2020年4月17日の衆議院厚生労働委員会での国民民主党の岡本充功と安倍晋三の安倍昭恵の大分県宇佐市の宇佐神宮参拝に関わる質疑応答でも、安倍晋三の答弁にはウソつきが自らのウソを事実だと思わせるときに見せることになる特有の症状が現れていた。
その症状がこのように説明しているとおりなのかどうかは質疑の参考にしたYou Tube動画「安倍晋三 昭恵氏の大分参拝「事前に妻から聞いていた」4/17衆院・厚労委」から確かめて頂きたい。
質疑応答に移る前に遣り取りの中に出てくるから、参考のために次の時系列を前以って記載しておく。
◇改正新型インフルエンザ対策特別措置法。
成立 2020年3月13日
公布 2020年3月13日
施行 2020年3月14日
安倍昭恵大分県宇佐市の宇佐神宮参拝 2020年3月15日
安倍晋三は安倍昭恵の神社参拝に関わる岡本充功の最初の質問に対する最初の答弁は前以って用意していたのだろう、突っかえ一つなくスムーズに答弁している。次の答弁でそのスムーズさを失って、事実性を怪しくさせていくのだが、その前後に"水平線"を入れて、区別しておく。但しスムーズな答弁だからと言って、それが常に事実に基づいているとは限らない。前以って虚偽の事実を用意しておいて、用意しておいたお陰でスムーズに答弁できるということもある。
2020年4月17日の衆議院厚生労働委員会 岡本充功「最期に、まあ、総理は先程大分の話をされましたけど、一点だけ確認させてください。これね、各それぞれのご家族のことですけど、私だって、仲間や家族と外でスポーツをすることはあります。しかし、まあ、『3密は避けでください』、総理自身がですね、『自身の身は守る、警戒をしてください』と言っていた翌日の、しかも特措法が改正された翌日、施行された翌日ですね、総理夫人が50人のみなさんと一緒に参拝をしていたと。大分の神社に。 これ、総理、ご存知だったんですか。そしてまたそれについて何らか、ご存知でしたら、コメントされたんですか。どうですか」 安倍晋三「えー、私の妻によればですね、3月15日にご指摘の大分県の神社に参拝をしたとのことでございますが、報道されている団体のツアーに参加したものではありません。参拝のみ、当該団体と合流して行ったものであります。 この大分訪問は小池都知事が週末の外出自粛を都民に要請した3月25日より前に行ったものでございます。また、私がですね、不要不急の自粛を呼びかけたのは3月28日であったわけでございますが、また、参拝以外は特に観光等は行っていない。 そして参拝時に、参拝時に限って敢えてマスクを外したということでございます。勿論、参列については私が申し上げていたところでございますが、訪問中を通して感染拡大の防止には十分注意をして行動していたということでございます。 なお、私の妻が大分県を訪問して、神社を参拝したことについては事前にその旨を聞いていたところでございますが、その際、3密についてはですね、3密とならないように心して行動して貰いたいと申し上げたところでございます」 岡本充功「総理、ご存知のうちで総理の奥様が東京以外の府県を訪(おとず)られているケースは3月15日以降、今日(きょう)に至るまでほかにはあるんでしょうか、ないんでしょうか」 安倍晋三「今すぐにお答えできないと思いますが、いわば外出を自粛、不要不急の外出を自粛するようにっていうことについてはですね、そういうことを申し上げて以降は、勿論、東京都から出ていることはないんだろうと思います。 で、あの、その段階で、いわば大分を訪問した段階に於いてはですね、これは国会議員の皆さんも含めて、多くの方々も、ご、ご地元に帰っておられるんではないか、このように思います」 岡本充功「我々は地元に帰る。私も帰っておりますよ。それは帰るけれども、それはもう、仕事と、それから選挙区と、選挙区のニーズを聞いておくのは我々の仕事だから、それはやっています。 ただね、今の話で大分に行くっていうと、それはちょっと違うのかな。ましてや3密のところとちょっと違ったのかな、という気は私はします。そこでですね、そこで何か寄付をしたというのは別だと思いますよ。3密の状態をつくるなと言っておきながら、やったということについてはやっぱり問題があったと。結果として3密はできちゃったということは問題があったという認識は総理はお持ちですか。 最後にそれだけ聞いておきたいと思います」 安倍晋三「いわば神社の参拝ということについてはですね、密閉ということについては密閉ではないわけでありまして、人が集まっている。ただ密接な、密接であったかどうかは、密接であろうと。 人が何人か集まっているということが密接ということかもしれません。これ3密、重なってはダメなんです、いうことは私は申し上げているわけであります。 ただ、今、フェーズは、そのときと今、フェーズは変わっていますから、そのときですね、いわば不要不急の外出ということについてはこれは今は行う、行うべきでないのは(慌て気味の、なめらかではない物言いとなっている)、当然のことであろうと、こう思います。 ただ地方に行くという、人が地方に動くかどうかということであればですね、例えば地元に帰って、意見を聞くのであれば、例えば我が党に於いては電話に於いてですね、地元に帰らずに、えー、この、あの、地域の皆さんの意見・陳情を受けなさいと、決定しているわけでございます。 本人が動くということ自体もですね、自粛を伸ばして頂いていると言うことでございますから、それも、是非、そういうことについても協力を頂きたいとこのように思います」 岡本充功「時間が来ましたので、これで終わります」 |
岡本充功は先ず安倍昭恵の2020年3月15日の50人の団体との神社参拝を取り上げ、対して安倍晋三は安倍昭恵の参拝は小池都知事が週末の外出自粛を都民に要請した3月25日以前、安倍晋三自身が不要不急の外出自粛を呼びかけた3月28日以前のことだと、参拝の正当性を主張。さらにマスコミが参拝時の安倍昭恵がマスクを着けていなかったと批判的に報道したことに備えて用意した答弁なのだろう、「参拝時に限って敢えてマスクを外したということでございます」と、マスクを外したのはほんの一時的なことだと、安倍昭恵の行為を免責対象としている。
だとしたら、岡本充功は参拝時に限って敢えてマスクを外す必要があったのか、マスクを付けたまま参拝することの不都合を聞くべきだった。宇佐神宮は、〈全国に約44,000社ある八幡宮の総本社である〉(Wikipedia)ということだから、その格式の高さから、マスクを着けたまま参拝するのは失礼に当たる、畏れ多いということで外したのか、聞くべきだったろう。
もしも格式の高さに敬意を払った、マスクを外した素顔による神との対面だとしたら、新型コロナウイルスの万が一の感染によって安倍晋三に与えかねない迷惑を想定しなければならない立場にありながら、そのような迷惑よりも神社の格式の高さをより優先させたことになる。
安倍晋三は安倍昭恵の神社参拝について、「私の妻が大分県を訪問して、神社を参拝したことについては事前にその旨を聞いていたところでございます」と、事前に報告があったとしている。つまり夫婦の間に何の隠し立てもないことを明らかにしたことになる。
安倍晋三が淀みなく落ち着いて答弁したのはここまでである。岡本充功が安倍昭恵の3月15日の神社参拝からこの質疑の4月17日までの間に安倍昭恵自身が東京以外の府県を訪れた例はあるのかと尋ねると、安倍晋三の答弁の淀みなさはたちまち怪しくなる。
安倍晋三は既に安倍昭恵の神社参拝は事前に報告があったとしているのである。つまり特別な外出については夫婦間に於いて事前報告制となっていたことの意思表明となる。もし安倍昭恵が事前報告がしたり、しなかったりの自由気儘な外出をしていたなら、その旨を明らかにしてから、宇佐神宮参拝時には例外的に事前の報告があったとしなければならない。
そうしない以上、事前報告制となっていたとしたことになる。当然、岡本充功の問いに対する安倍晋三の答弁は事前報告によって把握できたこととして、「どこそこに出掛けのはこれとこれ」か、それ以外は事前報告がなかったから、「ほかには出掛けていない」か、あるいは事前報告が一つもなかったから、「どこへも出掛けていないはずだ」のいずれかを断定しなければならない。
ところが、安倍晋三は東京以外の府県訪問については「今すぐにお答えできないと思いますが」と事前報告制と矛盾する物言いを頭に置き、同じ矛盾を連続させて、不要不急の外出自粛を「申し上げて以降は、勿論、東京都から出ていることはないんだろうと思います」と、断定できずに推測の領域で外出を否定している。
明らかに宇佐神宮参拝時の事前報告との食い違いが露わになっている。この食い違いのみを以って安倍昭恵の宇佐神宮訪問を事前に知らされていたとする安倍晋三の答弁を虚偽と決めつけるわけではない。続けて安倍晋三は安倍昭恵が宇佐神宮を訪問した段階では、「国会議員の皆さんも含めて、多くの方々も、ご、ご地元に帰っておられる」と答弁している点である。
安倍昭恵の50人の団体による参拝が小池都知事が週末の外出自粛を都民に要請した3月25日以前、安倍晋三自身が不要不急の外出自粛を呼びかけた3月28日以前のことだったとしても、同列に扱うことはできない国会議員の地元入りと安倍昭恵の外出を同列に扱って、免罪している点である。
比較できない2つのことを比較して、正しいとするには牽強付会が必要となり、牽強付会はウソを混じえなければ、成り立たない。しかも、「ご、ご地元に帰っておられるんではないか」と、ウソつきがウソをつくときのように突っかえた物言いとなっている。
安倍昭恵の宇佐神宮参拝が事前報告のもと行われていたとしていることが真正な事実なら、国会議員の地元入りと同列に扱う必要はどこにもなく、ほかの外出があるのかと問われて、「今すぐにお答えできないと思いますが」と曖昧に答えなければならない必要もなく、「東京都から出ていることはないんだろうと思います」と推測で応じる必要もなく、さらに言葉を突っかえる必要もない。
曖昧に答えたり、推測で答えたのは外出はなかったと答えた場合、安倍昭恵の外出をマスコミがどこでどう嗅ぎつけないとも限らないことへの用心からの言葉遣いということなのだろう。つまり宇佐神宮参拝時にしても、事前報告はなかった。
安倍晋三は「そのときと今、フェーズは変わっている」、「不要不急の外出は今は行うべきでない」、「自民党は地元の意見・陳情は電話で受けることになっている」等々、安倍昭恵の外出とは無関係な、言わなくてもいい余分なことにまで無駄なエネルギーを答弁に注いでいる。ウソつきが自分のウソを事実と思わせるために無駄な言葉を費やすように。最初にウソの答弁がなければ、こういった無駄なエネルギーを答弁に注ぐ必要性は生じない。
安倍昭恵が参拝のみ参加したと言う50人の団体ツアーとは、〈「ドクタードルフィン」を自称する医師の松久正氏が主催する「神ドクター降臨 in Oita」というツアー〉だと、2020年4月21日付「時事ドットコム」記事が「文春オンライン」記事の転載として紹介している。
記事は松久正の診療方針として、〈ドクタードルフィンの超高次元医学(診療)では、薬や手術というものを一切使いません。患者自身で問題(人生も身体も)を修復する能力を最大限に発揮させます〉と紹介、新型コロナウイルスについては、〈不安と恐怖が、ウィルスに対する愛と感謝に変わった途端、ウィルスは、目の前で、ブラックホールから、突然、喜んで、消え去ります〉とフェイスブックで述べているという。
このフェイスブックの記述が〈どうやらこれが昭恵夫人に響いたっぽい。〉と書いているが、共感したからこそ、松久正主催の〈神ドクター降臨 in Oita〉なる団体ツアーに参加、宇佐神宮参拝と言うことに相なったのだろう。
参拝は当然、安倍昭恵にしても、フェイスブックに書いてあることを実現させるために祈ったことになる。
このことは松久正のサイトの「イベントについて・最重要 緊急メッセージ」の文言からも証明することができる。
〈【ドクタードルフィンイベントについて】
昨日、コロナウィルス蔓延に対する安倍首相の大規模イベント自粛要請宣言あり、イベント開催の有無につき、ご心配されている方に、お知らせいたします。
かねてから、私ドクタードルフィンは、
マスクや隔離で回避するものではなく、目に見えないエネルギー体であるウィルスは、人間意識にてコントロールするものである、という、高次元の教えを説いております。
したがって、
イベント開催が、ウィルス感染を助長するものではなく、参加する人間の意識が創り出し、罹患するものである、という認識のもと、イベント開催は、下記の直近のものを含め、敢えて、参加者と、人類の気づきと学びのために、予定通り、実施します。〉――
そして、〈大分 別府・宇佐 卑弥呼覚醒記念講演会&リトリートツアー〉を〈3月14日(土),15日(日)〉実施することを伝えている。
安倍昭恵はこれに参加した。松久正が〈マスクや隔離で回避するものではなく、目に見えないエネルギー体であるウィルスは、人間意識にてコントロールするものである〉と啓示している以上、安倍晋三が岡本充功に対して「参拝時に限って敢えてマスクを外したということでございます」と答弁していることは別の意味を持ってくる。マスクをしたまま参拝したのでは、松久正の啓示に反することになる。神ドクターと名乗っているのだから、単なる教えや説ではなく、神の啓示に等しい啓示ということなのだろう。
安倍昭恵はこういった神ドクターの啓示に心酔していた。
但し安倍政権の新型コロナウイルス対策は感染症専門家の過去のサーズやマーズ 新型インフルエンザ、エボラ出血熱といったウイルス性の感染事例と治療経験等を科学的に分析して得た知見と、新型コロナウイルスの現時点までの感染事例と治療経験等を科学的に分析して得た知見を組み合わせた、科学的合理性に基づいた提言を元に構築したものであって、安倍政権のこの科学的合理性に対して首相夫人の安倍昭恵は安倍晋三筆頭安倍政権の科学的合理性を否定する、〈マスクや隔離で回避するものではなく〉、〈人間意識にてコントロールする〉といった非科学的合理性に基づいた新型コロナウイルス対処法で以って対峙していることになる。
首相と首相夫人の立場にある者のこの思想の違いは滑稽であると同時に病気や医学が科学的合理性を基本としなければならない世界に於いて首相夫人という立場にある安倍昭恵のこの思想は国民の多くが科学的合理性に立っている手前、非常に危険なものに映ることになる。
勿論、何をどう信じようとも、思想・信教の自由の範疇に入るが、事、コロナウイルスに限って政府の対応を否定する者を安倍晋三が身内に抱えているという事実だけはマスコミは伝えるべきだろう。