財務省2018年6月4日『森友学園案件に係る決裁文書の改ざん等に関する調査報告書』はなぜ改ざんを必要としたのかの本質的な原因解明は放置(1)

2021-10-29 04:24:24 | Weblog
 「2021年10月11日代表質問 辻元清美」(辻元清美Official website/2021.10.14)

 森友学園疑惑のみを取り上げる。

 辻元清美「さて、先週、私は、森友公文書改ざん問題で自殺に追い込まれた赤木俊夫さんの妻、雅子さんにお目にかかりました。岸田総理にお手紙を出されたと報道され、直接お話をお聞きしたいと人づてに申し出て、お受けいただいたのです。

どんな思いでお手紙を出したのですかとお聞きすると、岸田総理は人の話を聞くのが得意とおっしゃっていたので、私の話も聞いてくれるかと思い、お手紙を出しましたとおっしゃっておりました。

総理、このお手紙、お読みになりましたか。お返事はされるのでしょうか。お答えいただきたいと思います。そのときに手紙の複写をいただきました。ちょっと読ませていただきます。皆さん、お聞きください。

内閣総理大臣岸田文雄様。
私の話を聞いてください。
私の夫は、三年半前に、自宅で首をつり、亡くなりました。
亡くなる一年前、公文書の改ざんをしたときから、体調を崩し、体も心も崩れ、最後は、自ら命を絶ってしまいました。
夫の死は、公務災害が認められたので、職場に原因があることは、間違いありません。財務省の調査は行われましたが、夫が改ざんを苦に亡くなったことは、書かれていません。なぜ、書かれていないのですか。
赤木ファイルの中で夫は、改ざんや書換えをやるべきではないと本省に訴えています。それに、どのような返事があったのか、まだ分かっておりません。
夫が正しいことをしたこと、それに対して、財務省がどのように対応したのか、調査してください。そして、新たな調査報告書には、夫が亡くなったいきさつをきちんと書いてください。
正しいことが正しいと言えない社会は、おかしいと思います。
岸田総理大臣なら、分かってくださると思います。
第三者による再調査で真相を明らかにしてください。
赤木雅子。

総理は、このお手紙、どのように受け止められたんでしょう。

赤木さんの死も、赤木さんが改ざんに異議を唱えたことも、そして、どんなプロセスだったのか、一切、財務省の報告にはありません。

これで正当な報告書と言えるんでしょうか。皆さん、いかがですか。
皆さんも、御家族がこのような目に遭わされたら、はい、そうですかと納得はできないんじゃないですか。

総理、このお手紙で求めていらっしゃる第三者による再調査、実行されますか。

赤木雅子さんは、この代表質問を見ますと私におっしゃっておりました。先ほどはちょっと冷たい答弁でした。雅子さんに語りかけるおつもりで、御自分の言葉で誠実にお答えください。

臭い物に蓋をして、その上に新しい家を建てようとしても、すぐに柱が腐ってしまいます。長期政権でたまったうみを岸田政権で出すことができないのであれば、国民の皆さんの手で政権を替えていただいて、私たちが大掃除するしかありません」

 岸田文雄(文字起こし)「森友学園問題の再調査についてお尋ねがありました。近畿財務局の職員の方がお亡くなりになったこと、このことは誠に悲しいことであり、残された家族の皆様方のお気持ちを思うと、言葉もなく、静かに、そして謹んでご迷惑(ママ)、ご冥福をお祈り、申し上げたいと思います。

 ご指摘の手紙は拝読致しました。その内容につきましてはしっかりと受け止め、させて頂きたいと思います。そして本件については現在民事訴訟に於いて法的プロセスに委ねられています。今現在、原告と被告の立場にありますので、この返事等については慎重に対応したいと思っています。この裁判の過程に於いて先ずは裁判所の訴訟・指揮に従いつつ、丁寧に対応するよう、財務省に対して指示を行ったところであります。

 いずれにせよ、森友学園問題にかかる決裁文書の改ざんについては財務省に於いて捜査当局の協力も得て、事実を徹底に調査し、そして自らの非をしっかり認めた調査報告書、これ、取り纏めております。

 さらには第三者である検察の捜査も行われ、結論が出ております。会計検査院に於いても2度の調査を行っている、こうしたことです。その上で本件についてはこれまでも国会などに於いて様々なお尋ねに対し説明を行ってきたところであると承知をしており、今後も必要に応じてしっかり説明をしてまいります。

 大事なことは今後行政に於いてこうした国民の疑惑を招くような事態、2度と起こさないということであり、今後も国民の信頼に応えるために公文書管理法に基づいて文書管理の徹底してまいりたいと思います」

 岸田は財務省は「自らの非をしっかり認めた調査報告書を取り纏めている」と言っているが、決裁文書改ざんの事実を認めて、改ざんに関わった職員を処分したのみで終わらせていて、森友学園への小学校校舎建設用地としての国有地売却に関わる取引に絡めて、なぜ決裁文書の改ざんが必要になったのかの疑惑には何一つ答えていない。

 会計検査院の2度の調査は最初の調査で会計検査院に対して改ざん後の決裁文書のみを提出、「交渉記録」等の文書を提出しなかったことが判明、改ざん前の決裁文書や「交渉記録」等の文書の提出を受けて行なった再度の調査であって、財務省は提出しなかった理由を「国会等での説明との整合性等の観点」からとするだけで、「国会等での説明」が国有地売却の実際を隠したり、食い違うことになったのはなぜなのか改ざんの前段階の疑惑についての真相は財務省の「調査報告書」でも解明されずじまいである。また、「国会などに於いて様々なお尋ねに対し説明を行ってきた」と言っているが、国民の多くはその説明に納得していないのだから、責任を果たしたかのように言うのは見当違いである。

 「大事なことは国民の疑惑を招くような事態は2度と起こさない」と言っているが、真相を満足に解明できなければ、悪事を演じる側は真相解明を甘く見て、真相解明が「2度と起こさない」の悪事の歯止めとはならない。歯止めとなるような情け容赦のない徹底した真相解明が必要となる。岸田文雄が真相解明の責任を果たしていると思いこんでいるところに国民との認識のズレを見る。本人はそのことに気づいていない。

 森友学園疑惑の再調査については安倍晋三も麻生太郎も、菅義偉も、それを求める野党の国会追及に対しては拒否を、記者会見では記者の再調査有無の質問に対しては一貫して行わない旨の発言をしているから、同じ穴の一蓮托生とならざるを得ないチームプレーという点からして岸田文雄が「国民の声を丁寧に聞く」をキャッチフレーズとしていたとしても、再調査拒否は予想の範囲内に過ぎない。再調査を約束でもしたら、「いいカッコしやがって」と党内実力者の多くを敵に回して、内閣運営がたちまち支障を来たすことになるだろう。

 岸田文雄が「さらには第三者である検察の捜査も行われ、結論が出ております」と言っていることは国有財産などの管理その他を主な業務としている財務省理財局の当時の局長佐川宣寿を筆頭にその他の職員、森友学園への国有地売却に直接関わった近畿理財局の職員等をいくつかの容疑で告発したことに対する大阪地検特捜部の捜査と結論を指す。主な告発をマスコミ報道から簡単に拾ってみる。

・2015年3月22日、木村真・豊中市議と市民複数が財務省近畿財務局の職員を氏名不詳のまま国有地を不当に安く売却して国に損害を与えたとする背任容疑で大阪地検に告発。
・2015年7月13日、大阪を中心とした全国の弁護士や学者ら246人が財務省職員ら7人を背任容疑で大阪地検特捜部に告発
・2017年7月31日、センチュリー行政書士・社労士事務所が森友学園に対し,国有地を本来よりも8億円以上も値引きして譲渡する決定を下した近畿財務局職員を刑法第193条(公務員職権濫用罪)で刑事告発。
・2017年10月16日、団体代表醍醐聡東大名誉教授が近畿財務局の記録廃棄と国会答弁虚偽による証拠隠滅罪の容疑で東京地検に告発。
・2018年5月30日、上脇博之大学教授が公用文書等毀棄容疑で告発。

 その他にも告発があり、不受理されたものもあって、大阪地検特捜部は6容疑で告発を受理、6容疑共に2018年5月31日に容疑対象の佐川宣寿を筆頭に財務省職員ら計38人を嫌疑不十分か、嫌疑なしで不起訴処分とした。

 「嫌疑不十分」は嫌疑はあるが、嫌疑を固めるだけの証拠を見つけることができなかったということになる。佐川宣寿の側からすると、証拠をうまく隠したということもできる。要するに真っ白の身の潔白を証明されたわけではない。

 だから、2018年6月14日、大阪・豊中市の市議会議員が不起訴は不当だとして検察審査会に審査の申し立てを行なうことになり、2019年3月15日付で大阪第1検察審査会は不起訴になった佐川ら財務省職員10人について「不起訴不当」を議決、大阪地検特捜部が再捜査を行うこととなったが、約5カ月後の2019年8月9日、大阪地検特捜部は財務省職員10人について改めて不起訴処分とし、捜査は終結することとなった。

 2018年5月31日付のNHK NEWS WEB記事が、〈国有地の売却問題で背任の疑いで告発された財務省の当時の幹部らを不起訴にした理由について、特捜部は、ごみの影響で小学校の開校が遅れた場合、損害賠償を請求される可能性があったことを挙げ、「売却によって国は相当額の損害賠償義務を免れた可能性を否定できず国に財産上の損害を生じさせたとは認められない」と説明した。〉と、大阪地検特捜部の2018年5月31日の最初の不起訴理由を伝えている。

 この不起訴理由について大阪特捜は大阪航空局が見積もった1万9520トン、ダンプカー4000台分のごみ(地下埋設物)の存在を前提としていることになる。だが、財務省側・国側は「存在した」と言っているだけで、存在していたことが明確に立証されたわけではない。会計検査院が2017年3月6日に参議院予算委員会の要請を受けて対森友学園国有地売却に関する状況を会計検査した2017年11月の報告書は地下埋設物の処分量を1万9520トンと見積もった大阪航空局が算定に用いている深度、混入率について十分な根拠が確認できなかったとし、結果的に地下埋設物撤去・処分概算額8億1974万余円と見積もったこと自体にも根拠不十分として疑義を投げかけている。

 会計検査院のこの報告書は2017年11月23日。大阪特捜部の不起訴決定は会計検査院の報告から約半年後の2018年5月31日。会計検査院の国有地売却に関する全体的な疑義を無視したことになり、大阪特捜部の捜査と会計検査院の会計検査とは大きく異なることになった。

 また、大阪特捜部の不起訴理由「売却によって国は相当額の損害賠償義務を免れた可能性を否定できず国に財産上の損害を生じさせたとは認められない」は当初森友側が小学校建設工期との関連から地下埋設物撤去・処分を大阪航空局に要求、大阪航空局は土地そのものが売却してすぐにカネが入るものではなく、売払いを前提とした10年間の貸付契約であるために予算不足から森友側の要求に応じられない旨を返答。対して森友側は損害賠償をチラつかせ、現実的な問題解決策として納得できる金額での早期の土地買受けによる処理案を提示、そのために地下埋設物撤去・処分費用を8億1974万余円と見積もったことになるが、森友側の要求を放置していたなら、地下埋設物撤去・処分費用と同額程度の損害賠償請求を受けていた可能性を予想されることから、このことを以って「国に財産上の損害を生じさせたとは認められない」と結論づけたということなのだろう。

 だが、地下埋設物撤去・処分費用を過大に見積もり、最安値で売るための道具として双方納得づくで損害賠償請求を持ち出したヤラセと疑うこともできる。ヤラセかどうかの証明は1万9520トン、ダンプカー4000台分の地下埋設物が実際に存在したかどうかにかかっている。実在し、正当な土地取引なら、何も「貸付決議書」や「売払決議書」、あれやこれやの「決裁文書」を改ざんする必要性は何も生じることはない。国有地を扱う財務省理財局の局長佐川宣寿にしても国会で実際の取引きとは無関係な答弁をする必要性も生じない。虚偽答弁に合わせるなどして一旦確定した行政文書を様々に改ざん・隠蔽することになった。

 必要性が生じた理由は一連の経緯を見ていると、森友学園の新たな小学校建設に関して森友学園の理事長の教育理念に安倍晋三とその夫人安倍昭恵が賛同、特に安倍昭恵が理事長の教育理念に基づいた小学校の実現に協力していることが財務官僚の耳に入り、首相夫妻が後押ししていることを粗末に扱ったりしたら、後でどんなお叱りを受けるかもしれないと萎縮し、その萎縮が事勿れなご機嫌取りの忖度に向かったところへ持ってきて、地下埋設物という予期しない障害を持ち出されて、自分たちの責任問題にならないように安く叩き売ることになってしまったという展開を疑うことができる。

 勿論、証拠を上げて、疑惑を事実(クロ)と断定することはできないが、矛盾を様々に衝くことはできる。決裁文書の改ざん個所、不動産鑑定に関する調査報告書、会計検査院の報告書などからそこに記されているか、炙り出すことができる様々な矛盾を拾い出して、そのような矛盾に対して財務省の調査報告書がどう答えているのか、答えていなければ、不都合な事実を隠蔽する、あるいは誤魔化す必要性から生じることになっている矛盾ということになるはずである。嘘偽りがなければ、矛盾は生じない。

 最初に「平成30年3月19日財務省」名で一旦は書き換えたが、その後に削除したために書き換えに気づくのが1週間遅れたと断り書き(ページ数が入っていなくて、最後から2枚目)を入れてある文書「森友学園事案に係る今後の対応方針について(H28.4.4)」(最後のページ)が、「森友学園への国有地売却に関する決裁文書について」(財務省理財局・平成30年4月12日 )の中に含まれていて、大阪航空局を含めた財務省側が森友学園小学校建設用地の地下埋設物の量とその撤去・処分費用を見積もることになった当初の経緯を知ることができるから、ここに全文を載せておく。文書冒頭左肩に手書きで「削除」と書き入れてある。文飾は当方。

 森友学園事案に係る今後の対応方針について(H28. 4. 4)
  
1.事案の概要

 当該財産は森友学園と定期借地契約を締結し、平成29年4月の小学校開校を目指し、校舎等建設工事に着手した財産。
 3月11日、相手方より、校舎建築の基礎工事である柱状改良工事を実施したところ、敷地内に大量の廃棄物が発生した旨の報告を受け、対応を検討しているもの。

2.対象財産

所 在 地:豊中市野田町1501番地
区分・数量:土地・8,770.43㎡
所属会計等:自動車安全特別会計(空港整備勘定)所属財産
定期借地契約日:平成27年6月8日

3.学園の申し出内容

○ 学園は6月の建物棟上げ式に向けタイトなスケジュールの中で建物の基礎工事を行っている。廃棄物除去の影響で工期がずれ込むこととなった場合、損害賠償請求を行う。ついては工事に与える影響が最小限となる作業手法を提示せよ。
○ 地中から噴出した廃棄物及び建物基礎建築のために掘削した廃棄物混入土の撤去を国の責任で早急に実施せよ。
○ 地中に埋設されていると予測される廃棄物の全面撤去を検討せよ。
○ なお、これらの廃棄物の除去費用等を売却価格から控除するなら、購入も検討したいので、売却価格の提示を考えてもらいたい。

4.本省審理室指示事項

○ 工事に与える影響を最小限にする方策を検討すること
○ 相手方と折衝する際には大阪航空局と十分な協議を行い、明確な対応策を提示すること。

5.対応方針

○ 棟上げ式までの工程に与える影響を最小限にするため、噴出した廃棄物及び建物基礎部分の掘削で発生する廃棄物混入度の撤去作業に関しては、大阪航空局の直接発注では工程上間に合わず、更なる賠償問題に発展することから、相手方経費で施工することとし、売却価格からの控除を検討。
○ 敷地表面を覆っている廃棄物混入土及び地中に埋設されていると予測される廃棄物の全面撤去に関しては、地中の廃棄物の存在確認資料を徴求し、売却時の財産評価において考慮する旨申し出を行い、森友学園と協議する方向で検討。

6.大阪航空局との調整内容

 大阪航空局としては、新たに噴出した廃棄物及び建物基礎掘削工事に伴う廃棄物混入土の処理は、所有者責任上、大阪航空局において処理せざるを得ないものと判断している。
 しかし、早急な予算措置は困難な状況であるため、売却を行う方針で作業を進める。
 ただし、鑑定評価額からの廃棄物処理費減額に関しては、大阪航空局からの依頼文書に基づき減額措置を行うこととしている。

7.今後の作業スケジュール

4月中旬 大阪航空局より廃棄物処理減額依頼文書受理
4月下旬 鑑定評価依頼
5月下旬 鑑定評価書受理
6月下旬 売買契約

 森友側は、〈廃棄物除去の影響で工期がずれ込むこととなった場合、損害賠償請求を行う。〉と損害賠償請求をチラつかせて大阪航空局と財務省側を動かし、最終的には不動産鑑定評価額9億5600万円の土地を地下埋設物の撤去・処分費用を差し引いた約1億3400万円で手に入れた経緯の端緒を窺うことができる。

 一旦改ざんしながら、削除した。隠したい事実があるからで、その事実は推測するしかないが、土地価格約1億3400万円に向かう発端となった損害賠償請求をチラつかせられた事実以外にないだろう。森友側から損害賠償請求をチラつかせられたといった事実はなしにあくまでも事務的な交渉で約1億3400万円に見積もられたとしたかったのだろう。と言うことは、損害賠償請求をチラつかせたことが功を奏した1億3400万円と見ることもできるが、この推測の妥当性をおいおい見ていくことにする。

 この文書に、〈相手方より、校舎建築の基礎工事である柱状改良工事を実施したところ、敷地内に大量の廃棄物が発生した旨の報告を受け、対応を検討しているもの。〉との一文があるが、校舎建築の基礎工事は柱状(ちゅうじょう)改良工事だということが判明する。このことは重要なことだから、頭に入れておいて貰いたい。

 次に森友学園小学校建設予定地地下埋設物の発見からその撤去・処理費を値引きする形で売却することになった経緯を知ることができる文書の改ざんを一部抜粋する形で取り上げてみる。なぜ改ざんする必要があったのか。正当な土地取引売買であるなら、改ざんの必要性は生じない。不正な土地取引売買であるからこそ、それを隠蔽するために改ざんの必要性が生じることになったという経緯こそが妥当性を見い出すことができる。下線は文書に付属していて、改ざん個所を示している。

「13.予定価格の決定(売払価格)及び相手方への価格通知について」(財務書/2016年5月31日)

書き換え前
 (6)上記(4)による貸付処理は、〈特例的な内容となることから、〉平成13年3月30日付財理第1308号「普通財産貸付事務処理要領」貸付通達_記の第1節の第11の1に基づく理財局長の承認を得て、処理を行うこととし、平成27年4月30日不財理第2109号〈「普通財産の貸付に係る特例処理」〉により理財局長承認を得ている。

5.本件売払について

(1)大阪航空局が行なった事前調査により、本地には土壌汚染及びコンクリートガラ等の地下埋設物の存在が判明しており、国はこれらの状況を学園に説明し、関係資料を交付した上で貸付契約及び売買予約契約を締結している。
 学園が校舎建設工事に着手したところ、平成28年3月に国から事前に交付された資料では想定し得ないレベルの生活ごみ等の地下埋設物が発見された。

 (2)学園の代理人弁護士からは、本地は小学校を運営するという目的を達成できない土地であるとして、小学校建設の工期が遅延しないよう国による即座のゴミ撤去が要請されたが、大阪航空局は予算が確保できていない等の理由から即座の対応は困難である旨を学園に回答した。

 (3)これを受けて学園の代理人弁護士から、本来は国に対して損害賠償請求行うべきものと考えているが、現実的な問題解決策として早期の土地買受けによる処理案を示し、学園は、その金額が納得できれば本地に関する今後の損害賠償を等を行わないとする条件で売買契約をするという提案であった。

(4)当局と大阪航空局で対応を検討した結果、学園の提案に応じなかった場合、損害賠償に発展すると共に小学校建設の中止による社会問題を惹起する可能性もあるため、処理方針を検討した結果、売払いによる問題解決を目指すこととしたものである。

6.予定価格の決定について

 (1)今回の鑑定評価に当たっては、大阪航空局から、地下埋設物撤去概算額を反映願いたいとする依頼文書、「不動産鑑定評価についいて(依頼)」(平成28年4月14日付阪空補17号:別添参照)」の提出を受けており大阪航空局からの依頼に基づき本地の現状を踏まえた評価を行なうものとした。

 (2)これを踏まえて、平成28年4月1日を価格時点として平成28年4月15日近財統-第442号により不動産鑑定士に鑑定評価の発注を行なった。不動産鑑定士には上記(1)航空局依頼文書を交付した上で評価依頼を行なっている。

 (3)不動産鑑定士から別添不動産鑑定評価書提出を受けて、別添審査調書のとおり当局主席国有財産鑑定官の審査も了したため、本決議により予定価格を決定するものである。

7. 価格提示について

 公共随意契約を行う場合の相手方に対する価格通知の取扱いについては、各財務局様々であるが、近畿財務局は価格を通知せずに相手方と見積り合わせを行なっているところ。
 本件は通常の売払いではなく、定期借地による貸付契約中の財産について、売買予約契約を締結して貸付期間中に売払う予定のものであることから、関東財務局等が採用している方法を参考に、口頭により相手方に価格を通知するものとする。

8. その他の参考事項

  (1)売買契約事項について

  学園の代理人弁護士が提案する今後の損害賠償等は行わないとする旨を売買契約書に盛り込むことについては、今回の売買契約書に特約条項を定めて整理する予定であり、現在、当局統括法務監査官(所属法曹有資格者)の指導を踏まえて学園と契約組織について競技を続けているところ。
  本件売払いは、国と学園とで契約契約書式の合意ができることを前提条件として行なうものである。(売払決議は別途処理予定)。(注:二重線個所は改ざん前から引かれているとのこと。)

 (2)貸付契約及び売買予定契約の合意解除について
  上記4のとおり、本件は平成27年5月に国有財産有償貸付契約及び国有財産売買予定契約を継続しているため、今回、売買契約を行なう際にはこれらの書面との関係を整理する必要がある。
  当局統括法務監査官(所属法曹有資格者)に確認したところ「今後予定している売買契約締結済の売買予約契約で定めた売買契約に新たな特約条項を加える内容となるため、売買予約の予約完結権行使ではなく、今回新たな売買契約を締結すると整理すべき。」との指導があった。そのため、今回の売買契約書には、締結済みの国有財産有償貸付契約及び国有財産売買予約契約を合意解除する旨の特約条項の付加を予定している。
書き換え後
 (6)上記(4)による貸付処理は、平成13年3月30日付財理第1308号「普通財産貸付事務処理要領」貸付通達〈の〉記の第1節の第11の1に基づく理財局長の承認を得て、処理を行うこととし、平成27年4月30日不財理第2109号により理財局長承認を得ている。

 

5.本件売払について

(1)大阪航空局が行なった事前調査により、本地には土壌汚染及びコンクリートガラ等の地下埋設物の存在が判明しており、国はこれらの状況を学園に説明し、関係資料を交付した上で貸付契約及び売買予約契約を締結している。
 学園が校舎建設工事に着手したところ、平成28年3月に国から事前に交付された資料では想定し得ないレベルの生活ごみ等の地下埋設物が発見された。

 (2)その後、同年3月に、森友学園から、早期に学校を整備し開校するために、埋設物の撤去及び建設工事等を実施する必要があり、国有地を購入したい旨の要望があったものである。

 










6.予定価格の決定について

 (1)今回の鑑定評価に当たっては、大阪航空局から、地下埋設物撤去概算額を反映願いたいとする依頼文書、「不動産鑑定評価についいて(依頼)」(平成28年4月14日付阪空補17号:別添参照)」の提出を受けており大阪航空局からの依頼に基づき本地の現状を踏まえた評価を行なうものとした。

 (2)これを踏まえて、平成28年4月日を価格時点として平生28年月15日近財統-第442号により不動産鑑定士に鑑定評価の発注を行なった。不動産鑑定士には上記(1)航空局依頼文書を交付した上で評価依頼を行なっている。

 (3)不動産鑑定士から別添不動産鑑定評価書提出を受けて、別添審査調書のとおり当局主席国有財産鑑定官の審査も了したため、本決議によ予定価格を決定するものである。

7.




















 貸付契約及び売買予定契約の合意解除について
 上記4のとおり、本件は平成27年5月に国有財産有償貸付契約及び国有財産売買予定契約を継続しているため、今回、売買契約を行なう際にはこれらの書面との関係を整理する必要がある。
 当局統括法務監査官(所属法曹有資格者)に確認したところ「今後予定している売買契約締結済の売買予約契約で定めた売買契約に新たな特約条項を加える内容となるため、売買予約の予約完結権行使ではなく、今回新たな売買契約を締結すると整理すべき。」との指導があった。そのため、今回の売買契約書には、締結済みの国有財産有償貸付契約及び国有財産売買予約契約を合意解除する旨の特約条項の付加を予定している。

 書き換え前の「5.本件売払について」の(1)から(4)までの「国から事前に交付された資料」にはない「想定し得ないレベルの生活ごみ等の地下埋設物が発見された」ことから、森本学園側は国にゴミ撤去を要請したものの、予算確保の点で即座の対応は困難である胸を伝えられたところ、本来は国に対して損害賠償請求行うべき筋合いのものだが、「今後の損害倍書を等を行わないとする条件で」納得できる金額であるなら、土地を買受けることが現実的な問題解決策ではないかとの提案を行い、大阪航空局は提案に応じなかった場合の損害賠償請求と「小学校建設の中止による社会問題を惹起する可能性」の回避のために「売払いによる問題解決を目指す」こととしたという近畿財務局の決定経緯を一切消して、〈(2)その後、同年(注平成28年)3月に、森友学園から、早期に学校を整備し開校するために、埋設物の撤去及び建設工事等を実施する必要があり、国有地を購入したい旨の要望があったものである。〉と書き換え、ここでも「損害賠償請求」云々の経緯を消去という方法で隠している。改ざん後の文言はまるで「損害賠償請求」という言葉に恐れをなして、相手の言いなりに交渉したわけではないと意思表示しているようにも見える。

 この国有地に関しては2015年(平成27年)5月21日に国は森友学園と貸付期間10年間の定期借地権を設定する国有財産有償貸付契約と国有財産売買予約契約を同時に締結している。要するに土地を現金なのか、ローンなのか、買受けるだけの資金調達が難しいから、10年間の借受けを行い、ゆくゆくは買取るという契約を結んだ。

 ところが、改ざん前の取り決めでは買受けるだけの資金調達が難しいとしながらも、納得できる金額なら買受けるとする姿勢に急に転じたのはなぜなのだろう。新たな地下埋設物が見つかる前に最初から存在していたことが判明していた地下埋設物を森友側が約1億3千万円を掛けて撤去したことで土地の価値が上がったと見做す有益費約1億3千万円を森友は国から受け取っている。土地買受け提案以降の不動産鑑定評価額9億5600万円に対して新たに見つかった地下埋設物の撤去・処分費用が8億1900万円と算定され、その差額の土地代金約1億3400万円は有益費として受け取った約1億3千万円でペイできるが、ペイせずに、森友学園は小学校開校で色々な資金を必要とするという理由で受け取った有益費の約1億3千万円はそのままにして、土地代金約1億3400万円は期間10年での延納の申請を行い、認められた。

 要するに隠す必要もない事実経緯でありながら、改ざんという手を使って隠す必要性が生じたのは不動産鑑定評価額9億5600万円に対して地下埋設物の撤去・処分費用が8億1900万円と算定し、土地代金をこの差額の約1億3400万円としたこと自体に何らかのカラクリがあったからだろう。カラクリがあったからこそ、土地を買受けるだけの資金調達は困難だとしていながら、急に土地買受けの姿勢に転ずることができた。

 当然、損害賠償請求をチラつかせられたことも文書改ざんによって隠してもいるのだから、チラつかせも絡んだ土地の買受けということになるはずだ。。

 何もカラクリがなければ、近畿財務局は森友側と取り決めた事実経緯は事実経緯として残しておくことができるはずだし、そのとおりの国会答弁もできるはずだが、朝日新聞が2017年2月9日付朝刊で森友学園への国有地取引をめぐる疑惑を報じたことに対応して国会で野党が追及を始めた関係からだろう、2016年5月31日に作成されたこの文書を約9カ月も経過した2017年2月下旬から4月にかけて、最初の事実経緯を改ざんという形で隠蔽しなければならなかった。そしてこの決裁文書の改ざんの疑いを朝日新聞が2018年3月2日付朝刊で報じ、2018年3月12日に財務省はその事実を認めている。

 この2018年3月12日から約2カ月版後に大阪地検特捜部は不起訴処分の決定を下した。と言うことは大阪地検は財務省と森友間で損害賠償請求を受ける恐れから土地の売買契約に至ったという事実経緯を隠す決済文書改ざんに何のカラクリも見ずにダンプカー4000台分、1万9520トンの地下埋設物の存在を前提として損害賠償請求回避によって、国は財産上の損害を免れ得たといった趣旨で告発を受けた全員を不起訴処分にしたことになる。

 さらに言うと、取り調べを受けた財務省側は決裁文書改ざんによって一旦は消し去った損害賠償云々の事実経緯を再び持ち出して、「地下埋設物の撤去・処分費用に相当する損害賠償費用を免れることができたから、国に損害は与えていません」と訴えたことになる。つまり大阪特捜はどこにも矛盾を見なかった。

 《財務省2018年6月4日『森友学園案件に係る決裁文書の改ざん等に関する調査報告書』はなぜ改ざんを必要としたのかの本質的な原因解明は放置(2)》に続く。
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名古屋入管ウィシュマ・サンダマリさん死亡はおとなしくさせるために薬の過剰投与で眠らせていたことからの手遅れか(1)

2021-10-29 04:15:34 | 政治
 スリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさんは令和2年(2020年)8月20日に名古屋出入国在留管理局に不法残留で収容され、翌令和3年(2021)3月6日に病死した。当時33歳の若さだったという。収容後約6ヶ月半、197日目の死亡である。

 収容施設内で何があったのか、マスコミ報道も国会質問も様々な疑惑を取り上げている。取り上げているマスコミの数は多いし、伝えている疑惑も多い。また国会でも様々に追及していることは推測できることで、纏まりがつかないから、出入国在留管理庁が2021年4月9日にウィシュマ・サンダマリさんが亡くなった経緯に関する調査の中間報告を公表したそうだが、ネットを探しても見つけることができなかったため、2021年8月1 0日に出入国在留管理庁調査チームが、「2021年3月6日の名古屋出入国在留管理局被収容者死亡事案に関する調査報告書」を発表している。この「調査報告書」の説明や証言、検証等の文言に添って、何が彼女を死に向かわせたのか、実際のところを大胆に推理してみようと思う。

 なお、文章中の「注」は「調査報告書」の要所要所のページ下に纏めてあるが、「注」を必要とする文章に続けて、「注番号」を分かりやすいように赤文字にして表記することに変えた。その他の文飾も当方。

 最初にウィシュマ・サンダマリさんの収容を管理していた体制を見てみる。

 「2 処遇部門の組織概要」

(1) 処遇部門の体制 (別紙3)(3ページ)

それぞれ統括入国警備官(8-男子区処遇担当の統括入国警備官及び女子区処遇担当の統括入国警備官を総称して「処遇担当統括」と呼ぶ。)が置かれていた。 また, 男子区処遇担当及び女子区処遇担当は,それぞれ複数の班に分けられていた。

収容場は,複数の収容区に分けられており,その中に女子用の区別された収容区(以下「女子区」という。)が設けられていた。

女子区では,担当する収容区を複数名の入国警備官が担当し,班ごとに交替で看守勤務者として24時間勤務に就き,被収容者の処遇を担っていた。また,看守勤務者とは別に,その上位者である看守責任者1名,副看守責任者2名が,各収容区における看守勤務者の業務の監督,指揮等を担っていた。

 参考のために収容施設の処遇を見ておく。

 「収容施設について(収容施設の処遇)」(出入国在留管理庁)

収容施設について(収容施設の処遇)

収容令書又は退去強制令書により入国者収容所や地方入管局の収容場に収容されている外国人(以下「被収容者」といいます。)は,保安上支障がない範囲内において,できる限りの自由が与えられ,その属する国の風俗習慣,生活様式を尊重されています。

これから入国者収容所の一例をもって被収容者の処遇を紹介します。

施設の構造及び設備

収容施設の構造及び設備は,通風,採光を十分に配慮しており,冷暖房が完備されています。

 上記「調査報告書」は「出入国在留管理庁」のサイトに「報道発表資料」として紹介されているが、同時に、

 別添【1月15日から3月6日までの経過等の詳細】(省略)
 別紙(省略)

 と説明書きがされていて、この〈【1月15日から3月6日までの経過等の詳細】〉とは「調査報告書」の29ページにウィシュマ・サンダマリさんを「以下A氏という」と仮名表記することを断っていて、同じく医師名も「甲医師」とか「乙医師」とか、「甲・乙・丙」表記、あるいは「A・B・C…」等表記しているが、医師名、その他はともかく、ウィシュマ・サンダマリさんは既に実名がマスコミによって広く報道されている上に「ウィシュマ・サンダマリ」として生きてきたという彼女のアイデンティティ、自分は常に「ウィシュマ・サンダマリ」であるという彼女独自の個人性を蔑ろにする扱いそのものであり、このことがウィシュマ・サンダマリさんに対する実際の処遇となって現れていないか読み解かなければならないが、「調査報告書」の29ページに、〈A氏が食欲不振,吐き気,体のしびれ等の体調不良を訴えるようになった1月15日以降,A氏が死亡した3月6日までの経過等の詳細は,別添【1月15日から3月6日までの経過等の詳細】(別紙5から別紙18までは,別添記載の事実経過に関連する参考資料である。)のとおりである。〉を指していて、さらに40ページと47ページにも、〈詳細については,別添【1月15日から3月6日までの経過等の詳細】24(4)参照。〉というふうに出ているが、上記「出入国在留管理庁」サイトの説明書きどおりに「省略」されていて、「調査報告書」のどこにも記載がない。いくら「とおりである」と説明されても、「省略」扱いでは「死人に口なし」だと疑いを掛けても、申し開きはできないはずだ。「死人に口なし」を否定したいなら、「省略」扱いをしないことである。

 監視カメラの映像を全部を出さないのも「死人に口なし」だからこそできる不都合の隠蔽に他ならないはずである。要するに「調査報告書」は「死人に口なし」で成り立っている可能性は十分に疑うことができるが、「死人に口なし」かどうかも読み解いていかなければならない。

 では、「調査報告書」の点検にかかる前に「目次」のみを一括して提示しておく。文飾を施した項目を主に取り上げる。

 目次

第1 はじめに
1 調査の経緯 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
2 本報告書について ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2

第2 本件発生当時の名古屋局の体制
1 本件発生当時の名古屋局の組織概要 ・・・・・・・・・・・・・・3
2 処遇部門の組織概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3
3 仮放免に関する決裁体制等 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・15
4 DV被害者等の取扱いに関する法令,通達等 ・・・・・・・・・・18

第3 事実経過
収容に至る経緯等 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21
収容時の状況等(健康状態等を除く。) ・・・・・・・・・・・・ 24
3 収容後の健康状態等 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 26
4 1月15日(金)から3月6日(土)までの経過等 ・・・・・・ 29

第4 死因
1 調査により判明したA氏の死因に関する見解等 ・・・・・・・・・30
2 死亡後のA氏の検査結果等 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・32
3 結論 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・34

第5 本件の検討に先立つ事実関係の整理
1 医療的対応等の経過 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・36
2 A氏の体調に関する名古屋局職員の認識 ・・・・・・・・・・・・54
3 仮放免許可申請に関する事実経過 ・・・・・・・・・・・・・・・56
4 B氏との関係等 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・61

第6 本件における名古屋局の対応についての検討結果
1 収容中に体調不良を訴えたA氏に対する医療的対応の在り方
(1月中旬以降, A氏の体調が徐々に悪化していく過程での
医療的対応は適切であったか) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 66

2 A氏の死亡前数日間の医療的対応の在り方
(3月4日の外部病院の精神科受診以降, A氏の体調に外観上の顕著な変化が見られるようになった後の医療的対応は適切であったか) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・73

A氏に対する収容中の介助等の対応の在り方
(介助を要する状況の下で, A氏への対応は適切に行われていたか) ・・・・・80
A氏の仮放免を許可せずに収容を継続した判断は適切であったか ・・・・・・・84
A氏をDV被害者として取り扱うべきではなかったか ・・・・・・・・・・・・89
支援者への対応に問題はなかったか ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・92

第7 改善策
1 全職員の意識改革 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 94
2 被収容者の健康状態に関する情報を的確に把握・共有し, 医療的対応を行うための組織体制の改革 ・・・・・・95
3 医療体制の強化 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・95
4 被収容者の健康状態を踏まえた仮放免判断の適正化 ・・・・・95
5 その他の改善策 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・96

< 予め断っておくが、28ページに〈看守勤務者(女性。以下,特に言及しない場合,看守勤務者はいずれも女性である。)と断りが入っているから、承知しておいてもらいたい。もう一つ、「第3 事実経過」(21ページ~)の「3収容後の健康状態等」「(1) 収容開始時(令和2年8月20日)の健康状態等」からウィシュマ・サンダマリさんの体重の変化を27ページ記載の「イ 収容開始時の体重及びその後の体重の推移等」の画像によって載せておく。

 ここにはウィシュマ・サンダマリさんの収容時の健康状態は新規入所者全員に対して行なう「健康状態に関する質問書」に従った質問を令和2年(2020年)8月20日の収容開始時に行い、彼女は〈体調不良,服用中の薬,既往症(結核, 肝炎, 高血圧,ぜんそく,糖尿病,心疾患,脳疾患)及び入院・手術歴の有無を問う各質問に対し,いずれも 「ない」と回答し〉、〈これを踏まえ,立ち会った入国警備官は,「健康状態に関する質問書」の官用欄に,「健康状態は良好とのこと。」と記載した。〉との説明がなされていて、入管収容時には十分に健康であったことを窺うことができる。

 〈収容開始時の測定では,A氏の身長は158.0センチメートル,体重は84.9キログラムであった。〉、〈司法解剖時の体重は,63.4キログラムであった。〉の2つの注釈がつけてある。収容後約6ヶ月半、197日目で84.9グラムから、63.4キログラムに21.5キログラムも減っていた。

 画像中の「官給食の拒否者としての測定」「注63」は、〈A氏を官給食の拒食者として取り扱った経緯及びその終了については,別添9(10)ウのとおり。〉

 但し「別添」も「別紙」も省略扱いとなっていて、覗くことはできない。「死人に口なし」の疑惑が濃厚となるが、どのような経緯で体重が21.5キログラムも減ることになったのだろうか。

 同じく画像中の「注63」は、〈令和3年2月20日以降, 定期的な体重測定を実施しようとしていたが,A氏が「体が痛いので測定したくない。」旨述べていたため,この日の測定となった。〉となっている。

 ウィシュマ・サンダマリさんが「官給食の拒否」をしたことによる危惧すべき点は看守勤務者が、それが女性であっても、収容施設内で被収容外国人に対して支配者として君臨していた場合、(あるいはそれに近い状態で君臨していた場合)、入管施設では当たり前として従うべきとしている「官給食」を拒否することで当たり前としていた日常性を壊したとき、支配者としての君臨が意味をなさなくなって、支配者の気分を害することになり、君臨というただでさえ権威的な態度がなお権威的となって、何らかの報復感情を以って君臨をより強固にしたい衝動に駆られ、その衝動を実際の形に現すことである。

 入管施設で被収容外国人が自身に対する看守勤務者の扱いの乱暴なことに抗議したり、あるいは食事の改善を求めたりすると、生意気な態度を取ったとして、1人部屋に連れて行き、後ろ手に手錠をかけて何時間も放置したりする暴力的な例は看守勤務者が支配者として君臨していることからの自らの絶対性を押し通す行為にほかならない。支配者として君臨していなければ、(あるいはそれに近い状態で君臨していなければ)、相手の言い分を聞いて、どちらに正当性があるかを話し合い、譲るべきは譲り、譲れない場合は相手を説得し、民主的な解決方法を図ることになるだろう。余程のことがない限り、暴言や身体拘束等の暴力的な制圧は発生しない。

 当然、看守勤務者たちがウィシュマ・サンダマリさんをどういう人物として評価していたのか、評価に応じた態度を取っていたのか、評価とは無関係に一収容者と見て、与えられた職務を誠実にこなしていたのかが収容時は健康な体で、当時33歳の女性が健康を損ね、収容後約6ヶ月半、197日目に死亡した真相を読み解く鍵となる。

 先ず名古屋管理局がウィシュマ・サンダマリさんをどういう人物として評価していたのか、「調査報告書」の中の「第3 事実経過」「1 収容に至る経緯等」(21ページ)から窺ってみる。ウィシュマ・サンダマリさんは平成29年(2017年)6月29日にスリランカから「留学」の在留資格で日本に入国。在留期間は1年3カ月。彼女は千葉県内の日本語学校生となり、資格外活動の許可を受けてアルバイトをしていたが、2017年2月頃,アルバイト先で知り合ったスリランカ人男性と交際するようになって、学校は休みがちとなり、ついには所在不明となり、学校は除籍処分とし、その届け出を東京入国管理局(現東京出入国在留管理局)に行なった。彼女は不法残留扱いとなったが、「留学」を在留資格とした在留期限が切れる8日前の2017年9月21日に東京入国管理局(現東京出入国在留管理局)に出頭、難民認定申請を行い、同2017年10月15日に同申請に伴う 「特定活動」への在留資格変更を許可された。在留期間は2カ月。就労は不可。つまりこの2ヶ月間に難民認定されるか否かが審査されることになった。
 
 但し難民認定申請内容にウソがあり、このウソは交際していたスリランカ人男性と口裏合わせしたものだったが、ウソはウィシュマ・サンダマリさん死後にこの「調査報告書」の調査チームの調査によって明らかにされたもので、そのウソとは無関係に申請内容どおりの審査が行われていたことになる。つまりウソは難民認定申請の審査当時の東京入国管理局 (現東京出入国在留管理局)にしても、ウィシュマ・サンダマリさんを収容当時の名古屋出入国在留管理局にしても与り知らぬことだった。

 だが、ウィシュマ・サンダマリさんの「2 収容時の状況等 (健康状態等を除く。)」を報告する前に当時は気づいてもいなかった彼女のウソを並べるのは何らかの意図を感じないわけにはいかない。「1 収容に至る経緯等」の中で彼女のウソを並べているが、その3例を取り敢えず列記してみる。

 〈難民認定申請の理由について,「スリランカ本国において,恋人のB氏(交際していたスリランカ人男性のこと)がスリランカの地下組織の関係者とトラブルになった。同組織の集団が家に来て,B氏の居場所を教えなければ殺害すると脅迫され,暴力を受けた。危険を感じ,B氏が2017年(平成29年)4月に,私がその3か月後に来日した。帰国したらB氏と一緒に殺される。」〉

 以上のことをウソとする理由が2例目のウソとなっている。〈難民認定申請時のA氏の供述は,A氏とB氏が来日前から交際していたことを前提とするが,A氏が令和2年12月9日に支援者らと面会した際の面会簿 (別紙4)には,A氏が「来日してから恋人関係になった。」旨述べたことが記録されている。また,B氏も,調査チームの聴取に対し,「A氏とは来日後にアルバイト先で知り合い,2017年12月頃に交際を開始した。A氏と話し合い,日本に残るために難民認定申請をすることになり,お互いの申請理由をそろえることにした。」旨を述べている。〉

 3例目。〈A氏は,平成30年9月以降,静岡県内の弁当工場で働いており,前記のとおり同年10月15日に「特定活動」(就労不可)に在留資格が変更された後も就労を継続していた旨供述していた。この就労事実につき,調査チームにおいて当時の雇用先に確認したところ,遅くとも同年11月から令和2年4月23 日までの間,A氏は同弁当工場において就労しており,同雇用先は,A氏が「留学」の在留資格で適法に就労しているものと誤認していた。〉

 調査によってあとから知り得たにも関わらず、雇用先に対するウソまで取り上げている。「2 収容時の状況等 (健康状態等を除く。)」の中にも彼女のウソを取り上げているが、これはあとで述べる。

 「1 収容に至る経緯等」の中のこの3つのウソだけで、彼女の人物像を事実を偽る女性だとイメージさせるに十分である。大体がウィシュマ・サンダマリさんを収容後約6ヶ月半、197日目で死なせてしまった看守勤務者たちの、広く言えば名古屋出入国在留管理局の彼女に対する入管としての処遇が適切であったかどうかの調査・検証に彼女の人物像がどうであったかをわざわざ持ち出すのはどのような意図があってのことなのだろうか。必要不可欠な検証と言えるのだろうか、疑問そのものである。

 彼女は平成30年(2018年)10月15日に「『特定活動』(就労不可)」の在留資格変更で2カ月間の期限付きで認められた日本在留が切れる2日前の平成30年(2018年)12月13日に在留期間更新許可申請を行ったが,平成31年(2019年)1月22日に同申請について難民条約上の迫害事由に明らかに該当しない事情を主張して難民認定申請を行っているために在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由が認められないとの理由で在留期間更新不許可の処分がなされた。彼女は在留資格を失い、同日、スリランカへの帰国を理由として難民認定申請を取り下げた。

 ところが、彼女は〈以後不法残留となったが, その後,入管当局への出頭をせず,入国警備官が違反調査(入管法第27条)のためにA氏の携帯電話へ電話をかけても現在使用されていない旨のアナウンスが流れ,A氏の住居に呼出状を郵送しても返送されるなど,その所在が不明となった。〉

 要するにスリランカへの帰国を理由とした難民認定申請の取り下げて帰国すると言ったのは全くのウソだったと、「1 収容に至る経緯等」の調査報告にかこつけてここでも彼女を事実を偽る女性だとイメージさせている。

 但し難民認定申請の取り下げを受けて帰国を承諾しながら、行方をくらます不法残留外国人は数え上げたらキリがないはずであるし、彼女が特別でもなく、当然、看守勤務者たちや名古屋出入国在留管理局そのものの彼女に対する入管としての処遇が適切であったかどうかとは関係しないことであるし、全ての焦点は処遇の適切・不適切性の検証に当てなければならない。

 ウィシュマ・サンダマリさんは交際・同居していた同じスリランカ人の男性と仲違いし、部屋を追い出されて、所持金も1,350円だけとなり、静岡県内警察署管内の交番に出頭、,不法残留により警察官に現行犯逮捕、警察から名古屋局入国警備官に引き渡されて,収容令書に基づき,名古屋局の収容施設へと令和2年(2020年)8月20日に収容された。その後、名古屋出入国在留管理局は彼女の本国強制送還を試みるが、飛行機代の本人工面ができないことや、在日スリランカ大使館を介した彼女の家族との連絡が取れないこと、さらに約4カ月後の令和2年(2020年)12月中旬頃になって、彼女が帰国希望意思を撤回して本邦在留希望に転じたことやその他の経緯があり、送還作業が滞ることになった。

 では、「2 収容時の状況等 (健康状態等を除く。)」(24ページ)に描いてある彼女のウソ。〈当時,臨時便搭乗の条件である航空機代金及びスリランカ帰国後の隔離施設(ホテル)の利用代金等の合計約20万円を直ちに工面することは困難な状況であった。〉とする名古屋局の送還に向けた対応の説明に「注」(本文24ページ)を付けていて、愛人であった同じスリランカ出身の男性である〈B氏は,調査チームの聴取に対し,「私は,令和2年11月27日に名古屋入管で仮放免を許可された後,スリランカのA氏の母親に3回電話をかけ,A氏を助けてほしいと伝え,自分の連絡先をA氏の妹達に伝えるように頼んだ。しかし,A氏の母親には断わられ,A氏の妹達からも連絡はなかった。」旨供述している。〉

 この一文は彼女を直接的にウソをつく女性と思わせるのではなく、母親と妹からも見放された“いい加減な”姉という人物像をイメージさせている。“いい加減な”の中には勿論、彼女の事実を偽るとしている性格傾向も入れていることになるから、このことの間接的な補強材料となっている。だが、彼女の母親は在スリランカ日本大使館を通じ彼女の収容施設内での死亡を伝えられたあと、オンライン会見を通して死の真相を求めているし、2人の妹は来日して、姉の死の真相を追及すべく、東京出入国在留管理庁や名古屋出入国在留管理局と戦っている。

 問題はスリランカへの帰国を理由として難民認定申請を取り下げたものの、帰国せずに名古屋局とも連絡を断って行方をくらましたことを名古屋局の上層部が外国人不法残留者を取り締まる自分たち(=出入国在留管理局)の権威に逆らう生意気な態度と看做して、そのような態度の情報と共に事実を偽る女性だとする人物評価に関わる情報を名古屋局の上層部内にとどめずに管理局の収容施設に収容した不法残留外国人を直接管理する看守勤務者にも伝えていなかったかということである。

 伝えていなければ、看守勤務者たちは彼女に対して白紙で接することになって、特段の問題も起きないはずだが、伝えていたとしたら、その情報によって看守勤務者が彼女に対してある種の偏見で色付けした色眼鏡を通して接していなかったと断言できなくなる。このことは「調査報告書」を読み解いていくうちにおいおいと分かってくるはずである。

 次に仮釈放の「イ 名古屋局における不許可処分の経緯,状況等」(57ページ)からも看守勤務者や名古屋出入国在留管理局がウィシュマ・サンダマリさんを事実を偽る女性だとイメージさせている個所を拾い出してみる。このことを知るためには事実経緯として前以って「3 仮放免許可申請に関する事実経過」(56ページ)を覗かなければならない。

 〈ウィシュマ・サンダマリさんは令和2年(2020年)12月9日,名古屋局を訪れた日本人の支援者(以下「S1氏」 という。)らと初めて面会し〉、〈令和2年(2020年)12月16日,A氏とS1氏らとの2回目の面会の際,S1氏らは,A氏に対し,「日本で生活をしたいなら支援をするので仮放免申請等を行ってはどうか。」 旨を述べ〉、〈その後,A氏は,令和2年12月中旬頃,看守勤務者らに対し,「日本で助けてくれる人が見つかったので,日本に住み続けたくなった。」 旨を述べ,当初の帰国希望を撤回し,引き続き日本に留まることを希望するようになった。〉

 そして令和2年(2020年)〈12月中には仮放免許可申請の準備を開始し,支援者らの協力を受けながら,令和3年(2021年)1月4日,仮放免許可申請 (1回目)を行った。〉、だが、身元引受の保証人となった日本人の支援者の保証人としての資格に疑義が出たこととその他の理由で、2021年〈2月15日,A氏の仮放免許可申請について不許可処分とする旨の判断がされ,同月(2月)16日,同不許可処分がA氏に告知された。〉

 不許可処分の主な理由を以下から拾ってみる。

 「イ 名古屋局における不許可処分の経緯,状況等」(57ページ)

○支援者が主張している体調の悪化についても,2月5日付けの外部医療機関での診療結果によれば,重篤な疾病にかかっていると認められないなど,人道的配慮を要する理由がない旨の理由で,申請を不許可とする仮放免関係決裁書を起案した。

○支援者に煽られて仮放免を求めて執ように体調不良を訴えてきている者であるが,外部医療機関での診療の結果特段異常はなし(89―当初帰国希望であったA氏が,S1氏(支援者のこと)らとの面会を重ねる中で,支援の申出を受けて在留希望に転じたとの認識や,前記第5の2のとおり,A氏による体調不良の訴えについて,仮放免許可に向けたアピールとして実際よりも誇張して主張されているのではないかとの認識があったことが影響したものと考えられる。)

 「名古屋局」とは「名古屋出入国在留管理局」のことで、この仮放免許可申請不許可処分は「名古屋出入国在留管理局」自身が判断し、その理由としてウィシュマ・サンダマリさんを「支援者に煽られて仮放免を求めて執ように体調不良を訴えてきている者」だと断定している。

 「注」では「A氏による体調不良の訴えについて,仮放免許可に向けたアピールとして実際よりも誇張して主張されているのではないか」と、「誇張」という言葉を使っている。「体調不良を誇張して主張する」としている言葉の意図は何がしかの「体調不良」が事実存在していることを前提とすることになるが、「執ように体調不良を訴える」の言葉が意図していることは「体調不良」を存在しないことを前提としている。つまり前者はちょっとした痛いところを「仮放免許可に向けたアピール」のために2倍にも3倍にも「誇張して主張」しているということになるが、後者は痛いところなどないのに「執ように」痛みを訴えているとしているという意味を取る。

 彼女の「体調不良」は「詐病・仮病」の類いだと断定していたことになる。ここでも彼女を事実を偽る女性、言ってみれば、ウソをついていると見ていた。

 名古屋局の彼女に対するこのような人物像を収容施設で収容の不法残留外国人を直接管理する看守勤務者が共有することになっていたとしたら、彼女に対する色眼鏡は益々偏見の色を濃くしていく懸念が生じることになるが、このことにも注意を払って読み解いていかなければならない。

 彼女は2021年2月22日に名古屋局主任審査官に対して仮放免許可申請書を提出し、2回目の仮放免許可申請を行った。

 以下は2回目の仮放免許可申請書の提出に対する措置。

 「イ 名古屋局における検討状況等」(59ページ)

名古屋局においては,A氏の体調が悪化し,官給食をほとんど摂食せず,かつ,トイレ,入浴,面会のための移動の際,看守勤務者が数人がかりでA氏を抱えて移動させるなどの介助を頻繁に行う必要があったこと,このような介助に伴う職員の負担が増大したこと,A氏が在留希望の態度を維持したことなどを踏まえ,主に処遇部門首席入国警備官や警備監理官において,2月下旬から同月末頃には,A氏の仮放免許可申請を許可することを検討するようになり,その頃,警備監理官において,次長に対して仮放免許可を検討するべきである旨伝えていた。
   ・・・・・・・・・・・
また,3月4日の精神科の戊医師の診療の結果, A氏について「身体化障害の疑い」との判断が示され,新たに抗精神病薬等が処方されたことも受け,同3月5日,名古屋局では,A氏の体調をある程度回復させた上で仮放免するとの方針の下,対応を行うこととされた。

その一環として,まず,同日(3月5日)の看守責任者が,A氏に対し,仮放免の可能性を示唆しつつ,体調回復への意欲の増進を図るとの目的で面接を実施した。

処遇部門においては,このような面接を繰り返しながら,仮放免に向けA氏の体調の回復を図っていく方針としていたが,同月6日のA氏の死亡までに2回目の仮放免許可申請に対する判断を示すことはなかった。

同月6日のA氏の死亡までに2回目の仮放免許可申請に対する判断を示すことはなかった。

 ここでひとつ疑義が生じる。〈名古屋局においては,A氏の体調が悪化し,官給食をほとんど摂食せず,かつ,トイレ,入浴,面会のための移動の際,看守勤務者が数人がかりでA氏を抱えて移動させるなどの介助を頻繁に行う必要があった〉程に体調が悪化していて、2021年3月6日に死亡した前日の3月5日に、〈看守責任者が,A氏に対し,仮放免の可能性を示唆しつつ,体調回復への意欲の増進を図るとの目的で面接を実施〉することが果たしてできたのだろうか。

 できたかどうか、次の一文から途中を省略して必要な箇所だけを拾ってみる。

 「1 医療的対応等の経過」(36ページ)

○3月5日(金)

A氏は,ぐったりとしてベッドに横たわった状態で,自力で体を動かすことはほとんどなく,看守勤務者らの問い掛けに対しても「あー。」 とか「うー。」などとの声を発するだけの場合も多くなっていた。

このようなA氏の状態について,看守勤務者らは,3月4日に外部病院(精神科)で処方された薬の影響と認識していた。

同日(3月5日)のA氏に対する主な対応状況は,以下のとおりである。

〔午前7時52分頃~〕

看守勤務者2名がA氏の居室に入室し,バイタルチェックを行ったが,血圧及び脈拍は測定できず,看守勤務者は,血圧等測定表の血圧欄には,「脱力して測定できず。」 と記載した。 A氏の手足を曲げ伸ばして反応を確認すると,A氏は,「ああ。」などと声を上げて反応したが,朝食や飲料の摂取を促しても,A氏は,「ああ。」などと反応するのみで,摂取の意思を示さず,看守勤務者が目の前で手を何度も振るなどしたのに対しても,反応しなかった。

  ・・・・・・・・

〔午後7時37分頃〕

A氏は,看守勤務者の介助(薬と飲み物を口に入れてもらう。)により,処方薬(メコバラミン錠(末梢性神経障害治療剤),ランソプラゾールOD錠 (消化性潰瘍治療薬),ナウゼリンOD錠(消化管運動改善剤)及び救急常備薬の新ビオフェルミンS錠(整腸剤))を服用した。A氏は,看守勤務者からの問いかけに言葉を発して反応することはなかったが,口を開けるなどの動きはあった。

 3月5日の「午前7時52分頃~」の、〈A氏の手足を曲げ伸ばして反応を確認すると,A氏は,「ああ。」などと声を上げて反応したが,朝食や飲料の摂取を促しても,A氏は,「ああ。」などと反応するのみで,摂取の意思を示さず,看守勤務者が目の前で手を何度も振るなどしたのに対しても,反応しなかった。〉から始まって、〈看守勤務者らの問い掛けに対しても「あー。」 とか「うー。」などとの声を発するだけの場合も多くなっていた。〉ことへ。さらに、「午後7時37分頃」の〈A氏は,看守勤務者からの問いかけに言葉を発して反応することはなかったが,口を開けるなどの動きはあった。〉といった心身の状況が1日中続いていたはずなのにこの日に、〈看守責任者が,A氏に対し,仮放免の可能性を示唆しつつ,体調回復への意欲の増進を図るとの目的で面接を実施〉できた。

 明らかに「死人に口なしの」作文そのものであろう。すべきことは仮放免に向けた面接ではなく、救命措置を取ることだったろう。だが、取らなかった。取らなかったことは名古屋出入国在留管理局、ひいては看守勤務者のウィシュマ・サンダマリさんに対する扱いに関係していることになる。その扱いを決定づけたと見ることができる、同じ「1 医療的対応等の経過」(36ページ)の中の「3月4日(木)」(46ページ)の前段部分を見てみる。

 この日は、〈午後3時10分頃から午後4時20分頃までの間, 名古屋市内の丁病院の精神科を受診した。〉日である。担当医師は仮名で、戊医師。

 〈戊医師は,問診等の状況を踏まえ「この1ヶ月位で食事摂取が低下し,身の周りのことを自分でしなくなった。幻聴,嘔吐,不眠などもある。入管に収容されていて,日本にいたくて,ヒステリーや詐病の可能性もあるが,念のため頭部CTをしておく。」と診療録に記載した。

 なお,調査チームの聴取に対し,戊医師は,「問診の際,名古屋局職員から,『A氏は支援者から病気になれば仮釈放してもらえる旨言われたことがあり,その頃から心身の不調を訴えている。』旨の説明を受け,一つの可能性として,詐病の可能性を考えた。」「名古屋局職員が『詐病』や『詐病の可能性』という言葉を用いたり,詐病の疑いがある旨の発言をしたことはなかった。」旨を述べている。

 また,戊医師の診療に立ち会った職員の聴取によっても,職員が戊医師に対して,詐病の疑いがある旨の発言をした事実は確認されなかった(84-詳細については,別添【1月15日から3月6日までの経過等の詳細】24(4)参照。)。

 A氏の頭部CT撮影の結果に異常は認められなかったことから,戊医師は,A氏については確定的な診断はできず,可能性としては,病気になることで仮釈放してもらいたいという動機から詐病又は身体化障害 (いわゆるヒステリー)を生じたと考え得るが,この時点でいずれとも確定できない状況であると考え,傷病名を「身体化障害あるいは詐病の疑い」 とし,幻聴,不眠,嘔気に効果のあるクエチアピン錠100ミリグラム (抗精神病薬)及びニトラゼパム錠5ミリグラム(睡眠誘導剤,抗けいれん剤)を処方し,A氏に2週間後の再診を指示した。〉――

 ちょっと纏めてみる。

 ①〈戊医師は,「問診の際,名古屋局職員から,『A氏は支援者から病気になれば仮釈放してもらえる旨言われたことがあり,その頃から心身の不調を訴えている。』旨の説明を受け,一つの可能性として,詐病の可能性を考えた。」〉
 ②〈「名古屋局職員が『詐病』や『詐病の可能性』という言葉を用いたり,詐病の疑いがある旨の発言をしたことはなかった。」旨を述べている。〉
 ③〈戊医師の診療に立ち会った職員の聴取によっても,職員が戊医師に対して,詐病の疑いがある旨の発言をした事実は確認されなかった〉

 名古屋局職員が例え「詐病」、「詐病の可能性」、「詐病の疑い」という言葉を直接的に用いなくても、「A氏は支援者から病気になれば仮釈放してもらえる旨言われたことがあり,その頃から心身の不調を訴えている」と説明すれば、その説明を受けた側は医師でなくても、仮釈放目的の病気のフリ――「詐病・仮病」の類いだと解釈することになり、「詐病・仮病」の類いと言ったも同然の説明をしたことになる。

 「奴はウソつきだと」と「ウソつき」という言葉を直接的に使わなくても、「奴を信用したら、とんでもない目に遭う」、「奴の言うことを信用したら、あとで取り返しのつかないことになる」などと言えば、「奴はウソつきだ」と言ったも同然となるのと同じである。

 2020年2月16日にウィシュマ・サンダマリさんに告知することになった仮放免許可申請不許可処分の際も、「支援者に煽られて仮放免を求めて執ように体調不良を訴えてきている者」だと、彼女の「体調不良」を「詐病・仮病」の類いだと扱っていたのである。「詐病」という言葉を使った、使わなかったの問題ではない。そう見ていたかどうかの問題である。

 詐病と仮病の違いを知りたくなって、「詐病と仮病の違い」(LITALICO発達ナビ)で調べてみると、〈詐病とは、虚偽またはおおげさに強調された身体的・心理的不調を意図的に装うことです。いわゆる「仮病」と、広義では同じです。兵役を逃れる、仕事を避ける、金銭的な補償を獲得する、犯罪の訴追を免れる、薬物を得るといった動機が背景に存在しています。このような明らかな意図があれば詐病の診断が示唆されます。詐病と仮病との違いは、詐病の方がより大きな利益を求めて虚偽な言動を行う点である。〉と出ていた。

 腹が痛くなったと装って学校や会社をサボる、ずる休みするのは仮病であって、同じ理由で会社を休み、より待遇の良いより大きな会社の面接に出かけたりしたら、採用されなくても採用されても、詐病ということになるのだろ。精神科等が取り扱うのが「詐病」だが、仮病と思う場合もあるだろうから、今後、〈「詐病・仮病」の類い〉という言葉を使うことにする。

 要するに名古屋局職員は戊医師に対して「詐病」と受け取れる説明を行い、〈A氏の頭部CT撮影の結果に異常は認められなかったことから,戊医師は,A氏については確定的な診断はできず,可能性としては,病気になることで仮釈放してもらいたいという動機から詐病又は身体化障害 (いわゆるヒステリー)を生じたと考え得るが, この時点でいずれとも確定できない状況であると考え,傷病名を「身体化障害あるいは詐病の疑い」 とし,幻聴,不眠,嘔気に効果のあるクエチアピン錠100ミリグラム (抗精神病薬)及びニトラゼパム錠5ミリグラム (睡眠誘導剤,抗けいれん剤)を処方し,A氏に2週間後の再診を指示した。〉ということになる。

 もし名古屋局職員から上記説明を受けていなければ、〈確定的な診断はできず〉じまいで終えることになった可能性は十分に考えられる。この可能性が当たらずとも、名古屋局職員はウィシュマ・サンダマリさんが「支援者から病気になれば仮釈放してもらえる旨言われ」てから、「心身の不調を訴え」るようになったと見ていた。つまり「心身の不調」はニセ物だと見ていた。「詐病・仮病」の類いと見ていたことにほかならない。

 既に触れているが、彼女が支援者から「日本で生活をしたいなら支援をするので仮放免申請等を行ってはどうか」と言われたのは令和2年(2020年)12月16日の2回目の面会の際である。「その頃から心身の不調を訴えている」のを知り得るのは彼女を直接処遇する看守勤務者たちであるが、難民認定申請を取り下げて、帰国すると偽って行方をくらました彼女の人物像を事実を偽る女性だとイメージできたのは名古屋局職員であって、職員が彼女の人物像を情報として看守勤務者たちに伝えていたとしたら、その色眼鏡によって、支援者から「日本で生活をしたいなら支援をするので仮放免申請等を行ってはどうか」と言われたこととその頃から始まった心身の不調を「詐病・仮病」の類いにいとも簡単に結びつけてしまったということもあり得るから、名古屋局職員と看守勤務者たちの相互の意思が絡んで、名古屋出入国在留管理局に支配的となった「詐病・仮病」の類いへの疑いと見ることもできる。

 確かにウィシュマ・サンダマリさんの「心身の不調」は仮釈放して貰いたい目的の「詐病・仮病」の類いから始まったかもしれない。だが、その色眼鏡が病気のフリではなく、本当の病気になったときに、あるいは看守勤務者たちの「詐病・仮病」の類いを疑った処遇によって本当の病気にさせられてしまったという可能性もあるが、そのような変化を見逃すことになるようなことはなかっただろうか。色眼鏡の恐さは人をひとたび疑いの目で見ると、事実さえも疑わしい色に染めてしまうことがあるということである。

 心身の不調の訴えが事実「詐病・仮病」の類いであっとしても、看守勤務者たちの彼女に対する処遇に特に変わりはなければ問題はないが、人は誰かの心身の不調を「詐病・仮病」の類いと疑った場合、軽蔑する気持ちが働き、当たり前の応対を心がけることができなくなる場合がある。立場上、当たり前の応対を心がけなければならなかったとしても、表面的な応対にとどまり、何かの拍子に軽蔑する気持ちが懲らしめの感情を芽生えさせてしまい、その感情が態度となって現れない保証はない。

《名古屋入管ウィシュマ・サンダマリさん死亡はおとなしくさせるために薬の過剰投与で眠らせていたことからの手遅れか(2)》に続く

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財務省2018年6月4日『森友学園案件に係る決裁文書の改ざん等に関する調査報告書』はなぜ改ざんを必要としたのかの本質的な原因解明は放置(2)

2021-10-27 10:06:42 | 政治
 では、森友学園小学校建設用地を不動産鑑定した鑑定士の、その評価書を調査した報告書、「森友学園案件に係る不動産鑑定等に関する調査報告書」(森友学園案件に係る不動産鑑定等に関する調査委員会/2020年5月14日)から、財務省側の矛盾点を指摘してみる。

 この「報告書」は土地価格の見積もり業者を選定した経緯について、近畿財務局が2016年(平成28年)4月15日に更地の正常価格の売払い価格の鑑定評価業務についての見積り合わせ実施の通知を出し、2016年(平成28年)4月22日に見積り合わせの結果、見積書を提出したX、Y、Zの3社中最低額を提示したY鑑定業者に対し不動産鑑定を依頼したと記している。

 見積り合わせ実施の通知を出した2016年(平成28年)4月15日前日の2016年(平成28年)4月14日に大阪航空局が、〈地下埋設物撤去・処分概算額(8億1974万余円)等を近畿財務局に報告、併せて近畿財務局に対し、本件土地に係る処分等依頼書を提出〉と出ているから、不動産鑑定実施の前に既に地下埋設物量とその撤去・処分概算額が算定されていたことを頭に入れておかなければならない。

 この記事を参考にすると、森友学園が杭工事を行う過程で新たな地下埋設物を発見したことを近畿財務局に連絡したのは2016年(平成28年)3月11日であり、近畿財務局が地下埋設物の撤去・処分費用について見積もることを大阪航空局に依頼したのが2016年(平成28年)3月30日となっている。この約半月後の4月14日に面積8,770.43平方メートルの土地の地下埋設物を1万9520トン、ダンプカー4000台分に相当、その撤去・処分費用を概算額8億1974万余円と見積もったという経緯を取る。

 では、不動産鑑定の依頼を受けたY鑑定評価書についての記載を見てみる。

 【Y鑑定評価書 (B不動産鑑定士作成)の見出し及び内容】<発行日> 平成28年5月31日

<依頼者> 支出負担行為担当官 近畿財務局総務部次長<構成及び内容>

一 鑑定評価額及び価格の種類
価格の種類 総額 単価
正常価格 金956,000,000円 109,000円/㎡
※ 上記鑑定評価額は後記三 鑑定評価の条件を前提とするものである。
二 対象不動産の表示 (略)
三 鑑定評価の条件
1.対象確定条件 (略)

2.地域要因又は個別的要因についての想定上の条件

地下埋設物として廃材、ビニール片等の生活ゴミが確認されているが、本件評価において価格形成要因から除外する。

当該条件については下記事項を総合的に考慮して鑑定評価書の利用者の利益を害するものでなく、実現性や合法性の観点からも条件付加の妥当性を確認した。

(1)地下埋設物撤去及び処理費用は別途依頼者において算出されていることから、現実の価格形成要因との相違が対象不動産の価格に与える影響の程度について鑑定評価書の利用者が依頼目的や鑑定評価書の利用目的に対応して自ら判断できること。なお、「自ら判断することができる」とは価格に与える影響の程度等についての概略の認識ができる場合をいい、条件設定に伴い相違する具体的な金額の把握までを求めるものではない。

(2)依頼の背景を考慮すると、公益性の観点から保守的に地下埋設物を全て撤去することに合理性が認められるものの、最有効使用である住宅分譲に係る事業採算性の観点からは地下埋設物を全て撤去することに合理性を見出し難く、正常価格の概念から逸脱すると考えられること。

 先ず「地域要因又は個別的要因」について。「地域要因」とはご存知のように駅に近いとか、バスが通っているとか、交通の便や人口が多いとか、大都市に所属しているとかの地域性からの土地の条件を言い、「個別的要因」とは日当たりがいいとか、軟弱地盤ではないとか、岩盤が近い深度にあるとかのその土地自体を成り立たせている条件をいうとネットに出ている。

 また、「地下埋設物撤去及び処理費用は別途依頼者において算出されている」としていることは既に触れているように大阪航空局が近畿財務局の依頼を受けて森友学園小学校建設用地の地下埋設物は1万9520トン、ダンプカー4000台分で、撤去・処分費用は8億1974万余円と算出したことを指しているのは断るまでもない。

 〈地下埋設物として廃材、ビニール片等の生活ゴミが確認されているが、本件評価において価格形成要因から除外する。〉理由は、〈地下埋設物撤去及び処理費用は別途依頼者において算出されている〉からであり、「地下埋設物撤去及び処理費用」が「現実の価格形成要因」にどう影響を与えるかは「自ら判断できること」だからとしている。要するに不動産鑑定士による不動産鑑定によって不動産鑑定評価額が算出されさえすれば、地下埋設物撤去及び処理費用をどう扱うかは国と土地買い主との間で判断することであって、不動産鑑定士が口出すことではないということからなのだろう。

 もう一つの理由として、要するにこの土地に関してはという条件付きで「地下埋設物を全て撤去することに合理性を見出し難い」ことを挙げている。当然、撤去の状況に応じて土地価格は変動することになるから、地下埋設物の量といった「個別的要因」までを含めた鑑定では「正常価格」を打ち出すことはできないということになる。だが、財務省側は全量を撤去する費用を差し引いた土地価格で算定した。

 なぜなのだろうかという疑問が生じるが、この疑問についてはのち程検討してみることにする。

 上記「Y鑑定評価書」は「地下埋設物を全て撤去することに合理性を見出し難い」としていながら、地下埋設物を全て撤去した場合の土地の参考価格――「意見価額」を提示する矛盾を犯していることを「報告書」は伝えている。

 第4 Y鑑定評価書に関する調査の結果

1 問題点 (鑑定評価額のほかに意見価額の記載があること)

Y鑑定評価書においては、 個別的要因につき想定上の条件(地下埋設物の存在を価格形成要因から除外)を設定して、鑑定評価額を正常価格9億5600万円とする一方で、付記意見として、上記想定上の条件を設定しないで意見価額を1億3400万円としている。

依頼者である近畿財務局は、結果的には上記意見価額1億3400万円と同額で本件土地を森友学園に売却した。

そもそも森友学園への売却代金1億3400万円の相当性が問題となるが、不動産鑑定との関係では、鑑定評価書において鑑定評価額以外に意見価額を記載したことが
相当であったかが問われる。

 Y鑑定評価書は「地下埋設物として廃材、ビニール片等の生活ゴミが確認されているが」、その「撤去及び処理費用は別途依頼者において算出されていることから」、「本件評価において価格形成要因から除外する」と鑑定方法に条件を付け、地下埋設物とは関係させない土地の評価そのものを行なっていながら、その一方で「地下埋設物の存在を価格形成要因」に含めた鑑定を行なって、「意見価額」として1億3400万円の土地価格を付ける矛盾を演じている。この1億3400万円が森友学園に対する土地価格と同額になった。

 この「意見価額」の1億3400万円の算出方法が【Y鑑定評価書(B不動産鑑定士作成)の見出し及び内容】の中に記されている。

 3.意見価額の決定

上記1の更地価額から上記2の地下埋設物撤去及び処理費用を控除し、更に当該撤去期間に起因する宅地開発事業期間の長期化に伴って発生する逸失利益相応の減
価を講じて意見価額を査定した。

    *1      *2               *3
(956,000,000 円-819,741,947 円)×(1+△2%)≒134,000,000 円
                          (15,300 円/㎡)

*1 更地価額(本編鑑定評価)
*2 地下埋設物撤去及び処理費用
*3 事業期間長期化に伴う減価率

 当該撤去期間に起因する宅地開発事業期間の長期化に伴って発生する逸失利益を2%と計算した。その算定方法が記述してあるが、省略する。

 大阪航空局も近畿財務局も地下埋設物は1万9520トン、ダンプカー4000台分で、撤去・処分費用は8億1974万余円と見積もるまでが仕事で、それを既に行なっていたのだから、あとは不動産鑑定士が見積もった更地対応の土地鑑定評価額から撤去・処分費用の8億1974万余円を差し引くという手順を踏んで土地代金を設定すれば片付くはずだが、Y鑑定評価書が地下埋設物要因を含まない鑑定方法を条件とした不動産鑑定評価額を出す一方で、その条件を破ってまでして自らが行なった不動産鑑定評価額から地下埋設物の撤去・処分費用と逸失利益の2%を差し引いた土地の「意見価額」を1億3400万円とし、近畿財務局の土地価格と一致していることは単なる偶然の一致と見ることができるだろうか。

 近畿財務局が土地価格を1億3400万円とした根拠をこの「報告書」は会計検査院の「報告書」を参考にして次のように伝えている。

 4 意見価額が予定価格決定にあたり与えた影響

(1) 予定価格の決定

本件土地は、意見価額1億3400万円と同額で森友学園に売却された。会計検査院報告書83頁によると、近畿財務局は「意見価額を参考として、国有財産評価基準において『当該評価額等を基として評定価格を決定する』と規定されていることを根拠に、鑑定評価額9億5600万円から大阪航空局が合理的に見積もった地下埋設物撤去・処分費用を控除するとともに逸失利益相当額を減価して予定価格を1億3400万円にしたものであるとし、国有財産評価基準に沿った取扱いである」と説明しているとのことである。上記近畿財務局の説明によれば、鑑定評価額を基に予定価格を決定したものであり、意見価額を予定価格として決定したとは説明していないようである。

しかし、予定価格は、鑑定評価額から単純に地下埋設物撤去及び処理費用を控除しただけではなく、事業期間の長期化に伴う逸失利益として2%を減価したY鑑定評価書の意見価額と同額であることからしても、近畿財務局において、予定価格の決定にあたり意見価額が大きな拠り所となっていたと推測される。〉

 逸失利益率2%も「Y鑑定評価書」に倣った。

 大体が「Y鑑定評価書」は大阪航空局が見積もった地下埋設物撤去及び処理費用の8億1974万余円の妥当性を検証しているわけでもないからこそ、「森友学園案件に係る不動産鑑定等に関する調査委員会」が「意見価額」の相当性を批判しているのであって、また「Y鑑定評価書」自らが〈地下埋設物として廃材、ビニール片等の生活ゴミが確認されているが、本件評価において価格形成要因から除外する〉としていながら、大阪航空局が見積もった地下埋設物撤去及び処理費用の8億1974万余円をそのまま用いた「意見価額」を出した。「Y鑑定評価書」作成のB不動産鑑定士は近畿財務局と通じていたのではないのかと疑うこともできる。

 また地下埋設物の「撤去期間に起因する宅地開発事業期間の長期化に伴って発生する逸失利益」は森友側が申し出るべき金額であるはずだが、それを2%相当と計算できたということは、B不動産鑑定士は近畿財務局を介して森友学園側と話を通じさせていたとも疑うこともできる。

 上記「森友学園案件に係る不動産鑑定等に関する調査報告書」が「地下埋設物を全て撤去することに合理性を見出し難い」としていることに対して財務省側が全量撤去の費用を差し引いた土地価格を算定したことに対する疑問を前のところでのち程検討してみるとしたが、ここで取り上げてみる。「地下埋設物を全て撤去することに合理性を見出し難い」としている理由は何なのか。一旦は書き換えたが、その後に削除したために書き換えに気づくのが1週間遅れたと断り書きを入れてある文書「森友学園事案に係る今後の対応方針について(H28.4.4)」に、〈3月11日、相手方より、校舎建築の基礎工事である柱状改良工事を実施したところ、敷地内に大量の廃棄物が発生した旨の報告を受け、対応を検討しているもの。〉の文言があることは既に伝えている。

 また、会計検査院の「調査報告書」「学校法人森友学園に対する国有地の売却等に関する会計検査の結果について」も、校舎建築の基礎工事は柱状改良工事であることを大阪航空局の説明としてより具体的に紹介している。

 〈建物の杭部分の面積に係る処分量は、杭の有効径断面積の計303㎡に深度9.9m及び混入率の47.1%を乗じた後に体積を重量に換算するなどして、2,720tとしていた。深度の9.9mまでの数量を地下埋設物撤去・処分費用として見積もる必要性について、大阪航空局は、上記の深度3.8mの場合と同様の理由に加えて、本件杭工事は柱状にセメント系固化材を土壌と混合して杭を築造するものであることから、混合する土壌に廃材等が混入していると、将来、経年劣化により杭の強度に影響するおそれがあると考え、その地盤状況による支障も見込んだためとしている。〉

 「混合する土壌に廃材等が混入」するという「大阪航空局の説明」は国民をたぶらかすペテンそのものである。その証拠に次の画像を載せておく。
 画像のようにアースオーガードリルという名の刃が連続する螺旋状の溝がついた掘削ドリルを重機のアームの先端に取り付けて回転させて地面を掘っていくと、電動ドリルに木工キリを取付けて木材に穴を開けると、木工キリにしても連続する螺旋状の溝がついていて、溝に絡みながら木の切り屑が押し出されてくるようにアースオーガーの螺旋状の溝に絡みついて掘削した土が地表に押し出されてくる。地表以外に掘られた土は逃げ場がないからだ。

 どのような方法であろうと、地面に穴を掘るという作業は地中の土を取り除くことを意味していて、取り除いた土は地表に出す以外に置き場所はない。一旦地表に押し出されその土(排土)をミルクと呼ばれる水に溶いたセメントやその他の土壌固化材と混ぜて穴に戻して固めて、建築物を支える柱状の補強体(=杭)とする。森友学園が2016年(平成28年)3月11日に「杭工事を行う過程で新たな地下埋設物を発見」できたことはこの原理に基づく。穴を掘っていくにつれて螺旋状の掘削ドリルの溝に絡みついて土と共に地下埋設物が地上に押し出されてくるから、「発見」という人の目につく現象が起きる。

 当然、掘削した柱状の穴の中に存在した地下埋設物は全て地上に押し出されて、穴の中自体には存在しないことになり、地表に押し出された土の中に地下埋設物が混入していたなら、それを取り除いた土をセメントを水に溶かしたミルクやその他の土壌固化材と共に穴に戻して固めることになるから、経年劣化を引き起こす原因を穴の中に残さないことになる。また、アースオーガードリルの直径よりも大きなコンクリート塊や岩が掘削個所に障害物として横たわっていた場合、それを穿孔できるドリルも存在する。そのようなドリルの超大型の物(=シールドマシン)が国道のトンネルや列車のトンネルの掘削に使われる。直径が10メートル以上もあるそうだが、1日に10メートルか15メートル程度しか掘削できないそうだ。

 もし柱状杭の外側に残っている地下埋設物がミルクと土で固めた杭を経年劣化させると言うなら、鋼管杭に代えて、中にセメントを流し込めば、地下埋設物全量撤去よりも安価に済む。鋼管杭も地下水や微生物で腐食することを見込んで、「腐食代」(ふしょくしろ)と言って、周囲1ミリ分の厚みをつけるそうだ。アースオーガードリルで穴を掘る金額は変わらない。鋼管杭代金とミルクをコンクリー地に変える金額差だけ余分にかかる程度で片付く。

 大阪航空局の説明、〈混合する土壌に廃材等が混入していると、将来、経年劣化により杭の強度に影響するおそれがある〉としていることが如何に国民をたぶらかすペテンそのものであるかが理解できたと思う。

 だから、「森友学園案件に係る不動産鑑定等に関する調査報告書」が地下埋設物の量と撤去・処分費用が見積もられていることを承知の上で、「依頼の背景を考慮すると、公益性の観点から保守的に地下埋設物を全て撤去することに合理性が認められるものの」としながら、つまり全てキレイにしたい気持ちは理解できるが、「最有効使用である住宅分譲に係る事業採算性の観点からは地下埋設物を全て撤去することに合理性を見出し難く、正常価格の概念から逸脱すると考えられる」としたのだろう。

 つまり地下埋設物を一定程度残しておいても杭工事支障はないし、小学校校舎建設にも邪魔になるわけではないと言っていることになる。具体的には柱状にセメント系固化材と土壌とを混合して固めた杭と杭の間に少しぐらいの地下埋設物が埋まっていたとしても、地盤強度に影響しないということである。会計検査院の「調査報告書」の39P「図表2-8 対策工事における地下埋設物撤去の概念図」の説明書きに地下埋設物は、〈(対策工事ではほとんど撤去されていないと考えられる)〉と書き入れてあるのは杭と杭の間に地下埋設物がそのまま残置されていることを前提とした推測となり、杭と杭の間に少しぐらいの地下埋設物が埋まっていたとしても、地盤強度に影響しないことの根拠となる。

 だが、財務省側は全量撤去の費用を差し引いた土地価格を算定した。森友側との取引きに何らかのカラクリがなければ地下埋設物の全量撤去とか、全量撤去の費用を差し引くといった土木の常識に反することを前面に出すことはないだろう。事実全量撤去したなら、決裁文書を改ざんすることで改ざん部分の事実経緯を隠蔽したり、削除という方法で取引の実態を抹消したことと辻褄が合わなくなる。カラクリがあったからこそ、改ざんや削除による事実の隠蔽が必要になった。

 次に画像を載せておくが、森友学園小学校建設予定地(8,770.43㎡)と元々は一つの国有地であったが、豊中市が公園用内として買い入れた東側に位置する土地(9,492.42㎡)との地下埋設物量の違いから、森友側の土地に1万9520トン、ダンプカー4000台分の地下埋設物が果たして存在していたのかどうかの妥当性を会計検査院の「報告書」から探ってみる。両土地の間に幅員約16mの市道が設けてあるが、同じ国有地であったことから、元々は隣接していた。また豊中市の公園用地の方が721.99㎡広い。常識的に考えると、公園用地の方が地下埋設物量が多く思えるが、そうではない。

 〈豊中市は、財政状況が厳しいことなどの理由により換地後の土地を全て買い取ることが困難であるとして、換地後の土地のうちその半分程度の面積となる東側の9,492.42㎡(以下「公園用地」という。図表2-4参照)のみを取得して公園として整備する方針とし、西側部分の本件土地の取得を断念した上で、20年3月28日に公園用地について買受けを要望する旨の回答を大阪航空局へ送付していた。〉(23P)

 (大阪航空局により)〈処分依頼を受けた近畿財務局は、21年12月に不動産鑑定業者へ公園用地の鑑定評価業務を委託していた。近畿財務局は、委託に当たり、大阪航空局より提供を受けた土地履歴等調査及び地下構造物調査の結果を同鑑定業者に資料として提示していた。このため、委託を受けた同鑑定業者の不動産鑑定士は、不動産鑑定評価に当たり、公園用地について、前記のとおり、土地履歴等調査により汚染の存在は確認できなかったことから土壌汚染の影響は無いものと判断していた。また、地下構造物調査により地下埋設物が確認されていることなどから、その報告書に記載されている地下埋設物の数量等を基に、公園用地に係る処分工事費を8748万余円と算定するなどして、地下埋設物の存在に係る個別的要因を0.94と算定していた。そして、これらを踏まえ、同鑑定業者は、22年2月15日に近畿財務局へ鑑定評価書を提出していた。鑑定評価書の提出を受けた近畿財務局は、評価調書を作成し、同月24日に豊中市と見積合わせを実施しており、その結果、近畿財務局は、同年3月10日に、地下構造物調査の報告書に記載されている地下埋設物が存在することを買受人である豊中市が了承したとする特約条項を付して瑕疵を明示した国有財産売買契約により、公園用地9,492.42㎡を豊中市に14億2386万余円で売却していた。〉(25P)

 個別的要因に対する「0.94」という算定をネットで調べたが、要領を得ないので、この「報告書」19pの〈対策工事後の個別的要因のうち地盤改良について、大阪航空局は、整地により改善されたとして1.00としていた。〉との記述を参考にすると、土地に関するマイナスとなる個別的要因の存在しない土地、あるいは存在していたマイナスの個別的要因を取り除いた土地の評価は正常な土地としての意味を持つ「1.00」の算定を受け、「1.00」以下の算定はその値が下がる程に土地に問題点が存在し、マイナスの個別的要因の存在する土地は「1.00」から専門的知識によってマイナス分を引いて、「0.94」とか、「0.95」といった評価を行い、この数字を不動産評価額に掛けて売買価格を決定するということらしい。土地の評価がマイナスの個別的要因を理由に0.94と算定された場合、売主側が自費でマイナスのその個別的要因を取り除いた場合、個別的要因は「1.00」に戻ることになる。

 豊中市公園予定地の個別的要因算定値は0.94だから、売却価格14億2386万余円に地下埋設物撤去費8748万余円をプラスした元の価格15億1134万円に個別的要因算定値0.94を掛けると、14億2066万余円になって、売却価格に近づく。

 この個別的要因算定値0.94は、14億2386万余円(売却価格)÷15億1134万円(元の価格)≒0.94で出てくる。

 因みに売却価格に地下埋設物撤去費をプラスした元々の売値に個別的要因算定値のマイナス分を掛けてみる。

 14億2386万余円(売却価格)+8748万余円(地下埋設物撤去費)≒15億1134万余円×(1.00-0.94=)0.06≒9068万となって、地下埋設物撤去費8748万余円と差額は320万円、当然の計算結果だが、地下埋設物撤去費に近づくことになる。

 豊中市公園予定地と森友学園小学校建設予定地は元は地続きの隣接地である。森友学園小学校建設予定地の不動産鑑定評価額9億3200万円で、地下埋設物があり、森友側が撤去するとして、その費用を大阪航空局が8億1900万円と見積もり、その差額約1億3400万が売却価格となった。では、個別的要因算定値を計算してみる。

 約1億3400万(売却価格)÷9億3200万円(不動産鑑定評価額=元の価格)≒0.14

 森友学園小学校建設予定地よりも約722㎡狭い面積8,770.44㎡の豊中市公園予定地の個別的要因算定値0.94に対して地続きであった森友学園小学校建設予定地が豊中市公園予定地よりも722㎡も広いが、個別的要因算定値は0.14。0.94÷0.14≒6.7。地続きであった土地でありながら、より狭い豊中市公園予定地よりもより広い森友学園小学校建設予定地の方が7倍近くもの地下埋設物が存在していた。単純計算で行くと、森友のダンプカー4000台分、1万9500トン、ゴミ混入率47.1%に対して豊中市公園予定地はほぼ近似値のダンプカー台数とトン数、ゴミ混入率となっていいはずだが、約7分の1で収まっていた。地続きの隣接地同然の土地でありながら、この差が出るについては何か特殊な事情がなければならない。

 この辺の事情を会計検査院の「報告書」の〈(ア) 地下埋設物の取扱い(107P)~(ウ) 予定価格の決定等(113P)〉から窺ってみることにするが、「(ア) 地下埋設物の取扱い」は全文、「(イ) 地下埋設物撤去・処分費用の算定」以下は主なところを拾って、分かりやすいように箇条書きにして取り出した上、少々のコメントを青文字で付けてみるが、その前に32P~33Pの次の記述を参考のために載せておく。

〈一時貸付けを受けた森友学園は、同月(平成26年10月)21日から30日にかけて、本件土地の地層構成を明らかにし小学校校舎等の設計・施工の基礎資料とすることを目的として、地盤調査を調査会社へ発注して実施していた。当該地盤調査に係る報告書によれば、ボーリング調査は2か所で実施され、それぞれ地下46.5m、21.5mの深さまで実施されている。ボーリング調査の結果、地下3.1mまでは盛土層であり、盛土層について、その上部では植物根が多く混入し、中部から下部では塩化ビニル片、木片及びビニル片等が多く混入しているとされており、地下3.1m以深については、地下約10mまでが沖積層、それ以深が洪積層であるとされている。〉

 要するに地下埋設物は地下3.1mまでの盛土層のみに存在し、地下3.1m以深の沖積層(約2万年前の最終氷期最盛期以降に堆積した地層のこと。「Wikipedia」)には存在するはずはないことを伝えていることになる。文飾は当方。

  (ア) 地下埋設物の取扱い

〈森友学園から連絡を受けた近畿財務局は、大阪航空局とともに、28年3月14日に現地の確認をして、今回確認した廃棄物混合土は貸付合意書で対象としていた地下埋設物に該当しない新たな地下埋設物であると判断したとしている。そして、近畿財務局は、大阪航空局に地下埋設物の撤去・処分費用の見積りを口頭により依頼し、その額を本件土地の評価において反映させることとした。また、本件土地に関する隠れた瑕疵も含む一切の瑕疵について国の瑕疵担保責任を免除し、森友学園は売買契約締結後、損害賠償請求等を行わないとする特約条項を契約に加えることとした。一方、大阪航空局は、同月30日に近畿財務局から地下埋設物の撤去・処分費用の見積りを行うよう口頭による依頼を受けて、地下埋設物撤去処分概算額を8億1974万余円と算定し、近畿財務局へ提出した。〉

(イ) 地下埋設物撤去・処分費用の算定

○地下埋設物撤去・処分費用の算定における対象面積についてみると、杭工事においていずれの杭から廃棄物混合土が確認されたかを特定することができないこと、過去に池等であった土地の地歴等を勘案しているとする範囲と北側区画の5,190㎡とが一致しているかを確認することができないことから、対象面積の範囲を妥当とする確証は得られなかった。

 小学校建設予定地8,770.43㎡のうち「北側区画の5,190㎡」はほぼ校舎の敷地に重なる。要するに既に校舎が建っているから、改めて土を掘り起こして確かめることができない。しかもアースオーガードリルで穴を掘削しているとき、どの地点の地表下どの深さからどのくらいの量の地下埋設物が押し出さてきたのか、押し出されてこなかった地点もあるのかの記録を付けていなかった。当然、地下埋設物のより正確な量を検証しようがない不備を突きつけたことになる。
 
 さらに杭工事で地下埋設物の存在と量を推定する場合はオーガードリルによって地下埋設物は螺旋状の刃に絡め取られて地表に押し出されることになるから、セメントミルク等土壌固化材と地下埋設物を取り除いた掘削した土を混ぜながら穴に戻して杭を成形すれば、杭としての機能を果たすことになり、杭を打つ場所のみの地下埋設物回収で地下埋設問題は片付くはずだが、会計検査院はそのことを認識していなかったようだ。


○杭部分を除く部分に設定された深度3.8mについてみると、大阪航空局が確認したとしている工事写真には3.8mを正確に指し示していることを確認することができる状況は写っていない。また、近畿財務局及び大阪航空局の職員が現地で確認した際等に、別途、廃棄物混合土の深度を計測した記録はないことも踏まえると、廃棄物混合土を3.8mの深度において確認したとしていることの裏付けは確認することができなかった。

 〈杭部分を除く部分に設定された深度3.8mについてみると、大阪航空局が確認したとしている工事写真には3.8mを正確に指し示していることを確認することができる状況は写っていない。〉ことと廃棄物混合土を3.8mの深度において確認したとしていることの裏付けは確認することができなかった。こともいい加減な話だが、杭部分以外は地下埋設物が残っていても問題はないことが分かっているから、適当に処理したのだろう。地表に近い場所以外に地下埋設物が余りにも多い場合は杭の直径を大きくするか、杭の本数を多くすれば、建物を支える地盤を強固にすることができる。

○近畿財務局及び大阪航空局の職員が現地で確認した際等に、別途、廃棄物混合土の深度を計測した記録はないことも踏まえると、廃棄物混合土を3.8mの深度において確認したとしていることの裏付けは確認することができなかった。

 コメントを加えるまでもない。不備に続く不備で、財務省は大阪航空局の見積もり通りの地下埋設物が存在していたと信じさせることはできないはずだ。

ボーリング調査等を実施した箇所付近において、深度3.8mに廃棄物混合土が確認されていないのに、大阪航空局が森友学園小学校新築工事において工事関係者が北側区画で試掘した5か所のうち1か所の試掘において深度3.8mに廃棄物混合土が確認された結果をもって敷地面積4,887㎡に対して深度3.8mを一律に適用して処分量を算定しているのは、過去の調査等において廃棄物混合土が確認されていなかったとの調査結果と整合しておらず、この算定方法は十分な根拠が確認できないものとなっている。

 要するに「深度3.8m」の試掘1箇所のみの地下埋設物量を校舎が建っている北側の5,190㎡のうちの建物の杭部分の面積(303㎡)を除く面積4,887㎡に掛けて、この面積の地下埋設物量を算出した。

 「報告書」の38Pに次のような記述がある。(対策工事業者から森友学園に提出された
〈報告書に添付されていた産業廃棄物管理票等によれば、廃材等及び
廃棄物混合土の処分量は、地下構造物等の撤去の際に掘削機のバケット等に付着するなどして掘り出した9.29tにとどまっていた。一方、地下構造物調査においては68か所の試掘箇所のうち29か所で計347tの廃棄物混合土が確認されていることなどを考慮すれば、対策工事では廃棄物混合土のほとんどを撤去していなかったと思料される。〉

 撤去せずに校舎建設はできたということである。試掘で掘り出した地下埋設物と柱状改良工法を用いた杭工事で地表に出てきた地下埋設物を処理するのみで片付いたことの証明に過ぎない。

○杭部分に関し、深度9.9mまで廃棄物混合土の存在を見込んでいることについては、近畿財務局及び大阪航空局は、杭工事において新たな廃棄物混合土が確認されたことを現地や施工写真等で確認したとしている。

しかし、森友学園が行った対策工事において廃棄物混合土は撤去されていないため、近畿財務局及び大阪航空局が確認した廃棄物混合土が既知の地下3m程度までの深度のものなのか、杭先端部の地下9.9mの深度のものなのかなどについては確認することができなかった。

 地下3.1m~地下約10mまでが約2万年前に形成された沖積層なのだから、人間が捨てた廃棄物の類いは存在しない。当然、森友側は限られた量以外の撤去の必要性は生じなかった。

○杭工事において新たに確認されたとする廃棄物混合土は、(仮称)M学園小学校新築工事地盤調査報告書等においておおむね地下3m以深は沖積層等が分布しているとされていることなどから、既知の地下3m程度までに存在するものであることも考えられ、新たに確認されたとする廃棄物混合土がどの程度の深度に埋まっていたかについては、十分な確認を行う必要があったと認められる。

以上のように、深度3.8mについて、廃棄物混合土を確認していることの妥当性を確認することができず、敷地面積4,887㎡に対して一律の深度として用いたことについて十分な根拠が確認できないこと及び深度9.9mを用いる根拠について確認することができないこと、また、大阪航空局は、廃棄物混合土が確認されていない箇所についても地下埋設物が存在すると見込んでいることとなることなどから、地下埋設物撤去・処分概算額の算定に用いた廃棄物混合土の深度については、十分な根拠が確認できないものとなっている。

 会計検査院以ってしても確認できないことばかりとなっている。1万9520トン、ダンプカー4000台分の地下埋設物など存在しなかったメガネで眺めた方がスッキリする。

○また、混入率の47.1%は、地下構造物調査において北側区画内で試掘した42か所のうち廃棄物混合土の層が存在すると判断された28か所の混入率を平均して算定されているが、28か所以外の14か所についても北側区画での試掘であり、うち13か所では廃棄物混合土が確認されていない。このため、14か所を混入率の平均の算定から除外していることに合理性はなく、混入率の平均値が試掘した42か所の平均より高めに算定されていることも考えられる。このように、対象面積全体に乗じる平均混入率として、廃棄物混合土が確認された箇所に限定した混入率の平均値を用いていることについては、十分な根拠が確認できないものとなっている。

 元々は地続きであった東隣の豊田市の公園用地の地下埋設物の存在に係る個別的要因が0.94であるのに対してより面積が狭い森友小学校建設用地の個別的要因が0.14と7倍近くも多い地下埋設物の存在は不動産鑑定評価額9億5600万円の土地を売値1億3400万円とするために水増しに水増しさせた地下埋設物の撤去・処分費用8億1974万余円と見た方が理に適っている。

本件処分費の単価22,500円/tがどのような条件下で提示された単価であるのかなどを示す資料はなく、単価がどのような項目から構成されているかなど、単価の詳細な内容について確認することができなかった。

土地売値1億3400万円ありきだったから、この売値に合わせて全ての単価を決めていったのだろうから、資料など作成しようがなかったのだろう。

◯仮定の仕方によって処分量の推計値が変動すると考えられるが、例えば、限られた期間で見積りを行わなければならないという当時の制約された状況を勘案し、大阪航空局が適用した地下埋設物撤去・処分費用の価格構成や工事積算基準等を用いた上で、算定要素ごとに一定の条件を設けて試算を行ったところ、処分量19,520tは、

①廃棄物混合土の深度を過去の調査等において試掘した最大深度の平均値に修正した場合は9,344t、
②混入率を北側区画の全試掘箇所42か所の混入率の平均値に修正した場合は13,120t、
③処分量に含まれていた対策工事で掘削除去している土壌の量を控除した場合は19,108t、

これらの①~③の算定要素が全て組み合わされた場合は6,196tと算出された。

一方、上記の混入率法を用いずに、廃棄物混合土が確認された最大深度の平均値2.0mと最小深度の平均値0.6mの差となる1.4mの範囲全てに、廃棄物混合土が存在する層があるとみなして算定する層厚法も考えられる。

層厚法により、地下構造物調査等を行った位置が対象面積に対して偏っていないと仮定した上で、更に廃棄物混合土が存在する層の全てが廃棄物混合土のみであるとみなして面積5,347㎡を適用し、対策工事で掘削除去している土壌の量を控除して機械的に試算を行ったところ、処分量は13,927tと算出された。

このように、処分量を求めるための仮定の仕方によって、処分量の推計値は大きく変動する状況となっており、また、いずれも大阪航空局が算定した処分量19,520tとは大きく異なるものとなっていた。

以上のように、大阪航空局が算定した本件土地における処分量19,520t及び地下埋設物撤去・処分概算額8億1974万余円は、算定に用いている深度、混入率について十分な根拠が確認できないものとなっていたり、本件処分費の単価の詳細な内容等を確認することができなかったりなどしており、既存資料だけでは地下埋設物の範囲について十分に精緻に見積もることができず、また、仮定の仕方によっては処分量の推計値は大きく変動する状況にあることなどを踏まえると、大阪航空局において、地下埋設物撤去・処分概算額を算定する際に必要とされる慎重な調査検討を欠いていたと認められる。

要するに大阪航空局の地下埋設物量及び地下埋設物撤去・処分費用の算定方法が記録不備などで把握できないから、検査院の方でも様々な計算方法で地下埋設物処分量を計算しなければならなかった。裏返すと、大阪航空局の見積もり自体がいい加減だったことになる。その答は土地売値1億3400万円ありきと見るほかはない。

(ウ) 予定価格の決定等

◯近畿財務局は、大阪航空局から売払処分依頼を受けて、不動産鑑定評価基準に基づく正常価格を求めることとし、大阪航空局からの依頼文書で示された地下埋設物撤去・処分概算額及び軟弱地盤対策費を考慮して不動産鑑定評価を行うことを条件とした仕様書により鑑定評価業務を発注した。委託を受けた不動産鑑定業者の不動産鑑定士は、近畿財務局が考慮することを依頼した地下埋設物撤去・処分概算額について、不動産鑑定評価基準における「他の専門家が行った調査結果等」としては活用できなかったとし、近畿財務局の同意を得て、地下埋設物の存在を価格形成要因から除外する想定上の条件を設定して鑑定評価を行い、本件土地の鑑定評価額を9億5600万円とした。さらに、近畿財務局が提示した地下埋設物撤去・処分費用を控除し、更に地下埋設物の撤去に要する期間に起因する宅地開発事業期間の長期化に伴って発生する逸失利益相応の減価を講じて意見価額を1億3400万円であると付記していた。

当該意見価額について、上記の不動産鑑定士は、不動産鑑定評価基準において、想定上の条件が設定された場合に、「必要があると認められるときは、当該条件が設定されない場合の価格等の参考事項を記載すべきである」とされていることによるものであるなどとしている。そして、参考事項として記載された意見価額は、鑑定評価額を定める場合のように中立性や信頼性の水準を確保することが求められるものではない。また、地下埋設物撤去・処分概算額を活用できなかった理由は鑑定評価書に記載されていないが、上記の不動産鑑定士に確認したところ、依頼者側の推測に基づくものが含まれていて、調査方法が不動産鑑定評価においては不適当であることなどから、他の専門家が行った調査結果等としては活用できなかったとするとともに、不動産鑑定評価上、地下埋設物を全て撤去することが合理的であることを保証したものではないとしている。

 大阪航空局の地下埋設物に関わる見積もりは〈不動産鑑定評価基準における「他の専門家が行った調査結果等」としては活用できなかった〉、〈依頼者側の推測に基づくものが含まれていて、調査方法が不動産鑑定評価においては不適当であることなどから、他の専門家が行った調査結果等としては活用できなかった〉と無関係としたのは近畿財務省側と鑑定士が示し合わせたものではないと見せかける方便なのだろうか。なぜなら、〈不動産鑑定評価上、地下埋設物を全て撤去することが合理的であることを保証したものではない〉云々は財務省側にとっても、森友側にとっても好条件となるからである。土地の瑕疵として地下埋設物の存在は大阪航空局の見積もり通りとして値引きは当然が、だからと言って、見積もった地下埋設物の全量は撤去する必要はないとお墨付きを与えたも同然となるからだ。結果、会計検査院が調査を尽くしても、既に触れているように〈対策工事では廃棄物混合土のほとんどを撤去していなかったと思料される。〉と正確な検証のサジを投げた状況になっている。

 要するに鑑定士は地下埋設物を撤去しなくても杭工事に支障はないし、校舎建設工事にも支障はないことを知っていて、森友も近畿財務局もそのことを知っていたからこそ、露見した場合の虚偽公文書作成等の罪を免れるための危機管理から地下埋設物の撤去・処分にかかる正確な帳簿・記録の類を残さなかったのだろう。

 ところが、自分たち役人だけの問題ではなくなって、安倍晋三や安倍昭恵まで絡んできたために決算文書の改ざんを余儀なくされた。
 

◯また、軟弱地盤対策費5億8492万余円の算定根拠について大阪航空局に確認したところ、大阪航空局は、近畿財務局からの依頼に基づき、森友学園側の工事関係者から提供された見積書を内容の検証を行わないまま近畿財務局に提出したとしている。そして、近畿財務局は、当該見積書が契約相手方である森友学園側の工事関係者から提供されたものであることを知りながら、その事実を説明せず、また、内容を十分に確認しないまま、不動産鑑定士に判断を委ねることとして、これを考慮することを条件とした鑑定評価業務を委託していた。このようなことから、両局において、予定価格の決定に関連した事務の適正な実施に対する配慮が十分とはいえない状況となっていた。

 この経緯を見ると、森友側の思惑が大阪航空局から近畿財務局へと、近畿財務局から不動産鑑定士へと無条件でバトンタッチされ、最終的に不動産鑑定士から森友側の思惑の範囲内の結果を手に入れる構図を見て取ることができる。大阪航空局も近畿財務局も「見積書を内容の検証を行わない」のだから、森友側の思惑に加担したことになる。この加担がこのケースだけではなく、地下埋設物量の見積もりから始まって、その撤去・処分費用の見積もり、最終的に安すぎる土地代金の決定にまで関わった疑いが出てくる。

近畿財務局は、9億5600万円が鑑定評価額であること、地下埋設物撤去・処分概算額を反映した場合の意見価額が1億3400万円であることの審査を了したが、評価調書の作成を失念したとし、評定価格を定めないまま、1億3400万円を予定価格として決定していた。

 要するに9億5600万円の鑑定評価額と1億3400万円の意見価額についての妥当性や是非を検討する作成すべき「評価調書」を作成しなかった。「作成を失念した」は下手に作って露見した場合の罪を負うことを回避する危機管理からの体裁のいい言い逃れと言ったところなんだろう。結果的に決裁文書改ざんにまで行き着くことになった。当たり前のことだが、決裁文書改ざんだけの問題ではなく、地下埋設物量の見積もりから始まった一続きのイカサマでなければならない。決裁文書とは取引の経緯や実態を書き込んだ文書だから、その改ざんを迫られたということは実際の取引の経緯や実態がイカサマだったから、そのイカサマに対応した決裁文書の改ざんというイカサマでなければならない。そして森友疑惑に関係した安倍晋三等の閣僚の国会答弁も財務省理財局長佐川宣寿の虚偽答弁も国有地売却のイカサマに相呼応し合ったイカサマであるはずだ。

◯予定価格と意見価額が同額である点に関して、近畿財務局は、本件鑑定評価において、地下埋設物の存在が価格形成要因から除外されたことから、地下埋設物の影響を踏まえた判断が必要になるとし、近畿財務局が明らかとなっている瑕疵に対応しない場合には森友学園が小学校建設を断念して損害賠償を請求する考えが示されていたことなどの個別事情を踏まえ、意見価額を参考として、鑑定評価額9億5600万円から大阪航空局が合理的に見積もった地下埋設物撤去・処分費用を控除するなどしたものであるとし、国有財産評価基準に沿った取扱いであるとしている。

しかし、予定価格の決定に当たり、森友学園から損害賠償を請求する考えが示されていたことなどの個別事情を踏まえたとされているところ、当該個別事情を勘案したことは予定価格の決定における重要な要素であるのに、決裁文書にこの点に関する特段の記述がないなど、具体的な検討内容は明らかではなかった。そして、鑑定評価額と大きく異なる額を予定価格として決定していたのに、国有財産評価基準で求められている評価調書の作成を失念し、評定価格を定めておらず、評価内容が明らかになっていないため、評価事務の適正を欠いていると認められた。

 〈予定価格と意見価額が同額である点に関して、近畿財務局は、本件鑑定評価において、地下埋設物の存在が価格形成要因から除外されたことから、地下埋設物の影響を踏まえた判断が必要になると〉したこと自体が間違った態度となっている。不動産鑑定士が出した土地鑑定評価額から「地下埋設物撤去・処分費用を控除」すれば片付くことであって、不動産鑑定士の手を煩わせて同じ程度の土地価格を出させたこと自体、自分たちのイカサマをイカサマでないと見せかけるお墨付きを不動産鑑定士を介して手に入れたといったところであるはずだ。 

 では、森友疑惑の核心はあくまでも大阪航空局が見積もった1万9520トン、ダンプカー4000台分の地下埋設物が果たして実際に存在していたのかどうかであり、疑惑の出発点となっていて、地下埋設物が小学校校舎建設にどれ程の障害となり、障害となった分、搬出・産廃処理されていたはずで、搬出・産廃処理量・金額と地下埋設物撤去・処分費用との差額の妥当性等々、これらの点に関して会計検査院の対森友学園国有地売却の会計検査報告書から窺うことのできる疑問・疑惑に財務省の「森友学園案件に係る決裁文書の改ざん等に関する調査報告書」(2018年6月4日)がどう答えているか、見てみることにする。

 会計検査院の「報告書」は2017年11月22日に公表。財務省の「報告書」は約半年後の2018年6月4日公表。例え半年の期間であったとしても、会計検査院「報告書」の疑問・疑惑に答えていなければ、調査報告とは言えない。結論を先に言うと、財務省「報告書」は何も答えていない。この「報告書」自身が「4P」の「注」として答えている。

 〈本報告書は、平成29年2月以降の森友学園案件に係る決裁文書の改ざん等に関する調査の結果をとりまとめたものであり、上記の価格算定手続の妥当性等を含め、平成28年6月20日 (月)の事案終了前の状況について調査を行ったものではない。〉

 2016年(平成28年)6月20日に森友学園と国有地売買契約を締結した。その日を以って全て終了したものとして扱い、決裁文書の改ざんのみの問題点を洗い出している。

 改ざんに至った発端の記述が財務省「報告書」の最初部分に記載されているから、参考のために簡単に取り上げてみる。

 2017年2月に森友学園案件が国会で取り上げられて以降、同年2月下旬から4月にかけて5件の決裁文書を改ざん。一度ウソをつくと、そのウソを事実と見せかけるために次のウソが必要となる喩えどおりに「主としてこれらの決裁文書の改ざん内容を反映する形で」、つまり5件の改ざんに辻褄を合わせる形で9件の決裁文書、計14件の決裁文書改ざんを行なった。

 この「計14件」は単なる数字ではなく、ウソの量を表している。1件や2件ではない、14件という相当量のウソを要した。それ程までに対森友学園国有地売却に関してウソを必要とした。ウソを必要とした原因を森友学園国有地売却との関連で捉えてはいない。国会で問題になったことから始まった文書改ざんという事実経緯のみが取り上げられている。

 例えば2017年2月21日に近畿財務局及び本省理財局の国有財産審理室長が国会議員団に面会を受けたことから、政治家関係者に関する記載の取扱いが問題となり得ることが認識され、報告を受けた財務省理財局長が〈当該文書の位置づけ等を十分に把握しないまま、そうした記載のある文書を外に出すべきではなく、最低限の記載とすべきであると反応した。理財局長からはそれ以上具体的な指示はなかったものの、総務課長及び国有財産審理室長としては、理財局長の上記反応を受けて、将来的に当該決裁文書の公表を求められる場合に備えて、記載を直す必要があると認識した。こうした認識は、国有財産企画課長にも共有された。〉ことから始まり、〈政治家関係者からの照会状況等が記載された経緯部分を削除するなどの具体的な作業を〉開始、〈理財局長からは、2017年2月から3月にかけて積み重ねてきた国会答弁を踏まえた内容とするよう念押しがあった。〉と改ざんが深みにハマっていく事実経緯の調査のみで、なぜ政治家関係者に関する記載の取扱いが問題となるのか、なぜ理財局長の佐川宣寿は局長という地位にありながら、決裁文書に記してある事実と異なる答弁をする必要があったのかの「なぜ」に対する調査がない。

 例えば2017年2月17日(金)の衆議院予算委員会、その他で安倍晋三から、〈本人や妻が、事務所も含めて、この国有地払下げに一切関わっていないことは明確にしたい旨の答弁があった。〉(10P)ものの、この〈答弁以降、本省理財局の総務課長から国有財産審理室長及び近畿財務局の管財部長に対し、総理夫人の名前が入った書類の存否について確認がなされた。これに対して、総理夫人本人からの照会は無いことや、総理夫人付から 本省理財局に照会があった際の記録は作成し、共有しているが、内容は特段問題となるものではないことを確認したほか、近畿財務局の管財部長からは、その他の政治家関係者からの照会状況に関する記録の取扱いについて相談がなされた。さらに、上記の同年2月21日(火)の国会議員団との面会の状況も踏まえ、本省理財局の総務課長から近畿財務局の管財部長に対して政治家関係者をはじめとする各種照会状況のリストの作成を依頼し、本省理財局の国有財産審理室長に当該リストが送付された。〉(15p)

 だが、決裁文書から総理夫人安倍昭恵の名前が削除された。財務省「報告書」はこのことに一切触れていない。かくかように会計検査院「報告書」が提示した多くの「なぜ」に答えていない。この答がない以上、森友疑惑の本質的な解明に迫ることはできない。

 極めつけは「平成29年以降の状況」(9p)の⑧の記述である。

 〈⑧ 当時、国会審議のほか、一部政党において本省理財局等からヒアリングを行うための会議が繰り返し開催されており、さらに同政党の国会議員団は、森友学園に売り払われた国有地を平成29年2月21日 (火)に視察することとなった。本省理財局では、当日の森友学園の理事長らの発言次第では国会審議が更に混乱しかねないことを懸念し、局長以下で議論を行った結果として、国有財産企画課の職員に対して、対外的な説明を森友学園の顧問弁護士に一元化するなど、当該顧問弁護士との間で対応を相談するよう指示がなされた。

 この指示を踏まえ、当該職員が同年2月20 日 (月)にかけて当該顧問弁護士と相談を行う中で、同理事長は出張で不在であるとの説明ぶりを提案したり、さらには「撤去費用は相当かかった気がする、トラック何千台も走った気もする」といった言い方も提案した(注12-「トラック何千台」との表現は、当該職員が発案し、提案したものと認められる。)。結果的には、翌日21 日 (火)の国会議員団による現地視察には同理事長も顧問弁護士も同席せず、その後も、国有財産企画課の当該職員が伝えたような内容を森友学園側がコメントすることは無かった。〉 (11p)

 対する罰則。

「 (3) 本省理財局における責任の所在の明確化 」(31p)

 〈また、別の当時の国有財産企画課職員(課長補佐級)についても、一連の問題行為には関与していなかったが、地下埋設物の撤去費用について、森友学園の顧問弁護士に対して事実と異なる説明ぶりを提案したことは、不適切な対応であった。これを踏まえ、「口頭厳重注意」の矯正措置を実施する。〉(41p)

 森友学園顧問弁護士に対して「撤去費用は相当かかった気がする、トラック何千台も走った気もする」といった言い方を提案した。

 森友学園理事長も顧問弁護士もこのコメントを使うことはなかった。トラックが何千台も走って気づかない近所の住人がいるとしたら、俳句の夏井先生ではないが、「ここへ連れてこい」である。近所の住人に聞いたら、バレバレとなるから、コメントとして使わなかったのだろう。問題は使う使わないではなく、なぜこのようなコメントをアドバイスとして用いたかである。撤去費用は相当かかっていないから、かかったように見せかる必要があった。トラックが何千台も走っていないから、走ったことにしなければならなかった。裏を返せば、撤去費用はたいしてかかっていなかった。当然、トラックもたいして走っていなかった。このことは1万9520トン、ダンプカー4000台分の地下埋設物など存在していなかったを答としなければならない。

 天下の財務省が何か大きな力が働かなければ、一介の教育者に不動産鑑定評価額9億5600万円の土地を地下埋設物の撤去・処分費用を8億1900万円と見積もり 差引き土地価格を約1億3400万円とすることはないだろう。天下の安倍晋三夫人安倍昭恵が森友小学校名誉校長に就任したのは2015年9月5日。森友学園のHPからその名前が消えたのは2017年2月23日。

 近畿財務局が大阪航空局に森友小学校建設予定地の国有財産地に地下埋設物の撤去・処分費用について見積もることを依頼したのが2016年(平成28年)3月30日。大阪航空局が地下埋設物量を1万9520トン、その撤去・処分費用を8億1900万円と見積もり、近畿財務局に報告したのが2016年(平成28年)4月14日。この3月30日から4月14日までの期日は天下の安倍晋三夫人安倍昭恵が森友小学校名誉校長に就任していた期間にすっぽりと入る。

 2014年(平成26年)4月28日、森友学園理事長は近畿財務局を訪れ、職員に「昭恵夫人が来られていい土地だから話を進めてくださいとおっしゃった。写真もありますよ」と伝えたら、職員が「写真を見せてください」と言うので見せたら、「これコピーしていいですか?上司、局長にも見せなければいけないので」と答えたとネットでは紹介されている。

 森友学園理事長が2017年3月23日に日本外国特派員協会で会見で、国有地の契約に関する財務省への問い合わせを安倍昭恵内閣総理大臣夫人付の内閣事務官谷査恵子を通して行い、その返事のFAXが来てから、「後の事柄については、瞬間風速の強い神風が吹きました」と発言している。当時の籠池理事長にしたら、「安倍晋三様々。安倍昭恵様々」だったに違いない。

 岸田文雄は2021年10月11日の辻元清美の代表質問に対する答弁で森友問題は全て終わったかのように発言しているが、かくこのように見てくると、全然終わっていないことが分かる。

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