玉城デニーは普天間の辺野古移設阻止で安倍政権を踊らすことができるのか、阻止できないままに自身が踊るだけで終わることになるのか。
題名を見ただけで、言わんとしている趣旨は理解できると思う。
2015年6月にシリアで行方不明となり、国際テロ組織アルカイダ系の武装組織に拘束されたと見られていた戦場ージャーナリストの安田純平氏(44)が解放されたとの情報が10月23日夜、日本政府に寄せらたという。拘束は3年4カ月間に亘ったことになる。
行方不明当時、武装組織との仲介役を務めていたシリア人活動家が武装組織は150万ドルの身代金を要求していたが、自身の交渉によって50万ドルにまで値下げさせることができるといったことを述べたとマスコミは伝えていた。当然、身代金を支払った上での解放なのか、支払わずに交渉のみで解放に漕ぎつけたのかが関心の的となる。
2018年10月24日付「NHK NEWS WEB」
官房長官菅義偉の10月24日閣議後記者会見。
菅義偉「在トルコ日本大使館員が現地におもむき、安田氏本人であるかの確認を行うとともに、健康状態についても確認を行うことになっている。確認は、日本時間の午後3時以降になる見込みだ。職員は現地には到着している」
記者「解放の条件として身代金の要求はなかったか」
菅義偉「身代金を払ったという事実はない。武装組織とは直接交渉は行っていない。日本政府としては事案が発生して以来、カタール、トルコをはじめとする関係国にも協力を依頼し、さまざまな情報網を駆使して全力で対応を進めてきた。安倍総理からも大統領、国王に対し強い依頼をしてきた。
今回の案件は官邸を司令塔とする国際テロ情報収集ユニットを中心に、カタール、トルコをはじめとする各国に協力を求めてきた。これ以上は事案の性質上控えたい」
武装組織は身代金を要求して3年4カ月間という長い期間に亘って安田純平氏を拘束していた。その執念からして、身代金を手に入れずに解放したとは考えにくい。身代金なしの解放なら、武装組織側が余程の状況の変化に見舞われたかしていなければならない。日本の国際テロ情報収集ユニットがいくら官邸を司令塔としていたとしても、武装組織側に状況の変化を与える力はないはずだ。指摘されているとおり、シリア政府軍の反政府軍を追い詰めつつある攻撃が安田純平氏を人質とした武装組織側をも窮地に立たせることになって、人質を身代金無しで開放せざるを得なくなったということなのだろうか。
だが、常識的に考えて、官邸司令塔の国際テロ情報収集ユニットが解放任務の前線に立ち、武装組織との直接交渉は避ける形でだが、カタールやトルコを通した解放の依頼交渉を行い、安倍晋三自身もカタール、トルコ、その他の関係国に武装組織に対する人質解放依頼を直接行っていたとしたら、武装組織側は様々な方面から人質解放の交渉を受ける優位な立場に無条件に立つことができていたことになる。
つまり売り手市場の状況にあったのだから、シリア政府軍の攻撃で追い詰められた状況に立たされていたとしても、人質を無償解放しなければならないどころか、逆に身代金の値を吊り上げてもいい好条件に恵まれていたはずだ。
2018年10月24日付「NHK NEWS WEB」記事がシリア内戦の情報を集めている「シリア人権監視団」の10月23日発出の声明の要旨を紹介している。
解放の交渉は中東のカタールとトルコが主導して行い、4日前の10月19日に解放された。但し政治的なタイミングを考慮して後日の発表となった。テロ組織の支援につながる怖れがあるとして日本政府は身代金を払わなかったが、解放と引きかえに身代金が支払われた。
支払ったのがどこか、「YOMIURI ONLINE」記事が読売新聞の取材に対する在英民間団体「シリア人権監視団」のラミ・アブドルラフマン代表の発言として伝えている。
ラミ・アブドルラフマン代表「カタールが身代金300万ドル(約3億3700万円)を支払った。カタールは日本人の人命救助への貢献を国際社会にアピールするためだった。日本政府はテロ組織への身代金支払いは拒否した」
この身代金300万ドル(約3億3700万円)は当初要求していた150万ドル(約1億7千万円)のほぼ2倍に当たる。2倍にすることができた理由は武装組織側が日本政府の依頼を介したカタールやトルコからの人質解放の交渉を受けて、解放に於ける売り手市場に立つチャンスに恵まれたからだろう。
このような推測の一事を以って、カタールの身代金300万ドル(約3億3700万円)の支払いは事実と推測できる。問題は日本政府がその身代金をあとで秘密裡に補填するのか、しないのかである。補填しないとしたら、武装組織に身代金要求の人質となった場合は身代金を払わない範囲内の限定的な「国民の命を守る」と言うことになる。
つまり身代金を支払わないことによって例え殺害されたとしても、仕方がない程度の「国民の命を守る」にしていたことになる。
あとで秘密裡に補填するとしたら、日本政府が直接身代金を支払った場合に確立されることになる武装組織側に身代金支払い国とされて日本人がより人質の標的とされる恐れを避ける意味合いからの方便に過ぎないことになる。
但しいずれは身代金を補填する予定でいたなら、拘束が3年4カ月間に亘ったことは長過ぎる。どこの国が解放の代理を務めたとしても、身代金要求に対してその支払を以って交渉に臨んでいたなら、相手の要求金額に折り合いを付ける形での解決を目指さなければ、人質の解放を手に入れることは難しくなる。
外務省は過激派組織「イスラム国」が勢力を拡大しているとして2011年4月からシリア全土に対して最も強い危険情報である「退避勧告」を出し、渡航しないよう呼びかけていた。安田純平氏がこのことを無視してシリア入りしたことに対する懲罰の意味で時間を置いたことから、3年4カ月後の解放ということになったのだろうか。
自国民の「人命第一」として、あるいは「国民の命を守る」を最優先事項として身代金を支払った場合、それが武装組織のテロや誘拐の新たな資金となることから、「人命第一」、あるいは「国民の命を守る」は日本国民に限った要件となり、他国民の「人命第一」、あるいは「命を守る」ことにならないという理由で身代金は支払うべきではないと考える立場があるが、私自身もその考えに与(くみ)している。
自国民の命だけを考えた場合、自国民と他国民の命に差別をつける一国主義に陥ることになる。
安倍政権があとで補填しようがしまいが、カタールが300万ドル(約3億3700万円)もの身代金を支払ったとしたら、安倍政権は間接的に自国民と他国民の命に差別をつけたことになる。
他方、渡航自粛のシリアに危険を承知で自らの意思で入ったということから、自己責任論が噴出、その文脈での身代金は支払うべきではないという主張も存在するということだが、だからと言って、戦場ジャーナリストの居場所を奪った場合、外部の人間は戦争当事国、あるいは紛争当時国の報道のみに接する機会しか与えられないことになる。
その報道は戦前日本の大本営発表と同じく、戦争当事国や紛争当事国に都合のいい内容、あるいは宣伝に利する内容ばかりとなって、そこで何が行われているか、何がどのように起きているのかの事実から遠ざけられることになり、正しい判断や行動を奪われることになる。
戦前の日本は新聞やラジオに対する検閲が厳しく、従軍記者が戦地で見聞きした都合の悪い事実は隠されるか、あるいは事実とは程遠い、国民を鼓舞するデッチ上げた戦果を伝えるか、そのような役目を担わされたばかりか、大本営自体が偽りの事実のみを発表して、国民は事実に目隠しされた世界に置かれた。
このような状況となった場合、戦前の日本がそうであったように国家権力は国民の批判や反対から守られることになって、どのような決定も国家権力の恣意に任される危険性を招くことになる。
安倍政権が直接的にも間接的にも自国民と他国民の命に差別をつけることを避けるために武装組織に人質となった場合の日本人の解放に身代金の支払いを拒否する姿勢を取っているとしたら、解放交渉を依頼した他国に対しても身代金の支払いを拒否しなければ、自他国民に対する間接的な命の差別となって現れ、自らの姿勢と整合性が取れないことになる。
整合性ある姿勢を守るためには身代金要求の人質を獲った武装組織に対しては身代金を払わない範囲内での人質解放交渉に徹底することを国民の前に明らかにすべきであるし、明らかにした上で戦争当事国、あるいは紛争当時国が発出する報道のみしか知らされない状況を回避するために戦場ジャーナリストがそのような場所に危険を承知で出かけることを良しとすべきだろう。
このようなルールを国民に明らかにしたなら、戦場ジャーナリストの使命に納得して自己責任論が姦しく噴出することもないはずだ。