年金暮し団塊世代のブログ

男寡になった団塊世代の年金の現実と暮らし向きをブログで。 今や仕事になった鳥撮り(野鳥撮影)の成果もアップします。

フェルメール作品メモ(#07)  (デルフトの)小路

2008年03月24日 | フェルメール


The Little Street  「(デルフトの)小路」
1657-58, oil on canvas, 53.5 x 43.5 cm
Inscribed below window at left : iVMeer (VM in ligature)
Rijksmuseum, Amsterdam, Netherlands


フェルメールには2枚の風景画がある。「#12/デルフト眺望」と、この「小路」である。

2軒の家の正面飾り(ファサード)は、小さな中庭へと続く二つのドアのある壁でつながれている。 右側の入り口を通して、樽の上に屈み込んでいるメイドが見える。 排水路のキラキラ光っている水から、彼女が丁度通路の水洗いを終えたところであることがわかる。 二人の子供が市松模様のタイルを貼った道端で遊んでおり、玄関には手仕事が好きできれい好きなオランダの女らしく、明かりを求めて戸口で手芸する老女がいる。

フェルメールはファサードの入り組んだ種々の素材(粗い赤レンガ、スムースな鉛枠の付いた窓ガラス、木製のシャッター、“のろ”を塗った白壁、等)を腕確かに表現している。

両側のビルが画面の外に、はみ出しているOff Center の構図は、ビル自体の描写よりもストリート・シーン(市井)の雰囲気を描こうとするフェルメールの意図を表している。

白壁を、レンガと石畳の分離と、眼を引きつける物として、構図上の重要な要素に使っている。  更に、ビルの立体感を出す為に、前景の擦り減った石畳の排水溝の明瞭な縦の影を描いている。 この溝が視線を樽の上に屈み込んだメイドヘと導く。(←導くようにする為、通路に座った人物を消し去っている~X 線写真で判明)

レンガの一つ一つを描くよりもむしろ、風雨に耐えたビルの外観、即ち、ひび割れの修理の跡や、通路のドア上部のタイルの無くなった様子、左側ドアの朽ち果てた様子、などを描いている。

デルフトのどこの家と分かるような物は何も描かれていない。 その為、長い問メッヘレン(Mechelen)という自分の家の二階から見た(狭い運河と長い通りが見える)絵と思われていた。 が、右側のビル(男性養老院)はそこには存在しない事が明らかになった。 つまり、フェルメールは構図上、二つの別のビルを隣り合っているように描いている。

曇り空のフラットな光の中で、シーンはタイムレスである。
柔らかい雲から洩れる光を受けた静穏なひとときを、街への愛情を込めて描き出している。 風俗画と呼んだ方が相応しい市井の息づかいが感じられる。


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