧米や中国・ロシアなどの新型コロナ感染状況は、その危機的な様子などが頻繁に報じられていますが、途上国についてはほとんど報じられることもありません。

 

アフリカなどの途上国では新型コロナは猛威をふるっていないのでしょうか?

そんなことはなく、ニュース価値のない途上国の状況に関心が持たれていないだけであり、更に言えば、当該国自身が自国内の感染状況を正確に把握していない、あるいは公表していない・・・といった状況のようです。

 

【スーダン 確認された死者は実際の2%】

下記はアフリカ・スーダンの状況で、報告された死者数は実際の2%に過ぎないとのことです。

 

****民主化途上のスーダン暫定政権にコロナが追い打ち****

確認された死者は実際の2%? 危機的な公衆衛生と経済状況

 

スーダンでは2019年4月に、30年間続いた軍事政権を率いていたバシール大統領が失脚し、同7月に軍と民間人・文民委員会が共同で統治する暫定政権が発足した。しかし、長引く戦争・紛争の中で経済、医療が荒廃しているところへ、昨春、コロナ禍が襲い、民主化プロセスは試練を迎えている。

 

3月初めに最初のコロナ感染者が確認された後、中旬からスーダン政府は、すべての学校、大学を閉鎖し、礼拝や集会、行事を禁止した。3月下旬からは午後8時から午前6時までの外出禁止令を発出した。

 

人道物資・貨物便以外の国際線、国内線も停止し、さらに国内で県をまたぐバス移動を禁止するなどの措置をとった。当初の規制は1カ月間の予定だったが、さらに延長され、7月に一部緩和されたものの、外出規制が解除されたのは9月だった。

 

新型コロナの感染状況は、1月14日時点で世界保健機関(WHO)に報告された確認陽性者が2万5730人、死者は1576人。人口4380万にしては非常に少ない数字になっている。

 

しかし、英国のインペリアル・カレッジ・ロンドンのコロナ研究チームが2020年12月1日に出した報告書では、4月から9月までに報告された死者は実際の2%であると推計した。

 

さらに、11月20日の時点で、報告されなかったコロナによる死者は「1万6090人」だという。その時点で公式に発表された死者は「1193人」であり、実際にはその13倍の死者がいるという推定になる。

 

国連の資料によると、スーダンは全国で7カ所のPCR検査センターを設立し、1日に800件の検査をしている。7月初めまでに計約1万8000件のテストを行ったが、そのころの陽性者は約9700人で、陽性率は54%という極端に高い数字だった。これは感染者の増加に対して、PCR検査が追い付いていないということである。

 

国連人道問題調整事務所(UNOCHA)の2020年12月の資料によると、スーダンでは自宅から2時間以内で医療機関に行くことができない人口が、全国民の約81%いるという。

 

首都ハルツームだけでも医療機関の半分が医師不足や資金不足などで閉鎖になった。WHOによると、集中治療室(ICU)は全土で184床しかなく、そのうち人工呼吸器を備えているのは160床という。ICU専門の医師は、ハルツームに3人、地方に1人の計4人しかいない。

 

コロナ感染を防止する公衆衛生もひどい状況で、人口の63%は安全な水や下水道など基本的な衛生環境にない。

また、23%は手を洗う石鹸や水が家になく、40%は飲料水がないという。

 

さらに200万人近い国内避難民と、周辺国のエリトリアや南スーダン、エチオピアから来ている110万人の難民は、過密な集団生活を強いられ、感染リスクが極めて高くなっている。

 

世界銀行によると、国際的な貧困の基準である収入が1日1.9ドル以下の割合が16.2%いる。人道支援を必要としているのは930万人で、コロナの蔓延によって、それが960万人に増加したという。(後略)【1月16日 川上泰徳氏 論座】

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先進国では「医療崩壊」の危機が叫ばれていますが、スーダンのような国では、そもそも十分な医療設備が存在しておらず、しかも、衛生環境は非常に悪い・・・そういう状況で先進国同様に感染が拡大すれば、結果はおのずと推測でします。

 

テドロスWHO事務局長の怒りも、そういう現状を憂えてのことです。

 

【民主化への道を歩み始めた暫定政権 経済状況や軍との関係で不安定要素も】

スーダンの政治情勢などについては、2020年10月5日ブログ“スーダン ダルフール紛争の和平合意調印 「テロ支援国家」指定の解除のために米が求めるものは”でも取り上げました。

 

バシル独裁政権の崩壊、民主化へのあゆみ、ダルフール紛争の終結、アメリカ・トランプ政権の「取引」によるテロ支援国家指定解除等々。

 

上記の貧弱な医療状況は、こうしたスーダンの多難な政治状況の結果でもあります。

 

昨年8月に、バシル前大統領を失脚させた軍の暫定軍事評議会(TMC)と反政府デモを組織してきた市民組織連合「自由と変化宣言」(DFC)が軍民共同の暫定政府樹立で合意し、2022年までに民政移管することが決まりました。

 

この合意を受けて、経済学者で国連出身の文民ハムドク氏を首相とするテクノクラート内閣が発足しています。

 

今後については、民主化の道をあゆみ始めたことへの期待もありますが、新型コロナ禍の試練に加え、厳しい経済状況や軍との関係などで不安定な要素もあります。

 

****暫定政権の中で、軍と文民が対立****

暫定政府にとって2020年-21年は民主化の成否がかかる重大な時期であるが、いきなりコロナ禍の試練を受けることになった。政府のコロナ対応については、PCR検査の不足や医療施設の不備など根本的な問題はある。

 

だが、2020年5月末、アラブ世界の民主化を支援するサイト「アラブ改革イニシアティブ」でスーダンの公衆衛生専門家は、「スーダンで初めて保健省が国民に真実を語る政府ができた。保健省は毎日、コロナ情報を公表し、重要なことは大臣が国民に訴えている。国民も政府の対応に協力している」と書いている。

 

さらに、外出禁止や政治集会を規制する対策についても「市民革命を進めようとする勢力は政府の都市封鎖や社会的距離をとる政策に協力している」としている。

 

感染が始まった2020年3月に医療関係者や技師、市民が「コロナ撲滅スーダン・プラットフォーム」(SPCC)を組織し、保健省と協力して、コロナ対策の市民啓蒙や募金運動などをするような、市民から政府に関わる動きが出てきたことも紹介している。

 

この寄稿を読むと、コロナ禍の前に独裁体制が倒れて、市民勢力が参加する暫定政府ができたことで、コロナ危機と政治危機が重なる最悪の事態が避けられたことが分かる。

 

しかし、感染対策としての経済活動の規制もあり、経済危機は進行した。通貨の下落と、食料や燃料の不足で物価は高騰し、スーダン中央統計局によると、2020年10月のインフレ率は前年同月比で229.85%増、11月は254.23%増という危機的状状況となっている。

 

ニュースサイト「アイン」の11月中旬の記事によると、暫定政府は10月末にガソリンやディーゼル油への補助金を削減し、価格がほぼ2倍になったという。

 

記事ではガソリンなどの値上げは2020年度予算で予定されていたが、コロナ禍によって延期されていたという。補助金削減は財政赤字を減らすための経済改革を求める国際通貨基金(IMF)の助言によるものという経済専門家の見方が出ている。

 

ただし、市民組織連合(FFC)は補助金削減に反対する声明を出し、「市民生活への影響を考慮し、第一に経済の安定化を達成すべきだ」と求めた。補助金削減による燃料値上げがバシール政権崩壊のきっかけとなる民衆デモの引き金になったことを考えれば、今後、経済的な苦境の中で暫定政権に対する民衆の不満が高まる可能性もある。

 

さらに暫定政権の中で、軍と文民の対立がある。FFCの中にはバシール体制を支えた軍が政権にそのまま残っていることに強い批判があるとされる。

 

暫定軍事評議会のブルハン議長は2020年2月にウガンダでイスラエルのネタニヤフ首相と会談し、国交正常化に向けて話し合いを始めることで合意したと発表した。

 

当時、FFCは「何も相談を受けていない。イスラエルへの方針変更は国民の決定でなければならない」とする声明を出し、「パレスチナ独立国家の樹立を支持する」としていた。

 

この会談を仲介したのはスーダンの主要な財政支援国であるアラブ首長国連邦(UAE)とされ、UAEは8月にイスラエルとの国交正常化を発表した。

 

そして10月下旬、スーダンは米国の仲介でイスラエルとの国交正常化に合意したが、この時も軍民の亀裂が見えた。国交正常化に前のめりの軍に対して、FFCの主要勢力の中にも合意への反対の声が強く、ハムドク首相自身も「暫定政府には国交正常化を決断する権能はない」として難色を示していた。

 

しかし、大統領選挙を前に外交得点をあげようとするトランプ大統領の圧力と、UAEの強い働きかけを受けて、国内のコンセンサスができないまま押し切られた形だ。

 

アラブ世界ではUAEやサウジアラビア、さらに軍主導政権の隣国エジプトが、ブルハン議長を支援し、スーダンでの民主化プロセスが進むことを望んでいないとされる。コロナ禍が2021年も続き、さらに経済危機が進めば、軍が危機に乗じて民主化プロセスを反故にする懸念さえ出てくる。【同上】

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【ダルフールで再び大規模な部族間衝突 死者130人】

更に、昨年10月に和平合意が調印され、国連PKOも終了したダルフールで、再び大規模な部族間衝突が報じられています。

 

****PKO終了したスーダン・ダルフールで戦闘、2日で83人死亡****

情勢が不安定なスーダン西部ダルフールで戦闘が続いており、16日からの2日間で83人が死亡、160人が負傷した。地元医療従事者の団体CCSDが17日、明らかにした。同地域では、長年続いた平和維持活動が2週間前に終了したばかり。

 

今回の戦闘は、スーダン暫定政府と反政府勢力が和平合意に調印した昨年10月以降に報告された中で最も激しい。この和平合意によって、広大な西部地域が武器のあふれる場所と化した長年の内戦に終止符が打たれると期待されていた。

 

戦闘では、西ダルフール州の州都エルジュネイナのアラブ系住民と非アラブ系の部族間で対立が起きているとみられる。地域的な紛争がより規模の大きな戦闘に発展したと報告されている。

 

国営スーダン通信はCCSDの話として、戦闘が続いているため死傷者が増える可能性があると報じた。

 

スーダン当局は、西ダルフール州全域に夜間外出禁止令を出しており、政府は状況を封じ込めるため、代表団を現地に派遣した。 【1月18日 AFP】

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“隣接する南ダルフール州でも18日、対立する部族の衝突で47人が死亡した”【1月19日 時事】とも。

 

合計で死者は130人・・・こうした戦闘が現在のスーダンにとってどれだけの問題なのかはわかりませんが、このまま戦闘が繰り返されることになると、軍部の発言力が増すこともあって、暫定政権の民主化への道は更に険しくなりそうです。

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中米ホンジュラスからアメリカを目指す移民キャラバン

2021-01-18 23:21:40 | 難民・移民

(17日、グアテマラ東部バド・オンドで、治安部隊と衝突するホンジュラスの移民集団【1月18日 読売】)

 

【グアテマラ当局は力で阻止する姿勢】

過激なトランプ支持者による妨害の懸念など、いろいろゴタゴタしているアメリカの政権交代ですが、気になる動きは国外からも。

 

これまでもたびたび中南米からの移民キャラバンがアメリカを目指して話題にもなりましたが、トランプ大統領と比べると移民に寛容とされるバイデン新大統領、その政権交代に合わせて再び大規模なキャラバンがホンジュラスからアメリカを目指していると報じられいます。

 

いくら寛容とは言え、このコロナ禍の時期に大量の移民を受け入れることはバイデン大統領としてもできないでしょうから、キャラバンが実際に国境に到達すれば就任早々に国境で混乱が生じ、厳しい対応を求める共和党との間で、また、対応に温度差がある民主党内部でも、移民問題が大きな争点となることが予想されます。

 

最近では、大統領選挙前の昨年10月にもホンジュラスからキャラバンが組織され、投票まで1カ月となったこの時期に不法移民問題に注目が集まれば、移民制限を唱えるトランプ大統領に有利に働く可能性があるということで、「米大統領選と関係していると信じる」(メキシコのロペスオブラドール大統領)とも言われました。

 

このときは、グアテマラのジャマテイ大統領が「公衆衛生の緊急事態のさなか、彼ら(キャラバン)は入国手続きだけでなく、わが国民を守るための衛生措置にも違反した」として、キャラバン(3000人規模)の多くを強制送還する形で阻止しました。

 

今回も、「政治的なもの」が関与しているのか・・・そこらの背景はわかりません。

 

****グアテマラ入りのホンジュラス移民、9000人に メキシコ経由で米目指す****

ホンジュラスから米国を目指す移民集団(キャラバン)の少なくとも9000人が、グアテマラ入りを果たしたことが分かった。15日夜に第一陣が国境警察を押しのけて入国した後、他の移民らもすぐにそれに続いたという。当局が16日、明らかにした。

 

貧困や失業、ギャングや麻薬組織による暴力の他、昨年11月に上陸したハリケーンなどの被害から逃れるようと、多くの移民らは数千キロもの距離を歩いてメキシコ経由で米国を目指そうとしている。

 

現地のAFP特派員によると、男性、女性、子どもたちを含む第一陣は15日、グアテマラ国境沿いの町エルフロリドで警察を押しのけて進んだ。

 

グアテマラ当局によると、第一陣はおおよそ6000人だった。16日には新たに3000人がグアテマラ入りしたという。

 

グアテマラ政府はこれについて、国家主権の侵害だと非難。ホンジュラスに対し「国民の大規模な出国を抑える」よう求めた。

 

国境警備隊は移民らに対し、身分証明書の他、新型コロナウイルス検査の陰性証明書の提示を要求しているが、それらの要求に応じていない多くの人を通過させたとみられる。 【1月17日 AFP】

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グアテマラ治安当局は15日以降、国境でメンバー約1000人を拘束し、ホンジュラスへ送還しましたが、当局側の制止を振り切って入国した7000〜8000人が移動を続けているとみられます。

 

感染拡大を懸念して解散させたいグアテマラ現地当局と強行突破を図るキャラバンとの衝突が起き、混乱が広がっているようです。

 

****グアテマラ、移民集団に催涙ガス コロナ理由に取り締まり****

グアテマラでは17日、徒歩で米国を目指すホンジュラスの移民集団(キャラバン)数千人に対して警察が催涙ガスを使用し、バリケードを突破しようとする移民らを兵士らが押し返した。現場のAFP記者が目撃した。

 

ホンジュラス国境に近いグアテマラ南東部の町バドオンドでは、治安部隊が路上でキャラバンを包囲。

 

催涙ガスや発煙筒の爆発音が耳をつんざくように響き渡る中、多くの移民たちは後退。次の機会をうかがって付近で待機する人や、近くの山に逃げた人もいた。

匿名で取材に応じた地元の保健当局によると、複数の移民が負傷したという。

 

新型コロナウイルスの感染拡大を防止するという名目で、治安部隊は誰も通過させるなと厳しく命令されている。(後略)【1月18日 AFP】

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“移民集団の一部が取り締まりの突破をはかったため、治安部隊が棒でたたくなどして押し戻した”【1月18日 読売】など、阻止しようとするグアテマラ治安当局の対応も強硬なようです。

 

“グアテマラ政府は、バイデン次期政権からの経済援助を期待して、関係を損ないたくないと考えている”【12月14日 WSJ】とも。

 

アメリカ現政権がどういう対応をしているのかは知りませんが、“メキシコ当局は新型コロナウイルス感染拡大防止の観点からもキャラバンを北進させないよう中米諸国に要請している。”【1月18日 共同】ということもありますので、このままメキシコを北上して・・・というのは難しいでしょう。

 

【ギャングや麻薬組織による暴力 貧困・失業とも連動】

“子供と共に集団に参加した男性は地元メディアの取材に「仕事もなく、治安も悪い。ホンジュラスで生活を続けるのは難しい」とこぼした。”【1月15日 日経】

 

TVニュースでも「ホンジュラスに残っても死ぬだけだ」と語るキャラバン参加者も。

 

ホンジュラスの人々が命がけでアメリカを目指す大きな理由は、マラスと呼ばれるギャングや麻薬組織による暴力の横行です。

 

マラスの二大組織のひとつ「マラ・サルバトルチャ」(通称MS-13)については、下記のようにも。

もともとはエルサルバドル系でしたが、状況はエルサルバドルもホンジュラスも同じようなもので、現在はMS-13のメンバーはホンジュラスの方が多いようです。

 

****なぜエルサルバドルの人々は米国への逃亡を選ぶのか****

北へ向かう人の波は今なお止まず

 

中米のエルサルバドルで、暴力が日常化している。長く続いた内戦で噴出した社会の対立が、いまだに尾を引いているのだ。

 

1980年、貧困層から土地を奪ってきたエリート層と軍事政権に対し、極左ゲリラが蜂起した。泥沼化した内戦が1992年に終結するまでに、死者は7万5000人、家を失った人は100万人を超え、数十万人が米国へ逃げた。彼らは全米各地で職を見つけ、横のつながりをつくり、本国に送金した。

 

そんな移民の子どもたちが、ロサンゼルスで犯罪組織マラ・サルバトルチャ、通称MS-13を結成した。すでにあったライバルのバリオ18に入る者も多かった。

 

組織間の抗争はしだいに激化。警察の取り締まりも厳しくなった。ついには法律が改正され、犯罪歴をもつ移民の国外退去処分が容易になると、1990年代後半には、中米に送り返される犯罪者は年間数千人にのぼった。

 

すると彼らは、政府の力が弱く、貧困も深刻な本国の状況につけ込み、独自の社会と規則をつくって、組織を急速に広げていった。

 

殺人発生率は人口10万人当たり61人

エルサルバドル政府によると、こうした犯罪組織に関わる人間は推定で6万人。組織間の覇権争いは、人口640万人の小さな国に深い亀裂を生み、分断は広がるばかりだ。2017年の殺人発生率は、人口10万人当たり61人にのぼっている。

 

過激な暴力と貧困に絶望し、エルサルバドルをはじめ中米諸国から米国へ逃げ出す者が続出した。そこでは何世代も前から中米の人々が移住し、犯罪に関わることなく、尊厳をもって暮らせる安全な社会を築いていたからだ。しかし、あまりに移民の流入が続くことから、米国政府は今、エルサルバドル人の大量送還をちらつかせている。

 

現在、米国内では約20万人のエルサルバドル人に一時保護資格(TPS)が与えられている。武力衝突や大規模な自然災害で、本国に戻ると危険がある場合、ビザがなくても滞在が許されるというものだ。

 

2018年1月、米国政府は19年9月をもってエルサルバドル人のTPSを打ち切ると発表したが、これに米連邦地方裁判所が待ったをかけた。最終決定までは米国で生活し、仕事ができるという仮処分命令が下ると、メキシコとの国境付近には大量の移民が押し寄せた。

 

ドナルド・トランプ大統領の「不寛容」移民政策により、南西部の国境で移民の家族がばらばらになって拘留されるケースも増えた。

 

だが、犯罪組織による敵対組織や当局との終わりのない報復合戦のあおりを受け、北へ向かう人の波は止まらない。

 

エルサルバドルだけでなく、グアテマラやホンジュラスも同様だ。2018年秋には、中米諸国から5000人を超すキャラバンが米国に向けて移動を始め、この問題は再び世界の注目を集めた。【2019年3月2日 NATIONAL GEOGRAPHIC】

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「ギャングや麻薬組織による暴力」と「貧困・失業」は連動しています。

 

****世界屈指の犯罪都市~ホンジュラスの首都テグシガルパ****

世界の治安が悪い国ランキングなどを見ると、毎年必ず上位になってしまうホンジュラス。(中略)

 

中米のホンジュラス

ホンジュラスは、中米の中央に位置し、東はカリブ海、南は太平洋に面する山の多い国です。ニカラグアに次いで中米諸国2番目に広い国土を有しています。

 

熱帯気候に属していますが、ホンジュラスの国土80%は山岳地帯のため、低地沿岸部以外は一年を通じて過ごしやすい気候です。

 

ホンジュラスと言えば、世界遺産に登録されているマヤ文明、コパン遺跡が有名です。グアテマラのティカル、ベリーズのカラコル、メキシコのパレンケ、カラクムルなどと同様にマヤ時代に大きく繁栄した王家を有す大都市でした。特にコパンは屈強なマヤ戦士が多く、文明末期は都市間との諍いが絶えなかったとか。

 

世界の危険な国ランキングで常に上位

殺人発生率の高さで、毎年世界のトップ争いに名を連ねるホンジュラスは、年間、日本の200倍の殺人が起きる治安の悪い国です。

 

中米で有名なマラ・サルバトゥチャ13(以降、マラス)という若者を中心としたギャングは、ここホンジュラスでも幅を利かせており、政府も警察も手を焼いている状況です。

 

この組織は、メキシコ系ギャングに対抗するため、エルサルバドル内戦から逃れた元警察官や兵士らが集まり構成されました。その後、米国の移民排除の法律が成立し、強制送還されたホンジュラス帰国民が加わり、犯罪組織として成長してしまいました。

 

ホンジュラスは、目立った産業もなく社会的基盤が脆弱です。中米で最も貧しい国といわれており、失業者も多く、国民の半数以上が極貧生活を強いられています。

 

貧困家庭は崩壊を招きやすく、子供たちは離婚した両親のどちらにも着けない状況となったり、両親や片親が殺害されたりなどで住む家を失い、路上生活を強いられます。

 

マラスは、これらの子供たちをギャングの構成員として雇い入れ、犯罪者として育て上げていくのです。親を失い、帰る家のなくなった子供たちにとっては、マラスこそが家族なのでしょう。

 

このように、国政の不安定さがギャングを増やし治安を悪化させ、さらなる貧困を招くという悪循環で、ホンジュラスにいるマラスの構成員は現在3万人以上まで膨れ上がっています。

 

彼らは、麻薬売買、誘拐、強盗、窃盗、恐喝、殺人、バスジャック、みかじめ料のゆすりなど、ありとあらゆる犯罪を行います。歯向かえばその場で殺され、警察に通報すれば家族ごと報復に遭うため、被害者は泣き寝入りするしかありません。

 

殺人事件で逮捕されるマラスは後を絶たず、ホンジュラス国内の刑務所はどこもパンク状態なのだとか。

そんなパンパンな刑務所内でもマラスは活発で、度々殺人や不審火による火災が起きます。2019年の暮れにも36人が殺害される事件が起きたばかり。2012年に起きた火災では、357人の受刑者が亡くなっています。(後略)【2020年4月24日 toshel氏 trip note】

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なお、コロナ禍と合わせて、ハリケーンによる生活苦も大きく影響しているようです。

 

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国連によると、巨大ハリケーン「イータ」と「イオタ」により、ホンジュラスでは推定300万人、グアテマラでは100万人近くが被災した。

 

豪雨や洪水、地滑りで家屋は倒壊し、道路は寸断されるなど、コロナ禍ですでに大きく落ち込んでいた経済に壊滅的な打撃をもたらした。

 

国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会によると、ホンジュラスは今年、8%のマイナス成長になると予想されている。【12月14日 WSJ】

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【今後も続く移民圧力】

今回のキャラバンはともかく、こうした状況は今後も大きく変わることもありませんので、バイデン新政権は今後も中南米からの移民圧力に苦慮しそうです。

 

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移民集団だけでなく、米国境での不法移民の拘束も増えている。

 

米国土安全保障省によると、メキシコ国境に近い米南西部での20年12月の不法移民の取り締まり数は7万3513人となった。20年で最も多く、最小だった4月の4.3倍に相当する。

 

新型コロナの感染は引き続き深刻だが、バイデン政権の発足後をにらみながら、米国を目指す移民の動きは一段と活発となる可能性がある。【1月15日 日経】

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中国  巨大ネット企業への管理を強化する習近平指導部 「消息不明」?アリババ創業者の馬雲氏

2021-01-17 23:25:03 | 中国

(【1月14日 東洋経済online】 「消息不明」とも言われているアリババ創業者の馬雲(ジャックーマー)氏)

 

【中国依存を強める世界経済】

中国の政治体制への評価は別として、中国経済が新型コロナ禍に苦しむ世界経済を尻目にいち早く回復し、将来に向けて一段とその存在感を大きくしていることは、1月13日ブログ“中国  コロナパンデミックで「GDP世界最大」への道を加速 ワクチン外交で信頼獲得も目指す”でも取り上げたばかりです。

 

新型コロナを一定に制御した感のある中国は、これまでの予想より5年早く、2028年にはGDPでアメリカを追い抜く・・・・との調査結果がイギリスの民間調査機関から発表されたことも、そのなかで紹介しました。

 

****中国経済の復活鮮明、欧米の足踏み尻目に快走****

中国は昨年、世界の主要国で唯一プラス成長を確保したと見られている

 

新型コロナウイルス禍に揺れた2020年、中国経済は多くの面で年初頭よりも力強さを増して終えた。米国が長らく君臨してきた世界経済の頂点に向け、中国はその歩みを加速させている。

 

中国は昨年、世界の主要国で唯一プラス成長を確保したと見られている。欧米諸国の経済がコロナから完全復活するのはワクチン普及後になる公算が大きい中、中国は確実に米国との差を縮めた。

 

中国は国際貿易での役割を拡大し、世界の工場としての地位も強化した。米国が数年にわたり、中国以外に資金を投じるよう企業に働きかけているにもかかわらずだ。

 

中国の個人消費も、コロナ禍からの早期回復を追い風に復調が続いており、世界的に企業利益のけん引役となっている。

 

中国はまた、国際金融拠点としての地位も固めた。20年には新規株式公開(IPO)や重複上場が記録的な活況を呈し、巨額の資金が流入した。

 

世界経済は成長エンジンとして、中国への依存をかつてないほど強めている。ムーディーズ・アナリティックスによると、20年の世界GDPに中国が占める比率(インフレ調整後)は推定16.8%。米中が貿易戦争に突入する前だった16年の14.2%から大きく上昇している。米国の比率は22.2%と、16年の22.3%からほぼ変わらずだ。

 

世界GDPに占める中国の比率は前年比では1.1ポイントの上昇で、年間の伸びとしては少なくとも1970年代以来の大きさだ。

 

中国は18日に10-12月期(第4四半期)のGDP統計を公表する予定で、中国経済の台頭を裏付けそうだ。

 

こうした実績は、中国がコロナ封じ込めと企業の稼働再開を成功させたことの証しでもある。中国が実施した景気刺激策は、工場の稼働再開と小規模事業の破綻回避に特化し、消費者へ直接的な支援はほとんど行わなかった。また、対GDP比でみた規模は米国を下回る。

 

だが、中国のこうした戦略は奏功した。景気が低迷する中でも、米国の個人消費が非常に活発だったためだ。これが昨年を通じて、中国の雇用と個人消費を支えた。

 

コロナ禍による混乱で、サプライチェーン(供給網)の多角化が求められる中でも、外資系企業が中国から生産拠点をなかなか移転できないことも、中国には恩恵となった。

 

企業にとっては、他のサプライヤーの多くが近隣に位置しているため、供給網全体を失うことによる影響を考慮する必要がある。また、いかに中国が頼りになる存在だったかを、生産拠点の移転で認識するような事態も避けたいところだ。

 

HSBCホールディングスが世界の企業1100社余りを対象に行った11月の調査によると、75%の企業(米企業の70%を含む)が向こう2年に中国で供給網を拡大するとの見方を示した。

 

中国以外の国・地域にとっては、中国の成功はもろ刃の剣だろう。資源や自動車、高級品などを中国向けに販売する企業にとっては、他の国や地域での売上高が落ち込む中で、中国の需要は天の恵みのような存在だ。

 

中国経済が再び勢いを盛り返していることで、企業は結果的に中国傾斜を強めているが、中国指導部は国内企業の育成を優先し、外資依存を低減させる方針を明言している。

 

トランプ政権が対中関税を発動したのは、世界経済の不均衡是正と米中間の公正な競争環境を確保することが狙いだった。

 

しかし、調査会社キャピタル・エコノミクスによると、中国は20年、世界のどの国でも前例のない、史上最大の経常黒字を計上する見通しだ。

 

ただ中国も、高齢化や人件費高騰など、引き続き大きな課題に直面する。足元で国有企業のデフォルト(債務不履行)が相次いでいることで、長年くすぶっている過剰債務の懸念も再び高まっている。また今年、世界全体で景気が回復に向かえば、中国製造業の勢いは後退するかもしれない。

 

国家主導の経済モデルは、中国の将来に極めて重要だとされる民間部門の技術革新を抑制するとの指摘も聞かれる。

 

だが、コロナ流行以降も、中国経済は底堅さを維持しており、中国指導部は、とりわけ危機時においては、西側の民主主義的な資本主義よりも自国モデルの方が信頼できるとの確信を強めている。

 

それでも、米国は経済規模で依然世界トップだ。世界最大の消費者市場を抱え、生活の質もはるかに高い。重要度で人民元をはるかにしのぐドルという基軸通貨も有する。米国のGDPは中国を50%上回る。

 

一方で、米国は極度の政治的な緊張に見舞われている。一部の予想によると、今年の米成長率は3~4%程度で、下期まで19年の水準には戻らない見通しだ。

 

これに対し、モルガン・スタンレーの推計では、中国の今年の成長率は最大9%と見込まれている。

 

エコノミストはこれまで、人件費の高騰や債務の積み上がり、生産性の低下が世界の工場としての地位を脅かすと警告してきた。貿易戦争や関税引き上げも、中国の優位性を弱めた。

 

しかし、世界の財輸出に占める中国の割合はなお伸びている。入手可能な直近データである11月は15.4%で、コロナの影響が表面化する前である2019年終盤の13.7%から上昇している(オックスフォード・エコノミクス調べ)。

 

背景には、中国がパンデミック(世界的大流行)で需要が急増したマスクなど個人用防護具(PPE)や人工呼吸器の輸出へと素早くかじを切ったことがある。

 

中国は強力に介入してコロナを封じ込め、事業の稼働継続を後押しした。国の大部分を閉鎖し、長期にわたり外出を禁じるなど、自由な民主国家では実施が難しい措置を強行した。

 

また、国有銀行に対して、打撃を受けた企業や家計の債務返済を猶予するとともに、小規模事業に通常よりも低利で融資するよう指示。地方当局は工場主に対して、安全対策で厳格な基準を満たすよう義務づけた。

 

広東省・仏山など地方政府の多くは、コロナ感染が落ち着くと、シャトルバスを派遣して、足止めに遭っていた出稼ぎ労働者を工場に復帰させた。

 

また昨年には、中国に多額の資金が流入。国内金融拠点の構築という重要な長期目標に向かって弾みをつけた。リフィニティブによると、香港を含む中国市場は、世界の新規株式公開(IPO)の43%を占めた。(後略)【1月14日 WSJ】

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これまで、日本国内では「中国経済崩壊」が繰り返し主張され、その成長の限界も指摘されて、アメリカ・トランプ政権が「貿易戦争」を仕掛けたにもかかわらず、すくなくとも現時点では、世界経済はこれまで以上に中国経済依存を強めており、「中国指導部は、とりわけ危機時においては、西側の民主主義的な資本主義よりも自国モデルの方が信頼できるとの確信を強めている」という状況です。

 

【アリババなど巨大ネット企業への管理を強化する習近平指導部】

そうしたなかで、上記記事でも将来的懸念事項としてあげられている「国家主導の経済モデルは、中国の将来に極めて重要だとされる民間部門の技術革新を抑制するとの指摘も聞かれる。」ということにも関係することですが、習近平指導部は経済や社会で存在感を増す民間巨大ネット企業への管理を強化していると指摘されています。

 

****中国当局、独占行為の疑いでアリババ立件へ調査 習指導部が巨大ネット企業の管理強化****

中国当局は24日、中国インターネット通販最大手のアリババ集団について、立件に向けて調査を始めたと発表した。ネット通販市場で独占行為があった疑い。同社の傘下企業に指導を行うことも同日表明しており、習近平指導部はアリババなど巨大ネット企業への統制を一気に強めている。

 

国家市場監督管理総局の発表によると、アリババは自社の通販サイトで商品を販売する業者に対し、競合他社のサイトに出店しないよう迫る「二者択一」などを行った疑いがある。アリババは同日、「積極的に調査に協力する。現時点で業務はすべて正常に行われている」との声明を出した。

 

中国人民銀行(中央銀行)なども同日、アリババ傘下で電子決済サービス「支付宝(アリペイ)」を運営する「アント・グループ」に対し、「公平な競争や消費者の合法的な権益の保護」などの観点から近く指導を行うと発表。中国当局によるアリババへの圧力が一気に高まっている。

 

中国共産党と政府が今月中旬に開いた来年の経済政策の基本方針を策定する重要会議では、国内ネット企業に対する規制強化を進める方針を表明している。

 

習指導部は、中国の経済や社会で存在感を増す国内の巨大ネット企業への警戒を強めている。11月には、ネット企業の独占的な行為を規制する新たな指針の草案を発表したほか、アント・グループの幹部らが当局の指導を受けたことをきっかけに株式上場の延期に追い込まれた。

 

中国政府は今月14日には、アリババと騰訊控股(テンセント)のそれぞれの傘下企業などに対し、独占禁止法違反で罰金を科すことを決めている。今後も、巨大ネット企業に対する圧力は、さまざまな形で強まっていくとみられる。【12月24日 産経】

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しかし、習近平指導部が巨大国有企業を強化してきていることを考えれば、「公平な競争や消費者の合法的な権益の保護」云々が「口実」であることは明らかで、共産党のコントロールが及ぼない存在が生まれつつあることへの警戒感からの規制強化と推測されます。

 

****アリババ攻撃は習政権の危険な賭け****

おそらくは正当な動きだった。中国政府が昨年12月、独占禁止法違反の疑いでeコマース(電子商取引)大手アリババの調査に着手した。アリババの市場シェアは明らかに支配的で、独占的慣行が存在する。

 

だがもっと独占的な企業もあるのに、なぜアリババが標的にされているのか。

 

同社の違反行為の1つとされるのが、傘下のフィンテック大手アント・グループの金融サービスの拡大だ。アントが運営する支付宝(アリペイ)は、世界最大の月間アクティブユーザー数約7億3000万人を擁する電子決済アプリのほか、投資や融資サービスも提供する。

 

アントは昨年11月初旬、史上最大となる約350億ドル規模のIPO(新規株式公開)を予定していた。だが直前になって、中国当局はIPOを延期。習近平国家主席直々の指示だったという。

 

習政権は、アントが電子決済分野に専念することを望んでいるようだ。規制当局は今回の決定を正当化する理由を列挙しているが、真の理由はそこにない。

 

電子決済サービスは利益率が低く、国有金融機関はどこも関心を持たない。対照的に、金融サービスは非常に儲けが大きく、既存の国有企業(SOE)の縄張りなのだ。

 

中国共産党が独占や寡占の解消に真剣に取り組むつもりなら、国有企業も標的にするはずだ。ところが、独禁法違反の疑いで調査を始めるどころか、中国政府は最近になって国有企業の「大型合併」を推進し、その市場支配力を増強している。

 

理由は単純だ。国有企業の成功は、共産党にとって経済・政治両面で利益になる。

いわゆる中国的社会主義の「重要材料で政治的基盤」である国有企業を「強く、よりよく、より大いさく」すると、習は昨年4月に明言した。

 

民間企業による国有企業のシェア切り崩しを許せば、主要経済部門の国家による管理体制が必然的に弱体化するだけでなく、民間企業が共産党に挑戦する道を開くことにもなる。アリババは最も成功した(最も革新的な)企業の1つ。習の目には、共産党の政治支配に対する脅威の象徴と映る。

 

政権に取り入り、忠誠を示すべく、中国実業界の大物たちが骨を折ってきたのは確かだ。アリババ創業者の馬雲(ジャックーマー)は共産党に入党し、2013年には1989年の天安門事件について当時の政府は「正しい決断」をしたと発言した。

 

だが、中国の民間部門トップが体制の真のインサイダーになることはない。共産党にとって彼らは単に、党の正当な所有物である富の一時的な管理者だ。

 

馬は昨年10月末以降、公の場から姿を消している。批判派に言わせれば、今回の一件は過去の発言や事業慣行が招いた当然の報いかもしれない。

 

とはいえ、規制当局の追及がアリババで終わる可能性は低い。標的にされているのは民間部門そのものだ。これは中国の経済的繁栄の行方、そして共産党自体にとって重大な意味を持つ。

 

数々の問題はあっても、民間企業は中国経済の最も活力あるプレーヤーだ。民間企業だけを取り締まれば、民間部門の信頼は低下し、中国経済は生産性も革新性も効率性も下がるだろう。GDP成長率が低迷し、繁栄を約束することで成り立ってきた一党支配体制の正統性はむしばまれるはずだ。

 

経済への統制を強化して民間部門を支配すれば、短期的に共産党の政治的安定を強化できるという習政権の判断はたぶん正しい。

 

だが長期的に見れば、「独占禁止」の最大の犠牲者は、規制によって守ろうとしている独占状態、すなわち共産党が握る政治権力そのものかもしれない。【1月19日号 Newsweek日本語版】

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【消息不明とも言われるアリババ創業者の馬雲氏】

消息不明になっているアリババ創業者の馬雲(ジャックーマー)の発言で、特に問題視されているのが昨年10月の発言。

 

*****ジャック・マーは中国当局に「消された」のか? 中国を逃れた不動産王の予言が話題に*****

(中略)マーが「行方不明」になっていることには、彼が2020年10月に上海での演説で、中国の金融規制当局を「老人クラブ」と批判したことが関係しているのではないかと言われている。

 

彼は上海の会合で、「現在の金融システムは産業化時代の遺物だ」と批判。「私たちは次の世代と若い人々のために、新しいシステムをつくらなければならない。現在のシステムの改革をすべきだ」と主張した。(後略)【1月17日 PRESIDENT Online

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“民間企業による国有企業のシェア切り崩しを許せば、主要経済部門の国家による管理体制が必然的に弱体化するだけでなく、民間企業が共産党に挑戦する道を開くことにもなる。アリババは最も成功した(最も革新的な)企業の1つ。習の目には、共産党の政治支配に対する脅威の象徴と映る。”という認識のもとで、上記のような神経を逆なでする発言がきっかけとなり、「消息不明」状態に・・・・ということで注目されています。

 

ただ、馬氏は2019年9月にアリババ会長を退いて以降、同年11月のアリババ香港上場セレモニーも欠席するなど、公的活動は減っており、SNSの投稿も、もともと少なかったことや、政策批判的な発言は以前からもあったことで今回が初めてではないことなどから、最近の「沈黙」はさほど不自然ではない・・・国際的な「騒動」が起きるまでは、中国国内的にはそのように見られて問題視されていなかったとも。【1月14日 東洋経済onlineより】

 

もっとも、これだけ騒ぎになった現時点で何も発言等がないのは不自然にも思われますが・・・。

 

よくわからない馬氏のことはともかく、習近平指導部の最近の巨大ネット企業への管理強化は、短期的に共産党の政治的安定を強化できても、長期的には金の卵を産むガチョウを殺すことにもなりかねません。

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パレスチナ  自治政府の議長・議員選挙実施ヘ議長令 期日通りに実施できるかはなお不透明

2021-01-16 23:02:54 | 中東情勢

(パレスチナ和平に関する風刺画です。 ネタニアフと書かれた重機が、平和の鳩の上から入植地と書かれた建物を落しています。 まあ、実情はこの通りですが、アラブの方はこんな風刺画を描いてやせ我慢するしか仕方がないのでしょうね【12月21日 中東の窓】)

 

【閉塞的な状況が続くパレスチナ イスラエルによる「なし崩し的」な侵襲も】

トランプ流政治に翻弄されたパレスチナに関しては、昨年末クリスマスイブ12月24日ブログ“中東・パレスチナ情勢 トランプ政権の下で現状追認的に大きく変容 政権交代で流れは変わるのか?”で「久しぶり」にとりあげましたが、そこで紹介した記事“パレスチナ、抵抗は失われるか 抗議デモは30分「民衆蜂起、起こせる空気じゃない」”【12月24日 朝日】に示されているように、一言で言えば「バイデン米新政権への期待はあるものの、流れを大きく変えるだけの熱気はなし」といったところ。

 

そうした事情にくわえて新型コロナ禍・・・パレスチナ自治区イスラエルでは感染拡大を防ぐための都市封鎖が断続的に続き、外国人観光客が訪れることが難しい状況が続いており、例年のベツレヘム・聖誕教会で行われるミサも寂しいものになったようです。

 

“クリスマスイブに聖誕教会で行われるミサは例年、ホリデーシーズンの目玉とされ、数十万人がベツレヘムを訪問していた。だが今年のミサは一般公開されずネットで配信され、聖職者と招待された人だけで行われる。ミサの行われる同教会では24日、消毒作業が行われた。”【12月25日 AFP】

 

例年参列していたパレスチナ自治政府アッバス議長も参加を見送ったようです。

 

翌25日には、イスラエル軍のガザ空爆が行われました。クリスマスプレゼントという訳でもないでしょうが・・・。

 

****IDF(イスラエル国防軍)のガザ空爆****

クリスマスイブにはシリアのハマ近郊ですが、クリスマスにはIDFのガザ空爆です。

アラビア語メディアは、IDFは、25日ガザからイスラエル南部に複数のミサイルが撃ち込まれたことへの報復として、IDFがガザのハマス軍事拠点(ミサイル製造所、地下の拠点等)を空爆したとツイッターに書き込んだと報じています。

なおIDFはパレスチナ側からのミサイルのうち2発は短距離射程ミサイルに対抗するiron fistが捕捉したと発表した由

又パレスチナ通信もIDFが26日早朝ガザ市の南に5発のミサイルを撃ち込んだと報じている由。
これらミサイルはハマス拠点を狙ったが、そのうち1発は病院の近辺に落ちた由
(現在のことろ病院の被害も含め、死傷者等の有無は不明。

きな臭い年末年始になりそうですが・・・・【12月26日 中東の窓】

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年末にも、パレスチナにおけるイスラエルの「なし崩し的拡大」を伝える記事を、パレスチナ寄りのトルコ系メディアが報じています。

(もっとも、トルコ・エルドアン大統領もイスラエルとの関係改善を目指す動きが報じられています。トランプ中東外交の流れに乗った形)

 

****イスラエル、2020年にパレスチナ人の家170軒を取り壊し****

イスラエルは2020年に(一部の国や地域では「エルサレム」と呼ばれている)クドゥスで170以上の家を取り壊してパレスチナ人およそ400人が家を失う原因となった。

 

パレスチナ外務省から書面で出された声明では、今年(2020年)クドゥスでユダヤ人入植地の建設が加速し、危険な形で増加したと述べられた。

 

イスラエルがクドゥスをユダヤ化し、アラブのアイデンティティを消すことを目指している攻撃は占領国家の支持国であるアメリカのドナルド・トランプ大統領時代に増加したことが強調された声明では、「これ以外にアメリカで実施された大統領選挙でトランプ大統領の敗北が明らかになったことを受けて、イスラエル政府は占領下にある東クドゥスの様々な地区で何十もの入植地プロジェクトを公表した」と述べられた。

 

数百の入植地プロジェクトと植民地計画によりクドゥスに暮らすパレスチナ人を強制移住させる狙いがあると指摘された声明では、これらにより東クドゥスとパレスチナ人とのつながりを断つことが目指されていると強調された。

 

声明では、イスラエルがクドゥスで行っていることは違法であると強調され、国連及び国際社会にクドゥスを保護し、ユダヤ化を阻止するために責任を果たすよう要請された。【12月27日 TRT】

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****イスラエル軍兵士がラマッラーを襲撃、ヨルダン川西岸でパレスチナ人のオリーブの木を引き抜く****

イスラエル軍兵士が、占領下のヨルダン川西岸のラマッラー市を襲撃し、パレスチナ人5人を拘束した。

 

目撃者から得られた情報によると、イスラエル軍兵士がラマッラー市の一部地区を襲撃した。

この襲撃で、パレスチナ人5人を拘束した兵士は、パレスチナ人の車1台も押収した。

 

この襲撃に抗議しデモを行ったパレスチナ人数十人とイスラエル軍兵士の間で騒乱が起きた。

イスラエル軍兵士は、パレスチナ人を解散させるために催涙ガスやゴム弾、実弾を使用した。

現在までに、この事件による負傷者はいない。

 

一方、イスラエル軍兵士は、占領下のヨルダン川西岸にあるベツレヘム市でパレスチナ人が所有する数十本のオリーブの木を、「国家の所有物である」と主張した土地から引き抜いた。

 

パレスチナ解放機構(PLO)に属する「分断の壁との闘い団」ベツレヘム支局のハサン・ブライジャ局長は声明を発表し、イスラエル軍兵士はオリーブの木があった場所を国家の所有物であると主張したが、その土地はパレスチナ人のものであると強調した。

 

パレスチナ人はこの土地が自分のものであることを立証するために長い間イスラエルの裁判所に訴え続けていると述べたブライジャ局長は、イスラエルは地域のユダヤ人入植地を拡大するためにこの土地を押収しようとしていると語った。【12月30日 TRT】

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また、新型コロナに関する占領者イスラエルの対応についても。

イスラエルはすでに国民の2割がワクチン接種を受けるという、断トツに世界最速ペースでワクチン接種を進めていますが・・・。

 

****ワクチン接種強国イスラエル、パレスチナ住民は接種から排除****

世界で最も早く自国民に新型コロナウイルスのワクチンを接種しているイスラエルが、占領地パレスチナの住民にはワクチンを接種せず、批判を受けている。

3日、英紙ガーディアンなどによると、昨年12月20日から米製薬大手ファイザーとドイツのバイオ企業ビオンテックが共同開発したワクチンの接種を始めたイスラエルは、今月2日までに約109万回の接種を終えた。人口100人当たり12.6回で世界最高水準だ。イスラエルの占領地であるヨルダン川西岸地区の入植地に住む一部ユダヤ人もすでにワクチンを接種した。

しかし、西岸地区内のパレスチナ住民は接種から排除された。イスラエルの高官らは、「パレスチナ自治を合意した1993年オスロ合意により、イスラエルはパレスチナ人に対するワクチン供給の責任がない」とし、「イスラエル人の接種が終わった後、ワクチンが残ればパレスチナに提供することはできる」と明らかにし、大きな批判を受けている。

14の国際人権団体は最近、共同声明を出し、「占領者の感染症対策の義務を規定しているジュネーヴ条約により、イスラエルはパレスチナ人のためのワクチン購入と配布を支援しなければならない」と指摘した。

 

制限的自治権だけ持つパレスチナ自治政府が確保したワクチンは、供給時期が確実でない、ワクチン分配の国際的な枠組み「COVAX(コバックス)ファシリティー」のワクチンだけだ。

国際統計サイト「ワールドメータ」によると、3日のパレスチナの累計感染者は14万人、死者は1470人。実際の被害はこれよりもさらに深刻とみられる。西岸地区のある住民は、「仕事も食べるものもないのに、ワクチンの接種は夢見ることもできない」と吐露した。【1月5日 東亜日報】

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政治的な問題は別にして、純粋に保健衛生的観点からしても、シンガポールやタイなどが、劣悪な居住・衛生環境に置かれた外国人労働者から感染が拡大したように、イスラエルもパレスチナ人を同時に対象としないと自国民の安全も達成できません。

 

【15年以上行われていない議長・議会選挙の実施の議長令 実現には不透明部分も】

このように閉塞的状況で暗いニュースばかりのパレスチナですが、そうした状況の大きな原因のひとつが、パレスチナ自治政府を主導するアッバス議長・穏健現実派ファタハとガザ地区を実効支配しイスラエル敵視を続ける急進派ハマスの両勢力に分断されており、当事者能力を著しく損ねていることです。

 

両勢力による統一政府の話は過去に幾度もありましたが、ここまで実現していません。

統一の基盤となる選挙も行われておらず、アッバス議長の正統性にも疑問があります。

 

今、再び選挙の実施が発表され注目されています。

 

****パレスチナ、15年ぶり選挙へ議長令 実施は不透明****

パレスチナ自治政府のアッバス議長は15日、15年ぶりとなる選挙を実施するための議長令を出した。5月22日に自治評議会選、7月31日に議長選を行うと発表した。

 

ただ、パレスチナでは2006年以来、政治分裂によって選挙ができておらず、今回も予定通り実施できるかは不透明だ。

 

パレスチナでは長く政治勢力が分裂したまま選挙が実施されず、アッバス氏をはじめとする指導部への支持も低迷している。選挙によって自治政府が民主的な正統性を取り戻せば、イスラエルとの和平交渉再開への足がかりとなる可能性もある。

 

パレスチナで選挙が最後に実施されたのは15年前。05年の議長選で当選したアッバス氏が、故アラファト議長の後任に就任した。

 

しかし06年の議会選で、イスラム組織ハマスがアッバス議長率いるファタハを破ると、翌年にガザ地区を武力制圧。以来、パレスチナはファタハ主体の自治政府が統治するヨルダン川西岸と、ハマスが実効支配するガザに分裂したままだ。

 

両者はこれまで複数回にわたり選挙の実施に向けて協議してきたが、合意できずに続いてきた。19年にもアッバス氏が国連総会で選挙実施の意向を示したが、実現しなかった。

 

ここ数年、トランプ米政権がイスラエル寄りの政策を取り、アラブ諸国もイスラエルとの関係改善を進めるなど、パレスチナは苦境に立たされてきた。こうした状況に対抗するため、パレスチナでは政治分裂を解消し、政治体制を立て直す必要に迫られていた。

 

こうした状況を受け、選挙の実施に向けてファタハとハマスが合意し、06年以来初めて、具体的な選挙日程の決定にこぎ着けた。

 

しかし、選挙の公正性の確保や、イスラエル領有権を争う東エルサレムでの選挙実施の可否など、課題は多く残っている。また、アッバス氏が続投を目指して議長選に立候補するかどうかも明らかになっていない。【1月16日 朝日】

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ハマスは議長令を「歓迎する」と声明を出していますが、“パレスチナが将来の国家の首都と位置付ける東エルサレムでの投票をイスラエルが認めない可能性があり、新型コロナウイルスの感染拡大も足かせとなりそうだ。”【1月16日 時事】との指摘も。

 

なお“パレスチナ政策調査研究所が昨年実施した異例の世論調査では、議長選の支持率でハマスの指導者イスマイル・ハニヤ氏がアッバス氏を上回った。”【1月16日 AFP】とのことで、選挙後の自治政府を急進派ハマスが主導する形になるとイスラエルとの関係は今以上に硬直することも予想されます。

 

とは言え、民意の反映は、当事者能力回復のためいは避けて通れないところです。

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ロシア  反政権活動家ナバリヌイ氏の帰国 対応に苦慮するプーチン政権

2021-01-15 23:26:55 | ロシア

(2019年7月、モスクワで開かれた集会で演説するナバリヌイ氏【1月15日 朝日】)

 

【制裁を伴う、ロシアと欧米の対立に問題拡大】

ロシアの反政権活動家アレクセイ・ナバリヌイ氏に対する毒殺未遂疑惑は周知のところですが、ネット上の汚職告発ブロガーに過ぎなかった人物が、当局が逮捕や弾圧を繰り返すことでカリスマ性を増し、リアルな政治政界でプーチン大統領を悩ませる存在、その言動に世界が注目する存在に進化してきた・・・という点で、プーチン政権の対応は大失敗だったようです。

 

当局の逮捕・弾圧を逆手に取る形で、その存在感が大きくなってきたという経緯があるだけに、今回の毒殺未遂疑惑についても、政権側などからは、同じような効果を狙った「被害妄想」、あるいは「自作自演」との批判もあります。

 

****「毒殺したいなら最後までやった」 プーチン大統領、ナワリヌイ氏襲撃を否定****

ロシアのプーチン大統領は17日、反体制派指導者のナワリヌイ氏の毒殺未遂事件に関与したとみられる連邦保安庁(FSB)の工作員8人を特定した英国の独立系調査グループ「ベリングキャット」などの調査結果について「調査報道ではなく、米情報機関の資料の正当化にすぎない」と指摘し、「もし毒殺したいのなら、最後までやっていただろう」と改めて関与を否定した。年末恒例の記者会見で述べた。

 

プーチン氏はナワリヌイ氏について「米国の情報機関の支援を受けている」として、FSBによる尾行活動を正当化。

 

一方でナワリヌイ氏のドイツへの移送を許可したことにも触れ、猛毒の神経剤ノビチョクで襲撃までする必要性を否定した。そのうえで、今回の調査は自身を批判するための「政治闘争のトリックだ」と訴えた。(後略)【12月18日 毎日】

******************

 

こうした主張について、ナワリヌイ氏はロシアの安全保障当局者になりすましてFSBの工作員に電話をかけ、ナワリヌイ氏が最初に手当てを受けた航空会社のパイロットや中南部オムスクの救急医療チームの迅速な対応により、ナワリヌイ氏を殺害できなかった可能性があるとのFSB工作員の発言を引き出し、公表しています。

 

“なりすまし電話”というのも、安手のTVドラマのような手法ですが、まあ、現実にはそういうこともあるのかも。

 

真相はわかりませんが、毒殺未遂疑惑はロシア国内の当局と反政府活動家の問題を超えて、ロシアと欧米の対立を具現化した事件となっています。

 

****欧米とロシア、深まる情報戦 ナバリヌイ氏毒殺未遂疑惑****

ロシアの反政権活動家アレクセイ・ナバリヌイ氏に対する毒殺未遂疑惑を巡り、プーチン政権の関与を主張する欧米側とロシアの情報戦が激しさを増している。

 

疑惑を否定するロシアは、欧州連合(EU)の制裁への対抗措置を発表するなど態度を硬化させており、対立が深まっている。

 

英国の調査報道機関「ベリングキャット」は昨年12月中旬、米CNNなどとの共同調査で、ナバリヌイ氏の毒殺未遂にロシア連邦保安局(FSB)の工作員8人の関与が明らかになったと報道した。

 

さらにナバリヌイ氏が当局幹部を装って工作員の1人に電話をし、関与を認めさせたと発表。インターネット上に公開された動画では、工作員とされる男が「(ナバリヌイ氏の)パンツの内側に毒物を仕込んだ」などと話す音声が流れ、再生回数は2千万回を超えている。

 

ナバリヌイ氏を治療したベルリンのシャリテ大学病院は同月23日、英医学誌ランセットに、「神経剤ノビチョクによる中毒」と題するナバリヌイ氏の症例報告の論文を発表。脈が弱く瞳孔反応がないといった当初の症状や治療の経過、血液の分析結果や使用した解毒剤の効果などが詳細に記されている。

 

ロシア側は、「米中央情報局CIA)がナバリヌイ氏を支援している」などとして対抗意識をあらわにする。ペスコフ大統領府報道官は、ランセットの論文について、「(分析する)意味も無い」と一蹴。

 

捜査当局は、ロシアに帰国する意思を示しているナバリヌイ氏を新たに詐欺容疑で告訴するなどし、圧力を強めている。

 

さらにロシア外務省は、同22日、事件を受けてEUが10月に発動したロシアへの制裁に対抗し、対ロ制裁に関わったEU加盟国の代表者にロシアへの渡航を禁じる制裁を科したと発表した。【1月6日 朝日】

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【17日に帰国 対応に苦慮するロシア】

こうした状況で、ナバリヌイ氏は治療を受けていたドイツから17日に帰国することを表明。

 

****ナバリヌイ氏、17日にロシア帰国と表明****

ロシアの反政権活動家アレクセイ・ナバリヌイ氏は13日のツイートで、毒殺未遂で搬送されたドイツから17日に帰国する意向を表明した。(中略)

 

ロシア当局は昨年末、ナバリヌイ氏を新たに詐欺の疑いで捜査し始めたと発表。これに対して同氏はインスタグラムに投稿した動画で、自身の帰国を阻止するための「明らかなでっち上げ」だと主張していた。

 

11日にはロシアの刑務当局が、ナバリヌイ氏に別件で言い渡されていた執行猶予付きの刑を実刑に変更するよう裁判所に要請した。当局は、同氏がドイツに滞在することで執行猶予の条件に違反していると主張した。【1月13日 CNN】

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ロシア司法当局は14日、ナワリヌイ氏が帰国すれば即座に拘束する方針を明らかにしていますが、逮捕は同氏を反プーチンのシンボルとして更に押し上げること、また、欧米からの一層の批判が集中することが予想され、本音としては“帰国して欲しくない”というところのようです。

 

****拘束警告・刑事訴追…露、ナワリヌイ氏の帰国阻止に躍起****

何者かに毒物で襲撃され、ドイツで治療を受けていたロシアの反体制派指導者、ナワリヌイ氏が「17日にロシアに帰国する」と表明したことに対し、露政権が帰国を阻止しようとする動きを強めている。

 

露司法当局は14日、同氏が帰国すれば即座に拘束する方針を明らかにした。ただ、実際に同氏を拘束した場合、国内外から強い批判を招くのは確実で、露政権は苦しい立場に置かれている。

 

ナワリヌイ氏は13日、17日に航空便でドイツから帰国するとツイッターで表明。これに先立ち、今秋に予定されている露下院選に向け、反体制派勢力を支援する意思も示していた。

 

これに対し、露司法当局は14日、「ナワリヌイ氏は過去の事件で執行猶予中であるにもかかわらず、当局の出頭要請に応じなかった」などとして、昨年末に指名手配したと公表。同氏を発見次第、拘束するとした。さらに司法当局は同氏の執行猶予を実刑に切り替える手続きも進めている。

 

露捜査当局も昨年末、ナワリヌイ氏が自身の団体「汚職との戦い基金」などへの寄付金5億8800万ルーブル(約8億3000万円)の一部を私的流用したとして、同氏を詐欺罪で刑事訴追した。

 

一連の動きの背後には、ナワリヌイ氏の帰国を阻止したい露政権の思惑があるとみられている。プーチン大統領の支持率は現在、過去最低の6割程度まで低下。一方、意識不明の重体から生還したナワリヌイ氏は存在感を増しており、帰国して政治活動を行えば政権側には脅威となる。

 

ナワリヌイ氏は「政権側の動きに興味はない」と述べ、予定通り帰国する構えだ。

 

また、多数のナワリヌイ氏の支持者がモスクワ近郊の空港で同氏を出迎える計画を立てている。政権側は新型コロナウイルス対応として大規模な集会を禁止しており、空港で混乱が起きる可能性もある。(後略)【1月15日 産経】

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****毒殺されかけた活動家、ロシア帰国へ 拘束の可能性も****

(中略)約5カ月にわたってリーダー不在だった支持者や反体制派は勢いづき、空港でナバリヌイ氏を出迎えるイベントには1800人以上が参加を表明している。

 

こうした状況に、反政権活動の活発化を抑えたいプーチン政権は難しい判断を迫られている。

 

(中略)ナバリヌイ氏を野放しにすれば弱腰との批判を受け、反政権派を勢いづかせかねない。一方で、拘束すれば反政権派が猛反発し、欧米諸国からの強い非難を招く恐れがある。そのため、拘束を警告して帰国を思いとどまらせる狙いがあったとみられる。

 

今回の帰国表明を受け、ロシア当局は「悪意ある違反を犯したナバリヌイ氏を勾留する義務がある」と強調。国内メディアや政治専門家らは、「空港で即座に拘束される」との見方を強める。

 

だが、ナバリヌイ氏は、「帰国を迷ったことはない」としている。今年秋の下院選に向け、国際世論も巻き込んだ反政権活動の活性化を目指しているとみられる。

 

プーチン氏は昨年7月の憲法改正で、3年後の次期大統領選への出馬が可能になった。後継者を指名する可能性も残されているが、いずれの場合も下院選で政権与党が圧勝し、政権基盤を安定させることが必須だ。

 

そのため昨年秋から、集会やデモなどの制限や、反政権派が利用する動画投稿サイトやSNSへの規制を強める法改正を矢継ぎ早に行い、反体制派の抑え込みを急いでいる。

 

(中略)政権が最も避けたいのは、バイデン次期米政権や欧州が反政権派を支援し、反政権運動がベラルーシのような国民的盛り上がりにつながることだ。

 

秋に向け、プーチン政権は今後も締めつけを強めるとみられ、反政権派や欧米との間で緊張がさらに高まる可能性がある。【1月15日 朝日】

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放置するという訳にもいかないので、拘束するのでしょう。

更に、対応をエスカレートさせることも想像されます。

 

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(独立系の政治分析会社「Rポリティーク」の創業者)スタノバヤ氏は、「私の見立てによると、政権は妥協する能力や批判を許容する能力を全て失い、平和的な手法で政治的リスクに対応する能力を一切なくした。政権が知る唯一の行動手法は抑圧を用いることだ」と述べる。

 

ロシア政府は今後、政府が容認してきたロシアの組織的な抗議活動、反体制的な団体や政党を一層威圧する可能性がある。一方、アナリストらは、ナワリヌイ氏が率いている団体などの反体制団体は、抑圧され、破壊される恐れさえあると指摘する。

 

ロシア政府は、政府が反体制勢力を抑圧しようとしているとの主張を一蹴している。プーチン氏は、(2020年)3月に行った国営タス通信とのインタビューで、反対勢力の声は重要だと述べていた。

 

同氏は「どんな国においても、社会の一部には権力者に反対する者が常にいたし、そうあり続ける。そうした人々が存在することは非常に良いことだ」と述べていた。【12月28日 WSJ】

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【“強権統治の綻び”? “プーチン強権支配は今年も揺るがない”?】

ナワリヌイ氏への対応に苦慮しているあたり、プーチン政権も綻びが隠せなくなった・・・という感も。

 

****露プーチン氏 強権統治の綻びが広がった****

国内の反対勢力を徹底的に弾圧し、米欧との対決姿勢をアピールする強硬路線の綻びが広がり始めた。軌道修正に失敗すれば、長期政権の維持戦略にひびが入るのではないか。

 

ロシアのプーチン大統領が年末の記者会見で、4期目の任期が2024年に満了となった後も、大統領を続ける可能性を示唆した。7月の憲法改正では、36年まで続投する道を開いている。

 

だが、政権基盤は盤石ではない。新型コロナウイルスの感染者数は世界で4番目に多く、政府の対応の不備が批判されている。

 

ロシアの反政権運動指導者に対する毒物襲撃事件で、欧州連合(EU)は露情報機関の犯行とし、対露制裁を強化した。石油などエネルギー資源に依存した経済構造の転換も進んでいない。

 

プーチン氏の支持率は低下傾向にある。異論を許さない強権統治の長期化で、社会が倦怠けんたい感に覆われていることの表れだろう。

 

極東ハバロフスクでは、7月に始まった地元知事の拘束・解任への抗議デモが今も終息していない。当局が沈静化できないのは、ロシアでは異例の事態である。

 

ロシアが「勢力圏」と位置づける旧ソ連圏では、影響力の陰りが目立っている。

 

アゼルバイジャン領ナゴルノ・カラバフ自治州を巡る紛争では、ロシアが支援するアルメニアがアゼルバイジャンとの戦闘に敗れ、実効支配地域を失った。アゼルバイジャンに肩入れするトルコの存在感が強まっている。

 

ベラルーシでは、ルカシェンコ大統領の退陣を求める反政府デモが、欧米の支援を受けて続いている。キルギスでは親露派の大統領が退陣に追い込まれ、モルドバでは、親欧米派の候補が親露派の現職を破り、大統領に当選した。

 

旧ソ連諸国の「ロシア離れ」は、ロシアが経済低迷により、支援を十分できなくなったことが一因だ。プーチン氏が中東での覇権争いにまで手を広げて、シリア内戦に介入したことも、足元の揺らぎにつながったのではないか。

 

局面打開の鍵を握るのは、対米関係だろう。プーチン氏は、バイデン次期米大統領との間で改善を進めることへの期待を示した。来年2月に失効する「新戦略兵器削減条約」(新START)の延長が試金石となる。

 

軍縮には、信頼関係の構築が不可欠だ。ロシアの新型兵器開発やハッカー集団のサイバー攻撃に対する米国の批判を、プーチン氏は重く受け止めねばならない。【12月24日 読売】

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しかし、上記【読売】のような“強権統治の綻び”との見方に対し、反政府行動を力で封じ込め、国際関係でもロシアの利益を確保しており、“プーチン強権支配は今年も揺るがない”との見方も。


****プーチン氏の強権支配、来年もゆるがず****

国内の反体制勢力には一層威圧的に、周辺諸国に強い影響力行使か

 

(中略)世界の舞台では、プーチン氏は今年、窮地に陥っているベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領に政治的な救いの手を差し伸べた。

 

ルカシェンコ氏は8月9日の大統領選での不正が指摘されて以降、辞任を求める抗議の声に直面している。プーチン氏はルカシェンコ大統領に軍事的および金銭的な支援を約束した。

 

プーチン氏はまた、アゼルバイジャンとアルメニアの係争地ナゴルノカラバフをめぐる軍事衝突で、11月に停戦合意の調停役を果たした。

 

この停戦合意は、地域問題の強力な仲介役としてロシア政府の立場を強化するとともに、両国に対するロシアの影響力を確保するものとなった。ロシアは、既にアルメニアに軍事基地を持つほか、同国との経済分野でのつながりもあるが、今回の停戦合意により、アゼルバイジャンに初めて自国軍隊を駐留することになった。(中略)

 

(ロシア大統領報道官)ペスコフ氏は、危機には、「大統領の強靱(きょうじん)さ、迅速な意思決定が必要だった」と指摘するとともに、「もちろん、全体としてみれば主要な責務はすべての方面における安定の維持であり、これは確保されたと確信している」と強調した。

 

ロシアは新型コロナウイルスの国産ワクチン「スプートニクV」を他国に供給する契約を締結したが、これについてアナリストらは、とりわけ南米や中東地域のワクチン供給先の国々に対して、ロシアがソフトパワーを行使するのを可能にするかもしれないとみている。

 

アナリストらによれば、プーチン氏は来年、実施した支援に対する見返りを要求する可能性がある。ロシアは長年、隣国のベラルーシをロシアの強い影響力のもとに引き寄せるよう努めてきたが、プーチン氏はルカシェンコ氏に対し、この働きかけに応じるよう求める公算が大きい。

 

一方、南コーカサス地域の(ナゴルノカラバフをめぐる)紛争再発を食い止められるかどうかはプーチン氏にかかっているため、アルメニア、アゼルバイジャン両政府は、ロシアに一段と従属的になるとみられる。

 

西側諸国との間の今年の緊張は今後も続く公算が大きく、とりわけバイデン政権の誕生でそうなる公算が大きい。今月発覚した、少なくとも6省の米連邦政府機関がロシアからとみられるサイバー攻撃を受けた事件は、ロシア政府と米政府の関係をさらに悪化させた。

 

しかし、プーチン氏の支持者らによれば、西側に対する敵意は、ロシア国内でプーチン氏にとって有利に働く可能性がある。

 

モスクワの政治研究所所長を務める政府支持派のセルゲイ・マルコフ氏は、この見方について、「もしプーチン氏がロシアにとって問題であれば、彼がそれほど攻撃されることはなかっただろう」というものだと語った。

 

マルコフ氏は、「敵対者がさらに怒りを強めれば、われわれは一層明るい未来への道を行くことになる。プーチン氏にとって現状に特別なものは何もない。成功しているロシアの大統領が攻撃されるのは自然の成り行きだ」と述べた。【前出 12月28日 WSJ】

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イギリス  一応「友好的」にEU離脱を完了 ブレグジットの「これまで」と「これから」

2021-01-14 23:20:01 | 欧州情勢

(【1月19日号 Newsweek日本語版】)

 

【ブレグジットどころではない新型コロナ ロンドンは「制御不能」】

イギリスは12月31日午後11時(日本時間1月1日午前8時)にEU離脱に伴う移行期間を終えて、名実共にEUからの離脱が完了しました。

 

*****運転手のサンドイッチも没収、英EU離脱で一変したオランダ国境管理の現実****

 欧州連合(EU)を離脱した英国の対岸の国、オランダ。国境検問所で入国者からサンドイッチなどの食品が没収されている様子を、同国のテレビ局が撮影した。

 

公共放送NPO1が放映した映像の中でオランダの国境係員は、国際フェリーターミナルのあるフクファンホラントに到着した車の運転手にこう説明していた。「ブレグジット以降、肉や果物、野菜、魚といった食品を欧州に持ち込むことはできなくなりました」

 

1人のドライバーがアルミホイルに包んだサンドイッチを手に、肉をあきらめればパンは持っていてもいいかと尋ねた。国境係員の答えは「いえ、何もかも没収されます。ブレグジットへようこそ。すみません」だった。

 

英国が単一市場と関税同盟から離脱した今、国境を越える物品は検疫などの検査の対象になった。

 

英政府はEU加盟国との間で物品を輸送するドライバーに対し、ハムやチーズサンドイッチといった食肉や乳製品を含む「動物由来製品」は持ち込めないと勧告、「手荷物や車両の中、あるいは人が禁止品目を携帯している場合、国境で、または国境前で使用、消費、破棄する必要がある」とした。

 

欧州委員会のガイドラインでも「肉や牛乳、その産物を含む私用品は、EUの動物の健康に対する真の脅威をもたらす」としている。

 

国境係員はNPO1の取材に対し、コロナウイルス関連の制限が緩和されれば、渡航者の流入が増えて入国待ちの時間はさらに長くなると予想、「今は見ての通り、今朝も車30台と極めて少ない」「新型コロナ対策がなくなれば、この数が増えて待ち時間も長くなるだろう。イライラを招くのは間違いない」と話している。【1月13日 CNN】

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あれだけ大騒ぎした割には(実際に、大ごとですが)、通関手続き復活に伴う混乱や産業・生活にへの影響など、離脱に関する状況を伝えるニュースはほとんど目にしません。

せいぜいが、上記の「サンドイッチ」に関するものでしょうか。

 

その理由は、影響が明らかになるのはこれからということと、今イギリスは新型コロナの感染爆発でそれどころではないということの二つしょう。

 

****ロンドン医療崩壊の危機 30人に1人が感染 病床不足****

英国で新型コロナウイルス感染者が急増し、医療崩壊の危機が迫っている。

 

首都ロンドンでは約30人に1人が新型コロナに感染した状態にあると推計され、入院患者が殺到する医療機関で病床が不足している。

 

医療現場の逼迫(ひっぱく)を受けて新型コロナによる死者数は欧州最多となっており、英政府はワクチン接種の加速に状況改善の望みをかける。

 

「(増加する感染者に)対応できなくなる不安を感じている」。ロンドン市内の病院に勤める男性医師は英紙タイムズにこう訴えた。男性の病院では、新型コロナの入院患者増加に伴い、以前は44床だった集中治療用のベッドを120床まで増やした。それでも足りず、さらに30床増やす方針が決まった。

 

英国では、昨年12月から感染力が強いとされるコロナ変異種が猛威を振るい、累計感染者数は約322万人と世界で5番目。

 

中でも、最近の感染者の約8割が変異種とされるロンドンの状況は深刻だ。英国家統計局によると、昨年12月27日から今月2日までの期間で約30人に1人が感染状態にあったと推計され、ロンドンのカーン市長は8日、感染拡大が「制御不能」になったと宣言した。

 

英政府のウィッティ首席医務官も11日、ロンドンなどで「今後数週間は最悪の(感染)状況を迎える」と危機感をあらわにした。

 

英メディアによると、状況が悪化した場合、今月下旬までにロンドンで約5400の病床が不足する恐れがある。救急医療体制は限界に達しつつあり、ロンドンの救急隊員は今月、救急車を最大12時間待った患者がいたと語った。

 

十分な医療サービスが受けられない患者が増える中、英政府は13日、新型コロナで新たに1564人が死亡し、1日当たりの死者数が過去最多となったと発表した。

 

医療が逼迫する背景には、保守党政権が近年とった緊縮財政に伴う公的支出の抑制で、医療水準が低下したことがある。英国では10万人当たりの利用可能な医療用ベッドが欧州主要国の中で最も少なく、医療従事者も不足している。

 

頼みの綱となるのがワクチンの存在だ。英政府は2月半ばまでに高齢者など約1500万人に接種する目標を掲げ、今月11日から競馬場やサッカー場などを活用して国内7カ所に大規模な接種施設を開設。24時間接種できる態勢も早期に整える方針だ。【1月14日 産経】

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ブレグジットの混乱を新型コロナによる混乱に埋没させて、目立たなくしてしまうというのは、ションソン政権の狙いどおりだったかもしれませんが、新型コロナの混乱は想像以上の規模に拡大して、それどころでない状況にもなっています。

 

【長い混迷の末に、結局は最初から「当然」のはずだった結論にたどり着いた】

そうしたなかで、ブレグジットを総括する記事2本と今後のイギリスの方向を論じた1本。

1本目は、どうしてこれほどまでに迷走したのかという「これまで」を振り返った記事。

 

「ブレグジット賛成派はブレグジットの実体を理解していない」と見下したような反ブレグジット勢力については、

“民主的結果を受け入れない、金と権力を持ち特権意識の高いエリートたち”と辛辣に批判する立場からの「振り返り」です。

 

****一周回って当然の結果に終わったブレグジット****

<4年半もの年月を費やしたイギリスのEU離脱は、パーフェクトな離婚とは言えないまでも実行可能な合意に落ち着いた>

 

ブレグジット(イギリスのEU離脱)の是非を問う2016年の住民投票から、数日前の「移行期間」終了までに、4年半が過ぎた。第1次大戦よりも長い期間だ。(中略)

 

これは大ざっぱな総括になるが、ブレグジットのこの4年半はうんざりさせられ、分断を招き、時にトラウマ的なものだったけれど、結局は最初から「当然」のはずだった結論にたどり着いた。

 

つまり、イギリス人の過半数が決して満足していなかったEU加盟からは抜けつつも、友好国である近隣諸国と自由貿易協定は結ぶ、ということだ。

 

EU懐疑派にとっては、苦痛な交渉期間がここまで長引いたのを「硬化症の」EUのせいにしたくなるのも当然だろう。でも僕は、責任の大部分(全てではない)はイギリスにあると思う。

 

そもそもはデービッド・キャメロンが、自分の望まない結果(つまりEU離脱)になる可能性を何ら想定しないまま国民投票を実施したのが全ての発端だ。彼はEU残留が勝つほうに、そしてこれまで通りの日常が続くほうに賭けた。

 

その賭けに負けると彼は退陣し(「横柄な退場」と言う人もいる)、厄介な仕事を他人に押し付けた。僕たちは「次々と問題が出るたびに何とか処理」していかなければならなかった。とはいえ、彼は数十年来にわたって意見すら聞いてもらえなかった大きな問題について、イギリス国民に発言権を与えてくれたのだ。

 

保守党議員はテリーザ・メイをキャメロンの後継に選んだ。当時これは、賢明な選択に見えた(僕もそう思った)。離脱は僅差での勝利だったから、「歩み寄り」できる首相は理にかなっていた。

 

彼女はEU離脱を約束したが、熱狂的ブレグジット派ではない。分断を癒やすにはある種の「ソフトブレグジット」が最善に感じられた。だが結局、彼女は埋めようのない分断を埋めようともがく典型的なパターンに陥り、穴に転落した。今思い返せば、あの時必要だったのはブレグジット信奉者のリーダーだったのだ。

 

反ブレグジット勢力は裏切り行為に走った。民主的結果を受け入れない彼らの姿勢は、何年もの停滞をもたらした。金と権力を持ち特権意識の高いエリートたちが、国民投票を無効にすべきだと断言した。基本的に彼らの言いたいことは、「私の1票はあなたがたの1票より重い......。あなたがたはブレグジットの実体を理解していなかったが、私はちゃんと理解している」。

 

彼らはロンドンで大規模なデモを何度か行ったが、彼らのほとんどがロンドンの住人だったから、容易に実施できた。レスターやサンダーランドのような地方都市に住んでいる大勢のブレグジット賛成派の人々は、EU離脱を求め続ける自分たちの声が、メディアに軽視されているように感じていた。

 

ブレグジット国民投票の直後、EU本部の雰囲気は「不幸な結婚」を早く終わらせよう、という感じだった。その雰囲気が一変したのは、EUの詐欺的手法ではなく、イギリスの残留派のせいだった。

 

ブレグジットをいったん取り消して「ブレグジットの条件がはっきりした時点で」国民投票を再実施しようじゃないか、と呼び掛けるイギリス国内の勢力は、事実上、「イギリスに対してできる限りのひどい取引を持ちかけてくれ」とEUにお願いするようなものだった。厳しい条件を突き付けられれば、イギリス国民もブレグジットへの「幻想」を捨て去るだろう、というわけだ。

 

イギリス議会の大勢の議員はブレグジット受け入れを一貫して拒否し続けたが、これは英近代史上で最も恥ずべき行き詰まりをもたらした。

 

僕はこの時期を思い返すのも嫌だ。まるで「ディナーパーティー政治」に感じられた。政治家が、票を入れてくれた有権者たちよりも、付き合いのある中・上流のお友達連中の都合を気にかけるような状態だ。

 

繰り返し意思表示したイギリス国民

幸い、イギリスの民衆はどういうわけか、辛抱強く粘り強い。僕たちは2016年の国民投票で(僅差で)ブレグジットに票を入れた。2017年の総選挙では、国民投票の結果を尊重すると明言した保守党と労働党の議員に(圧倒的な差で)票を入れた(自由民主党はあからさまに「反ブレグジット」の党として名乗りを上げ、極めて少ない票しか得られなかった)。(中略)

 

奇妙なことに、そんな停滞気味の形勢を覆したのは、「決して実施されないと思われていたはずの」選挙だった。イギリスは2019年までにEUを離脱するはずだったが、ばかげた状況のせいで行き詰まりが続いていたため離脱する前に欧州議会議員の改選時期が訪れてしまい、イギリスは(カネのかかる)欧州議会選挙に参加する羽目になってしまった。選出されたところで、イギリス選出の欧州議員の任期はほんの数カ月しかないにもかかわらず。

 

当選したのは、有権者が今でもブレグジットを支持していることを訴えるためだけに単一争点で結成された政党だった。

 

これによってテリーザ・メイは退陣せざるを得なくなった。国民投票の結果は「偶発的な抗議票」だっただけだ、イギリス国民は今やブレグジットに「後悔」しているのだ、という反ブレグジット勢力の主張は成り立たなくなった。EUはついにブレグジットの現実を見据えた交渉をせざるを得なくなった。そして、ブレグジットに本腰を入れる覚悟を決めた新政権が始まった。

 

これは、パーフェクトな幕引きではないかもしれない。「離婚」とは大抵そういうものだ。でも僕たちは自由貿易と友好関係で合意した。これにはイギリス含めヨーロッパの人々みんなの利益がかかっているのだから、実施不可能であるはずがない。ここまで時間がかからなければ、もっと良かったのだが。【1月11日 Newsweek】

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【メリットにせよ、デメリットにせよ、すべては「これから」】

2本目は、イギリス・EUの「これから」を論じたもの。

 

メリットにせよ、デメリットにせよ、すべては「これから」ですが、とにもかくにも「友好的」に離脱したことで、イギリスはEUとの間に経済をはじめ関係全般を緊密に維持して行く可能性が残されました。

 

EUにとっても重要なのは「これから」です。

 

****ブレグジットの果てにEUと英国が得たもの*****

英国とEUは、難しい交渉の末、妥結を発表した。英フィナンシャル・タイムズ紙コメンテーターのロバート・シュリムズリーが、12月24日付けの同紙に、英国とEUの合意の意義を論じ、それはEUと英国との関係の始まりの終わりにすぎないとの見解を述べている。

 

英国のジョンソン首相は、2019年12月の総選挙を「Brexitを片付ける(get Brexit done)」ことを公約して戦い圧勝した。そのマンデートを背負って交渉に臨み、no-dealも辞さないと土壇場まで粘った上で、まずは友好的に離脱することに成功した。これは疑いもなくジョンソン首相にとって勝利である。

 

ジョンソンは、EUとの合意を「ジャンボのカナダ型のFTA(自由貿易協定)」と呼んだ。この合意によって「我々は法律と運命のコントロールを取り戻した」と彼は述べたが、彼の言う「主権」を取り戻すために如何ほどのアクセスを犠牲にすることになったのかは追々明らかになるであろう。

例えば、金融サービスの取り扱いは今後の展開にかかっている。

 

重要なことは、まずは友好的に離脱したことでEUとの間に経済をはじめ関係全般を緊密に維持して行く可能性が残されたことにある。

 

これを歴史的な区切りとして、出来るだけ残留派を含めてBrexitを巡る国内の確執に終止符が打たれることが望まれようが、それはジョンソンがこの可能性を活かし約束した繁栄を実現出来るかに係わるところが大きい。シュリムズリーの論説が、これは単に「始まりの終わりに過ぎない」と言う所以である。

 

一方、EUの観点からは、「地理的近接性」と「経済的相互依存」という特殊な環境の中で単一市場のインテグリティーを守る合意を達成し得たということであろう。

 

EUが交渉を通じて加盟国の結束を堅固に維持したこと、特に北アイルランド問題との関係で大きな政治的危険に晒された小国アイルランドの利益にも目配りを怠らなかったことは称賛に価しよう。

 

英国は長年にわたりEUに縛られるとの感情からすっきりしないものを感じ居心地の悪さを感じて来た。EUの掲げる「ever closer Union」の理念には違和感を抱いて来た。

 

英国が未だ加盟国であったなら、EUが復興基金の創設やその財源としての共通債券の発行に踏み切れたかも定かではない。

 

そうであれば、英国が離脱したことに、EUに安堵を覚える向きがあったとしても不思議ではない。EUにはEUのプライオリティがある。

 

フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長は記者会見で「Brexitを過去のこととする時である、我々の将来は欧州で作られる」と述べたが、実感がこもっているように思われる。【1月14日 WEDGE Infinity】

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【イギリスはEU離脱を機に「脱欧入亜」を加速する】

今後のイギリスの方向性について、「脱欧入亜」加速との指摘も。“EU離脱で自由を得たイギリスはTPPを足掛かりに「脱欧入亜」を一気に進めてくるはずだ。”と。

 

****イギリス「脱欧入亜」の現実味*****

ついに完了した「離婚交渉」と英EUのFTAは英欧そして日本にどんなリスクとチャンスをもたらすか

 

(中略)イギリスはEU離脱を機に、地域格差の解消のため取り残された地域で産業育成を図るとともに、明治維新後の日本が「脱亜入欧」を目指したように「脱欧入亜」を加速する。

 

(中略)英・EUは別れたカップルと同じということを肝に銘じておくべきだ。離脱で軌を逃れたイギリスがどこまで欧州から離れるのか。それに合わせてFTAの内容もさらに縮んでいく。

 

既に英仏間のドーバー海峡には嵐が吹き荒れている。(中略)

 

イギリスで感染力が7割も強い変異株が流行し始めた途端、エマニュエル・マクロン仏大統領は前触れもなくドー

バー海峡を48時間封鎖し、大型トレーラーやトラックなど約1万台を立ち往生させた。

 

イギリスは物流をドーバー海峡や欧州大陸に依存し過ぎる危険性を思い知ったはずだ。

 

EU離脱で復活する通関申告でイギリスが負担する費用は年150億愕(約2兆1140億円)という試算がある。

なかでも最も大きな影響を受けるのは、故マーガレットーサッチャー首相の日系企業誘致で輸出の主力を担うまでに復活した英自動車産業だ。(中略)

 

自動車輸出に10%のEU域外関税をかけられたら英自動車産業は壊滅する。関税なしが英・EU双方の基本シナリ

オだったが、問題は非関税障壁の「原産地規則」だ。

 

域外から輸入する原材料の比率が大きい製品は無関税の対象から外される。1台の車は小さなネジまで数えると約3万個の部品からなる。その部品が国境を行き来しているのだ。(中略)

 

イギリス資本のEU離れ

(中略)イギリスの離脱で資本市場でのEUのシェアは22%から13%に激減、40年には10%まで下がると予測される。現在はアメリカが43%、中国12%だ。

 

スナク財務相は「これまでとは少し違うことができる」と意気込む。イギリスにとって資本市場としてEUの魅力はどんどん下がっていく。

 

イギリスは、EU域内で金融サービスを提供できる範囲が縮まっても、市場が大きいアメリカや成長著しいアジアに規制の内容をずらしていく構えだ。つまり、イギリスに集散する資本が欧州を離れてアメリカやアジアに向かう可能性が高い。(後略)【1月19日号 Newsweek日本語版 木村正人氏】

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長年続いた欧州との関係がすぐに薄れていくかは疑問なところもありますが、そこにしがみついていたらブレグジットの意味がないとも言えるでしょう。

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中国  コロナパンデミックで「GDP世界最大」への道を加速 ワクチン外交で信頼獲得も目指す

2021-01-13 23:12:32 | 中国

(1月13日、インドネシアで、新型コロナウイルスワクチンの接種キャンペーンが始まり、ジョコ大統領(写真)が最初に接種を受けた。【1月13日 ロイター】 このワクチンも中国シノバック・バイオテック製)

 

【GDPのアメリカ越えがコロナ禍で5年早まる】

新型コロナのパンデミックは国際関係から個々人の生活に至るまで、あらゆる側面で大きな変化をもたらしつつありますが、国際関係の面で見ると、中国がこの難局をうまく乗り越え、その存在感の高まりが加速しつつあるように見えます。(現在進行形ですので、今後の展開はわかりませんが)

 

国力の基盤となる経済規模で見ると、コロナを制御した感のある中国は、これまでの予想より5年早く、2028年にはアメリカを追い抜く・・・・との調査結果が。

 

****中国のGDP “2028年 アメリカ上回り世界1位” 英民間調査機関****

中国のGDP=国内総生産の規模が2028年にはアメリカを上回って世界1位になるという予測をイギリスの民間の調査機関がまとめました。

アメリカ経済が新型コロナウイルスの感染拡大の深刻な影響を受ける一方、中国経済が回復していることが主な要因だと分析しています。

 

これは、イギリスの民間調査機関が世界193の国や地域のGDP=国内総生産について、2035年までの長期的な推移を予測したもので、26日に発表しました。

それによりますと、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、ことしの世界全体のGDPの伸び率はマイナス4.4%に落ち込むと予測しています。

 

ただ、こうした中でも、中国については、GDPの伸び率をプラス2%と予測していて、欧米の主要国がマイナス成長に陥る見通しとなる中でもプラス成長を維持するとみています。

これは、中国がアメリカやヨーロッパと比べて感染の抑え込みに成功し、いち早く回復しているためだと指摘していて、2028年には中国のGDPの規模がアメリカを上回り世界1位になると予測しています。

前回の予測では、中国のGDPがアメリカを追い越すのは2033年としていましたが、5年早まった形です。

 

一方、日本についても感染拡大の影響は深刻だとして、ことしのGDPの伸び率はマイナス5.5%に落ち込むと予測しています。【12月27日 NHK】

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もっとも、こうしたことをもって、アメリカが「覇権」を中国に奪われる・・・云々といった、米ソの冷戦当時のような発想を戒める指摘もあります。

 

****米中はゼロサム関係ではない――米国はなぜ対中ヒステリーに走るのか****

1月7日付毎日新聞で坂東賢治=専門編集委員が「米中はゼロサム関係か?」と題したコラムを書いていて、この設問の仕方は正しい。

 

設問それ自体に答えが含まれており、「米中対立激化で米政界やメディアには冷戦時代の米ソ関係のように中国の得点を米国の失点と見る『ゼロサム思考』が広がった。……〔が、この〕思考で米中どちらかの選択を迫るような手法は簡単には通用しまい」というのが結論である。(後略)【1月13日 高野孟氏「アメリカ混迷の根源。中国に「覇権」を奪われるという被害妄想の代償」 YAHOO!ニュース】

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中国が“非民主的な軍事大国のまま対外的な悪影響を及ぼし続ける”ことへの懸念も。

 

****中国はコロナで5年早く「最強国」になる?ますます「不寛容さ」が際立つ奇妙な現象****

(中略)鄧小平が掲げた「改革開放」以降、しばらくの間「金持ち喧嘩せず」とばかりに寛容さを装ってきた中国だったが、大国になっても傍若無人の振る舞いを変えないことから国際社会の目が厳しくなると、自分と異なる他者を排斥するという不寛容さが再び頭をもたげ始めているのである。

 

自らの不寛容さを克服できなければ中国は「最強国」にはなれないが、非民主的な軍事大国のまま対外的な悪影響を及ぼし続けるという「不都合な真実」となる可能性が高い。

 

『不寛容論 アメリカが生んだ「共存」の哲学』(新潮選書)の著者である森本あんり氏は、「自分の信念は信念として堅持したまま、自分とは根本的に違う価値観を持つ他者と何とかして平和裡に共存する道を模索する」ことが現実的な寛容のあり方だと結論づけているが、隣国としての日本は、このような「寛容」な態度を他者である中国に対して保ち続けることが唯一可能な選択肢ではないだろうか。【1月13日 藤和彦氏 デイリー新潮】

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【「中国が中国ワクチンを首尾よく展開できれば中国にとっての勝利であり、世界の公衆衛生の勝利」】

中国も不寛容さをまき散らすだけでなく、「最強国」にふさわしい国際的信頼を得ようとする戦略も展開しています。パリ協定離脱などに見られるように国際協調を軽視し、「アメリカ第一」を掲げるトランプ政権の内向き姿勢のおかげで、中国は「国際協調の担い手」としての役割を世界にアピールする機会を得ています。

 

そうしたなかで、新型コロナは中国にとって「ワクチン外交」という非常に効果的なカードを与えています。

 

****中国ワクチンに各国から注文続々―香港メディア*****

中国政府は昨年12月31日、国有製薬大手、中国医薬集団(シノファーム)傘下の中国生物が開発した新型コロナウイルス不活化ワクチンを条件付きで承認した。中国国産ワクチンの承認は初めてとなる。

 

これに関連し、香港英字メディアのサウスチャイナ・モーニング・ポストは1日、「中国ワクチンの国際的な注文が急増」とする記事を掲載した。

中国国営新華社通信系の参考消息が3日付で伝えたところによると、サウスチャイナ・モーニング・ポストの記事は、「中国当局が同国初となる新型コロナワクチンを承認したことを受け、パキスタンやハンガリーなどの国々が、中国ワクチンを注文するための列に並んでいる」とした。

そして、ラテンアメリカ、中東、アジアの少なくとも10カ国が、科興控股生物技術(シノバック・バイオテック)や康希諾生物(カンシノ・バイオロジクス)を含む中国のワクチン開発業者と調達契約を締結しているとし、各国の状況について次のように伝えている。

パキスタン政府は20年12月31日、シノファームの新型コロナワクチンを60万人(120万回)分購入することを決めたと発表した。同国でワクチン調達が公式に確認されたのはこれが初となる。

ハンガリーも中国の新型コロナワクチンへの関心を表明した。政府高官は、中国から直接または欧州連合(EU)の調達メカニズム経由での入手を計画していると述べている。

ウクライナは、シノバック・バイオテックから180万回分を調達する契約に署名している。シノバック・バイオテックはシノファームと同様に、20年7月に中国で緊急使用許可を取得している。

記事はまた、専門家のコメントを引用し、「ワクチンの供給は、中国の国際的地位を測る上での重要なベンチマークの一つ」(シンガポール国立大学リー・クアンユー公共政策大学院のDrew Thompson氏)、「中国が中国ワクチンを首尾よく展開できれば中国にとっての勝利であり、世界の公衆衛生の勝利でもある」(オーストラリア国立大学の客員研究員、Dominic Meagher氏)とも伝えている。【1月5日 レコードチャイナ】

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「中国が中国ワクチンを首尾よく展開できれば中国にとっての勝利」という状況で、アメリカ・トランプ大統領がやっているのは「アメリカのワクチン需要を満たさない限り、ワクチン輸出を認めない」というアメリカ第一主義。

 

これでは勝負になりません。もし「覇権」が中国に移るとしたら、その最大の功労者はトランプ大統領でしょう。

(日本の「中国嫌い」の方々は、中国に厳しい対応を見せているということでトランプ支持のようですが、現実は逆でしょう。コロナ蔓延を放置してアメリカ経済を疲弊させ、中国の国際的地位を高めているのがトランプ大統領です。)

 

中国共産党はうまく機会をとらえたとも言えますし、そうしたワクチン外交を推進できる技術力・経済力を中国が有しているということでしょう。(もちろん、中国ワクチンが実際に有効性を発揮し、安全面でも欧米産にひけをとらなければ・・・という、今後の条件付きの話ですが)

 

中国のお膝元、東南アジアASEAN諸国はワクチン外交の格好の舞台ともなっています。

 

****中国外相がASEAN歴訪 米新政権にらみ「ワクチン外交」展開か****

中国の王毅(おうき)国務委員兼外相は、11日からミャンマーなど東南アジア諸国連合(ASEAN)4カ国を歴訪。米国の新政権発足を目前に控え、経済関係や新型コロナウイルスのワクチンをてこにASEANに対する影響力拡大を狙う。

 

国営新華社通信によると、王氏は11〜16日にミャンマー、インドネシア、ブルネイ、フィリピンを訪問する。南シナ海問題で対立が続くフィリピンやインドネシアとは、同問題が議題となる可能性がある。

 

中国としては、今月20日に予定されるバイデン米次期大統領の就任を前に、米国の「対中包囲網」を切り崩すためにもASEAN各国との距離を縮めておきたいとの思惑がある。

 

昨年11月には、中国やASEANなど15カ国が地域的な包括的経済連携(RCEP)に署名しており、王氏は貿易関係の強化を呼び掛ける見通しだ。

 

コロナ禍に直面するアジア各国にとってワクチン確保は喫緊の課題であり、中国は「ワクチン外交」も展開するとみられる。

 

王氏は、今月4〜9日にはナイジェリア、コンゴ民主共和国、ボツワナ、タンザニア、セーシェルのアフリカ5カ国を訪問した。中国外務省によると、1991年から中国の外相は毎年最初の訪問をアフリカとしてきた。

 

中国の通信社「中国新聞社」が10日に配信したインタビューで、アフリカ歴訪を終えた王氏は「ワクチンを必要としているアフリカの国とともに協力したい」と強調した。【1月11日 産経】

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****中国外相がミャンマー訪問、関係強化を議論 ワクチン供与も約束****

中国の王毅外相はミャンマーを訪問し、同国の当局者らと協力関係の強化について議論したほか、新型コロナウイルスワクチンの供与を約束した。ミャンマーの国営テレビが11日伝えた。

王外相は、ミャンマーのウィン・ミン大統領、アウン・サン・スー・チー国家顧問と会談。12日には首都ネピドーで、ミン・アウン・フライン国軍司令官と会談する予定。

国営放送局「ミャンマーラジオTV局(MRTV)」によると、外相とミャンマー当局者らは、安全保障や域内の協力強化のほか、ミャンマーの和平や、ロヒンギャ難民の帰還問題における中国の役割について協議した。

外相はまた、中国製の新型コロナワクチン30万回分の供与をミャンマーに約束したという。

外相は5日間の予定で東南アジアを歴訪しており、ミャンマーが最初の訪問国。ほかにインドネシア、ブルネイ、フィリピンを訪問する。【1月12日 ロイター】

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次の訪問国インドネシアでもワクチン接種が始まっており、まずジョコ大統領が第1号として接種しましたが、そのワクチンも中国製。

 

****インドネシアでワクチン接種開始、ジョコ大統領が第1号****

インドネシアで13日、新型コロナウイルスワクチンの接種キャンペーンが始まり、ジョコ大統領が最初に接種を受けた。

使用するのは11日に緊急使用を承認した中国シノバック・バイオテック(科興控股生物技術)製ワクチン。集団免疫を獲得するには人口2億7000万人の3分の2が接種を受ける必要があるとして、1億8150万人への接種を目指している。

2月までに約150万人の医療従事者に接種する予定。

ジョコ大統領は、大規模なワクチン接種は感染拡大に歯止めをかける上で重要で、経済回復の加速を助けると述べ、国内各地で直ちに接種が始まるだろうと述べた。

シノバックからは2022年1月までに追加で1億2250万回分調達する見通しで、今年第1・四半期中に約3000万回分が届く予定。

このほか、英アストラゼネカや米ファイザーのワクチンを約3億3000万回分調達することになっている。

インドネシアでは12日に1日あたりのコロナ死者が302人と最多を記録し、累計で2万4645人となった。累計感染者数は84万6765人。【1月13日 ロイター】

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インドネシアと並んで感染拡大が深刻なフィリピンでも、中国・シノファームが今週、緊急使用許可を申請する予定とされています。

 

また、タイでも。

 

****タイ、中国からコロナワクチン200万回分購入****

タイのラチャダー政府副報道官はメディアに対して、内閣が中国から新型コロナウイルスワクチン200万回分を調達するための13億バーツ(約44億9000万円)の予算を承認したことを明らかにしました。最前線の医療従事者や慢性疾患のある高齢者などへの接種を優先する予定です。(後略)【1月13日 レコードチャイナ】

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この状況で中国製ワクチンが奏功すれば、東南アジア諸国における中国の存在感は格段に高まりそうです。

 

もちろん、中国の「ワクチン外交」は中国の思惑に沿ってなされるものですが、「中国が中国ワクチンを首尾よく展開できれば中国にとっての勝利であり、世界の公衆衛生の勝利でもある」(オーストラリア国立大学の客員研究員、Dominic Meagher氏)ということになるでしょう。

 

ワクチン囲い込み・争奪戦に終始している欧米が、そのことをとやかく言う資格はないでしょう。

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新型コロナワクチンなどをめぐる日本の事情、世界の事情

2021-01-12 22:46:45 | 疾病・保健衛生

(中国・石家荘市1000万人のPCR検査のため、河北体育館テニス館に設置された「火眼実験室」 設置に10時間、その11時間後には稼働【1月11日 AFP】)

 

【ワクチンには慎重、「健康より世間の目」という日本社会】

1月8日ブログ“新型コロナワクチン 急く様子がない日本の世論と政府 欧米では効率的接種の方法が議論”でも書きましたが、自粛大嫌いの私個人の新型コロナ対策への不満は、一人暮らしの気楽さもあって、乱暴に言えば「自粛・三密回避ばかり言うじゃなくて、出口戦略としてのワクチン接種を急げよ! 副作用? そんなものどんな薬にだってあるだろうが!」というもの。

 

ただ、こうした声は少数派のようで、「ワクチン不安 自粛を続けたい」という自粛大好きの慎重派が多数です。

 

****コロナワクチン、「接種したくない」約3割 民間調査****

調査会社のクロス・マーケティングのネット調査によると、新型コロナウイルスのワクチン接種について「したくない」と答えた人が29%だった。副作用を理由に挙げる人が目立った。行政による副作用の説明が重要になる。

 

同社は18日に全国の20~69歳の1100人に調査した。「接種したい」の回答は「すぐにでも」が8%、「様子を見てから」が50%だった。

 

「接種したくない」は「あまり」が22%、「絶対に」が7%だった。すぐに接種したい人を除いて、接種に慎重な理由を尋ねたところ「副作用が怖いから」が56%に達した。【12月28日 日経】

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先ほどNHKのニュースでもワクチンに関する調査結果を報じていました。数字は忘れましたが、やはり慎重な姿勢の方が多いみたい。

 

世論調査ついでに、もうひとつ興味深い調査結果を。

 

世の中「コロナ、コロナ」と大騒ぎですが、その実態は病気による健康への不安そのものより「世間の目」が怖いというもののようです。

 

****「健康より世間の目」67% コロナ感染で心配なのは―― 朝日新聞社世論調査****

朝日新聞社は、新型コロナウイルスをテーマに郵送方式の世論調査を行った。

 

「感染したら、健康不安より近所や職場など世間の目の方が心配」。この気持ちに「とても」26%と、「やや」41%を合わせて67%が「あてはまる」と答えた。「あまり」23%と「全く」9%を合わせた「あてはまらない」は32%だった。

 

「世間の目の方が心配」な人は現役層に多く、50代以下では74%。一方、60代以上では60%だった。世帯構成でも温度差があり、18歳未満の子どもがいる人だと75%に達した。

 

新型コロナに感染して重症化する不安は「大いに」42%と「ある程度」45%を合わせて87%が「感じる」と答えた。ただ、重症化の不安を「大いに感じる」人でも、66%が「世間の目の方が心配」で、全体との差は見られなかった。

 

背景には、感染者への厳しい視線があるようだ。「自粛要請された外出をして感染したら責められるのは当然」との気持ちがあてはまるのは「とても」27%と、「やや」50%を合わせて77%に上った。

 

マスク着用についても、自分の意識と、他人への視線に分けて尋ねた。自分がマスクをする理由は「感染対策より人の目が気になる気持ちの方が大きい」は、「とても」11%と、「やや」24%を合わせて35%が「あてはまる」と答えた。30代以下の若年層で高めで4割を超え、30代の男性に限ると47%だった。(後略)【1月10日 朝日】

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これはよくわかりますね。

私も、コロナ自体は「まあ、感染したら仕方ないね・・・重症化しても死ぬかも? それは運が悪かったって諦めるしかないね。病気なんてそんなものでしょ。」ぐらいにしか感じませんが、周囲が大騒ぎになるであろうこと、職場などにかける迷惑などの方がはるかに危惧されます。

 

マスクの「感染予防より人目対策」という意識を含め、日本社会が気にしているのはコロナそのもより、「世間」のほう・・・という「いびつ」で息苦しくなるような構造・本音が見えます。

 

こんな「いびつ」な状況を抜け出すために、一日も早くワクチンを・・・と思うのですが、国民の過剰な不安と、万一の場合の責任を回避したい政府の姿勢が絡んで、まったく急ぐ気配がないのは冒頭のとおり。

 

「早ければ2月下旬開始? やれやれ・・・」といった感じ。

ワクチン怖いから自粛していたいと言う人の邪魔はしませんが、接種したい人は早くできるようにしてもらいたいな・・・。

 

【今後課題となる「ワクチンパスポート」】

ワクチンの接種が始まると、接種した人と、まだの人をどう区別するのか、あるいは区別しないのか・・・そのあたりも問題になります。

 

端的に言えば「接種した人だけ飛行機に乗れます、入店できます・・・」ということになるのか、ならないのか。

接種したことを証明するのは「ワクチンパスポート」

 

****「ワクチンパスポート」が航空業界で進行中だが、一筋縄でいかなそうなワケ****

アメリカやイギリスなどで新型コロナウイルス感染症のワクチン接種が始まり、日本でも2月下旬からワクチンの接種を開始する目標を掲げています。

 

これに関連して議論されているのが、もしワクチン接種を証明する必要があるとしたら、どうやってすればいいのか? そこで注目されているのが「ワクチンパスポート」という構想です。

 

新型コロナのワクチンが普及すれば、映画館、イベント会場、レストランなどの公共の場所への入場には、もしかしたらワクチン接種が必要条件になると考えることができます。

 

そうだとしたら、ワクチンの接種を証明したり、接種状況を管理したりするものが役に立つでしょう。それがワクチンパスポートです。

 

新型コロナによって多大な影響を受けた航空業界・旅行業界では、ワクチンパスポート構想に早く着手しました。世界の約290の航空会社が加盟する国際航空運送協会(IATA)は、「IATAトラベルパス」のアプリの開発しています。(中略)

 

すでにオーストラリアのカンタス航空やマレーシアのエアアジアなど、国際線の搭乗客にワクチン接種を義務付ける意向を示している航空会社が出始めており、このような航空会社がこのアプリを利用していく可能性もあります。

 

個人情報管理への懸念

しかしワクチンパスポートでは、ワクチン接種のような健康情報を取り扱うものだけに、個人情報の管理に懸念を抱く人もいるでしょう。ワクチン接種に懐疑的な人も少なくありません。

 

またワクチンパスポートによって、「ワクチンを接種した=コロナ前のように自由に生活できる」といった安易な考えが人々の間で生まれると、社会の不公平を浮き彫りにする可能性があるという指摘もあります。

 

このような反論があるため、ワクチンパスポート構想は一筋縄ではいかないでしょう。【1月12日 GetNavl web】

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「ワクチンを接種した=コロナ前のように自由に生活できる」といった安易な考え・・・別にワクチン接種したからと言って予防をなおざりにする気もありませんが、さりとて、「自分の意思で接種しない人」と一緒にされて、いつまでも活動の自由が制約されるのは御免だね・・・という気も。

 

【危機的感染状況、政治的思惑もあってワクチン接種が進むイスラエル】

海外に目を転じると、ワクチン接種が一番進んでいるのはイスラエル。

イスラエルなどで接種が進んでいるのは、それだけ危機的状況が深刻だ、日本のように悠長に構えていられないという現実もあります。

 

****イスラエルのワクチン接種、世界最速ペース 3週間で国民の2割に****

中東のイスラエルが、世界最速のペースで、新型コロナウイルスワクチンの接種に突き進んでいる。

 

昨年12月20日に3週間の間隔で2回必要とされる米製薬大手ファイザー製のワクチン接種を開始。約3週間で国民の約2割が1回目の接種を終え、今月10日には2回目の接種が始まった。

 

旗振り役は「パンデミック(世界的大流行)を克服する最初の国になる」と強調するネタニヤフ首相。その理由とは――。

 

人口約900万人のイスラエルは、医療従事者や介護従事者、高齢者、感染すると重症化するリスクのある基礎疾患を持つ人たちへのワクチン接種を積極的に展開。すでに約200万人が1回目の接種を終えた。

 

英オックスフォード大が運営する統計サイト「Our World in Data」によると、100人当たりの摂取数は19・55で、先にワクチン接種を始めた英国1・94、米国2・02の約10倍だ。

 

背景にはいくつかの理由がある。ロイター通信はその一つとして、早期にワクチンを入手するため、製薬会社と高値で契約を結んだことを挙げた。

 

政府は支払額を明らかにしていないが、当局筋は1本当たり約30ドルとし、他国の2倍に当たる額で購入しているという。さらにハイテク化された流通網があるイスラエルは、他国のモデルケースになると製薬会社に申し出て、情報の迅速な提供も約束したとされている。

 

また、汚職疑惑の裁判が進行中のネタニヤフ氏にとって、パンデミックからの早期脱出は自身の政治的な生き残りと直結する問題でもある。

 

ネタニヤフ氏は3月23日投開票の総選挙をにらみ、ワクチン接種の開始を2度も前倒しし、さらに当初計画の1日6万人の接種を2・5倍増の15万人へと大幅に拡大した。

 

これに伴い、ワクチンの在庫不足問題が生じると、自ら製薬会社に掛け合うトップセールスを仕掛けるなど、ワクチンの早期納入に躍起となっている。(中略)

 

ワクチン接種が順調に進む一方で、新型コロナ流行の第3波は深刻だ。1日の新規感染者数が8000人(日本の人口で換算すると11万人に相当)を超える日が続き、感染者数は50万人に迫る。英国由来に続き、南アフリカ由来の変異株も見つかった。

 

こうした状況を踏まえ、政府は12月下旬からの都市封鎖(ロックダウン)をさらに強化して延長。この余波で13日に予定されていたネタニヤフ氏の汚職事件の公判は無期限延期された。【1月11日 毎日】

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イスラエルでワクチン接種が早く進んでいる理由としては、上記の他“危機意識の強い国民性に加え、個人情報を把握する国民皆保険制度が奏功している。”【1月12日 共同】とも指摘されています。

 

ネタニヤフ首相は、ファイザー社CEOとの個人的パイプを使って供給を急がせている「政治力」を、汚職疑惑みそぎの総選挙に向けてしきりアピールしているとか。

 

汚職疑惑云々はともかく、個人的には、菅首相にもそういう政治力を期待したいのですが・・・。

 

【接種を急ぐイギリス なかなか進まないアメリカ】

欧州で比較的早いのがイギリス。変異型ウイルスの蔓延で状況が切迫している事情があってのことです。

 

****英国で200万人がワクチン接種 「秋までに全成人に」****

英国でこれまでに新型コロナウイルスワクチンの接種を済ませた人は、約200万人に上っていることが分かった。ハンコック保健相が10日、英スカイ・ニュースとのインタビューで語った。

 

ハンコック氏によると、1月に入って直近7日間に接種を受けた人数は12月全体の合計を上回った。1日当たりの接種人数は20万人に達する勢いだという。

 

同氏は「すでに81歳以上の高齢者のうち約3分の1に接種した」と述べ、最もリスクの高いグループへの接種は「2月半ば」までに完了するとの見通しを示した。

 

また英BBC放送とのインタビューでは、19歳以上の全国民に接種できるだけのワクチンをすでに発注していると説明。「秋までに全員が接種を受けることを切に願っている」と述べた。

 

一方で英政府の医療責任者、ウィッティ主席医務官は10日付の英紙サンデー・タイムズへの寄稿で、感染力の強い変異種による感染が全国で拡大し、「悲劇的な結果」を招いていると指摘。感染者と死者、入院患者が急増し、一部地域では医療体制が未曾有の危機に直面していると訴えた。

 

ハンコック氏とウィッティ氏はそれぞれ、政府によるロックダウン(都市封鎖)措置のルールを守ることが重要だと強調した。ハンコック氏はさらに、「あらゆる違反行為は死を招く恐れがある」「これらのルールは必要最小限のラインだ」と語った。

 

米ジョンズ・ホプキンス大学のデータによると、英国は西欧で初めて感染者が300万人を突破し、死者は8万1000人に達している。【1月11日 CNN】

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“感染拡大が深刻な英イングランドで、ワクチン接種のための大型センターが今週中に7カ所開設され、多くの人々への接種が加速される予定となった。”【1月11日 BBC】とも。

 

深刻な感染状況にもかかわらず、なかなかワクチン接種が進まないアメリカでは、NY州クオモ知事が怒っています。

“「ワクチン打ったらボーナス」「打たなかったら罰金」接種進まぬアメリカで対応に「アメ」と「ムチ」”【1月11日 FNNプライムオンライン】

 

罰金は、NY州のワクチンを使いきれなかった病院に対するものです。

ボーナスは、テキサス州の病院で、ワクチン接種した職員向けのもの。

 

アメリカでもワクチンの安全性を不安視する人は多く、年末、バイデン次期大統領やハリス次期副大統領が、カメラの前でワクチンを接種してアピールするパフォーマンスも。

 

【ワクチン大国インドでは】

欧米先進国だけでなく、“あの”インドでも。

“感染者2位のインド、16日から接種開始 ワクチン大国も国内普及に「壁」”【1月12日 産経】

 

“インドの感染者は1千万人を超えて増え続けており、政府はワクチンを感染対策の「切り札」(政府関係者)と期待する。国内では昨年11月以降、農政改革に反発する農業従事者による抗議活動が拡大し、政権には逆風が吹いている。モディ政権としては、新型コロナの押さえ込み抑えこみを成功させ、政権浮揚につなげたい局面でもある。”【同上】という事情も。

 

なお、“あの”インドという失礼な言い方をしましたが、ワクチンに関して言えば、インドは世界で流通する感染症ワクチンの6割を製造した実績を持つワクチン大国で、今回使用している2種のワクチンも、ひとつは国産、もうひとつのアストラゼネカとオックスフォード大が共同開発したワクチンも、国内でライセンス契約を結んでいる地元企業が生産しています。

 

【「やる」と決めるとトコトンやる中国】

接種者の人数で言えば、やはり中国。

 

****国内で900万人が接種完了=国家衛生健康委****

中国国家衛生健康委員会の曽益新副主任は9日の記者会見で、去年12月15日から、国内でコロナワクチンの大規模な接種作業が正式に始まり、これまで合わせて900万人近くがコロナの予防接種が完了したことを明らかにしました。

また、大規模な接種作業を行うため、全国で2万5392カ所の接種ステーションが設置されたということです。【1月11日 レコードチャイナ】

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中国という国は、政治体制の違いもあって、「やる」と決めるとトコトンやります。

 

****河北省石家荘市で全住民を対象とした2回目のPCR検査実施へ、2日で完了目指す―中国****

河北省石家荘市が10日に開いた新型コロナウイルス対策をめぐる6回目の記者会見によると、今回の感染拡大が判明して以来、同市で確認された感染者と無症状感染者は合わせて369人で、間もなく全住民を対象とした2回目のPCR検査が始まるという。中国新聞社が伝えた。(後略)【1月11日 レコードチャイナ】

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石家荘市ので1回目の検査人数は1025万1875人です。

 

対応には最新技術も駆使されています。

 

****石家荘の防疫の正念場、PCR検査の「火眼」がわずか21時間で稼動****

(中略)8日、PCR検査プラットフォームの「火眼」実験室(エアドーム型)が、わずか10時間で河北体育館テニス館に建設され、完成から11時間後に運用を開始しました。この「火眼」は、1日最高100万人分のサンプルを測定できるということです。

「火眼」実験室は、幅4〜5メートル、高さ3〜4メートル、長さ約10メートルの半円筒状で、12の実験室(エアドーム版)と3つの負圧硬質エアドームで構成されています。エアドームを膨らませるのに約50分しかかからず、内部はモジュール化されています。【1月11日 レコードチャイナ】

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【「時間が止まった世界」「デジタル時代の生きた化石」】

一方、日本では・・・

 

****日本の外出自粛呼び掛け方法、中国で驚きの声****

中国SNSの微博(ウェイボー)で、(中略)投稿者が取り上げたのは、東京都や新宿区の職員らが9日夜、新宿の繁華街に出て、「緊急事態宣言発令中」「不要不急の外出自粛」などと書かれたプラカードを掲げて道行く人に夜間の外出自粛などを呼び掛けるというもの。

投稿者はその様子を伝えた動画を添えて、「日本式だ」と感想をつづった。

ウェイボー上では、埼玉県の大野知事らが「おうちに帰ろう」などと書かれた横断幕を持って駅前の商店街で呼び掛けを行う様子も伝えられている。

これについて、ウェイボーユーザーからは「形式主義」「まるで中国のどこかの村。でもこれほどじゃない」「宣伝カーを何台か走らせれば済む話」「時間が止まった世界」「デジタル時代の生きた化石」などの声が上がっていた。

また、「緊急事態宣言下なのに人出が多いな」との感想も寄せられていた。【1月11日 レコードチャイナ】

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もちろん、「強制はしない」という日本の事情(政治的に誇るべき点)によるもので、中国の政治体制を賛美する気はさらさらありませんが、自粛を訴えるだけでない検査態勢などについては参考にすべき点は多いようにも。

 

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