1月26日の衆議院本会議代表質問で民主党代表岡田克也の甘利明の口利き疑惑・金銭受領疑惑に関するその任命責任を問われて、安倍晋三は巧妙な詭弁で言い抜けた。文飾は当方。
岡田克也「まず冒頭、極めて残念なことを安倍総理に申し上げなくてはなりません。甘利大臣の政治とカネをめぐる問題です。今日に至るまで、国民に対するまともな説明は一切なされていません。内閣の重要閣僚であり、安倍総理の盟友中の盟友と言われる甘利大臣です。任命責任はもちろん、安倍総理自身にも重大な説明責任があります。逃げずに、その責任を果たさなければなりません。安倍総理の答弁を求めます」(民主党HP・2016年1月26日)
安倍晋三の答弁は「衆議院インターネット審議中継」から。
安倍晋三「閣僚の説明責任・任命責任についてお尋ねがありました。組閣に当たって適材適所の閣僚に任命し、国政を力強く前進させる責任はもとより総理大臣たる私にあります。
政治資金等の問題については内閣、与党、野党問わず、一人一人の政治家が政治家としての責任を自覚し、国民に不信を持たれないよう、常に襟を正し、説明責任を果たしていかなければならないと考えております。
甘利大臣に於かれても先ずは事実関係をしっかりと調査し、国民に対してきちんと説明責任を果たして頂きたいと思います」
安倍晋三は甘利明はきちんと説明責任を果たすべきだと言っているのみで、報道されている口利き疑惑・金銭受領疑惑が事実そのとおりであったなら、任命責任者として自身が何らかの責任を取るとは一言も言っていない。
また、甘利明は疑惑が事実なら、閣僚を辞任すべきだとも一言も言っていない。
今後考えられる展開は先ず最初に、いつものことだが、何らかの「政治とカネ」の問題疑惑を持たれた閣僚などが疑惑に関わる説明を行い、それが例え野党・国民が納得できない説明であった場合でも、それを以て十分な説明責任を果たしたとするパターンに甘利明にしても持ち込む手に出るだろう。
安倍晋三も他の閣僚も「十分に説明責任を果たした。もう問題はない」と一大合唱に出て、甘利明を防護する。
それでもし野党は兎も角、世論が納得しなかったり、国会運営に無視できない支障が出た場合、甘利明本人が辞任を申し出て、安倍晋三が慰留したが、本人の意思が固いために受理したと、あくまでも本人による自発的辞任の形を取って、恰も甘利明本人だけの問題であるかのように見せかけるに違いない。例えマスコミが事実上の更迭だ、何だと騒ごうと。
それでも安倍晋三が首相としての任命責任を問われた場合、取っておきの手に出る。
「例え『政治とカネ』の問題で金銭疑惑を抱えていたとしても、経済閣僚としての甘利明の優れた能力は誰もが認めるもので、そこを見込んで任命した。但し一人の閣僚の適材適所の任命に過ちがあったからと言って、私自身が任命責任を取って総理大臣を辞任した場合、国政を力強く前進させる責任まで政権途中で放棄することになり、その責任は一人の閣僚の任命の過ちに対して取らなければならない責任と比べることはできない」――
いわば国政を力強く前進させる責任こそ何に増しても優る大事なことだという手に出る。
安倍晋三自身の任命責任が問われる場面が出てきた場合に備えた「組閣に当たって適材適所の閣僚に任命し、国政を力強く前進させる責任はもとより総理大臣たる私にあります」の言葉であって、決して甘利明の口利き疑惑・金銭受領疑惑が事実と判明した場合に自身が任命責任上何らかの責任を取ることを示唆した言葉ではない。
主たる主意はあくまでも国政を担い続けることを宣言した言葉であって、任命責任云々が生じた場合に取っておくために代表質問の答弁に仕入れていおいた言葉ということなのだろう。ストレートな物言いからかけ離れた巧妙な詭弁以外の何ものでもない。