日弁連の調査によると、福島県南相馬市は生活保護受給世帯のうち219世帯に対して福島第1原発事故を受けた東京電力からの仮払い補償金や震災義援金を収入と看做し、生活保護を打ち切ったという。
《生活保護停止219世帯に 南相馬市、日弁連が批判》(47NEWS/2011/07/22 19:46 【共同通信】)
日弁連会長声明「義援金などは収入認定するべきでない。被災自治体は人道にかなう運用を行い、国も自治体を適切に指導すべきだ」
声明を市や厚生労働省に送付するという。
南相馬市「各世帯の(東電仮払い補償金や震災義援金の)受取額から生活必需品などの購入額を差し引いた残額を収入と認定し、6カ月以上生活できると判断した世帯の生活保護を打ち切っている」
生活保護を受給するについては相当額の預金等の蓄えを持っていると許可されない。
許される蓄えの範囲はどれくらいまでなのだろうか。南相馬市が「6カ月以上生活できると判断した世帯の生活保護を打ち切っている」と言っていることからすると、生活保護費1か月分×6か月分の蓄えが受給不許可のラインだと推測できる。
この額はそのまま今回生活保護を打ち切った、(東電仮払い補償金や震災義援金)-(生活必需品等の購入額)=6ヶ月以上の生活可能額にほぼ相当するはずである。
仕事がなくて定収入がないから、生活保護を受けていた。あるいは生活を維持できるだけの収入を得ていないために住所を置いている自治体の生活保護費から差引き不足分の生活費を生活保護として受ける。中には被災によって仕事も財産もを失った世帯も含まれているだろう。
だが、ここにきて東電仮払い補償金や震災義援金等の臨時収入が入ることになった。生活必需品等の購入額を差し引いて、1カ月を生活保護費相当額で生活して6カ月以上生活できる金額が手元に残る計算だという理由によって生活保護が打ち切られることになった。
生活保護支給を許可するときと同じルールに則ったということなのだろう。
しかし年齢等の理由によって仕事がなかなか見つからず、収入ゼロの状態が続いた場合、1カ月を生活保護費相当額で生活して6カ月以上生活できる金額が手元に残ったとしても、どれ程の安心感を与えてくれるだろうか。
このことを裏返して言うと、補償金や震災義援金を蓄えとして手許に残すことを許すことで生活収入のない被災者が得ることができる何がしかの安心感すら奪うことを意味する。
収入ゼロのまま、1カ月を生活保護費相当額で生活を続けて、1カ月ずつその分を消費しながら、たかだか「6カ月以上」かそこら生活して、使い切ることになる。
蓄えとは言えず、単に「6カ月以上」かそこらで使い切ることになるカネが与えてくれる安心の保証はどの程度だろうか。
手元に残った1カ月を生活保護費相当額で生活して「6カ月以上生活できる」金額を使い切った場合、再度生活保護を申請すれば、市は不許可とする理由はどこにもないだろうから、生活は維持できる。
再び生活保護の生活が続くことになるが、蓄えが許されない、人間らしい安心感を得ることができないままの切り詰めた生活を強いられることになるに違いない。
尤も被災県以外の自治体の生活保護受給世帯の多くが安心感を得るところまでいかないギリギリの生活を送っていることだろうから、このこととの兼ね合いも難しいが、状況の違いとして被災したという事実は精神的に相当な打撃となっているはずだ。
福島県は義捐金だけのことなのか、国や県からの第1次義援金を収入と看做さない通知を6月21日に県の保健福祉事務所各市町村に対して出しているが、このこととの関係はどうなっているのだろう。
《義援金は収入とみなさず 福島県が生活保護運用を弾力化》(asahi.com/2011年6月22日0時0分)
これは生活保護の打ち切りが相次いでいることからの措置としている。対象者は県が生活保護業務を担当する町村の被災者。
これまでは生活用品の購入や家の補修など自立更生に必要な費用を項目ごとに細かく集計して「自立更生計画書」に記入する必要があったが、義援金を「生活基盤の整備に必要なもの」として一括で申告すれば収入とみなされず、使い道の確認も不要になると記事は伝えている。
1カ月の生活保護費はどのくらい支給されるのか、「Wikipedia」で調べてみた。
東京都区部と地方郡部などの比較 東京都区部など 地方郡部など
標準3人世帯(33歳、29歳、4歳) 234,980円 199,380円
高齢者単身世帯(68歳) 80,820円 62,640円
高齢者夫婦世帯(68歳、65歳) 121,940円 94,500円
母子世帯(30歳、4歳、2歳) 177,900円 142,300円
こども手当、児童扶養手当等は別途支給される。
現制度では国3/4、地方1/4の割合で負担。――
地方の高齢者には厳しい金額となっている。
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