安倍晋三の昭恵宇佐神宮参拝「事前に妻から聞いていた」は虚偽答弁 安倍昭恵の政府コロナ対策科学的合理性否定の非科学的合理性の危険性

2020-04-27 11:55:10 | 政治
 ウソつきがウソをついて、それを事実だと思わせるためには、実際には事実でないことを事実と粉飾する必要上、言わなくてもいい余分なことにまで言葉を費やすことになるが、安倍晋三も同様にウソの答弁をするとき、必要としない、言わなくてもいい余分なことにまで言葉を費やす。必要としないこと、言わなくてもいいことまで発言していることに内心は気づくのだろう、一旦口にしたウソを本当と思わせる目的を果たすまで途中でやめることができずにウソを続ける結果、慌て気味に早口になったり、発音がはっきりしなくなったり、言葉を突っかえたりの症状が現れることになる。
 2020年4月17日の衆議院厚生労働委員会での国民民主党の岡本充功と安倍晋三の安倍昭恵の大分県宇佐市の宇佐神宮参拝に関わる質疑応答でも、安倍晋三の答弁にはウソつきが自らのウソを事実だと思わせるときに見せることになる特有の症状が現れていた。

 その症状がこのように説明しているとおりなのかどうかは質疑の参考にしたYou Tube動画「安倍晋三 昭恵氏の大分参拝「事前に妻から聞いていた」4/17衆院・厚労委」から確かめて頂きたい。

 質疑応答に移る前に遣り取りの中に出てくるから、参考のために次の時系列を前以って記載しておく。

◇改正新型インフルエンザ対策特別措置法。
 成立 2020年3月13日
 公布 2020年3月13日
 施行 2020年3月14日

 安倍昭恵大分県宇佐市の宇佐神宮参拝 2020年3月15日 

 安倍晋三は安倍昭恵の神社参拝に関わる岡本充功の最初の質問に対する最初の答弁は前以って用意していたのだろう、突っかえ一つなくスムーズに答弁している。次の答弁でそのスムーズさを失って、事実性を怪しくさせていくのだが、その前後に"水平線"を入れて、区別しておく。但しスムーズな答弁だからと言って、それが常に事実に基づいているとは限らない。前以って虚偽の事実を用意しておいて、用意しておいたお陰でスムーズに答弁できるということもある。

 2020年4月17日の衆議院厚生労働委員会

 岡本充功「最期に、まあ、総理は先程大分の話をされましたけど、一点だけ確認させてください。これね、各それぞれのご家族のことですけど、私だって、仲間や家族と外でスポーツをすることはあります。しかし、まあ、『3密は避けでください』、総理自身がですね、『自身の身は守る、警戒をしてください』と言っていた翌日の、しかも特措法が改正された翌日、施行された翌日ですね、総理夫人が50人のみなさんと一緒に参拝をしていたと。大分の神社に。

 これ、総理、ご存知だったんですか。そしてまたそれについて何らか、ご存知でしたら、コメントされたんですか。どうですか」

 安倍晋三「えー、私の妻によればですね、3月15日にご指摘の大分県の神社に参拝をしたとのことでございますが、報道されている団体のツアーに参加したものではありません。参拝のみ、当該団体と合流して行ったものであります。

 この大分訪問は小池都知事が週末の外出自粛を都民に要請した3月25日より前に行ったものでございます。また、私がですね、不要不急の自粛を呼びかけたのは3月28日であったわけでございますが、また、参拝以外は特に観光等は行っていない。 

 そして参拝時に、参拝時に限って敢えてマスクを外したということでございます。勿論、参列については私が申し上げていたところでございますが、訪問中を通して感染拡大の防止には十分注意をして行動していたということでございます。

 なお、私の妻が大分県を訪問して、神社を参拝したことについては事前にその旨を聞いていたところでございますが、その際、3密についてはですね、3密とならないように心して行動して貰いたいと申し上げたところでございます」

 岡本充功「総理、ご存知のうちで総理の奥様が東京以外の府県を訪(おとず)られているケースは3月15日以降、今日(きょう)に至るまでほかにはあるんでしょうか、ないんでしょうか」

 安倍晋三「今すぐにお答えできないと思いますが、いわば外出を自粛、不要不急の外出を自粛するようにっていうことについてはですね、そういうことを申し上げて以降は、勿論、東京都から出ていることはないんだろうと思います。

 で、あの、その段階で、いわば大分を訪問した段階に於いてはですね、これは国会議員の皆さんも含めて、多くの方々も、ご、ご地元に帰っておられるんではないか、このように思います」 

 岡本充功「我々は地元に帰る。私も帰っておりますよ。それは帰るけれども、それはもう、仕事と、それから選挙区と、選挙区のニーズを聞いておくのは我々の仕事だから、それはやっています。

 ただね、今の話で大分に行くっていうと、それはちょっと違うのかな。ましてや3密のところとちょっと違ったのかな、という気は私はします。そこでですね、そこで何か寄付をしたというのは別だと思いますよ。3密の状態をつくるなと言っておきながら、やったということについてはやっぱり問題があったと。結果として3密はできちゃったということは問題があったという認識は総理はお持ちですか。

 最後にそれだけ聞いておきたいと思います」

 安倍晋三「いわば神社の参拝ということについてはですね、密閉ということについては密閉ではないわけでありまして、人が集まっている。ただ密接な、密接であったかどうかは、密接であろうと。

 人が何人か集まっているということが密接ということかもしれません。これ3密、重なってはダメなんです、いうことは私は申し上げているわけであります。

 ただ、今、フェーズは、そのときと今、フェーズは変わっていますから、そのときですね、いわば不要不急の外出ということについてはこれは今は行う、行うべきでないのは(慌て気味の、なめらかではない物言いとなっている)、当然のことであろうと、こう思います。

 ただ地方に行くという、人が地方に動くかどうかということであればですね、例えば地元に帰って、意見を聞くのであれば、例えば我が党に於いては電話に於いてですね、地元に帰らずに、えー、この、あの、地域の皆さんの意見・陳情を受けなさいと、決定しているわけでございます。

 本人が動くということ自体もですね、自粛を伸ばして頂いていると言うことでございますから、それも、是非、そういうことについても協力を頂きたいとこのように思います」

 岡本充功「時間が来ましたので、これで終わります」

 岡本充功は先ず安倍昭恵の2020年3月15日の50人の団体との神社参拝を取り上げ、対して安倍晋三は安倍昭恵の参拝は小池都知事が週末の外出自粛を都民に要請した3月25日以前、安倍晋三自身が不要不急の外出自粛を呼びかけた3月28日以前のことだと、参拝の正当性を主張。さらにマスコミが参拝時の安倍昭恵がマスクを着けていなかったと批判的に報道したことに備えて用意した答弁なのだろう、「参拝時に限って敢えてマスクを外したということでございます」と、マスクを外したのはほんの一時的なことだと、安倍昭恵の行為を免責対象としている。

 だとしたら、岡本充功は参拝時に限って敢えてマスクを外す必要があったのか、マスクを付けたまま参拝することの不都合を聞くべきだった。宇佐神宮は、〈全国に約44,000社ある八幡宮の総本社である〉(Wikipedia)ということだから、その格式の高さから、マスクを着けたまま参拝するのは失礼に当たる、畏れ多いということで外したのか、聞くべきだったろう。

 もしも格式の高さに敬意を払った、マスクを外した素顔による神との対面だとしたら、新型コロナウイルスの万が一の感染によって安倍晋三に与えかねない迷惑を想定しなければならない立場にありながら、そのような迷惑よりも神社の格式の高さをより優先させたことになる。 

 安倍晋三は安倍昭恵の神社参拝について、「私の妻が大分県を訪問して、神社を参拝したことについては事前にその旨を聞いていたところでございます」と、事前に報告があったとしている。つまり夫婦の間に何の隠し立てもないことを明らかにしたことになる。

 安倍晋三が淀みなく落ち着いて答弁したのはここまでである。岡本充功が安倍昭恵の3月15日の神社参拝からこの質疑の4月17日までの間に安倍昭恵自身が東京以外の府県を訪れた例はあるのかと尋ねると、安倍晋三の答弁の淀みなさはたちまち怪しくなる。

 安倍晋三は既に安倍昭恵の神社参拝は事前に報告があったとしているのである。つまり特別な外出については夫婦間に於いて事前報告制となっていたことの意思表明となる。もし安倍昭恵が事前報告がしたり、しなかったりの自由気儘な外出をしていたなら、その旨を明らかにしてから、宇佐神宮参拝時には例外的に事前の報告があったとしなければならない。

 そうしない以上、事前報告制となっていたとしたことになる。当然、岡本充功の問いに対する安倍晋三の答弁は事前報告によって把握できたこととして、「どこそこに出掛けのはこれとこれ」か、それ以外は事前報告がなかったから、「ほかには出掛けていない」か、あるいは事前報告が一つもなかったから、「どこへも出掛けていないはずだ」のいずれかを断定しなければならない。

 ところが、安倍晋三は東京以外の府県訪問については「今すぐにお答えできないと思いますが」と事前報告制と矛盾する物言いを頭に置き、同じ矛盾を連続させて、不要不急の外出自粛を「申し上げて以降は、勿論、東京都から出ていることはないんだろうと思います」と、断定できずに推測の領域で外出を否定している。

 明らかに宇佐神宮参拝時の事前報告との食い違いが露わになっている。この食い違いのみを以って安倍昭恵の宇佐神宮訪問を事前に知らされていたとする安倍晋三の答弁を虚偽と決めつけるわけではない。続けて安倍晋三は安倍昭恵が宇佐神宮を訪問した段階では、「国会議員の皆さんも含めて、多くの方々も、ご、ご地元に帰っておられる」と答弁している点である。

 安倍昭恵の50人の団体による参拝が小池都知事が週末の外出自粛を都民に要請した3月25日以前、安倍晋三自身が不要不急の外出自粛を呼びかけた3月28日以前のことだったとしても、同列に扱うことはできない国会議員の地元入りと安倍昭恵の外出を同列に扱って、免罪している点である。

 比較できない2つのことを比較して、正しいとするには牽強付会が必要となり、牽強付会はウソを混じえなければ、成り立たない。しかも、「ご、ご地元に帰っておられるんではないか」と、ウソつきがウソをつくときのように突っかえた物言いとなっている。

 安倍昭恵の宇佐神宮参拝が事前報告のもと行われていたとしていることが真正な事実なら、国会議員の地元入りと同列に扱う必要はどこにもなく、ほかの外出があるのかと問われて、「今すぐにお答えできないと思いますが」と曖昧に答えなければならない必要もなく、「東京都から出ていることはないんだろうと思います」と推測で応じる必要もなく、さらに言葉を突っかえる必要もない。

 曖昧に答えたり、推測で答えたのは外出はなかったと答えた場合、安倍昭恵の外出をマスコミがどこでどう嗅ぎつけないとも限らないことへの用心からの言葉遣いということなのだろう。つまり宇佐神宮参拝時にしても、事前報告はなかった。

 安倍晋三は「そのときと今、フェーズは変わっている」、「不要不急の外出は今は行うべきでない」、「自民党は地元の意見・陳情は電話で受けることになっている」等々、安倍昭恵の外出とは無関係な、言わなくてもいい余分なことにまで無駄なエネルギーを答弁に注いでいる。ウソつきが自分のウソを事実と思わせるために無駄な言葉を費やすように。最初にウソの答弁がなければ、こういった無駄なエネルギーを答弁に注ぐ必要性は生じない。

 安倍昭恵が参拝のみ参加したと言う50人の団体ツアーとは、〈「ドクタードルフィン」を自称する医師の松久正氏が主催する「神ドクター降臨 in Oita」というツアー〉だと、2020年4月21日付「時事ドットコム」記事が「文春オンライン」記事の転載として紹介している。

 記事は松久正の診療方針として、〈ドクタードルフィンの超高次元医学(診療)では、薬や手術というものを一切使いません。患者自身で問題(人生も身体も)を修復する能力を最大限に発揮させます〉と紹介、新型コロナウイルスについては、〈不安と恐怖が、ウィルスに対する愛と感謝に変わった途端、ウィルスは、目の前で、ブラックホールから、突然、喜んで、消え去ります〉とフェイスブックで述べているという。

 このフェイスブックの記述が〈どうやらこれが昭恵夫人に響いたっぽい。〉と書いているが、共感したからこそ、松久正主催の〈神ドクター降臨 in Oita〉なる団体ツアーに参加、宇佐神宮参拝と言うことに相なったのだろう。

 参拝は当然、安倍昭恵にしても、フェイスブックに書いてあることを実現させるために祈ったことになる。

 このことは松久正のサイトの「イベントについて・最重要 緊急メッセージ」の文言からも証明することができる。

 〈【ドクタードルフィンイベントについて】

昨日、コロナウィルス蔓延に対する安倍首相の大規模イベント自粛要請宣言あり、イベント開催の有無につき、ご心配されている方に、お知らせいたします。

かねてから、私ドクタードルフィンは、
マスクや隔離で回避するものではなく、目に見えないエネルギー体であるウィルスは、人間意識にてコントロールするものである、という、高次元の教えを説いております。

したがって、
イベント開催が、ウィルス感染を助長するものではなく、参加する人間の意識が創り出し、罹患するものである、という認識のもと、イベント開催は、下記の直近のものを含め、敢えて、参加者と、人類の気づきと学びのために、予定通り、実施します。〉――

 そして、〈大分 別府・宇佐 卑弥呼覚醒記念講演会&リトリートツアー〉を〈3月14日(土),15日(日)〉実施することを伝えている。

 安倍昭恵はこれに参加した。松久正が〈マスクや隔離で回避するものではなく、目に見えないエネルギー体であるウィルスは、人間意識にてコントロールするものである〉と啓示している以上、安倍晋三が岡本充功に対して「参拝時に限って敢えてマスクを外したということでございます」と答弁していることは別の意味を持ってくる。マスクをしたまま参拝したのでは、松久正の啓示に反することになる。神ドクターと名乗っているのだから、単なる教えや説ではなく、神の啓示に等しい啓示ということなのだろう。

 安倍昭恵はこういった神ドクターの啓示に心酔していた。

 但し安倍政権の新型コロナウイルス対策は感染症専門家の過去のサーズやマーズ 新型インフルエンザ、エボラ出血熱といったウイルス性の感染事例と治療経験等を科学的に分析して得た知見と、新型コロナウイルスの現時点までの感染事例と治療経験等を科学的に分析して得た知見を組み合わせた、科学的合理性に基づいた提言を元に構築したものであって、安倍政権のこの科学的合理性に対して首相夫人の安倍昭恵は安倍晋三筆頭安倍政権の科学的合理性を否定する、〈マスクや隔離で回避するものではなく〉、〈人間意識にてコントロールする〉といった非科学的合理性に基づいた新型コロナウイルス対処法で以って対峙していることになる。

 首相と首相夫人の立場にある者のこの思想の違いは滑稽であると同時に病気や医学が科学的合理性を基本としなければならない世界に於いて首相夫人という立場にある安倍昭恵のこの思想は国民の多くが科学的合理性に立っている手前、非常に危険なものに映ることになる。

 勿論、何をどう信じようとも、思想・信教の自由の範疇に入るが、事、コロナウイルスに限って政府の対応を否定する者を安倍晋三が身内に抱えているという事実だけはマスコミは伝えるべきだろう。

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安倍晋三の一世帯2枚総額466億円布マスク配布等のマスク不足狂想曲がマスク万能の風潮を生み、感染拡大の穴となっていないか

2020-04-20 11:38:00 | 政治
 マスク・手袋着用の病院医師・看護師はなぜ病院内で新型コロナウイルスに感染するのか

 新型コロナウイルスの感染の増加が止まらない状況を受けて、安倍政権は政府は2020年4月7日に緊急事態宣言を発令した。対象地域は感染が拡大している東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の6都府県。宣言の効力は来月5月6日まで。安倍晋三は緊急事態宣言発令当日の記者会見で、「人と人との接触機会を最低7割、極力8割削減することができれば、2週間後には感染者の増加をピークアウトさせ、減少に転じさせることができます」と請け合った。

 と言うのも、緊急事態宣言を発令すれば、人と人との接触機会の最低7割・極力8割削減は可能と見たからこそ、実行したはずだから、請け合ったことになる。だが、外出自粛を強力に要請していたにも関わらず、人出の削減は目標に達せず、感染者の増加は止まらなかった。

 特に最も感染者数の多い日本の首都、巨大都市東京都は4月13日の91人から4月14日には一気に100人台に突入、161人となり、4月15日には126人、4月16日には148人と4月14日の161人よりも下降したものの、4月17日には201人と200人台へと踏み込み、4月18日には181人と下降、19日には107人とさらに下降したが、かなりの人数で感染が引き続いていることに変化はない。

 勿論、潜伏期間は2週間程度とされているから、4月19日に感染が判明した107人は4月初め頃の感染と推定されることから、4月7日に緊急事態宣言発令前の感染ということも考えることができるが、2020年2月25日の政府の新型コロナウイルス感染症対策本部で決定した「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針」では人の密集を感染拡大リスクとしていながら、あくまでも外出自粛は感染が疑われる場合に限定した措置で、外出自粛を広く国民に求める前以っての予防措置は2月25日の時点では行っていなかった。

 なぜなら、都道府県知事が外出自粛を求めることができるのは2020年3月13日成立の改正新型インフルエンザ対策特別措置法によって総理大臣が「緊急事態宣言」発令後と規定しているからなのは勿論のことである。
 2月25日の「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針」は具体的には次のように触れている。

〈風邪症状があれば、外出を控えていただき、やむを得ず、外出される場合にはマスクを着用していただくよう、お願いする。

 2. 新型コロナウイルス感染症について現時点で把握している事実
 ・ 一般的な状況における感染経路は飛沫感染、 接触感染であり、 空気感染は起きていないと考えられる。
   閉鎖空間において近距離で多くの人と会話する等の一定の環境下であれば、咳やくしゃみ等がなくても感染を拡大させるリスクがある。
 ・感染力は事例によって様々である。一部に、特定の人から多くの人に感染が拡大したと疑われる事例がある。一方で、 多くの事例では感染者は周囲の人にほとん  
  ど感染させていない。〉

 そして、〈手洗い、咳エチケット等の一般感染対策の徹底〉等々を呼びかけている。

 要するにマスクで飛沫感染を防ぎ、手洗いの徹底で接触感染を防ぐよう呼びかけた。マスクと手洗いは感染防止の両輪でなければならないが、手袋着用の必要性には一言も触れていない。手袋着用は手への直接的なウイルス付着を防ぎ、手洗いをより確実にするはずだが、その必要性はないようにさえ見える。

 但し手袋を着用したからと言って、絶対に感染しないというわけではない。このことはマスク着用にしても同じことで、マスクや手袋にウイルスが付着した場合、そのどちらを外すときに付着箇所を不用意に素手で触れてしまったなら、感染防止の役目を失う。

 もしからしたら、ウイルスを手袋に付着させるよりも素手に直接付着させた方が水で簡単に流すことができるから、却って始末がいいと考えているのかもしれない。だが、ウイルスを手に付着させて、手洗いする前にその手でスマホを触ったり、財布から紙幣や硬貨を出した場合、後で手洗いをしても、再度手に触れたスマホから感染しない保証はないし、手に触れた紙幣や硬貨が回り回って他人の手に触れさせた場合にしても、その他人がウイルスに感染しない保証もない。

 安倍政権はこの『基本方針』決定翌日の2月26日にスポーツや文化イベント等の開催についての要請を行っている。

 「イベントの開催に関する国民の皆様へのメッセージ」(厚労省)

 〈2020年2月26日(安倍総理)

 政府といたしましては、この1、2週間が感染拡大防止に極めて重要であることを踏まえ、多数の方が集まるような全国的なスポーツ、文化イベント等については、大規模な感染リスクがあることを勘案し、今後2週間は、中止、延期又は規模縮小等の対応を要請することといたします。〉・・・・・

 あくまでも人の密集を回避させ、例え外出することがあっても、マスク着用を併用させることで感染防止の方策としている。但しこのメッセージは欠陥があることは人が集まるのは何も「全国的なスポーツや文化イベント等」に限ったことではないことによって明らかである。

 感染拡大を極力抑えるには国民の側からの外出自粛によって人が集まらない状況をつくることが必要不可欠だが、感染者数が一進一退しながらも増加傾向にあったことを放置したことは外出自粛を可能とする「緊急事態宣言」の発令が遅かったことになる。

 2020年3月9日の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の「新型コロナウイルス感染症対策の見解」が人の密集の感染リスクについて触れている。

 〈6. みなさまにお願いしたいこと
 これまでに明らかになったデータから、 集団感染しやすい場所や場面を避けるという行動によって、 急速な感染拡大を防げる可能性が、 より確実な知見となってきました。

 これまで集団感染が確認された場に共通するのは、
 ①換気の悪い密閉空間であった、
 ②多くの人が密集していた、
 ③近距離 (互いに手を伸ばしたら届く距離) での会話や発声が行われたという3つの条件が同時に重なった場です。

 こうした場ではより多くの人が感染していたと考えられます。そのため、市民のみなさまは、これらの3つの条件ができるだけ同時に揃う場所や場面を予測し、避ける行動をとってください。〉

 要するにマスク着用と手洗いに加えて、人の密集の回避を感染予防策とした。

 そして安倍晋三は2020年3月28日の首相官邸での「記者会見」で、冒頭発言ではマスクの着用にも、手洗いにも触れずに、〈集団による感染のリスクを下げるため、いわゆる3つの条件をできるだけ避ける行動を改めてお願いいたします。第1に、換気の悪い密閉空間。第2に、人が密集している場所。そして第3に、近距離での密接な会話。密閉、密集、密接。この3つの密を避ける行動をお願いします。〉と、感染予防策として外出自粛ではなく、国民の側からの人の密集の回避のみをお願いしている。

 質疑に入って、記者からマスク不足を問われて、安倍晋三は次のように回答している。

 安倍晋三「まず、マスクについては、御承知のように8割近く中国に生産を依存していた中において、我々、国内で新たにマスクを作ってくれる、いろいろなところ、気持ちがある企業にお願いしながら、助成金を出して、補助金を出して、やってもらっています。例えばシャープなんかも、こんなマスクを作るということは全く関係なかった企業でありますが、シャープが彼らは本格的に作る。そういう努力もして、今月は6億枚を超える規模で供給し、これは平年の需要を上回る供給量を確保しています。また、来月は、更なる生産の増強及び輸入の増加によって、7億枚を超える供給を行います。

 しかし、現下の感染症の影響によって例年を大幅に上回るマスク需要が発生しているため、供給が追い付かずに、国民の皆様に大変な御不便をおかけしているのは事実であります。次の経済対策も活用して、更なる生産の増強に引き続き取り組み、必要の高い施設についてはしっかりと供給を確保していきます。

 全国の医療機関に対しては、1,500万枚以上の医療用マスクを確保しました。既に北海道など17都府県の医療機関に200万枚を超えるマスクを配布済みでありまして、来週までには全ての都道府県に行き渡らせます。さらに、今後も必要となることから、4月中には追加で1,500万枚を確保して、配布します。また、介護施設、高齢者施設向けには布製のマスクを配布する方針でありまして、既に愛知県内の施設には15万枚が到着済みでありまして、来週半ばまでには2,000万枚以上の確保を完了し、全国50万か所の施設に、施設職員及び利用者に順次、必要な枚数を配布します。

 これに加えまして、全国の小中高、これは再開するということを踏まえているのですが、向けに、1,100万枚、ざっと計算しますと小中高生が900万人でありますからそれを上回る、教職員等も含めて1,100万枚の布製のマスクを今後、確保して、4月中を目途に配布をします。御承知のように、この布製のマスクは洗剤で洗えばもう一度使っていくことができます。ですから、使い捨てではなくて、この1回のマスクを何回も使えることができるということでありますので、急激に拡大している需要に対応する鍵となると考えています。

 そして、4月中には1億枚を超える布製のマスクの生産が見込まれておりまして、感染拡大防止の観点から、必要な皆さんに幅広く配布をしていきたいと考えています」・・・・

 「更なる生産の増強及び輸入の増加によって、7億枚を超える供給を行います」と確約した上で、「全国の医療機関に対しては、1,500万枚以上の医療用マスクを確保した」、「北海道など17都府県の医療機関に200万枚を超えるマスクを配布済み」、「来週までには全ての都道府県に行き渡らせる」、「4月中には追加で1,500万枚を確保し、配布する」、「介護施設、高齢者施設向けには布製のマスクを配布する方針だ」、「既に愛知県内の施設には15万枚が到着済みである」、「来週半ばまでには2,000万枚以上の確保を完了し、全国50万か所の施設に施設職員及び利用者に順次、必要な枚数を配布する」、再開した場合の「全国の小中高に教職員等も含めて1,100万枚の布製のマスクを確保して、4月中を目途に配布する」等々の対応を約束している。

 だが、これらの発言を裏返すと、相当量のマスク不足を来していることを物語っていることになる。東京では2月初旬からマスクが入手しにくくなったそうだが、「8割近く中国に生産を依存」する状況下で中国での新型コロナウイルス感染拡大に伴って生じたマスク不足による日本への輸入にまで回らない事態が、花粉症シーズンを迎えるということもあったのだろう、日本で急激なマスク需要を呼び込んだ結果のマスク不足ということらしい。

 同時にこれらの発言は、約束の多さから見ても、このマスク不足に対して安倍政権が、あるいは安倍晋三自身が懸命に対応しようとしている姿が否応もなしに浮かび上がらせる。この懸命さは政府対応のまずさ、あるいは遅さを批判されたくない思いの現れでもあろう。

 そしてこの懸命さの究極の姿が全世帯への2枚宛て布マスクの配布であろう。2020年度補正予算で233億円、20年度当初予算で233億円、合計466億円も充てている。

 但し安倍政権のこのようなマスク不足への懸命な対応はマスクの必要性をクローズアップさせるものの、却って手袋の必要性や手洗いの必要性を限りなく小さくしてしまった可能性はないだろううか。

 新型コロナウイルスの感染防止策として接触感染には手洗い、飛沫感染にはマスクだとしていながら、それを両輪とするのではなく、マスクの必要性のみのクローズアップさせた場合、マスクをしていさえすれば、大丈夫だというマスク万能の風潮を煽ることにならないだろうか。

 なぜこのような心配をするのかと言うと、2020年2月5日付「人民網日本語版」記事に遡る。記事は2月3日午後9時からの湖北省の中央指導チーム医療治療特別記者会見の内容を伝えている。出席者は国家衛生健康委員会専門家チームメンバーを務める中国工程院院士で天津中医薬大学学長の張伯礼氏、国家衛生健康委員会専門家チームメンバーを務める東南大学附属中大病院副院長の邱海波氏、国家衛生健康委員会専門家チームメンバーを務める北京地壇病院感染二科主任医師の蒋栄猛氏の顔触れ。

 蒋氏「ウイルスは飛沫と接触により広がる。飛沫は通常、くしゃみやせきにより生じる。空気中における飛散距離は非常に限定的で、およそ1−2メートルだ。飛沫は人体から出るとすぐに沈み、空気中を漂うことはない。つまり空気中にウイルスは存在せず、ウイルスが空気中でどの程度生存するかという問題も存在しない」

 解説、〈飛沫は周辺の物体の表面に付着する。手を触れることでウイルスが付着し、さらにその手が触れる物体の表面、例えばドアの取手、エレベーターのボタンなど滑らかな物体の表面などでは、数時間生存するとの研究結果が出ている。

 温度と湿度が適度であれば、数日生存する可能性がある。例えば摂氏20度で湿度が40−50%であれば、ウイルスは5日生存するとの研究結果がある。これに基づけば、ある人がくしゃみをする時に手などで遮らない場合、ウイルスはドアの取手やエレベーターのボタンを汚染することになる。もし次の人が手を洗わず、接触した後に目や鼻をこすった場合、ウイルスは接触により広がってしまう。そのためこまめに手を洗うことが特に重要だ。〉・・・・・・

 〈ウイルスは5日生存するとの研究結果がある。〉、当然、5日前後の生存日数を危機管理の基本としなければならない。

 但し2020年2月13日付「Sputnik日本」は、〈コロナウイルスの物体表面での生存期間が明らかに〉と題して、〈室温で金属、ガラス、プラスチックなどの表面に最大9日間生存することが可能であることが示された。〉と伝えている。

 とは言え、〈研究者らは「現在のところ、ウイルスが存在する表面または物体に触れた後、自分の口、鼻、または目に触ることでCOVID-19(新型コロナウイルス)がヒトへうつるかどうかさえわからない」と指摘している。〉としている点が前出の「人民網日本語版」と違う点だが、現在では接触感染することが広く認められている。

 生存日数が5日前後、あるいは最大9日間のどちらが正しいのかわからないが、危機管理はより多い日数に対応しなければならない。

 ここでこのブログ冒頭で触れた、〈マスク・手袋着用の病院医師・看護師はなぜ新型コロナウイルスに感染するのか〉の疑問に戻る。

 老人施設での介護士等の施設職員から入所者への感染、入所者から介護士等の施設職員への感染、その集団感染は例えマスクや手袋を着用していたとしても、医者程注意深くないからで片付けることができるが、では、注意深いと見られる医師・看護師はなぜ感染を許してしまうのだろう。

 これは何も日本だけの問題ではなく、海外でも同じ事例が多発している。
 参考になる「NHK NEWS WEB」記事がある。集団感染が発生したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」号に横浜検疫所から派遣されて検疫業務に当たっていた男性検疫官が2020年2月9日に発熱、翌10日に医療機関を受診、ウイルス検査の結果、陽性と確認された。検疫官は医療用のマスクや手袋を着用していたが、防護服やゴーグルなどは着用していなかった。

 この点について厚生労働省はWHO(世界保健機関)の指針に基づく対応だとした。つまり防護服やゴーグルなどの着用までは必要としていなかったことになる。

 記事は感染症対策に詳しい厚生労働省仙台検疫所元所長の岩崎恵美子医師の発言を解説として伝えている。

 〈岩崎医師は手袋を取り外した際に、ウイルスが付着して感染したのではないかと見ています。〉

 手袋を外す場合、片方の手袋を外してから、素手となった手で残った方の手袋を外すのが一般的な外し方となっている。だが、油仕事などをする際は手に染み込まないようにするためにゴム手袋をするが、手袋には油がベッタリと付着する。それを外す際に手に付着しないようにするためには片方を全部外すのではなく、手袋をしたままの片方の手でもう片方の手袋の指先を引っ張って、普段は手首に当たる部分を指に残したままの状態にしておいてから、その残した部分でもう片方の手袋を同じように指先を引っ張って外して、最後に手袋が僅かに残った方の手を遠心力を利用するように振れば、素手に触れずに手袋を外すことができる。

 検疫官のウイルス感染がウイルスの付着した手袋を素手で触れたことが原因だとしたら、手袋の外し方が間違っていたことになる。

 もう一つNHK NEWS WEB記事を参考にすると、2020年4月15日の時点で医師と患者合わせて7人の院内感染が発生した金沢市の病院の幹部職員がNHKの取材に応じて、「手洗いやマスクなど院内感染の対策を取っていたが、ドアのカギといったみんなが手にする病院の備品までを毎日、消毒することなどが徹底されていなかった」と答えたと言う。

 例えドアのカギに何らかの方法でウイルスが伝わることになったとしても、医師が患者の前に出る際はマスクと手袋をしているはずだから、患者にまで感染することはないはずだが、ドアのカギから最終的に診察衣にウイルスが付着して、診察衣から患者に感染したのだろうか。病院内の感染が止まらないのはマスク着用・手袋着用であっても、どこかに手落ちがあるのだろう。

 これまで何らかの施設内で感染者が出た場合、出てから、施設内を専門業者が消毒しているが、出ないうちは消毒は行ったという例はお目にかかっていない。家庭に於いても同じはずだ。

 果たしてマスクの着用と手洗いの励行だけでウイルスを排除できるのだろうか。既にウイルスを手に付着させて、手洗いする前にその手でスマホを触ったり、財布から紙幣や硬貨を出した場合、後で手洗いをしても、再度手に触れたスマホから感染しない保証はないし、手に触れた紙幣や硬貨が回り回って他人の手に触れさせた場合にしても、その他人がウイルスに感染しない保証もない危険性に触れているが、例えばどこかに食事なり、飲みに行くとする。飲食店に入る際は備え付けの消毒液で手を消毒し、出る際もきちんきちんと消毒をする。だが、飲食の間、スマホを手に取る機会がなかった客は幸いだが、もし使うことになった場合、カウンターが既にウイルスに汚れていたなら、スマホにウイルスを移さないとも限らない。そして生存期間は最大9日間ではなく、5日前後としたとしても、感染の危険性は低くはない。

 スマホを使う機会がなかったとしても、勘定を払う際に服のポケットから財布を出す。店の出入りの際に手を消毒したとしても、カウンターなりにウイルスが付着していて、手で触れて、財布を使う際に財布にウイルスを移していたとしたら、財布を消毒しない限り、店の出入りの際の消毒は無意味となる。

 スマホを使っていたなら、カウンターがウイルスで汚れていた場合を用心して、スマホも消毒しなければ、手洗いの励行は意味を失う。つまり、手洗いも絶対ではない。マスク着用も手袋着用も絶対ではない。マスクと手袋の正しい着脱方法はネットでかなりの量で紹介されている。それでも病院内感染が止まらないということは医師や看護師でさえ、正しい着脱をしていないことになる。

 4月19日日曜日の公園はかなりの人出があったと言う。家に閉じこもっていなければならなかったことの反動だろうが、ニュースを見ていると、殆どがマスクをしているものの手袋はしていない。公園を出る際に手洗いするのだろうが、夜のNHKニュースで、遊具を触った手で子どもがそのまま口を触ることを感染リスクに上げて、親が注意して子どもを見ている必要があると言っていたが、目を離した隙きに口に触ってしまったということがあったとしたら、公園を出る際の手洗いは無意味となる。

 子どもでも手袋をさせていたなら、手袋をしたままの指や手で口に触れる機会を極力抑えることができるのではないだろうか。注意していながら、感染してしまうということはこういったほんの小さな手落ちからだろう。

 安倍晋三の一世帯2枚総額466億円布マスク配布も含めて、さながらマスク不足の狂想曲を呈している状況がマスクをしていさえすれば、感染を防げるという安易な気持を誘い、マスクの着脱や手袋着脱の注意点を怠らせたり、手袋着用の効用等を蔑ろにさせて感染拡大の穴となってなっていないだろうか。
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安倍晋三の政治パフォーマンス? 緊急事態宣言を効果あると発令したなら、より早い発令で、その効果の前倒しを狙うべきではなかったか

2020-04-13 12:55:23 | Weblog
 2020年4月7日、安倍晋三は政府の新型コロナウイルス感染症対策本部で特別措置法に基づく緊急事態宣言を発令した。対象地域は感染拡大している東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の6都府県。宣言の効力は来月5月6日まで。

 要するに1ヶ月で緊急事態宣言の効果が出ると見た。但し万が一の場合の保険のためなのだろう、経済再生担当相の西村康稔は緊急事態宣言発出2日後の4月9日午前10時50分過ぎに経団連会長の中西宏明、日本商工会議所会頭の三村明夫とテレビ会議を行い、緊急事態宣言が目指す最低7割、極力8割程度の人と人との接触機会の削減の成果は2週間後に表れるが、想定通りの削減で進まない場合には2週間を待つことなく、さまざまな措置を取らざるを得なくなると述べたという。

 その後、午前11時過ぎの内閣府での記者会見に望んで、「この接触機会の8割削減が達成できれば、2週間で成果が出る。8割削減が実行されていなければ、施設の使用制限を要請するなど、より強い措置に踏み切らざるを得ない」と同じことを述べている。

 しかしより強い措置の発出はあくまでも結果であって、緊急事態宣言の発令そのものは1ヶ月で効果が出ると想定して行った。想定しなければ、1ヶ月と期限を区切ることはできない。効果が出なければ、さらに強い措置を取ることを想定して、取り敢えずは1ヶ月ということにしましたといった法律の出し方はない。

 4月7日に緊急事態宣言を発令したものの、4月8日の携帯電話の位置情報などのデータでは人手が3割から4割程度の削減にとどまっていることが分かったということで、政府はこの状況に危機感を抱いて、より強い措置という警告を発出せざるを得なかったということなのだろう。

 いずれにしても、今回の緊急事態宣言は人と人との接触機会の最低7割、極力8割程度の削減成果は2週間後に表れ、その後の2週間、合計1ヶ月で大幅な感染収束に向けた効果が出てくると想定した発令でなければならない。

 安倍晋三は発令同日の午後7時から記者会見を開いて、発令についての説明を行っている。

 安倍晋三「医療への負荷を抑えるために最も重要なことは、感染者の数を拡大させないことです。そして、そのためには何よりも国民の皆様の行動変容、つまり、行動を変えることが大切です。特別措置法上の権限はあくまで都道府県の知事が行使するものでありますが、政府として、関東の1都3県、大阪府と兵庫県、そして福岡県の皆様には、特別措置法45条第1項に基づき、生活の維持に必要な場合を除き、みだりに外出しないよう要請すべきと考えます。事態は切迫しています。東京都では感染者の累計が1,000人を超えました。足元では5日で2倍になるペースで感染者が増加を続けており、このペースで感染拡大が続けば、2週間後には1万人、1か月後には8万人を超えることとなります。

 しかし、専門家の試算では、私たち全員が努力を重ね、人と人との接触機会を最低7割、極力8割削減することができれば、2週間後には感染者の増加をピークアウトさせ、減少に転じさせることができます。そうすれば、爆発的な感染者の増加を回避できるだけでなく、クラスター対策による封じ込めの可能性も出てくると考えます。その効果を見極める期間も含め、ゴールデンウイークが終わる5月6日までの1か月に限定して、7割から8割削減を目指し、外出自粛をお願いいたします。

 繰り返しになりますが、この緊急事態を1か月で脱出するためには、人と人との接触を7割から8割削減することが前提です。これは並大抵のことではありません。これまでもテレワークの実施などをお願いしてまいりましたが、社会機能を維持するために必要な職種を除き、オフィスでの仕事は原則自宅で行うようにしていただきたいと思います。どうしても出勤が必要な場合も、ローテーションを組むなどによって出勤者の数を最低7割は減らす、時差出勤を行う、人との距離を十分に取るといった取組を実施いただけるよう、全ての事業者の皆様にお願いいたします。レストランなどの営業に当たっても、換気の徹底、お客さん同士の距離を確保するなどの対策をお願いします」

 「人と人との接触の7割から8割削減」は国民任せの他力本願ではない。特定した業種の営業自粛や自粛指示によって一定程度の成算を見込んだ自力本願でなければならない。でなければ、法律を作った意味も、作った法律の発令も意味がなくなる。

 つまり発令によって効果が出ると予測した安倍晋三の発言でなければならない。次の発言も効果を想定した発言となる。

 安倍晋三「今回の緊急事態宣言は、海外で見られるような都市封鎖、ロックダウンを行うものでは全くありません。そのことは明確に申し上げます。今後も電車やバスなどの公共交通機関は運行されます。道路を封鎖することなど決してありませんし、そうした必要も全くないというのが専門家の皆さんの意見です。海外では、都市封鎖に当たり、多くの人が都市を抜け出し、大混乱と感染の拡大につながったところもあります。今、私たちが最も恐れるべきは、恐怖それ自体です。SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)で広がったデマによって、トイレットペーパーが店頭で品薄となったことは皆さんの記憶に新しいところだと思います。ウイルスという見えない敵に大きな不安を抱くのは、私も皆さんと同じです。そうしたとき、SNSは本来、人と人の絆(きずな)を深め、社会の連帯を生み出すツールであり、社会不安を軽減する大きな力を持っていると信じます。しかし、ただ恐怖に駆られ、拡散された誤った情報に基づいてパニックを起こしてしまう。そうなると、ウイルスそれ自体のリスクを超える甚大な被害を、私たちの経済、社会、そして生活にもたらしかねません」
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 安倍晋三「率直に申し上げて、政府や自治体だけの取組みでは、この緊急事態を乗り越えることはできない。これは厳然たる事実です。感染者の爆発的な増加を回避できるのか。一人でも多くの重症者を死の淵(ふち)から救うことができるのか。皆さんを、そして皆さんが愛する家族を守ることができるのか。全ては皆さんの行動にかかっています。改めて御協力をお願いします。

 「都市封鎖、ロックダウン」まで行う必要はない。今回の緊急事態宣言が指示内容とした外出自粛や営業自粛、在宅勤務とそれに代わるテレワーク等々の措置だけで感染収束に事足りると、その効果を前提とした発言となっている。

 後段の発言は国民の協力にかかっているとしているが、国民の協力を得ることができることを想定した緊急事態宣言の発令でなければならないのだから、国民の協力に対する念押しの発言でなければならない。

 国民の協力が期待できないままに発令したとなると、大いなる矛盾を抱えることになる。政府の新型コロナウイルス感染症対策本部の下に置かれた新型コロナウイルス感染症対策専門家会議のメンバーである感染症専門家の科学的・合理的根拠に基づいた、感染収束に向けて効果あると見込んだ発令でなければならない。

 冒頭発言最後の次の言葉も緊急事態宣言発令の効果を見込んだ物言いとなる。

 安倍晋三「9年前、私たちはあの東日本大震災を経験しました。たくさんの人たちがかけがえのない命を失い、傷つき、愛する人を失いました。つらく、困難な日々の中で、私たちに希望をもたらしたもの、それは人と人の絆、日本中から寄せられた助け合いの心でありました。今、また私たちは大きな困難に直面しています。しかし、私たちはみんなで共に力を合わせれば、再び希望を持って前に進んでいくことができる。ウイルスとの闘いに打ち勝ち、この緊急事態という試練も必ずや乗り越えることができる。そう確信しています」

 東日本大震災の前例に鑑みて、「私たちはみんなで共に力を合わせ」ることが期待できることを見込んだ発言でなければ、到底、発令などできない。

 発令が遅すぎたのではないかと見る意見もあるが、この記者会見質疑でも同じ質問が飛んだ。

 NHK松本記者「今回の決断に至るまで、いろんなデータや調整があったのだと思いますけれども、この判断のタイミングについて遅過ぎると、遅いという批判もございます。今回の決断がもう少し早ければ、今のような感染拡大は防げたのではないかという声もあろうかと思いますが、そうした声にどのようにお答えになりますか。

 また、ここに至るまで異例の対応が続いてきたと思います。イベント自粛や一斉休校。それでも感染拡大を抑えることができなかった。この原因についてどのように分析されていますでしょうか、お答えください」

 安倍晋三「先ず、この特措法を改正した日から、いつ緊急事態宣言を出すべきか、ずっと緊張感を持って考えてきました。でも、今、御質問がございましたが、あのときにどういう議論があったか。むしろ緊急事態宣言は私権を制限するから慎重に出すべきだという議論が随分ありましたよね。しかし、私たちは出すべきときには出すべきだと考え、その中で最大限の緊張感を持って、事態を、感染者の数の拡大状況、専門家の尾身先生を始め、専門家の皆さんに分析をしていただいてまいりました。そこで、我々、イベント等の自粛、また、学校の一斉休校も行いました。だけれども、感染者の拡大を防げなかった。確かにそのとおりです。しかし、スピードはどうなのかということでありまして、今、世界を見ていて、一時スピードが上がっていく、このスピードをどれくらい抑えることができるかということが重要であります。

 中国、韓国においては、日本よりも感染者の数は相当多いですが、死亡者の数も多いですが、今、スピードは相当落ちてきている。日本も早くそのピークをはるかに小さいところで抑えていきたい。そして、言わば減少に転じさせたいと、こう思っています。

 先週から、我々は、いつ出すべきか、西村大臣と尾身先生と毎日、緊密に協議をし議論をしました。これはやみくもに出せません。専門家の皆様が判断をする。準備をすべきだという判断をいただきました、昨日。その理由については、先ほど申し上げたとおりであります。専門家の皆さんのこの判断、言わば、一つは、累積の感染者の数、スピード、そして医療の提供体制との関係、そして我々行政の場では何を考えるべきかということについて言えば、言わば緊急事態宣言を出す段階において、十分な医療体制をしっかりと対応できるものを、体制をつくっていく必要があります。ですから、先週、私も含めてホテルチェーンの社長さんたちにお願いをしまして、軽症者等を受け入れるお願いをさせていただいた。そういうお願いもさせていただき、準備を整えた上で、言わば緊急事態宣言を出せば、そういうところが、言わばそういう感染者の皆さん、軽症者あるいは無症状者の皆さんを収容していただくことができるわけであります。

 同時に、混乱を起こさないようにする必要があります。国民の皆様の理解を進めていく。最初はロックダウンになるのではないかという間違った認識が広がりました。こういう認識をしっかりとなくしていくという準備も整えながら、尾身会長としっかりと心を合わせながら、昨日、ああした形で準備をせよという御判断をいただき、本日の緊急事態宣言となったわけであります」

 緊急事態宣言の発令は「専門家の皆様が判断をする」と、専門家に丸投げした。行政がすることは緊急事態宣言を発令した場合の受入れの十分な医療体制の構築だとしている。

 だが、発令如何に関わらず、行政はどのような状況にあっても十分に構築された医療体制で応じなければならない。しかも2020年2月末には新型コロナウイルスの発生源とされている中国湖北省武漢では医療体制の崩壊が指摘されていた。日本でも感染者が増加の状況に遭遇したなら、医療体制の逼迫、次に崩壊を想定し、それらの想定の段階に応じて専門家の意見を借りながら、医療体制が対応可能かどうか精査し、万が一対応不可能性の答が出たなら、そのことに備えておかなければならないのだから、発令は遅くはなかった、タイミング的に正しかったことの理由とはならない。

 厚生労働省は2020年4月2日の時点で新型コロナウイルス感染の軽症者あるいは無症状者のホテルや自宅療養を可能とする「事務連絡」を既に発出している。正式名は「新型コロナウイルス感染症の軽症者等に係る宿泊療養及び自宅療養の対象並びに自治体における対応に向けた準備について」となっている。

 つまり、厚生労働省は4月2日の時点でホテル利用(宿泊療養)や自宅療養を可能とする準備を指示する事務連絡を都道府県向けに行った。これは東京都が軽症・無症状の患者に関しては病院外で療養させられるよう感染症法の運用見直しを国に諮り、調整した結果だと言うから、緊急事態宣言を発令するかしないに関係しないところで決められたことになって、緊急事態宣言を発令したから、ホテル療養や自宅療養が可能となったということではない。

 要するに安倍晋三は発令が遅かったかどうかに答えることができずにゴマカシ答弁をしたことになる。

 この記者会見で質疑の間安倍晋三と同席していた新型コロナウイルス感染症対策専門家会議副座長の尾身茂が宣言の対象地域が7都府県となったことの理由を次の3点を挙げて説明している。

 「累計の報告者数」
 「倍加時間」(感染者が2倍になるのにどのぐらいの時間がかかっているかということ)
 「リンクの追えない孤発例の割合」

 尾身茂「東京と大阪は、もう累計報告数が400を超えているということと、倍加時間も、実はヨーロッパのイタリアなんかは大体2(日)とか2.5ぐらいなのですけれども、東京都は3月の上旬は10とか11でしたけれども、最近になって5、大阪も6.6、それから孤発例(感染経路を追うことができない症例)が令東京では68パーセント、大阪でも5割近くはリンクが追えないということです。神奈川、埼玉、千葉というのは、東京ほどではないですけれども、生活圏、行政区としては別ですけれども、生活圏としてはほぼ同じということで、その3つ。

 それから、大阪は今、言ったようなことですけれども、その近隣県としては、兵庫県が感染状況も大阪に近いし、生活圏としても一体であるということ。それから福岡ですけれども、実は福岡は累積の報告数はいまだ少ないのですけれども、2つの重要な特徴がありまして、1つは倍加時間が、先ほど言ったように2倍になるのに必要な時間が、これは全国で最大、最も短い。昨日の時点で2.9日、最も短い。それから孤発例の割合もこれは全国で一番高くて、昨日の時点で72パーセントです。

 こういうことがあって7つの都府県ということで、その他の県は、こういう7つの都府県に比べれば、まだこれから感染拡大のおそれが当然あるわけですけれども、今日、昨日の段階では、その7都府県に比べてまだそこまで達していない。ただし、感染拡大のおそれがあるので、十分これからも3密を中心に警戒を怠れない状況だと思います。

 尾身茂は7都府県以外は「7つの都府県に比べれば、まだこれから感染拡大のおそれが当然あるわけですけれども、今日、昨日の段階では、その7都府県に比べてまだそこまで達していない」、つまり「累計の報告者数」、「倍加時間」、「リンクの追えない孤発例の割合」の3点で7都道府県程に切迫した状況に至っていないから、発令対象地域から除外したと言うことになる。

 だが、安倍晋三にしても、新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の感染症専門家にしても、緊急事態宣言の発令によって「人と人との接触機会を最低7割、極力8割削減することができれば、2週間後には感染者の増加をピークアウトさせ、減少に転じさせることができます」との計算に立って、人と人との接触機会の7~8割削減を想定内とし、宣言終了期間の5月6日には大幅な感染抑止に効果があると見て発令したのである。

 当然、発令の効果は感染者数がより少ない間に在宅勤務やテレワーク等による人と人との接触機会の削減や密閉、密集、密接の3密の危険性の高い居酒屋やライブハウス等々の営業自粛や営業時間の短縮等々を要請した場合の方がより高くなるはずである。病気が進行してから医者にかかるよりも、体の調子が悪くなったら医者にかかる方が治りが早いのと同じ道理である。

 だが、尾身茂はこの単純な道理を踏まずに7都府県以外は「7つの都府県に比べれば、まだこれから感染拡大のおそれが当然あるわけですけれども」と、悪く言うと、政府としては感染のあり得る拡大を待つ姿勢で、いわば感染の拡大まで何も手を打たない姿勢で発令を見送った。

 2020年4月12日のNHK日曜討論「緊急事態宣言 必要な対策を問う」に西村康稔などと出席した尾身茂が宣言発令のタイミングについて発言している。

 中川緑キャスター、「このタイミングでの緊急事態宣言を出すことを妥当だと判断した、その一番の理由は何かということと、もう一つ、宣言から5日経って、ここまでの効果と課題、どう見ていますか」

 尾身茂「宣言を政府に提言した理由は二つございます。一つはこのまま放っておくと、ヨーロッパでね、言われている、いわゆるオーバーシュート(感染者の爆発的拡大)ですね、その軌道に入った。オーバーシュートになるわけではないが、その軌道に入ってしまうということ。

 それから、横倉(義武・日本医師会会長)先生が仰ったように医療の機能不全、もう起こりつつあるということで、タイミングについてはもっと早くしてもいいという意見もあったということは十分承知ですが、私は一般の市民がですね、この時期なら、協力してくれるというタイミングがあるんで、ほぼそのタイミングが来たんじゃないかと、ま、そういう感染対策上と、国民がどれだけね、協力してくれるか、この2点で政府に提言させて、まあ、適切な時期じゃなかったかと、私は思っております」

 尾身茂は宣言発令のタイミングの一つの理由として、このまま宣言を出さずにいたら、「オーバーシュートの軌道に入ってしまう」懸念があったからとしている。と言うことは、「オーバーシュートの軌道に入ってしまう」懸念が生じる程に感染が拡大する状況に至るまで宣言の発令を待っていたことになる。

 もし東京都やその他の府県の感染の拡大状況を最悪の事態を想定する危機管理意識のもと、読むことができていたなら、「ヨーロッパみたいにオーバーシュート軌道に入ったわけではないが、その軌道に入ってしまう懸念がある」から、そこに発令のタイミングを置いたといった趣旨の発言はできない。

 大体が宣言が効果あるものと見做していたなら、発令を前倒ししても、効果自体が前倒しできて、その分、経済の回復に向けた政策の着手も前倒しできることになる。感染が拡大する前に手を打つという発想はどこにも見当たらない。

 尾身茂は宣言発令のタイミングのもう一つの理由として、「医療の機能不全、もう起こりつつある」ことと、「一般の市民がですね、この時期なら、協力してくれるというタイミングが来た」ことを挙げているが、前者の「医療の機能不全」の解消に向けた対応の一つは厚労省が「事務連絡」で既に行っているが、「医療の機能不全」が「もう起こりつつある」ことに発令のタイミングを置くことに何の矛盾も感じないらしい。置くとしたら、医療の機能不全が起こる前に置かなければならないからだ。

 感染症の専門家でありながら、このことができなかった。自身の判断が間違っていたのか、多分、政権から早期の発令を止められていたために、その遅れを隠すために矛盾したことを強弁する必要に迫られたとしか考えられない。

 「一般の市民がこの時期なら協力してくれる」と言っていることの「時期」とは一般市民が新型コロナウイルスの感染拡大状況に切迫感を持つに至っている「時期」を意味していて、その切迫感が増す「時期」を発令のタイミングとしたことになって、感染拡大状況とその状況に対する一般市民の切迫感を前以って読んだ発令ではないことになる。

 要するに宣言発令のタイミングを合理的な知見に基づいて感染拡大の推移とその状況に置いたのではなく、SNSでの発言やマスコミ報道から感知してのことなのだろう、知ったことになる一般市民の切迫感を発令の一つの理由に置いたことになって、合理性を疑わせることになる。

 宣言の発令が遅すぎたのではないかとする意見に合理的な答弁ができないことからの、言うことに事欠いて、理由とならない理由を並べたとしか見えない。少なくとも安倍晋三にしても、尾身茂にしても、発令は遅くはない、グッドタイミングだったと周囲が納得できる答を口にしてはいない。

 大体が4月7日の記者会見で発言した、「累計の報告者数」、「倍加時間」、「リンクの追えない孤発例の割合」の3点を宣言発令の根拠に置いたことと、合理性の点で著しく劣ることになる。

 麻生太郎が緊急事態宣言の早期の発令を「経済がとんでもないことになる。ガタガタになる」と反対、官房長官も慎重姿勢だったとマスコミが報道していることが安倍晋三の決断を鈍くしたことの理由と考えられるが、発令を待つまでもなく、新型コロナウイルスの抑止することができない感染拡大と営業自粛や外出自粛の要望による人の移動の激減、インバウンドの急激な激減等によって日本経済が満足に回転しなくなり、かつてない程に低迷することになった。

 安倍晋三は記者会見で「雇用と生活は断じて守り抜いていく」、「GDP(国内総生産)の2割に当たる事業規模108兆円、世界的にも最大級の経済対策を実施する」、「困難に直面している御家族や中小・小規模事業者の皆さんには、総額6兆円を超える現金給付を行います」、「史上初めて事業者向けの給付金制度を創設した」等々、予算の勇ましい配分なのか、勇ましい大判振舞いなのか、さも立派なことであるかのように述べ立てたが、このことも宣言の発令が早ければ、収束時期も早まることになって、応じて経済の回復も早まることになる道理に反した宣言の発令の遅れを隠す政治パフォーマンスの一面を顔を覗かせているように見えた。

 安倍晋三がやってもおかしくない政治パフォマンスである。

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安倍晋三は「強大な経済対策の実行」、「日本経済のV字回復」などと出来もしない言葉を口先だけで弄ぶな

2020-04-06 11:36:29 | 政治
 2020年2月17日財務省発表の2019年10月から12月のGDP=国内総生産は大幅なマイナスに転じ、2020年3月17日公表の民間エコノミスト分析の2020年1月~3月までのGDP伸び率予測では物価変動除外の実質は年率換算でマイナス2.89%という数字が提示された。

 このマイナス2.89%は消費税率引き上げの影響で5期ぶりにマイナスとなった去年10月~12月をさらに下回っていて、予測どおりだと、2期連続のマイナスになるという。

 2018年初頭から始まった米国の中国製品に対する追加関税措置とそれに対する中国の米製品に対する報復関税措置の米中貿易摩擦が2018年末頃から日本の産業界に影響が出初めて、2018年、2019年の自然災害による経済活動停滞、2019年10月1日からの消費税増税の影響、さらに、〈2019年11月に中国湖北省武漢市で発生が確認され、同年12月31日に最初に世界保健機関 (WHO) に報告された〉(「Wikipedia」)新型コロナウイルス感染症の世界的流行等が日本経済を縮小させる要因となった。

 2020年3月27日に2020年度予算が成立。日本の首相安倍晋三は翌3月28日夕方6時から首相官邸で新型コロナ対応や追加の経済対策について「記者会見」を開いた。

 安倍晋三「これまでになく厳しい状況に陥っている現下の経済情勢に対しても、思い切った手を打ってまいります。昨日、来年度予算が成立しました。これによって、医療や介護など社会保障の充実、高等教育の無償化など、予算を切れ目なく新年度から執行することができます。加えて、この後、政府対策本部を開催し、緊急経済対策の策定を指示いたします。リーマン・ショック以来の異例のことではありますが、来年度予算の補正予算を編成し、できるだけ早期に国会に提出いたします。国税・地方税の減免、金融措置も含め、あらゆる政策を総動員して、かつてない強大な政策パッケージを練り上げ、実行に移す考えです」

 「あらゆる政策を総動員して、かつてない強大な政策パッケージを練り上げ、実行に移す考えです」・・・・

 安倍晋三「感染の拡大が抑制され、社会的な不安が払拭された段階では、一気に日本経済をV字回復させていく。全国津々浦々、皆さんの笑顔を取り戻すため、旅行、運輸、外食、イベントなどについて、短期集中で大胆な需要喚起策を講じるなど、力強い再生を支援する考えです」

 「感染の拡大が抑制され、社会的な不安が払拭された段階では、一気に日本経済をV字回復させていく」・・・・・

 マスコミ記者との質疑応答でも、「強大な政策」を言い、「V字回復」を確約している・

 安倍晋三「先ず、昨日、来年度予算が成立しました。先ずはこの中の26兆円の事業規模の経済対策を一日も早く執行していきたいと考えています。そして、景気を下支えしていきます。その上で、日本経済全体にわたって極めて甚大な影響が生じていますが、そのマグニチュードに見合っただけの強大な政策を、財政、金融、税制を総動員して実行していく考えであります」

 「マグニチュードに見合っただけの強大な政策を、財政、金融、税制を総動員して実行していく考えであります」・・・・・

 日本経済の地盤沈下の程度を地震の規模を示す「マグニチュード」という言葉で譬えている。

 安倍晋三「感染の拡大が抑制された段階において、旅行や運輸、外食、イベントなど、大変な影響を受けている方々に対して、短期集中で大胆な需要喚起策を講じていきたい。そして、正に全国津々浦々、また笑顔が戻ってくるように、V字回復を目指していきたいと考えています」

 「感染の拡大が抑制された段階において」、「大胆な需要喚起策を講じ」、「正に全国津々浦々、また笑顔が戻ってくるように、V字回復を目指していきたいと考えています」・・・・

 この「V字回復」、冒頭発言では「一気に日本経済をV字回復させていく」と言い切っているのに対して質疑では、「V字回復を目指していきたいと考えています」とかなりトーンを下げている。とは言うものの、「V字回復」を将来の目標に据えた。

 勇ましい言葉、聞こえのいい言葉が信用されるのも、信用されないのも、過去の実績が物を言うことになる。過去の実績が有言実行性、あるいは有言不実行性のいずれかを占う。

 当然、安倍晋三が日本経済を「V字回復」に持っていく第一番の動機として「正に全国津々浦々、また笑顔が戻ってくるように」と、そこに願いを置いている以上、過去、アベノミクスによって国民に「笑顔」を与えていなければならない、当然の理屈となる。

 第2次安倍政権発足以来、アベノミクスによって国民に笑顔を与えることができたが、米中貿易摩擦、自然災害、消費税増税、新型コロナウイルス感染症の世界的流行等々によって日本経済が逼迫し、国民から笑顔が消えてしまった。その笑顔を再びのアベノミクスによって取り戻してやろうじゃないか。そうミエを切ったことになる。さすが、安倍晋三。

 国民から笑顔を奪った大きな要因の一つを米中貿易摩擦に置いたとしても、このことが日本の経済に影響を与え始めたのは2018年末頃からであり、もう一つの大きな要因となっている新型コロナウイルス感染症の世界的流行によって日経平均株価が大きく下落したのは2020年1月末からである。

 つまり2013年初めから2018年末までのアベノミクス6年間に関しては米中貿易摩擦にしても、新型コロナウイルスにしても、国民から笑顔を奪う要因とはなっていないことになる。

 2018年、2019年の自然災害にしても、アベノミクスの2013年から2020年までの8年間の予算で「公共事業関係費」は毎年7兆から8兆円規模を組み、この全てを防災・減災に回しているわけではないが、防災・減災に注力していたのは事実であるし、この内の「治山治水対策予算」は6年間合計で7兆円、「災害復旧費等」の予算は同じく2013年から2020年までの8年間合計で4兆4千億円近くを注ぎ込んでいる(2019年と2020年は決算額ではなくて、当初予算額)。

 当然、自然災害に対する経済損失を公共事業によってそれなりにカバーしてきているはずで、公共事業費1兆円はGDP1兆円の押上効果があるとされていて、GDPに対しても貢献しているはずで、自然災害をアベノミクスの好循環を阻害する要因とする正当性はない。阻害要因として正当づけるとしたら、安倍晋三だけではなく、安倍内閣、自民党、公明党共々に「防災だ、減災だ」と大騒ぎしている割に公共事業に注ぎ込んでいるカネ相応に経済効果を引き出していないことになって、公共事業政策自体にどこか欠陥があることになる。

 東日本大震災の被災地に於いて今以て引きずっている芳しくない経済状況はいくら公共事業にカネを注ぎ込んでも、人を戻す政策を欠いていることが原因となっている現状であるはずだ。東京圏一極集中が加速している昨今の状況にあって、余程の強力な人口回復策がなければ、東北に人を戻すことはできない。だが、安倍晋三は口先だけで終わらせている。

 2012年12月26日の首相就任記者会見。

 安倍晋三「閣僚全員が復興大臣であるという意識を共有し、あらゆる政策を総動員してまいります。これにより、単なる最低限の生活再建にとどまらず、創造と可能性の地としての新しい東北をつくり上げてまいります」 

 NHKが2019年12月から2020年1月にかけて岩手・宮城・福島の被災者や原発事故の避難者など4000人余りを対象にアンケート(有効回答数48%の1965人)を行った結果、今も被災者だと感じている人が有効回答の62%(1218人)にも上ったという。

 〈阪神・淡路大震災から10年で専門家が行った同様の調査では、兵庫で被災者と意識していた人は25%で、岩手・宮城・福島と比べおよそ2.5倍の開きがある。〉と解説している。

 今も被災者だと感じている人のうち、「地域経済が震災の影響を脱した」と回答した人が4%に過ぎなかった。〈経済的な復興の実感が乏しい人ほど今も被災者だと感じている割合が高くなっている。〉と解説しているが、安倍晋三が「最低限の生活再建にとどまらす」と言っている「最低限の生活再建」さえままならない被災者の姿が浮き彫りになる。

 被災3県共に人口減少に悩んでいる。「創造と可能性の地としての新しい東北」は言葉だけのことで、どこにも見えてこない。2018年10月24日の所信表明演説でも同じことを言っている。

 「東北の復興なくして、日本の再生なし。この決意の下に、『創造と可能性の地』としての東北を創り上げてまいります」

 安倍晋三の立派な言葉に反する被災地の現状は復興事業とそのカネを生かしきれていない状況しか浮かんでこない。自然災害に対してそれなりのカネを注ぎ込んでいるのだから、アベノミクスの阻害要因とすることも、国民から笑顔を奪った憎き仇とすることもできないはずで、満足とは言えない復興状況は自らの政策推進能力の欠如に原因を置かなければならないはずだ。

 では、消費税の2014年4月1日から5%から8%への、2019年10月1日から8%から10%への増税がアベノミクス好循環の阻害要因の一つとすることができるのだろうか。

 2014年11月18日安倍晋三解散記者会見。2014年4月1日から5%から8%へ増税した消費税は2015年10月1日に10%への増税が決まっていた。

 安倍晋三「本日、私は、消費税10%への引き上げを法定どおり来年10月には行わず、18カ月延期すべきであるとの結論に至りました
   ・・・・・・・・・・
 来年(2015年)10月の引き上げを18カ月延期し、そして18カ月後、さらに延期するのではないかといった声があります。再び延期することはない。ここで皆さんにはっきりとそう断言いたします。平成29年(2017年)4月の引き上げについては、景気判断条項を付すことなく確実に実施いたします。3年間、3本の矢をさらに前に進めることにより、必ずやその経済状況をつくり出すことができる。私はそう決意しています」――

 再引き上げはない。その理由を「3年間、3本の矢をさらに前に進めることにより、必ずやその経済状況をつくり出すことができる」

 2014年4月1日の5%から8%への増税も前以って分かっていたことで、そのための景気対策を打っていたはずだが、その対策の効果もなく、増税によって経済の維持にブレーキがかかった。当然、その時点から同じ轍を踏まないために2015年10月1日の10%増税に向けて新たな景気対策を構築、3本の矢をさらに前進させて、増税可能な経済状況をつくり出さなければならなかった。

 にも関わらず、アベノミクス経済政策を阻害する、これといった国外的・国内的要因がないままに2014年11月18日に至って増税延期を決定することになったのは、アベノミクスに力強いエンジンを備え付けることができなかったからに他ならない。

 ところが、2014年11月18日の記者会見で「来年(2015年)10月の引き上げを18カ月延期し、そして18カ月後、さらに延期するのではないかといった声があります。再び延期することはない」と確約した力強い言葉をあっさりと反故にし、2017年4月1日引き上げ予定を、2016年6月1日の記者会見でさらに30カ月延期することを公表、2019年10月1日に増税の着地点を持っていくことになった。

 消費税増税を再延期しなければならない程にアベノミクスが脆弱でありながら、2015年9月24日の記者会見で「アベノミクスは第2ステージに移る」と宣言、2020年に向けた経済成長のエンジンと位置づけた新たな「3本の矢」を発表までしている。

(1)希望を生み出す強い経済
(2)夢を紡ぐ子育て支援
(3)安心につながる社会保障

 ワンパターンのギャグで売っていたお笑い芸人がフアンのそのギャクへの食いつきが悪くなると、食いつきのいい新しいギャグを考え出そうと四苦八苦するものだが、食いつきだけを狙ったのだろう。

 以下、説明することがその証明となる。

 消費税増税再延期の理由を「中国など新興国経済に『陰り』が見える」こと。「リーマンショックの時に匹敵するレベルで原油などの商品価格が下落していること」、こういったことで「投資が落ち込み、新興国や途上国の経済が大きく傷ついる」ことを挙げたが、一方で、「正規雇用は昨年、8年ぶりに増加に転じ、26万人増えた」、「この春の高校生の就職率は24年ぶりの高さとなった」、「大学生の就職率は過去最高だ」、「政権交代前から中小企業の倒産も3割減少している」、「中小企業も含めて、一昨年、昨年に続き、今年の春も3年連続で今世紀に入って最も高い水準の賃上げを実現することができた」とアベノミクスの成果を次々と謳い上げているが、これらの成果が消費税再増税で潰え去ってしまう恐れを抱かざるを得ない程にアベノミクスは力強くなかったことになる。

 増税再延期を決めるに当たって2019年10月1日の10%増税に向けてアベノミクスの3本の矢をさらにさらに前進させて、増税可能な経済状況をつくり出さなければならなかった。しかし10%増税が、食料品は軽減税率を設けて8%のまま維持していながら、景気の足を引っ張ることになった。アベノミクス3本の矢だけではなく、新3本の矢も国民に安心も笑顔も与えることができなかった。

 要するに2014年4月1日の5%から8%への消費税増税も、2019年10月1日の8%から10%への消費税増税も国民から笑顔を奪ったアベノミクス好循環の阻害要因の一つとすることができないということになる。

 もともと、アベノミクス経済下で国民は笑顔など作っていなかった。笑顔を作っていたのは、株高と円安で潤った大企業や高額所得者だけであった。このことは「アベノミクス失敗の原因は伸びない個人消費、迫られる選択肢は2つ」(ダイアモンドオンライン/ 2020/03/24 06:00)なる記事が証明してくれる。

 要約すると、アベノミクスは2%の実質経済成長率を目指していたのに対して7年間の累積で実質GDPは6.4%増加した。

 要するに見事な成果と言うことができる。但し記事は、〈設備投資は15.5%増加したのに対し、個人消費は0.4%しか増加していない。〉と断じている。

 企業は、特に大企業はと言うことなのだろう、15.5%も設備投資を増加できる資金を有していたが、アベノミクス7年間で個人消費は0.4%の増加のみ。

 この両者間の関係構図は格差の状況以外に何も映し出していない。特に大企業は史上最高の450兆円前後の内部留保を溜め込んだ。金融・保険業を加えると、日本のGDPに相当する500兆円を超えていると言う。だが、企業のそういった史上最高の利益は給与の形で社員に、広く言うと国民に十分に再分配されることがなかった。その結果が個人消費が高々の0.4%の増加と言うことになる。

 2008年平均給与(男女共) 429万6千円
 2018年平均給与(男女共) 440万7千円
 伸び率           2.6%

 アベノミクスが始まった2013年の男女合わせた平均給与は413万6千円で、男女合わせた2008年の平均給与429万6千円から年々減り続けていって、16万円も低くなったところからアベノミクスは始まっていることになるから、一見すると、給与が増えたように見えるが、長年働いている一般的な給与所得者からしたら、目減り分を取り戻しているような感覚になって、余程の給与所得者でなければ、思い切った消費行動に出ることができないといったことも、個人消費が伸びない要因の一つのなっている可能性がある。

 アベノミクス景気は戦後最長の景気期間を迎えた。一方で、大企業や高額所得者の側に立たない限り、大方の見方として、実感なき景気と言われている。当然、安倍晋三が様々な経済指標を駆使してアベノミクスの成果を如何に誇ろうと、国民はその実感のなさに笑顔を見せるどころではない状況に置かれていたことになる。

 いわば国民は安倍晋三のアベノミクスの景気政策下では最初から笑顔をつくるどころではなかった。終始笑顔でいることができたのは日銀の異次元の金融政策の恩恵として出現することになった株高と円安で懐を潤すことができた企業、特に大企業と高額所得者ぐらいだろう。

 当然、見栄えのしない過去との比較で評価できないという意味で「過去が過去だから」と一蹴せざるを得ないのと同じようにアベノミクスの過去の実績から言うと、安倍晋三がいくら勇ましく「強大な政策パッケージを練り上げ、実行に移す考えです」と言おうが、吠えようが、あるいは「V字回復」を実行可能であるかのように見せようが見せまいが、出来もしない言葉を口先だけで弄んでいるとバッサリと切り捨てる以外にない。

 「V字回復」の目的の一つに「全国津々浦々、また笑顔が戻ってくる」ことを挙げたとしても、大方の一般国民はアベノミクスに最初から「笑顔」など見せていなかったのかだから、これも出来もしない言葉を口先だけで弄んでいるに過ぎないとしか言い様がない。

 安倍晋三は自分が口にすることは全て現実の形にすることができるかのように広言する傲慢なところがあるが、自分で自分を偉大な存在だと思い込んでいる自己愛性パーソナリティ障害がそうさせているのであって、そろそろ自分の実力に気づくべきだろう。

 アベノミクスは中国とアメリカの好況の恩恵を受けて成り立っていただけのことで、米中貿易摩擦と新型コロナウイルスの世界的感染でその両恩恵が怪しくなると、アベノミクス自体も傾きかけてきた。結果、一般国民にはただでさえ芳しくない生活実感がなおのこと芳しくない状況に追いやられることになった。
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