家訓は「遊」

幸せの瞬間を見逃さない今昔事件簿

迷子

2012-12-11 08:38:20 | Weblog
師走のショッピングセンターは混雑していた。


「駐車場に空きがなくても怒り出さないでね」と妻に釘を刺された。

外の駐車場も屋内駐車場も「満」の文字が出ていた。

しかし、ちょうど一箇所だけ空いていて難なく止められた。

エスカレーターで降りてゆくと人人人。

妻は買い物に私は、その間歩く。

待ち合わせ時刻を決めて解散した。

真っ直ぐになんて歩けたもんじゃない。

立ち話をする女性たちを追い越し前から来る子供を乗せたカートを避ける。

なかなか追い越せない横一列にならんだ親子をコーナーで抜く。

ショッピングセンターで流す落ち着いたバックミュージックにプラスして各店で流す音
楽。

ラップありバスドラムの響きありで春野にある滝と同じほどやかましい。

2階を2周目のときだった。

子供が泣き叫び走っては立ち止まってキョロキョロする。

周囲は気づかぬふりをするか見ても声をかけない。

ひと目で迷子だと分かった。

私は、その子の横で止まり膝をついて声をかけた。

「迷子になったのかぃ?」

泣いてはキョロキョロするばかりで要領を得ない。

頭を撫でながら「ちゃんと話せ」とやさしく言った。

「バーバイナイー」

何語で何を言っているのか?

「お父さんか、お母さんと来たの?」と聞くが「バーバイナイー」が返ってくる。

やはり迷子に間違いなかった。

きっと、おばあさんと一緒に来て、はぐれてしまったのだろうと想像した。

どこかの店の従業員に、どこに連れて行ったら良いものか聞こうと思っているとエスカレーターから若夫婦が降りてきて「迷子ですか?」と聞く。

「そうらしいですよ」と答えた。

「じゃぁ行こう」と夫が言うや、そのまま子供を抱え上げた。

「お願いします」と私は伝えて散歩の続きを開始した。

周回しているうちに少し気になってきた。

私が慣れないように見えたから、あの夫婦が代わりに預かってくれたのだよな?

彼らは扱いなれているし、どこに連れてゆけばよいか分かっているから、すぐに抱っこしたんだよな?

1階のインフォメーションに寄ってみた。

居た。

お姉さんに大事に扱われているし、そこにある飛行機のおもちゃで遊んで笑顔だった。

「ああ。笑顔になったね。私が発見したものですから。バーバと言っていましたので、おばあさんと一緒に来たかと思いますが」と言うと

「いえ。お父さんと来たと言っております」と言う。

まもなく館内にアナウンスが流れた。

「黄色いシャツを着た3歳の○○君がお父さんを待っております」というような内容だった。

あぁ自分の名前も言えたし誰と来たのかも言えたのだなぁ。

次の周に、もう一度寄ってみると、もう彼の姿はなかった。

「よかった。やはり家族のところに戻るまで心配で」と言うと

「お父さんとお兄さんが迎えに参りました。ありがとうございました」と教えてくれてお礼を言ってくれた。

しばらくすると「先ほどお伝えしました○○君は、お父さんのところに戻りました」とアナウンスが入った。

妻と会って伝えると、そのアナウンスのことは知っていた。

何人の人が心配し、そして安心しただろうか。