前原外相の首相1年交代が北方四島返還交渉の障害は責任逃れの逃げ口実

2011-02-27 07:58:10 | Weblog

 

 昨2月26日(2011年)土曜日の日本テレビ「ウエークアップ!ぷらす」に電話出演して、北方四島の返還解決には安定した政権が必要だと発言したといくつかの記事が伝えていた。

 私自身はロシアが第2次世界大戦の結果得た戦利品だとしている主張を覆す論理の構築・創造が解決の唯一のカギだと見ていたし、その線に添って2月16日(2011年)に《菅首相はロシア北方四島見解「第2次大戦の結果認めよ」を乗り超える否定論理構築の責任を負う - 『ニッポン情報解読』by手代木恕之》をエントリーしていたから、前原発言は非常に奇異に感じた――と言うよりも、正直に言うと何をバカげたことを言っていると思った。

 日本側の領有根拠は一貫して「北方四島は歴史的に見ても国際法上も日本固有の領土である」だが、ロシア側の「第2次大戦の結果」論は北方四島に関わる日本の歴史と国際法を第2次世界大戦が断ち切ったとする意味を持たせているのである。

 当然、日本側は第2次世界大戦以後も日本の歴史と国際法は継続して生き続けていることの証明が必要となる。「第2次大戦の結果認めよ」を乗り超える否定論理の構築である。

 このことは戦争に譬えるとよく理解できる。相手が「正義」を大義名分に掲げて戦争を仕掛けてきた場合、その戦争を受けて立つ側は武力で相手を負かすだけでは国際世論は納得せず、相手の「正義」だとする大義名分を実体は「非正義」に過ぎないとする自らの「正義」を実地に打ち立てることが必要となり、現実に打ち立てて国際世論をも納得させることができる。

 いわばロシア側の「第2次大戦の結果認めよ」に対して日本側の「第2次大戦の結果」は認められないとする論理・根拠の構築である。

 日本が行うべきはこの一点だと思うが、間違っているだろうか。

 上記記事では直接触れなかったが、「第2次大戦の結果」論を否定する論理として私の念頭にはこれまでも様々なブログ記事の中で紹介してきた《北方四島返還の新しいアプローチ/先住アイヌ民族と現住ロシア人との共同独立国家とする案 - 『ニッポン情報解読』by手代木恕之》に書いてあるアイヌ民族の領有としてアイヌ民族に返還、北方四島在住のロシア人との共存国家があった。

 この「第2次大戦の結果」の主張は最近の主だったところでは最初に紹介した2月16日のブログ記事に書き入れているが、2月15日にラブロフ露外相自身が直接発言している。

 ラブロフ外相「第2次世界大戦の結果を認めるという他の国がしていることを、日本がする以外に方法はない」

 ラブロフ外相のこの発言は菅首相が2月7日(2011年)の北方領土返還要求全国大会で2010年11月1日の「メドベージェフ大統領の国後島訪問は許し難い暴挙だ」と挨拶したことに対抗させた北方四島ロシア領有の正当性を主張する発言であるが、趣意は「北方四島を諦めろ」と言うことであろう。
 
 因みに浅野貴博新党大地衆院議員が菅内閣に提出した菅首相の「許し難い暴挙」発言に関わる質問主意書に対する答弁を《北方領土 露大統領への首相「暴挙」発言「国民の声を自らの言葉で述べた」と政府答弁書》MSN産経/2011.2.25 12:01)が伝えている。

 答弁「北方領土問題を一刻も早く解決してほしいと強く願う日本国民の思いを自らの言葉で述べたものだ。発言がわが国の国益を損ねたとは認識していない」――

 記事は質問主意書の内容を伝えていないが、浅野貴博議員の公式WEB《浅野貴博》に2月25日の衆議院予算委員会で前原外相に、「菅総理は2月7日の北方領土返還要求全国大会で、ロシアのメドベージェフ大統領の国後島訪問を『許しがたい暴挙』と形容したが、この発言は菅総理が自分で考えたものか」と質問していることを書き入れている。

 前原外相の答弁は、「菅総理の発言は、領土問題解決に向けた国民の思いを受け、総理自身が行ったもの。総理の発言一つ一つについて自分がコメントすることはない」となっている。

 閣議は一般的には火曜日と金曜日の午前中に行われると言うことだが、この2月25日は金曜日に当り、予算委開催前に行った閣議で決定した質問主意書に対する答弁に添った前原外相の答弁なのかもしれない。

 要するに「許し難い暴挙」は国民の思いを菅首相が代弁した。だが、実際はロシア側からより強硬な「第2次世界大戦の結果」論を炙り出すこととなった。

 こういった状況からも、日本側が「歴史的に見ても国際法上も我が国固有の領土だ」と主張する以上、ロシア側の「第2次大戦の結果」論を打ち破る歴史論・国際法論を構築・創造し、ロシア側と堂々と渡り合う以外に返還の方法は見い出すことができないことにならないだろうか。

 では、前原外相が土曜日のテレビの電話出演でどのような発言をしたか、記事に当たってみる。《首相1年交代、相手にされず=ロシアとの北方領土交渉-前原外相》時事ドットコム/2011/02/26-11:25)

 ロシア側が「第2次大戦の結果」を根拠に北方領土の領有権を主張していることに関して――

 前原外相「先方がいろいろな球を投げてくる。交渉術と言ってもいいかもしれない」

 ロシア側が北方四島領有正当性の根拠と看做して、「第2次大戦の結果」ロシア領となったとする意志に立って着々と開発を進め、軍事的な備えをも高めて実効支配を強固なものにしようとしている姿勢を前にして、果して「交渉術」で片付けていいのだろうか。

 どこか感覚がずれているとしか思えない。

 北方領土返還交渉の要件について―― 

 前原外相「安倍さん(晋三元首相)以降、だいたい1年くらいで首相が代わっている。こんな国とはまともに議論できないなというのが向こう(ロシア)側から透けて見える。安定した政治をつくらないと、どっしりした相撲は取れない」

 1年やそこらで内閣が変わったのでは相手も足許を見て満足な交渉はできない。長期政権が必要だと示唆している。

 これは間接的には菅内閣長期政権を望む意図を含んだ発言なのだろうか。だが、菅内閣長期政権ということなら、次期首相の声が高い前原外相の首相就任の時期は遠のくことになる。

 だとすると、前原政権となった場合の長期政権の必要性を訴えた発言なのだろうか。だが、長期政権はリーダーが自ら求めるものではなく、自身の指導力、統治能力、政治的創造性によって構築していくものであるはずである。「どっしりした相撲」を取るも取らないもリーダー自身の資質に負うということである。

 また、北方四島に関わる日本の歴史と国際法を第2次世界大戦が断ち切ったとするロシア側の「第2次大戦の結果」論を打ち破る方策として短期政権とか長期政権が果して要件となるのだろうか。

 外交の中でも北方四島返還は政権に関係なく継続性を保持しなければならない重要課題であるのだから、有識者を交えたチームをつくってロシア側の「第2次大戦の結果」論に対抗する日本側の否定論の構築を図ったなら、長期政権、短期政権、あるいは1年くらいの首相交代は問題ではなくなるはずである。

 要は「第2次大戦の結果」論打破の一点のみにかかっているはずだからだ。

 枝野幸男官房長官が24日の衆院予算委員会で自民党の下村博文氏の質問に答えて、我が国固有の領土である北方領土や竹島について「法的根拠のない状態で支配されている」と答弁したと、《枝野氏、北方4島と竹島は「法的根拠ない状態の支配」 「不法占拠」は避ける》MSN産経/2011.2.24 11:04)が伝えている。

 記事題名が書いているように、「不法占拠」発言を避けた「法的根拠ない状態の支配」だとする新しい対抗論ということらしい。

 詭弁家枝野「法的根拠のない状態で支配されている」

 詭弁家枝野「北方4島、竹島については歴史的にも法的に見ても、他の国がそこを事実上、支配する根拠はない。一般的にそういった事実上の支配は実効支配とはいっていない。わが国として、実効支配されていることを認めることはできない立場は明確だ」――

 枝野発言は単に日本の立場を述べているだけのことで、相手国の実効支配を脅かす力さえも備えていない。
 
 記事は最後に〈ロシアの北方領土や韓国の竹島への不法占拠については外務省がホームページで明確に主張しているが、民主党政権は相手国への配慮のため、記者会見などで「不法占拠」と明言することを封印している。〉と書いているが、「不法占拠」と言おうと、「法的根拠のない状態の支配」と言おうと、ロシア側の「第2次大戦の結果」論を論破する内容を備えた「不法占拠」、あるいは「法的根拠のない状態の支配」だと根拠づけることができなければ、何ら意味を持たない言葉となる。

 詭弁家枝野官房長官のこの「法的根拠のない状態の支配」発言に対してロシア側が早速反応している。《ロシア「北方領土領有は合法」 ヤルタ協定、国連憲章など論拠に》MSN産経/2011.2.24 22:57)

 2月25日の声明発表となっている。

 ロシア外務省「ロシアはこの領土(の領有)に関して必要な全ての権利を有している。ロシアの主権は完全に合法的で疑う余地はない」

 記事は、〈声明は領有権主張の根拠を「第二次大戦の結果」とし、それがヤルタ協定▽ポツダム宣言▽サンフランシスコ講和条約▽国連憲章107条(旧敵国条項)-で認証されたとしている。〉と解説している。

 ロシア側が2月25日に以前から主張していたことを改めて、ヤルタ協定、ポツダム宣言、サンフランシスコ講和条約、国連憲章107条(旧敵国条項)を根拠に挙げて北方四島の領有はロシアに帰属したと、あるいは間接的に北方四島に関わる日本の歴史と国際法を断ち切ったとして「第2次大戦の結果」論を掲げたのに対して、その「第2次大戦の結果」論を打ち破る強力な論理の構築・創造を行うべきを、前原外相は翌2月26日のテレビ電話出演で、ロシア側の「第2次大戦の結果」論を、「先方がいろいろな球を投げてくる。交渉術と言ってもいいかもしれない」と単なる「交渉術」だと判断している。

 どう考えても、返還交渉の解決困難を1年程度の首相交代ではどっしりとした交渉ができない障害だと理由づけることで責任逃れする逃げ口実にしか思えない発言としか受け取ることができない。

 次期首相の呼び声が高いが、この程度の判断能力・責任能力しか示し得ない男を首相にしてもいいのだろうか。例え首相になる幸運に見舞われたとしても、自身で返還交渉の要件として「1年くらいで首相が代わ」らない「安定した政治」を掲げたとしても、「1年くらいで首相が代わ」る同じ繰返しが待ち構えているようにしか思えない。

 菅首相もきっとそうなるに違いない同じ仲間入りということである。


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カダフィの市民殺戮/菅首相は通り一遍の非難で、前原は口先だけ強い非難

2011-02-26 09:21:15 | Weblog



 リビアで40年以上も独裁体制を敷いているカダフィ政権に対する民主化を求める反政府デモ隊の活動が多くの死傷者を出しながらも激しさを増している。リビア軍から離反者が出て反政府集団に味方する者、体制側からもカダフィ大佐の辞任を求める要職者や抗議の辞職を行う者が出現しているだけではなく、リビア第2の都市ベンガジが反政府勢力の支配下に入り、東部の主要都市でも反政府活動が活発化、それが首都トリポリにも波及、政府軍のデモ隊に対する攻撃で少なくない死傷者を出しているというから、最早反政府デモと言うよりも、内乱に近い状態になりつつあるのではないのか。

 リビアはカダフィ大佐を頂点に独裁体制を敷き、言論の抑圧、住民監視、体制批判者の拘束・収容、一族の権力と富の独占等々反民主体制下にあるのだから、国民自身が政府を選択し、政治に参画できる民主化は必然としなければならない。リビアに於いても民主化のレールは敷かれなければならないことを絶対としなけれがならないということである。

 反政府活動が激しさを帯び、対してカダフィ大佐が徹底抗戦を宣言、政府軍と衝突して死傷者が増えるに及んで日本の菅首相と前原外相がカダフィのリビア非難に出た。西側諸国首脳の非難に追随したのかもしれない。

 先ずは菅首相の非難。《首相 カダフィ政権を強く非難》NHK/2月25日 11時58分)

 何しろ市民・国民の味方、自称元市民派である。この自称と言うこと程信用が置けないものはない。

 菅首相「中東情勢が大変緊迫している。中でもリビアの情勢では、多数の死傷者が出ていて、政府側による攻撃があるということで、これは許されない行動だ。何としても平和裏に改革が進むことを求めたいし、安定した政権の在り方が実現されることを望んでいる」

 菅首相「この地域の動向は、経済やエネルギー、特に石油の問題に大きな影響を与え、わが国の経済にとっても、いろいろな形で影響するので、しっかりと情報を把握し、各省庁連携のもとで対応してほしい」

 菅首相は2月7日(2011年)午後、東京都千代田区で開かれた北方領土返還要求全国大会で次のように挨拶している。

 菅首相「北方四島問題は、日本外交にとって、極めて、重要な、課題であります。昨年、11月、メドベージェフ、ロシア大統領の、・・・・・北方領土、国後島、訪問は、許し難い暴挙であり、その直後の、APEC首脳会談の際に行われた、私と、メドベージェフロシア大統領との、会談に於いても、強く抗議をいたしました」

 メドベージェフ大統領との会談で「許し難い暴挙」という強い憤りの意志で抗議したとしたら、会談後の記者会見でも、会談に同席した福山長官の記者会でもそのことを国民に伝えたはずだが、「NHK」記事が公にした菅首相の発言は「北方四島は我が国固有の領土である」と、「大統領の北方領土訪問は、国民感情からも受け入れられない」の2点のみで、メドベージェフ大統領の発言は「私が自らロシア領土への訪問を決定した」の1点であった。

 だが、会談があった11月13日に会談終了後、メドベージェフ大統領はツイッターに次のように投稿していた。

 メドベージェフ大統領「日本の首相に会い、解決できない論争より経済協力の方が有益だと伝えた」

 しかしこの情報は政府側から発表されなかった。メドベージェフロシア大統領のツイッター発言はあくまでも北方四島はロシア領土であるとする意志を前提とした経済協力提案となっているために都合が悪いから発表しなかった、いわば隠したとしか考えることができない。

 このような情報隠蔽の経緯からすると、とても「許し難い暴挙」だとする強い憤りの意思で抗議したとは思えない。事実抗議したと解釈したとしても、何ら相手に通用しなかった「許し難い暴挙」の憤りだったことになる。

 現実問題としても会談後もロシアの北方四島開発が着々と進められ、尚且つ要人の訪問が続いている状況からしても抗議が何ら効果がなかったことの何よりの証明となっている。

 こういった現実の状況を無視して北方領土返還要求全国大会での挨拶だからと言って、「許し難い暴挙であり、その直後の、APEC首脳会談の際に行われた、私と、メドベージェフロシア大統領との、会談に於いても、強く抗議をいたしました」などと発言するのは後で強がる犬の遠吠え――口先だけで強がった言葉に過ぎないことになる。
 
 そして今回はリビア政府軍の反政府活動鎮圧活動を受けた一般市民殺傷を指して、「許し難い暴挙」ではなく、「許されない行動だ」と非難した。言葉を替えて言うと、菅首相の感受性は、あるいは情報解読能力は市民殺傷を「許し難い暴挙」と把握したのではなく、「許されない行動だ」と把握した。

 この市民殺傷が住民監視を行い、政府批判者を政治犯として逮捕・収容する人権抑圧の強権政治・独裁権力維持の発動を背景としていることを考慮したなら、基本的人権や民主主義を信じる一般的な感覚からしたなら、「許し難い暴挙」に見えるはずだが、菅首相にはより弱い表現の「許されない行動だ」ぐらいにしか見えなかった。その程度の感受性の持ち主であり、情報解読能力しか持ち合わせていなかった。

 だからだろう、「この地域の動向は、経済やエネルギー、特に石油の問題に大きな影響を与え、わが国の経済にとっても、いろいろな形で影響するので、しっかりと情報を把握し、各省庁連携のもとで対応してほしい」と指示することができた。

 リビアに於いても例え少なくない犠牲が生じたとしても国民自身が政府を選択し、政治に参画できる民主化を必然としなければならない政治状況を第一義的に求めるべきを求めずに、既に穏健な解決が望みようもないこの場に及んでも平和裡な改革と安定した政権の実現という穏健且つ無難な解決を望んでいるからこそ、「許し難い暴挙」ではなく、「許されない行動だ」の言葉を選ぶことになったに違いない。

 菅首相が一般市民のある程度の犠牲は止むを得ない代償だとして、国民自身が政府を選択し、政治に参画できる民主化を必然とすべきだと第一義的に求めるだけの感受性を備えていたなら、そういった情報解読者であったなら、カダフィ独裁体制と民主化闘争との戦いによって石油問題に悪影響を与え、日本経済に打撃を与えることになったとしてもリビアの民主化達成までの我慢だとして、そのことへの国内的備えを優先させる指示を出したろう。

 だが、カダフィの市民を犠牲とする軍事攻撃を批判しているものの、同時に国内経済への悪影響を考慮したのは実質的には国民自身が政府を選択し、政治に参画できる民主化の必然性への視線を持たなかったからだろう。

 いわば、自称元市民派だけあって、リビアの民主化よりも石油問題が与える自国経済をより優先させていた。だから、平和裏な改革の進展と安定した政権の実現を求めることとなった。

 前原外相もリビアを非難している。《リビア制裁、慎重に検討=前原外相》時事ドットコム/2011/02/25-15:02)

 25日の記者会見――

 前原外相(リビアへの制裁について)「議論はしていくが、リビアにいる何の罪もない方々のことを考え、慎重に対応しなくてはいけない」

  前原外相「無辜(むこ)の一般市民まで銃を使って無差別に殺傷するリビア政府は人道上絶対に許されない。カダフィ大佐は頭を冷やして考え直してもらいたい」――

 「カダフィ大佐は頭を冷やして考え直してもらいたい」とはなかなか勇ましい非難言葉となっている。誇り高い一国のリーダーに対して遠い国のたいしたこともない外務大臣が「頭を冷やせ」と言ったのである。勇ましい言葉でなくて何であろう。

 だが、この勇ましい言葉が実質的にカダフィの頭を冷やすに効果のある言葉となるかどうかが問題となる。頭を冷やさせる言葉とならなければ、菅首相の「許し難い暴挙」と同様、強がっただけの犬の遠吠えで終わる。

 リビアに於ける現下の状況は既に銃撃戦に入って片方のカダフィは徹底抗戦を呼びかけているのだから、現状ではカダフィ自らの意志による退陣は考えにくく、カダフィ独裁政権を倒すか、果たせずに反体制派が葬り去られるか、双方共に一気に決着をつけなければならない、どちらも引けない緊迫した分岐点に突入していると見なければならない。当然、西側の民主国家は当面の石油問題よりも反体制派が勝利する形の決着を望んでいるはずであり、アメリカ以下の西欧諸国が模索している制裁はカダフィの力を削ぎ、反体制派に有利な支援をとなる措置を望んでいるはずで、まさか石油問題を優先させたその逆ではあるまい。

 要するに緊急な決着が望まれるこの切迫した状況を考慮したなら、制裁がもたらすかもしれない市民の困難への回避を選択するよりも制裁によってカダフィの力を削ぎ、反体制派の民主化活動に力を与えて一気の決着に持っていく方策を選択すべきを、日本の前原外相は「リビアにいる何の罪もない方々のことを考え、慎重に対応しなくてはいけない」と前者を選択する、緊急な決着に役立たない悠長な発言となっている。

 また、「無辜(むこ)の一般市民まで銃を使って無差別に殺傷するリビア政府」の行為を「人道上絶対に許されない」と言うなら、それを阻止する方策を取って、言葉は初めて実効性を備えることができる。そうでなければ相手に通じないまま言っただけ、言葉のままで終わることになる。

 だが、制裁に慎重ということなら、あるいはこれまでの例が示しているようにアメリカ以下の西側諸国が制裁に出たなら、それに追随して制裁に出るということなら、カダフィの頭を冷やさせるどころか、前原外相の言葉は実質的には体裁上の言葉に過ぎないことを暴露することになる。

 口先番長と揶揄されているだけあって口先だけで言った「人道上絶対に許されない」であり、「カダフィ大佐は頭を冷やして考え直してもらいたい」が正体の制裁に慎重な姿勢ということであろう。

 外務大臣という立場上、あるいは次の首相と期待されている立場上、強く非難して目立たなければならなかった役柄上の義務感が色濃く出た発言と見たが、どうだろうか。


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菅首相の小沢代表当時子ども手当2万6千円金額に「びっくり」発言の無責任にびっくり

2011-02-25 08:48:20 | Weblog

 

 菅首相が9月に行う政権公約見直し検証の中に子ども手当まで含めることを昨2月24日(2010年)午後の衆院本会議で表明した。《2万6000円に「びっくり」=子ども手当論議時、満額困難を示唆-菅首相》時事ドットコム/2011/02/24-17:01)

 マニフェストズタズタの崩壊と言ったところだが、社民党の阿部知子政審会長の「現実の財政状況の中で満額2万6000円の給付は当面不可能だ」の指摘に記事題名にある「びっくり」発言が飛び出したと言う。

 菅首相「私もこの議論がなされている小沢(一郎)代表の当時、『2万6000円』と聞いたときに一瞬ちょっとびっくりしたことを覚えている」

 記事は解説している。〈当初、満額支給額の多さに驚き、実際の支給も困難との認識を示したとも受け取られる発言で、野党側の反発が予想される。〉――

 「NHK」記事をネタにTwitterに次のように投稿した。

 〈2011年02月24日(木) posted at 17:19:25

 首相 子ども手当の額見直しも http://nhk.jp/N3uP5zK9「小沢代表の当時に2万6000円に決まったと聞いたときは、一瞬、びっくりしたのを覚えている」。薄汚い責任転嫁。このマニフェストを基準に民主党の主要議員の立場で選挙を戦い政権交代を果たした以上実現に努力すべき。〉――

 自民党谷垣総裁、その他も無責任だと批判している。《子ども手当2万6千円、「議論当時びっくり」 首相答弁》asahi.com/2011年2月24日23時35分)

 谷垣総裁「小沢さんが提案したものだから責任を負わないぞ、と言っているように聞こえた。無責任極まる発言だ」

 石井啓一公明党政調会長「民主党マニフェストがいかにいい加減なものだったかが改めてはっきりした」

 小沢氏直系若手議員「あまりに腹が立った。同僚議員と首相発言への対抗策を練る」

 政府高官「首相は正直なのだが、本当のことを言ってはいけない時もある」

 普通はこういった無責任さを「正直」とする性格と一致させることはしないが、菅首相に関する性格評価ということなら、非常に的確な表現と言える。両者を関連価値と看做すと、無責任であることに常に正直であると言うことになり、野党時代の発言と首相になってからの180度違う発言との説明がつく。当然リーダーとしての資格はないということになるが、リーダーの資格がない政治家がリーダーとなっているという逆説を見事体現した菅首相というのも、その逆説までも見事正直に表していると言える。

 岡田克也幹事長「最終的に我々はマニフェストを選んでおり、びっくりしたけど合意したということだ」

 この発言は私がツイートした〈マニフェストを基準に民主党の主要議員の立場で選挙を戦い政権交代を果たした以上実現に努力すべき。〉に一致する。

 (以下は記事エントリー後の追加部分。インターネット上に岡田氏の子ども手当てを「月4万円程度にまで引き上げるべきだ」の発言が流布しているのに気づき、追加することにした。(2月25日午前11時30分)

《人口減少社会(コメント)》岡田かつや TALK-ABOUT/2006/01/31)  

 岡田克也「総選挙マニフェストでは、子どもの食費・被服費をおおむね賄える程度ということで1万6,000円という金額を設定しましたが、医療費や教育費などを考えると、まだ不十分です。将来的には、新たな財源を手当したうえで、月4万円程度にまで引き上げるべきだと私は考えています」――

 この発言は先の岡田幹事長の「最終的に我々はマニフェストを選んでおり、びっくりしたけど合意したということだ」のうち、「びっくりしたけど合意した」の発言に反する、矛盾した言葉となる。「びっくりした」主語に自身も入れて、「我々は」としているからだ。

 実際は「びっくり」どころか、「月4万円程度にまで引き上げる」ことを考えていた。無責任でいい加減な「びっくりしたけど合意したということだ」となる。

 菅首相にしても例え内心不承認であったとしても、表向きは承認した以上、内心の不承認を抑えたと言うことである。それを今更、「一瞬ちょっとびっくりしたことを覚えている」などと今になって表向きも不承認とするのは潔くないではないか。

 この「びっくり」発言、昨夜(24日夜)の首相官邸でのぶら下がりで次のように説明している。《NZ地震「家族の希望かなうよう支援」24日の菅首相》asahi.com/2011年2月24日21時1分)

 記者「今日の本会議で、阿部知子議員の質疑に対する答弁の中で、総理は『2万6000円は当面不可能だと指摘をいただいた。私も、小沢代表当時、2万6000円と聞いて一瞬ちょっとびっくりしたことを覚えている』と発言された。びっくり発言の真意は」

 菅首相「いや、言葉通り、当時その話を聞いたときに、びっくりしたというのを覚えていたものですから。当時の感想です」

 阿部知子議員の「当面不可能だ」との指摘に反応して「2万6000円と聞いて一瞬ちょっとびっくりした」は「当時の感想」だということは、その当時不可能だとの思いを抱いたと言うことであろう。

 だが、菅首相は民主党代表代行であった当時、当時の民主党作成のマニフェスト原案を了承している。《民主の政権公約原案、重点政策に4年間で22兆円》YOMIURI ONLINE/08年9月27日3時6分)

 2009年9月26日、〈小沢代表と菅代表代行、鳩山幹事長、直嶋政調会長らが党本部で会談し、原案を了承した。

 了承後の記者会見――

 直嶋氏「税金の無駄遣いをやめ、財政の仕組みを見直すことで、政策の裏付けとなる財源は十分確保できる」

 〈今後、重点項目などを精査し、10月上旬にも小沢氏が発表する。〉

 記事は最後にこう解説している。

 〈財源は、〈1〉国家公務員の人件費20%削減、独立行政法人への補助金カット、国の直轄事業として行う公共事業や調達コストの見直しなどで12・6兆円〈2〉所得控除の見直しなどで2・7兆円〈3〉外国為替資金特別会計や財政融資資金特別会計の運用益などで4兆円〈4〉政府資産の売却、租税特別措置の見直しなどで3兆円--により確保する考えだ。

ただ、与党が「財源に裏付けがない」との批判を強めていることから、今後、さらに精査する方針だ。〉――

 このような方針・決定に菅首相は民主党代表代行として深く関わっていた。

 また、小沢代表の記者会見の中で新聞記者が菅首相の子ども手当に関する発言を間接的に伝えている。《【小沢氏会見詳報】(2)完「中国の理解と協力が絶対必要」 》MSN産経/2009.4.14 19:52 )

 --政府が平成21年度補正予算に盛り込む15兆円の追加経済対策を発表したが、中身は子供への手当てなど、民主党の政策と非常に似通ったものが盛り込まれている。菅直人代表代行は、子ども手当1つとっても月額2万6000円と年額3万6000円で意味が違う、と言っているが、小沢氏は政府の対策の中身をどうみるか。また党内からは、補正予算案に対し修正案を出して議論を深めるべきとの意見もあるが、小沢氏自身はどうお考えか。

 「年額3万6000円」とは麻生内閣成立の「子育て応援特別手当」と銘打って就学前の3年間、第2子以降に支給する年額3万6000円(月額3000円に相当)のことである。

 いわば子ども手当月額2万6000円に乗っかって、「子育て応援特別手当」の年額3万6000円と比較して価値あること、優れていることとしたのである。

 それを今更、「小沢(一郎)代表の当時、『2万6000円』と聞いたときに一瞬ちょっとびっくりした」はあまりにも無責任な、誰もがびっくりする発言ではないか。

 参考までにこのときの上記問いに対する小沢代表の答弁のみを記してみる。

 小沢代表「あのー、政府与党の予算案っちゅうのは、以前からも申し上げておりますように、結局、役所で積み上げてきたものをまとめだけの作業でしかありません。つねに与党から役所に、お前のところはいくら出せ出せという話で積み上がってきたものがそうですから。基本的に、特徴としては直接、国民生活のレベルアップルに資するというような政策は非常に少ないということですね。いろんな事業やら団体やらというたぐいのところに、かなり多くのお金が使われ、この間、それだけ無駄が出ている、というのが特徴の1つ。

 それからもう1つは、あのー、子ども手当の話も出たけども、3歳から5歳だっけ? それで1年間でしょ? なんかもう、1万2000円の(定額給付金の)話と同じように、ほんとにこの日本の経済社会を再建するというよりも、とにかく、選挙前だし、なんでもいいから短期的に当面ばらまくという感じになっておって、いわゆる、国民一人一人が将来、長期にわたって生活設計をきちんと作っていく、という、そういうことにまったく足しにならない形でみんな組み立てられておりますので。この2つが特徴的なことだと思いますが、われわれとしてはもっと、当面の経済対策であると同時に、一番の問題は将来に対する不安、年金やその他のセーフティーネット、雇用やその他のセーフティーネット含めてですね、将来不安っちゅうのが余計、消費を減退させてるわけですよ。だから、国民の消費支出が6割、アメリカでは7割ですけれども、これをきちんと増大させていくためには、所得の増加と同時に、長期的な不安を取り除く、そういうセーフティーネットの新たな構築というのが大事だと思っております。その意味で、私たちの言っている施策は、両方とも、制度的に仕組み的に、これを定着させていこうという考え方。それから、個人個人の生活に資するという、途中での…いわゆる俗なことでいえばピンハネみたいなムダをやめようと。こういう2つの点に重点をおいて考えておりますので、基本的にこの考え方、政策の成り立ちそのものが違うと思っております。

 修正も…もし出たら、修正案を出してやるっていうことも1つかもしれませんけれども、予算のことについては特に、衆院の優越が認められておりますし、自民党が役所で積み上げてきたものを変えるだけの能力、力はありませんので、まあ、無理押ししてでも、ということになるだろうと思います。ですから野党としての限界はありますけども、方法論としては修正案を作ってやったほうがいいのか、あるいは基本的な論議を強く主張していったほうがいいのか、そこはもう、私っちゅうよりも、幹事長はじめ政調会長など、みなさんの判断におまかせしようと思ってます」――

 以前ブログに取上げているが、小沢元代表は1月16日(2011年)日曜日フジテレビ「新報道2001」に出演して、子ども手当に関して次のように発言している。

 平井文夫フジテレビ報道局専任局長「例えば、子ども手当にしても、まあ、あの、国民は政権交代を、その熱狂的に受け入れましたけれども、いざ、政権交代してみたらですね、例えば子ども手当一つとっても、色々問題もあることが分かってきた、じゃないでしょうか。財源だけの問題でないような気もするんですけどね」

 小沢元代表「いや、今言われているのは財源でしょう。それから政策の中身についは、また別の議論でしょう。だから、ごっちゃにして話しちゃダメですよ。何でもすぐごっちゃになっちゃうからいけないんでね。

 そのー、子ども手当も、おー、政策そのものもいいと言う人もあれば、悪いという人もありますよ、それは。当たり前なんですよ、そんなことは。
 
 だけども、例えばヨーロッパでも、フランスは十何年前から、フランスも、あのー、ドイツも子ども手当ちゃんと出してますよ、日本より多い。

 そしてそれによって、出生率も高まっていますよ。

 結果としておカネだけじゃないとは、あのー、思いますが。だから、そういうことも踏まえながら、我々は訴えたわけですから、だから、それをできるだけ実現すると、いうことが我々の姿勢です」

 要するにフランスやドイツの子ども手当を見習って政策作りを行ったということであろう。当然、自民党の児童手当や子育て応援特別手当よりも優越した政策であるかを説明するとき、フランスやドイツの成功例を引いたはずであり、菅首相にしてもその当時びっくりしたとしても、見習ったはずである。

 以下は《フランスの子ども手当はこんなに手厚い!》All About /2010年4月トピックス)を参考。金額は2010年4月現在。 

 フランスは消費税は19.6%であるが、食料品、住宅関係など生活必需品の場合は税率5.5%の軽減税率を設けている上に、「家族手当」の名目で、子ども1人のみでは手当を受け取ることはできないが、所得制限なしで、子どもが2人いる場合、月額124.54ユーロ(月額約1万5500円)、3人目以降は1人ごとに月額159.57ユーロ(月額約2万円)。

 子どもが11歳以上になると月額35.03ユーロ(月額約4400円)、16歳以上になると月額62.27ユーロ(月額約7800円)の加算。この加算額は子どもが1人(なし)、2人(1人分だけ)、3人以上(全員分)と、子どもの数によって変わるという。

 1人の子どもがいるだけでは家族手当を受け取ることはできないのは「2人以上の子どもを奨励する」ことによって出生率を上げる目的のフランスの育児支援政策となっているからだという。

 そのほかにも子どもが3人以上いる場合の各子どもが20歳に到達した時点から1年間、月額78.75ユーロ(月額約1万円)支給の成人手当や3歳から21歳までの子どもがいる低所得世帯に月額162.10ユーロ(月額約2万円)支給の低所得家庭手当がある。

 さらに離婚した場合も含めて片方の親を失った場合は月額87.57ユーロ(月額約1万1000円)、両方の親を失った場合は月額116.76ユーロ(月額約1万4500円)支給の孤児手当、所得制限のある出産一時金、子どもが出生してから3歳になるまで(養子の場合は養子になった日から3年間)、月額178.84ユーロ(月額約2万2000円)支給の基礎手当、その他があると言う。

 今年中国に抜かれて世界第3位に落ちたとは言え、これまで長い間世界第2位を保ってきた経済大国日本が日本よりも下位の世界第5位の経済大国フランスに社会が共に育てるとしている子ども支援策が劣ったのでは恥ずかしくないだろうか。

 だが、菅首相は恥ずかしくならずに、2万6000円の金額にびっくりしたと言い、9月には金額を見直すとしている。見直すとは金額を下げるということなのだろう。最初の年は月額1万3000円、次からは月額2万6000円とマニフェストで約束して多くの票を釣っておきながら、満足に支給しないうちから見直すでは、これでは「びっくり」しない国民がどれ程いるだろうか。

 しかも消費税を10%にまで上げようとしている。食品等に対する軽減税率を設けるかどうかまでまだはっきりとさせていない。

 要するに国家公務員の人件費20%削減や独立行政法人への補助金カット、その他諸々の見直し、あるいは衆議院の定数削減、予算の全面的組替え等を行って財源生み出すとした当初の方針を無責任にも当初の方針のまま手付かずに放置しているところを見ると、実行するだけの政治主導能力と覚悟を全く以って欠いているとしか見えない。

 その程度のリーダーだと言うことなのだろう、菅首相は。

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菅首相が言うようにニュージーランド地震救援隊派遣は果して迅速な対応だったのか

2011-02-24 09:11:43 | Weblog



 昨2月23日、午後4時から菅首相対谷口自民党総裁、山口公明党代表との党首討論が参議院第一委員会室・国家基本政策委員会合同審査会主催で行われた。最初の菅首相対谷口自民総裁の党首討論の冒頭、谷口自民総裁が日本時間22日午前9時前発生のニュージーランド南部地震を取り上げて、その対応が少々遅れていなかったか問い質した。

 対して菅首相は「迅速な対応ができた」と答えたが、果して迅速な対応だったろうか、地震に関する遣り取りのみを取り上げて私なりに検証してみる。
 

 《(1)首相、小沢氏の処分に「党としてのけじめはできた」(23日午後)》MSN産経/2011.2.23 17:02)  

 菅直人首相は23日午後、首相就任後、2回目となる自民党の谷垣禎一総裁との党首討論に臨み、民主党の小沢一郎元代表を党員資格停止処分としたことについて、「党としてのけじめはできた」と述べた。詳細は以下の通り。

 谷垣自民党総裁「まず、冒頭に昨日、ニュージーランドのクライストチャーチで直下型の大きな地震が起きました。被害も甚大であり、心からお見舞いを申し上げますと同時に、邦人も安否が確認されていない方がまだたくさんいらっしゃるわけですね。ですから、政府には、まず邦人の保護と被災地の支援に全力を挙げていただきたい、このことをまず、お願いしておきます。

 実は、あの-。きょう、昼前にですね、現地に、クライストチャーチに住んでおられる日本人の方から、悲痛な電話をいただきました。あの、わが自民党本部にお電話があったんですが、あの-、富山の方々が通っておられる学校、2次災害等々心配されるんで、救援活動が止まっていると。非常に不安に思っておられるわけですね。もうそうなると、日本からの救援隊が命綱だと。1日も早く政府専用機と救援隊を送ってもらいたい。台湾とニュージーランドは、あっ、台湾とオーストラリアはもう来て、活動しているけど、日の丸を見たい、こういうご趣旨でございました。

 もうすでに、2時過ぎに日本から発たれたようですから、この方々たちにはご苦労ですが、がんばっていただきたいと思います。ただ、私はですね、これ、きのう民主党はいろいろ、党内のいろいろのもめ事を解決しておられたと思いますが、私は昨日から取り組まれたら、昨日の夜にはもうたてたんじゃないか、そうすると、今朝には着いて、もう行動を開始できたんじゃないか、こういうふうに思います
 
 菅首相「まず、昨日、日本時間の午前8時51分にニュージーランド南部で地震が発生いたしました。そして、昨日の段階で第1回の関係閣僚会議を開き、きょうの予算委員会の前に第2回の関係閣僚会議を開きました。ニュージーランドから正式な国際緊急援助隊の派遣の要請がありました。

 それまでに、既に、昨日の段階で3人の先遣隊を民間機で出して、きょう朝には現地に入っておりました。その情報も合わせて、成田にあるいろいろな資材を、千歳にありました政府専用機を成田に運び、そして、約8、70名の消防庁、あるいは警察庁、あるいは海上保安庁などの中から選抜したメンバーを、その政府専用機できょうの午後2時過ぎに、成田から出発をいたしました。あす午前の1時には、現地に到着することになっております。まずは、被災に遭われた方にお見舞いを申し上げますとともに日本の留学生なども災害に遭われてますので、そういう人たちの救出はもとより、この被災に遭われた皆さんに対する救出活動に全力をあげていきたい、私はこのまだ支援の要請がある前に、3人の先遣隊を出したということはその後の作業に大変、迅速な対応ができた、私はこのように思っているところであります」

 谷垣総裁は菅首相の「大変、迅速な対応ができた」の発言に対して一言も言及していないから、「迅速な対応」を事実として受け入れたのだろう

 地震発生からの政府対応を他の記事も参考にしながら時系列で箇条書きにしてみる。

 ●日本時間22日午前8時51分(現地時間2月22日午後1時前)、ニュージーランド南部で地震発生。地
  震の規模はマグニチュード6.3。
 ●22日、政府は地震発生後、ニュージーランド政府に対して直ちに緊急援助の用意があると伝達。(
  事ドットコム

 ●22日夕、情報収集のための先遣隊として外務省や国際協力機構(JICA)、などによる3人の調査
  チームが日本を出発。
 ●22日夜、ケネディ駐日ニュージーランド大使が外務省で前原外相と会い、正式に支援を要請。
 ●23日午前第1回関係閣僚会議
 ●23日午前、予算委員会の前に第2回の関係閣僚会議。
 ●23日午後2時半、警察関係者22人、海上保安庁14人、消防関係者17人と、外務省や国際協力機
  構(JICA)職員、医師らの計67人の選抜メンバーからなる国際緊急援助隊が政府専用機成田から出
  発。
 ●24日午前4時15分(日本時間同24日0時15分)頃、被災地のクライストチャーチに到着。

 菅首相は「成田にあるいろいろな資材を、千歳にありました政府専用機を成田に運び、そして、約8、70名の消防庁、あるいは警察庁、あるいは海上保安庁などの中から選抜したメンバーを、その政府専用機できょうの午後2時過ぎに、成田から出発をいたしました」と言っているが、もう少し日本の主語と述語の関係を成り立たせた起承転結で話して貰いたいものだが、そもそもから合理的感覚を欠いているから無理な注文かもしれないが、ケネディ駐日ニュージーランド大使から正式な支援要請を受けた22日夜以降のことであるはずだ。

 なぜなら、要請を受けたのちの直ちの出発ではなく、半日以上、あるいは15、6時間前後置いた23日午後2時半となっているからだ。現地到着は地震発生の日本時間22日午前8時51分(現地時間2月22日午後1時前)から1日半経過した約39時間後の日本時間同24日0時15分(現地時間24日午前4時15分)となっている。

 そして谷口自民総裁の指摘によるが、何よりも「台湾とオーストラリア」が既に現地で活動している。

 オーストラリアはニュージーランドに近いから早いのは当然だとしても、台湾と日本との時差は約1時間だと言うから、台湾-ニュージーランド間は約3時間の時差で、NHKニュースが言っていた日本-ニュージーランド間の約4時間の時差と1時間の違いしかない。「台湾週報」によると、台湾政府は地震発生当日の2月22日夜に捜索救援隊22名を派遣している。

 これは速い遅いの競争で言っているのではなく、危機管理上の初動対応の迅速性の点で重要だからである。この迅速性は外国の自然災害に関してのみ必要な対応能力としてあるのではなく、国内の自然災害に於いても生かすことができ、適応可能な能力となるから、国内外の場所如何に関わらず、常に的確な判断に基づいた迅速な初動対応が求められることになり、いずれの場合でも必要とされる要請に対応可能な初動態勢を取ることができているかどうかの常なるバロメーターとなるはずである。

 条件にもよるが、一般的には地震発生から72時間が生存者救出の限界とされているのだから、1時間の遅れも許されないとする態度で危機管理に臨まなければ、より多くの人命救助は自ら困難な作業に陥れることになる。

 問題は22日夜、ケネディ駐日ニュージーランド大使から正式な支援要請を受けてから、千歳空港に駐機していた政府専用機を成田に移動させ、成田空港に保管していたのか、「成田にあるいろいろな資材」を政府専用機に積み、メンバーを乗降させて出発させたという手順である。そして地震発生から1日以上、約29時間経過した23日午後2時半、国際緊急援助隊を乗せた政府専用機が成田から出発。
 
 22日の何時の段階か正確には分からないが、日本時間22日午前8時51分地震発生後、菅内閣はニュージーランド政府に対して直ちに緊急援助の用意があると伝達しているのである。

 その段階前後で、理想を言うなら、地震発生直後の震度を知った段階で菅首相はなぜ政府専用機を千歳から成田空港に移動させる手続きを取らなかったのだろうか。勿論、その段階ではニュージーランド政府が緊急援助隊派遣の申入れを受け入れるかどうかは分からない。だが、ニュージーランド政府の要請受け入れを受けてから緊急援助隊派遣準備の行動に移るのでは、派遣の申し出から要請を受取るまでの時間のロスが生じる。

 例え申し出を、多分丁重にだろう、断られたとしても、緊急援助を申し出た段階前後の時点で政府専用機を千歳から成田に回し、必要とする人材と人員を用意し、成田空港近くのホテルに待機させ、要請を受け次第出発できるように準備しておくべきではなかったろうか。

 今回の地震では少なくない日本人が被害を受け、救助されずに行方不明者を出しているといった特殊な事情に関係なく、こういった早手回しの初動対応が国内外を問わないすべての自然災害には必要な危機管理上の初動対応となるはずである。

 勿論、ニュージーランド政府から緊急援助隊の派遣は必要ないと断られた場合は早手回しの準備にかかった時間とカネを無駄にすることになるが、あらゆる場合の自然災害に備えた初動対応を遅滞なく的確に発動する訓練ともなる機会と看做して、そのことへの投資と見れば、このような訓練が将来生きて一人でも多くの被害者の救出に役立つ可能性も考えることができ、少しくらいの時間とカネの無駄、メンバーを煩わせたことを帳消しにして決して少なくない利益をもたらすはずである。

 2010年1月12日16時53分日本時間=13 日6時53分)発生のハイチ地震でも民主党は当時の鳩山内閣が国際援助隊医療チーム派遣の初動対応が遅れたと批判された過去の実績を抱えている。各国が早々と救援隊や医療チームを派遣した中で、医療部隊を派遣したものの、治安の悪化状況を理由に救出部隊を派遣しなかったことも批判を受けた。

 当時の岡田外相は救出部隊を派遣しなかったことと医療部隊派遣の遅れを次のように釈明している。《ハイチ支援 遅れの指摘で検証》NHK/NHK/10年1月22日 21時44分)

 岡田外相「現地は、国連のPKO=平和維持活動の部隊が展開するなど、治安情勢がきわめて悪いという特殊事情があることを理解してもらいたい。アメリカや中国は、PKO部隊に隊員を派遣しており、自国の救援隊を守ることができるが、日本はそういう体制にはない」

 「現地の状況を把握するため、先に出した緊急調査チームとともに医療チームを出発させ、近くで待機させれば、1日ぐらい早く現地に到着できたかもしれない」――

 派遣したのが救出部隊ではなく医療部隊であったとしても、医者不足・医薬品不足の状況にあったことと地震発生から72時間=3日間が生存者救出の限界とされている関係からして遅い被救出者程早い治療を必要とする切迫した状況を考えると、その「1日」が大切であり、その「1日」をムダにしてはならない。にも関わらず、後付けで「1日ぐらい早く現地に到着できたかもしれない」と言うことができるのは人命意識を欠いているからこそ言える発言であろう。 
 
 いずれにしても対応の的確性について「今後の災害に備えて」より早い支援ができなかったか外務省内で検証を行う考えを示した。

 「近くで待機させれば」とは、ハイチの首都まで飛行機で1時間半のアメリカのフロリダ半島マイアミか国境を接している隣国ドミニカ共和国のことを指す。

 だが、緊急調査チームを先遣させ、その調査を待って遠い国、日本から出発させたために他国に遅れを取ることになった。当然、医者不足・医薬品不足の状況にあったから、到着の遅れが救える命を死なせてしまう事態を生じせしめたことも考えることができる。

 このことは2010年1月22日の当ブログ《岡田外務大臣のハイチ対応に見せた詭弁-『ニッポン情報解読』by手代木恕之》に書いた。

 岡田首相はハイチ地震における危機管理、初動対応が的確に機能したかどうかの検証を行うとした。今回のニュージーランド地震に於けるニュージーランド政府からの正式支援要請を受けてからの政府専用機やメンバーの準備が岡田外相の検証とハイチ地震経験の学習に応じた対応だとしたら、初動対応に不足を見い出さざるを得ない。

 検証を約束しながら、それを怠っていたとしたら、ハイチと同じことの繰返しを今回のニュージーランド地震でも演じたことになる。

 岡田外相は2010年1月22日夕方、外務省会見室で記者会見を行っている。《外務大臣会見記録 ハイチにおける地震に対する支援》

 岡田外相「国会でも申し上げましたが、調査隊が出て、それから一日か二日置いて本隊が出たということを見た時に、なるべく早く本隊も出して、そして例えばマイアミで待機をするとかそういうことはできたかもしれません。見込みで出すということですね。その場合に一日ぐらい早く着いたかもしれないという思いはあります。今日は小池議員からもそういうことはやるべきだというお話もありました。それは税金の無駄遣いではないと。もちろん時と場合による訳ですけれども、私(大臣)自身はその可能性が果たしてなかったのかどうか、今後のこともありますのでよく検証してみたいと考えているところであります」

 例え「税金のムダ遣い」となったとしても、1人でも多くの人命救助に役立てば、あるいは1人でも多くの人命救助につながる訓練となるなら、税金の有効な遣い方となる。

 1年前にハイチ地震で学習しているはずだが、今回地震発生後直ちに救援隊の準備に入り、成田空港で待機させて1時間でも時間を省くといったことはしなかった。単にそれが時間的に早いというだけの調査の先遣隊を先ず派遣し、次に派遣要請を待って派遣飛行機と派遣メンバー、さらに必要資材の準備に入る過去の例に倣った手順を機械的に踏襲している姿しか浮かばない。

 地震発生当日に「台湾とオーストラリア」の救援隊が現地入りしているというのに、菅首相は「私はこのまだ支援の要請がある前に、3人の先遣隊を出したということはその後の作業に大変、迅速な対応ができた、私はこのように思っているところであります」と、先遣隊の派遣を以って、その後の作業でも「迅速な対応ができた」と自身の危機管理に於ける初動対応を自負している。

 どことなく抜けている。何が抜けているかと言うと、勿論人命意識である。菅首相の念頭にあったのは内閣支持率低下の状況下で初動対応が遅れた場合の批判への回避意識のみであったのではないだろうか。

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菅首相は小沢氏処分が「党のケジメ」なら、内閣の責任者としての自身のケジメを対比させなければならない

2011-02-23 09:09:31 | Weblog

 

 民主党は昨2月22日午前(2011年)開催の倫理委員会(委員長・渡部恒三最高顧問)で検察審強制起訴の判決確定まで党員資格停止処分とした小沢元代表から処分に対する弁明を聴取。小沢氏は「合理的な理由が見あたらない」などとして党処分の不当を主張。だが、同日午後開催の常任幹事会で党員資格停止処分の最終決定を下した。

 小沢氏は常任幹事会に対してこの決定に不服を申し立てる方向で調整を進める予定だということだが、処分理由の全文を「MSN産経」が記事にしているから、参考引用してみる。

  《民主党常任幹事会の決定全文》MSN産経/2011.2.23 01:47)
 
 民主党常任幹事会で決定した小沢一郎元代表への処分全文は以下の通り。

           ◇

 2011年2月22日

 民主党第514回常任幹事会決定

 小沢一郎議員に対する党倫理規則の適用について

                 常任幹事会

 1月31日、わが党所属の小沢一郎議員は、東京第五検察審査会の政治資金規正法違反被疑事件についての起訴議決にもとづき、起訴された。

 本事案について常任幹事会は、2月15日に「小沢一郎議員に対する党倫理規則の適用」にかかる役員会発議について協議を行い、倫理規則第6条にもとづき倫理委員会の意見を聴く手続きを決定した。

 これについて本日、倫理委員会より別紙の通り意見が答申されたことを受け、常任幹事会としてあらためて協議を行った結果、以下の結論に達した。

 これまで、党所属国会議員が刑事事犯等に問われて逮捕・起訴等された場合には、離党届の受理もしくは倫理規則にもとづく処分を行ってきている。検察審査会の起訴議決後にもとづく起訴が通常の検察による起訴とは異なることについての一定の考慮は必要であるが、法にもとづき国会議員本人が起訴された事実は重い。

 判決確定までは推定無罪の原則が働くが、それは検察による通常の起訴の場合も同様である。また、公訴事実の認定は司法判断に委ねられているところであり、処分の是非についての判断材料とすべきではない。

 また、小沢議員に関しては、元秘書3名が逮捕・起訴されている。政治活動に関わり、秘書が逮捕・起訴された過去の事例を見ると、わが党所属議員に限らず、自らの政治責任を認め、公職の辞任や議員辞職、離党などの対応がなされている。

 元秘書の逮捕等をもってただちに「倫理規範に反する行為」に該当するとは認められないものの、小沢議員の資金管理団体に関し、元秘書が逮捕・起訴されていることもあわせて考慮すべき事項である。

 さらに、これまで執行部は役員会の決定にもとづき、政治倫理審査会に速やかに出席するよう要請してきたが、小沢議員はこれに応じていない。これについても、ただちに「倫理規範に反する行為」に該当するとは認められないものの、考慮すべき事項である。

 したがって、常任幹事会としては、以上の経緯を踏まえつつ、法にもとづき小沢議員本人が検察審査会の起訴議決にもとづき起訴された事実を「倫理規範に反する行為」(倫理規則第2条第一号「汚職、選挙違反ならびに政治資金規正法令違反、刑事事犯等、政治倫理に反し、または党の品位を汚す行為」)と認め、その上で検察審査会の議決にもとづく起訴は通常の検察による起訴と異なる点があることを踏まえ、小沢議員に対して党倫理規則を適用し、当該事件の判決が確定するまでの間の「党員資格の停止」(倫理規則第4条第二号)とする。

 なお、「党員資格停止期間中の権利制限等の指針」(2008年12月24日両院議員総会承認)において、「党員資格停止処分の期間は、一回の処分において原則として最長6カ月以内とする」とされているところであるが、裁判手続きに要する期間を予見することはできないため、当該指針の例外として、一般職公務員についての「起訴休職」を類推し、その期間を判決確定までの間とする。

 また、判決結果如何により、別途処分が検討される場合があることを付記する。

                      以上

 「公訴事実の認定は司法判断に委ねられているところであり、処分の是非についての判断材料とすべきではない」

 ここにすべての問題点がある。司法判断がどう認定するか、無罪とするか、有罪とするか、判決が下されるまで誰にも分からない。例え倫理委員会と名付けようと常任幹事会と名付けようと、それらのメンバーにしても判断することはできない。当然、誰もが「処分の是非についての判断材料」とすることは不可能だが、「判決確定までは推定無罪の原則が働くが」と言いつつ、それを無視して、誰にとっても不可能な「処分の是非についての判断材料」に代えて自らの判断を持ってきて処分する独断を行っている。

 このことは小沢氏の元秘書3名が逮捕・起訴されていることを以って、3名にしても有罪が決定するまでは推定無罪の状態にあることを問題外として、「政治活動に関わり、秘書が逮捕・起訴された過去の事例を見ると、わが党所属議員に限らず、自らの政治責任を認め、公職の辞任や議員辞職、離党などの対応がなされている」との理屈で小沢氏の政治責任に、無罪なら免れることになる可能性を無視して「推定無罪の原則」の状態にあるうちから結びつけていることによって起きている独断であろう。

 「推定無罪の原則」と言いつつ、それを度外視して自らの判断を絶対としていることは最後の一文に如実に表れている。「また、判決結果如何により、別途処分が検討される場合があることを付記する」

 「推定無罪」の状態にありながら、政治責任の名のもと、有罪か無罪かの判決が確定する前に党員資格停止処分とし、さらに「判決結果如何により、別途処分が検討される場合がある」と付記する。

 政治責任の謂いが常に有罪だとする意識を背中合わせとした処分の経過を辿っているからこその有罪をより前提とした「別途処分」と言うことであろう。

 もしそうでない、あくまでも純粋に政治責任に則った党員資格停止であり、「別途処分」は法的な「判決結果如何」に従う罰則だと言うなら、小沢氏に対して処分を下した側も、有罪か無罪かによって政治責任自体が大きく変化するはずだし、場合によっては消滅する可能性も考え得るのだから、そうなった場合の自分達の政治責任をも対比させておくべきだろう。

 有罪か無罪か分からない「推定無罪」の状態のうちから小沢氏の政治責任のみを問い、「推定無罪」を無視することの自分達の政治責任を対比させないのは公正な態度とは言えない。 

 相手は小沢一郎である。無罪であった場合は議員辞職を以って自らの政治責任としますぐらいは書くべきだろう。

 菅首相がぶら下がりで小沢氏に対する党員資格停止処分について発言している。《小沢氏処分決定「党のけじめとして」 22日の菅首相》asahi.com/2011年2月22日20時26分)

 ――先ほど民主党の常任幹事会で、小沢元代表の処分について党員資格停止を判決確定まで実施すると決定した。これで党としてのけじめはついたか。

 菅首相「はい。丁寧な手続きを経て、党のけじめとしてですね、決めたと。このように私は理解しています」

 ――一方で、小沢元代表は党倫理委員会に対して「検察審査会と検察による起訴は違う」「規約以上の党員資格停止期間は著しく不穏当」などと主張した。どのように受けとめるか。

 菅首相「今申し上げたとおり、きちんとですね、丁寧な手順を踏んで、そういう小沢元代表からの主張もきちんとですね、倫理委員会で聞いたうえで、けじめを付けたということです」――

 百歩譲って処分を党のケジメとすることは無視するとしても、菅首相が民主党を統轄する党代表であり、内閣運営の最終責任者である以上、倫理委員会や常任幹事会のメンバー同様に処分の結果起こり得る党内状況の変化、政権運営の障害が生じた場合の自らの結果責任をどうつけるかのケジメを対比させないのは公平な態度とは言えないし、覚悟の所在さえ見い出し得ないことになる。

 「ケジメをつけた結果、何が起ころうと、どのような責任も負います」の覚悟のケジメ意識が小沢処分と対比させた菅首相自身の政治責任であり、そのような覚悟を持って処分を行ったとする政治責任の経過を辿るべきだが、「党のケジメ」を言うだけで、そのことに対比させた自身の責任に言及しない態度からは覚悟も結果責任意識も何ら感じ取ることはできない。

 指導力は結果責任意識を常に強く保持し、結果責任を常に負う前提意識で行動することによってよりよく発揮し得る。指導力を元々欠いているから、党のケジメを言うだけで、自身のケジメとすべき結果責任意識が前面に現れることがないのだろう。

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菅首相が菅内閣の経済政策によって景気がよくなってきたとする恥知らずな成果誇示

2011-02-22 10:26:22 | Weblog



 昨2月21日衆議院予算委のトップバッターは民主党本多平直議員。菅グループ所属で結婚の媒酌人は菅直人だそうだが、だからなのか、ヨイショ発言が目立ち、どうも菅首相のいいことを見せるためのヤラセ臭い質疑応答に見えた。

 本多平直「えー、民主党の本多平直です。えー、今日は『政治とカネ』についての集中審議ということでありますけれども、え、先ず冒頭で、えー、総理に、えー、お伺いをしたいと思います。

 あのー、私は実は、えー、ずっと国民のための政治を実現するために、何としても政権交代をして、えー、民主党政権を実現したいと思ってまいりました。ま、その中でも、特に私の個人の思いとしては、何としても菅直人という男を総理にして、仕事をさせてみたい、そういう思いでずっと、政治活動をしてまいりました。

 まあ、この、菅さん、総理になってから、8ヶ月、その仕事をされてきました。今大変、えー、国民のみなさんの声が、色々厳しいものが、あります。そして党内にも厳しい声があるように聞いています。えー、そいう中でありますけれども、まだまだ、国民のみなさんに伝えられていない部分、伝え切れなかった部分、えー、これまでの実績も、これからの決意も含めて、是非お聞かせを、改めていただきたいと思います」

 本多平直が「党内にも厳しい声があるように聞いています」と伝聞形式としてその存在を不明確化しようとしたのは菅首相の失点隠しを図ったと言うことだろう。

 菅首相「大変暖かい、えー…、言葉をかけていただいて、ありがとうございます。私が、あー、昨年の6月に鳩山内閣を引き継いで、えー、政権…、の、責任者となって、えー…8ヶ月が経とうとしています。

 私はこの中で、えー…先ず(左手を肩の近くに上げて)緊急にやらなければならないこと、えー、そして、えー、国民の約束として、えー、進めなければいけないこと、さらにはこれから先のことを見通してやらなければいけないこと、この三つをやってきたつもりであります。

 緊急にやらなければいけないことは、えー、一昨年の政権交代のときに、リーマンショックの直後でありまして、大変厳しい経済状況でありました。そして鳩山内閣、私の内閣と引き続き、経済対策を次々と打ってまいりました。

 私になりましてからは、9月には、あ、予備費を使った、あー、ステップワン。そして、えー、12月には、あー、補正予算。そして今回、来年度の、おー、予算を、おー、みなさんに審議をお願いしております。

 今、ヤジで、全然よくなっていないという声がありましたけども、(一枚の用紙を両手に持って)この数字を見て、いただければですね、(右手に持ち替えて、)キャッ(「客観的に」と言おうとしたのだろうが、やめて)、結果ははっきりとしていると思います。

 2009年の、実質経済成長率がマイナス6.3であったのに対して、2010年、の、実質経済成長は、プラス3.9(声を高め)、であります。また、失業率がマイナス5.3であった2009年に比べて、5%を切って、4.9%まで、失業率も低下(「経過」に聞こえたが)をいたしました。これは客観的な数字です。

 それに加えて、デフレの一つの指標となっている、消費者物価指数も2009年の-2.2からやっと0.0(ゼロ)、デフレの脱却が見えてきたところまで、(用紙を上下に動かしながら声を強調)きたわけであります。

 そういった意味で、今ご審議をいただいている、ステップスリーの、この、予算を、成立させ、(右手を上げ、一段と声を高めて)実行させることで、いよいよ本格的な、経済成長の道筋に、乗せることができる。私はまさに胸突き八丁のところに今、(用紙を上下に動かし)あると思っています。(「そうだ」の声)

 そういった意味で、これは与野党を超えて、まさに国民の、みなさんのためにですね、この予算を(用紙を持ち上げ、声を強める)成立させ、執行させていただきたい。

 そうすれば必ずや、そうした経済成長の、道に、戻すことができると思っています。それに加えて申し上げれば、(用紙をテーブルに起き)この20年間、残念ながら進んでいない、社会保障と税の一体改革についても、6月までに、提案を必ず出しますから、これについても、与野党を含めてですね、議論をして、それを、セイ、政局の問題ではなくて、国民生活という長期的な観点から、是非、実行して参りたい。このような決意で臨んでいきたいと考えております」

 菅首相は成果を誇らしげに語っている。「鳩山内閣、私の内閣と引き続き、経済対策を次々と打ってまいりました」の発言そのものが既に成果誇示の助走となっている。成果なしと言うことなら、「経済対策を次々と打ってまいりました」などとはおおぴらには言うことはできない。あくまでも成果が実現したことを前提として口にすることができるセリフである。

 その対策は9月の予備費を使ったステップワン。そして12月の補正予算によるステップツー。ステップスリーの来年度予算執行を前に既に誇ることができるだけの成果を上げたと言っている。

 そして来年度予算が成立し、ステップスリーとして実施されたなら、「本格的な経済成長の道筋に乗せることができる」と確約している。

 全然よくなっていないというヤジに対して、一枚の紙を手に数字が示している客観的事実だと成果を譲らない。

 客観的事実の具体例として、菅内閣の経済対策によって「2009年の実質経済成長率がマイナス6.3であったのに対して、2010年の実質経済成長はプラス3.9」となったこと、「失業率がマイナス5.3であった2009年に比べて、5%を切って、4.9%まで失業率も低下」したこと、消費者物価指数が2009年の-2.2から0.0に上昇してデフレ脱却の兆しが見えてきたことを挙げている。

 では、実質経済成長率のマイナスからプラスへの上昇と失業率の改善が果してその他の経済指数の改善と連動して一般的な国民生活の向上に役立っているのだろうか。連動していないなら、国会の場で都合のいい情報だけを取上げて成果を誇る情報操作を行ったことになる。

 まさか市民・国民の味方であることを以って名乗る資格を得る市民派出身の菅直人のことだから、また本多平直議員から人間を見る目を持って「何としても菅直人という男を総理にして、仕事をさせてみたい」と最大限の希望を託され人物であることからしたら、都合のいい情報だけを取り出す情報操作などしないはずである。

 菅首相が「失業率がマイナス5.3であった2009年」とマイナス数値で言っていることは完全失業率のことで、労働力人口に占める完全失業者数の割合のことを指すからマイナスになることはあり得ない、言い間違いだと新聞が伝えている。「マイナス5.3であった2009年」と言っている以上、2009年平均完全失業率のことであるはずだが、総務省が1月28日(2011年)発表の労働力調査では2010年平均の完全失業率は5.1%で、2009年の年平均完全失業率と同じとなっている。また、「4.9%」の数値は2010年12月の完全失業率(季節調整値)に当たる。

 まさか成果を誇るに都合のいい、より改善値を見ることができる月の完全失業率を適宜抽出したとは思えないが、用紙には数値が記してあったはずであるし、それを上下に振って力説したのである。もし成果を誇るに都合のいい数値を抽出したとなるとやはり一種の情報操作の疑いが生じる。

 都合のいい情報のみを取上げる情報操作は都合の悪い情報は隠す情報隠蔽と常に一体を成す。

 完全失業率の改善は完全失業者数の減少、就業者数の増加を示す。多分財政出動を伴ったエコカー減税や家電エコポイント制度、そして中国外需が主として役立ったこれらの改善であろうが、当然個人消費は活発化していなければならない。

 だが、どの報道もエコカー減税の終了や酷暑による農産品の高騰等で逆に個人消費が低迷と伝えている。このことは特殊要因による低迷ではあるが、エコカー減税や家電エコポイント制度は高額商品対象の消費誘導であることから余裕所得層の消費に役立ったものの、非余裕所得層に役立ったとは思えないことを考えると、実質経済成長率の上昇、完全失業率の改善、消費者物価指数の上昇が必ずしも一般的な国民の生活に直結して恩恵を与えているようには思えない。

 具体例を挙げて説明してみる。先ず昨2月21日の「asahi.com」記事――《非正社員の割合34%、過去最大に 失業期間は長期化》(2011年2月21日22時25分)である。

 2月21日発表の総務省2010年労働力調査に拠っている。

●役員を除く雇用者数は5111万人(前年比+9万人)
●正社員数3355万人      (前年比-25万人/過去最少人数)
●非正社員1755万人      (前年比+34万人/08年に次ぐ多さ)
●パートやアルバイト、派遣社員など非正社員が全雇用者に占める割合2010年平均で34.3%。

 これはは2009年大幅減に対しての2年ぶりの増加だそうだ。

●非正社員の内訳
 パート・アルバイト1192万人 (前年比+39万人)
 派遣社員96万人        (前年比-12万人)

 この派遣減、パート・アルバイト増の傾向を記事は、〈今国会では、派遣規制を強化する労働者派遣法改正案の審議が予定されており、先を見越した企業の「派遣離れ」の動きが続いている。〉と解説している。

●非正社員の男女別割合
  男性――18.9%
  女性――53.8%

 記事はまた失業が長期化する傾向も伝えている。
 
●2010年平均完全失業者数334万人の内訳。
 失業期間1年以上失業者数121万人(前年比+26万人)

 これは3年連続の増加で、過去最多。1年以上の失業者増の傾向は全世代に共通すると書いている。

 こう見てくると、失業率がマイナス5.3であった2009年に比べて、5%を切って4.9%まで改善したと言っても、正社員を減らして非正社員を増やした失業率の改善であり、増加した非正社員にしても多分男性の失業者数をそれ程減らさない、女性の就業には役立っている失業率の改善ということであって、このような状況を以って菅内閣の経済政策の成果誇示へと持っていくのは図々しいばかりの恥知らずな情報操作、それと一体となった情報隠蔽としか言いようがない。

 非正社員の増加は低収入を理由とした、今や社会現象となっている増加する未婚化を定着させ、日本社会をなお一層の少子化へと向かわせることになる。

 菅首相はこういったことまで視野に入れていたなら、自身の内閣の経済政策の成果を誇ることはできなかったはずだ。だが、声を高めて誇ったところを見ると、既に何度も指摘している資質の欠如だが、合理的判断能力の欠如を成果誇示の原因としなければならない。

 日本社会の未婚化問題は昨2月21日の「NHK」テレビ「クローズアップ現代」でも取上げていた。その案内メールの紹介文を参考のために載せておく。

 〈2月21日(月) 【総合テレビ】19:30~19:56 

 タイトル「結婚したいのに・・・ ~止まらない未婚化~」

 日本人の生涯未婚率の上昇が止まらない。現在は男16%・女8%。2030年には男29%・女22%。さらに進めば「少子化」と「無縁化」で社会の存続さえ危ぶまれる。最新の分析で大きな原因として浮かび上がってきたのが職場の変容である。例えば、「職縁」の減少。終身雇用の崩壊や非正規労働の増加によって、職場づきあいが減り、上司が縁談を紹介するケースも激減している。

 さらに、リーマンショック以降、「男性の年収」と「女性が求める年収」のギャップも拡大。リスクの少ない結婚をしたいという若者が増えているのだ。こうした中、各地の自治体で始まった縁結び事業では、男性と女性が共に働き、収入も家事も両者が担う夫婦モデルを提唱するなどの試みも始まっている。

 番組では、最新データを交えて「未婚化」を分析し、「縁のある社会」の再構築について考える。〉――

 鳩山内閣を引き継いだ上に自らも立ち上げた菅内閣の経済政策が効果を上げていないと見ることができる生活指数は大学や高校新卒者の就職内定率にも表れている。

 今春卒業予定の大学生の就職内定率は昨年12月1日時点で過去最低68.8%を記録。今春卒業予定の高校生の就職内定率は去年11月末時点で大卒を上回る前年比+2.5ポイントの70.6%であるものの、依然として低い水準にとどまっった数値だと言う。

 さらに生活保護世帯の増加。20010年11月の生活保護世帯は過去最多の142万世帯に上ったという。また生活保護基準以下の所得でありながら生活保護を受けていない最貧生活者は最大229万世帯にのぼるという。

 菅首相は消費者物価指数が2009年のマイナス2.2から0.0に改善してデフレ脱却の兆しが見えてきたと自らの経済政策の成果の一つと誇っているが、そのことは逆に貧困世帯を苦しめる要因となる成果となる。いわば経済が強い足取りで回復していく中での消費者物価指数の上昇、デフレ脱却でなければならないと思うのだが、そうならないうちに消費者物価指数が改善してデフレ脱却の兆しが見えてきたことの成果を誇ることができるのも合理的判断能力を全く欠いているからこそできる成果誇示であろう。

 最初の方に市民派なる名称は市民・国民の味方であることを以って名乗る資格を得ると書いた。だが一般国民の多くが生活不安から解放されないうちの自らの経済政策の成果誇示は一般国民の姿が目に入っていないからできることであって、そこからは市民・国民の味方である姿はとても浮かんでこない。

 こういったことによっても菅首相がエセ市民派出身であることが証明できるが、情報操作・情報隠蔽を駆使して自己の経済対策の成果誇示を図るような首相に「社会保障と税の一体改革についても、6月までに提案を必ず出しますから」といくら約束されたとしても、期待はできないカラ約束としか受け止めることができない。


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菅内閣の現状のすべての出発点は小沢派排除の愚かさから始まっている

2011-02-21 08:48:24 | Weblog


 
 菅首相は小沢氏の、いわゆる「政治とカネ」の問題についての野党の追及に対して、「検察の1年以上に亘る強制捜査受け、2度も不起訴になっていることが何よりの説明となっている」と突っぱねるべきだった。昨年9月に検察審査会の起訴議決が決定、10月4日に公表となったが、その際も推定無罪を掲げ、「強制裁判の判決がすべての証明となる。国会の説明では決まりのつかない最終決着を果たしてくれる」と強制裁判に任せるべきだとする姿勢を示し、その姿勢をぶれることなく一貫して示すべきだった。

 例えそのことで次女能力がないとする批判を受けて内閣支持率を少し失うことになったとしても、小沢氏の尽力等で公明党の協力を取り付ける可能性が生じ、参院選挙で失った数(=議席)を十分に補うことができたはずだ。

 だが、菅首相のしたことは正反対のことだった。2010年6月8日の菅内閣発足に当たって、挙党一致と言いつつ内閣・党人事からの小沢派の排除に出た。2010年9月の民主党代表選では、初出馬はロッキード選挙と言われた選挙であったこと、カネと数を重視する政治は古い政治だと暗に対抗馬の小沢氏が汚れたカネに関わっているような印象を与える断罪を演じ、その反対給付としてさも自身がクリーンな政治家であるかのような売込みを行って、仲間を貶め自身の浮上に利用した。

 そして代表に再選出されると、一層の小沢排除に動き、同時に小沢氏自身に対する国会での説明の実現を目指したが、小沢氏が主張する司法の場での決着姿勢と対立、膠着状態に陥ると、野党は実現させることができないのは首相に指導力がないからだと首相の姿勢追及の強力なカードの一つとさせる失態を招き、そのことが菅内閣支持率低下の一因となったはずである。

 このことが菅首相に一層の小沢排除に走らせた。今年に入って1月31日に小沢氏が指定弁護士による強制起訴を受けると、政倫審出席を強力に求め、実現しないと証人喚問をちらつかせたが、党内外からの反対を受けて小沢氏自身に対して離党勧告、拒否されると党員資格停止へと小沢氏排除をシフト、2月22日に決定する方針を決めたが、2月17日になって小沢氏に近い衆議院議員16名の会派離脱、予算案否決の可能性の示唆、この事態によって衆議院に戻して3分の2で再可決する菅首相の夢を打ち砕いた途端に菅降ろしの動き、退陣論が党内から生じ、野党の解散要求の声も一層激しくなり、いよいよ進退極まることとなった。

 すべては小沢斬り・小沢排除から始まっている。小沢排除を利用して参院選で議席を失った失地回復と支持率回復を計ろうとした自らの愚かさが招いた失態であり、窮地であろう。

 このことは自身に恃む能力を持たなかった反動として示さざるを得なかった小沢斬り・小沢排除でもあったはずだ。参院選前の事前の周到な準備も計画もなしに打ち出した消費税増税が端的に象徴しているように指導力、政治的創造能力を欠いていたためにそれを埋め合わせてさもあるかのように見せかける材料が小沢氏と小沢派排除であった。

 だが、結局小沢氏排除でも小沢派排除でも指導力、政治的創造能力を発揮できなかった。元々存在しない能力を発揮できないのは当然の帰結であろう。

 ここに来て菅退陣論に対抗する菅首相自身の自己正当化の発言、党役員、閣僚の菅擁護の発言が相次いでいるが、すべて虚しく聞こえる。

  《首相“きぜんとして取り組む”》NHK/2011年2月20日 19時6分)

 記事は江田法相が昨20日午後首相公邸を訪れ、菅総理大臣と2時間近く会談したときの両者の発言を伝えている。役にも立たない会談なのは現在の無様な窮地を招いた上でのことだから容易に察することができる。

 菅首相「来年度予算をきちんと仕上げていけば、景気のほうも上向いてくる。当面、日本が直面する大問題は、社会保障と税の一体改革や『平成の開国』だ。今、日本は明治維新以来の大きな歴史の転換期に来ていて、大事業をやろうとしているときだから、足元で起きるいろいろな声に心を騒がせず、きぜんとして取り組みたい」

 菅首相は一度でも毅然として取り組んだことがあるのだろうか。毅然として取り組むには指導力を欠かすわけにはいかないし、政治的創造性を必要とする。だが、一国の指導者として何事も常に結果を出していかなければならない、少なくとも結果につなげていかなければならない厳しい立場にあるにも関わらず、そのことを自覚もせずに、「今までは仮免許だった」と内閣発足からの6ヶ月間の自身の取り組みを準備段階、あるいは試験段階だったとして6ヶ月間の取り組みを個別に扱い、その出来具合を自分から採点を甘くする責任回避意識は指導力と政治的創造性の欠如が許した結末としてあるものだろう。

 このことは常に説明責任を負わされている政治家である以上、政治家としての情報発信力は属性としていなければならないにも関わらず、「これまでは発信力が足りなかった」と低支持率の正当理由とする誤魔化しにも現れている。これはどこに問題があるのか的確に判断する合理的判断能力の欠如からきている誤魔化しでしかないが、合理的判断能力は指導力の基礎となる能力であるゆえにどちらの欠如であっても相互性としてある欠如ということになる。

 「大事業」という言葉にしても、合理的判断能力を欠いているために指導力もない、政治的創造性もない人間が言うことなのだから、何と言おうと単なる大言壮語に過ぎないことは目に見えている。いわば強がりを言ったに過ぎない。

 「日本は明治維新以来の大きな歴史の転換期」などと大層なことは言わなくてもいい。取り組むべき事柄はマニフェストに示して国民に約束し、契約とした政策を進めるという非常に単純なプロセスを踏むに過ぎない。勿論、具体化は財源の問題もあり、非常に困難を伴うだろう。だが、進めるべきスケジュール自体はあくまでも一度決定した方針に従うのみだから、単純である。登山ルートが何本もある山登りにこのルートと決め、そのルートを道の険しさや険しさに対応した体力維持といった困難があっても、その困難に耐えて決めたルートをひたすら登り切る黙々とした単純さこそが必要であって、それを決めたルートに挑まないうちから登り切るのは難しいからと別のコースに変えて、「日本は明治維新以来の大きな歴史の転換期」だとさも大層なコースに挑んでいるかのように大袈裟に言う発言からは胡散臭さしか感じない。

 江田法相「このところのいろいろな動きを受けて、私も心配して激励にきたが、菅総理大臣は、大変元気で、なんとしても予算をしっかり仕上げ、さらに予算関連法案も仕上げるため、きぜんとして頑張るという姿勢にあふれていた」

 「解散をしようかという話は全くない。ただ、総理大臣のいちばんの武器は解散であり、『解散しない』と言って、何もみずから手を縛る必要はない」

 「総理大臣のいちばんの武器は解散であり、『解散しない』と言って、何もみずから手を縛る必要はない」は単に菅首相自身の地位上の保身――首相であり続けることだけを意図した言及に過ぎない。なぜなら一国のリーダーとして「一番の武器」としなければならないのはあくまでも強力な指導力であり、鋭い政治的創造能力であるからだ。

 この二つの能力を欠いているから、現在の進退極まった苦境を招いた。この苦境を逃れ、首相の地位を維持するために残された手段として解散の有無を「一番の武器」とせざるを得なくなった。

 要するに程度の低いところで進退を賭ける局面に陥ったというわけである。この苦境を乗り超えることができたとしても指導力と政治的創造能力の欠如はついてまわる。

 江田は耄碌したのか、自身が言っていることの意味に気づきもしない。

 《岡田幹事長 退陣や解散を否定》NHK/2011年2月20日 18時6分))

 岡田幹事長の2月20日三重県伊勢市での記者会見。反執行部の議員を中心に菅首相のクビと引き替えに予算関連法案の成立を図るべきだという意見が出ていることについて――

 岡田幹事長「全く考えていない。総理大臣がコロコロ代わって国益にプラスになるはずがなく、選んだ菅総理大臣を支え抜く姿勢を党所属の国会議員には求めたい。また、関連法案を中途半端にして衆議院を解散するなどということはありえない。そんなことをすれば経済に大きなマイナスとなるおそれがある」

 「関連法案はいろいろなことに影響するので、もてあそばない方がよく、否決した側が説明責任を求められる」

 情けない発言となっている。「総理大臣がコロコロ代わって国益にプラス」ならないという基準を菅首相の続投理由とする。尤も指導力や政治的創造性を基準として首相となったわけではなく、「首相がコロコロ代るのはよくない」を基準として選ばれた経緯を背景としているから、無理もない岡田の続投基準なのかもしれない。

 「選んだ菅総理大臣を支え抜く姿勢を党所属の国会議員には求めたい」と言っているが、「党所属の国会議員」を統率するもしないも偏に菅首相自身の指導力、政治的創造性にかかっているのである。要求対象を違えていることに岡田幹事長は気づいていない。すっかり心が離れた妻に、「妻なのだから、夫である俺を支えるのは妻の役目だ」と妻を支えてこなかったことを省みずに妻にのみ支えを要求するご都合主義と同じ虚しさしか感じない。菅首相にしてこの幹事長ありなのだろう。

 この記者会見に先立って行われた講演で政権公約=マニフェストについて次のように発言したという。

  岡田幹事長「できないことをいつまでもできると言い張るのは正直でない」

 この発言は高速道路の原則無料化や子ども手当の全額支給は見直しの対象になるという認識を示したものだと記事は書いている。

 ということは、「できない」政策をマニフェストに掲げて、自民党や公明党の政策よりも自らの政策の優位性を訴えて国民の支持を得、政権交代を果たしたことになる。このことの方が遥かに「正直でない」ことになるが、その不正直さには気づかずに実現の見込みを失った政策を実現できませんと告白することだけが正直だとするさらなるご都合主義を見せている。何とも情けない幹事長としか言いようがない。

 菅首相の軽薄この上ない賢夫人伸子女史は1月12日(2011年)日本外国特派員協会で講演している。

 伸子夫人「でき得ることをやって玉砕するのはいいが、(内閣)支持率が低いと批判されて(首相を)辞めることはあり得ない」(時事ドットコム

 玉砕とは実際に事に当たったなら、できるできないは別に一度決めたことを愚直に挑んで当たって砕けることを言う。「でき得ること」を選んで挑み、当たって砕けることを「玉砕」とは決して言わない。「でき得ること」を選んでできないと言うのは矛盾そのものであるからなのは断るまでもないが、「でき得ること」を選んで成し遂げたものの、それでも尚且つ支持率を回復できずに内閣総辞職、あるいは総選挙の果てに敗北して政権を失うということになったなら、伸子夫人はそれを「玉砕」と美化するかもしれないが、実際は玉砕どころの騒ぎではなく、単なる滑稽な結末に過ぎないことになる。

 指導力も政治的創造性もないから、できるできないは別に一度決めたことを愚直に挑んで当たって砕ける覚悟を持てなかった。だからこそ、その覚悟に替えて小沢氏排除、あるいは小沢派排除の愚挙に出ることになった。現況に於けるすべての出発点はそこにあった。


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池田信夫氏記事《非正社員を規制すると何が起こるか-日本郵便の「人体実験》の矛盾

2011-02-20 06:32:33 | Weblog



 池田信夫氏が日本郵便の雇い止めを例に挙げて民主党政権の非正社員の正社員化政策を批判している。かの著名な経済学者の書いた記事をド素人が再批判するということは恐れ多いことだが、どうも池田氏の批判の前提条件が間違っているように思えて仕方がない。全文は《非正社員を規制すると何が起こるか-日本郵便の「人体実験(エコノMIX異論正論)》にアクセスして確かめて貰うことにして、内容を箇条書きに纏めてみた。 
 
●民主党政権は、製造業の派遣労働を禁止する労働者派遣法の改正案を出すなど、非正社員の規制に乗り出
 している。
●この人体実験が日本郵政グループの郵便事業会社(日本郵便)で行われた。
●非正社員を禁止すればみんな正社員になると思っているようだが、決してそんなことはない。
●企業の人件費は決まっており、正社員のコスト(賃金・年金・退職金など)は非正社員の約2倍なので、
 規制によって正社員を増やすと雇用できる人数が減り、非正社員が職を失う。
●国民新党の亀井静香氏は、鳩山内閣の郵政担当相だったとき、郵政民営化を見直すと同時に「日本郵政グ
 ループにいる22万人の非正社員のうち、10万人を正社員に登用する」という方針を打ち出した。その結
 果、正社員募集に応じた非正社員のうち、8400人(うち日本郵便は6500人)が正社員に登用された。
●日本郵便は郵便物取扱量減少に加えて、「ゆうパック」の「ペリカン便」との統合失敗、大幅な遅配等に
 よる経営混乱で顧客離れが発生、経営危機が表面化。
●このため2012年度は新卒採用中止、約2000人の雇用喪失、さらに今年3月末で採用期限切れの非正社
 員のうち2000人の契約更新中止の「雇い止め」を決定。

●以上を以って、6500人の非正社員を正社員にした結果、新卒採用予定の約2000人の雇用喪失+雇い止
 め2000人≒4000人の雇用減が生じた。
●日本郵便の場合、正社員と非正社員の賃金はひとり年間200万円の較差と言われている。正社員
 化6500人×200万円増=130億円の人件増を結果的に4000人の雇用減で埋め合わせることとなっ
 た。

 池田氏は〈特に非正社員のうち、雇い止めされる2000人は、正社員に登用された6500人の犠牲になったわけだ。〉と非正社員の正社員化政策を情け容赦もなく切捨てている。

 そして結論。〈非正社員の雇用が不安定で気の毒だというのは、その通りだろう。しかし企業は、彼らを慈善事業で雇っているわけではない。人件費以上の売り上げがなければ、赤字が出て雇用を維持することはできない。それを無理やり正社員にしろという規制を行うと、経営が悪化して結局は雇用が失われるのだ。〉――

 企業の非正社員雇用はその人数分の働き手(労働者)を必要とするからなのは当然だが、その人数は経営規模に応じる。経営が悪化したとき、経営規模も縮小することになるから、雇用調整が必要となって、企業の都合でいつでもクビを切ることができる便利な雇用調節弁であると同時に非正社員の人件費が日本郵便のように正社員の半額なら人件費調節弁としても便利な存在となる。

 だが、雇用調整弁・人件費調整弁は常に非正社員にのみ宿命づけられているわけではない。非正社員のみの人員整理で済めばいいが、さらに経営規模を縮小しなければ経営維持ができない場合、正社員を人員整理の対象とし、早期退職者を募ったり新規採用を停止したりして雇用調整と人件費調整を同時に行い、残った正社員に対しても賃金カットやボーナスカット等で人件費のなお一層の調整を行わなければならないケースも生じる。

 こうした正社員対象の調整はこれまでも行われてきた。企業がもし非正社員を全員正社員化しなければならないと法律で定められて経営状況に応じて働き手(労働者)を必要とする人数分非正社員から正社員に切り替え採用したとしても、今まで非正社員採用で抑えることができていた人件費の増加分は基本給や定期昇給を抑えたり、固定給を能率給に変えたり、初任給を低くしたりすることで調整することになるだろうし、まともなところでは一人ひとりのスキルアップを図って生産性を上げ、相対的に人件費減と雇用者数減に持っていくといったことを併行して行うことになるに違いない。

 こういった企業努力にも関わらず、企業のみの力ではどうしようもない景気の影響や企業自身の問題となる経営失敗等の理由で経営が悪化して採算が合わなくなれば、企業維持の当然の措置として人員整理に走らなければならなくなる。 

 勿論対象は非正社員は存在しないから、すべて正社員対象の雇用調整・人件費調整となる。非正社員が存在しようと、全員正社員化して非正社員が存在しない社会となろうと、どの道景気次第・経営次第を条件として人員整理は起こり得るということである。

 となると、雇用に於ける基本的問題は常に経営状況が前提となることになる。しかし池田信夫氏の上記記事は経営が悪化状況にある日本郵便を取上げて、非正社員の正社員化は失敗だったと批判し、それを以て非正社員の正社員化政策を間違いだと談じる矛盾がある。

 経営次第で雇用調整が行われるとしたら、身分よりも非正社員と正社員との間の様々な待遇の格差に問題があることになる。日本郵便に限らず、非正社員と正社員との間の同一労働の場合の賃金格差であろう。もし日本郵便が同一労働で非正社員と正社員の賃金格差がひとり年間200万円だとすると、日本郵便は非正社員から正社員と比較して年間200万円も余分に利益を上げていることになる。

 同一労働でありながら、正社員と比較して報酬が低いこと程の人間軽視はあるまい。先ずは政府が行うことは同一労働・同一賃金に持っていく政策であろう。

 次に非正社員の方が正社員と比べて簡単にクビを切られる待遇上の欠点の是正、企業側から言うと、簡単にクビを切ることができるという利点となるが、例え非正規社員を雇用調整弁として首切りを行う場合でも、正社員同様の退職金、再就職準備金等を支払うことを法的に義務付けることで、人間的に対等関係に持っていくことではないだろうか。

 後の政府の役目は景気が悪化した場合、早期の景気回復策を講じ、企業の経営規模縮小を可能な限り阻止することではないだろうか。


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菅首相の沖縄基地問題発言の変節を記憶しておくためと基地移設がなぜ沖縄なのかの答を問うべし

2011-02-19 09:22:48 | Weblog



 2月16日(2010年)の衆院予算委で衆院比例九州・沖縄ブロック選出4期目の共産党赤嶺政賢(せいけん)議員が菅首相の野党時代と現在の沖縄の米軍基地に関わる姿勢の違いを追及した。菅首相の答弁は従来の答弁の繰返しであったが、市民派出身だと名乗っていることに反するそのご都合主義を後世の記憶に残しておくために文字化し、併せて菅首相の答弁が普天間米軍飛行場の移設先がなぜ沖縄なのか、その答弁となっていないことを取上げてみる。

 赤嶺聖賢議員(一語一語ゆっくり丁寧に発音して追及)「えー、共産党の赤嶺聖賢です。今日は、あー、米軍普天間基地問題について、えー、総理に、えー、伺います。えー、この間(かん)の、おー、経過を振り返って、みたいと思います。普天間基地の、オ、国外、最低でも県外への、おー、移設を掲げて、鳩山内閣が、スタートしたのは、1昨年の、9月の、おー、ことでした。

 以来約9ヶ月間、従来の、名護市辺野古に替わる新たな移設先の検討を、行って、まいりました。様々な、ア、移設先が、浮かんでは、ア、消え、結局、昨年、5月、辺野古に戻ることに、エ、なりました。このように決めました。

 エ、一体、なぜに、また沖縄になるのか、と多くの県民が落胆し、強い、疑問を、おー、持ったのであります。それに対して当時の鳩山首相は、沖縄を訪問した際、学べば学ぶにつけて、海兵隊のみならず、沖縄に存在している米軍全体が、すべて連携し、抑止力が維持できるという、思いに至ったと、説明を、しました。

 私は遠くから、その鳩山総理の姿を、見て、おりました。それが今回、鳩山首相自身が、共同通信社と、沖縄タイムズ、琉球新報、おー、地元、おー、二紙のインタビューの中で、その説明は、後付けの、理屈で、方便だったと、おー、認めました。

 具体的にこのように言ってます。『徳之島もダメで、辺野古となったとき、理屈付けをしなければ、ならなかった。 海兵隊自身が、沖縄に存在することが、戦争の抑止力になると、直接そういうわけでは、ないと思う。海兵隊が欠けると、陸海空軍の、すべてが連関している中で、米軍自身が十分な機能を果たせないという意味で、抑止力という話になる。それを方便と、言われれば、方便だが、広い意味での、抑止力という、言葉は使えると思った』

 このように、エ、述べているわけです。戦後米軍基地に、ずうっと、苦しめられてきた沖縄に、新たな米軍基地を押し付ける決定が、こんな軽々しい、エ、く、決められていくと、いうのは、私自身、この報道、をー、方便だという、地元紙の報道を見たときに、開いた口が、塞がりませんでした。総理は鳩山前首相の発言について、どのように考えていますか」

 菅首相「まあ、私、鳩山前総理から、ア、直接に、イー、お聞き、イー、は、いたしておりません。えー、報道で、えー、拝見を、いたしました。ま、私…、イー、としては、あー(喉を鳴らし)、鳩山前総理、その後、若干の釈明を、おー…ぶら下がりと言いますか、取材にも応じておられましたが、ま、いずれにしても、おー…(喉を鳴らす)、そうした、マ、表現についても、おー…、本当に、イー…、問題でもありますと同時に、えー…、私自身の、考え方、あ…、は、先程来申し上げていますように、イー…、沖縄の、海兵隊を含む、エ、在日米軍…、存在は、我が国の平和、このアジア、太平洋地域の、平和と安全にとって、エ、大変大きな役割を、果たしていると考えておりますので、内容的にも、おー、私の認識とは、若干、あー、もし、報道されているような、ことであったとすれば、あー、違っていると、認識をいたしました」

 相当四苦八苦の答弁となっている。菅首相の、海兵隊を含む在日米軍全体の存在は日本のみならず、アジア、太平洋地域の安全保障上の抑止力として機能しているというこの発言は2日前(2月14日)の首相官邸ぶら下がりで既に発信済みとなっている。

 記者「鳩山前総理が、昨年5月に普天間基地の県外移設を断念した理由として沖縄の米軍海兵隊の抑止力の重要性を挙げたことについて『方便だった』と話した。前総理のこのような発言をどう思うか」

 菅首相「直接聞いたわけではありませんので。いずれにしても私は沖縄の海兵隊を含む在日米軍全体として、やはり我が国の安全、あるいはアジア地域の、アジア太平洋地域の安定に大変重要な役割があると、このように認識しています」 (asahi.com

 新聞記事だから、つっかえつっかえの発言だったのかどうか分からないが、文字面だけから見ると、スムーズな返答となっている。

 鳩山前首相の発言は沖縄米海兵隊抑止力論は辺野古移設を正当化するための方便だったとの告白だが、菅首相が言っていることは鳩山前首相も「海兵隊が欠けると、陸海空軍の、すべてが連関している中で、米軍自身が十分な機能を果たせないという意味で、抑止力という話になる」と言っていて、抑止力に関して主張を同じくしている。

 両者の違いはどこにあるかと言うと、鳩山前首相が場所を沖縄と特定して海兵隊は沖縄ではなくてもよかったと間接的な言い回しで言っていることに対して、菅首相は沖縄の海兵隊を含めているものの在日米軍全体の抑止力の効果を主体とした言及であって、なぜ沖縄なのか、沖縄でなくてはならないのかについての言及とはなっていないことである。

 鳩山前首相は沖縄でなくてもよかったが、官僚が初めから沖縄ありきで、それを押し切るだけの指導力がなかったために辺野古と決めた。その正当付けのために「抑止力論」を方便として持ち出したとインタビューで答えた。

 もし菅首相が鳩山前首相の「沖縄海兵隊抑止力方便論」を否定するなら、沖縄でなければならないことの理由を明確にしなければならない責任を負うが、その責任を果たさず、在日米軍全体として把えた抑止力の効果を言うのみとなっている。
  
 赤嶺議員「菅総理は、昨年の6月、就任に当たっての記者会見で、5月の日米合意について、鳩山前総理の思いをしっかりと受け止めて、引き継いでいかなければ、ならないと、こう、述べてるわけです。

 ところが総理が引き継いだ、日米合意の根拠、これは後付けの、おー、理屈だったという、ことで、あります。総理は、こういうことを、鳩山さんからお聞きにならなかったんですか」

 菅首相「全く、うー、そういった、ア、表現を含めて、そういう趣旨のことは、お聞きをした、いたしたことはありません」

 赤嶺議員「鳩山総理は、あー、こうも言っております。なぜ、えー、米国は、辺野古に拘るのか、ア、という、記者さんの問いに対して、アメリカは沖縄にいることで、パラダイスのような居心地のよさを感じている。戦略的な、メリットも当然だが、思い遣り予算、県民の優しさも含めて、国内では沖縄より、ないという発想が、あるのではないのかと、このように述べております。

 この点について、総理は、あー、どのように、えー、記憶しておられますか」

 菅首相「ま、少なくとも、おー、私自身の、ニン、認識とは、大きく違っております」

 赤嶺議員「あのー、戦後ですね、えー、米軍は、あー、沖縄を、占領下に、置いて、そのもとで、えー、住民の土地を強制的に奪い、えー、基地を造ったと、おー、歴史は総理もご存知だと思います。

 えー、広大な米軍基地は、このように構築されたんですが、この基地のある場所っていうのは、本当に眺めのいいところなんです。基地の中から見る沖縄の海っていうのは、こんなに素晴らしいのかと、こんなに素晴らしい自然が地球上にあるのかと思うくらいに素晴らしいんです。眺めのいいところはぜーんぶ米軍基地が(両手で囲うようにして)、ア、強奪、ウ、したんです。そういう歴史を、おー、持ってます。で、それが、今日に引き継がれています。

 70年代、後半以降は、ア、日米地位協定上、アメリカが負担すべき、米軍の住宅建設、あるいは光熱水道まで、思い遣りの名のもとに、日本が、ア、肩代わりして、きました。このようにして、つくられた、パラダイスのような、ア、居心地の、おー、よさが、あー、あるから、あー、米軍が。ア、居座り続けているという、この鳩山前総理の指摘は、私も、その通りだと、思って、おります。思い遣り予算や、強制的にいいとこばっかし取上げて、ビーチも持っているパラダイスなんですよ。

 で、それが米軍が沖縄にいる理由なんです。ところが問題はそういう認識を十分に持ちながら、辺野古に基地を押し付けるために、抑止力という言葉を使った、ア、ことであります。日米合意を正当化するための、まさに方便です。県民に、国外、最低でも県外と約束しながら、なぜ辺野古に戻ることになったのか、この際、徹底的に、糾明する責任が菅内閣にあるのでは、ありませんか」

 菅首相「えー、赤嶺議員、の、おー…、おー、気持は、あるいは見方でおっしゃることは、それはそれとして、えー、そういう、えー、見方、はあろうかと、思いますが、私、イ、なり、内閣としての、オ、おー、基本的な考え方は、やはり、イー…日本の、おー、安全、平和、というものの中で、エ、日米アン、安保条約というのは、あー…日本に取っても、必要な、ものであり、また、その日米安保条約の、大きな要素が、えー、米軍、ン…、への基地提供というもの、ヲ…、を、提供する、一方で、アメリカが、あー、日本の、おー、が、攻められたときには、ア、共に守ってくれるという、そういう関係が、基本になっているということであります。

 そういった意味で、えー、今、沖縄のみなさんにとって、えー、返還後も、多くの基地が、アー…、ア、ある、状態が続いている、ということについては、ア、私の方も、政治家として、えー、対応の不十分さを、おー、強く感じておりますけれども、えー…、今の、オ…、米軍…、沖縄に於ける、ウ、海兵隊の、基地、イ、存在そのものは、ア、これは、ア、国の方針、政府の方針、として、日米の間で、取り決めて、えー、存在しているものであって、えー…、ま、それをー、オ、色々な表現で、えー、言うのは、あー、政府の立場、内閣の立場、からすれば、あー、それは適切ではなくて、日本にとっても、おー…必要な、あー、基地ということで、えー、受け入れていると、いうのが、私、イー、総理としての、立場であります」

 ここでもなぜ沖縄なのか、沖縄でなければならないのか答えてはいない。日米安全保障条約に基づいた米軍基地とその存在が日本の安全と平和を守っている、だから必要だと、単に必要論を述べているだけで、最初の応答とほぼ同じことの繰返しで終わっている。

 赤嶺議員「えー、抑止力という方便で沖縄に基地を、おー、押し付け続けて、そして本当に、えー、いい場所、広大な土地を米軍基地として、エ、使い続けている。やっぱりですね、えー、日米合意の経過について、えー、委員長、おー、この日米合意の、おー、根幹に関わる、ウ、問題だと思います。私は鳩山首相を参考人として、招致して、この問題で、改めて、集中審議を、行うことを、求めたいと思います」

 中井委員長「鳩山首相とおっしゃいましたが、元首相でございます。前首相でございます。先程から自民党さん、公明党さんからも、ご要求がございました。共産党さんのご要求も含めまして、理事会で、協議を、いたします」

 赤嶺議員「鳩山さんについて、えー、先程来から、菅総理の、認識を伺ってまいりました。えー、総理は、ア、米軍の抑止力についても、オ、言及されたわけですが、今度は、総理自身の、ご認識を、オ、聞きたいと思います。

 菅総理も野党時代に米軍の抑止力について、えー、様々な発言を、おー、行って、まいりました。2006年6月の講演では、『よくあそこ』、あそこって言うのは沖縄ですね、『沖縄から海兵隊が、なくなると、抑止力が落ちるという人がいますが、海兵隊は守る部隊ではありません。地球の裏側まで飛んでいって、攻める部隊なのです。沖縄に海兵隊がいるかいないかは日本にとっての抑止力とあんまり、関係ないことなのです』

 このように述べておられます。総理は、海兵隊の抑止力に関する、見解、えー、いつ、どのようにして、変えたんです」

 菅首相「え、ま、私ー、イー…、総理になる前、特に野党の時代に、イー…、そうした、趣旨のことを、オ、私も、いつ、どこの場所とまでは、あの、すぐ今分かりませんが、あのー、おー、言っていたことは、十分あり得るということで、えー、お聞きをしておりました。その上で、えー、どの時点で変えたかということでありますが、えー、何月何日の時点でということでありませんけれども、えー、近年の、おー、このオー、極東、あるいは、極東アジアの状況、特に、イ、北朝鮮の、おー、核、ウー、ミサイル、拉致という、この状況の、ある意味での、脅威が、あー、拡大している。うー、など、を中心とした、やはりアジア情勢の、緊迫の中で、えー、より、イー、有効な、あー、抑止力ということを考えたときに、沖縄に、いー、海兵隊があることも、おー、抑止力の一つの、要素と、なっていると、このような認識に達したわけであります」

 野党時代の海兵隊沖縄不要論・沖縄海兵隊抑止力無関係論の主張を何度でも国会で追及を受けて、そのたびにほぼ似た答弁でかわしてきているにも関わらず、事実だと認めるのではなく、「十分あり得るということで」と、その可能性を他人事のように言う潔くない態度は菅首相の人柄がそのまま現れたものであろう。

 菅首相は極東アジアの状況変化、特に北朝鮮の核ミサイルと拉致を挙げて、過去の海兵隊沖縄不要論・沖縄海兵隊抑止力無関係論から海兵隊沖縄必要論・沖縄海兵隊抑止力関係論へと転じたことの正当化理由とした。いわば極東アジアに対する抑止力の必要上、普天間海兵隊の辺野古移設を止むを得ないこととした。 

 赤嶺議員「ま、北東アジアの情勢、2006年と、おー、今日と、おー、やっぱりおんなじ情勢認識の中にも、おー、ありましたし、国会でも議論されていました。結局ですね、総理も政権についたら、あー、学んで、抑止力は大事だと、いう、学べば学ぶ程と、いう、ウー、立場では、ありませんか。

 かつて総理は、エ、『改革政権準備完了』、こういう、えー、ご自身が書かれた、あー、本の中で、エ、次のように述べております。(原稿を読み上げる。)『戦後の日本の外交は、冷戦構造の中で、一貫して機軸である日米両国の友好な関係を維持することを最優先課題としてきた。米国のイエスマンと政界中から笑われようが、冷戦構造が崩壊したあとも、政権が変われば、新しい首相が真っ先にホットラインで米国大統領に電話し、日米首脳会談の予定を入れるという、現代の参勤交代とも言うべき、慣行が続いている。日米関係さえうまくやっていれば、外交は及第点という意識が、歴代自民党の政権では、強かった。そこには、長い目で見た国益や宗教や言語も違う近隣諸国の間に、敵対関係、をつくらないための、外交戦略は希薄だった』と述べた上で、沖縄の米軍基地について、『民主党中心の政権では、沖縄の基地の相当部分を占める、海兵隊の沖縄からの撤退を、真剣に検討するよう、米国にはっきり、求めていく』と、ここまで、述べているわけです。

 ところが総理は就任する2日前の6月6日、オバマ大統領と電話会談を行ない、普天間基地について、先般の合意を踏まえて、しっかり取り組んでいきたいと、ヲー、伝えたわけです。

 政権に就く前と、政権に就いた後で、言っていること、やっていること、全く正反対ではありませんか」

 菅首相「先ず、あのー、私のその本を出したことは、あの、記憶をちゃんとしておりますけども、このー、冷戦時代、それからポスト冷戦になって、さらには9・11をくぐり、ある意味ポスト冷戦からさらに、えー、変化をして、きている。国際情勢の中で、私は、冷戦時代と、ポスト冷戦と、さらに、9・11以降の、おー、大きな国際的、国際的安全保障状況は、ア、変わったと、見るべきだと思って、おります。

 そういった意味で、えー、日米、えー、あるいは先程申し上げましたように、えー、日米安保、おー、条約、というものも、かつては、あー、まさに、えー、東西対立の中での、おー、ある意味、西側の、一国としての、おー、共同の、安全保障であったわけですが、ポスト冷戦からさらに、今日の状況は、そういうソ連を仮想敵国とした状況から、大きく変わった中で、エ、先程申し上げましたような、北朝鮮の脅威というような問題も、ア、あるわけであります。

 そういった意味で、えー、私が、あー、変わった、あー、というのは、そうした国際的な情勢の、変化ということもあります。

 それからもう一つ、ウー、率直な言い方をどこまでしていいか、分かりませんが、やはり、えー、鳩山総理が辞任されたことの理由の大きな一つが、この普天間の、おー…、迷走にあって、その迷走は勿論沖縄のみなさんにも大変ご迷惑をかけましたが、ある意味では、日米関係そのものも、やや不安定なものになっておりましたので、私としては、その、おー、面も、おー、考えた中での、やはり5月28日の日米合意というものを、踏まえた形で、えー、スタートを、することが、日本の、大きい意味での、国益にも、添うものであると、考えて、そういう立場で、今日まで、えー、すすめてきたところであります」

 赤嶺議員「えー、総理、前段でおっしゃった、国際情勢の、変化っていうのは、後付けで、やっぱり方便だと、思いますよ。鳩山さんと、同じですよ。政権に就く前、就いた後で、180度、おー、違うことをしています。私はやっぱり、要するにですね、えー、後段で述べ、述べられましたけれども、政権に就いたら、アメリカに、モノが言えなくなった、そういうことすよ。

 だから、あのー、あれだけでね、沖縄県民が猛反発しても、おー、普天間基地を辺野古に、えー、押し付けようと、おー、して、いるわけです。えー、民主党政権、対等な日米関係を、深めていたはずであります。これでは、一体、何のための政権交代だったのかと、おー、このように言わざるを得ないと、いう指摘をして、おきたいと思います」

 名護市に対する基地建設の調査が強引に行われようとしていることと、市が調査を不許可にすると、国にも権利があると市を行政不服で訴えたとかの追及に入る。

 認識の変化を最初は極東アジアの情勢の変化、特に北朝鮮の核ミサイルや拉致を理由として挙げたが、次にポスト冷戦だ何だと言っているが、2001年9月11日発生のアメリカ同時多発テロ事件――9・11に言及しているから、国際的なテロの横行を念頭に入れた国際的な情勢変化と、再び北朝鮮の脅威を理由付けとしている。北朝鮮の脅威の中には昨2010年11月23日の北朝鮮による韓国の延坪島(ヨンピョンド)砲撃と両国間の有事の懸念も計算に入れた抑止力の必要性というわけなのだろう。

 だが、ポスト冷戦にしろ、9.11事件、その他の国際テロにしろ、拉致にしろ、1999 年7 月の「民主党沖縄政策」から始まって年々発展させ、2008 年7 月8 日に公表した『民主党・沖縄ビジョン(2008)』には、「民主党は、日米安保条約を日本の安全保障政策の基軸としつつ、日米の役割分担の見地から米軍再編の中で在沖海兵隊基地の県外への機能分散をまず模索し、戦略環境の変化を踏まえて、国外への移転を目指す」と明記しているのだから、ポスト冷戦も9.11事件、その他の国際テロも拉致も、こういった国際情勢の変化を計算に入れた上での「在沖海兵隊基地の県外への機能分散」を手始めとした、「戦略環境の変化を踏まえて、国外への移転」の目標だったはずである。

 いわば菅首相が沖縄には海兵隊は要らない、沖縄の海兵隊は抑止力足り得ないとしていた野党時代の認識を、いや沖縄には海兵隊は必要だ、抑止力足り得ると変える理由とすることはできないということである。

 認識を変える唯一理由とすることができる要素は北朝鮮による韓国延坪島(ヨンピョンド)砲撃をキッカケとした韓国との間で一触即発の危険が生じかねない北朝鮮の脅威のみである。

 あるいは領有問題が生じて中国との間に緊張関係をもたらした尖閣諸島が安保条約第5条の適用範囲内ということで、米軍抑止力考慮の対象となり得るが、菅首相がそのことに一言も触れないのは中国との関係を懸念してのことかもしれない。

 だが、例え北朝鮮の脅威が切迫した状況にあるとしたとしても、あるいは尖閣を考えたとしても、抑止力が米軍全体の機能として存在する能力であるなら、海兵隊が沖縄でなければならない理由にはならない。

 少なくとも北朝鮮に限って言うと、北朝鮮は沖縄よりも九州地方や中国地方、あるいは北陸地方からの方が近い距離にある。機動性という点ではより有利な地理的条件を備えていることになるはずだ。

 菅首相は昨年の12月17、18の両日沖縄を訪問した際の記者会見で、米軍基地問題を「全国民の課題として、しっかり受け止めていかなければならない」と言い、「全国民に、あるいは全47都道府県の、沖縄以外の46都道府県の皆さんにも考えて頂きたいという思い」を持っていると発言している。だが、抑止力を言い募るものの、海兵隊が沖縄でなければならない理由を述べず、言っていることに反して「全国民の課題」とせずに基地を沖縄に押し付ける姿勢を変えていない。

 沖縄の辺野古に海兵隊を置くことと九州地方や中国地方、あるいは北陸地方に置くことと抑止力にどれ程の違いが生じるのか聞くべきだし、菅首相はその質問に答える義務を有するはずである。

 海兵隊の抑止力が三軍全体の一つの歯車として機能する以上、沖縄でなければならない理由はどこにもないはずだ。

 最後に、「それからもう一つ、ウー。率直な言い方をどこまでしていいか、分かりませんが、やはり、えー、鳩山総理が辞任されたことの理由の大きな一つが、この普天間の、おー…、迷走にあって、その迷走は勿論沖縄のみなさんにも大変ご迷惑をかけましたが、ある意味では、日米関係そのものも、やや不安定なものになっておりましたので、私としては、その、おー、面も、おー、考えた中での、やはり5月28日の日米合意というものを、踏まえた形で、えー、スタートを、することが、日本の、大きい意味での、国益にも、添うものであると、考えて、そういう立場で、今日まで、えー、進めてきたところであります」の発言は、「日本の、大きい意味での、国益にも、添うものである」とは言っているが、沖縄県民の意思よりもに日米関係修復を優先させた辺野古決定であったことの暴露となっている。

 我々は過去の海兵隊沖縄不要論・沖縄海兵隊抑止力無関係論を実際には何ら根拠もなく変えた一国のリーダーのその無節操な発言を記憶しておくべきだし、と同時に米海兵隊はなぜ沖縄でなければならないのか、問わなければならない。

 参考までに。《菅首相の初めに辺野古あり、沖縄ありの自己都合な沖縄記者会見 - 『ニッポン情報解読』by手代木恕之》


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北方四島帰属の正当性の帰趨

2011-02-17 08:52:35 | Weblog


 昨2月16日(2011年)エントリー記事《菅首相はロシア北方四島見解「第2次大戦の結果認めよ」を乗り超える否定論理構築の責任を負う - 『ニッポン情報解読』by手代木恕之》に対してコメントを受けた。

  Unknown 2011-02-16 12:50:36

ロシア側の「第2次大戦の結果認めよ」と言う言葉は、
言い換えれば戦前は日本固有の領土だった事を明白に認めている。

ソ連の条約破りは言うに及ばず、日本側のポツダム宣言受諾による停戦実施後の武力侵略。
日本は、「カイロ宣言」に明記されている「領土不拡大」の原則を、ソ連後継国であるロシアが蹂躙している事実も含めて、
ことあるごとにロシアの不正を世界に向けて公にすべき

 カイロ宣言を以って北方四島の帰属は日本にあると見るかどうかはそれぞれの解釈に従うしかないが、北方四島はサンフランシスコ平和条約受諾・署名によってにソ連に帰属したとする立場から投稿している元外交官の孫崎享氏の昨2月16日深夜のツイッターを引用してみる。

 私自身は第二次世界大戦をクリアするために北方四島の原住民たるアイヌの帰属とせよとの立場から、《北方四島返還の新しいアプローチ/先住アイヌ民族と現住ロシア人との共同独立国家とする案 - 『ニッポン情報解読』by手代木恕之》をブログにエントリーした。

 色文字、太字、マーカーは筆者。

 カイロ宣言(1943年11月27日)
 
 (初めて示された日本の戦後処理に関する連合国の基本方針)

「ローズヴェルト」大統領蒋介石大元帥「チャーチル」總理大臣ハ、各自ノ軍事及外交顧問ト共ニ北「アフリカ」ニ於テ會議ヲ終了シ左ノ一般的聲明ヲ發セラレタリ

各軍事使節ハ日本國ニ對スル將來ノ軍事行動ヲ協定セリ三大同盟國ハ海路陸路及空路ニ依リ其ノ野蠻ナル敵國ニ對シ假借ナキ彈壓ヲ加フルノ決意ヲ表明セリ右彈壓ハ既ニ増大シツツアリ

3大同盟國ハ日本國ノ侵略ヲ制止シ且之ヲ罰スル爲今次ノ戰爭ヲ爲シツツアルモノナリ

右同盟國ハ自國ノ爲ニ何等ノ利得ヲモ欲求スルモノニ非ス又領土擴張ノ何等ノ念ヲモ有スルモノニ非ス

右同盟國ノ目的ハ日本國ヨリ千九百十四年ノ第一次世界戰爭ノ開始以後ニ於テ日本國カ奪取シ又ハ占領シタル太平洋ニ於ケル一切ノ島嶼ヲ剥奪スルコト並ニ滿洲、臺灣及澎湖島ノ如キ日本國カ清國人ヨリ盗取シタル一切ノ地域ヲ中華民國ニ返還スルコトニ在リ

日本國ハ又暴力及貪慾ニ依リ日本國ノ略取シタル他ノ一切ノ地域ヨリ驅逐セラルヘシ

前記3大國ハ朝鮮ノ人民ノ奴隸状態ニ留意シ軈テ朝鮮ヲ自由且獨立ノモノタラシムルノ決意ヲ有ス

右ノ目的ヲ以テ右3同盟國ハ同盟諸國中日本國ト交戰中ナル諸國ト協調シ日本國ノ無條件降伏ヲ齎スニ必要ナル重大且長期ノ行動ヲ續行スヘシ

 確かにカイロ宣言には「領土擴張ノ何等ノ念ヲモ有スルモノニ非ス」と領土拡大の意志を否定し、単に1914年の第一次世界大戦以降、日本が新たに領有・占領した領土の放棄のみを謳っているが、このカイロ宣言にはソ連は加わっていないためにソ連はこの宣言の制約を受けないとする主張がある。

ポツダム宣言(1945年7月26日署名、同年8月14日日本受諾) 

吾等合衆国大統領、中華民国政府主席及「グレート、ブリテン」国総理大臣ハ吾等ノ数億ノ国民ヲ代表シ協議ノ上日本国ニ対シ今次ノ戦争ヲ終結スルノ機会ヲ与フルコトニ意見一致セリ

二 合衆国、英帝国及中華民国ノ巨大ナル陸、海、空軍ハ西方ヨリノ自国ノ陸軍及空軍ニ依ル数倍ノ増強ヲ受ケ日本国ニ対シ最後的打撃ヲ加フルノ態勢ヲ整ヘタリ右軍事力ハ日本国ガ抵抗ヲ終止スルニ至ル迄同国ニ対シ戦争ヲ遂行スルノ一切ノ聯合国ノ決意ニ依リ支持セラレ且鼓舞セラレ居ルモノナリ

三 蹶起セル世界ノ自由ナル人民ノ力ニ対スル「ドイツ」国ノ無益且無意義ナル抵抗ノ結果ハ日本国民ニ対スル先例ヲ極メテ明白ニ示スモノナリ現在日本国ニ対シ集結シツツアル力ハ抵抗スル「ナチス」ニ対シ適用セラレタル場合ニ於テ全「ドイツ」国人民ノ土地、産業及生活様式ヲ必然的ニ荒廃ニ帰セシメタル力ニ比シ測リ知レザル程度ニ強大ナルモノナリ吾等ノ決意ニ支持セラルル吾等ノ軍事力ノ最高度ノ使用ハ日本国軍隊ノ不可避且完全ナル壊滅ヲ意味スベク又同様必然的ニ日本国本土ノ完全ナル破壊ヲ意味スベシ

四 無分別ナル打算ニ依リ日本帝国ヲ滅亡ノ淵ニ陥レタル我儘ナル軍国主義的助言者ニ依リ日本国ガ引続キ統御セラルベキカ又ハ理性ノ経路ヲ日本国ガ履ム(ふむ=行う)ベキカヲ日本国ガ決意スベキ時期ハ到来セリ

五 吾等ノ条件ハ左ノ如シ吾等ハ右条件ヨリ離脱スルコトナカルベシ右ニ代ル条件存在セズ吾等ハ遅延ヲ認ムルヲ得ズ

六 吾等ハ無責任ナル軍国主義ガ世界ヨリ駆逐セラルルニ至ル迄ハ平和、安全及正義ノ新秩序ガ生ジ得ザルコトヲ主張スルモノナルヲ以テ日本国国民ヲ欺瞞シ之ヲシテ世界征服ノ挙ニ出ヅルノ過誤ヲ犯サシメタル者ノ権力及勢力ハ永久ニ除去セラレザルベカラズ

七 右ノ如キ新秩序ガ建設セラレ且日本国ノ戦争遂行能力ガ破砕セラレタルコトノ確証アルニ至ル迄ハ聯合国ノ指定スベキ日本国領域内ノ諸地点ハ吾等ノ茲ニ指示スル基本的目的ノ達成ヲ確保スル為占領セラルベシ

「カイロ」宣言ノ条項ハ履行セラルベク又日本国ノ主権ハ本州、北海道、九州、四国及吾等ノ決定スル諸小島ニ局限セラルベシ

九 日本国軍隊ハ完全ニ武装ヲ解除セラレタル後各自ノ家庭ニ復帰シ平和的且生産的ノ生活ヲ営ムノ機会ヲ得シメラルベシ

十 吾等ハ日本人ヲ民族トシテ奴隷化セントシ又ハ国民トシテ滅亡セシメントスルノ意図ヲ有スルモノニ非ザルモ吾等ノ俘虜ヲ虐待セル者ヲ含ム一切ノ戦争犯罪人ニ対シテハ厳重ナル処罰加ヘラルベシ日本国政府ハ日本国国民ノ間ニ於ケル民主主義的傾向ノ復活強化ニ対スル一切ノ障礙ヲ除去スベシ言論、宗教及思想ノ自由並ニ基本的人権ノ尊重ハ確立セラルベシ

十一 日本国ハ其ノ経済ヲ支持シ且公正ナル実物賠償ノ取立ヲ可能ナラシムルガ如キ産業ヲ維持スルコトヲ許サルベシ但シ日本国ヲシテ戦争ノ為再軍備ヲ為スコトヲ得シムルガ如キ産業ハ此ノ限ニ在ラズ右目的ノ為原料ノ入手(其ノ支配トハ之ヲ区別ス)ヲ許サルベシ日本国ハ将来世界貿易関係ヘノ参加ヲ許サルベシ

十二 前記諸目的ガ達成セラレ且日本国国民ノ自由ニ表明セル意思ニ従ヒ平和的傾向ヲ有シ且責任アル政府ガ樹立セラルルニ於テハ聯合国ノ占領軍ハ直ニ日本国ヨリ撤収セラルベシ

十三 吾等ハ日本国政府ガ直ニ全日本軍隊ノ無条件降伏ヲ宣言シ且右行動ニ於ケル同政府ノ誠意ニ付適当且充分ナル保障ヲ提供センコトヲ同政府ニ対シ要求ス右以外ノ日本国ノ選択ハ迅速且完全ナル壊滅アルノミトス
 
 ソ連は日ソ中立条約の制約を受けて、宣言時は参加していず、後からの参加となっているものの、 〈「カイロ」宣言ノ条項ハ履行セラルベク又日本国ノ主権ハ本州、北海道、九州、四国及吾等ノ決定スル諸小島ニ局限セラルベシ〉の制約を受けることになるが、 〈吾等ノ決定スル諸小島〉の中には北方四島は含まれていないとする説が存在する。

 その根拠は日本に領有権があるとしている南樺太(南サハリン)が四国(18,297.74 km²)よりも広い(樺太全体で76,400km²)ことの比較から、「諸小島」に入らないとしている。

 注:孫崎享氏のツイッターは字余りの部分を次ぎのツイッターにつなげて書く方式を取っている。ツイッターでは記載順は先に書いた記事が後に記入されるが、読みやすいように順を逆にした。

 magosaki_ukeru
孫崎 享(まごさき うける、1943年 - )は、日本の元外交官、元防衛大学校教授、作家。(Wikipedia)

読売:枝野長官「露高官が何を言おうが、(北方領土が)我国領土である歴史的、法的地位はなんら揺らがないサンフランシスコ平和条約をはじめ、第2次大戦の結果を受け入れ。何ら矛盾しない」と強調。)政府、もう国民に虚偽の説明を止めたらよい。サンフランシスコ平和条約では千島列島に対する

北方領土2:する(ママ)すべての権利、権原及び請求権を放棄する」としている。そしてこの会議で吉田総理は国後・択捉を南千島と発言している。昭和26年10月19日、西村条約局長は国会答弁において、「条約にある千島の範囲については北千島、南千島両方を含むと考えております」。また昭和26年10月

北方領土3:26日 衆議院本会議で(サンフランシスコ)平和条約の承認を求める際、日米安全保障条約特別委員長田中萬逸氏は「遺憾ながら條約第二條によつて明らかに千島、樺太の主権を放棄した以上、これらに対しては何らの権限もなくなるわけである。またクリル・アイランドの範囲はいわゆる北千島

北方領土4:、南千島を含むものである」と説明している。サンフランシスコ条約につき、時の総理、外務省条約局長、衆議院委員長が国後・択捉は南千島で放棄した千島に入っていると述べている。今、冷静に3者の発言をみれば議論の余地がない。虚偽を述べ続け何達成しようとする?被害は日本自体!。

北方領土5(参考)1956年日ソ交渉で領土を画定しようとした際の米国反応。1956年9月7日「日ソ交渉に対する米国覚書、「日本は「サ」条約で放棄した領土に対する主権を他に引き渡す権利を持っていない。。。かかる行為に対してはおそらく同条約によって与えられた一切の権利を留保と推測

北方領土6(参考2):1956年8月19日、重光外相ダレス長官を訪問し、日ソ交渉の経過を説明。ダレス長官は、“日本側がソ連案を受諾(千島列島をソ連の帰属と)することは、米国も沖縄の併合を主張しうる立場に立つわけである”と発言。後々これは関係者間でダレスの恫喝と言われる

 先ず枝野官房長官の発言を伝えている《北方領土、「何を言おうが日本領土」…枝野長官》YOMIURI ONLINE/2011年2月16日(水)21:20)から。

 16日の記者会見。ロシアのラブロフ外相らが第2次世界大戦によって北方領土はロシア領と確定したとの見解を示していることについて――

 枝野官房長官「ロシア高官が何を言おうが、(北方領土が)我が国の領土である歴史的、法的地位はなんら揺らがない。(日本は)サンフランシスコ平和条約をはじめ、第2次大戦の結果を受け入れている。そのことと北方4島が日本の領土であることはなんら矛盾しない」――

 サンフランシスコ条約は日本に対して千島列島に対する主権の放棄を命じている。日本は署名し、この主権放棄を受け入れたが、但しソ連は署名していない。だから、ソ連に対しては主権放棄に当たらないの矛盾が通用するかどうかである。

 但し孫崎享氏によると、上記ツイッターでは当時の日本政府は樺太・千島に対する主権放棄を認めているとしている。

 ダレス長官“日本側がソ連案を受諾(千島列島をソ連の帰属と)することは、米国も沖縄の併合を主張しうる立場に立つわけである”の発言はソ連との連携、意を通じ合っていたと考えることができる。

 第二次世界大戦に関わる諸条約・宣言をクリアするためにはそれ以前のアイヌ領有の正当性を訴えるしか道は残されていないのではないだろうか。

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