2021年2月25日衆議院予算委員会は山田真貴子当時内閣広報官、日本放送協会会長前田晃伸、総務省総務審議官谷脇康彦の3人を参考人招致して行われた。その日の質疑は午前中のみで1番手が立憲民主党の黒岩宇洋、2番手が同じく立憲民主党の後藤祐一、3番手が同じく立憲民主党今井雅人、4番手が日本共産党藤野保史。
国会議員は追及のプロである。与党議員の閣僚に対する質問は追及の色彩は消え、政府政策の持ち上げ、あるいは宣伝の色彩を帯びるケースが多々見られるが、野党議員の追及は厳しく、執拗である。その追及をド素人の当方が添削するというのだから、身の程知らずもいいとこだが、敢えて身の程知らずに挑戦してみることにした。対象は立憲民主党黒岩宇洋の質疑少々と同立憲民主党後藤祐一・
彼らの追及の主題は山田真貴子の総務省次官級ポスト総務審議官(国際担当)当時の2019年11月6日に総務省の放送に関わる許認可権行使対象の、それゆえに「国家公務員倫理法」「第二章国家公務員倫理規程」で「利害関係を有する者」として関係を規制されている衛星放送関連会社東北新社のメディア事業部趣味・エンタメコミュニティ統括部長菅正剛(菅義偉長男)との会食に於いて許認可権に関わる何らかの便宜の要請を受けたか、その要請に対して何らかの便宜を与えたかにあった。
1番手の黒岩宇洋は会食に関する追及の前に一部報道によって知り得た情報として以下の真偽について追及を行った。この追及に関して当方なりの添削を行ってみる。菅義偉が2020年10月26日夜のNHK『ニュースウオッチ9』に出演した際、キャスターによる日本学術会議任命問題についての何度もの質問を受けて、「説明できることとできないことがある」と不快感を顔に見せた。その当日なのか、翌日なのか、山田真貴子はNHKの原政治部長に「総理、怒っていますよ」と抗議の電話をかけたと言う。かけたことが事実なら、政府による報道介入となる。勿論、山田真貴子は「総理が出演後、電話を行ったことはありません」と否定した。対して黒岩宇洋は同じく参考人として呼び出していたNHK会長前田晃伸に質問をぶっつけた。
黒岩宇洋「NHK会長にきのう通告して、NHKの内部でも確認して頂きたいと。山田広報官から26から27日にかけて、NHK、この職員関係者に電話がかけられたという、こういった事実は確認しておりますでしょうか」
前田晃伸「現場に確認に致しましたが、山田広報官から抗議の電話を受けたという事実はございません」
黒岩宇洋「会長、抗議の電話ではなく、電話がかかってきた事実はないという明言でよろしいでしょうか」
前田晃伸「取材制作の過程に関わる事項につきましては原則としてお答えすることは差し控えております。ただ、現場にも確認致しましたが、山田広報官からの抗議の電話を受けたことはございません」
黒岩宇洋「山田広報官に事前にお願いしてあるんですけども、山田広報官の携帯電話の通話履歴、これは携帯の事業会社に確認すれば、全て残っていますから、この履歴を調べて欲しいとお願いしたが、調べて頂けましたか」
山田真貴子「通話履歴は通信事業社に確認したところ、通話履歴の確認につきましては昨年の11月までしか遡れないとのことでした。一方で、私自身の携帯の電話履歴を確認いたしましたが、NHKへの発信の記録はございませんでした」
黒岩宇洋「11月までしか記録は・・・。これはちょっと。ご本人が(NHKに電話はしなかったと)明言したことを裏付けることになる。これはご本人にとっても利益だと思っているので、そういう意味で(履歴の確認を)お願いを致しました。ただ、今申し上げたとおり客観的にですね、携帯事業会社が記録を上げていなかったということで、この点についてまだ、まだ私としても得心することはないので、今後とも確認をさせて頂きます」
黒岩宇洋は以後、山田真貴子と菅正剛との会食の質問に移る。
山田真貴子がNHKに実際に抗議の電話を入れたとしても、黒岩宇洋は山田真貴子もNHK会長の前田晃伸も素直に認めるとでも思っていたのだろうか。事実でなければ、当然否定する。事実であっても、なおさらに否定する。否定して当然であり、否定自体を前以って想定内として追及に臨まなければならなかった。
当然、山田真貴子が「電話はしなかった」、NHK会長の前田晃伸にしても、「山田広報官からの抗議の電話を受けたことはございません」と一旦は否定させたところで、「否定は分かりきっていました」とした上で、分かりきっていたことの理由を述べればいい。それを単なる推測と取るか、可能性として十分に有り得る推測として取るかは追及を聞く者をして任せる以外にない。
最も信憑性の高い分かりきっていたことの理由は次のようなことが考えられる。
山田真貴子がNHKに報道圧力となる抗議の電話を入れたと報じたのは2020年11月15日付ネット記事《総理が怒っていますよ…官邸からNHKへの「クレーム電話」その驚きの中身》と題した
「週刊現代」である。黒岩宇洋が追及した通りのイキサツが書いてある。
山田真貴子がNHKに抗議の電話を入れたとされている疑惑日は菅義偉がNHK『ニュースウオッチ9』に出演した、「週刊現代」では「その翌日」となっているが、黒岩宇洋は「26から27日にかけて」と言っている2020年10月26、27日から「週刊現代」がネット報道する2020年11月15日まで2週間以上、19日も経過している。さらに国会で最初に取り上げたのは、2021年2月22日付「asahi.com」記事でで知り得た情報だが、黒岩宇洋が2021年2月25日に取り上げる3日前の2021年2月22日午後の衆院予算委員会で同じ立憲民主党の本多平直であって、抗議電話の疑惑日から「週刊現代」による疑惑報道まで19日、疑惑報道から本多平直が国会で追及する2021年2月22日までが3ヶ月と7日、合計3ヶ月と22日、約4ヶ月も経過している。一応、このことを前置きしておく。
本多平直の追及相手は菅義偉。記事が伝えている菅答弁を取り上げておく。
菅義偉「(山田氏)本人に確認したところ、NHKにクレームの電話をしたという報道は事実ではないと報告を受けている」
(「クレームの電話はしてないというが、電話はしたのか」の再度の追及に)私が承知しているのは先程来、申し上げた通り。電話してないんじゃないかなと思いますけれども、確認したら(山田氏は)そういうことだと言っていた」
黒岩宇洋はこの3日後の衆院予算委員会で今度は山田真貴子本人に対して同じ追及をし、同じ答弁を得たに過ぎないことになる。
山田真貴子がNHKに抗議の電話を入れたことを一応、事実と仮定しよう。その抗議の電話をNHK側が報道機関に対する国家権力による報道介入だと受け止めた場合は、あくまでも受け止めた場合だが、NHK側から報道機関の使命として国家権力の報道介入という危険な姿勢に警告を発し、それを改めさせるべく、即菅内閣に対して抗議の電話を入れているだろうし、それだけにとどまらずに、そのような姿勢の危険性を社会に知らしめるためにこれこれの報道の介入を受けたことから、これこれの抗議を行ったと広く公表、公表することによって国家権力に対抗する力を得るために社会を味方につけるべ取り計らうはずである。
だが、報道介入に当たることになる抗議電話の疑惑日から本多平直の国会追及までの間、その3日後の2021年2月25日の黒岩宇洋追及までの合計約4ヶ月もの間、NHK自身は音無しの構えでいた。その答は山田真貴子から報道介入に当たる抗議の電話などなかったからだと考えることができる。なかったとすると、「週刊現代」の山田真貴子に関わる取上げ記事は火のないところに煙を立たせた虚偽報道と言うことになる。
但し山田真貴子のNHKへの抗議電話と「週刊現代」の報道を共に事実と仮定した場合、当然、NHK側の抗議によってその事実が表沙汰になったのではなく、「週刊現代」の報道が表沙汰にした事実となる以上、NHK内部の誰かの報道機関向けの内部告発という意図的な行為の介在なくして「週刊現代」が知り得る情報とすることはできない。そしてそのような内部告発の目的はNHK側自身が報道機関の使命として国家権力の報道介入に警告を発すべく、抗議の電話を菅内閣に入れることもせず、結果的にその危険な事実を社会から隠すという報道機関の使命に反した振る舞いに対する反発と仮定することができる。
要するに黒岩宇洋は2021年2月25日の予算員会で山田真貴子がNHKに抗議の電話をしたかしなかったの追及自体を相手の否定を前提として行った上で否定した時点で「週刊現代」の報道はNHK内部の者による内部告発の可能性に言及、その内部告発はNHK自身が報道機関の使命として果たすべき国家権力による報道介入への断固とした拒否を政府側の反発を恐れて事勿れに処理したことに対する個人的な懲罰に発したよくある典型的な例の一つではなかったかといった経緯を描くことによって、道理として十分に有り得る事実として印象づける方向へと持っていくべきではなかったか。
少なくともNHK側からも、菅内閣側からも、山田真貴子本人からも「週刊現代」に対して事実でないことを書かれ、広く報道された、NHKの信用を損なわせた、山田真貴子本人の名誉を傷つけられたといった抗議が何もされなかったのだから、いくらNHKと菅内閣が否定したとしても、あるいは山田真貴子本人が否定したとしても、抗議の電話をしたのは事実ではないかと憶測される事案であり、往々にしてその種の憶測は独り歩きし、憶測そのものを増殖させていく。この独り歩きによる憶測の増殖に便乗して抗議の電話を入れることで報道介入に走ったのは週刊誌の報道通りの事実そののものではないのかとの印象操作に持っていくのも一つの手だろう。ただ否定されて引き下がる手はない。
NHK『ニュースウオッチ9』出演で受けた扱いに反発した菅義偉のNHKに対する山田真貴子を使ったNHKに向けた報道介入の疑いに関わる黒岩宇洋の追及をこのように添削してみたが、如何だろうか。最低限、黒岩宇洋は週刊誌の記事は虚偽報道ということになるから、山田真貴子に「週刊現代」対して名誉を傷つけられたとして何らかの抗議すべきではないか、する気があるのかないのかと問い、その答弁からも抗議の電話をしたのかどうかを探るべきだったろう。
次に同じ立憲民主党の質疑のプロ、後藤祐一の山田真貴子に関わる追及の要所、要所を取り上げて、恐れ多くも添削を試みてみる。そして最後に山田真貴子に関係する追及箇所と総務審議官谷脇康彦に対する追及少々を載せておくことにする。
山田真貴子は黒岩宇洋に対しても同様だったが、反省の意を示すためか、つつましげで低姿勢の様子を見せていて、そのために声を低く話すように努めているようで、なおかつマスクをしているせいで、聞き取りにくい。「行政を歪めるような不適切な働きかけはなかった」としていることと、「飲み会を絶対に断らない女」をウリにしている矜持からすると、もう少し胸を張っていていいはずだが、逆の態度が演出めいていて、胡散臭い感じを与えている。
後藤祐一「きのう官房長官の記者会見で、山田真貴子さんと東北新社側との関係を問われて、会食としては1回限りだという話を聞いております。あとは具体的にはどこのタイミングか分からないけれども、名刺交換等を行ったと、こういった関係にあるということでございますという発言を官房長官はされておられます。山田広報官にお伺いますが、菅正剛氏と最初にお会いしたのはいつですか。この会食があった言われている令和元年(2019年)11月6日の会食のときですか」
山田真貴子「お答え申し上げます。大変失礼ながら、いつ名刺交換したのかというのは記憶にないんですけども、私自身が菅総務大臣以来、菅正剛様が秘書官をやっておられたということは今回の報道で初めて知りまして、と申すのはその当時、自治体に出向しておりまして、ひと月程しか重なっていないということでございます。
というわけで、総務省の職場で面識を得たということはございませんでした。名刺交換をさせて頂いたのは残念ながら、いつだったということは記憶がないものですから、ただ、比較的最近ではないかなというふうに思っています」
この答弁の中に既にウソをついていると思わせる箇所がある。答弁のこういった綻びを追及していかなければ、事実を引き出すことはできない。先ず名刺交換ついて。「いつ名刺交換したのかというのは記憶にない」、「名刺交換をさせて頂いたのは残念ながら、いつだったということは記憶がない」と時期そのものの記憶がないことを言いながら、「比較的最近ではないかなというふうに思っています」と「比較的最近」という時期に記憶を置き換えている。
「比較的最近」への記憶の置き換えはそうすることの方が山田真貴子にとって何らかのメリットがあるからだろう。つまり置き換えるについてのウソがある。後藤祐一は山田真貴子が「はっきりとは覚えていません」と応じるかもしれないが、「比較的最近とは菅正剛と会食した2019年11月6日当日なのか、以前なのか、以後なのか」と一応は追及しなければならなかった。いつ頃かによって両者の関係性の意味合いが異なってくる。
山田真貴子の経歴をネットで調べてみると、菅正剛らと会食した2019年11月6日当時は総務省総務審議官(国際担当)に就いていた。在任期間は2019年7月5日から2020年7月20日までの1年余。自治体への出向は2007年4月までは世田谷区副区長を務めていて、2007年7月に総務省に戻り、総務省総合通信基盤局国際部国際政策課長に就いている。菅正剛は菅義偉が第1次安倍政権で総務大臣として初入閣(2006年9月26日)した際、総務大臣秘書官に抜擢され、2007年7月5日まで総務大臣秘書官として務めたとなっている。但し山田真貴子の経歴には2007年7月に総務省に戻ったことになっているから、「ひと月程しか重なっていない」と言っていることにかなりのズレがある。ネット上の総務大臣秘書官退任の2007年7月5日の日付が間違っているのか、山田真貴子が曖昧な記憶に頼って発言したことからのズレなのかもしれない。後者だとしたら、菅正剛との会食の件で衆議院予算委員会に参考人招致されたのだから、菅正剛と自身の経歴をしっかりと把握した上で質疑の場に臨むべきをそうしていなかったことになる。全てを記憶が曖昧で片付ける必要上、正確に頭に把握しておかなければならない事柄にまで曖昧にしてしまう過剰反応を見せてしまう場合がある。そうだとしたら、そこにもウソがあることになる。
山田真貴子は自治体に出向していた事情で、「菅正剛様が秘書官をやっておられたということは今回の報道で初めて知りました」述べていることにもウソを見なければならない。この理由を述べる前に山田真貴子は東北新社という会社そのものに対しても「東北新社様」と呼び、その社長に対しても「様」付で呼び、菅正剛に対しても「様」付で呼んでいる。総務省は放送事業者に対して許認可権を審査・認可する関係上、厳格な態度(偉ぶった態度ではない)で臨まなければならない性格の役所であり、その役所に所属している者として両者の関係性から言うと、相手を「様」付けで呼ぶのは異常なまでのへりくだりに見える。
かくまでも東北新社に対して自身を下に置かなければならない山田真貴子の理由は何なのだろうか。
役人は特に人事に敏感な生き物であるはずである。誰が次の次官を射止めるか、誰が次官レースから脱落するか、その人事次第で、所属する派閥の成員の人事にも影響してくる。この傾向は次官や審議官の下に配置される各局の人事に於いても言えることであろうし、総務省所掌の行政事務をトップの責任者として管理・監督することになる総務大臣人事については特に敏感にならざるを得ないはずである。当然、2006年9月26日に菅義偉が総務大臣に任命された際、その政治手法・官僚掌握術に無関心ではいられなかったであろう。しかも総務大臣就任と同時に自身の長男である菅正剛を総務大臣秘書官に取り立てたことと、菅正剛の前職がバンド活動していて、政治活動とは無縁であったということと相まって省内ではこの縁故採用の話題で持ち切りとなったはずであるし、縁故採用が省内人事に何か影響することがあるのだろうかといったことにも話は及んだはずだ。
当然その話題は菅義偉の総務大臣就任と菅正剛の総務大臣秘書官就任時に山田真貴子が出向していたとしても、総務省に残っている親しくしていた同僚から、「今度任命された大臣秘書官、総務大臣の長男だって。縁故採用もいいとこ」といった形で連絡が入るか、飲み会を断らない女なのだから、出向の息抜きに彼ら同僚たちと飲み会をしていたとしたら、菅正剛を酒の肴にしてお喋りが盛り上ったことは十分に考えられる。
つまり自治体に出向していたとしても、世田谷区と霞が関は乗り物を使った移動距離では左程遠い距離というわけではなく、電話やパソコン等の通信手段を使った通信距離は感覚的には目と鼻の先であるし、情報や往来の途絶まで伴うわけではない。にも関わらず、「私自身が菅総務大臣以来、菅正剛様が秘書官をやっておられたということは今回の報道で初めて知りまして」と言い、その理由として「自治体に出向しておりまして、ひと月程しか重なっていない」ことを挙げる。まるで情報も往来も途絶した関係を強いられた出向に見える。こんなことはあり得るだろうか。
後藤祐一は「あなたが出向中、総務省の知り合いの同僚と会ってお茶をしたり、飲み会をしたりするといったことは一度なく、電話等で連絡も取り合ったことがなかったのですか」と聞かなければならなかった。「会ってお茶をしたことがある、飲み会をしたことがある、連絡を取り合ったりしたこともある」と答えたなら、「総務大臣の長男であるという稀有な関係性と政治経験がなく、バンド活動が前歴の稀有な素性であることから、総務大臣秘書官に就いた菅正剛なる人物の話題で総務省内はいっときでも賑わったはずです。同僚と会うか連絡を取り合った際にどんな人物か、どんな印象の男か、どんな風貌をしているのかといったことかを聞かされたりしたことは一度もなかったのか」と。
「お茶も飲み会もしたことがあるし、電話で連絡を取り合ったこともあるが、菅正剛について一度も話は出なかった」と答えたなら、「同僚との会話は上司や部下、あるいは同じ同僚でも距離を置いている相手の人物評価に花が咲くものですがね、どうも本当のことを話しているようには見えない」
こう答えて、山田真貴子の答弁を信用ができないところへと持っていく。
後藤祐一はこういったことは一切聞かずに山田真貴子が言っていることが事実かどうかは菅正剛に聞かなければ分からないから、菅正剛を国会に参考人招致することを委員長に求める。
後藤祐一「全く面識のない菅正剛氏とそしてこの東北新社との関係は先程会ったことはないということでしたけど、社長の就任祝いという名目で開かれた会になぜ急に参加することになったのですか。その経緯をお話ください」
山田真貴子「今のお話でございますが、菅正剛様とは名刺交換というのはこの会合以前にしていたというふうに思っております。で、先程、名刺交換だけでございまして、突っ込んだ話をしたり、会話したりということは記憶にないところでございます。で、東北新社様とは菅正剛様とお話させて頂きましたが、前の社長様、植村徹様と記憶しておりますが、新しくなられまして、二宮様に代わられたということでご挨拶されまして、そのときに(菅正剛と)お話があったんではないかなというふうに思っています。
私自身、そのときには放送の担当は外されておりまして、国際政策の担当をしておりましたので、そういう意味では直接に交わる、語るお話と言うよりは世界的な映像事務ですとか、映像一般のお話をお伺いするということをしたと考えていたというふうに思っております」
会食は社長の就任祝いという名目で開かれた。しかし総務省総務審議官(国際担当)だった山田真貴子が後藤祐一のそのような会食に「なぜ急に参加することになったのか」についての経緯を尋ねたのに対して何も答えていない。なぜ山田真貴子が選ばれたのか。聞かれたことをそのまま答えないというのは聞かれたままに答えたなら何かまずいことがあるからで、聞かれたこと以外の答は何らかの誤魔化し・ウソで成り立たせていることになる。
山田真貴子は聞かれてもいないのに、しかも前のところで名刺交換は「いつだったということは記憶がない」とか、「比較的最近ではないかなというふうに思っています」云々と記憶が曖昧であることを装っていながら、ここでは「菅正剛様とは名刺交換というのはこの会合以前にしていたというふうに思っております」と名刺交換の時期についての記憶をかなり限定する言い換えを行っている。
この会合で菅正剛とは初対面で初めて名刺交換をしたが事実なら、この会食に山田真貴子がピンポイントで招待された理由はかなり特殊な意味合いを持つことになる。それを避けるために後藤祐一に聞かれてもいないのに菅正剛様との名刺交換を「この会合以前」とし、前々から親しくしていて、たまたま会食に誘われた関係を装った疑いが出てくる。そして同じく聞かれてもいないのに「放送の担当は外されておりまして、国際政策の担当をしておりました」と東北新社の放送事業とは無関係の部署であることを示して、便宜供与が発生する余地がないことを訴えた可能性が出てくる。
しかし国際担当とは言え、総務省総務審議官は次官級ポストだと言われている。仕事上の関連部署や長年の勤務の間の同僚や部下の異動先に対する影響力は相当なものがあるはずで、その影響力を駆使すれば、自身は放送事業とは無関係の部署にいたとしても、東北新社の放送事業と関連する部署への働きかけは不可能ではない。その上、谷脇康彦総務審議官、吉田眞人総務審議官、秋本芳徳前情報流通行政局長、湯本博信大臣官房審議官等々、錚々たる幹部が東北新社から接待を受けていたのだから、山田真貴子も加えて、お互いが周囲に対して「東北新社のこの件、よろしく頼む」と口添えしていったなら、山田真貴子が例え東北新社の放送事業と無関係の部署にいたとしても、影響力の行使は不可能ではなくなる。
後藤祐一は山田真貴子が菅正剛との名刺交換の時期について微妙に言い換えていることに気にも留めずに会食した店が「どんなお店だったのか」とか、「お店の特徴について覚えている限りでお話ください」と求め、山田真貴子は「和食レストランというカテゴリーだと思います」と明確には答えない。最初から記憶が明確ではない文脈で答弁しているから、記憶が明確ではないことに合わせた疑いはある。
後藤祐一の「どんな会話をしたのか」の問には次のように答弁している。
山田真貴子「私自身、繰り返しになりますけども、その時点では放送の関係でございませんでした。私自身も仕事の指揮としましては移動したときがそのような仕事(国際政策)に就いて、過度に派手に関与すべきではないと、こういう意見をしっかりと頂くべきであるという考えのもとに仕事をしてきております。で、そういったことでございますので、元々こういう場(会食の場)で何か仕事の話をするタイプでもございません。
勿論、放送業界ですとか、業界全体の実情に関する話はあったかもしれませんけども、全体的としては一般的な懇談であったというふうに思います」
この答弁はくどい。「放送業界ですとか、業界全体の実情に関する話はあったかもしれませんけども、全体的としては一般的な懇談であったというふうに思います」と後段の端的な答弁のみで総務省の放送事業者に対する許認可に関わる不当などのような働きかけもなかっとの説明となる。にも関わらず、「私自身、繰り返しになりますけども、その時点では放送の関係でございませんでした」とここでも再び東北新社の放送事業とは何の関わりのない部署に所属していたこと、「過度に派手に関与すべきではないと、こういう意見をしっかりと頂くべきであるという考えのもとに仕事をしてきております」と自らの仕事に対するスタンスまで説明、不正に関与する性格の人間ではないことを示した上で、「元々こういう場(会食の場)で何か仕事の話をするタイプでもございません」と言わなくてもいいことまでわざわざ口にしている。
こうまでもくどく説明しなければならないのは、山田真貴子自身が答弁で描いていることの状景の裏に逆の事実を隠している可能性がある。隠していなければ、くどくどとした説明は要らないし、簡単な答弁で済む。事実ではないから、事実であると相手に信じ込ませるために余分な言葉が必要になる。後藤祐一はおかしいじゃないかとこの点を突かなければならなかったが、「極めて東北新社という会社にとっては重要な政策論についてお話したことはありませんか」と、山田真貴子側にとって不都合な事実となる、否定して当然なことを余りにも単刀直入に追及をしている。否定自体を前以って前提とした追及を心がけなければならないことを忘れている。だから、ムダな追及が多くなる。
後藤祐一の上記追及に対して山田真貴子が「働きかけというものはなかったというふうに思っています」と答えると、「特に東北新社に関係するような放送行政に関係するような話題はありませんでしたか」と同じく正直に答えるはずもない繰り返しの追及を試みる時間のムダを費やしている。
山田真貴子「繰り返しになりますけれども、放送業界全体の実情に関する話はあったかもしれませんけれども、全体としては一般的な懇談であったとかというふうに考えております」
結局は後藤祐一自身が2019年11月6日の菅正剛らと山田真貴子との会食の場で思い描いていた東北新社側からの行政を歪めるような不適切な働きかけとその働きかけに内々で応じる山田真貴子の状景に関しては何一つ追及できなかった。
以下添削とは関係ないが、この日の3番手の質疑者立憲民主党今井雅人の質問を少々取り上げてみる。
今井雅人「事前に(菅正剛を認識していた)ということではなく、4人の方と会食されたわけでしょ。呼ばれたら断らない方ですから、どういう方と会食した、その人の名前が分からないまま会食されるということはないと思いますので、会食をした時点では菅正剛さんはいらっしゃってると認識しておられましたね」
山田真貴子「(菅正剛と)会食していたときには認識していたのかなとは思います。ただ当時は名刺交換はなかったと思います。それから(カウンター席に?)横並びだと思うのでお話はしておりませんので、そういう意味で私自身、その場にどういう方がいらっしたかということについては俄には思い出せなかったということでございます」
ネットで調べてみると、会食の出席者は5人。東北新社側が二宮清隆新社長、三上義之取締役執行役員、木田由紀夫執行役員、そして菅正剛を含めて4人。対して山田真貴子が外部の人間として一人。合計5人の会食。
いくら社長就任祝いの会食であったとしても、会食の主催者は山田真貴子ではなく、東北新社側であって、山田真貴子はいわばお客さんである。会食の費用を東北新社側が持ったことでも、この関係性は証明される。気を遣われるべきはたった一人のお客さんである山田真貴子であって、横並びの席に着席していたとしても、横並びの関係から「お話はしておりません」はあり得ない。カウンター席に5人が並んだとしても、話し合う者同士が顔を他の者の背後にのけぞらしたり、前に突き出したりしていくらでも話を盛り上げることができる。当然、「その場にどういう方がいらっしたかということについては俄には思い出せなかった」ということもあり得ない。
大体が今井雅人の前に質問した後藤祐一に対して山田真貴子は「東北新社様とは菅正剛様とお話させて頂きましたが、前の社長様、植村徹様と記憶しておりますが、新しくなられまして、二宮様に代わられたということでご挨拶されまして、そのときに(菅正剛と)お話があったんではないかなというふうに思っています」と会話を交わしたことを口にしている。
今井雅人に対する菅正剛とは会話はしていない、同席者が「俄には思い出せなかった」が怪しい答弁なのは「ただ当時は名刺交換はなかった」と答弁していることが証明している。山田真貴子は後藤祐一に対して「菅正剛様とは名刺交換というのはこの会合以前にしていたというふうに思っております」と答弁している。つまり山田真貴子は菅正剛と会食前に既に名刺交換していたから、会食時に名刺交換は必要なかった。会食前からお互いに面識があったということであって、いくら横並びの席であっても会話を交さないということもあり得ないし、「(菅正剛と)会食していたときには認識していたのかなとは思います」という相手に対するあやふやな印象もあり得ない。虚偽答弁そのものであろう。
国会議員は追及のプロである。与党議員の閣僚に対する質問は追及の色彩は消え、政府政策の持ち上げ、あるいは宣伝の色彩を帯びるケースが多々見られるが、野党議員の追及は厳しく、執拗である。その追及をド素人の当方が添削するというのだから、身の程知らずもいいとこだが、敢えて身の程知らずに挑戦してみることにした。対象は立憲民主党黒岩宇洋の質疑少々と同立憲民主党後藤祐一・
彼らの追及の主題は山田真貴子の総務省次官級ポスト総務審議官(国際担当)当時の2019年11月6日に総務省の放送に関わる許認可権行使対象の、それゆえに「国家公務員倫理法」「第二章国家公務員倫理規程」で「利害関係を有する者」として関係を規制されている衛星放送関連会社東北新社のメディア事業部趣味・エンタメコミュニティ統括部長菅正剛(菅義偉長男)との会食に於いて許認可権に関わる何らかの便宜の要請を受けたか、その要請に対して何らかの便宜を与えたかにあった。
1番手の黒岩宇洋は会食に関する追及の前に一部報道によって知り得た情報として以下の真偽について追及を行った。この追及に関して当方なりの添削を行ってみる。菅義偉が2020年10月26日夜のNHK『ニュースウオッチ9』に出演した際、キャスターによる日本学術会議任命問題についての何度もの質問を受けて、「説明できることとできないことがある」と不快感を顔に見せた。その当日なのか、翌日なのか、山田真貴子はNHKの原政治部長に「総理、怒っていますよ」と抗議の電話をかけたと言う。かけたことが事実なら、政府による報道介入となる。勿論、山田真貴子は「総理が出演後、電話を行ったことはありません」と否定した。対して黒岩宇洋は同じく参考人として呼び出していたNHK会長前田晃伸に質問をぶっつけた。
黒岩宇洋「NHK会長にきのう通告して、NHKの内部でも確認して頂きたいと。山田広報官から26から27日にかけて、NHK、この職員関係者に電話がかけられたという、こういった事実は確認しておりますでしょうか」
前田晃伸「現場に確認に致しましたが、山田広報官から抗議の電話を受けたという事実はございません」
黒岩宇洋「会長、抗議の電話ではなく、電話がかかってきた事実はないという明言でよろしいでしょうか」
前田晃伸「取材制作の過程に関わる事項につきましては原則としてお答えすることは差し控えております。ただ、現場にも確認致しましたが、山田広報官からの抗議の電話を受けたことはございません」
黒岩宇洋「山田広報官に事前にお願いしてあるんですけども、山田広報官の携帯電話の通話履歴、これは携帯の事業会社に確認すれば、全て残っていますから、この履歴を調べて欲しいとお願いしたが、調べて頂けましたか」
山田真貴子「通話履歴は通信事業社に確認したところ、通話履歴の確認につきましては昨年の11月までしか遡れないとのことでした。一方で、私自身の携帯の電話履歴を確認いたしましたが、NHKへの発信の記録はございませんでした」
黒岩宇洋「11月までしか記録は・・・。これはちょっと。ご本人が(NHKに電話はしなかったと)明言したことを裏付けることになる。これはご本人にとっても利益だと思っているので、そういう意味で(履歴の確認を)お願いを致しました。ただ、今申し上げたとおり客観的にですね、携帯事業会社が記録を上げていなかったということで、この点についてまだ、まだ私としても得心することはないので、今後とも確認をさせて頂きます」
黒岩宇洋は以後、山田真貴子と菅正剛との会食の質問に移る。
山田真貴子がNHKに実際に抗議の電話を入れたとしても、黒岩宇洋は山田真貴子もNHK会長の前田晃伸も素直に認めるとでも思っていたのだろうか。事実でなければ、当然否定する。事実であっても、なおさらに否定する。否定して当然であり、否定自体を前以って想定内として追及に臨まなければならなかった。
当然、山田真貴子が「電話はしなかった」、NHK会長の前田晃伸にしても、「山田広報官からの抗議の電話を受けたことはございません」と一旦は否定させたところで、「否定は分かりきっていました」とした上で、分かりきっていたことの理由を述べればいい。それを単なる推測と取るか、可能性として十分に有り得る推測として取るかは追及を聞く者をして任せる以外にない。
最も信憑性の高い分かりきっていたことの理由は次のようなことが考えられる。
山田真貴子がNHKに報道圧力となる抗議の電話を入れたと報じたのは2020年11月15日付ネット記事《総理が怒っていますよ…官邸からNHKへの「クレーム電話」その驚きの中身》と題した
「週刊現代」である。黒岩宇洋が追及した通りのイキサツが書いてある。
山田真貴子がNHKに抗議の電話を入れたとされている疑惑日は菅義偉がNHK『ニュースウオッチ9』に出演した、「週刊現代」では「その翌日」となっているが、黒岩宇洋は「26から27日にかけて」と言っている2020年10月26、27日から「週刊現代」がネット報道する2020年11月15日まで2週間以上、19日も経過している。さらに国会で最初に取り上げたのは、2021年2月22日付「asahi.com」記事でで知り得た情報だが、黒岩宇洋が2021年2月25日に取り上げる3日前の2021年2月22日午後の衆院予算委員会で同じ立憲民主党の本多平直であって、抗議電話の疑惑日から「週刊現代」による疑惑報道まで19日、疑惑報道から本多平直が国会で追及する2021年2月22日までが3ヶ月と7日、合計3ヶ月と22日、約4ヶ月も経過している。一応、このことを前置きしておく。
本多平直の追及相手は菅義偉。記事が伝えている菅答弁を取り上げておく。
菅義偉「(山田氏)本人に確認したところ、NHKにクレームの電話をしたという報道は事実ではないと報告を受けている」
(「クレームの電話はしてないというが、電話はしたのか」の再度の追及に)私が承知しているのは先程来、申し上げた通り。電話してないんじゃないかなと思いますけれども、確認したら(山田氏は)そういうことだと言っていた」
黒岩宇洋はこの3日後の衆院予算委員会で今度は山田真貴子本人に対して同じ追及をし、同じ答弁を得たに過ぎないことになる。
山田真貴子がNHKに抗議の電話を入れたことを一応、事実と仮定しよう。その抗議の電話をNHK側が報道機関に対する国家権力による報道介入だと受け止めた場合は、あくまでも受け止めた場合だが、NHK側から報道機関の使命として国家権力の報道介入という危険な姿勢に警告を発し、それを改めさせるべく、即菅内閣に対して抗議の電話を入れているだろうし、それだけにとどまらずに、そのような姿勢の危険性を社会に知らしめるためにこれこれの報道の介入を受けたことから、これこれの抗議を行ったと広く公表、公表することによって国家権力に対抗する力を得るために社会を味方につけるべ取り計らうはずである。
だが、報道介入に当たることになる抗議電話の疑惑日から本多平直の国会追及までの間、その3日後の2021年2月25日の黒岩宇洋追及までの合計約4ヶ月もの間、NHK自身は音無しの構えでいた。その答は山田真貴子から報道介入に当たる抗議の電話などなかったからだと考えることができる。なかったとすると、「週刊現代」の山田真貴子に関わる取上げ記事は火のないところに煙を立たせた虚偽報道と言うことになる。
但し山田真貴子のNHKへの抗議電話と「週刊現代」の報道を共に事実と仮定した場合、当然、NHK側の抗議によってその事実が表沙汰になったのではなく、「週刊現代」の報道が表沙汰にした事実となる以上、NHK内部の誰かの報道機関向けの内部告発という意図的な行為の介在なくして「週刊現代」が知り得る情報とすることはできない。そしてそのような内部告発の目的はNHK側自身が報道機関の使命として国家権力の報道介入に警告を発すべく、抗議の電話を菅内閣に入れることもせず、結果的にその危険な事実を社会から隠すという報道機関の使命に反した振る舞いに対する反発と仮定することができる。
要するに黒岩宇洋は2021年2月25日の予算員会で山田真貴子がNHKに抗議の電話をしたかしなかったの追及自体を相手の否定を前提として行った上で否定した時点で「週刊現代」の報道はNHK内部の者による内部告発の可能性に言及、その内部告発はNHK自身が報道機関の使命として果たすべき国家権力による報道介入への断固とした拒否を政府側の反発を恐れて事勿れに処理したことに対する個人的な懲罰に発したよくある典型的な例の一つではなかったかといった経緯を描くことによって、道理として十分に有り得る事実として印象づける方向へと持っていくべきではなかったか。
少なくともNHK側からも、菅内閣側からも、山田真貴子本人からも「週刊現代」に対して事実でないことを書かれ、広く報道された、NHKの信用を損なわせた、山田真貴子本人の名誉を傷つけられたといった抗議が何もされなかったのだから、いくらNHKと菅内閣が否定したとしても、あるいは山田真貴子本人が否定したとしても、抗議の電話をしたのは事実ではないかと憶測される事案であり、往々にしてその種の憶測は独り歩きし、憶測そのものを増殖させていく。この独り歩きによる憶測の増殖に便乗して抗議の電話を入れることで報道介入に走ったのは週刊誌の報道通りの事実そののものではないのかとの印象操作に持っていくのも一つの手だろう。ただ否定されて引き下がる手はない。
NHK『ニュースウオッチ9』出演で受けた扱いに反発した菅義偉のNHKに対する山田真貴子を使ったNHKに向けた報道介入の疑いに関わる黒岩宇洋の追及をこのように添削してみたが、如何だろうか。最低限、黒岩宇洋は週刊誌の記事は虚偽報道ということになるから、山田真貴子に「週刊現代」対して名誉を傷つけられたとして何らかの抗議すべきではないか、する気があるのかないのかと問い、その答弁からも抗議の電話をしたのかどうかを探るべきだったろう。
次に同じ立憲民主党の質疑のプロ、後藤祐一の山田真貴子に関わる追及の要所、要所を取り上げて、恐れ多くも添削を試みてみる。そして最後に山田真貴子に関係する追及箇所と総務審議官谷脇康彦に対する追及少々を載せておくことにする。
山田真貴子は黒岩宇洋に対しても同様だったが、反省の意を示すためか、つつましげで低姿勢の様子を見せていて、そのために声を低く話すように努めているようで、なおかつマスクをしているせいで、聞き取りにくい。「行政を歪めるような不適切な働きかけはなかった」としていることと、「飲み会を絶対に断らない女」をウリにしている矜持からすると、もう少し胸を張っていていいはずだが、逆の態度が演出めいていて、胡散臭い感じを与えている。
後藤祐一「きのう官房長官の記者会見で、山田真貴子さんと東北新社側との関係を問われて、会食としては1回限りだという話を聞いております。あとは具体的にはどこのタイミングか分からないけれども、名刺交換等を行ったと、こういった関係にあるということでございますという発言を官房長官はされておられます。山田広報官にお伺いますが、菅正剛氏と最初にお会いしたのはいつですか。この会食があった言われている令和元年(2019年)11月6日の会食のときですか」
山田真貴子「お答え申し上げます。大変失礼ながら、いつ名刺交換したのかというのは記憶にないんですけども、私自身が菅総務大臣以来、菅正剛様が秘書官をやっておられたということは今回の報道で初めて知りまして、と申すのはその当時、自治体に出向しておりまして、ひと月程しか重なっていないということでございます。
というわけで、総務省の職場で面識を得たということはございませんでした。名刺交換をさせて頂いたのは残念ながら、いつだったということは記憶がないものですから、ただ、比較的最近ではないかなというふうに思っています」
この答弁の中に既にウソをついていると思わせる箇所がある。答弁のこういった綻びを追及していかなければ、事実を引き出すことはできない。先ず名刺交換ついて。「いつ名刺交換したのかというのは記憶にない」、「名刺交換をさせて頂いたのは残念ながら、いつだったということは記憶がない」と時期そのものの記憶がないことを言いながら、「比較的最近ではないかなというふうに思っています」と「比較的最近」という時期に記憶を置き換えている。
「比較的最近」への記憶の置き換えはそうすることの方が山田真貴子にとって何らかのメリットがあるからだろう。つまり置き換えるについてのウソがある。後藤祐一は山田真貴子が「はっきりとは覚えていません」と応じるかもしれないが、「比較的最近とは菅正剛と会食した2019年11月6日当日なのか、以前なのか、以後なのか」と一応は追及しなければならなかった。いつ頃かによって両者の関係性の意味合いが異なってくる。
山田真貴子の経歴をネットで調べてみると、菅正剛らと会食した2019年11月6日当時は総務省総務審議官(国際担当)に就いていた。在任期間は2019年7月5日から2020年7月20日までの1年余。自治体への出向は2007年4月までは世田谷区副区長を務めていて、2007年7月に総務省に戻り、総務省総合通信基盤局国際部国際政策課長に就いている。菅正剛は菅義偉が第1次安倍政権で総務大臣として初入閣(2006年9月26日)した際、総務大臣秘書官に抜擢され、2007年7月5日まで総務大臣秘書官として務めたとなっている。但し山田真貴子の経歴には2007年7月に総務省に戻ったことになっているから、「ひと月程しか重なっていない」と言っていることにかなりのズレがある。ネット上の総務大臣秘書官退任の2007年7月5日の日付が間違っているのか、山田真貴子が曖昧な記憶に頼って発言したことからのズレなのかもしれない。後者だとしたら、菅正剛との会食の件で衆議院予算委員会に参考人招致されたのだから、菅正剛と自身の経歴をしっかりと把握した上で質疑の場に臨むべきをそうしていなかったことになる。全てを記憶が曖昧で片付ける必要上、正確に頭に把握しておかなければならない事柄にまで曖昧にしてしまう過剰反応を見せてしまう場合がある。そうだとしたら、そこにもウソがあることになる。
山田真貴子は自治体に出向していた事情で、「菅正剛様が秘書官をやっておられたということは今回の報道で初めて知りました」述べていることにもウソを見なければならない。この理由を述べる前に山田真貴子は東北新社という会社そのものに対しても「東北新社様」と呼び、その社長に対しても「様」付で呼び、菅正剛に対しても「様」付で呼んでいる。総務省は放送事業者に対して許認可権を審査・認可する関係上、厳格な態度(偉ぶった態度ではない)で臨まなければならない性格の役所であり、その役所に所属している者として両者の関係性から言うと、相手を「様」付けで呼ぶのは異常なまでのへりくだりに見える。
かくまでも東北新社に対して自身を下に置かなければならない山田真貴子の理由は何なのだろうか。
役人は特に人事に敏感な生き物であるはずである。誰が次の次官を射止めるか、誰が次官レースから脱落するか、その人事次第で、所属する派閥の成員の人事にも影響してくる。この傾向は次官や審議官の下に配置される各局の人事に於いても言えることであろうし、総務省所掌の行政事務をトップの責任者として管理・監督することになる総務大臣人事については特に敏感にならざるを得ないはずである。当然、2006年9月26日に菅義偉が総務大臣に任命された際、その政治手法・官僚掌握術に無関心ではいられなかったであろう。しかも総務大臣就任と同時に自身の長男である菅正剛を総務大臣秘書官に取り立てたことと、菅正剛の前職がバンド活動していて、政治活動とは無縁であったということと相まって省内ではこの縁故採用の話題で持ち切りとなったはずであるし、縁故採用が省内人事に何か影響することがあるのだろうかといったことにも話は及んだはずだ。
当然その話題は菅義偉の総務大臣就任と菅正剛の総務大臣秘書官就任時に山田真貴子が出向していたとしても、総務省に残っている親しくしていた同僚から、「今度任命された大臣秘書官、総務大臣の長男だって。縁故採用もいいとこ」といった形で連絡が入るか、飲み会を断らない女なのだから、出向の息抜きに彼ら同僚たちと飲み会をしていたとしたら、菅正剛を酒の肴にしてお喋りが盛り上ったことは十分に考えられる。
つまり自治体に出向していたとしても、世田谷区と霞が関は乗り物を使った移動距離では左程遠い距離というわけではなく、電話やパソコン等の通信手段を使った通信距離は感覚的には目と鼻の先であるし、情報や往来の途絶まで伴うわけではない。にも関わらず、「私自身が菅総務大臣以来、菅正剛様が秘書官をやっておられたということは今回の報道で初めて知りまして」と言い、その理由として「自治体に出向しておりまして、ひと月程しか重なっていない」ことを挙げる。まるで情報も往来も途絶した関係を強いられた出向に見える。こんなことはあり得るだろうか。
後藤祐一は「あなたが出向中、総務省の知り合いの同僚と会ってお茶をしたり、飲み会をしたりするといったことは一度なく、電話等で連絡も取り合ったことがなかったのですか」と聞かなければならなかった。「会ってお茶をしたことがある、飲み会をしたことがある、連絡を取り合ったりしたこともある」と答えたなら、「総務大臣の長男であるという稀有な関係性と政治経験がなく、バンド活動が前歴の稀有な素性であることから、総務大臣秘書官に就いた菅正剛なる人物の話題で総務省内はいっときでも賑わったはずです。同僚と会うか連絡を取り合った際にどんな人物か、どんな印象の男か、どんな風貌をしているのかといったことかを聞かされたりしたことは一度もなかったのか」と。
「お茶も飲み会もしたことがあるし、電話で連絡を取り合ったこともあるが、菅正剛について一度も話は出なかった」と答えたなら、「同僚との会話は上司や部下、あるいは同じ同僚でも距離を置いている相手の人物評価に花が咲くものですがね、どうも本当のことを話しているようには見えない」
こう答えて、山田真貴子の答弁を信用ができないところへと持っていく。
後藤祐一はこういったことは一切聞かずに山田真貴子が言っていることが事実かどうかは菅正剛に聞かなければ分からないから、菅正剛を国会に参考人招致することを委員長に求める。
後藤祐一「全く面識のない菅正剛氏とそしてこの東北新社との関係は先程会ったことはないということでしたけど、社長の就任祝いという名目で開かれた会になぜ急に参加することになったのですか。その経緯をお話ください」
山田真貴子「今のお話でございますが、菅正剛様とは名刺交換というのはこの会合以前にしていたというふうに思っております。で、先程、名刺交換だけでございまして、突っ込んだ話をしたり、会話したりということは記憶にないところでございます。で、東北新社様とは菅正剛様とお話させて頂きましたが、前の社長様、植村徹様と記憶しておりますが、新しくなられまして、二宮様に代わられたということでご挨拶されまして、そのときに(菅正剛と)お話があったんではないかなというふうに思っています。
私自身、そのときには放送の担当は外されておりまして、国際政策の担当をしておりましたので、そういう意味では直接に交わる、語るお話と言うよりは世界的な映像事務ですとか、映像一般のお話をお伺いするということをしたと考えていたというふうに思っております」
会食は社長の就任祝いという名目で開かれた。しかし総務省総務審議官(国際担当)だった山田真貴子が後藤祐一のそのような会食に「なぜ急に参加することになったのか」についての経緯を尋ねたのに対して何も答えていない。なぜ山田真貴子が選ばれたのか。聞かれたことをそのまま答えないというのは聞かれたままに答えたなら何かまずいことがあるからで、聞かれたこと以外の答は何らかの誤魔化し・ウソで成り立たせていることになる。
山田真貴子は聞かれてもいないのに、しかも前のところで名刺交換は「いつだったということは記憶がない」とか、「比較的最近ではないかなというふうに思っています」云々と記憶が曖昧であることを装っていながら、ここでは「菅正剛様とは名刺交換というのはこの会合以前にしていたというふうに思っております」と名刺交換の時期についての記憶をかなり限定する言い換えを行っている。
この会合で菅正剛とは初対面で初めて名刺交換をしたが事実なら、この会食に山田真貴子がピンポイントで招待された理由はかなり特殊な意味合いを持つことになる。それを避けるために後藤祐一に聞かれてもいないのに菅正剛様との名刺交換を「この会合以前」とし、前々から親しくしていて、たまたま会食に誘われた関係を装った疑いが出てくる。そして同じく聞かれてもいないのに「放送の担当は外されておりまして、国際政策の担当をしておりました」と東北新社の放送事業とは無関係の部署であることを示して、便宜供与が発生する余地がないことを訴えた可能性が出てくる。
しかし国際担当とは言え、総務省総務審議官は次官級ポストだと言われている。仕事上の関連部署や長年の勤務の間の同僚や部下の異動先に対する影響力は相当なものがあるはずで、その影響力を駆使すれば、自身は放送事業とは無関係の部署にいたとしても、東北新社の放送事業と関連する部署への働きかけは不可能ではない。その上、谷脇康彦総務審議官、吉田眞人総務審議官、秋本芳徳前情報流通行政局長、湯本博信大臣官房審議官等々、錚々たる幹部が東北新社から接待を受けていたのだから、山田真貴子も加えて、お互いが周囲に対して「東北新社のこの件、よろしく頼む」と口添えしていったなら、山田真貴子が例え東北新社の放送事業と無関係の部署にいたとしても、影響力の行使は不可能ではなくなる。
後藤祐一は山田真貴子が菅正剛との名刺交換の時期について微妙に言い換えていることに気にも留めずに会食した店が「どんなお店だったのか」とか、「お店の特徴について覚えている限りでお話ください」と求め、山田真貴子は「和食レストランというカテゴリーだと思います」と明確には答えない。最初から記憶が明確ではない文脈で答弁しているから、記憶が明確ではないことに合わせた疑いはある。
後藤祐一の「どんな会話をしたのか」の問には次のように答弁している。
山田真貴子「私自身、繰り返しになりますけども、その時点では放送の関係でございませんでした。私自身も仕事の指揮としましては移動したときがそのような仕事(国際政策)に就いて、過度に派手に関与すべきではないと、こういう意見をしっかりと頂くべきであるという考えのもとに仕事をしてきております。で、そういったことでございますので、元々こういう場(会食の場)で何か仕事の話をするタイプでもございません。
勿論、放送業界ですとか、業界全体の実情に関する話はあったかもしれませんけども、全体的としては一般的な懇談であったというふうに思います」
この答弁はくどい。「放送業界ですとか、業界全体の実情に関する話はあったかもしれませんけども、全体的としては一般的な懇談であったというふうに思います」と後段の端的な答弁のみで総務省の放送事業者に対する許認可に関わる不当などのような働きかけもなかっとの説明となる。にも関わらず、「私自身、繰り返しになりますけども、その時点では放送の関係でございませんでした」とここでも再び東北新社の放送事業とは何の関わりのない部署に所属していたこと、「過度に派手に関与すべきではないと、こういう意見をしっかりと頂くべきであるという考えのもとに仕事をしてきております」と自らの仕事に対するスタンスまで説明、不正に関与する性格の人間ではないことを示した上で、「元々こういう場(会食の場)で何か仕事の話をするタイプでもございません」と言わなくてもいいことまでわざわざ口にしている。
こうまでもくどく説明しなければならないのは、山田真貴子自身が答弁で描いていることの状景の裏に逆の事実を隠している可能性がある。隠していなければ、くどくどとした説明は要らないし、簡単な答弁で済む。事実ではないから、事実であると相手に信じ込ませるために余分な言葉が必要になる。後藤祐一はおかしいじゃないかとこの点を突かなければならなかったが、「極めて東北新社という会社にとっては重要な政策論についてお話したことはありませんか」と、山田真貴子側にとって不都合な事実となる、否定して当然なことを余りにも単刀直入に追及をしている。否定自体を前以って前提とした追及を心がけなければならないことを忘れている。だから、ムダな追及が多くなる。
後藤祐一の上記追及に対して山田真貴子が「働きかけというものはなかったというふうに思っています」と答えると、「特に東北新社に関係するような放送行政に関係するような話題はありませんでしたか」と同じく正直に答えるはずもない繰り返しの追及を試みる時間のムダを費やしている。
山田真貴子「繰り返しになりますけれども、放送業界全体の実情に関する話はあったかもしれませんけれども、全体としては一般的な懇談であったとかというふうに考えております」
結局は後藤祐一自身が2019年11月6日の菅正剛らと山田真貴子との会食の場で思い描いていた東北新社側からの行政を歪めるような不適切な働きかけとその働きかけに内々で応じる山田真貴子の状景に関しては何一つ追及できなかった。
以下添削とは関係ないが、この日の3番手の質疑者立憲民主党今井雅人の質問を少々取り上げてみる。
今井雅人「事前に(菅正剛を認識していた)ということではなく、4人の方と会食されたわけでしょ。呼ばれたら断らない方ですから、どういう方と会食した、その人の名前が分からないまま会食されるということはないと思いますので、会食をした時点では菅正剛さんはいらっしゃってると認識しておられましたね」
山田真貴子「(菅正剛と)会食していたときには認識していたのかなとは思います。ただ当時は名刺交換はなかったと思います。それから(カウンター席に?)横並びだと思うのでお話はしておりませんので、そういう意味で私自身、その場にどういう方がいらっしたかということについては俄には思い出せなかったということでございます」
ネットで調べてみると、会食の出席者は5人。東北新社側が二宮清隆新社長、三上義之取締役執行役員、木田由紀夫執行役員、そして菅正剛を含めて4人。対して山田真貴子が外部の人間として一人。合計5人の会食。
いくら社長就任祝いの会食であったとしても、会食の主催者は山田真貴子ではなく、東北新社側であって、山田真貴子はいわばお客さんである。会食の費用を東北新社側が持ったことでも、この関係性は証明される。気を遣われるべきはたった一人のお客さんである山田真貴子であって、横並びの席に着席していたとしても、横並びの関係から「お話はしておりません」はあり得ない。カウンター席に5人が並んだとしても、話し合う者同士が顔を他の者の背後にのけぞらしたり、前に突き出したりしていくらでも話を盛り上げることができる。当然、「その場にどういう方がいらっしたかということについては俄には思い出せなかった」ということもあり得ない。
大体が今井雅人の前に質問した後藤祐一に対して山田真貴子は「東北新社様とは菅正剛様とお話させて頂きましたが、前の社長様、植村徹様と記憶しておりますが、新しくなられまして、二宮様に代わられたということでご挨拶されまして、そのときに(菅正剛と)お話があったんではないかなというふうに思っています」と会話を交わしたことを口にしている。
今井雅人に対する菅正剛とは会話はしていない、同席者が「俄には思い出せなかった」が怪しい答弁なのは「ただ当時は名刺交換はなかった」と答弁していることが証明している。山田真貴子は後藤祐一に対して「菅正剛様とは名刺交換というのはこの会合以前にしていたというふうに思っております」と答弁している。つまり山田真貴子は菅正剛と会食前に既に名刺交換していたから、会食時に名刺交換は必要なかった。会食前からお互いに面識があったということであって、いくら横並びの席であっても会話を交さないということもあり得ないし、「(菅正剛と)会食していたときには認識していたのかなとは思います」という相手に対するあやふやな印象もあり得ない。虚偽答弁そのものであろう。
2015年2月25日衆議院予算委員会立憲民主党後藤祐一対山田真貴子参考人招致 聞き取りにくく、意味不明な箇所は「?」か、「・・・・」で処理した。 後藤祐一「では、山田真貴子広報官にお話を伺いたいと思います。内閣広報官というお仕事は政府で起きている事実関係を世の中に正しく伝えるということがお仕事だと思うんですが、政府の説明責任をいわば代表している立場だと思いますが、如何ですか」 山田真貴子「お答え申し上げます。説明責任という言葉は確か書いてなかったと思いますけども、政府の政策を広く知って頂くということが大事な仕事かなと考えております」 後藤祐一「本日も政府の中で何が起きているのかきちっと説明するためにこられておりますので、是非事実を包み隠さずに述べて頂きたいと思います。 きのう官房長官の記者会見で山田真貴子さんに関連して内閣広報官としての重責を担っていることを改めて自覚して頂き公正に職務を遂行して頂きたいと申し込まれたということでございます。この点は総理からの指示だったということでございます。 いわば続投が総理の指示だったという趣旨のご発言でありますが、山田広報官を辞めさせないというのは菅総理のご判断ですか」 加藤勝信「昨日記者会見で、申し上げ、その前に山田広報官に対してですね、この一連について国家公務員倫理法違反に当たる行為により国民の皆様の疑念を抱く結果になったことは甚だ遺憾であり、反省して貰いたい。今後このようなことが二度とないように厳重に注意して貰いたい。今回の件を重く受け止め、真摯な反省の上に立って内閣府広報官という重責を担っていることを改めて自覚し、国民全体の奉仕者として高い倫理観を持って公正に職務を遂行される、一層奨励されて貰いたい、こういうことを伝えたところでありますが、これはまさに総理からこの指示を頂いて、山田広報官に私からこのことを伝えたことを記者会見で申し上げたところでございます」 後藤祐一「総理の指示だったと。続投は総理の指示だったという答弁だったいうことだと思いますが、山田広報官に伺います。本当は辞めたかったんじゃないですか。辞表を認めた、あるいは杉田副長官(内閣官房副長官杉田和博)か官房長官辺りに辞表をお渡しした、あるいは口頭かもしれませんが、何らかの辞表のお知らせをした。そういったことはなかったですか」 山田真貴子「色々(?)私が国際担当総務審議官在任中に国家公務員倫理法違反の行為があったことにつきましては改めて国民の皆様に深くお詫び申し上げたいと存じます。今のお話にございましたとおり、官房長官から厳重にご注意頂いたところでございます。私自身、内閣府広報官としてお願いして頂いている立場でございます。大変僭越ながら、辞表というものをお渡ししようとしたとかいう事実はございません」 後藤祐一「きのう官房長官の記者会見で、山田真貴子さんと東北新社側との関係を問われて、会食としては1回限りだという話を聞いております。あとは具体的にはどこのタイミングか分からないけれども、名刺交換等を行ったと、こういった関係にあるということでございますという発言を官房長官はされておられます。山田広報官にお伺いますが、菅正剛氏と最初にお会いしたのはいつですか。この会食があった言われている令和元年(2019年)11月6日の会食のときです」 山田真貴子「お答え申し上げます。大変失礼ながら、いつ名刺交換したのかというのは記憶にないんですけども、私自身が菅総務大臣以来、菅正剛様が秘書官をやっておられたということは今回の報道で初めて知りまして、と申すのはその当時、自治体に出向しておりまして、ひと月程しか重なっていないということでございます。 というわけで、総務省の職場で面識を得たということはございませんでした。名刺交換をさせて頂いたのは残念ながら、いつだったということは記憶がないものですから、ただ、比較的最近ではないかなというふうに思っています」 後藤祐一「全く面識のない菅正剛氏とそしてこの東北新社との関係は先程会ったことはないということでしたけど、社長の就任祝いという名目で開かれた会になぜ急に参加することになったのですか。その経緯をお話ください」 山田真貴子「今のお話でございますが、菅正剛様とは名刺交換というのはこの会合以前にしていたというふうに思っております。で、先程、名刺交換だけでございまして、突っ込んだ話をしたり、会話したりということは記憶にないところでございます。で、東北新社様とは菅正剛様とお話させて頂きましたが、前の社長様、植村徹様と記憶しておりますが、新しくなられまして、二宮様に代わられたということでご挨拶されまして、そのときに(菅正剛と)お話があったんではないかなというふうに思っています。 私自身、そのときには放送の担当は外されておりまして、国際政策の担当をしておりましたので、そういう意味では直接に交わる、語るお話と言うよりは世界的な映像事務ですとか、映像一般のお話をお伺いするということをしたと考えていたというふうに思っております」 後藤祐一「令和元年(2019年)11月6日の会合、1回しかしてお会いしていないと言っておりますが、どんなお店だったのですか。ホテルの中のお店だとか、和食の座敷みたいなところだとか、出た料理について少しありましたけど、お店の特徴について覚えている限りでお話ください」 山田真貴子「和食レストランというカテゴリーだと思います。ご利用(?)頂いている企業などにもアンケートを行っているところでございまして、お店の営業に影響がないようにこれ以上は差し控えせさせて頂きます」 後藤祐一「どんな会話をされたんですか。BS、CS、あるいは・・・・無線、架線(?)、・・・(?)の配分。あるいはちょうどその頃にはもう少し支援してほしい、おカネがかかる、何とかして欲しい。色んなお話があったと思いますけども、こうしたBS、CS・・・・・こういったようなお話なかったですか」 山田真貴子「私自身、繰り返しになりますけども、その時点では放送の関係でございませんでした。私自身も仕事の指揮としましては移動したときがそのような仕事(国際政策)に就いて、過度に派手に関与すべきではないと、こういう意見をしっかりと頂くべきであるという考えのもとに仕事をしてきております。で、そういったことでございますので、元々こういう場(会食の場)で何か仕事の話をするタイプでもございません。 勿論、放送業界ですとか、業界全体の実情に関する話はあったかもしれませんけども、全体的としては一般的な懇談であったというふうに思います」 後藤祐一「この委員会に提出された『山田真貴子の事案について』の中でこの会合のときの会話については業界に関する話が繰り返し話題が出た。しかし行政を歪めるような不適切な働きかけはなかった。この3つの条件を厳しくしたという。『行政を歪めるような』、『不適切』、『働きかけ』 行政を歪めているかどうかは分からない。適切か不適切かどうかは分からない。働きかけとなっているかどうかは分からないけども、極めて東北新社という会社にとっては重要な政策論についてお話したことはありませんか」 山田真貴子「働きかけというものはなかったというふうに思っています」 後藤祐一「働きかけに限りません。東北新社に取ってはテロップ(?)の配分ですとかBS、CSこれからどうなっていくかっていうのはこの先の会社の命運を分ける話になるわけです。働きかけではないかもしれないけれど、行政を歪めるかどうかは分からない、不適切ではないかもしらないけど、こういったBS、CS、特に東北新社に関係するような放送行政に関係するような話題はありませんでしたか」 山田真貴子「繰り返しになりますけれども、放送業界全体の実情に関する話はあったかもしれませんけれども、全体としては一般的な懇談であったとかというふうに考えております」 後藤祐一「BSの無線のところは開けるとかね、左のところはお客が少ないから、そこは何とかするっていう話は東北新社に直接影響する話なんですよ」 総務大臣武田良太に検証委員会できちんと検証すべきだと求める。武田良太の答弁は省略。 後藤祐一「山田広報官、この検証委員会から来てくださいと言われたら、きちんと来て頂いて、審議させて頂きますか」 山田真貴子「お答え申し上げます。検証委員会がどういった形なのか、まだ私の立場ではその場に行っていいのかということにつきましては今の時点で判断することがちょっと難しいかなと思っております」 後藤祐一「呼ばれた場合にはお越し頂けるということでよろしいですか。呼ぶかどうか検証委員会の方々が判断する話だと思いますけど。呼ばれた場合には起こし頂くということでよろしいですか」 山田真貴子「呼ばれた場合に私の一存で行けるかどうかということはそこは一応組織の人間でございますので、ご相談した上で判断させていただきますので、私自身は何か予断を持っているわけではございませんが、私一人では判断しかねるところでございます」 後藤祐一「そうかも知れませんね。官房長官か総理が判断するのかもしれませんね。総理の責任が問われるわけです。そこは是非総理に来て頂いたときに聞いてみましょ。 谷脇(康彦)総務審議官にお越し頂いておりますけども、今回の事案につきまして22日の、広田委員のこの委員会での質問に対して今回の事案につきまして公務員の倫理法に抵触する恐れのある事案でございますけど、過去に於いて放送事業者と同様なことをしたということはございませんということで、東北新社と同同様な会食はほかの放送事業者に対してはしていないと答えていますが、同様かどうかは関係ありません。同様でなくても、結構ですが、東北新社以外の放送事業者、そして谷脇総務審議官はむしろ情報通信の世界のプロだと伺っておりますので、情報通信関係の関係者と会食したことございますか」 谷脇康彦「お答え申し上げます。先ず今般、公務員倫理規定の違反をしたとして今般、懲戒処分を受けましたことにつきまして深く反省をし、またお詫び申し上げたいと思います。 委員のお尋ねでありますけども、通信事業者、あるいは放送事業者を問わず、東北新社以外の事業者と公務員倫理法に抵触する恐れのある会食をしたという事実はありません」 後藤祐一「修飾語はつけないで、単に東北新社以外の放送事業者、その関係者、そして情報通信関係の会社とその関連の会社の関連の方々と会食をしたことはございますか。色々と修飾語をつけないでお答えください」 谷脇康彦「お答え申し上げます。意見交換を目的として通信事業者、もしくは情報通信事業者と会食をするということはございます」 後藤祐一「それは利害関係者に当たるかどうかはもう本人の言うことはもう信用できないわけですよ。是非、法務大臣、この検証委員会は今のようなこと、東北新社以外の放送事業者、その関連の方々だけではなくて、通信関係の谷脇さんなんかは大きな影響力を持っているわけですから、今回の(事案?)、まさにそうじゃないですか、この方々と利害関係者に当たるか当たらないか、みんな間違えていたわけですから、本人たちに判断させたなら。利害関係者と飯を食っていないと言うに決まってるじゃないですか。 ですから、利害関係者に当たるか当たらなかは置いておいて、当たらないと思っているような人であっても放送関係者、情報通信関係者と会食したかどうか、これ検証委員会で検証して頂く必要があるんじゃないですか」 武田良太(総務大臣)「先程から申し上げていますように二度とこういうことが起きないようにするための機関でありますので、ありとあらゆるものを検証して頂きたいと思いますので、最終的に委員会が判断すべきだろうかと思っております」 後藤祐一「委員会だって東北新社限定なのか、東北新社以外の放送事業者まで入るのか、あるいは通信の世界まで入るのか、その場合を決めて貰わないと困りますから。大臣、情報通信まで含めてやるっていうことでよろしいですね」 武田良太「二度と国民の疑念を招くようなことにならないように機能できる委員会を期待しております」 後藤祐一「是非、どう対処していくのか、みんなも見ていると思いますので、出して頂きたいと思います」 山田真貴子に対する追及は終わる。 |