民・維の民意を汲み取ることができない不誠実・不親切な消費税逆進性対策「給付付き税額控除」

2016-02-29 10:59:00 | 政治

 民主党と維新野党は2月24日(2016年)、「給付付き税額控除法案」を共同で衆院に提出した。

 与党の「軽減税率導入」に対抗する民維の「給付付き税額控除」とはどのような内容なのか、民主党のサイト内を探した。「民主党・消費税の逆進性を緩和するための給付付き税額控除の導入等に関する法律案要綱」と、「逆進性対策についての民主・維新案と政府比較」なるPDF記事で、その内容を伝えていた。         

 後者はここに貼り付けた画像のみで、前者は控除に関してのみの文言を拾い出すことにする。

〈①給付付き税額控除において所得税の額から控除する額は、居住者―人当たりの飲食料品の購入に要する費用の額に係る消費税の負担額として家計統計(統計法第2条第4項に規定する基幹統計である家計統計をいう。)における食料に係る消費支出の額(酒類及び外食に係るものを除く。)、消費税の収入見込額等を勘案して算定した額の10分の2に相当する額を基礎として計算するものとすること。この場合において、当該控除する額は居住者の所得の額の逓増に応じて逓減するように定めるとともに、―定以上の所得を有する者については給付付き税額控除における控除を行わないものとすること。(第3条第1号関係)〉――

 要するに家計統計で年間収入何百万台世帯は酒類及び外食の支出を除外た食料品にどのくらいの消費支出の額となっているか、その統計値と消費税からの国の税収見込額を勘案して算定した額の10分の2に相当する額を基礎として計算して所得税額から控除し、課税最低限以下の収入世帯に対しては10分の2に相当する額を基礎として計算して逆に給付し、プラスマイナスを合わせるということなのだろう。

 だが、実際に年収世帯別にどのくらいの給付付き税額控除となるか、民主党のサイト内を探しても、具体的な説明はどこにも見つからない。法案を衆院に提出した翌2月25日、〈経済・業界団体の関係者を招き、民主党の消費税に関する考え方や、民主・維新両党が前日に国会に提出した「給付付き税額控除法案」の内容について説明した。〉と「民主党」サイトに出ている。 

 具体的にどういった内容の説明かは分からない。骨組みだけを説明して、年収世帯別の計算値は示したのか、示さなかったのか。前者だとしたら、あまりにも国民に不親切だし、後者としても、その不親切さにさして変わらない。 

 「消費税の収入見込額等を勘案」はできないから、ネット上から年収別の平均食費支出額を拾い出してみた。《2014年「全国生計費調査」速報》(日本生活協同組合連合会)にはなぜか載っていなかったが、《2012年「全国生計費調査」速報》(日本生活協同組合連合会)には載っていた。  

 400万円未満 21.6%
 400万円以上~600万円未満 17.9%
 600万円以上~800万円未満 17.1%
 800万円以上~1000万円未満 14.6%
 1,000万円以上    13.6%

 記事が〈「食費」について、年収400 万円未満の世帯(世帯主平均年齢62.7 歳)で、消費支出に占める割合が21.6%で平均よりも5.5 ポイント高くなっており、年収が低いほど負担が大きいことがわかります。〉と解説しているように年収が低い世帯程食費支出額が多くなっている。

 これもネットで調べたのだが、普段の食事は家計簿の「食費」の項目に入れて、家族揃っての外食は「レジャー費」、友達とのランチや職場の飲み会は「交際費」と項目を分けた支出としているというから、年収が高い程外食頻度が多くなって「食費」の項目から除外されるケースが多いことからの年収が高くなるに連れて食費に占める支出額が減るということなのだろうか。

 それとも中低所得者よりも食費に多額の支出をしていながら、収入が高額になる程、その高額に対して食費に回す金額の割合が相対的に少なくなるということだけなのだろうか。

 いずれにしても民主党が基準としている年収500万円世帯の食費に占める割合を17.9%とすると、895000円の年間食費となる。

 これを消費税8%を含めた食費とすると、税抜きで約83万円となる。消費税の収入見込額等の勘案は無視しておおまかに計算すると、この83万円に対して10分の2に相当する額16万6000円を基礎として計算するということなのだろうか。

 消費税抜きで年間食費83万円に掛かる消費税8%から10%へ増税の2%をかけると16600円。

 給付付き税額控除額がこの16600円を確実に下回らないという保証はあるのだろうか。

 ないはずだ。統計から出した消費支出の額はあくまでも平均値であって、平均を下回る世帯には問題ないとしても、上まわる世帯は常に余分に払うことになる。

 このことを予想してある程度余裕を持たせて余分に基礎計算することにしても、軽減税率のように余分な財源が掛かることにならなくても、平均値を上回る世帯は更に余分に利益を得ることになるが、平均値をかなり下回る世帯は支払った消費税の2%に達しないケースも出てくることもある。

 なぜ国民は税収が減ると分かっていて給付付き税額控除よりも軽減税率を選択するのか民主党も維新の党も真に理解しているのだろうか。国民の側ではなく、単に国家の立場から税収の面だけを考えているのではないだろうか。

 だから、年収世帯別にいくらの給付付き税額控除となるのか、説明のない不誠実・不親切を犯すことになる。

 2015年10月当時の世論調査は軽減税率導入に約8割前後が賛成し、反対は20%前後だった。公明党はこの8割の賛成を根拠に軽減税率の導入を主張したはずだ。

 だが、民主党、その他の野党が軽減税率では財源が兆円単位になること、その分の国の税収が減ること、高額所得者になる程に軽減税率の対象となる食料品に対する消費が低所得者の消費よりも高額で、軽減税率導入によって高額所得者になる程、より利益を得て、その層を優遇することになること等を理由に国会等で軽減税率導入に反対しことが功を奏したのか、最近は賛成が減っている。

 2016年1月のNHKの世論調査。

 軽減税率

 「大いに評価する」5%
 「ある程度評価する」36%

 「あまり評価しない」37%
 「全く評価しない」15%

 評価しないが50%を超えている。

 但し、問いが〈政府は、消費税の税率を8%に据え置く「軽減税率」を、「酒類と外食を除いた飲食料品」、それに「定期購読の新聞」を対象に導入する方針ですが、この方針への評価を聞いたところ〉となっていて、軽減税率導入の対象品目の範囲――線引きがこうなったことへの賛否なのか、軽減税率導入そのものへの賛否なのか明確ではない。

 「毎日jp」が同じ2016年1月の世論調査でより明快に聞いている。

 「酒類と外食を除く食料品に軽減税率を導入することに関して」

 「評価する」52%
 「評価しない」40%

 賛成が上回っているが、かつての8割の勢いはない。

 昨年2015年10月の産経新聞とFNNの合同世論調査。

 「消費税率10%引き上時の軽減税率の導入に関して」

 「賛成」60・6%
 「反対」33・3%

 「軽減税率の対象品目」

 「酒類を除く飲食料品」63・3%
 「生鮮食品のみ」22・6%
 「精米のみ」6・4%

 線引きについてもそれぞれに意見が異なる。

 全体的に見ると、現在の段階でも軽減税率導入は賛成が上回っている。

 賛成と反対が例え拮抗することになったとしても、軽減税率導入の賛成はより所得の低い生活者であり、反対は軽減税率を導入しなくても生活に困らないより所得の高い生活者と見なければならない。

 なぜならより所得の低い生活者程、1円でも安い食料品を手に入れるべくスーパーの特売日を狙ったり、普段利用するスーパーではなく、少しぐらい遠方でも買い求めにいく生活をしているからだ。

 つまりより所得の低い生活者程、1円の差が切実な生活実感となっている。だが、軽減税率導入によって政府財源を兆円単位で必要とすることになり、そのことが財政健全化や社会保障費に影響する可能性は頭では理解できても、生活実感としの切実さは1円の差殆どには感じない。より所得の低い生活者にとって日々の生活が最大の利害だからである。

 そのような切実な生活実感をある程度確実に和らげてくれるのがその場で2%分の消費税が免除される軽減税率であり、今のところ民主党からも維新の党からも懇切丁寧な具体的金額の説明がない以上、実際に支払った消費税2%分が戻ってくるのかどうかも不透明な民維主張の給付付き税額控除ではないはずだ。

 いわば消費税の逆進性対策はより所得の低い生活者を主として対象としているはずでありながら、そのような対象者が給付付き税額控除に関して不安定で居心地の悪い宙ぶらりんの状態に置かれている。

 民主党と維新の党が給付付き税額控除導入に関する世論調査で軽減税率導入よりも賛成を多く得たいと思ったなら、より所得の低い生活者とって1円の差が切実な生活実感となっている民意を汲みとって、軽減税率導入に劣らない、確実で目に見える負担軽減となることを見せなければならない。

 今のままの不誠実・不親切な状態で給付付き税額控除導入を推し進めるようなら、参院選で少なくとも多数派を形成する中低所得者の1票を得ることは難しい。

 もう一度言う、中低所得者にとって日々の生活が最大の利害となっていて、1円の差を切実な生活実感とさせている。このことを自覚して政策を進めなければならない。

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安倍晋三の消費税10%増税延期条件の後退は自身の発言と自身の経済対策に対する裏切り

2016-02-28 10:36:25 | 政治

 安倍晋三は2017年4月1日の消費税10%増税予定を覆す条件として今まで国会答弁等で「リーマン・ショックや大震災のような重大な事態」を挙げてきたが、その条件を後退させる発言を見せ始めたことから、与党内では2017年4月1日の10%への増税を見送るのではないかとの見方が出ていると、「YOMIURI ONLINE」記事が伝えている。    

 1月10日エントリーの当「ブログ」では、中国及び世界的な景気減速、さらに増税をデフレ逆行要因として参院選前に延期を決定して、選挙にも関係してくる増税によるアベノミクスへの影響を修正、その修正を衆院選にまで広げて衆参同日選に走るのではないかといった趣旨のことを書いていたから、安倍晋三が例え発言の軌道修正を微妙に図ったとしても驚かない。

 上記記事は二つの発言を伝えている。最初は2月24日の衆院財務金融委員会。

 安倍晋三「世界経済の大幅な収縮が実際に起きているかなど、専門的見地からの分析を踏まえ、その時の政治判断で決める」

 次は2月26日の衆院総務委員会。
 
 安倍晋三「株価、市場変動のみでなく、実体経済にどういう影響が出ているかも含め考えないといけない」

 「リーマン・ショックや大震災のような重大な事態」を待たない状況での増税の延期条件についての発言となっていて、明らかに従来の発言から後退している。

 記事は、〈年初から急激な円高、株安が進み、世界経済が不安定になる中、再増税を既定路線にしたくないとの思いが強まっているようだ。〉と解説している。そして自民党中堅の声を伝えている。

 自民党中堅の声「首相は軌道修正を図っている。再増税を見送る可能性が高まっているのではないか」

 記事は消費税増税延期を予見する根拠のさらなる一つとして安倍晋三が自身の周辺に“半ば悔やむように”語ったとする発言を伝えている。

 安倍晋三「消費税を8%に引き上げたら景気が冷え込んだ。上げなければ、税収は今頃もっと増えていただろう」

 つまり消費税5%を予定通り2014年4月1日から8%に引き上げたことを後悔する発言となっている。

 だが、この発言は自身の発言と自身の経済対策に対する裏切りとなる。

 2013年10月21日の衆院予算委員会。

 安倍晋三「消費税引き上げを判断いたしましたが、消費税を引き上げるということは、今の経済状況がなければ、これは引き上げることにはつながらなかったと思いますよ。ですから、この我々の政策によって消費税を引き上げることができる状況は生まれてきたということでありまして、しかし、それを(消費税を引き上げることができる状況を)生み出すためにやったわけではありませんよ。(我々の政策によって)結果としてはそうなってきたということではないだろうか、このように思います」――

 要するに「消費税を引き上げることができる状況生み出すために」アベノミクス3本の矢の経済政策を打ってきたわけではない、アベノミクス3本の矢の経済政策を実行した結果、経済が回復し、「消費税を引き上げることができる状況は生まれてきた」のだと消費税増税の経緯を解説しているが、この解説は自身のアベノミクスに対する絶大な信頼に裏打ちされている。

 もし2017年4月1日からの消費税8%から10%への増税を延期するようなら、自身のアベノミクスに絶大な信頼を置いた自らの発言を裏切ることになる。

 勿論、中国の景気減速や世界経済の不透明感といった外的要因がアベノミクスに悪影響を与える可能性を考慮しなければならないが、これらの外的要因を以てしても、「日本経済のファンダメンタルズはしっかりしており、経済の好循環は確実に生まれています」と国会その他で発言して、アベノミクスに置いている信頼に関して外的要因などモノともしない姿勢を崩していない。

 この信頼は一国のリーダーである以上、先を見通した予定調和でなければならない。先を見通した結果が、「リーマン・ショックや大震災のような重大な事態」を延期条件としたということであろう。

 このことを裏返すと、アベノミクへの信頼が、それが絶大であるがために、「リーマン・ショックや大震災のような重大な事態」に延期条件を置くことになったということであろう。

 言い換えると、「リーマン・ショックや大震災のような重大な事態」が発生しない限り、アベノミクスは悪影響を受けることはないと信頼を置く程に惚れ込んでいた。

 絶大な信頼を置き、自己陶酔的に惚れ込んでいたにも関わらず、「リーマン・ショックや大震災のような重大な事態」を待つまでもなく、実際には現在の外的要因程度でそれが怪しくなってきた。

 ということなら、アベノミクス自体が絶大な信頼を置く程の価値はなかった、アベノミクスを見誤ったことになる。

 つまり安倍晋三の政策自体を見誤ったことになる。 

 安倍晋三は消費税増税対応の経済対策を打っている。左側に画像を挿入しておいたが、安倍政権3年間で60兆円近くになる。2014年4月の消費税率8%への引き上げを決定した2013年1日の閣議の後の記者会見でも、5兆円規模の消費税増税対応の経済対策の策定を発表している。

 安倍政権3年間で公共事業関係費だけで、2014年5.3兆円、2015年5.6兆円、2016年6兆円と17兆円も支出している。

 つまり「リーマン・ショックや大震災のような重大な事態」には揺るぐことになるかもしれないが、それ以外の経済変動には大丈夫だと見た各種経済対策であったはずだし、そういった経済対策――アベノミクスでなければならなかった。

 ところがその基準自体に揺るぎを見せた。どう見ても、消費税10%増税延期条件の後退は自身の発言と自身の経済対策に対する裏切り以外の何ものでもない。

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読売新聞2016年2月世論調査にも現れている格差ミクスだからこそ成り立つアベノミクス

2016-02-27 09:32:13 | 政治

 2016年2月に行った読売新聞の世論調査   

 「アベノミクス3年余の経済政策」

 「評価しない」57%
 「評価する」42%

 「評価しない理由」(複数回答)

 「収入が増えない」60%

 評価する理由((複数回答)
 
 「大企業を中心に業績が改善した」44%

 「今後の景気回復期待可能性」

 「期待できる」34%
 「期待できない」65%

 「景気回復の実感」

 「実感していない」84%(以上)

 「アベノミクス3年余の経済政策」の評価理由が「大企業を中心に業績が改善した」の44%がトップ。反対に非評価理由が「収入が増えない」の60%がトップ。

 前者は主として大企業中心の業績改善から利益を受けている調査回答者の評価であって、後者は大企業中心の業績改善とは無縁で、個人的にも収入の点で何ら利益を受けていない回答者の非評価であろう。

 既にここでアベノミクスが格差を構造としていることが露わにされている。アベノミクスによる富の分配が大企業中心となっていて、当然、そのお裾分けを得ることができるのは高額所得者や中の上の中間所得者中心で、大多数を占める中の中以下の中間所得者や低所得者にはお裾分けがないという上下格差の構造である。

 だからこそ、「景気回復の実感」を持つことができない回答者が84%も占めることになった。

 平成25年1月1日から12月31日までの1年間の所得を調べた《平成26 年 国民生活基礎調査の概況》厚労省)から、「所得金額階級別世帯数の相対度数分布」を見てみる。   

 世帯所得の〈中央値(所得を低いものから高いものへと順に並べて2等分する境界値)は415 万円であり、平均所得金額(528 万9 千円)以下の割合は61.2%となっている。〉と出ている。

 いわば国民の半分以上、61.2%が平均所得以下で暮らしている。

 景気を「実感していない」84%をこの分布に機械的にはめるてみると、800~900万円所得世帯までとなる。世帯所得900万円以下が大まかにではなるが、景気を実感していないと見ることも可能である

 つまり800~900万円所得世帯に迄アベノミクスの恩恵が届いていないと解釈することもできる。少なくとも平均所得金額(528 万9 千円)以下の世帯となると、とてもとてもアベノミクスの恩恵どころか、何も変わらない、何も見えないといったところが実情だとは確実に言うことができる。

 でなければ、景気を「実感していない」の84%という数字は出てこない。

 このようにアベノミクスの恩恵は上下二極化の格差を生じさせている。下の層だけではなく、上の層に対しても何ら恩恵がないということなら、アベノミクスはどの層に対しても平等に失敗だと誰もが断言できるが、上の層は株高や円安によって確実に富の分配を受け、多大な恩恵に浴しているということは、格差ミクスだからこそ成り立っているアベノミクスということにせざるを得ない。

 異次元の金融緩和にしても実効法人税の減税にしても、景気回復の手段に賃金の上昇よりも株価上昇による資産効果により価値を見ていることも、アベノミクスによる富の分配、あるいはアベノミクスの恩恵の対象を主として上の層に置いているからこそであり、世論調査の結果を待つまでもなく、このことが既に証明している格差ミクスが成立させているアベノミクスということであるはずである。

 格差を散々作っておいて、今になって慌てて格差解消の手段として同一労働・同一賃金を掲げ始めたが、ブログに何度か書いているようにアベノミクスが構造として内部に抱え込んでいる格差形成作用に対して否応もなしに抑制効果として働く自己矛盾を生じせしめることになるだろうから、同一労働・同一賃金の実現とアベノミクスの成功の両方を取ることは不可能で、では、どっちを取るかとなったとき、アベノミクスの成功を取った場合、参議院選挙勝利目当てのスローガンで終わる確率は高くなる。

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安倍晋三のCLSAジャパンフォーラム講演、同一労働・同一賃金はアベノミクスに逆噴射ロケットの取り付け

2016-02-26 10:46:13 | 政治

 安倍晋三が2月25日(2016年)、「CLSAジャパンフォーラム2016」(機関投資家向け説明会)に出席、講演している。 

 内外の機関投資家に日本への投資を呼びかける集まりだから大風呂敷になっても仕方がないという向きもあるかもしれないが、国会でアベノミクスの成果を誇示しているときと同じ喋りなのだから、国会答弁の大風呂敷を引きずった講演での大風呂敷ということになって、投資を呼びかける集まりだから特別に大風呂敷ということではないようだ。

 どこで喋ろうとも、都合のいい統計のみを出し、都合の悪い統計は出さないマジシャン振りに何ら変わりはない。

 冒頭、中国を始めとする新興国の景気減速への懸念等を要因とした世界経済の不透明感に触れているが、「日本経済のファンダメンタルズはしっかりしており、経済の好循環は確実に生まれています」と、世界経済の不透明感に影響されないアベノミクスの力強さを確約してみせた。

 日本経済は小舟を脱して、親船に成長しているとの宣言でもある。少しぐらいの定員オーバーでも、傾くことはあるまい。

 経済成長率・物価上昇率・失業率・国際収支等の一国の経済状態を判断するための基礎的条件である「日本経済のファンダメンタルズはしっかりしている」――。

 だが、内閣府が2016年2月15日発表の「2015年10─12月期国民所得統計1次速報」によると、実質国内総生産(GDP)は前期比マイナス0.4%、年率換算でマイナス1.4%の2四半期ぶりのマイナス成長となっている。これは市場の予測を超える景気減速だとマスコミは伝えている。

 2月15日に内閣府がGDP減速の統計を発表し、安倍晋三が2月25日(2016年)の講演で、「日本経済のファンダメンタルズはしっかりしている」と言う。

 このGDPマイナスの要因は個人消費の大幅な落ち込みだと言う。世界経済の不透明感に影響されないアベノミクスの力強さを確約していながら、あるいは「日本企業の収益は、史上最高の水準に達しています。その企業収益は、着実に雇用や賃金に回っています。就業者数は110万人以上増え、賃上げ率は、2年連続で大幅に上昇しました。失業者は60万人程度減り、失業率は3.3%と18年ぶりの低水準、有効求人倍率は24年ぶりの高水準であり、タイトな労働市場が続いています」と国会答弁や記者会見等と同じことを言って日本経済のファンダメンタルズの堅牢性を保証しながら、これらのアベノミクス成果が個人消費には反映されない。

 個人消費に反映されることのない堅牢な経済のファンダメンタルズとは何を意味するのだろうか。企業収益も反映されない。110万人増の就業者数も反映されない。賃上げも反映されない。失業者減も反映されない。高水準な有効求人倍率も反映されない。

 これがアベノミクスだと言うしかない。

 人件費にしても、製品単価にしても、エネルギーにしても、「より安く」追求で新興国に生産地を展開するデフレ型経済成長には限界があり、本籍国での「より良い」に挑戦するイノベーション型経済成長への転換の必要性を説いているが、イノベーション(技術革新)は労働生産性に関係していく。労働生産性に関係しないイノベーションは経済成長への足がかりとはなり得ない。

 《日本の生産性の動向2014年版 》日本生産性本部)に次のような記述がある。 

 〈2013年(暦年ベース)の日本の労働生産性は73、270ドル、OECD加盟34力国の中では第22位。順位は前年と変わらず、主要先進7カ国では1994年から20年連続で最下位となっている。〉

 製造業等の現場ではイノベーションによる機械化によって労働生産性を上げているだろうが、全体で見ると、〈主要先進7カ国では1994年から20年連続で最下位となっている。〉

 いわばイノベーションが追いつかない状況にある。にも関わらず、「日本は21世紀型(=イノベーション型)の経済ルールを広げるため、リーダーシップを発揮してまいります」と、日本でできていないことを世界でその教師になろうとしている。

 大風呂敷と解釈しなければ、日本の労働生産性に関わる情報に無知としか言いようがなくなる。

 また、「これまで、ダボス会議など海外の様々な場において『人口が減少する日本に未来はないのではないか』との質問を受けました。

 皆さんの御懸念は、私も、よく理解しています。

 しかしながら、高い教育を受け、多くのポテンシャルを秘めた女性や、元気で意欲にあふれ、豊かな経験と知恵を持っている高齢者が、日本には、たくさんいます」

 だから、少子高齢化社会となったとしても、日本の経済は大丈夫だと保証した。

 2015年の男子の大学進学率は55.4%、女子は47.4%。それ程の差はない。高い教育を受けているということは労働生産性につながっていかなければならない。如何に効率良く働くか、そのために如何に想像力を発揮していくか、高い教育を労働の機能化に役立てていかなければならない。

 だが、日本の労働生産性が低いということは日本の高い教育が労働生産性につなげるべきポテンシャル(潜在的な能力)となっていないことを意味することになる。

 と言うことは、従来の教育改革が改革の役目を果たしていなかった。当然、今騒いでいる教育改革も、その実効性の保証は確実視できないことになる。

 少なくとも安倍晋三が講演で言っていることと日本が現在置かれている社会の実情とはかけ離れているということだけは間違いない。

 だから、大風呂敷となる。

 安倍晋三は「正規雇用と非正規雇用の壁を取り払います」と言って、同一労働・同一賃金の導入を確約した。

 安倍晋三は自分が何を意味することを口にしているのか気づいていないらしい。格差が一国の経済や世界の経済を活性化させていく原動力であり、そのように構造化されているのであって、安倍晋三はアベノミクスに気づかないままにブレーキを掛けている。

 〈安倍政権下で進んだ株高で、富裕層が増えている。預貯金や株式、投資信託などの金融資産を1億円以上持っている「富裕層世帯」は、2013年に初めて100万世帯を超えた。一方で、資産を持たない「ゼロ世帯」も3割と高止まりしている。〉と2014年11月28日付の「asahi.com」が伝えていた。

 この「100万世帯」は50世帯に1世帯の割合だそうだ。

 50世帯のうちの1世帯がいくら1億円以上の資産を持っていても、残り49世帯の消費活動が活発化しないことには国全体の個人消費額は伸びない。これが日本の経済の現状であり、この現状は格差の現状でもある。

 アメリカでは2009~2010年の金融危機後の時代、家計を平均した実質所得が2%しか伸びていないのに対して上位1%の実質所得は12%増え、1%の「勝ち組」が手に入れた所得の割合は全体の93%に達していると、「東洋経済オンライン」(2013年06月12日)が伝えている。

 この格差が世界最強のアメリカの国力をつくり出している。

 富を平等に配分し、平均化したら、より平等な社会は実現できても、その平等に伴って企業の経営力は弱まり、弱まれば、国力は殺がれていく。安倍晋三はその覚悟までして同一労働・同一賃金の導入を唱えているのだろうか。

 そんなことはあるまい。何しろアベノミクスは格差ミクスを本質的な構造としているのだから、格差こそがアベノミクスの推進力であって、同一労働・同一賃金の導入はアベノミクスに対して逆噴射ロケットを取り付けるようなものだからである。

 安倍晋三がアベノミクスは格差ミクスだと自覚しない限り、何を言っても大風呂敷になりかねない。

 
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安倍政権は政府発見資料を根拠に従軍慰安婦強制連行を否定するなら、どのような発見資料か公表せよ

2016-02-25 09:13:32 | Weblog



      「生活の党と山本太郎となかまたち」

      《2月23日小沢代表・山本代表定例記者会見動画 党HP掲載ご案内》  
   
      他にも先週19日の玉城幹事長による安保法制廃止法案の提出や、20日の社民党大会での小沢
      代表挨拶、今週22日の玉城幹事長の衆議院選挙制度に関するぶら下がり、4月の補欠選挙の
      推薦決定などの記事も掲載しました。合わせてご覧ください。   

 ――同時に元従軍慰安婦の証言を発見資料から除外している根拠ある理由を明らかにせよ――

 日本政府代表の杉山晋輔外務省政務担当外務審議官が2月16日(2016年)午後(日本時間同日夜)、ジュネーブの国連欧州本部で開かれた女子差別撤廃委員会の対日審査で慰安婦問題に関して1990年代の政府事実調査では「発見した資料の中には軍や官憲によるいわゆる強制連行を確認できるものはなかった」こと、朝日新聞が従軍慰安婦狩りをしたと捏造した「吉田証言」に基づいて誤報したことが国際社会に大きな影響を与えたこと、「慰安婦20万人」説は朝日新聞が女子挺身隊を混同したためで、朝日新聞もそのことを認め、具体的な裏付けがない数字であることなどの説明を行ったことに対して朝日新聞社2月18日、「根拠を示さない発言」だとして外務省に文書で遺憾を表明している。

 この文書に対して外相の岸田文雄が2月23日の記者会見で杉山審議官の説明に「問題はなかった」との認識を示したそうだ。

 参考のために関連記事をここに示しておく。

 《慰安婦 国連への説明問題ない…朝日「遺憾」文書に外相》((毎日jp/2016年2月23日 23時17分)   

 《国連委で慰安婦報道言及、外務省に申し入れ 朝日新聞社》asahi.com/2016年2月19日05時02分)  

 1990年代の政府事実調査とは1993年8月4日発表の「河野談話」作成のための事実調査を指す。2014年の安倍内閣による「河野談話」を抹消したい願望からの「河野談話作成検証」(平成26年6月20日発表)によると、〈徴用の仕方に関し,強制的に行われたのか,あるいは騙して行われたのかを裏付ける資料は調査で出てこなかった〉こと、〈河野談話の根拠とされる元慰安婦の聞き取り調査結果について,裏付け調査は行っていない。〉ことを以て「河野談話」が認めている日本軍による従軍慰安婦強制連行説からその信憑性を著しく損なうことに成功している。 

 先ず後者の説明自体の信憑性を見てみる。

 上記報告書は1993年8月4日の談話発表時の当時の河野洋平官房長官の記者会見での発言を要約している。

 〈「強制性」の認識に関し,河野官房長官は同日行われた記者会見に際し,今回の調査結果について,強制連行の事実があったという認識なのかと(記者から)問われ,「そういう事実があったと。結構です」と述べている。また,「強制」という言葉が慰安婦の募集の文脈ではなく慰安所の生活の記述で使われている点につき指摘されると,河野官房長官は「『甘言,強圧による等,本人たちの意思に反して集められた』というふうに書いてあるんです。意思に反して集められたというのはどういう意味か。お分かりだと思います」と述べた。

 さらに,公文書で強制連行を裏付ける記述は見つからなかったのかと問われ,河野官房長官は,「強制ということの中には,物理的な強制もあるし,精神的な強制というのもある」,精神的な強制という点では,「官憲側の記録に残るというものではない部分が多い」,「そういうものが有ったか無かったかということも十分調査を」し,元従軍慰安婦から聞いた話や証言集にある証言,元慰安所経営者等側の話も聞いたとした上で,「いずれにしても,ここに書きましたように,ご本人の意思に反して,連れられたという事例が数多くある」,「集められた後の生活についても,本人の意思が認められない状況があったということも調査の中ではっきりしております」と述べた。〉――

 公文書で強制連行を裏付ける記述は見つからなかった点については「官憲側の記録に残るというものではない部分が多い」とする一方で、元従軍慰安婦の証言、元慰安所経営者等側の証言を以って強制性を認めたとしている。

 つまり「河野談話」は元従軍慰安婦、その他からの聞き取り調査による証言を以って強制性を認め、裏付け調査は行わなかったことになる。

 だが、1990年代調査から1945年敗戦以前の45年以上も前となる裏付け調査となると、当時の中高年者は生存者も少なく、生存していたとしても、自分自身についての過去の記憶は残っていたとしても、他者に関する記憶がハッキリと残っているかは定かではない。簡単にいくとは思えない聞き取り調査だったはずだ。

 それを補うのが「河野談話」発表以後に出版されることになったインドネシアの元従軍慰安婦の証言やオランダの元従軍慰安婦の証言を集めた書物であるはずだが、安倍政権は2007年3月16日閣議決定の政府答弁書の、1990年代の政府調査で明らかになった〈政府が発見した資料の中には、軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述も見当たらなかったところである。〉と、このこと一つの根拠で日本軍の従軍慰安婦強制連行説を否定している。

 この根拠を絶対としているなら、1993年8月4日の「河野談話」発表前なのか、発表後なのか、同1993年8月、当時の駐インドネシア公使高須幸雄・国連事務次長がインドネシアで2001年に出版された、日本軍に従軍慰安婦として強制連行され、敗戦と同時に棄てられた少女を含む若いインドネシア人女性の証言を集めたプラムディア・アナンタ・トゥール著『日本軍に棄てられた少女たち――インドネシアの慰安婦悲話』が出版されたなら両国関係に影響が出るとの懸念をインドネシア側に伝える必要はなかったはずである。

 だが、出版妨害(=言論弾圧)となりかねない懸念を伝えた。当時のスハルト大統領の国内独立運動弾圧、民主化運動活動家の拉致・拷問、体制批判のマスコミ弾圧等々の人権侵害を平気で行っていた独裁体制に期待したのかもしれない。

 この懸念伝達は政府発見資料を以って強制連行否定とする絶対的根拠と矛盾する。

 だが、岸田文雄が杉山審議官の説明に「問題はなかった」と、政府発見資料を以って強制連行否定の絶対的根拠とし続ける以上、それがどのような資料か、公表すべきだろう。

 公表されない限り、強制連行否定の絶対的根拠となり得るのかどうかの判断もできない。

 と同時に韓国やインドネシアや台湾、フィリピン等の元従軍慰安婦の証言集、オランダ人元従軍慰安婦が自らの過酷・悲惨な体験を語っている出版物をなぜ政府資料の中に入れないのかの理由も明らかにして、国民が強制連行有無を判断できる材料を提供すべきだろう。

 安倍政権が〈政府が発見した資料の中には、軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述は見当たらなかったとバカの一つ覚えで言っているだけでは埒が明かない。

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安倍晋三の「仮定の話」として答えない正当性と誠実性を国会答弁・記者会見、その他から見てみる

2016-02-23 10:12:52 | 政治

 安倍晋三は国会や記者会見では、「仮定の質問には答えられない」とか、「仮定の話には答えられない」と答弁している。このことを決まりとしていることになる。このように答弁した例をいくつか挙げてみる。文飾は当方。

 2013年3月15日、首相官邸でのTPP交渉参加決定記者会見。

 古田東京新聞・中日新聞記者「こちらが聞いている限りでは、カナダ、メキシコが交渉参加を決める際には、今の合意したことを引っくり返せないというほかにも、例えば交渉を打ち切る権利は、最初の参加を決めた9カ国にしか認められないといった不利な条件も受け入れさせられたというふうに聞いています。

 総理は、こういう不利な条件に関しては、参加をすることを重視して今後受け入れざるを得ないというふうにお考えになっているということなのでしょうか。今後そういう条件が提示された場合に、政府としてどのような対応をなされるのか、そのお考えをお聞かせください」

 安倍晋三「報道にて、メキシコとカナダに送付されたとされているような念書については、我が国は受け取っていません。ですから、それがどうなのかという仮定の質問にはお答えすることはできませんが、可能な限り、早期に正規に交渉に参加をして、強い交渉力をもって、我々は国益を守っていきたいと考えていますし、何と言っても、世界第3位の経済力を持つ日本です。その存在感は大きなものがあるはずでありますから、我々はこの力をフルに活用していきたいと考えています」

 もしそれが事実としたらという方面からの“仮定の話”はしない。例えば、「我が国は受け取っていないが、仮にそういう条件はつけられたとしたら、断固反対する」とか、「それが事実と仮定したなら、とても受け入れることはできないし、受け入れることはしない」といった事実と仮定した場合の方面からの答弁はしない。「仮定の質問にはお答えすることはできない」と、答えないことを優先させている。

 これは誠実な答弁ということができるだろうか。

 最高裁が2013年11月20日、2013年7月の参院選の「1票の格差」は違憲状態と判決を下した。違憲状態の判決は1992年参院選挙と2010年参院選挙に引き続いて3度目であった。

 この判決を約8カ月遡る2013年4月1日の衆院予算委員会。当時みんなの党衆議院議員だった三谷英弘(2014年12月 第47回衆院選で無所属で立候補、落選している)が次のように質問している。

 三谷英弘「(一票の格差問題について)一連の高裁判決というものが下される前に、私は政権に対して質問主意書を提出いたしました。どういう中身かといいますと、仮にこの衆議院の選挙無効判決が出た場合に、どのように対応するのかという内容でございました。それに対して、この回答というのは、一文、仮定の質問には答えられない、これだけでした」

 この委員会には安倍晋三は出席していない。だが、三谷英弘議員の質問主意書に対する政府答弁書で安倍内閣は「仮定の質問には答えられない」と答弁し、その答弁を閣議決定したのである。

 既に2回、「違憲状態」だと最高裁の判決が下っている。当然「選挙無効」の判決がなされる場合を予測して、そのことに備えるのが政府の危機管理である。どういった危機管理を想定しているか丁寧に答えるのが質問者と同時に国民に対する誠実な態度であるはずだが、「仮定の質問には答えられない」を正当性ある答弁だとした。

 つまり誠実な態度を取らなかった。

 2013年10月21日の衆院予算委員会。

 古河元久民主義議員「総理にちょっとお伺いしたいんですが、もし去年、ああいう、社会保障・税一体改革が合意に至らなくて、消費税の引き上げも決めないような状況であったとして、それでも総理は、今回のような異次元の金融緩和、これを日銀に対して要請いたしましたか」

 安倍晋三「今そういう仮定の話をしても余り意味がない話なんですが、デフレから脱却する上においては、どちらにしろ私は三本の矢の政策をやっておりました」

 古川元久はつまらない質問をしている。歴史は日銀の異次元の金融緩和へと回転したのであり、既に消費税増税の歴史の扉を開いているのである。但し安倍晋三は、「例えそういう状況であっても、デフレ脱却を目指すために異次元の金融緩和を日銀に対して要請していたでしょう」と内訳話をしてもいいはずだし、そう答えてこそ、質問に対する誠実な態度でもあるはずである。

 だが、安倍晋三は「仮定の話をしても余り意味がない話」だと不誠実にも一蹴してしまった。

 2014年3月20日参院予算委員会

 福山哲郎民主党議員「(新安保法制の)10数本例えば仮に法律が出てくるとなって、これからいつ出てくるか分からない報告書((2014年5月15日提出の「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」報告書のこと)に、与党の議論があって、国会で議論をして、12月の(日米)ガイドライン(の見直し)まで、これは時系列的に総理は間に合うとお考えですか、反映させるとしたら」

 安倍晋三「これは仮定の質問ですから今お答えはできませんが、いずれにいたしましても、先ずは安保法制懇の結論が出ることを待ちたいと思っておりますし、そして、ここでの議論はまさにこれはオープンにされるわけでございますし……(発言する者あり)いや、結論が出れば当然オープンになるわけでありますし、出た結論は、お約束しますが、オープンにするということを、今別のことをおっしゃっているんだと思いますが、出た結論についてはオープンにするわけでありますし、そして、それを法制局を中心に議論をしながら与党と更に協議を重ねた結果に於いて政府として意思を決定し閣議決定をしていくと、こういうことになっていくわけであります」

 2014年12月下旬に入って、2014年12月末までと期限を区切って予定していた日米ガイドライン見直しは2015年6月までと半年間延期している。野党は2014年3月の時点で既に見直しのスケジュールが2014年12月末までとしていることに窮屈だと見ていた。

 対して安倍晋三はいずれ報告書がオープンになって、報告書を受けた国会の議論もオープンになるとの答弁のすり替えで窮屈であることを質問者に対しても国民に対しても正直に説明せず、「仮定の質問」に貶めて、不誠実にも逆に隠している。

 この「仮定の質問」とした答弁に正当性を与えることはできないが、安倍晋三自身はそう答弁したことの正当性を些かも疑っていないだろうし、自信が不誠実な答弁をしたことも疑っていないに違いない。

 2016年2月3日衆院予算委員会。

 岡田克也「腑に落ちないことが色々とあるんですが、一番違和感を感じたのは甘利大臣が大臣室で50万円を受け取った。直接受け取ったわけではありませんが、後で紙袋を確認したら、中にのし袋に入っていたということですが、この話、ちょっと分からないなあというふうに聞いておりました。

 甘利大臣の話を一般論として聞くのですが、もし総理がご存知のない、全く面識のない人と秘書の紹介でお会いして、もし総理がご存じない、全く面識のない人を秘書の紹介でお会いして、3、40分お話をして、その方が菓子折りを置いていったと。のし袋に入れた50万円が入っていたと。

 そういう場合に総理、これ、政治献金というふうに思われますか」

 安倍晋三「私はそういう経験がございませんし、仮定のお話にお答えすることは差し控えさせて頂きたいと思いますが、大切なことはですね、政治資金規正法に則ってですね、正しく対処していくことではないかと私は思います」

 岡田克也は秘書の紹介で面識のない人物が3、40分話をして、菓子折りを置いていき、その中に50万円入りのし袋が入っていたと甘利明が1月28日の記者会見で述べた事実を例に挙げて安倍晋三自身は一般論として政治献金だと解釈できるか否かを尋ねた。

 だが、安倍晋三は甘利明が述べた事実を無視して自分にはそういう経験がないからと、一般論での問いに一般論では答えずに自身の個人問題として答え、自身にとっては「仮定の話」だから、答えることはできないと逃げた。

 甘利明が述べた事実を一般論として政治献金と解釈し得るかどうか判断することすらしなかった。一般的に政治献金と解釈することは難しいとでも言ったなら、甘利明の立場を悪くするから、言えなかったのだろうが、しかしそのためのレトリックに述べた事実を「仮定の話」だとゴマカシをしたのである。

 不誠実極まりないが、安倍晋三自身にとっては「仮定の話」とすることに正当性を疑う余地なく与えているのだろう。だから、そのように言うことができる。

 安倍晋三が2月20日(2016年)、辛坊治郎司会のニッポン放送ラジオ番組に出演、以下のような発言をしたと、「産経ニュース」が伝えている。 

 司会者辛坊治郎の発言は解説文となっているから、分かりやすいように会話体に直した。

 辛坊治郎「もし民主党の政治家であればどのような政策を掲げて支持率を上げるのか」

 安倍晋三「民主党の政治家なら、政治家を辞めるという選択肢もある」

 辛坊治郎「民主党の国会審議についてどう思うか」

 安倍晋三「民主党全体の質問を見ていると、段々共産党と似てきた」

 辛坊治郎「岡田克也代表が元自民党議員だったが」

 安倍晋三「今は随分変わったのかな」(以上)

 辛坊治郎の「もし民主党の政治家であれば」の問いかけはどう転んでも「仮定の話」である。当然、今までの例から言うと、「仮定の話にはお答えできません」と答えなければならないはずだが、そうは答えずに仮定の質問・仮定の話にしっかりと答えている。

 しかもとても民主党の議員なんてやっていられないといった貶(おとし)める趣旨の不誠実な発言となっている。

 与党に対して議席数で劣勢に立たされているとは言え、野党第一党の公党に対してバカにするような不誠実なニュアンスの言葉遣いまで使って「仮定の話」に答えている以上、今後国会や記者会見で「仮定の話」として明確な発言を避けることの正当性や誠実性を厳しく問われなければならないし、もし少しでも正当性や誠実性が認めることができなければ、厳しく糾弾されなければならないし、安倍晋三自身も、正当性と誠実性あるとすることができるかどうか厳格に判断してから、この言葉を使わなければならないはずだ。

 余りにも「仮定の質問、あるいは仮定の話には答えることはできません」という正当性も誠実性も感じられないままの発言が罷り通っている。

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自衛隊制服組の対背広組への防衛大臣補佐権限の大幅移譲要求は現場知識主義に基づいた文民統制への脅威

2016-02-22 10:50:43 | 政治

 2月22日(2016年)付ロイター記事、《制服組自衛官が権限大幅移譲要求》なる記事を配信している。全文参考引用してみる。   

 〈集団的自衛権行使を含み、今年3月施行される安全保障関連法を初めて全面的に反映させる自衛隊最高レベルの作戦計画策定に当たり、防衛省内で制服組自衛官を中心とする統合幕僚監部が、背広組防衛官僚が中心の内部部局(内局)に権限の大幅移譲を要求していることが21日、複数の防衛省・自衛隊関係者の証言で分かった。内局は拒否、調整が続いている。

 昨年6月の改正防衛省設置法成立で防衛省は、防衛官僚が自衛官より優位な立場から大臣を補佐する「文官統制」制度を全廃、内局と統幕が対等になった。統幕の要求が認められれば、軍事専門家である制服組主導となる可能性もあり、危惧する声は多い。〉(以上)

 改正前の防衛省設置法第12条は次のような規定となっている。


 (官房長及び局長と幕僚長との関係)

 第12条 官房長及び局長は、その所掌事務に関し、次の事項について防衛大臣を補佐するものとする。

 一  陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊又は統合幕僚監部に関する各般の方針及び基本的な実施計画の作成について防衛大臣の行う統合
    幕僚長、陸上幕僚長、海上幕僚長又は航空幕僚長(以下「幕僚長」という。)に対する指示

 二  陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊又は統合幕僚監部に関する事項に関して幕僚長の作成した方針及び基本的な実施計画について防衛大臣の行う承認

 三  陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊又は統合幕僚監部に関し防衛大臣の行う一般的監督

 官房長及び局長は防衛省の機関の一つである内部部局の役職であるが、要するに防衛大臣を補佐して陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊又は統合幕僚監部に対して指示を出したり、一般的監督を行ったり、統合幕僚長の作成した方針及び基本的な実施計画についての防衛大臣の承認を補佐する役目を担っていることになる。

  防衛大臣の承認自体が官房長及び局長の補佐を得た承認であって、その承認を陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊又は統合幕僚監部に対して行うということなのだろう。

 つまり官房長及び局長は陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊又は統合幕僚監部の上に位置し、防衛大臣を補佐する。この地位上の優位性が文民統制(シビリアンコントロール)を守る要(かなめ)とされてきた。

 これが次のように改正された。 
(官房長及び局長並びに防衛装備庁長官と幕僚長との関係)

 第12条 官房長及び局長並びに防衛装備庁長官は、統合幕僚長、陸上幕僚長、海上幕僚長及び航空幕僚長(以下「幕僚長」という。)が行う自衛隊法第9条第2項の
      規定による隊務に関する補佐と相まつて、第3条の任務の達成のため、防衛省の所掌事務が法令に従い、かつ、適切に遂行されるよう、その所掌事務に関
      し防衛大臣を補佐するものとする。

 改正前の官房長及び局長と幕僚長の3者(と言っても、制服組は統合幕僚長と陸上幕僚長と海上幕僚長と航空幕僚長の4人が占めている)に防衛装備庁長官が加えれれて、4者対等(人数としては背広3対制服4)の立場で防衛大臣を補佐する関係に改正されている。

 改正の動きがマスコミで伝えられたとき、シビリアンコントロールが危うくなりはしないか、その危惧からブログを書いた。その内容は、安倍晋三の「積極的平和主義」を口実とした自衛隊の海外活動が増えるに応じて発生するかもしれない有事の際、制服組が「現場を知っているのは我々だ、背広組は現場を知っているのか」と、“軍事の現場を知っている”ことを最大の権威とした、言ってみれば現場知識主義を持ち出して制服組の主張を押し通しはしないかの懸念と、戦前の例を取って、「現場知識主義」が如何に当てにならないかの非絶対性についてである。

 ただでさえ制服組が万能の力を持たせて錦の御旗としかねない懸念がある“軍事の現場を知っている”のは俺達だとの「現場知識主義」を持ち出して制服組に対して優位に立つ危険性が危惧されるのに、制服組の統合幕僚監部が背広組に権限の大幅移譲を要求した。

 いわば「現場知識主義」に市民権を与える権限の改善を求めたことになる。我々の方が“軍事の現場を知っている”のだから、我々の発言により大きな権限(=より大きな発言権)を与えて貰わなければ困ると。

 制服組が「現場知識主義」を自らの血とし、権威としていなければ、ロイター記事が書いているような権限の大幅移譲を要求したりしないだろう。

 と言うことは、昨年6月の改正防衛省設置法成立で既に「現場知識主義」の血を騒がせ、その頭をもたげさせていて、今年3月の施行を待ちきれずに我慢しきれなくなって、背広組から「現場知識主義」の市民権を公然と手に入れるべく動いたことになる。

 もし権限の大幅移譲の要求が罷り通った場合、制服組が背広組と両者相協力して防衛大臣を補佐することから離れて、背広組の上に立って優先的に補佐する権限を持つことになり、防衛大臣に対する「現場知識主義」に裏書きされた発言力、その発言の正当性は当然、強い力を持つことになる。

 そして防衛大臣が制服組の発言に基づいて自衛隊の最高指揮官である安倍晋三が発令する自衛隊に対する命令・指示は形式的にはシビリアンコントロールに基づいているように見えるが、実際は制服組の意向に添った命令・指示ということもあり得る。

 但し、右翼国家主義者であり軍国主義者である安倍晋三からしたら、好みの命令・指示となる可能性は否定しきれない。

 最後に参考のために以前ブログに書いた戦前の例を取った「現場知識主義」の非絶対性を改めてここに記して、それが如何に文民統制への脅威となりかねないかを考えて貰うことにする。

 〈戦時中の昭和15年(1940年)9月30日付施行の勅令第648号(総力戦研究所官制)により創設された総力戦研究所は官僚27名(文官22名・武官5名ー旧陸海軍では下士官以上の軍人)の第一期研究生を入所させ、二代目軍人の所長の元(初代も軍人)の昭和16年(1941年)7月12日から日米戦争を想定した第1回総力戦机上演習(シミュレーション)が行われた。

 そして次の結論に達した。「開戦後、緒戦の勝利は見込まれるが、その後の推移は長期戦必至であり、その負担に青国(日本)の国力は耐えられない。戦争終末期にはソ連の参戦もあり、敗北は避けられない。ゆえに戦争は不可能」であり、「日本必敗」

 その発表の席に参列していた当時陸将の東条英機がその結論をあっさりと覆した。

 東条英機「諸君の研究の労を多とするが、これはあくまでも机上の演習でありまして、実際の戰争というものは、君達が考へているやうな物では無いのであります。

 日露戰争で、わが大日本帝國は勝てるとは思はなかった。然し勝ったのであります。あの当時も列强による三国干渉で、止むに止まれず帝国は立ち上がったのでありまして、勝てる戰争だからと思ってやったのではなかった。戦というものは、計畫通りにいかない。

 意外裡な事が勝利に繋がっていく。したがって、諸君の考へている事は机上の空論とまでは言はないとしても、あくまでも、その意外裡の要素というものをば、考慮したものではないのであります。なほ、この机上演習の経緯を、諸君は軽はずみに口外してはならぬということであります」(以上Wikipediaを参考)

 総力戦研究所の国力や軍事力、戦術等の彼我の力の差を計算に入れた合理的科学的な分析に対して長期的・全体的展望に立った目的行為の準備・計画・運用の方法論としての戦略を語るのではなく、「意外裡」(=計算外の要素)に頼った非合理的な精神論を武器にしてアメリカに戦争を挑むという考えに立っていた。

 陸軍士官学校を卒業、一度挑戦に失敗してから陸軍大学校(陸大)に入学・卒業して関東軍参謀長、陸軍航空総監、陸軍大臣、内閣総理大臣、内務大臣、外務大臣、文部大臣、商工大臣、軍需大臣等々を歴任した人物がこの程度の日本軍人だった。

 “軍事の現場を知っている”ことを一大権威とした「現場知識主義」が如何に絶対的ではないかの何よりの証明であろう。

 何回かブログに書いてきたもう一人挙げてみる。
『小倉庫次侍従日記・昭和天皇戦時下の肉声』(文藝春秋・2007年4月特別号)

 昭和16年9月5日(金)

 (前略)近衛首相4・20-5・15奏上。明日の御前会議を奉請したる様なり。直に御聴許あらせられず。次で内大臣拝謁(5・20-5.27-5・30)内大臣を経、陸海両総長御召あり。首相、両総長、三者揃って拝謁上奏(6・05-6・50)。御聴許。次で6・55、内閣より書類上奏。御裁可を仰ぎたり。

 〈半藤一利氏注注〉あらためて書くも情けない事実がある。この日の天皇と陸海両総長との問答である。色々資料にある対話を、一問一答形式にしてみる。

 昭和天皇「アメリカとの戦闘になったならば、陸軍としては、どのくらいの期限で片づける確信があるのか」 
 
 杉山陸軍参謀総長「南洋方面だけで3カ月くらいで片づけるつもりであります」

 昭和天皇「杉山は支那事変勃発当時の陸相である。あの時、事変は1カ月くらいにて片づくと申したが、4カ年の長きに亘ってもまだ片づかんではないか」

 杉山陸軍参謀総長「支那は奥地が広いものですから」
 
 昭和天皇「ナニ、支那の奥地が広いというなら、太平洋はもっと広いではないか。如何なる確信があって3カ月と申すのか」

 杉山総長はただ頭を垂れたままであったという。〉
 「Wikipedia」によると杉山元は陸軍士官学校卒業、陸軍大学校卒業と東条英機と同様の学歴を経て、陸軍大臣、陸軍参謀総長、教育総監の陸軍三長官を全て経験し、そして元帥になっている優れた人物で、このような最高の経歴を得たのは上原勇作と杉山だけだと解説している。

 当然、“軍事の現場を知っている”「現場知識主義」に位置する第一人者の最たる一人であったはずである。

 だが、昭和天皇から「如何なる確信があってか」と問われながら、これこれの戦略に基づいて緻密・具体的に計算していくと、3カ月で片付くはずですと答えることができなかった。あるいはこれこれこういった緻密・具体的な戦略を用いて戦いに臨む計画から3カ月という日数を計算しましたと答えることができなかった。

 直接軍人の教育に携わるわけではないだろうが、日本陸軍の教育を掌る役職の長に就いていた。その杉山が日米戦争を前にしてその勝利に向けた戦略を根拠にするのではなく、3カ月で戦争の主導権を握ると、根拠を口にしないまま高言した。この皮肉な様子は日本の敗戦によって証明されることになるが、この証明は同時に「現場知識主義」が如何に信頼性に値しないかの証明でもある。

 だが、戦前の日本でこういった「現場知識主義」が跳梁跋扈し、政治を抑えて軍主導で日本の進路を決めることになった。

 ところが今現在再び“軍事の現場を知っている”ことを一大権威とした制服組の「現場知識主義」が防衛政策に影響を与えるべく画策を開始している。

 このことがいつか来た道となってシビリアンコントロール(文民統制)への脅威とならない保証はない。

 兎にも角にも安倍晋三が自衛隊の最高指揮官である。我々は心してかからなければならない。

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従軍慰安婦数、朝鮮半島出身者だけで20万人という人数は決して大袈裟ではない根拠

2016-02-21 09:41:24 | 政治

 日本政府代表の杉山晋輔外務省政務担当外務審議官が2月16日(2016年)午後(日本時間同日夜)、ジュネーブの国連欧州本部で開かれた女子差別撤廃委員会の対日審査で従軍慰安婦問題に関する事実関係を説明したことと、その説明内容を2月17日付「産経ニュース」が伝えている。

 説明内容は安倍政権が常日頃内外に表明している例の如くの事実の羅列に過ぎない。記事から説明内容を纏めてみる。

 ●強制連行説は「慰安婦狩り」に自ら関わったとする吉田清治氏(故人)による「捏造(ねつぞう)」に
  過ぎなかったこと。
 ●強制連行を裏付ける資料がなかったこと。
 ●朝日新聞が吉田氏の本を大きく報じたことが「国際社会にも大きな影響を与えた」こと。
 ●「慰安婦20万人」説は朝日新聞が女子挺身隊を混同したためで、朝日新聞もそのことを認め、具体的
  な裏付けがない数字であること。
 ●慰安婦問題は昨年末の日韓外相会談で最終的かつ不可逆的に解決することで合意していること――
  等々。

 記事は末尾で、〈杉山氏は、慰安婦問題は日本が女子差別撤廃条約を締約した1985(昭和60)年以前のことで、同条約は締結以前に生じた問題については遡(さかのぼ)って適用されないことから「慰安婦問題を同条約の実施状況の報告で取り上げるのは適切ではないということが、日本政府の基本的な考え方だ」とも述べた。〉と解説している。

 確かに吉田清治が自著や講演や新聞に述べた、いわゆる「吉田証言」は自身が捏造であることを認めた。だが、捏造は韓国の済州島に限ったことで、済州島の捏造を韓国全体や中国、台湾、フィリピン、インドネシア等々、日本軍が駐留、若しくは占領した全ての地域の、日本軍兵士によって拉致・誘拐同然に強制連行されて慰安婦にされたそれぞれの地域の女性の数々の証言まで全て捏造とすることはできない。

 当然、第1次安倍内閣の時「政府が発見した資料の中には、軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述は見当たらなかった」と閣議決定したからといって、元従軍慰安婦が証言した内容を集めた資料に軍・官憲による強制連行を直接示す記述が存在する以上、政府発見資料のみで強制連行は存在しなかったとする説を事実とすることはできない。

 このことを証明する一つの記事がある。《慰安婦記録出版に「懸念」 日本公使がインドネシア側に》asahi.com/2013年10月15日)

 既に掲載期間切れで「asahi.com」には載っていないが、探したところ、《インドネシアでも慰安婦問題で非難される日本》中華民国台湾の真実)なるサイトに全文記載されている。  

 以前当ブログに書いたことだが、内容は朝日新聞が情報公開で入手した外交文書等によって1993年8月、駐インドネシア公使だった高須幸雄・国連事務次長が、旧日本軍の慰安婦らの苦難を記録するインドネシア人作家の著作が発行されれば、両国関係に影響が出るとの懸念をインドネシア側に伝えていたというものである。

 このインドネシア人作家とはノーベル賞候補だった作家のプラムディア・アナンタ・トゥール氏、その著作内容はジャワ島から1400キロ離れた島に戦時中に多数の少女が慰安婦として連れて行かれたことを知り、取材を重ねて数百ページに纏めたものだという。

 記事には書いてないが、プラムディア・アナンタ・トゥール氏はインドネシア共産党関係者とされ、当時のスハルト政権の軍当局に拘束されて1969年8月に政治犯流刑地のブル島(ジャワ島から1400キロ離れた島)に10年に亘って送られていて、そこで日本敗戦後に日本軍に、その多くが17、8、9の少女の年齢でその島に置き去りに棄てられた元慰安婦たちと知り合うことになったという経歴を持っている。

 その書物には日本軍占領下のインドネシアで7、8人の日本軍兵士が荷台に幌をつけた軍用トラックに乗ってきて庭先で遊んでいる数人の少女たちを捕まえて荷台に放り投げ、何個所か回って20人程度になるまで狩り集めてから、日本軍の慰安所に連れて行って閉じ込め、日本兵に強姦同然に姦されていく証言と、占領インドネシアで日本軍軍政の中枢機構であった日本軍政監部が現地行政機関を通して未成年の女子を日本や昭南島(現シンガポール)への留学生募集で釣って、そのまま従軍慰安にされた証言、その他の証言が載っている。

 留学生募集は新聞広告や現地行政機関の広報等の印刷物によって公告の形で告知されず、すべて口頭の伝達によってなされていたという。いわば証拠を残さずの方法で少女たちを狩り集め、性奴隷にしていった。

 この例からも、政府発見資料の信憑性が限りなく疑わしくなる。

 また日本占領下のインドネシアで当時インドネシアを植民地としていたオランダの民間人抑留所でも日本軍は兵士を連れて軍用トラックで乗り付けて、全員を一個所に集めた上で18歳から28歳までの女性を前に出てこさせて一列に並べ、その中から適宜指名してトラックに乗せ、4個所を回って計35名を軍用トラックで運んで慰安所に連れて行き、強制売春を行わせている。

 日本敗戦後の1948年にオランダ軍はバタビア臨時軍法会議を開廷、BC級戦犯として11人に有罪判決、1人に死刑判決を言い渡している。罪名は強制連行、強制売春(婦女子強制売淫)、強姦。

 この裁判記録は未だ残されているという。だが、第1次安倍内閣の閣議決定では、「政府が発見した資料の中には、軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述は見当たらなかった」としている。

 強制連行を直接示す記述が見当たらない資料だけを漁って、見当たらないとしているようにさえ見える。

 「慰安婦20万人」説は具体的な裏付けがない数字だとしているが、先ず、《アジア各地における終戦時日本軍の兵数》社会実情データ図録/2010年8月9日収録)から、画像を載せておいたが、その数を見てみる。 

 旧厚生省援護局の資料だから、確かであるはずである。

 各地域合計で296万人にのぼる。また同じ旧厚生省援護局の調査で外地で戦死した日本兵は約200万人。戦死者数は各年によって異なるし、徴兵された年も違うから、引揚者と合計すると延べ人数で400万人近くがアジア各地に派遣されていたことになる。

 延べ人数であることと慰安所が存在していなかった地域があることを考えて、半分としても200万人が慰安所を利用していたと見ることができる。利用者は陸軍兵士だけではなく、海軍にしても兵士は艦船の中だけで生活するわけではなく、外地それぞれに基地を設けて、基地内か基地外近辺に慰安所を設けていただろうから、数に入れて計算している。

 200万人の日本兵の性処理を滞りなく行うとしたら、何人程度の慰安婦を以ってしたら充足させることができるのだろうか。

 とても募集だけで間に合わせることは不可能で、そのために拉致・誘拐の荒療治に出たのだと十分に考え得る。

 朝鮮半島全体で33万人強の兵士が引き揚げていることと、朝鮮半島で狩り集められて、中国や外地にも送られただろうことを考えると、ラディカ・クマラスワミ女史が1995年に国連人権委員会に提出した予備報告書で、「約20万人の朝鮮女性の軍事的性奴隷としての徴集された」と、朝鮮人女性だけで20万人だとしていたとしても、決して大袈裟な人数とは言うことはできない。

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2/15衆院予算委緒方林太郎もアベノミクスの成果を誇るパターン化した安倍晋三の答弁を破ることができず

2016-02-20 12:05:36 | Weblog

 今国会も与党からアベノミクスの経済効果について質問が相次いでいる。対して安倍晋のアベノミクスの成果を誇る答弁はパターン化している。と言うことは、そのパターンを破ることができる程に野党の追及は効果がない証明となっている安倍晋三の無敵なまでにパターン化した答弁と言うことになる。

 質問の目先を変えても、効果を出すことができない。民主党議員で東京大学法学部中退の緒方林太郎43歳の2016年2月15日衆議院予算委の追及にしても同じで、アベノミクスの成果を問う質問と答弁の内、肝心な発言に限って拾ってみる。

 緒方林太郎は先ず安倍政権での2015年7月の株価ピーク時を100とした場合の2016年2月12日は72.6まで下がっている株価下落の要因を尋ねた。

 安倍晋三は石油価格の低下、米国の政策金利を上げたこと等の海外要因を挙げた上で、次のよう答弁している。

 安倍晋三「しかしながら我が国の実体経済を見れば、もはやデフレではないという状況を作り出す中で企業の収益は過去最高、雇用者数は110万人以上増加するなど、経済のファンダメンタルズは確かなものと確認しています。こうしたファクトをしっかりと見て頂ければ、日々の株価の状況は一喜一憂すべきではない」

 緒方林太郎は株価下落は海外要因だけなのか、2015年7月から少なくとも7カ月は続いているトレンドで、これがファクトだと認めて貰いたいと迫った。

 安倍晋三「アベノミクスの3本の矢の政策ににより、もはやデフレではないとう状況を作り出す中、政権発足以来名目GDPは27兆円増えたわけで、これがファクトだ。企業の収益は過去最高となって、倒産件数は約3割減少した。

 失業者も53万人減っている。政労使会議などを通じて好調な収益を雇用・所得環境の改善に振り向けることによって、就業者数は110万人以上増加し、有効求人倍率は24年振りの高水準となっている。

 賃上げ率は2年連続で大きな伸び率となり、経済の好循環を生み出している」

 緒方林太郎は外的要因に影響されない経済を作っていくことがアベノミクスの3本目の矢ではなかったのかとさらに尋ねた。

 安倍晋三「殆どの人が日本が外的要因に関わらず日本の経済だけでデフレ脱却ができると考えている人はいない。現在株価が下がっていて、円が高くなっているのは多くのエコノミストがイランとサウジアラビアの断交、北朝鮮のミサイル発射、中国の景気に不安が出ていること、そのために円が買われて、その影響で株が下がっている。そういう分析もしっかりとしなければならない。

 GDPが発表されたが、2015年暦年に於いて(1年間を通して)名目は2.5(2015年1年間を通したGDPの伸び率は実質でプラス0.4%、名目ではプラス2.5%)となっている。もしかしたらこういう数字を(民主党は)聞きたくないかもしれない。こういうファクトもしっかりと見て頂きたい」

 緒方林太郎はあくまでも2015年7月の株価ピーク時を100とした場合の2016年2月12日は72.6となった株価の下落傾向に拘り、この点からアベノミクス経済効果の無効性を炙り出そうとし、「総理自身が言っているように政治は結果なんですよ、ファクトが大事なんですよ。今日本の経済が下向きのドライブがかかっていることを素直に認めて、政策を練り直すべきではないか」と迫った。

 安倍晋三「私が総裁になった時から、株式市場の変化が出てきたのは事実で、ファクトだと思う。当時は8千円を割っていたわけですから、その際我々は量的緩和をしっかりとやっていくと言うことを出しました。これは国際社会が認めているファクトだと思う。

 安倍政権が出きてから(株価)が8千円からスタートした。今は倍ぐらいになっているのが事実なのは間違いない。一時1万3千円程度に下がった時、この国会で随分騒がれたが、『皆さん落ち着いてください』と申し上げた。

 その中で国際経済に不安定要因が出てこれば、変化は出てくる。変化のためにアベノミクスは失敗していると批判するが、一番大切なのはファクトは何か。実体経済の中で一番大切なファクトは何だと思います。

 雇用なんです。これが一番大切なんです。我々は雇用を生み出している。しかし残念ながら、みなさんの時代に倒産件数が多かった。失業者の数を53万人減らした。生活保護を受けている世帯をみなさんの時よりも6万世帯減らしているのですよ。

 それがファクトなんです。それが大切なファクトなんです。そうしたものから目をそらしてはいけない。世界的要因をすべてせいにしてはならない。昨年の暦年に於いても(1年間を通して)名目(GDP )はプラス2.5だったことはしっかりと見て頂きたい」

 緒方林太郎はここで実質賃金の減少と非正雇用の増加に触れたから、質問側の質問のパターンに入ったように見えたが、そのパターンをカード(切り札)にするわけではなく、安倍晋三が挙げた指標にちょっこっとケチをつけた程度で、株価の下落によって資産効果が減少したのではないか、逆資産効果が生じているのではないか、そのことを認めるのかと問い質した。

 2014年11月4日の参院予算委員会でも桜井充民主党議員から「総理は前原さんとの衆議院での質疑で、賃金が上がるよりも株価が上がった方が経済に対する影響は大きいんだと答弁しているが、本当にそう思っているのか」と問われて、「資産効果としてはいわば賃金が上がった場合は支出については当然、慎重になるが、株価が上がった場合にはすぐに消費に回る傾向が、分析の結果、高いというのが事実であります」と答弁している。

 さらに2週間後の安倍晋三は2014年11月18日、言論圧力ではないかと批判を受けた発言を行ったあのテレビ番組TBSの「NEWS23」に出演して、「しっかりとマクロで経済を成長させ、株価が上がっていくということはですね、これは間違いなく国民生活にとってプラスになっています。資産効果によってですね、消費が喚起されるのはこれは統計学的に極めて重視されていくわけです」と発言している。
 
 資産効果とは「株や土地の価格、貴金属の価格等の資産価格が上昇することで消費・投資などが活性化する効果」のことを言う。要するに安倍晋三は「賃金が上がるよりも株価が上がった方が消費が活性化して経済効果がある」と言ったのである。

 だが、株価上昇の恩恵をより多く受けるのは国民全体から見たら一部の富裕層や所得に余裕のある上流階級である。当然、活発な消費はそういった層に限られることになって、このことに対応してこういった経済効果を生み出す資産効果自体にしても多くが上流階級に限られることになって、資産効果に経済効果を期待すること自体に既に格差の構造を孕んでいることになる。

 このことは安倍政権を通して個人消費が低迷している事実が証明する。個人消費活動が富裕層等の所得余裕層に偏っていて、絶対的多数の一般生活者はギリギリの生活を強いられていることの実態を受けた個人消費の低迷であるはずだ。

 緒方林太郎は安倍晋三の資産効果に関わる発言を承知して質問したのだろうか。

 安倍晋三「私が申し上げた資産効果は株価に顕著に出てくる。3本の矢の効果が顕著に出てきたことは緒方委員も認めるだろうと思う。これを否定するんであれば、我々の政策を全く否定することになって、また3年前に戻したいと言うことかもしれない。

 そうすればまた失業や倒産が増えていくことになると思うが、そこで大切なことは確かに株価の下落はいい影響を及ぼさないのは当然のことで、大切なことはしっかりと経済のファンダメンタルズを見る必要がある。

 今の経済のファンダメンタルズは企業は最高の収益を上げている。これを注目していかなければならない。海外の要因は多くの人が認めるところだが、大切なことは今の状況で一喜一憂すべきではない」

 安倍晋三は逆資産効果について一言も答えていない。緒方林太郎は株価の下落傾向を受けた逆資産効果によって消費・投資にネガティブな影響が出てくるが、このことを認めて頂きたいと、あくまでもアベノミクスの無効性を株価下落の観点から問い質しす戦術に出た。資産効果を受けた経済効果が本来的に孕むことになる格差の構造の観点から追及はしなかった。

 安倍晋三「確かに2015年と比べれば下がっているが、皆さんが政権を取っているときに比べれば、世の中、市場は民主党政権に任せていいのか、安倍政権に任せていいのかと言えば、これは明らかではないか。ここのところはみなさんも謙虚に認めなければならない。

 皆さんが政権を取っている時と比べると海外からの投資は10倍に増えているんですよ、10倍に。そういう事実は皆さんにも見て頂きたいと思う」

 そして、「皆さんが政権を取っていた以上、政権を取っていた時の結果は批判されると言う覚悟を持った方がいい」と好きなようにあしらわれるが、緒方林太郎は「株価下落は株で運用している年金資産の棄損に影響するが、そのことを認めるか」と、既に効果がないことは分かっていなければならないのに、株の下落からのアベノミクス効果の追及に拘った。

 安倍晋三「株価に於いても今委員が調べ上げた株価は安倍政権の中の株価であって、最初の株価は安倍政権の成果ということはお認めになると思いますよ。それが凄い成果が出たところから今下がったからと言って、今でもみなさんの時よりもいいんですよ。そのことを先ず申し上げておきたいと思います。

 普通は皆さんの時の成果と私たちの成果を見比べるもんですが、安倍政権の中の成果を比べるというのはちょっと苦笑を禁じ得ない」

 民主党政権時の成果と安倍政権下の成果で唯一比較できるのは格差の拡大であろう。

 株価を上げた、為替を円安に持っていった、そのため企業収益は過去最高となった、あるいは倒産件数を約3割減らした、失業者の数を53万人減らした、生活保護受給世帯を6万世帯減らした、賃上げ率は2年連続で大きな伸び率となった、雇用者数は110万人以上増加させた、株は下がっているが、経済のファンダメンタルズはしっかりしていると、パターンとなっているアベノミクスの成果を繰返し誇っているが、緒方林太郎は安倍晋三に誇らすまま、パターンを持ち出すに任せるままで、何ら有効な手を打つことができない。

 アベノミクスの成果をいつものパターンでいくら繰返し誇ろうとも、こういったプラスの指標に反して実質賃金は殆ど横這いで、個人消費も低迷したままの状況で推移しているということはいくら仕事を得て、賃金を手にすることができたり、元々働いていて少し賃金が増えても、個人消費活動のレースに参加できない生活者が大多数を占めていることの証明であって、株価上昇と円安と過去最高の企業収益等のアベノミクスの最大の成果状況と個人消費活動のレースに参加できない生活者が大多数存在する状況は、アベノミクスが格差を構造としていることの何よりの証拠であろう。

 「確かにアベノミクスは景気を良くした。だが民主党の時はこれ程には格差が拡大していなかった」と両政権の比較をなぜしないのだろうか。

 これまで野党がアベノミクスの成果を問う質問した場合、安倍晋三があれやこれやとパターンとなっている成果を例の如く持ち出したなら、実質賃金が増えないこと、個人消費が伸びないことを上げて追及すると、安倍晋三は消費税増税による影響を除いた指標である実質総雇用者所得を持ち出して、それが増えたと言って逃げる。

 だが、実質総雇用者所得とはおおまかに言って毎月の現金給与総額に全雇用者数を掛けた金額で、雇用者の中身は上は大企業の役員クラスから、下は非正規の最低限の給与で働いている労働者もいる。

 実質総雇用者所得が増えた経済状況にありながら、このことに反して実質賃金が横這いで個人消費が伸びない事態に見舞われているということも、賃金が上は増え、下が増えないという格差の構造を内包している何よりの証拠としかならない。

 アベノミクスの危険性はそれが格差を構造としている以上、景気が良くなれば良くなる程、格差を拡大していくと言うことの危険性である。

 今までの追及のパターンではアベノミクス成果を誇るパターンとなっている答弁を破ることができないから、緒方林太郎は追及の手を変えて、株価の下落を持ち出したのだろうが、緒方林太郎には安倍晋三のパターンは固かったようだ。

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自民参院議員丸山和也のオバマ大統領を奴隷の子孫とした発言が明らかに黒人差別発言であることの理由

2016-02-19 12:09:08 | 政治

 橋下徹という唯我独尊の独裁意識の強い地方政治家を生み出したテレビのバラエティ番組「行列のできる法律事務所」で同じメンバーとして活躍し、その人気・知名度の恩恵を受けて2007年に参議院議員となり、御年70歳の大の大人丸山和也の2月17日参議院憲法審査会での発言が批判を浴びている。

 翌2月18日に民主党と社民党、生活の党と山本太郎となかまたちの野党3党が丸山議員に対する議員辞職勧告決議案を参議院に提出している。

 いわば野党3党は次の日に議員辞職勧告決議案を提出しなければならない程に酷い発言と見たのだろう。
 
 対して御年70歳の大の大人丸山和也は現役弁護士でもあるその血がそう判断させたのか、同じ2月18日に国会内で記者団に対して議員辞職の罪に相当せずの態度を取った。いわば自身に対して無罪の立場で弁護した。

 御年70歳の大の大人丸山和也「私は、アメリカには過去に奴隷制度があり、それを自己変革して、黒人の大統領を出すまでになったという意味を伝えようとしたのであって、差別的な意図での発言ではない。ただ、表現が適切さを欠いて、誤解を与えてしまったなら、反省したい。関連する発言は撤回した」

 記者「民主党などから議員辞職を求める声が出ているが」

 御年70歳の大の大人丸山和也「差別的発言を意図的にして、恥じることがあれば、そういうこともあるかもしれないが、私の場合は違う。見当違いではないか」(NHK NEWS WEB) 

 意図的な差別的発言ではないから、辞職相当の罪には値しないと言っている。

 それが意図しない無邪気な発言であっても、結果的に差別発言となる場合がある。

 例えば2015年6月25日の安倍シンパ若手議員約40人出席の「文化芸術懇話会」で講師に招かれた百田尚樹の発言がこれに当たる。

 百田尚樹「自衛権、交戦権を持つことが戦争抑止力につながる。軍隊を家に譬えると、防犯用の『鍵』であり、しっかり『鍵』をつけよう。

 世界には軍隊を持たない国が26カ国ある。南太平洋の小さな島。ナウルとかバヌアツとか。ツバルなんか、もう沈みそう。家で例えればクソ貧乏長屋。獲るものも何もない。アイスランドは年中、氷。資源もない。そんな国、誰が獲るか」

 きっと大いなる笑いを誘ったに違いない。本人は差別だなどとはさらさら思ってもいないだろうが、軍隊を持つ国を上に置き、軍隊を持たない国を下に置いて、「クソ貧乏長屋。獲るものも何もない」と侮り、貶す差別を行っている。

 百田尚樹の軍隊を持つ国を立派な国だとする基準からすると、北朝鮮はさぞかし上位に入る立派な国ということになる。

 御年70歳の大の大人丸山和也が実際に何を言ったのか、ネットでその発言の全文を探し出した。


 《【書き起こし】丸山議員「アメリカは奴隷の黒人が大統領」発言の真意は?》(ログミー/2016年2月17日)
  
 御年70歳の大の大人丸山和也「これは憲法上の問題もありますし、ややユートピア的かもしれませんですけれど。たとえば、日本がアメリカの51番目の州になるということについて、憲法上どのような問題があるのか、ないのか。

 そうすると集団的自衛権、安保条約ってまったく問題ありませんね。たとえば、今拉致問題ってありますけど、おそらく起こっていないでしょう。

 それから、いわゆる国の借金問題についても、こういう国の行政監視が効かないようなズタズタの状態には絶対になっていないと思うんですね。

 これは日本がなくなるということではなくて、アメリカの制度であれば人口比において、下院議員の数が決まるんですね。するとおそらく日本州というのは、最大の下院議員の数を持つと思うんです

 上院も州1個とすれば2人ですけれど、日本もいくつかの州にわけるとすると、十数人の上院議員もできるとなると、これは世界の中の日本というけれども、ようするに日本州の出身がアメリカの大統領になる可能性が出てくるということなんですよ。

 ということは、世界の中心で行動できる日本という、日本とはそのとき言わないですけれども、それもあり得るということなんですね。馬鹿みたいな話だと思われるかもしれないですけれど。

 たとえば、いまアメリカは黒人が大統領になっているんですよ。黒人の血を引く、ね。これは奴隷ですよ、はっきり言って。

 で、リンカーンが奴隷解放をやったと。でも公民権もない、なにもないと。ルーサー・キングが出てですね、公民権運動のなかで公民権が与えられた。

 でもですね、まさかアメリカの建国あるいは当初の時代にですね、黒人、奴隷がですね、アメリカの大統領になるようなことは考えもしない。

 これだけのですね、ダイナミックな変革をしていく国なんですよね。

 そういう観点からですね、たとえば、日本がそういうことについて憲法上の問題があるのかないのか。どういうことかということについて、お聞きしたい。

 それから、政党所属を忌避するということについての憲法上の問題があるのかないのか。これについて、まず荒井議員からお聞きしたい。

 これはですね、十数年前から日米問題研究会ということがありまして、それで本まで発表されてるんですね。

 だからそういうことについてですね、日本の憲法的な観点から、どのように思われますか? お聞きしたいと思います」

 さすが、御年70歳の大の大人の人生経験、弁護士と政治家の職業経験が言わしめた言葉の数々なのだろう。

 「日本がアメリカの51番目の州になるということについて、憲法上どのような問題があるのか、ないのか」・・・・・・・

 御年70歳の大の大人丸山和也は「ユートピア的かもしれない」と断りながらも、日本がアメリカの51番目の州になるることを大真面目に考えている。
 
 障害は憲法上の問題だと把えているから、この点について質問することになる。

 御年70歳の大の大人丸山和也の日本をアメリカ合衆国に組み込みたい理由は「世界の中心で行動できる日本」にするためであり、「ダイナミックな変革をしていく国」アメリカの変革力を借りて日本をダイナミックに変革させていくためということになる。

 このことをそのまま裏返すと、日本という国はアメリカの変革力に頼らなければ、単独ではダイナミックな変革もできなければ、世界の中心で行動できる国になることができないと見ていることになる。

 私自身は文化相対主義の立場を取っているから、日本民族を他の民族と上下比較することになる「優秀」という言葉で価値づけることはせず、民族と関係させない個人個人の価値づけでのみ優秀か否かの言葉で価値づけることにしているし、このことは他の民族の人間にも当てはめているモノサシだが、世界の中心で行動できる国というものが否応もなしに人種や民族を背景とした評価付けとなって、その優秀さを競うことになり、個人個人を価値づけるモノサシに反することになるから、別に立派な金字塔だとも思わない。

 国の富を可能な限り国民に満遍なく分配して、そのために全体的な国力を下げることになって世界の中心で行動できる国になることができなくても、その分配を格差の解消に可能な限りつなげていく国家の姿にこそ価値を置くべきであろう。人種とか民族とかを問題とせずに個人個人の価値づけにより重点を置くことになるからだ。

 いずれにしてもアメリカの変革力を借りて日本をダイナミックに変革させ、「世界の中心で行動できる日本」にしたいがために日本をアメリカ合衆国に組み込みたい御年70歳の大の大人丸山和也の願望からは、それがどのような日本の姿を頭に描いているのかは別にして、日本人一人一人の努力を恃(たの)まずに単にアメリカを素晴らしい大国として上に価値づけ、その結果として日本という国をその遥か下に価値づけていることになる他力本願しか見えてこない。

 日本人一人一人の努力を恃む自力本願に立っていたなら、アメリカを上に価値づけ、日本を下に価値づける日米優劣観に基づいたアメリカ頼みの変革など求めはしない。

 勿論、国家の価値を上下に価値づけたこの日米優劣観は何事も上下で価値づけて優劣を決める権威主義に基づいていることになるから、アメリカに対する他力本願にしても権威主義を背景としていることになる。

 権威主義的な他力本願が構造とすることになる自律心の無さ、力ある対象に従う、あるいは従おうとする隷属性は、それがアメリカという大国に限ったことだとしても、独立国家の国会議員に許される精神性と言うことができるだろうか。 

 許されるなら、国会議員を続けていくことができる。許されないなら、国会議員を続けていく資格を失うことになる。

 御年70歳の大の大人丸山和也にとって一連の発言の内、最悪なことはアメリカが「ダイナミックな変革をしていく国」であることの例として、オバマ大統領を引き合いに出して、アメリカの建国時代には考えれれもしなかったであろう黒人奴隷の血を引く人物がアメリカの大統領となった事例を挙げたことである。

 〈オバマ米大統領は、アフリカ系(黒人)初の大統領だが、ケニアから米国に留学した黒人の父と白人の母との間に生まれており、奴隷の子孫ではない。〉と「asahi.com」記事が解説しているが、オバマ大統領の出自という事実に関しては「これは奴隷ですよ」が不勉強からの単なる事実誤認だとしても、「いまアメリカは黒人が大統領になっているんですよ。黒人の血を引く、ね。これは奴隷ですよ、はっきり言って」の発言全体を見ると、黒人に対して上から目線で蔑む響きを持たせていると見ないわけにはいかない。 

 上から目線でなければ、「黒人の血を引く」ことには触れても、「これは奴隷ですよ、はっきり言って」という言葉は出てこないはずだ。

 奴隷解放宣言は1862年9月のことで、その後紆余曲折はあったものの、21世紀の現代アメリカに生き、一般的な市民生活を送っている黒人を掴まえて、先祖が黒人奴隷であったことの出自を知っていたとしても、蔑みの差別観なしに、「これは奴隷ですよ、はっきり言って」と言うことができるだろうか。

 あるいは言うことが許されるだろうか。

 しかもオバマ・アメリカ大統領を直接指して、いくらアメリカが「ダイナミックな変革をしていく国」であることの一例にするにしても、「これは奴隷ですよ、はっきり言って」という言葉を口にすることができるだろうか。

 黒人を民族的に下に位置づけ、差別意識をそこに含めた上から目線だからこそ言うことのできる発言であろう。

 民族差別は民族を上下に価値づけて、上下の民族それぞれを優劣で見る権威主義が発生源となっている。

 アメリカを国単位で見た場合は大国として日本よりも遥か上に価値づける御年70歳の大の大人丸山和也の日米優劣観が権威主義の精神性に基づいているのと同じく、アメリカの黒人に対する民族的に下に見る差別意識、民族差別にしても権威主義なくして成り立たないから、御年70歳の大の大人丸山和也の権威主義の精神性が言わせた「日本がアメリカの51番目の州になる」発言であり、「いまアメリカは黒人が大統領になっているんですよ。黒人の血を引く、ね。これは奴隷ですよ、はっきり言って」の発言であり、そう見ることによってこれらの発言に整合性を与えることができる。

 物事を上下優劣で価値づけるこのような権威主義性からして、丸山和也は百田尚樹同様、小国を侮っているはずだ。

 でなければ、発言の整合性が崩れることになる。

 当然、御年70歳の大の大人丸山和也が意図していない差別的発言だと主張したとしても、結果的には差別発言となっている以上、野党3党提出の議員辞職勧告決議案は決して見当違いではない。

 潔く早々に議員辞職すべきだろう。

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