安倍晋三の安保法制と改憲意思に忠実であるなら、自公は丸山穂高の「戦争発言」譴責理由に憲法の平和主義を掲げる資格なし

2019-05-27 11:14:27 | 政治


楽天KOBO電子書籍 価格800円

 2019年7月28日任期満了実施参院選で

安倍自民党を大敗に追いつめれば

政権運営が行き詰まり 

2019年10月1日の消費税10%への増税を

断念させる可能性が生じる



 この記事とは無関係だが、米大統領トランプが西暦2019年5月25日午後5時過ぎ、大統領専用機で羽田空港に到着、国賓として来日した。大統領専用機の着陸時には国内線第2ターミナルに500人超が人垣を作り、頭上に掲げたスマートフォンなどで撮影したという。例えその500人が500人とも大統領専用機を撮そうとした航空ファンであったとしても、機体の主がトランプである以上、トランプを歓迎したことになる。歓迎は政策の支持に繋がる。

 トランプの政策を歓迎せずに大統領専用機を撮影できるとしたら、信念がないことになるし、トランプの政策など考えたこともないままに撮影だけに拘ったとしたら、日米間の政治の密接な関わり合いに無関心と言うことになって、例え憲法で選挙の1票を保障されていても、その1票の信用性・価値を損なうことになる。
 
 大統領専用車が目的地に向けて走行する先々の沿道に集まって見送った日本人、大相撲観戦時、特別席に着席したトランプを立ち上がってスマホで撮影した大勢の観客にしても、殆がトランプの地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」からの離脱、イラン核合意からの離脱、イスラエルのエルサレム首都認定、対移民非寛容政策等々の政策と、気に入らない女性を「太った豚」、「不快な生き物」などと呼称する女性蔑視の人間性等々を、それが知らないことであっても、歓迎したことになり、支持したことになる。

 国家等の何らかの組織に縛られていて、トランプの政策を支持していなくても、組織の歓迎に従わなければならない制約下での同調行為ではなく、トランプを上記各場所で歓迎した日本国民の多くは組織に縛られていたわけではなく、主体的行為として自律的に歓迎していることになる以上、その歓迎にはトランプの政策に対する支持が含まれることになる。当然、どのような形での歓迎であろうと、トランプの政策を支持したことになるのだと自覚していなければならない。但し自覚できる人間が何人いるかである。オレは、あるいは私はトランプを見たと自慢し、そのことを勲章として終える人間が多いに違いない。

 2019年5月11日の夜、日本維新の会の衆議院議員丸山穂高が北方四島の「ビザなし交流」の訪問団に参加し、国後島の宿泊施設で酒を飲み、酔った状態で訪問団団長に「戦争で島を取り返すことには賛成ですか、反対ですか」などと質問、いわば"北方四島は戦争で取り返すべき"とする自らの主張・考えをぶっつけた。自らの主張・考えでなかったなら、このような言葉は口を突いて出てくることはない。

 この発言に対して野党からは議員辞職を求める声が上がり、与党からは不適切発言だ、政府の立ち場とは異るとの批判は起きたが、出処進退は議員自らが決めるべきだとして議員辞職には反対の姿勢を示した。

 要するに不適切発言で議員辞職が基準になった場合、失言・不適切発言に事欠かない与党としては議員辞職続出ということになって、自らの首を絞める逆作用が働くことになるからだろう。

 足元の日本維新の会は代表の松井一郎が丸山穂高を除名処分にしただけではなく、5月15日、東京都内の日本記者クラブで会見、「国会で辞職勧告になるだろうし、勿論、我々も賛成だ。本人が事の重大さに早く気付き、これからの人生のためにも早急に潔く身を処すべきだ」(時事ドットコム)と自分から議員辞職することを求めたという。

 但し松井一郎は2日前の5月13日には、「前後の脈絡を精査しないといけないが、戦争で取り返すような考えは党として一切ない。武力での解決は僕にはない。言論の自由だが、武力で領土を取り返す考え方は一切持っていない」と、「戦争発言」そのものに関しては言論の自由認定したといったツイッターが紹介されることになった。

 憲法で基本的人権の一つとして言論の自由が保障されていても、無制限の保障ではなく、言論の質に従う条件付き保障に過ぎない。例えば、〈人種、出身国、民族、宗教、性的指向、性別、容姿、健康(障害)といった、自分から主体的に変えることが困難な事柄に基づいて属する個人または集団に対して攻撃、脅迫、侮辱するヘイトスピーチ(=憎悪表現)〉(Wikipedia)は「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」に於ける罰則の対象とされ、言論の自由の範疇には入らない。

 松井一郎は「言論の自由」とした自らの発言の失態に気づいて、失態を帳消しするために除名処分にとどまらない議員辞職を求めることになった可能性は疑い得ない。

 丸山穂高は野党が辞職勧告決議案の衆院提出を検討するに及んで、5月15日夕に自らのツイッターに、西暦2019年5月15日付「毎日新聞」によると、「憲政史上例を見ない、言論府が自らの首を絞める辞職勧告決議案かと。提出され審議されるなら、こちらも相応の反論や弁明を行います。野党側の感情論で議案が出され、普段は冷静な与党まで含めて審議へ進むなら、まさにこのままではこの国の言論の自由が危ぶまれる話でもある」などと投稿したという。

 丸山穂高は東京大学経済学部卒業、経済産業省入省の逸材(?)だそうだが、松井一郎と同様、言論の質を問題外として「言論の自由」に触れている。"北方四島は戦争で取り返すべき"とする自らの主張・考えを披露する以上、どのような戦術・戦略を以ってして北方四島は奪還可能か、人的・物的代償(いわば犠牲)の程度、国際政治への影響(このことは国際的な日本の立ち場に関係してくることになる)等々を具体的に立案・想定して広く公表、賛否を求めなければならない問題であって、例え反対や批判が大勢を占めたとしても、そうすることによって初めて言論の質をそれなりに獲得し得るが、そういったことを一切せずに極く人数の限られた場でイエスかノーの結論のみを性急に求めて、いわば言論の質もヘッタクレもなく、それを以って「言論の自由」だと言う。逸材に反した程度の低さは如何ともし難い。

 立憲民主党など野党6党派は5月17日に丸山穂高衆院議員に対する辞職勧告決議案を衆院に共同提出。自公の両党は5月21日午前、「譴責決議案」を衆院に共同提出。丸山穂高は5月24日に衆院議院運営委員会理事会に事情聴取の出席を求められたが、病気のため2カ月間の休養が必要だとする医師の診断書を提出・欠席で対抗。双方の"戦争"はなかなか見応えのある攻防を見せている。

 ここで注意しなければならないのは自公の譴責決議案が丸山穂高の「戦争発言」を憲法の平和主義の観点から問題視していることである。

 「議員丸山穂高君譴責決議(案)」(毎日新聞2019年5月21日 12時01分)

 去る五月十一日の国後島訪問中の議員丸山穂高君の平和主義に反する発言は、我が国の国益を大きく損ない、本院の権威と品位を失墜させるもので、到底看過できないものである。

 よって本院は、ここに丸山君を譴責し、猛省を促すものである。

 右決議する。

<理由>

 衆議院議員丸山穂高君は、四島在住ロシア人と日本国民との相互理解の増進を図り、もって領土問題の解決を含む平和条約締結問題の解決に寄与することを目的とする「令和元年度第一回北方四島交流訪問事業」、いわゆるビザなし交流事業に参加し、国後島を訪問した際、五月十一日夜に、ホームビジット先のロシア人島民宅及び宿舎である「友好の家」において飲酒した結果泥酔し、宿舎内で大声を出し他団員と口論をする等の迷惑行為を行い、同行記者団と懇談中の元島民の訪問団長に対し、「戦争でこの島を取り返すのは賛成ですか、反対ですか」「戦争しないとどうしようもなくないですか」などの信じ難い暴言を吐いたと報道され、本人も事実関係を認めている。かかる常軌を逸した言動は、元島民の方々のお気持ちを傷つけただけでなく、特に、憲法の平和主義をおよそ理解していない戦争発言は、国民の悲願である北方領土返還に向けた交渉に多大な影響を及ぼし、我が国の国益を大きく損なうものと言わざるを得ない。

 本件事業は、内閣府交付金に基づく補助金を受けた北方四島交流北海道推進委員会の費用負担により実施されているものであり、本院から公式に派遣したものではないにせよ、丸山君は、沖縄及び北方問題特別委員会の委員であるが故に、優先的に参加することができたものであり、他の団員からは、本院を代表して参加したものと受け止められており、また、その後の報道により、我が国憲法の基本的原則である平和主義の認識を欠く議員の存在を国内外に知らしめ、衝撃を与えた事実は否めず、本院の権威と品位を著しく貶(おとし)める結果となったと断じざるを得ない。

 丸山君の発言は、極めて不穏当なものであり、擁護する余地は全くないものであるが、他方で、議員の身分に関わることは慎重に取り扱う必要があり、憲法上、本院が議員の身分を失わせることができるのは、懲罰による除名及び資格争訟裁判の場合に限られ、いずれも出席議員の三分の二以上の賛成を必要としているのに対し、議員辞職勧告決議は出席議員の過半数の賛成により議決されるもので、理論上は多数会派の意思で議決できるものであり、その観点からも慎重に取り扱われてきた経緯があり、これまで、明白かつ重大な違法行為に当たる場合にのみ議員辞職勧告決議を行ってきており、問題発言を理由に議員辞職勧告決議を行ったことはない。また、除名を含む懲罰は、憲法上、院内の秩序をみだした場合に限られており、本院からの公式派遣でもない本件は直ちには懲罰事案には該当しない。そうであるからと言って、議員の発言が自由に保障されている訳ではなく、仮に、院内での発言であれば、院外で責任を問われないという免責特権が与えられている代わりに、不穏当発言の場合は議院において懲罰を課すことはあり得るものであり、実際に、不穏当発言で懲罰を課せられた事例もある。もとより、丸山君の発言は、明らかに一線を越えたものであり、懲罰の対象とならないからと言って、決して許されるものではない。

 議員の出処進退は自ら決すべきことが基本であり、議員辞職するか否かは、最終的には自ら判断することではあるが、丸山君には、有権者の負託を受け、全国民の代表として議員となっている重みを十分に自覚し、常に、言動をよくわきまえ、適切な判断を下すよう、猛省を促したい。

 以上が、本決議案を提出する理由である。 (文飾は当方)

 日本国憲法に於ける平和主義は「戦争の放棄」、「戦力の不保持」、「交戦権の否認」の3大要件によって成り立っている。要するに丸山穂高に対する譴責決議を衆議院に提出した自公与党は日本国憲法の平和主義を理解し、受け入れていることになる。理解だけで、受け入れていなければ、平和主義を楯にした丸山穂高の「戦争発言」譴責は不可能となる。

 安倍晋三は日本国憲法第2章「戦争の放棄」第1項の「戦争の放棄」と第2項の「戦力の不保持」と「交戦権の否認」を残したまま、第3項を設けて、そこに自衛隊の根拠規定を明記する改憲意思をかねがね示している。例え第1項と第2項を残そうとも、自衛隊の活動を専守防衛のみならず、憲法解釈で容認した集団的自衛権の行使に基づいて海外にまで広げる「新安全保障法制」を2015年9月19日に成立させている。

 当然、9条1項と2項に平和主義の3大要件たる「戦争の放棄」、「戦力の不保持」、「交戦権の否認」を残したとしても、一方で集団的自衛権の行使を容認した自衛隊の存在を9条3項に明記することは1・2項と3項との間に矛盾をつくり出すことになるが、この矛盾を無理やり抑えつけて、矛盾そのものを遠ざけ、限りなく影の薄いものとするためには9条3項を前面に出して、9条に於ける主たる項目とする必要性が生じる。安倍晋三はそのうち、そのような意思を働かすことになるだろう。でなければ、9条1項・2項に邪魔されて、自衛隊は集団的自衛権の行使に基づいた海外活動など不可能となり、折角成立させた安保法制は有名無実化することになる。

 一方、自公与党が丸山穂高の「戦争発言」の譴責理由に憲法の平和主義を掲げることも、安倍晋三の意思通りに憲法が改正されるかどうかは不明で、現時点で改正前であっても、安倍晋三の改正意思そのものと新安保法制が既に可能としている集団的自衛権行使をウソににする矛盾を描くことになる。

 要するに自公は与党として与党親分である安倍晋三の新安保法制の精神と改憲意思に忠実でなければならないのであって、その線に添う義務を有する以上、丸山穂高の「戦争発言」の譴責理由に日本憲法の平和主義を掲げる資格はないということである。

 「我々与党は自衛隊の必要最小限度の武力行使を以ってする止むを得ない場合の戦争は賛成しているが、北方四島に限って戦争で取り返すという考えは過激過ぎて、容認できない。よって本院は、ここに丸山君を譴責し、猛省を促すものである」ぐらいにとどめておくべきだったろう。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

安倍晋三の麻生派のパーティー「民主党政権悪夢」発言は「退位礼正殿の儀」での対天皇・皇后大失態帳消しの強がりか

2019-05-20 12:05:36 | 政治


楽天KOBO電子書籍 価格800円



 2019年7月28日任期満了実施参院選で

安倍自民党を大敗に追いつめれば

政権運営が行き詰まり 

2019年10月1日の消費税10%への増税を

断念させる可能性が生じる




 人間は他人に知れる、何か取り返しのつかない恥をかくことになる大失態をやらかし、それがある種のトラウマとなって自らの記憶に残したとき、人間の常としてトラウマとなったその大失態を帳消しにし、なかった恥にしたい衝動を抱えることになる。

 このような心理劇に関して謙虚な人間は恥をかいたことを認め、素直な反省によって帳消しを図るが、不遜な人間は大失態とは無関係の自慢できる何かを誇示して、その自慢行為に比べたら大失態など取るに足らないことだと思うことによって帳消しを図ることが往々にしてある。

 大失態を大失態だと受け止めずに反省を省いて自慢行為で帳消しを図るのは単に強がリを働いているだけのことになる。強がリを以ってしても、大失態は大失態として残ることになって、自慢行為に代えることも、帳消しすることもできないからなのは断るまでもない。大失態は素直に認める以外に手はないということである。
 
 安倍晋三の大失態はマスコミ報道で知った。天皇・皇后退位を広く国民に知らせる「退位礼正殿の儀」が西暦2019年4月30日、皇居宮殿・松の間で行われ、安倍晋三が国民を代表して天皇・皇后に対する言葉――「国民代表の辞」(首相官邸サイト/2019年4月30日)――を述べた。

 そこで安倍晋三は有り得べからざる大失態を演じた。

 首相官邸サイトの安倍晋三の天皇・皇后に向けた最後の発言は、「天皇皇后両陛下には、末永くお健(すこ)やかであらせられますことを願ってやみません。

 ここに、天皇皇后両陛下に心からの感謝を申し上げ、皇室の一層の御繁栄をお祈り申し上げます」となっている。

 だが、西暦2019年5月15日付、ジャーナリスト田岡俊次名の「AERA dot.」記事は、〈「已む」読めなかった? 安倍首相が歴史的儀式で驚きの大失言〉と題して、その大失態を伝えている

 〈4月30日、「退位礼正殿の儀」で、安倍晋三首相はおそらく歴史に残る大失言をしてしまった。それが起きたのは「国民代表の辞」のほぼ末尾だ。

「天皇、皇后両陛下には末永くお健やかであらせられますことを願っていません」

 これでは、国民の大多数の願いとは全く逆だ。

 文書として公表された「国民代表の辞」には当然、「願ってやみません」とある。なぜこんな間違いが起きたのか。動画で確認すると、安倍氏は懐から出した文書を読み上げたのだが、「あられますことを願って」まで進んだところで一瞬口ごもり、その後で「あらせられますことを願っていません」と発言していることがわかる。

「願ってやまない」の「やむ」は「已む」と書く。「己」や、十二支の「巳」と紛らわしい字ではある。安倍氏が手にした原稿では教養のある官僚が漢字で書いていたため、なんと読むかためらって、「願っていません」と言ってしまったのではないかとも思われる。

 安倍氏は2017年1月24日、参議院本会議で蓮舫議員に対し「訂正でんでんという指摘は全く当たりません」と答弁した。これは「云々」を、「伝々」と誤って覚えていたようだ。もし「国民代表の辞」の原稿にひらがなで「願ってやみません」と書いてあったのに「願っていません」と言ったのなら、安倍氏は「願ってやまない」という言葉を知らないほど語彙が乏しいのか、意図的に変えたのか。どちらも少々考えにくい。

 当意即妙が求められる国会答弁なら「でんでん」も笑い話で済むが、今回の舞台は憲政史上初の儀式だ。その重要な場で国民を代表し、天皇、皇后両陛下に直接あいさつをするのに、下読みも十分にしなかったなら、怠慢の極み。皇室に対する敬意を欠いていると言われても仕方が無いだろう。〉云々。

 記事は間違えた箇所を、〈「あられますことを願って」まで進んだところで一瞬口ごもり、その後で「あらせられますことを願っていません」と発言している〉と解説しているが、実際にどのように読み上げたのか、 Youtube 掲載の首相官邸動画「退位礼正殿の儀 国民代表の辞」から間違い箇所を採録してみた。

 安倍晋三「天皇皇后両陛下には、末永くお健(すこ)やかであらせられますことを、願って、(ほんの少しの間)あらせられますことを願って、(微妙に声を落として)いません。

 ここに、天皇皇后両陛下に心からの感謝を申し上げ、皇室の一層の御繁栄をお祈り申し上げます」

 「あらせられますことを願って」と繰返したのは、「已みません」の「已」が読めずに、そこでつっかえてしまったからだろう。何と読むのか背後に控えている参列者に聞くことも、ましてや天皇に聞くこともできずに何気なさを装いつつ、ゴマカシの強行突破を図った。そのために微妙に声を落とすことになった。

 上記記事は、〈天皇、皇后両陛下に直接あいさつをするのに、下読みも十分にしなかったなら、怠慢の極み。皇室に対する敬意を欠いていると言われても仕方が無いだろう。〉と批判しているが、安倍晋三が皇室に対する敬意を欠いているということはないはずだ。何しろコチコチの戦前型天皇主義者だからだ。

 だが、国民を代表して天皇・皇后に言葉を述べる以上、両者に失礼にならないように一応は目を通す下読みぐらいはしておくべきだったが、それさえしなかった。確かに記事が指摘するように「怠慢の極み」だが、戦前型天皇主義者でありながら、失礼を避ける配慮を欠くことになったのは上から目線の皇室に対する敬意だからだろう。

 歴史的に世俗権力者は天皇を上に位置させながら、その権威を利用して国家及び国民を統治する二重権力構造を延々と引き継いできた。いわば世俗権力者たちは天皇の地位と権威を自分たちの権力に変え、行使してきた。表向きは天皇に対して恭しいまでの敬意を持って仕えながら、その実、天皇を思い通りに巧みに操ってきた。安倍晋三が戦前の日本国家を理想の国家像とし、戦前回帰主義者であることを考えると、二重権力構造を密かに引き継ぐ上から目線の皇室に対する敬意だとしても不思議はない。

 混じり物の一つとしてない安倍晋三の皇室に対する敬意であったなら、原稿に目を通すぐらいのことはしただろう。読むことができない字があるかどうかを確かめるだけではなく、つっかえずに読んだり、不必要な箇所に区切りを入れない用心のためにも一通りは下読みを試みるだけの敬意を有していたはずだ。

 だが、そういった配慮はなかった。上から目線の皇室に対する敬意だからこそできた「怠慢の極み」であろう。

 記事は安倍晋三の大失態に対する世の中の反響について触れている。
 
 〈テレビや翌日の新聞は、公表された原稿の内容を伝え、言い誤りはほとんど報じなかった。記者が聞き耳をたてず、発表文書に頼る風潮を示しているように感じられる。

 私が5月3日に動画サイト「デモクラ・テレビ」の討論番組で「あきれた失言」と話すと、他の出演者は「それは初耳」と驚いていた。その後、右翼団体「一水会」が6日ごろからインターネットで批判を始めるなど、言い間違いへの非難は徐々に広がっている。〉

 ジャーナリスト田岡俊次が5月3日出演した動画サイトで「あきれた失言」と披露すると、周囲は「それは初耳」と驚いていた。その後、5月6日頃からインターネット上で言い間違いへの非難が徐々に広がっていった。

 もし安倍晋三が大失態をやらかして恥をかいたことを少しも気にしていなかったとしたら、感情のない人間扱いされる。国会答弁で痛いところを突かれると、声を荒げたり、野次を飛ばしたりするから、人間としての感情は十分に持っているはずだ。

 当然、人間としての感情を一応は持ち合わせている安倍晋三が恥をかくことになったこの大失態を何かしらの自慢行為で帳消ししたい心理が働いたとしても、当然の人間作用と言うことができ、帳消しを図っているのではないかと窺わせる出来事をマスコミ記事で知ることになった。

 「NHK NEWS WEB」(2019年5月9日 21時07分)

 西暦2019年5月9日 夜に東京都内で開かれた自民党二階派のパーティー。

 安倍晋三「統一地方選挙と参議院選挙が重なると、なかなか自民党は大変であり、12年前の参議院選挙は大敗した。あれからねじれ国会になって政治が安定性を失い、民主党政権が誕生して混迷を極めたのは事実だろう。

 再びあの混乱を起こすことがないよう、あの悪夢が再び舞い戻ってくることがないよう、しっかり勝ち抜いて、政治の安定のもとに誇りある日本をつくっていきたい」

 民主党政権のことを悪夢政権とレッテルを貼る以上、安倍政権は悪夢とは正反対の吉夢政権とレッテルを貼ることができて、そのレッテルは盤石の支持に裏打ちされることになるのだから、悪夢言説から卒業していいはずだ。だが、今以って悪夢言説から卒業できずにいる。自分の政権に自信がないからに他ならない。

 安倍晋三は西暦2019年5月14日夜の自民党麻生派のパーティーでも、続けて悪夢言説を放っている。「毎日新聞」(2019年5月14日 20時05分) 

 安倍晋三「(第1次内閣で臨んだ2007年参院選について)私の責任で惨敗をしてしまった。政治は安定を失い、経済は混迷を深め、我々は政権を失い、悪夢のような民主党政権が誕生した。二度とこのような状況を招いてはならない」

 現在の安倍政権を悪夢の民主党政権の対局に置いているのだから、もっと正々堂々としていていいはずだが、翻って自政権の正当性を訴えるとき、悪夢とレッテルを貼った民主党政権との比較に置く屈折した比較の方法を取っている。正々堂々といかないのは森友疑惑だ、加計疑惑だと、後ろ暗いところを抱えているからでもあり、直近の西暦2019年4月30日に「退位礼正殿の儀」に於ける「国民代表の辞」で恥をかく大失態をやらかして、その帳消しできない大失態を帳消ししたい心理が働くことになって、帳消しできないゆえに何かの自慢行為で強がる以外にゴマカシがきかなくなるということであるはずだ

 その手っ取り早い自慢行為が「悪夢の民主党政権」と比較した自政権の正当性である。

 勿論、本人は否定するだろう。両記事が触れているように「夏の参院選に向けた引き締めだ」とカモフラージュするに違いない。だが、4月30日に恥をかくことになった大失態をやらかし、ジャーナリスト田岡俊次の5月3日の動画サイトでの大失態の指摘によって、3日後の5月6日頃からインターネット上で大失態への非難が徐々に広がり、その3日後の自民党二階派のパーティーが開かれた5月9日頃はネット上で拡散の勢いが増し、その5日後の自民党麻生派のパーティーが開かれた5月14日頃は拡散はかなりの盛り上がりを見せることになっていたはずだ。

 安倍晋三が大恥をかいた手前、ネット上の拡散に無関心ではいられなかっただろう。その件について例えネットを検索しなかったとしても、拡散すれば拡散する程、安倍晋三の大失態の恥も拡散するのだから、少なくともネット上で拡散している状況は否応もなしに頭に思い浮かんでいたはずだ。当然、帳消しを図っているのではないかと窺わせる「悪夢の民主党政権」の強がりとの解釈も、人間心理上、決して否定はできない。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

安倍晋三の拉致解決は念頭にない、ポーズだけで解決の意気込みを振り撒いているポーズ番長 でなければ、よっぽどの外交バカ

2019-05-13 12:57:39 | 政治


楽天KOBO電子書籍 価格800円
 


 2019年7月28日任期満了実施参院選で

安倍自民党を大敗に追いつめれば

政権運営が行き詰まり 

2019年10月1日の消費税10%への増税を

断念させる可能性が生じる

 
 西暦2019年2月27日・28日に開催予定のベトナムの首都ハノイでの第2回目米朝首脳会談が拉致・核・ミサイル問題の解決に繋がることを日本政府は期待した。北朝鮮は非核化は段階的に進めるべきで、一方的な非核化はしないと主張、核施設の廃棄の条件としてアメリカに経済制裁の緩和や体制保証につながる朝鮮戦争の平和協定締結に向けた協議を求めていたという。
 
 こういったことが北朝鮮がアメリカに提示した条件だった。一方的な非核化の否定、非核化に向けた段階的な経済制裁の解除、休戦、あるいは停戦状態にある朝鮮戦争の終結宣言。

 一方の当事国アメリカのトランプは西暦2018年12月14日に自身のツイッターに「我々は急いでいない」と書き込み、第2回目の米朝首脳会談を控えた西暦2019年2月19日にホワイトハウスで記者団に対して次のように発言したと言う。「ロイター」(2019年2月20日 06:33)

 トランプ「北朝鮮は核実験を行っていない。核実験がない限り急がない。私はただ北朝鮮の最終的な非核化を見たいだけだ」

 但しトランプは同時に北朝鮮への制裁は当面継続すると発言、記事は、〈トランプ政権は北朝鮮に即時非核化を求めてきた強硬姿勢から態度をやや軟化させている。〉と解説している。

 要するに「即時非核化」という強硬な条件提示から、核実験がない限り非核化まで一定の期間を設けるとする、言ってみれば執行猶予の条件提示へと変化した。北朝鮮側からしたら、自分たちが提示した条件に対するアメリカ側の条件提示の変化に一部制裁解除があるのではないかと期待したとしても無理はないはずである。この期待はトランプが外交的な成果を優先して、安易に譲歩するではないかと懸念する声が出ていたことに対応しているはずだ。

 しかし米朝首脳会談の蓋を開けてみると、北朝鮮の期待通りには行かなかった。と言うよりも、期待は木っ端微塵に吹き飛ぶことになった。

 北朝鮮の非核化の進め方を巡る合意文書を交わすところにまで交渉は進展せず、実質的には交渉は決裂した。トランプは決裂の理由を西暦2019年2月28日、北朝鮮が制裁の全面解除を、いわば条件としたためだと主張。対して北朝鮮側は3月1日にニョンビョン(寧辺)にあるすべての核施設の廃棄と引き換えに国民生活に影響が及ぶ一部の制裁の解除を条件として提示しただけだと反論。

 後者の条件提示が事実としたら、その条件下での完全非核化のプロセスを求めることでトランプは自らの「核実験がない限り急がない」の言葉に合致させることができるし、首脳会談を打ち切る理由にもならないし、プロセスの内容次第で、何を以って一部制裁解除の内容とするかを話し合ったはずである。

 ところが西暦2019年3月30日付「NHK NEWS WEB」記事がロイター通信の報道としてトランプが次の非核化の条件を提示したと報道している。

 ▽核兵器と核物質のアメリカへの引き渡し
 ▽核開発計画の申告や査察の受け入れ
 ▽核開発に関連したあらゆる活動の中止
 ▽すべての核関連施設の撤去
 ▽核開発に関わる科学者や技術者の民間活動への移行

 完全非核化か、経済制裁全面解除かの当初の条件闘争に回帰したことになる。当然、アメリカ側のこの条件のすべてを金正恩が受け入れたなら、経済制裁は全面解除される。だが、会談は決裂した。金正恩側からしたら、完全非核化は呑むことのできない条件提示だったと考えるほかはない。

 日本政府はこの会談決裂を、「北朝鮮の非核化が実現しない状況で経済制裁を解除することはできないということを明確に示した」などと評価する声が上がったという。

 安倍晋三はと言うと、西暦2019年3月5日の参院予算委員会でトランプが首脳会談で日本人拉致問題を提起したこと評価したという。

 安倍晋三「米国がそこまで(拉致問題を)重視していると金委員長も理解しただろう。私は成果と考えている。次は私自身が金正恩朝鮮労働党委員長と向き合わなければならないと決意をしている」(共同通信

 「私は成果と考えている」は拉致問題の提起を指しているはずである。トランプが制裁解除を一部でも応じるといった安易な妥協をしなかった首脳会談に関して「成果と考えている」なら、拉致問題は経済制裁という条件と深く関わっているゆえに拉致問題の提起を「成果」とすることは矛盾することになる。

 翻って拉致問題の提起のみを取り上げて「成果」とすることは視野狭窄に過ぎ、よっぽどの外交オンチと言わざるを得ない。

 なぜなら、金正恩にとってメインの交渉相手はトランプを措いてほかにはいないからだ。北朝鮮側の階的非核化の条件提示に対してアメリカ側の一部制裁の解除だろうが、段階的解除だろうが、全面的解除だろうが、どのような条件で応じるかの鍵は全てトランプが握っているのであり、拉致解決もトランプの鍵の開け方に応じることになるからだ。

 トランプが北朝鮮の段階的非核化の条件提示を拒否すると同時に如何なる制裁解除の条件提示も拒否した以上、日本だけの考えで制裁解除を発動、拉致解決に向き合おうことができるだろうか。要は日本は交渉相手として従の位置に置かれているに過ぎない。国連安全保障理事会の常任理事国である中国もロシアも、北朝鮮に対する制裁の一部解除を主張している。もしアメリカが一部解除に動いたなら、北朝鮮に対する安保理の制裁決議を動かすことができる。

 そうなれば、日本としても北朝鮮側の制裁に関する条件提示に一定程度のフリーハンドを持つことができて、そのフリーハンドを以ってして金正恩に対して拉致解決の誘い水とすることも可能となる。

 いわば日本側にとっても、北朝鮮側にとっても、拉致問題と制裁問題は密接に連動していて、切り離し不可能となっている。にも関わらず、西暦2019年3月5日付「産経ニュース」記事によると、安倍晋三は「北朝鮮に核兵器や生物・化学兵器を含む全ての大量破壊兵器の廃棄や、日本を射程に収める中距離や短距離を含むあらゆる射程のミサイルの廃棄を求めていく方針に変わりはない」と答弁、「拉致問題はまさに日本の問題だ。日本が主体的に取り組むことが重要で、次は私自身が金正恩朝鮮労働党委員長と向き合わなければならないと決意をしている。一日も早い解決に向けてあらゆるチャンスは逃さないという基本方針で、解決に向けて全力を傾けていきたい」云々と、大量破壊兵器廃棄の条件提示を行った上で拉致解決のために金正恩と向き合いたいと条件提示している。要するに制裁解除よりも大量破壊兵器の廃棄の方が先だと条件提示し、なおかつ日朝首脳会談を所望したことになる。

 金正恩からしたら、自分に都合のよい条件だけを提示するなとカチンと来たはずだ。

 さらに西暦2019年5月3日、憲法記念日の「産経ニュース」のインタビューで、「先ずは現在の日朝間の相互不信の殻を打ち破るためには、私自身が金委員長と直接向き合う以外はない。ですから条件をつけずに金委員長と会い、率直に、また虚心坦懐に話し合ってみたいと考えています。金委員長が国家にとって何が最善かを柔軟、かつ戦略的に判断できる指導者であると期待しています」と発言したと言う。

 この「条件をつけずに」との発言の意味を安倍晋三は金正恩との会談は「拉致問題の解決に資する会談としなければならない」とかねがね条件提示していたことから、マスコミはこの条件提示の撤回の線で報道しているが、この撤回は金正恩側からしたら、どれ程の意味があるだろうか。

 そもそもからして安倍晋三は北朝鮮に対して「拉致問題の解決に資する会談」のみの条件提示を行っていたわけではない。「全ての核・弾道ミサイル計画の完全かつ検証可能な形で、かつ不可逆的な方法での廃棄」、当初は「対話と圧力」の条件提示だったが、「対話とは北朝鮮にとって我々を欺き、時間を稼ぐため、むしろ最良の手段だった」と「対話のための対話の拒否」に転じ、「国連制裁決議の完全履行」等々を対北朝鮮政策の条件として提示していた。

 当然、安倍晋三の「条件をつけずに」は、これら提示した条件の撤回も含まなければならない。含んで初めて、金正恩にとって安倍晋三との会談に意味を持つことになる。だが、トランプが如何なる制裁解除にも応じなければ、安倍晋三も提示した条件の如何なる撤回も不可能となって、「条件をつけずに金委員長と会う」との条件提示は見せかけと化す。

 言葉ばかりで結果が伴わない政治家のことを産経新聞が「言うだけ番長」と造語したそうだが、政治問題を解決に向けて進める能力があるかのようなポーズを見せる点に関しては立派な安倍晋三は、さながらポーズ番長と言ったところである。ロシアとの北方四島帰属問題にしても、四島返還から二島返還の条件変更の提示にしても、それを以ってしてさも進展があるかのようにポーズだけは見せたが、ロシア側の「先ず日本側が第2次世界大戦の結果を認めよ」の条件提示を微動だにさせることができないでいる。

 いわば、進展があるかのような言動はポーズに過ぎなかった。

 安倍晋三は2019年5月9日の参議院内閣委員会で「前提条件をつけずに」の意味を西暦2019年5月9日付「NHK NEWS WEB」記事が伝えている。

 安倍晋三「北朝鮮の核・ミサイル・拉致問題の解決に向けて、相互不信の殻を破り、次は私自身がキム・ジョンウン朝鮮労働党委員長と向き合うという決意を従来から述べてきた。『条件を付けずに会談の実現を目指す』とは、それをより明確な形で述べたものだ。

 (朝鮮に対する制裁措置などの対応を変えるのか問われて)そういう方針ではない。朝鮮半島の非核化が進んでいないので、国連決議の厳格な履行を各国に求めているし、日本も行っている。あくまでも拉致問題を解決するうえで、努力として、私自身がキム委員長と話をしなければならないと申し上げている」

 安倍晋三は金正恩が決して受け入れることができない様々な条件提示を行いながら、金正恩と向き合う意思表示を行ってきた。北朝鮮への制裁に関わる「国連決議の厳格な履行」にしても、金正恩には受け入れることはできない条件提示の一つである。

 もしこの矛盾に気づかないとしたら、よっぽどの外交バカ、外交オンチとなる。このことは政治問題を解決に向けて進める能力があるかのようなポーズだけは立派なポーズ番長と対応することになる。

 もし矛盾に気づいていながら、金正恩との会談を願う意思表示なら、拉致解決は念頭にはないことになる。例え念頭にはなくても、そのことを隠すためにポーズだけで解決の意気込みを振り撒いているポーズ番長であることに変わりはない。

 官房長官の菅義偉も日本時間の西暦2019年5月11日にアメリカを訪問、ホワイトハウスでペンス副大統領と会談、核やミサイルの廃棄に向けて国連の安保理決議を完全に履行していくことと拉致問題の早期解決を目指し、引き続き、両国で緊密に連携していくことを確認したと西暦2019年5月11日付の「NHK NEWS WEB」記事が伝えていたが、拉致問題の早期解決と安保理決議の完全履行という相反する条件提示を同時併行させている。

 いわば安保理決議の完全履行を求めれば求める程、拉致の早期解決は遠のくという反比例関係にあることを無視している。反比例関係にあることの北朝鮮側の反応を西暦2019年5月10日付「asahi.com」が伝えている。

 2019年5月9日のスイス・ジュネーブでの国連人権理事会。北朝鮮の人権状況についての審査を行われ、日本は北朝鮮に対して拉致問題の早期解決に向けた具体的な行動を求めた。

 北朝鮮外務省担当者「2002年の日朝平壌宣言のもと、日本人拉致問題は我々の真摯な努力によって根本的かつ完全に解決済みだ」

 北朝鮮側にとっても、日本と同様に安保理決議の完全履行という条件提示と拉致問題の早期解決の条件提示が相反せず、一致させることができるなら、北朝鮮は「解決済み」といった剣もほろほろの態度は取らないだろう。喜々として安倍晋三との首脳会談に臨んで、拉致解決に努力するはずだ。

  にも関わらず、相反する条件提示のもと、拉致問題の早期解決を口にする。どこをどう見ても、拉致解決は念頭にないか、よっぽどの外交バカ、外交オンチか、そのいずれかの答しか見つけることができない。当然、安倍晋三がポーズだけで解決の意気込みを振り撒いているポーズ番長であることは否応もない次の答としなければならない。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

安倍晋三の新元号決定過程の隠蔽体質・秘密主義から見える、本命を「令和」とした、全てを自分で決定しようとした独断専行の賜物

2019-05-06 12:10:46 | 政治


楽天KOBO電子書籍 価格800円

 2019年7月28日任期満了実施参院選で

安倍自民党を大敗に追いつめれば

政権運営が行き詰まり 

2019年10月1日の消費税10%への増税を

断念させる可能性が生じる


 マスコミ報道を纏めると、安倍政権が「元号に関する懇談会」を首相官邸4階特別応接室で開催してメンバーから新元号に関わる意見を聴取したのは西暦2019年4月1日午前9時を少し回った時間。その際、初めて6原案を示した。いわばメンバーは懇談会開催までは原案を知らされていなかった。

 このような経緯を取ったのは安倍政権が平成改元時に倣って採用しなかった案を公表しない方針を決めていたこと、同じように平成改元時に倣って、選定過程を記録した公文書を30年間は原則非公開とする方針を決めていたことによるということである。要するに非公表・非公開の方針を示したことによって情報の漏れを恐れる情報統制に走ることになった結果、懇談会メンバーには前以って原案が提示されないことになった。

 だが、30年前よりも情報公開がこれまで進んだ時代に、裏返すと、国民には何も知らせない公権力による情報秘匿、あるいは情報独占が悪と看做される時代に原案を隠すことと選定過程の記録を30年間も隠すことにどれ程の意味があるのだろう。情報公開よりも前例踏襲を優先させた。

 但し単なる前例踏襲からの情報の秘匿、あるいは情報の独占であるなら、その罪は前例踏襲主義にとどまるが、前例踏襲はタテマエで、ホンネが別のところにあったなら、その罪は看過できなくなる。

 懇談会開催の西暦2019年4月1日翌日の4月2日にはマスコミ各社が決定した「令和」以外の5案を「英弘」(えいこう)、「久化」(きゅうか)「広至」(こうし)、「万和」(ばんな)、「万保」(ばんぽう)だと公表している。マスコミは懇談会開催前から把握していて、懇談会終了を待って公表した可能性もある。

 懇談会開催当日に6案を知らせて、どれがふさわしいか検討を求める、この徹底した秘密主義のどこに意味があり、当日提示・聴取の各意見がどれ程の具体性を持ち得るのだろうか。

 既にリンク記事が削除されている2019年4月1日付「NHK NEWS WEB」記事が懇談会終了後に首相官邸から出てきたメンバー6人にインタビュ一して、6人それぞれの発言を伝えているが、その一つ。

 民放連会長大久保好男「事前に候補名について教えてもらっていたわけでもなく準備もできなかった。新元号の原案が入った封筒が配られ、それを開けてから説明が始まったという段取りだった。時間が限られており、候補名に対する感想のようなものを述べた。

 携帯電話は入室の前に『預かります』ということでお渡しし、封筒に入れて保管されていたと思う。終わった時点で返却されたが、部屋の中ではずっとテレビを見ながら待っていた。

 歴史的な一場面に立ち会う光栄と責任を感じながら、本当に国民の方々に広く使ってもらえる、受け入れられるような元号が決まればいいなという思いで発言をした。大役を終えて、無事にすばらしい新しい元号が決まったことで、いまはほっとしている」

 懇談会開催時間は、「新元号は令和 決定の一日」(NHK政治マガジン/2019年4月3日)によると、西暦2019年4月1日の9時32分から10時8分までとなっていて、たったの36分間に過ぎない。6案もある日本や中国の古典の意味・解釈を十分に吟味する時間はなかったはずで、漢字そのものに対する意味・印象や読みや説明から受けたメンバー個人個人の好悪の感覚で意見を述べていった様子を窺うことができる。少なくとも有識者同士が意見を交わし合って、最善の案へと統一させていくといった過程は窺うことはできない。

 そうしたくても、そうする材料と時間は与えられていなかった。安倍政権が懇談会メンバーに9人の有識者を起用する検討に入ったのは西暦2019年3月4日である。マスコミがその時点で伝えていたとおりにメンバーは9人、上がっていた名前通りとなっている。

 そして2019年4月30日付「asahi.com」 記事に元号の考案を国文や漢文等々に複数の有識者(学者)に正式に委嘱したのは2019年3月14日で、さらに複数の政府関係者の情報として、〈首相は2月末、「国民の理想としてふさわしいようなよい意味」「書きやすい」「読みやすい」といった留意事項に基づき、事務方が絞り込んだ10数案について初めて報告を受けたが、学者に追加で考案を依頼するよう指示した。〉との記述がなされている。

 「事務方が絞り込んだ10数案」と言っても、事務方自身が元号を考案したわけではなく、学者の考案によるものの中から「絞り込んだ10数案」ということであるはずだ。

 要するに安倍晋三自身、事務方が2月末に提示した学者考案の10数案が気に入らなかった。その挙げ句、〈政府は3月14日付で国文、漢文、日本史、東洋史などの専門家に正式委嘱〉と相成った。

 にも関わらず、懇談会開催に先んじて勉強の機会を何ら与えられていなかった。この決定過程に於ける有識者の扱いは粗末に過ぎ、むしろ蔑ろな扱いとさえ言うことができる。有識者とは名ばかりで、飾りでしかなかった疑いが出てくる。

 大久保好男が「無事にすばらしい新しい元号が決まったことで、いまはほっとしている」と最後に発言していることは、決まった元号に誰もが送るエールだろう。素晴らしくない元号だとは誰も口にすることはできない。

 元NHKキャスターで、現在千葉商科大学国際教養学部長も発言も伝えている。

 宮崎緑「新元号の原案が1枚の紙に印刷されていて、典拠などの説明もそれぞれ一言ずつ書いてあった。決を取ったりはしなかった。『令和』について、触れた方も、触れなかった方もいた。

 『令和』に決まったことを知ったのは、菅官房長官の発表で知り、メンバーからは拍手が湧き上がった。美しい響きで、新しい時代にふさわしい、いい元号が選ばれたのではないか。これから皆が美しく心を寄せ合い、新しい文化を生み出していくという意味が今の時代に大変合っている」

 発言のニュアンスからして、「令和」を推していなかったことが分かる。推していなかったにも関わらず、「美しい響きで、新しい時代にふさわしい、いい元号が選ばれたのではないか。これから皆が美しく心を寄せ合い、新しい文化を生み出していくという意味が今の時代に大変合っている」と言っていることは決まったことに対して伝える、これもエールの部類に入る。

 「『令和』に決まったことを知ったのは、菅官房長官の発表で知り、メンバーからは拍手が湧き上がった」と言っていることは安倍政権が公表した「元号に関する懇談会 議事概要」(首相官邸サイト)に名前を伏せたまま各メンバーの意見のあらましが記述されていて、最後に、〈(2)官房長官から、懇談会での御意見を参考としながら、内閣として新しい元号を決定させていただく旨発言し、終了した。〉との記述があり、このような手続きを前提とした宮崎緑の発言だと分かる。

 要するに新元号が正式に決まり、菅義偉が発表するまで懇談会メンバーは首相官邸4階特別応接室に待機させられていた。携帯電話も預けさせられたということだから、メンバーの中から情報が漏れるのを防ぐ意味での体のいい軟禁だったのだろう。

 上記「NHK政治マガジン」には決定までの時系列が次のように記されている。
 10:20 菅義偉が政府を代表して衆議院議長公邸で、政府による衆参両院の正副議長からの意見聴取が開始。
 10:37 衆参両院の正副議長からの意見聴取が終了。
 10:57 全閣僚会議が始まる。
 11:16 全閣僚会議が終了する。
 11:17 臨時閣議が始まる。
 11:25 臨時閣議が終了する
 11:41 菅官房長官が、新元号は「令和」と発表する。

 懇談会メンバーは懇談会終了の10時8分から菅義偉新元号発表の11時41分までの1時間33分も待たされていた。なぜこうまでも情報統制が必要だったのだろう。情報統制は秘密主義に基づき、情報隠蔽を伴う。

 有識者メンバーによる懇談会開催が6案の詳細な検討が必要であるのに対して36分、1案平均たったの6分。そして衆参両院の正副議長からの意見聴取が17分、全閣僚会議が19分、臨時閣議が8分。バタバタと決定されていった印象を拭うことができない。

 衆参両院の正副議長からの意見聴取から臨時閣議までのそれぞれに短い時間で決定していったことから考え得ることは事前に既に決定していたことを単に事後に承認するやっつけ仕事としか受け取ることができない。そうでなければ、こうまでも短い時間で進めることはできない。

 有識者の懇談会にしても、1案平均たったの6分と見ると、事後承認のやっつけ仕事でなければ、理解できない短時間の意見集約となる。

 そもそもからして、懇談会開催後に有識者メンバーに初めて6案を提示したこと自体、やっつけ仕事以外の何ものでもない。レールが敷かれていなかったら、結論は出すことはできない短い時間となっている。レールが敷かれていたからこそ、有識者とは名ばかりの飾り扱いができたはずだ。

 このことを解く鍵を上記2019年4月30日付「asahi.com」から見つけることができる。3月14日に一旦は複数の学者に元号考案を正式に委嘱しておきながら、〈その前後の3月初めから下旬にかけて、国書と漢籍の複数の学者に追加の考案を打診した。その求めに応じて提出された複数案の一つが、中西氏が3月下旬に出した「令和」だった。〉云々。

 要するに安倍晋三は3月14日の正式な委嘱にも関わらず、それ以前の3月初めから追加の考案を複数の学者に打診していた。

 天皇がビデオメッセージで生前退位の意思を示したのは西暦2016年8月8日。翌西暦2017年6月16日に「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」の制定。天皇が退位し、次が即位となると、新しい元号が必要となることは自明中の自明だから、委嘱に先んじて色々と案をねり、手ぐすね引いて待っていた学者もいただろうから、正式委嘱前でも、既に出来上がっていた案を直ちに提示できる状態になっていたケースも多々あったはずである。

 にも関わらず、安倍晋三は2月末に事務方から示された、学者の考案の中から絞り込んだ10数案が気に入らなかった。その結果、3月14日の正式委嘱の手続きを踏む前の3月初めから国書と漢籍の複数の学者に追加の考案を打診することになった。

 ここから見て取ることができる手続きは安倍晋三が全てを自分で決定しようとする独断専行のみである。素直に学者の考案を待ち、その案を懇談会メンバーに素直に諮って、その決定を待って、素直に元号とする公平・ストレートな手続きはどこからも窺うことができない。

 安倍晋三の追加の求めに応じて提出された複数案の一つが中西進の「令和」だということなら、安倍晋三の自分で決定しようとする独断専行との兼ね合いからして、本命を「令和」とした、そのことを気取らせないための、当て馬として提出させた「令和」以外の複数案と見ることができる。

 4月1日開催の「全閣僚会議・議事概要」の最後に次のような記述がある。
 
 〈(2)官房長官から、構成員からの意見を踏まえ、新元号については総理に一任することとしたいとの発言があり、了承された。

(3)総理大臣から、新元号を「令和」としたいとの発言があり、了承された。〉――

 「元号に関する懇談会」でも決を取らず、〈(2)官房長官から、懇談会での御意見を参考としながら、内閣として新しい元号を決定させていただく旨発言〉があったにも関わらず、「全閣僚会議」でも決を取らなかったのだから、内閣として決定したのではなく、優先されたのは安倍晋三が決定の一任を握った、全てを自分で決定しようとする独断専行であり、その賜物であろう。

 「令和」決定が安倍晋三の全てを自分で決定しようとする独断専行であったからこそ、懇談会メンバーの発言等の非公開・非公表が単なる前例踏襲ではなく、ホンネが別にあったと見ることができ、懇談会メンバーとは名ばかりで、飾りでしかなかったとしても無理はないことになる。

 さらに「令和」がバタバタと決められていった経緯も、本命として事前に既に決定していたことを単に事後承認するやっつけ仕事だったからこそ可能となった決定であるはずで、このことも安倍晋三の全てを自分で決定しようとする独断専行に基づいているはずだ。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする