家訓は「遊」

幸せの瞬間を見逃さない今昔事件簿

最年長友人

2006-03-04 11:06:57 | Weblog
93歳が私の友人の最年長。以前「横取り」でも書いたFJ氏。「横取り」では年齢を間違えていました。

そのFJ氏は部屋が変わっていた。久しぶりに面会するとげっそりと瘠せていた。
私と妻の顔を見て「ああいらっしゃい」と言ってくれた。
持病の喘息が悪化していて明け方から呼吸困難になるようだ。

「もう93歳になるのですよ。いつ逝ったっていいんだが情けない」と言って辛がる。

私は「今何を作っていらっしゃるのですか」と話をそらす意味もあるし実際見てみたい気持ちも合って尋ねてみた。すると少し元気が出てきて作成途中の紙で出来た舟の一部を見せてくれた。いつものことながら、きちんと作られている。FJ氏は歴史絵本の中の挿絵を基に何でも創り上げてしまう。今まではお寺、お城、神社、入院している病院などが作品だ。今回は豊臣秀吉の時代の舟であった。

「ここが、この大きさなので全体ではこの位の物になると思います」とベッドの上で手を広げて見せた。

突然「お宅様はどちらから見えました?」と聞かれた。

どうやら私たちが誰なのか分からなくなっているようだ。
ひげを剃っていないFJ氏を見るのも初めてだ。
落ち込んだ眼で私を見つめて早く逝きたいということを言う。家庭を顧みずに仕事に明け暮れていた自分を反省しているとも言う。
亡くなった妻の写真、息子の嫁と孫の写真の説明をしてくれた。

やがて訪れる別れの予感がした。