次期衆議院議員選挙 争点とすべき 2つのこと ◎森友・加計政治関与疑惑にまみれた 指導者を続投させるべきか否か ◎成長実感ゼロのアベノミクスを 効果があると見せかける幻想に 今後も付き合うべきか否か |
安倍晋三はトランプと手を携えて北朝鮮に対して圧力一辺倒の政策を進めている。それが唯一の解決策だとばかりに。
文飾当方。
「安倍晋三衆院解散発表記者会見」(首相官邸/2017年9月25日) 安倍晋三「国民の皆様は、北朝鮮の度重なる挑発に対して、大きな不安を持っておられることと思います。政府として、いついかなるときであろうとも危機管理に全力を尽くし、国民の生命と財産を守り抜く。もとより当然のことであります。 他方、民主主義の原点である選挙が、北朝鮮の脅かしによって左右されるようなことがあってはなりません。むしろ私は、こういう時期にこそ選挙を行うことによって、この北朝鮮問題への対応について国民の皆さんに問いたいと思います。 我が国を飛び越える弾道ミサイルの相次ぐ発射、核実験の強行、北朝鮮による挑発はどんどんエスカレートし、その脅威は正に現実のものとなっています。こうした中で、私は、国際社会の連帯をより強固なものとするため、米国、韓国はもちろんのこと、中国、ロシア、インド、欧州、中東、アジアの首脳たちと対話や協議を重ねてきました。そして先般、国連安保理が原油や石油製品の輸出制限を含む厳格な制裁措置を全会一致で決定しました。まず、これを完全に履行する。さらに、北朝鮮がその政策を変更しないのであれば、国際社会と共に一層圧力を強化してまいります。 北朝鮮には勤勉な労働力があり、資源も豊富です。北朝鮮が正しい道を歩めば、経済を飛躍的に伸ばすこともできる。しかし、拉致、核・ミサイル問題の解決なくして、北朝鮮に明るい未来などあり得ません。北朝鮮にその政策を変えさせなければならない。そのための圧力であります。 圧力の強化は北朝鮮を暴発させる危険があり、方針転換して対話をすべきではないかという意見もあります。世界中の誰も紛争などを望んではいません。しかし、ただ対話のための対話には、意味はありません。 この20年間、我が国を始め国際社会は六者協議など対話による平和的解決の努力を重ねてきました。その中で北朝鮮は2度にわたり、核・ミサイルの放棄を約束しましたが、結果としてそれらはことごとく裏切られ、核・ミサイル開発が継続されていた。 対話の努力は時間稼ぎに利用されました。北朝鮮に全ての核、弾道ミサイル計画を完全な、検証可能な、かつ不可逆的な方法で放棄させなければならない。そのことを北朝鮮が受け入れない限り、今後ともあらゆる手段による圧力を最大限まで高めていく他に道はない。私はそう確信しています。 そして、拉致問題の解決に向けて、国際社会でリーダーシップを発揮し、全力を尽くしてまいります。 北朝鮮が意図的に緊張をあおっている今だからこそ、私たちはぶれてはならない。北朝鮮の脅かしに屈するようなことがあってはなりません。私はこの選挙で国民の皆さんから信任を得て、力強い外交を進めていく。北朝鮮に対して、国際社会と共に毅然(きぜん)とした対応を取る考えであります。 ・・・・・・・・・・ この解散は、国難突破解散であります。急速に進む少子高齢化を克服し、我が国の未来を開く。北朝鮮の脅威に対して、国民の命と平和な暮らしを守り抜く。この国難とも呼ぶべき問題を、私は全身全霊を傾け、国民の皆様と共に突破していく決意であります」 |
北朝鮮の「脅威は正に現実のものとなった」ことを理由に制裁の圧力を加えることを最大の最善策とする。圧力政策に対する暴発の危険性の指摘に関しては「世界中の誰も紛争などを望んではいない」が、「対話のための対話には、意味はありません」と対話を完全に排除している。
対話完全排除の理由として過去の「対話」が北朝鮮側の裏切りによって全て失敗に帰したこと、「対話の努力は時間稼ぎに利用された」ことを挙げている。
いわば安倍晋三は北朝鮮に対して対話不信に陥り、その不信で凝り固まっている。
そして北朝鮮がミサイル開発・核開発を検証可能な方法で完全に放棄しない限り「今後ともあらゆる手段による圧力を最大限まで高めていく他に道はない」と圧力オンリーの強い姿勢を示すに至った。
結果としてこのような断固・毅然とした圧力政策が「国民の生命と財産を守り抜く」唯一の方法だとしていることになる。
と言うことは、安倍晋三は「北朝鮮の脅威」の中に暴発の危険性を完全に入れていない危機管理状態となっていることを意味することになる。
但しこのような一連の論理には「ただ対話のための対話には、意味はありません」との表現の対話完全排除の反動として掲げている「今後ともあらゆる手段による圧力を最大限まで高めていく」圧力オンリーが「暴発」を引き起こす引き金とは決してならないことの論理的な説明を完全に欠落させている。
欠落させたまま、「北朝鮮の脅威」の中に暴発の危険性を入れていない、そのような危機管理となっている。
論理性の代わりに「世界中の誰も紛争などを望んではいません」との論理性のカケラもない単なる期待の言葉に置き換えている。世界の多くの場所で軍事的衝突による望んでいない殺戮が起きていると言うのに。
いくら圧力オンリーでいったとしても、北朝鮮はこれこれの理由、これこれの事情で暴発することは決してありません、いわば暴発の絶対的不可能性を論理立てて説明してこそ、圧力が北朝鮮のミサイル開発・核開発を「完全な、検証可能な、かつ不可逆的な方法で放棄」させる最大・最善の方法であることを国民に理解させることが可能となり、安倍晋三の「国民の生命と財産を守り抜く」なる決意が生きてきて、真正な言葉としての価値を持つことになるのだが、そういった論理的な体裁を一切取らずに、「圧力、圧力」とバカの一つ覚えのように言い立てている。
圧力が暴発を決して招くことはないすることができる論理的な説明を完全に欠落させている以上、安倍晋三が北朝鮮の脅威を「国難」と位置づけたその「国難」は圧力こそが回避可能の唯一の方法と限定することは不可能で、逆に圧力が暴発誘発の引き金となり得る危険性を残すことになる。
引き金となった場合、北朝鮮のミサイル開発・核開発を「国難」としてきた位置づけに暴発がプラスされることになって、その「国難」はより過酷な様相を呈することになり、「国民の生命と財産を守り抜く」危機管理は言葉に過ぎなかったという苦々しさを国民に与える可能性も出てくる。
「政府として、いついかなるときであろうとも危機管理に全力を尽くし、国民の生命と財産を守り抜く」と断言しながら、その「危機管理」の中に暴発の可能性を入れずに圧力こそ全てとばかりに無条件に推し進めることのできる“危機管理”とはどのようなものだろうか。
その程度の“危機管理”であるなら、安倍晋三に国家の安全と「国民の生命と財産」を託し得る一国のリーダーとすることができるだろうか。
危機管理はありとあらゆる場合を想定しなければならない。
プーチンが訪問先中国福建省アモイでの9月5日(2017年)記者会見で、〈「北朝鮮は雑草を食べることになったとしても、自国の安全が保障されない限り(核開発の)計画をやめない」と述べ、北朝鮮の核問題の解決には、関係各国の対話が必要との従来の主張を繰り返した。〉と「産経ニュース」記事が伝えていた。
この発言は暴発の危険性を考えに入れた危機管理をベースとしている。
「米朝の衝突に現実味 あらゆるシナリオ想定を 英シンクタンク」(NHK NEWS WEB//2017年9月29日 8時04分)記事にしても、記事題名が示すとおりに危機管理の基本に基づいた体裁を取っている。
イギリスのシンクタンク王立防衛安全保障研究所9月28日、ロンドンで記者会見して発表した朝鮮半島情勢を分析した報告書。
〈北朝鮮が7月に行ったICBM=大陸間弾道ミサイル、「火星14型」の発射がきっかけとなって「ここ数か月で朝鮮半島におけるアメリカと北朝鮮の衝突は現実味をおびてきている」〉と分析。
「衝突が起きるシナリオ」として3点を挙げていると伝えている。
その1 北朝鮮がアメリカによる奇襲攻撃があると考えて攻撃に踏み切る
その2 北朝鮮のミサイルがグアム島やアメリカ西海岸の沖合まで到達する事態となってアメリカが攻撃する
その3 トランプが軍事力の行使を選択するとは今なお想像しにくいが、北朝鮮が核兵器で攻撃する力を持つ前に問題の解決に乗り出す可能性
「衝突が起きるシナリオ」の1は、北朝鮮の暴発を意味する。
衝突が起きた場合、死者の数は数十万人に上る恐れがあると警告。
チャーマース王立防衛安全保障研究所教授「この問題はイギリス政府でも重要な位置を占め始めている。アメリカ、日本、それに韓国と連携しあらゆるシナリオを想定し、対応できるようにすべきだ」
これが一定の国家間で軍事的対立が生じた場合の近隣の関係国が考慮しなければならない基本的な危機管理であろう。教授は連携すべき国の中に日本を入れているが、肝心の日本の安倍晋三は北朝鮮の暴発を国家危機管理のうちにさらさら入れていない。北朝鮮が暴発しなかったとしても、単なる結果オーライに過ぎない。
お目出度いと言うべきだろうか。この程度の一国のリーダーに国家と国民の危機管理を託している。