菅首相の言葉の軽さと指導力欠如の相関関係からトロイカ体制を読み解く
昨8月30日、菅首相が首相公邸で鳩山前首相と約1時間会談したと言う。前首相が首相公邸を訪れたとき、本当なら俺がもっといるべき場所だったのにという残念の思いが頭をよぎったかどうかは確かめようがない。
《首相と鳩山氏、挙党重視で一致 31日に菅・小沢会談へ》(asahi.com/2010年8月30日22時21分)
指導力、リーダーシップがないという点で似た者同士の菅首相と鳩山前首相が、〈小沢一郎前幹事長も加えたトロイカ体制を重視して政権運営を進めることで一致した。〉と記事は書いている。
「脱小沢」か、「挙党態勢」かを対立軸としていた菅陣営と小沢陣営だったが、菅・鳩山会談でどこでどうなったか、小沢・鳩山・菅のトロイカ体制という手打ちの構図へと唐突な場面転換を見せ始めた。
会談終了後の公邸前での記者会見。
鳩山前首相「経済的にも円高などで大変対策が急がれている。こういう時こそ挙党態勢を築くことが重要だ。・・・・挙党態勢とは、小沢先生が(民主党に)加わってからいわゆるトロイカ体制で今日までやってきた、その原点に立ち戻ること」
ここで一つ明らかになったことは、鳩山前首相は菅、小沢の主役争いに主役とまではいかないだろうが、準主役程度に自分も一枚加えて、三人で舞台を盛り上げようと策し、菅首相がそれで手を打ったということである。
現在の衆議院の任期限りで引退を表明しておきながら、「地元後援会に相談せずに結論を出そうとして『唐突だ』と言われている。来年春の統一地方選を一つの目安に結論を見い出したい」と発言が後退、そして菅・小沢の対立をいい機会に挙党態勢の調停役を買って出て、俺も加えろと出しゃばり出てきたと言うことなのか。
だとしたら、指導力がない割にはなかなかの狡猾な策士と言える。
菅首相はロシアの三頭立ての馬そりのことを譬えたトロイカ体制に輿石参議院議員会長の名前を加えて四頭立てにしたらしい。
菅首相「基本的な考え方はまったく異存がない。その体制を大事に考えて活動を進めていくという鳩山さんからの提案に同意した」
自分も加えろ、舞台に乗せろが鳩山前首相からの提案だと言っている。但し、菅・鳩山会談に先立って同じ日に小沢・鳩山・輿石会談を開いている。そこで出てきたトロイカなのだろうか。
どこで出ようと、辞退してもようさそうな余分な一枚に見えるが、辞退もせず、挙党態勢に於ける重要な一枚に自身を堂々と加えている。尤も自分から言い出したトロイカなら、辞退というカードは見つけようがない。
鳩山前首相は8月26日、東京都内の個人事務所で記者団に対して小沢支持を表明している。
鳩山「(03年の民主党・自由党合併で)私の一存で民主党に入ってもらったので、その経緯から私が応援するのが大義だ」(asahi.com)
こいつ相変わらずバカだなと思った。民主党を率いて日本の国を建て直すだけの指導力を持っている、そういった人物を応援して、間接的に国家再建に役立つことが私自身の大義となると言うならまだしも、国家再建とは無関係の要素でしかない、単に「民主党に入ってもらった」を大義とする。
日本の最高学府である東大卒だということだが、東大とはこの程度の頭脳を育てる日本最高の教育機関だとしたら、見事過ぎる逆説、見事過ぎる倒錯を踏んでいることになる。
輿石氏を加えたのは参議院が与野党ねじれているから、その対策上からなのか、余分に一人加えて、小沢・鳩山の影響力を少しでも和らげようとしたのか、どちらなのか、それとも他の理由からなのか。
このトロイカ体制、菅容認を鳩山前首相は小沢幹事長に取り次いで、今日31日に菅・鳩山・小沢・輿石4者会談をセット。鳩山、輿石の立会いの下、小沢、菅の当事者同士で確認し合う儀式が行われる予定だという。
但しこの予定、予定通りいくかどうかは定かではないはずだ。8月23日の1期生新人議員との意見交換会で菅首相は「小沢氏のような人材が必要な場面もある。小沢氏の手腕は高く評価しており、その腕力を活用していきたい」と小沢人事活用発言をしていたが、それ以降、その手の発言を控えて、「適材適所」を言うだけとなったのは菅支持であると同時に強硬な脱小沢、反小沢の仙谷官房長官や前原国交相、枝野幹事長、蓮舫等に押し返されたからだろう。
押し返されて簡単に変える程に菅首相の言葉が軽いことを証明している。トロイカ体制に仙谷官房長官、前原国交相、枝野幹事長、蓮舫がどう反応するかである。押し返すことになれば、発した言葉を再度軽くすることになる。
いや、このトロイカ体制の容認自体が6月3日の民主党代表選出馬記者会見で、「小沢幹事長にはある意味では暫くは静かにしていただいた方がご本人にとっても、民主党にとっも、日本の政治にとっても良いのではないか」と言わずもがなのことを言った言葉の軽さをなお軽くする自身の発言に対する裏切りを示している。
単にトロイカ体制と言うと聞こえはいいが、菅首相が要求されて受け入れた体制となるのだから、小沢・鳩山・輿石の神輿に乗せられることを意味する。決して菅首相が主体的立場で神輿に乗って、動きを指示するということではない。神輿を担ぐ小沢・鳩山・輿石が好きなように神輿を揺らして、神輿に乗った菅首相を操る構図を取る。
馬が勝手に走って御者のムチが効かなくなる状態と言ってもいい。
記事は、〈挙党態勢確立に向けて、「脱小沢」路線の仙谷由人官房長官や枝野幸男幹事長の更迭論が取りざたされていることについて、首相は「そういう具体的なことは話していない。少なくとも鳩山氏から伝えられたことはまったくない」と否定。小沢氏の処遇については「ポストとか一切話はしていない」と述べた。〉と書いているが、重要な役職を用意しないことには小沢陣営が考える神輿の関係を持ったトロイカとはならない。
果して仙谷官房長官、前原国交相、枝野幹事長、蓮舫が納得するだろうか。納得は強硬な反小沢の立場からして、白旗を掲げるに等しい容認となる。
以前にブログに取り上げたが、菅首相はこれまでも自身の主義・主張としていた発言を変えて、言葉を軽くしてきた。
(01年8月)「在沖米海兵隊は沖縄に必ずしも存在しなくても日本の安全保障に大きな支障はない」
(01年8月)「国内移転よりハワイなど米国領内への移転が考えやすいはずだ」
過去の発言と現在の発言との違いを菅首相は次のように言い繕っている。
「過去の発言について、色々言うことは控えたいと思いますが、私なりの今現在の日本の要請、あるいはアジアを巡る情勢含めての判断であります」(8月5日の参議院予算委員会)と。
自分の発言を状況・情勢次第で変化する言葉とした。そうと信じて国民に向けて発信した言葉であっても、信じたことを貫く言葉はないということの宣言である。あるいは一旦国民に届けた言葉をすべて守り抜くわけではないということの宣言である。
言葉を変えることによって、菅首相は自分から自分の言葉を軽くしてきた。言葉が一貫しない政治家に指導力、リーダーシップは期待しようがない。言葉軽ければ、指導力欠く。指導力を欠くから、そのときどきで言葉を変え、結果として言葉を軽くする。その関係を生来的な資質なのか、菅首相は抱えている。
その行き着く先の一つがトロイカ体制ということなのだろう。反小沢派がどう出るか。
私自身は選挙で決着をつけた方がスッキリすると思っている。例え民主党が割れることになっても、ガラガラポンの政界再編で地固まるのではないのか。未だ政治後進国なのである。
――首相の代表選に向けた実行力演出の「視察」ラッシュと「指示」ラッシュの予感――
《毎日新聞世論調査:「首相にふさわしい」 菅氏が78%》(毎日jp/2010年8月29日 21時53分)
8月28、29日実施の電話世論調査。前回調査は7月24、25日。代表選関連の質問と回答に限って参考引用――
◆菅内閣を支持しますか。
支持する 48(前回41)
支持しない 35(前回40)
関心がない 16(前回19)
◇支持する理由
民主党の首相だから 24(前回19)
指導力に期待できる 9(前回9)
政策に期待できる 8(前回12)
政治のあり方が変わりそうだから 55(前回59)
◇支持しない理由
民主党の首相だから 6(前回8)
指導力に期待できない 29(前回19)
政策に期待できない 32(前回41)
政治のあり方が変わりそうにない 31(前回32)
◆菅首相が民主党代表に再選され、首相を続けた方がいいと思いますか。
続けた方がいい 72
交代した方がいい 25
◇続投支持理由
菅首相の政権運営に期待しているから 10
菅首相の人柄がいい 5
首相をたびたび交代すべきではないから 83
◇交代させたい理由
菅首相の政権運営に期待できないから 56
菅首相では民主党内がまとまらないから 31
参院選敗北の責任を取るべきだから 9
◆菅氏と小沢氏のどちらが首相にふさわしいと思いますか。
菅直人 78
小沢一郎 17
◆政府や民主党内で小沢氏の影響力が再び強くなることについて、好ましいと思いますか、思いませんか。
好ましい 14
好ましくない 83
◆自民党中心の政権から民主党中心の政権に交代し、9月16日で1年を迎えます。政権交代をして良かったと思いますか、思いませんか。
良かった 62
悪かった 32 (以上参考引用)
一応、このまま民主党政権が持続することは望んでいて、菅内閣に対する支持率も不支持の35%に対して前回調査より7ポイント上昇して48%まで回復している。
だが、「支持する理由」は、最も求められるべき政治能力であるべきはずの「指導力に期待できる」が前回と同じ9ポイント、「政策に期待できる」がさらに悪いことに前回から3ポイント辛い採点となって、8ポイントの最低評価。「政治のあり方が変わりそうだから」とは、端的に言うと金権政治からの脱却ということだと思うが、55ポイント。相変わらず積極的支持とはなっていない。
不支持理由は「指導力に期待できない」が前回調査よりも10ポイント上昇の29ポイント。「政策にできない」が前回調査よりも9ポイント減ではあるものの、32ポイントもある。不支持理由に於ける「政治のあり方が変わりそうにない」の31ポイントは民主党政治そのものに対する拒絶反応だろうか。
「続投支持理由」が、「首相をたびたび交代すべきではないから」が83ポイントの圧倒的多数を占めている。要するに首相は菅直人と言う政治家でなくても、小沢でなければ誰でもいいということである。たまたま代わったばかりの首相が菅直人と言う政治家だったから、指導力に期待できなかろうが、政策に期待が持てなかろうが、もっと続けさせるべきだと、ただそれだけの理由で続投を望んでいる。
能力・資質を買った続投支持ではなく、「たびたび交代すべきではない」点を考慮した続投支持というわけである。
能力・資質を買った続投支持の78ポイントであるなら、内閣支持率はほぼ同等の数値を占めていいはずだが、それが48ポイントにとどまって78ポイントに遥か届いていないところにも、支持理由の実態を見ることができる。
読売新聞社が8月28~29日に行った電話緊急全国世論調査も似た傾向を示している。
民主党代表選(9月1日告示、14日投開票)で、菅首相と小沢一郎前幹事長が対決する見通しとなったことを受け、読売新聞社は28~29日、電話による緊急全国世論調査を実施した。前回調査は8月6~8日実施。
《世論の菅氏支持、小沢氏への根強い批判が追い風》(YOMIURI ONLINE/2010年8月29日23時00分)
記事は冒頭、〈民主党代表選に関する読売新聞社の緊急全国世論調査では、菅首相への支持が、積極的な評価ではなく、首相が短期間で交代することへの懸念や、小沢一郎前幹事長に対する根強い批判に支えられていることがわかった。〉と書いている。
◇菅内閣支持率 54%(前回調査44%)
不支持率 35%(前回調査46%)
◇次の代表に誰がふさわしいか
菅直人 67%
小沢一郎 14%
◇菅直人が民主党代表にふさわしいと思う理由
首相が短期間に代わるのは良くない 65%
小沢氏と距離を置いている 27%
政策に期待できる 4%
指導力がある 1%
◇小沢一郎が民主党代表にふさわしいと思う理由
指導力がある 40%
政治経験が豊かだ 29%
政策に期待できる 15%
政権が安定しそうだ 12%(以上)
「次の代表に誰がふさわしいか」の菅直人「67%」対小沢一郎「14%」の中身は、菅「消極的支持」対小沢「積極的支持」が正体であることを世論調査は示している。
菅首相本人も「指導力がない」、「政策に期待が持てない」の国民評価を気にしているのだろう、ここのところ工場や施設を次々と視察し、関係大臣に政策の指示を矢継ぎ早に出すパターンを取り入れ、マスコミを通じて国民の目に届ける露出形態で指導力・実行力あるところを、あるいは政策が期待持てることを演出すべく動き始めた。
小沢前幹事長が代表選立候補表明したのは8月6日。
8月28日の土曜日、北九州市のLED照明製造工場とリチウムイオン電池素材工場を視察、企業の国内立地を促し地方の雇用確保を図る「日本国内投資促進プログラム」を10~11月をめどに策定するよう直嶋正行経済産業相らに指示。(毎日jp)
昨8月29日昼、兵庫県姫路市の姫路更生保護活動サポートセンターを視察、千葉法相に対して保護司制度の充実などを指示。(MSN産経)
今後ともこの土日休日の実行力演出は投票日に向けて「視察」ラッシュ、「指示」ラッシュとなって現れるのではないだろか。
だが、菅首相が実行力、指導力あることを演出するのは結構毛だらけ猫灰だらけだが、菅首相が指示する政策に関して指示を受ける関係閣僚は指示を受けるまでその政策に関してノータッチであることを逆に示すことになる。悪く言うと、指示が出たその政策に関して関係閣僚ばかりか、関係省庁まで無為無策の状態にあったことになる。
そんなことはないだろうから、菅首相を中心に閣僚たちが顔を揃えて、前以て準備してある政策の一つを下敷きのネタにして次の視察先を決め、マスコミ記者とカメラが待ち構える前で誰それに指示を出すシナリオを描いて、主人公の菅首相がシナリオが視察先とした舞台に立ち、シナリオに書いてあるとおりに指示を出す実行力、指導力演出の一連のドラマを演じているといったところだろう。
菅首相自身が指導力、実行力がないばっかりにさもあるように見せかけなければならない閣僚たちの苦心惨憺する姿だけが浮かぶ。
菅首相が昨8月28日、北九州市の工場を見学、見学後記者会見を行って、優れた経済論を披露に及んでいる。記者との質疑箇所は略して、冒頭の首相の発言部分のみ参考引用。
《「代表選、終わった後はノーサイドで」28日の菅首相》(asahi.com/2010年8月28日21時0分)
菅直人首相が28日、視察先の北九州市で記者団に語った内容は次の通り。
「はい、どうも。ご苦労さん」
――よろしくお願いします。
「はい。あ、私からですか、はい」
【企業立地促進策】
「昨日は大田区、東京大田区の二つの中小企業を視察をしました。で、今日はこの北九州にやってきまして、東芝の工場と、そしてこのリチウムの電池の素材を作っているこの戸田工業と、二つの工場をみせていただいたうえに、特にあの私が副総理の時に、緊急経済対策として、低炭素にかかわる企業の国内立地を促進するための補助金をつくりましたけれども、その補助金を使って国内立地を進めているこの戸田工業、そして東芝を含めたこの北九州や山口県の企業の経営者の皆さんにお集まりを頂いて、1時間余り話を聞くことができました。まあ、その中には私のもう十数年前に亡くなった父親がやっぱりこれ技術屋でものづくりだったんですが、40年間勤めた会社の経営者の方も来られて、そういう意味では個人的にも大変懐かしさと同時に、まあ楽しい視察というか、有意義で、かつ楽しい視察ということになりました」
「しかし、中身はですね、なかなか大変な状況にあります。東芝のLEDのチップの生産については、世界でも最高の技術で、これから大きく伸びられると思いますけども、やはり海外との競争は激しいものがあります。また、この戸田工業も、世界にまさに注目されるリチウム電池の素材ですが、オバマ大統領の方からもですね、色々と補助金が出て、アメリカにも立地をし、そして、私どものそうした補助金にもしていただいて、日本にも立地するということで、ある意味では、そういったその立地を巡ってですね、非常に日本の円高もありまして、手をこまねいていると、どんどん有力な企業が外に出ていきかねない状況にあることを改めて強く認識を致しました」
「私は日本の経済を立て直すには1に雇用、2に雇用、3に雇用と、つまりは雇用があればそこに新しい仕事があるということですから、そこで物が生まれてGDPが上がり経済が成長し、また税収が上がる。さらにはそれを生かして社会保障も強くなっていくと。そういった意味で昨日ブレア元イギリス首相と電話会談いたしましたが、ブレアさんは1に教育、2に教育、3に教育という言葉を言われましたが、私は1に雇用、2に雇用、3に雇用で行きたいと、こういうことを申し上げたら、ぜひそれでがんばれという話を昨日ちょうどいただいたところであります。その意味で国内立地に力を入れる補助金などについてもですね、これからも効果のある形でやっていくということは非常に重要であると思います。いろいろお話を聞いていますと、リスクのある新規の投資のところでそういう補助金があったことで、思い切って国内で、新たな工場をつくったというそういう大変積極的な評価が多い中で、やはり非常に手間ひまがかかるとか、あちこちの役所に行かなければなかなか物事が決まらないとか、あるいはこの補助金もうまくいったら返してくれとややまあなんといいましょうか、中途半端なところもあるようでして、そういう点ではこの仕組みをこれから継続ないしは拡大する場合に、そういった指摘もしっかりと受け止めてより効果的なものにしていかなければならないと思っています」
「特に私のほうからいろんな機会に経営者の方に申し上げているのは、今企業全体としてはですね、200兆円程度の留保を持っておられるわけです、日本のマクロ的に見ると。一方で日本の企業の設備はかつては平均7年ぐらい設備の現状だったんですけど、今は13年、つまり設備の老朽化が一方で進んでいる。かつてなら老朽化が進めばですね、ドンドン新規投資をして最新鋭機に変えてこられたんですが、今経営者のみなさんはどちらかというと国内に投資するのか、それとも投資を待ってお金のままで持っているのかということで、投資を抑えてお金のままで持っているという傾向が強いというのがこの数字にも表れています。そこで私からは経営者の皆さんにも思い切って国内で投資をして、そして新しい業種に進出する、あるいは今までの業種だとしても、より効果的なですね、効率の高いものに工場を変えていくと。そういう方向で、えー、踏み出してもらいたいと。その踏み出すにあたって、必要な支援、あるいはいろいろな制約になっているいろいろな行政上の制約は、積極的に取り除いていくと。これが、私たち行政がやらなければいけない仕事だということも申し上げました」
「そういった中で、皆さんにもお手元にお配りいたしておりますけども、日本国内投資促進プログラムというものを、策定するようにわたしの方から、関係方面に指示をいたしました。つまり今申し上げたこと、そのものを、促進するためにですね、この日本国内投資促進プログラムというものを、つくりあげて、法律的な面、いろいろな制度的な面、人材の問題などを、しっかりとフォローしていくと。その結果、先程来申し上げてますように、国内でより多くの企業が、投資をし、立地をし、日本の国内の産業発展に踏み出してより積極的に踏み出して頂けるように、日本国内投資促進プログラムというものを、つくるように指示をいたしました。これの実行に当たっては、当面の景気、経済対策のとりまとめといいましょうか、基本方針を、31日には基本方針を決定する予定ですが、その中でも取り入れられるものは取り入れ、その後、検討することになる補正予算等においてもですね、あるいはさらには、来年度予算についても、こういったことを推し進めるために施策を盛り込んでいきたい。このように考えております。そんなことで、今日の視察、昨日の視察、あわせて、大変有意義な視察だったと。これからもこうした視察を重ねながら、迅速に、政策に反映させていきたい、このように考えております。私からは以上です」
記事題名の「代表選、終わった後はノーサイドで」は改めて説明するまでもないが、ラグビーの試合が終わった後のようにしこりを残さず敵味方なしに挙党一致を目指すという意味なのだが、人間、先ず論功行賞で動くから、双方とも、言葉通りにはいかないと思う。
菅首相は、「私は日本の経済を立て直すには1に雇用、2に雇用、3に雇用と、つまりは雇用があればそこに新しい仕事があるということですから、そこで物が生まれてGDPが上がり経済が成長し、また税収が上がる。さらにはそれを生かして社会保障も強くなっていくと」といいこと尽くめのことを言っているが、この「新しい仕事」が新卒者の新就職先、あるいは再就職者の就職先、あるいは新産業という意味の「新しい仕事」を指しているのか分からないが、いずれにしても、首相の言う「雇用」は「新しい仕事」の存在を前提とした「雇用」としている。
いわば「新しい仕事」が存在しなければ生まれない「雇用」、「新しい仕事」があって、初めて生じる「雇用」と位置づけているのだから、「日本の経済を立て直すには」、「1に新しい仕事、2に新しい仕事、3に新しい仕事」と「新しい仕事」の創出を最初に持ってこなければならないはずだが、なぜか「雇用」を先に持ってきている。
決してニワトリと卵の関係ではない。「新しい仕事」が「雇用」を産むのであって、「雇用」が「新しい仕事」を産むわけではない。
最初に準備すべきは「新しい仕事」であって、「雇用」ではない。「雇用」は「新しい仕事」に付いてくる付属要素である。
菅首相が言っていることは合理的な認識と言えるのだろうか。それとも当方が間違っているのだろうか。
電話会談したブレア元英首相が「1に教育、2に教育、3に教育」と言ったのは、長期的視点に立った場合、新産業創出には長い目で見て教育が大切であり、短期的には現在の景気後退や景気後退時の経済政策等に伴う産業構造の転換に対応可能なスキルアップ・スキルチェンジに必要要素として「教育」を挙げたのだろう。
民主党は産業に関しては外需から内需への転換、雇用に関しては介護・医療分野、農林業分野への転換を政策として掲げていた。このことに伴うスキルアップ・スキルチェンジには訓練(=教育)が必要となる、その教育のことでもある。
雇用は企業からの求人の結果であろう。企業の求人は製品の需要増(=消費増)の結果である。供給が需要に追いつかないときに求人は生じる。となると、消費(=需要)をかき立てる製品が求められることになる。新製品開発には技術が必要となる。技術は技術訓練を含めた教育によってもたされる。
ブレア元英首相は新産業創出や産業構造の転換のみならず、新製品開発まで視野に入れて、「教育」と言ったに違いない。
少し前のブログに書いたことだが、菅首相は8月21日に新卒者の就職状況が厳しいことへの対応策として首相官邸に省庁横断の「新卒者支援特命チーム」を設置して新卒者の就職を支援していく考えを示した。
そのとき次のように書いた。〈日本の景気を確実に回復させることが第一義であって、このことが解決しない限り、「新卒者支援特命チーム」を設置したとしても、名前が何であれ、望ましい状況に常に届かない不完全な対処療法で終わることになる。すべては景気回復の原因療法にかかっているとしなければならない。
いわば景気回復の原因療法とすべき政策の構築と実施を何よりも先に持ってきて、何よりもそのことに専念し、「新卒者支援特命チーム」等の設置は関係閣僚と協議し、責任者を決めて指示して機能させていく、そういう態勢を取ることで十分なはずである。〉・・・・
景気回復策を主たる政策として公表し、その実施に向けて全力投球すべきを、新卒者を対象に就職支援を行う施設「京都ジョブパーク」の視察にわざわざ時間を掛け、首相直々「新卒者支援特命チーム」の設置を宣言する。この認識のズレは、「私は日本の経済を立て直すには1に雇用、2に雇用、3に雇用と、つまりは雇用があればそこに新しい仕事がある」とする認識のズレと重ならないだろうか。
大体が、「私は日本の経済を立て直すには1に雇用、2に雇用、3に雇用」と言っているが、政権獲得後の2009年10月9日に「緊急雇用対策本部」(本部長・鳩山由紀夫首相)を設置、10月下旬の臨時国会開会までに最終決定する方針とした「緊急雇用創造プログラム」(仮称)の概要を《建設労働者の転職を支援 政府の緊急雇用対策》(asahi.com/2009年10月9日3時4分)が伝えている。
その中には次のような政策を掲げている。
(1)介護労働の雇用者数拡充
介護施設で働くための職業訓練の支援策の充実及び研修生の生活支援も検討。
(2)公共事業削減に伴う建設・土木労働者の農林業などへの転職支援
「八ツ場(やんば)ダム」の建設中止に加え、1兆円超の公共事業費の削減を打ち出しているため、
地方を中心に建設労働者などの失業が急増する可能性に備えて農林業などへの転職支援の仕組みを新
たに設ける方向。
10月下旬の臨時国会開会までに最終決定するとした時点から10ヶ月経過している。これらの政策は10ヶ月経過分の進捗度を見せているのだろうか。
菅首相は副総理時代の昨年10月半ばにテレビ朝日の「サンデーモーニング」に出演して、介護と農林分野への雇用創出を力説している。
菅副総理「今有効求人倍率の高い分野は介護の関係。今7千億円の人材育成の補正予算が組まれている。ほかにもあるが、これなどをうまく活用して、例えば半年とか1年とか、そういう研修を受けたり、あるいは実習を受けた人が、介護の色んな施設で、そのまま正職員として働いてもらえるようなプログラムを今準備を始めている。
田原「介護は正社員でない職員やパートが多くて、待遇がはっきり言って、悪い」
菅直人「我が党は月収にして4万円を引き上げるということを公約にしている」
田原「今、平均どのくらいですか?」
菅直人「正確にはよく分かりません。(上目遣いになって考える様子)よく言われるのは13万とか15万ですね。
麻生内閣でも、地方もそういう(人材育成の)基金がかなり積んである。そういう介護の分野を中心にちゃんと仕事につながってくる、そういうプログラムを今準備を始めている」
田原「仕事につながるということは、やれば食える、生活できるいうね」
菅直人「つまり、研修だけ受けて、いまITとか何とかの研修が多いが、いくらエクセルができるようになったといったって、就職先がなければ、意味がない。就職先がある分野としては介護の分野が一つ大きい」
菅副総理「もう一つ、公共事業がこれまでのように増えることはないわけで、そういうものに携わっていた人たちの転職をしたときの新しい仕事を考えなければいけない。
最大の問題は農業・林業。漁業も若干あるが、そういう転職と農業や林業への就労の支援をプログラムでやっています。レストランをつくる。そのレストランに供給する農業をつくる。そこにまた研修の人を入れて、大変だけど、レストランが7、8軒あって、そこに供給する。
おっしゃるとおり、農地法の問題が色々な参入規制があるので、大変なことは分かっている。しかし可能性としては農業があるのに加えて、林業も実はある。民主党は林業再生プランというものを出して、直接雇用が10万、切った木を使った雇用まで含めると、一応100万というものを2年前に出している」・・・・
いわば介護、農林分野を中心とした雇用創出によって内需を拡大していくことを言っている。それを「2年前に出している」ということだから、番組出演から10ヶ月経過を足すと、相当準備は整っていたはずである。
菅直人が言っていたとおりに介護、農林を中心に内需拡大が進んでいたなら、現在の円高は介護、農林を含めた内需産業にとっては恩恵となり、外需産業の不利益を相当部分補うはずだが、そうはなっていない。円高影響の景気の二番底が囁かれている。言っていることを満足に実現していないことの証明でもあるだろう。
介護の場合、いくら雇用創出を言ったとしても、農林と違って生産現場ではないために産業の裾野が小さく、準完結型の産業となっているから、介護分野の雇用創出で日本の景気全体がよくなるとは思えないが、菅首相は首相になる前から、介護・医療、農業・林業分野への雇用創出を十八番とし、日本の未来が開けるようなことを言っていた。この手の認識の合理性も問わなければならない。
介護現場に於ける現在の雇用創出が政策的なものではなく、不景気型の雇用創出となっていることを示す記事がある。《介護事業所の半数「従業員数は十分」 昨年度実態調査》(asahi.com/2010年8月16日20時35分)
厚生労働省所管の介護労働安定センターが8月16日に公表した09年10月現在の状況に対する「2009年度介護労働実態調査の結果」である。全国の介護保険サービスを提供する約1万7千事業所を抽出、有効回答率は44.6%。
●介護労働者の離職率――17%(前年度比-1.7ポイント)
この点を、〈離職率は07年度までの2割超から減少傾向だが、同センターは景気の悪化で転職しづらくなった影響と見ている。〉と説明している。
●従業員の過不足
「適当」――52.3%の事業所(前年度36.5%)
「不足」――4割(前年6割以上)
●平均月給――21万2432円(前年比-約4千円)
●介護労働者処遇改善のための09年度3%増額介護報酬の基本給への反映
「反映させた」 ――3割の事業所
「一時金支給に充当」――2割弱・・・・
以上の統計から見えることは、すべて政策とは無関係に、さらに介護の仕事が魅力的で人を惹きつけているのではなく、不景気、雇用悪化が力学として働いている、人員不足の介護職に流れていった消極的消去法からの止む得ない就職選択だということであろう。このことは一般的には労働力需給関係で需要が優るときは給与は上がるものだが、逆に前年比で4千円も下がっていることと離職率の低下に現れている。
このことを裏返すと、景気が回復した場合、逆の傾向を取るということであろう。再び離職率は上がり、人が集まらないことから、止むを得ず乏しい経営費の中から給与を捻り出して上げなければならなくなる。
いわば、「そういう介護の分野を中心にちゃんと仕事につながってくる」と言いながら、あるいは、「民主党は林業再生プランというものを出して、直接雇用が10万、切った木を使った雇用まで含めると、一応100万というものを2年前に出している」と言いながら、しかも「2年前」+10ヶ月、計3年近くの準備万端のはずでありながら、政治の力を通した日本の経済回復のための雇用創出の契機、起爆剤と何らなっていない。
にも関わらず、「私は日本の経済を立て直すには1に雇用、2に雇用、3に雇用」だと言っている。
何よりも消費意欲を促す新製品創出(=新製品開発)、あるいは新産業創出(=新産業開発)にかかっているはずで、そこに軸足を置かずに「雇用」、「雇用」と言っても、その合理的認識性のズレは如何ともし難いのではないだろうか。
拉致被害者家族会の飯塚繁雄代表らが8月25日、文部科学省を訪れ、尾崎春樹・大臣官房審議官と面会、「高校無償化」制度の朝鮮学校への適用に反対する要請文を手渡したとの新聞記事を読んで、家族会のHPを調べてみた。《「救う会 全国協議会」に面会者と要請先と要請文の全文が記載されていた。
面会――
文科省――尾崎春樹大臣官房審議官(初等中等教育担当)、和田勝行初等中等教育局高校教育改革PT財務課高校修学支援室長。
拉致問題対策本部――三谷秀史事務局長代理、山口英樹総合調整室長。
要請先――
菅直人内閣総理大臣・拉致問題対策本部長と中井洽拉致問題担当大臣、及び川端達夫文部科学大臣。
朝鮮学校への国庫補助に反対する要請文
私たちは、拉致問題への悪影響などに関する十分な議論がなされていない現段階での朝鮮学校への国庫補助決定に強く反対します。政府におかれては拙速に補助を決めないよう強く要請致します。
そもそも北朝鮮は中学生を含む多くの日本人を拉致していまだに返さず重大な主権と人権の侵害を行い、核とミサイル問題での傍若無人な振舞により国際社会から強い非難を受けています。そのため我が国は、北朝鮮に対して人道支援停止、船舶入港禁止、貿易禁止などの厳しい制裁を課しています。
国庫補助の実施は、拉致問題で誠意ある行動を取らない限り北朝鮮に制裁を強め支援をしないという従来の方針に反するものです。北朝鮮に対して拉致問題で日本が軟化したという間違ったメッセージとなる危険が大きいと考えます。
朝鮮学校の教科書では「2002年9月、朝日平壌宣言発表以後、日本当局は《拉致問題》を極大化し、反共和国、反総連、反朝鮮人騒動を大々的に繰り広げることで日本社会には極端な民族排他主義的雰囲気が醸成されていった」とだけ記して、金正日が拉致を認めて謝罪したことや、朝鮮総連が拉致はでっち上げだと強弁してきたことについて謝罪したことを全く取り上げていません。
朝鮮学校の生徒らは、学内で組織運営されている「在日本朝鮮青年同盟(朝青)」という政治組織に全員加盟して、北朝鮮の金正日政権を支える政治活動に参加しています。金正日政権は昨年夏以降、「拉致問題はすでに決着したという立場で日朝国交を促進せよ」と指令を出しました。それを受けて総連は世論喚起のデモや集会に朝鮮学校生徒を「朝青」組織を通じて大々的に動員しています。朝鮮学校は純粋な教育機関ではなく、拉致被害者をいまだに返さない朝鮮労働党の日本での工作活動拠点なのです。朝鮮学校への国庫補助は、このような拉致を棚上げにしようとする総連と朝鮮学校の政治活動を公認、支援するものとなります。
以上のような点を十分、公開の場で議論することなく、国庫補助を決めるならば、拉致被害者救出に大きな妨げとなります。私たちは朝鮮学校への国庫補助決定に強く反対します。政府におかれても拙速に補助を決めないよう強く要請致します。
以上
朝鮮学校の全生徒が「在日本朝鮮青年同盟(朝青)」なる政治組織に参加、北朝鮮の金正日政権を支える政治活動を行っているということが例え真正なる事実だとしても、かつてのナチスドイツのヒトラーユーゲントみたいにドイツで活動して大人から若者にまで影響を与えたのとは違って、ときには北朝鮮に渡って何かの催しに参加することはあったとしても、直接的には現地で活動しているわけではなく、そのことが金正日政権維持にどれ程役に立っていると言えるだろうか。
金正日政権を実質的に支えているのは金正日自身による軍人重用・側近重用の権謀術数であり、国民に対しては自由と人権抑圧の恐怖政治の活用であろう。
要請文に書いてあるように金正日政権が「拉致問題はすでに決着したという立場で日朝国交を促進せよ」と指令を出し、それを受けて総連が世論喚起のデモや集会に朝鮮学校生徒を「朝青」組織を通じて大々的に動員していたとしても、そのことが日本政府と日本の世論を金正日政権が望む方向に動かすことができているかどうか、何ら役に立っていないことは日本政府の態度と日本の世論が証明している。
また拉致問題解決への進展は、「拉致問題はすでに決着した」とする金正日側が設定したハードルを日本政府が如何に突破するかの政治能力にかかっているのであって、朝鮮高校生の活動や学校の授業が直接的な阻害要件となって立ちはだかっているわけではない。
いわば単に活動していますという事実を示す程度の役にしか立っていないと見るべきではないだろうか。中には少人数いるとしても、全体的にはすべての生徒がその活動に学校生活のすべてを捧げているわけではないだろうから、多くは朝鮮総連の言いなりになった学校のスケジュールの一つだからと機械的に参加しているといった状況でもあるに違いない。
言ってみれば、北朝鮮という犯罪集団の使いっ走り程度といった立場にあるのではないのか。それを北朝鮮と同じ犯罪集団として扱い、それ相応の懲罰を与えようとしている。
何よりも拉致を犯したのは北朝鮮当局であり、金正日本人であろう。いくら総連と朝鮮学校の生徒が拉致を棚上げにしようとする政治活動を行っていたとしても、あるいは朝鮮学校が純粋な教育機関ではなく、拉致被害者をいまだに返さない朝鮮労働党の日本での工作活動拠点になっていたとしても、さらに「拉致問題はすでに決着したという立場で日朝国交を促進せよ」との指令に従って総連が世論喚起のデモや集会に朝鮮学校生徒を「朝青」組織を通じて大々的に動員していたとしても、だからと言って高校無償化の朝鮮高校への適用に反対すると言うのは、金正日と北朝鮮当局の拉致犯罪の罪を朝鮮高校生にもかぶせる類の行為となる。
百歩譲って拉致被害者家族の主張が全面的に正しいことだとしたとしても、この情報が北朝鮮に伝わらないはずはなく、北朝鮮側から見た場合不当だとされて拉致解決に役立つどころか、却って心無い北朝鮮人によって生存しているかもしれない日本人拉致被害者に対する厭がらせとなって撥ね返る危険性を抱えない保証はない。
最悪、北朝鮮当局によって生存しているかもしれない日本人拉致被害者に対する労働刑等の報復のための懲罰の形を取る危険性も考え得る。
こういったことの危険性は日本人自身が朝鮮学校の生徒に対して行ってきた報復としての厭がらせが証明することで、単に推測を超えて断定に近いと言えるかもしれない。
1990年代半ば頃の北朝鮮のノドン・ミサイルの発射実験と核開発疑惑が盛んに報道されていた頃、北朝鮮憎しの感情を北朝鮮に向けて直接晴らすことができないからだろう、その身代わりに朝鮮学校の女子生徒に向けて、彼女たちが着る民族服のチマ・チョゴリをカッターナイフ等で切り裂くことで北朝鮮憎悪を晴らす事件が起きた。
但し、インターネット上にはこの事件を朝鮮総連による“自作自演”だとする説が流布している。「Wikipedia」も“自作自演”説を掲載している。
〈事件が発生した頃は北朝鮮による核開発疑惑をめぐって朝鮮半島情勢が緊迫し、世論の批判が高まっていた時期である。 本件チマチョゴリ切り裂き事件は朝日新聞が中心となって報道された事件であるが、朝日新聞は朝鮮総連の発表の多くをニュースソースとしてそのまま報道しており、事件について、その多くが独自の調査や警察の捜査によって、犯行の裏付けが取られている訳ではなかった。
特に犯行の意図については、総連による政治的背景の指摘に対して、成人式や正月の和服の女性への切り裂き行為や、日常頻発する痴漢や暴行行為と比べた時、そして犯人が総連等の主張のように、政治的・民族的な憎悪を背景に持つ犯行であると判断できる根拠は示されていない。また、根拠になりそうな犯人の犯行声明はなく、検挙実績も少なく、検挙された事件に政治的・民族的憎悪の背景は認められていない。
そのことから、朝鮮人を迫害するという意図を持った行為であるという主張を根拠無く示すことによって、北朝鮮や、その支持勢力(朝鮮総連)に対する核疑惑の批判をかわす為の、在日朝鮮人による「自作自演」の可能性が指摘された。「朝鮮総連による政治的キャンペーン」と指摘する全国紙記者が存在する。ジャーナリストの金武義は、「女子生徒は在日の広告塔か」と問題提起した。金は事件の翌年に「怪死」( 週刊文春 1999年11月4日号)している。〉(Wikipedia)
〈根拠になりそうな犯人の犯行声明〉の有無だが、確固たる思想を背景とした犯罪ならともかく、面白くない感情を当事者にではなく、単に国籍が同じと看做した対象に向けて晴らすケチ臭い犯罪に犯行声明は似合うだろか。
また、確固たる思想を背景としていたなら、チマ・チョゴリをカッターナイフ等で切り裂くといったケチ臭い犯罪で自己満足できるだろうか。自己満足できたとしたら、思想そのもの正体が怪しくなる。
“自作自演”の根拠の一つに検挙実績が少ないことを挙げているが、この手の犯罪は性格上通り魔犯罪に分類されるから、ある種の病癖からの犯罪の場合のように再犯を繰返さない限り、その匿名性・不特定性から検挙の困難を強いられるのが一般的であるはずである。
百歩譲って朝鮮総連による“自作自演”が事実だったとしても、面白くない感情を当事者にではなく、何らかの関連を持つだけの非当事者に向けて晴らす歪んだ行為は国籍を問わない。
その象徴的な一つの例が関東大震災時の朝鮮人虐殺であろう。
1923年9月1日の関東大震災では数千人の朝鮮人が日本人によって虐殺されたが、その背景として日本が支配した植民地の国民として日本国内の朝鮮人に対しても二等国民と看做す差別視が存在していたことと、関東大震災の1923年を遡る4年前の1919年3月1日を期して日本植民地韓国で日本からの独立を目指す三・一運動が展開され、朝鮮全土に拡大、日本軍は朝鮮人の死者7500人、負傷者4万5千人、検束者4万6千人を記録し1年以上をかけて鎮圧したものの、それ以降も日本からの独立を目指す運動が絶えなかったことが日本人をして差別感と作用し合って朝鮮人に対する憎しみ、面白くない感情を内側に充満させていたことが指摘されていて、こういったことが地震直後、朝鮮人が井戸に毒を投げ込んだというデマに容易に信憑性を与え、パニック状態となって無差別な虐殺へと走ったとされている。
多分、差別感と憎悪をベースとした独立運動に対する報復の感情を込めていたに違いない。
このような犯罪の基本構造は、殺人を犯した人間の子どもだから付き合うなと大人が自分の子どもに指示する場合の殺人を犯した人間とその子どもをすべてに亘ってイコールと把える関係判断と似ている。
拉致被害者家族にしても、拉致犯罪の実行者である金正日及び北朝鮮当局と朝鮮高校の生徒をイコールと同一視、同じ犯罪性の網を掛けて、高校無償化の対象から外そうとする心無い懲罰を以って報復しようとしている。
北朝鮮に於いてその報復の報復が連鎖することになったとしても、拉致家族は何ら非難する資格を持たないことになる。
小沢前幹事長が9月の民主党代表選立候補を表明した。確かにカネと人間関係を効率的に使う古い手法、古い体質の政治家の範疇に入る、その代表的人物と言えるだろうが、このような人物の指導力に期待することと、各種世論調査で「政策に期待が持てない」、あるいは「実行力がない」と見られている首相の続投を支持することとどちらが正しい選択、合理的判断だと言えるのだろうか。
有権者の多くの判断は後者を合理的だとしている。
最近のいくつかの世論調査を見てみる。
朝日新聞社、8月7、8日実施の全国世論調査(電話)。丸カッコ内の数字は7月12、13日の前回調査の結果。
◆菅内閣を支持しますか。支持しませんか。
支持する 37(37)
支持しない 43(46)
◇支持・不支持の理由(選択肢から一つ選ぶ=択一)
支持する
首相が菅さん 17
民主党中心の内閣 41
政策の面 20
実行力の面 9
支持しない
首相が菅さん 2
民主党中心の内閣 16
政策の面 30
実行力の面 49
◇続投
続けた方がよい 56
交代した方がよい 27
◆菅首相は、小沢一郎さんと距離をおいた方がよいと思いますか。連携した方がよいと思いますか。
距離をおいた方がよい 69
連携した方がよい 16
◆小沢さんが民主党内で影響力を強めることは、好ましいと思いますか。好ましくないと思いますか。
好ましい 10
好ましくない 78
確かに国民の小沢前幹事長に対する拒絶反応には強いものがあるが、「支持する」の内、「首相が菅さん 17」+「民主党中心の内閣 41」の58%は消極的支持であって、積極的支持は、「政策の面 20」+「実行力の面 9」の29%のみである。
対して「支持しない」の内、「首相が菅さん 2」+「民主党中心の内閣 16 」の18%を消極的拒絶反応としたとしても、「政策の面 30」+「実行力の面 49」の79%は菅首相の政治そのものに対する致命的となる積極的拒絶反応となっている。
政策の面、実行力の面で期待できないと強い拒絶反応を示してしていながら、「交代した方がよい 27」に対して、続投支持が56%となっている。これは明らかに矛盾した態度ではないだろうか。
共同通信社が朝日と同じ日に行った全国電話世論調査でも似た傾向を示している。カッコ内は前回調査。
菅内閣支持率 38.7%(36.3%)
不支持率 44.8%(52.2%)
内閣支持理由のトップ
「他に適当な人がいない」 38・8%(+8.6ポイント30.2%)
内閣不支持理由のトップ
「経済政策に期待が持てない」 22・3%
代表選で当選を望む人
菅首相 37・2%
前原国交相 14・6%
岡田外相 7・8%
小沢前幹事長 5・3%
原口総務相 4・7%
海江田万里 2・7%
8月9日日付のNHK記事の世論調査。
菅内閣を支持する 41%
支持しない 43%
菅内閣を支持する理由
「ほかの内閣より良さそうだから」 47%
「支持する政党の内閣だから」 20%
支持しない理由
「政策に期待が持てないから」 41%
「実行力がないから」 27%
再選
「望ましい」 21%
「どちらかといえば望ましい」 36%
「どちらかといえば望ましくない」 20%
「望ましくない」 14%
国民から期待されるべき、あるいは首相として担うべき必要不可欠の資質・能力である政策と実行力が欠けていると、政治家として致命的な評価を宣告されていながら、政策と実行力が欠けていると見ている菅首相の続投を消極的ながら支持している。
その理由はここで代わることになったなら、1年で3人目の首相となると言うことであろう。
だとしても、結果として政策と実行力が欠けている政治家の続投を願うことで、そのような政治家に日本の政治を今後とも任せる選択を意思表示していることになる。このことは合理的判断だと言えるのだろうか。
ごく最近、8月20~22日に行ったNNN(日本テレビ)が行った世論調査は内閣支持率が不支持率を上回る結果を示しているが、状況は変わらない。
「菅内閣を支持する」 42.8%(+3.6ポイント)
「支持しない」 39.3%(-6.5ポイント)
「菅直人内閣を支持する理由」
「他に代わる人がいないから」 38・5%
「政策に期待が持てるから」 6.2%
「菅直人内閣を支持しない理由」
「政策に期待が持てないから」 40.1%(一位の理由)
「リーダーシップがないから」 18.5%(二位の理由)
単に首相がコロコロ交代するのはよくないという理由を最優先させて続投を許し、政策と実行力に期待できない首相に今後とも日本の政治を任せる逆説に目をつぶるのか、例え首相がコロコロと交代することになっても、政策と実行力に期待できない首相は交代させるべきだを合理的判断とするのか、今一度立ち止まって考えるべきではないだろうか。
23日から始めた菅首相の当選1回生新人議員との意見交換会、25日で終了した。「一期生の皆さんの声こそが、一番国民に近い声だと思っている」の趣旨の開催なのだから、新人157人のうち過半数を超える87人が出席したというから、87人を通して彼らが抱えている多くの国民の声を聞いて、何をなすべきかの政治エネルギーを新たに充電させたに違いない。後は如何に政策の形とし、国民の利益を図っていくか、創造力と実行力にかかっている。
このことは2日目24日午前の19人の「一番国民に近い声」の新人議員と意見交換したときの菅首相の発言が物の見事に証明している。《菅首相:新人懇談会2日目 政治主導の確立強調》(毎日jp/2010年8月24日)
菅首相「今までの古い体制や官僚の省益を優先する仕組みを壊す力が、自分にとって一番強いメッセージだ」
出席議員「菅首相でなければいけない理由は」
菅首相「おかしいところをおかしいと思って立ち向かう姿勢と、物事を作り替える上で必要になる壊すことに対しては、自分は相当力を持っている」
非公開の意見交換会だから、菅首相の発言は出席新人議員を通した内容となる。このことを割り引いたとしても、最初の発言の「今までの古い体制や官僚の省益を優先する仕組み」云々はまだ壊していないのだから、「壊すことが自分にとって一番強いメッセージとなるだろう」という将来予測の発言とならなければならない。まだ壊していないことは繰返し「政治主導」を言わなければならないことにも現れている。
実際にも官僚主導となっていて、政治主導は未だ道半ばどころか、まだ緒に就いたばかりで、先行き不透明の状態となっている。「政治主導」という言葉だけが先行しているとも言える。
もし記事どおりの発言だとしたら、「自分にとって一番強いメッセージだ」と、あるいは「メッセージです」と丁寧な言い方をしたとしても、断言していることになるから、既に壊す実績を上げていて、そのような「壊す力」が「自分にとって一番強いメッセージ」となる才能、もしくは能力だと誇示したことになる。
前者の発言だとしたら、相当な指導力、リーダーシップを必要とするものの、その発揮に自信を持っていることになる。後者の発言であるなら、既に指導力、リーダーシップを発揮することができていて、自らの指導力、リーダーシップに自信を深めていることになる。
指導力の人、リーダーシップの人、それは菅直人、私自身ですと宣言したも同然であろう。
次の発言、「おかしいところをおかしいと思って立ち向かう姿勢と、物事を作り替える上で必要になる壊すことに対しては、自分は相当力を持っている」も、指導力、リーダーシップなくして成り立たない、あるいは実現させることはできない能力であり、「自分は相当力を持っている」と自らの指導力、リーダーシップを自ら請合っている。任せておきなさい、この俺の指導力、リーダーシップを、とばかりに。
要するにいずれの発言でも菅首相は新人議員に対して自らの指導力、リーダーシップを売り込み、具体的に矛盾と闘って、それを是正する能力、創造のための破壊能力に最も良く発揮されるとより得手とする指導力、リーダーシップの発揮の機会を説明したわけである。
そのとき菅首相が自分の胸を叩いたか新人議員に聞きたいが、残念ながら聞くだけのツテを持っていない。
発言が実体を持つか否かによって指導力、リーダーシップは決まってくる。
このことは過去の発言に実体を持たせることができたかどうかの前科を検証することによって証明し得る。
何度でもブログに書いているが、菅首相は7月の参院選前に消費税増税の超党派協議を提案、協議の纏まり具合で次の衆院選前にも増税はあり得る、その場合は解散して国民の信を問うとし、参院選を通じてそのことを訴え続けたが、その姿勢に国民が不信を抱き、選挙に大敗すると代表選では消費税発言は封じるとしたことは国の財政状況に関して「おかしいところをおかしいと思って」提案を挑戦した「立ち向かう姿勢」にまさしく添った消費税発言であり、「自分は相当力を持っている」と太鼓判を押すだけのことはある、発言に実体を持たせようとする姿勢が生み出した指導力、リーダーシップの現れだと讃えることができる。
官僚主導から政治主導転換の中枢機関と位置づけた首相直属の「国家戦略室」を「局」に格上げして法的根拠を持たせる「政治主導確立法案」の国会上程を与野党逆転した参議院通過は覚束ないと早々に成立を断念、首相に対する助言機関に格下げの一歩後退にしても、「今までの古い体制や官僚の省益を優先する仕組みを壊す」作業、官僚主導から政治主導への挑戦の第一歩として、「政治主導」の発言に違わない、菅首相にとって「一番強いメッセージ」となっている点は、やはり発言に常に実体を持たせる姿勢が功績となった指導力、リーダーシップの賜物であろう。
指導力、リーダーシップの決定要件となる発言に常に実体を持たせているということは言っていることに間違いはない、ウソ偽りはないことの証明でもある。
次のことも前にブログに取り上げたことだが、菅新首相が昨年9月の政権交代直後、副総理・国家戦略担当相の任に就いていたとき、民主党の喜納昌吉(きな・しょうきち)参院議員(党沖縄県連代表)が「沖縄問題をよろしく」と挨拶したところ、菅首相は「沖縄問題は重くてどうしようもない。基地問題はどうにもならない。もうタッチしたくない。もう沖縄は独立した方がいい」と沖縄独立のススメを展開したという。
一旦口にした発言に実体を持たせることが指導力、リーダーシップの証明となる関係性から言うと、過去の発言であればある程、実体実現に近づいていなければ、指導力、リーダーシップは証明困難となる。
このことは沖縄の独立が目の前に迫っていることが証明している。
菅首相は自身の公式サイトで沖縄米軍基地に関して過去に次のように発言している。
沖縄の海兵隊(菅直人公式サイト/2001年8月19日 00:00)
岡田政調会長の沖縄海兵隊に関するアメリカでの発言についていろいろ問い合わせがきている。本人と話ができていないが報道を見る限りどこかに誤解が生じている。
民主党の基本的考えは「沖縄の米軍基地の整理縮小のため、国内外への移転を含め積極的に推進していく」と、基本政策に述べている。そして沖縄の米軍基地の人員でも面積でも半分以上を占める海兵隊基地が「国内外の移転を含め」整理縮小の検討対象にになることは当然のこと。民主党の沖縄政策の中では「アメリカの東アジア戦略構想を再考し、米海兵隊の他地域への移駐を積極的に議論する」と明記されている。
実際に民主党の中で海兵隊の米国内への移転は有力な意見として何度も議論されてきた。私の参院選挙中の沖縄での発言はそうした背景のもと行われたもので、その場の思いつきでもリップサービスでもなく、民主党の基本政策と矛盾してはいない。基本政策より多少踏み込んだ表現があるとしても、それは政治家としての私の責任で述べたものである。
私自身3年程前民主党の代表として訪米した折にも、アメリカの当時の国防次官にこの主張をぶつけたことがある。国防次官は厳しい顔でメモを見ながら「北朝鮮に対する誤ったシグナルになるから沖縄から海兵隊は撤退はするべきでない」と反論してきた。その理屈も一部理解はできるが絶対ではない。実際には海兵隊基地を米国に戻すより日本に置いていたほうが米側の財政負担が小さくてすむという背景もある。北朝鮮の状況や日米の財政状況が変わってきている中で、沖縄にとって重い負担になっている沖縄海兵隊の日本国外移転について真剣な検討が必要。
「その場の思いつきでもリップサービスでもな」い、2001年7月29日の第19回の、「私の参院選挙中の沖縄での発言」と参院選直後の8月の発言、さらに03年の発言を「過去の発言」として、《菅新首相誕生 過去の菅氏発言 海兵隊国外を主張》(琉球新報/2010年6月5日)が伝えている。
(01年7月)「(日米地位協定について)運用改善ではなく協定自体の見直しが必要ではないか」
(01年8月)「在沖米海兵隊は沖縄に必ずしも存在しなくても日本の安全保障に大きな支障はない」
(01年8月)「国内移転よりハワイなど米国領内への移転が考えやすいはずだ」
いずれも、〈幹事長、党代表、党代表代行の立場〉で述べた発言だそうだ。
記事は最後に、〈プライベートでも県内離島をたびたび旅行するなど沖縄とかかわりは深い。〉と書いているが、基地問題への思い入れ深いことからの沖縄との関わりであって、空気と海の色と眺望の素晴らしさを味わう観光への関わりではないはずである。
「その場の思いつきでもリップサービスでもな」いとする発言は実体を伴わせて、そのことが証明され、また指導力、リーダーシップ有無の証明ともなり得る。
「おかしいところをおかしいと思って立ち向かう姿勢と、物事を作り替える上で必要になる壊すこと」は沖縄の基地問題に対する自身の信念、主義主張についても当てはまる事柄であって、「おかしいところ」とは沖縄の過重なまでの基地負担であり、「物事を作り替える」とは自身が主張してきた在沖米海兵隊の沖縄からの撤退であろう。それを実現すること、いわば自身の発言に実体を持たせることに関しては、「自分は相当力を持っている」と自らの指導力、リーダーシップを誇った。
そしてその発言は自らの指導力、リーダーシップの効果的な発揮によって実際に実体を持たせつつある。普天間から国外ではなく、鳩山内閣が同じ県内の辺野古への移転を決めた日米合意の順守を自らの内閣でも宣言。
菅首相の発言の確かさ、実体性の存在については小沢前幹事長についての発言にも見て取ることができる。23日の新人議員との最初の意見交換会の日に、「小沢氏のような人材が必要な場面もある。小沢氏の手腕は高く評価しており、その腕力を活用していきたい」と首相続投が決まった場合の挙党態勢について、その重要な一枚に加えるような発言をしておきながら、それ以降、その処遇に触れずに「適材適所」の言及にとどまる後退を見せた、この一貫しない発言は参院選挙中の消費税問題で軽減税や税金還付方式を持ち出し、税金還付方式では還付する年収区分を例示しながら、演説先で言うことが違ったり、そのブレを批判されると、その後税還付方式を発言しなくなったりした非一貫性に相当する。
指導力、リーダーシップの決定要件となる発言の実体性は発言自体の一貫性も必要条件となるはずである。一貫性のない発言に実体性を期待できようがない。
菅首相自身が誇る「立ち向かう姿勢」にしても、「壊す力」にしても、その真偽は過去の発言が証明する。新人議員との意見交換会で口にした発言にしても、その実体性、真偽は近い将来、いわば過去の発言となったとき、その真偽を自ずと証明することになるに違いない。
昨24日の民放の朝の報道番組で結構な歳の、どちらかと言うと古手のコメンテーターだか政治評論家だか知らないが、小沢前幹事長は代表選に立候補しないだろうと御託宣していた。首相になった場合、「政治とカネ」の問題で野党の国会追及の攻勢に曝される、今秋検察審査会から2度目の議決が予定されていて、強制起訴となった場合の不利、国民の批判が強く、支持を得ることが難しいといったことを理由に挙げていた。
確かに野党は待ってましたとばかりに激しい追及に出るに違いない。世論調査での「政治とカネ」の問題で十分に説明を尽くしていないと考える80%から90%の国民意識を錦の御旗として攻め立てることは間違いない。
だが、秋に検察審査会の議決が出るまではこれまでの検察の取調べが不起訴と決定したことを理由に追及を回避できる。そして時間は流れ、秋のシーズンが幕開けして、検察審査会が起訴相当と議決して強制起訴に持ち込むことになったとしても、憲法75条が規定している「国務大臣は、その在任中、内閣総理大臣の同意がなければ、訴追されない」を最悪の場合利用できる。(〈党幹部は、小沢氏が出馬を検討するのは、検察審査会の機先を制する狙いもある、とみる。「首相になればそう簡単に訴追の判断はできなくなるからだ」と指摘。仮に強制起訴されても「国務大臣は、その在任中、内閣総理大臣の同意がなければ、訴追されない」との憲法75条を盾に訴追を阻むことも可能との見方もある。〉《民主代表選、高まる主戦論(その1) 小沢氏「9月勝負だ」》(毎日jp/2010年8月23日))
世論調査に於ける小沢内閣支持率は何ら期待していないだろう。0%であったとしても、覚悟しているはずだ。何しろ「政治とカネ」の問題で「説明不十分」と見る国民は80%から90%を越すに至っているのだから。最悪の支持率を前以て予定調和としているだろうし、予定調和としなければならない。ゼロベースから出発して、実績を上げて1%ずつ積み上げていくしかない。
その間国会での野党の追及とマスコミの小沢叩きの場内・場外乱闘が続くが、耐えるしかない。
だが、小沢はさすがだ、確かに豪腕だと唸らせ、すべての批判を沈黙させる、それができなくても、少なくとも唖然とさせてしばし言葉を失わせる奇策がないわけではない。普天間移設先を国外と決め、先の日米合意を破棄、アメリカと交渉に入ることを宣言する。アメリカ側も小沢一郎を日本の政界に於ける最大の実力者と見ている。国外決定に持ち込むことが復権の最大の足がかりとなるはずだ。
その上、参議院で新緑風会を含めた民主党106議席の過半数獲得122議席に不足する16議席を政治手腕を以って何が何でも獲得する。普天間を国外と宣言すれば、社民党の連立復帰は確実視できるし、社民の参院4議席と国民新党の3議席を合わせれば、後は9議席。
9議席をどうにかする手腕がないなら、豪腕の看板を降ろした方がいい。
岡田外相が8月20日に「起訴される可能性がある方が代表、首相になることには違和感を感じている」と発言して、小沢一郎立候補に異を唱えたのに対して、原口総務相が2日後のは22日に、「民主主義の原点を踏み外した発言をすべきではない。推定無罪の原則が民主主義の鉄則だ」と反撃のパンチ(以上「asahi.com」)。
このパンチに対して岡田外相がさらにパンチの応酬。
岡田外相「推定無罪は法律の問題だ。政治倫理の問題でどうなのか、次元の違う話だ」(YOMIURI ONLINE)
法律はすべての分野に関わる、あるいはすべての問題に関わる人間営為の善悪・是非に対する最終判断の役目を担っている。最終判断が冤罪という形で間違うこともあるが、他の判断、例えば政治上の判断や国民の認識や判断に優先する。
このことは政府の政策を不服として裁判に訴え、最終判断を裁判の決定に委ねる場合があることが証明している。政治倫理上疑わしいからと言って、そのことを以って疑惑を事実とすることはできない。疑惑は疑惑にとどまる。
国会各議院の国政調査権に基づいて証人喚問する場合でも、偽証の疑いがあったとしても、それを以て事実と看做して罰する権限は国会にはなく、勿論国民にもなく、出席委員の三分の二以上の賛成を以って議院証言法違反で告発、検察が取調べを行った上で偽証の事実を証明できるとした場合起訴、この段階でも事実の証明の可能性の存在であって、事実の決定ではなく、疑いにとどまっていて、最終判断は裁判に委ねられ、その判決を以って偽証が事実か疑いだけのことなのかの決定が下される。
いわば政治倫理の問題にしても、疑惑の最終的な判断は裁判が決定する。それまでは推定無罪の状況が維持される。岡田外相が言うように、“次元の違い”を以って決定することはできない。
だからと言って国民の疑いは晴れないだろう。だが、誰もその行動に制限を加えることはできないはずだ。
菅首相自らが「1期生議員は国民の声に最も近い」とクスグリを入れた案内状を民主党衆参新人議員に送って出席を求めた最初の意見交換会が昨23日に午前と午後の2回に分けて行われたという。場所は衆院議員会館の自身の事務所だという。首相官邸だと、首相官邸で公務ではない代表選の選挙活動をしたのかと批判される危険性を前以て避ける危機管理からの選択だったのだろうか。
例え公務ではなくても、首相としての身分と首相としての意識で新人議員と対面している。それを個人事務所で行うのは内閣総理大臣何の何某(なにがし)と記帳し、内閣総理大臣何の何某(なにがし)の意識で靖国神社を参拝しておきながら、私人としての参拝だと使い分けるのと似ていないことはない。首相官邸が公務以外の使用を禁止していたとしても、これは選挙活動ではない、純粋に新人議員との意見交換会なのだから公務だと突っぱねることができる程には腹が据わっていないということなのだろうか。
非公開で行われたから、菅首相の発言は終了後の記者会見や新人議員に対するインタビュー等で明らかにしたものなのだろう。《衆参同日選時期に言及し協力要請》(NHK/10年8月23日 19時17分)
菅首相「野党時代から掲げている政治主導で、去年の衆議院選挙の際の政権公約を着実に実現していきたい」
菅首相「縦割り行政の打破や財政改革などは、今後、3年間、腰を据えてしっかりとやっていきたい。そうすれば政策も実行でき、有権者の信頼も得られる。そして、衆参のダブル選挙をやればいい」
〈党内から挙党態勢の確立を求める声が出ていることについて、〉――
菅首相「みんなが『これならやれる』と前向きになれる挙党態勢を作りたい」
小沢前幹事長の起用について、
菅首相「小沢氏のような人材が必要な場面もある。小沢氏の手腕は高く評価しており、その腕力を活用していきたい」
出席議員「衆議院選挙の際の政権公約をどう実行していくのか、日本をどういう社会にしていきたいのか、明確に発信すべきだ」
まさしく選挙活動以外の何ものでもない。しかも3年間は解散しないと新人議員に約束して、その生活保障をエサに支持を釣ろうとしている。身分保障といってもいいが、鳩山兄弟のような大金持ちでない限り、一般的な新人議員にとっては身分保障=生活保障であろう。
国民の大多数を占める中低所得者層の生活が向上しない中、逆に低下している中、景気回復が足踏みしている。年金や医療費の負担世代が少子化で減少して、高齢者や高齢予備軍世代に将来への強い不安を与えている。ゆくゆくは導入される消費税増税による可処分所得の相対的減少がもたらす近い将来の生活不安も待ち構えている。
こういったことを解決して国民に生活への安心感を与え、与えることによって国民の活力を引き出すことが政治の務めのはずだが、そうする前に身内の新人議員に3年間は解散しませんと生活保障し、菅支持に向けた彼らの活力を引き出そうとした。
まさしく一国の首相として本末転倒行為ではないだろうか。
尤もこの3年間の生活保障、保証の限りではないとする発言もある。《山岡氏 小沢氏に立候補要請へ》(NHK/10年8月23日 19時17分)
山岡民主党副代表「野党は、菅総理大臣と連立を組むわけにはいかないと言っており、とても3年はもたない。このままでは、解散・総選挙と引き換えに来年度予算の関連法案を通してもらうことになる」
新人議員ならずとも、生活保障は重大な自己利害であって、双方の陣営が解散・総選挙の有無を前面に出すと、主義主張ではなく、解散・総選挙の有無が一票の基準となる危険性を抱える。野次馬的には結構な現象ではあるが。
菅首相は「小沢氏のような人材が必要な場面もある。小沢氏の手腕は高く評価しており、その腕力を活用していきたい」と、代表に再選されたなら、要職として用いるかのような発言をしているが、今年6月3日の民主党代表選出馬記者会見で小沢前幹事長に対して、「少なくとも暫くは静かにしていただいた方が、ご本人にとっても、民主党にとっても、日本の政治にとっても良いのではないかと、このように考えております」と小沢外しに取り掛かり、代表再選の場合も「脱小沢」路線で行くことを確認している。
《菅首相、代表再選後も「脱小沢」維持 幹事長に起用せず》(asahi.com/2010年8月17日4時1分)
〈菅直人首相は9月の民主党代表選で再選された場合、小沢一郎氏を幹事長に起用しない方針を固めた。首相周辺には、小沢氏の幹事長起用で政権基盤の強化を図るべきだとの声もある。だが、小沢氏が「政治とカネ」の問題で世論の反発を受ける中、首相は「脱小沢」路線を徹底する方が得策と判断した。〉
「脱小沢」路線の急先鋒は前原、野田であり、他に蓮舫、仙谷といったところだろう。
〈6月の代表選で菅氏を支持した前原誠司国土交通相や野田佳彦財務相らは、小沢氏が幹事長として人事権と党の資金を一手に握ることへの警戒感が強い。首相は世論や党内情勢を踏まえ、小沢氏を幹事長に起用しないことで、首相支持グループの結束を図る狙いがある。〉
記事発行の日付は8月17日である。6月3日の民主党代表選以降から少なくとも8月17日まで、「脱小沢」の強い意志で自らの態度を首尾一貫させていた。
だが、一週間経つか経たない昨23日の意見交換会では首尾一貫させていた態度を一変させた。これを意志薄弱と取るか、ご都合主義を取るか。共に指導力、リーダーシップに関係してくる精神要素である。
出席議員が「衆議院選挙の際の政権公約をどう実行していくのか、日本をどういう社会にしていきたいのか、明確に発信すべきだ」と言っているが、要するに“明確な発信”を行い得ていない状況に対する批判であろう。
“明確な発信”も指導力、リーダーシップに欠かせない能力であり、それを欠いていることの指摘となっている。
このことは同じ意見交換会を扱った記事、《“問題突破していく姿を国民に”》(NHK/10年8月23日 16時13分)にも表れている。
出席者「菅総理大臣が厚生大臣として薬害エイズの問題に取り組んでいたころは、省庁や業界の癒着構造に絡むいろいろな問題を突破していく姿が見られた。そうした姿を国民にしっかり見せてほしい」
要するにかつて厚生大臣だった頃に見せていた「問題を突破してく姿」が首相になってから見られなくなったと言っている。これは現在の否定的姿に対する指摘であろう。「国民にしっかり見せてほしい」肯定的姿が期待できなくなっている。
何もかも、すべてが指導力、リーダーシップのなさが成さしめている否定的姿である。
そもそもからして「問題を突破していく姿」は消費税増税騒動でメッキが剥がれている。6月17日のマニフェスト記者会見で消費税増税問題を持ち出したはいいが、政策をリードする責任を負う政権党でありながら、なぜ10%なのかの説明もないままに増税率を野党自民党の10%を参考にすると言い、増税の理由を“ギリシャの威し”まで用いてさも切羽詰った緊急実現事項であるかのように言って置きながら、このことが主たる原因となって参院選に大敗し、参議院で野党に転落すると、9月の代表選では消費税について議論はしないといった羹(あつもの)に懲りて膾(なます)を吹く類の自己保身は「問題を突破していく姿」とは正反対の利害表現であろう。
また野党時代の発言と政権党の閣僚となってからの数々の発言の不一致も「問題を突破していく姿」とは相容れない風景を成す。
「国民にしっかり見せてほしい」「問題を突破していく姿」こそが指導力、リーダーシップをよりよく表現するはずだが、それを見せることができない政治家が政権政党の代表選に出馬し、総理大臣の続投を目指す。何という逆説なのだろうか。
新人議員に当てにもならない3年間の生活保障を与えることぐらいがふさわしい菅首相に思える。
《官邸にアフガン支援室設置へ 官房副長官が表明》(asahi.com/2010年8月22日22時18分)
福山官房副長官が22日のNHK番組「日曜討論」で、首相官邸に「アフガニスタン支援室」を今月内にも立ち上げる予定で設置する方針を明らかにしたという。
アフガン復興に向けて政府は5年間で最大約50億ドルの支援を昨秋表明している。その具体策作りで、福山官房副長官が事務局長に就き、国際協力機構(JICA)などの専門家の意見も聞きながら、官邸主導で取り纏めを目指すとしている。
福山官房副長官の「アフガニスタン支援室」設置の狙いについての発言――
福山官房副長官「首相のイニシアチブで議論が始まっている。米国との協力関係をどう作っていくかの一つの行動だ」
記事解説。
〈政府内には、アフガン支援を通じて米国との連携を深めたいとの考えがあり、官邸がまとめ役になる必要があると判断した。 〉・・・・
5年間で最大約50億ドルのアフガン復興に向けた支援を昨秋表明した。その具体策作りに向けた準備が「首相のイニシアチブで議論が始ま」って、「アフガニスタン支援室」を予定としては今月内に立ち上げ、「官邸がまとめ役」となって、いわば“官邸主導”で具体策作りに着手するということである。
この5年間で最大約50億ドルのアフガン復興支援は自民党政権が「テロ対策特措法」と「新テロ対策特措法」に基づいて国際貢献として行ってきたインド洋での海上給油に民主党政権は野党時代から反対、政権獲得後の2010年1月15日に「新テロ対策特措法」が期限切れを迎えることから、これに代る国際貢献として国際治安支援部隊(ISAF)作戦本部への自衛官の派遣を考えていたが、連立を組む社民党の反対やアフガン本土の悪化する一方の治安上の理由等から見送ることを決め、鳩山政権が2009年11月10日に代打の代打として発表した2010年から5年間で最大約50億ドルの支援である。
内訳は反政府勢力タリバン元兵士の社会復帰支援や農業支援、首都カブールの再開発、インフラ整備等を柱としている。
鳩山首相は同じ日に早速カイザルアフガン大統領に電話を入れている。
カイザル「支援を効果的に実施したい」(asahi.com)
ホルブルック特使(米国のアフガン・パキスタン担当)「米国にとって日本が最大の友人であることを確認する決定だ」(同asahi.com)
外務省幹部「国際社会が腰を抜かすぐらいの巨額支援だ」(同asahi.com)
国際社会が腰を抜かしても、アフガン復興に役立たなければ、相変わらずカネを出すしか能のない日本と笑われる。
そして3日後の11月13日にオバマ米大統領が初来日、鳩山首相は大統領との会談の中で早速のこと、直に報告している。
鳩山首相「アフガン支援では、テロの根源を断つという民政支援中心の支援が日本流の望ましい支援だと考えた」(asahi.com)
2010年から5年間で最大約50億ドルの「国際社会が腰を抜かすぐらいの巨額支援」は「テロの根源を断つ」目的と、当然その効果を持たせた支援だということである。
だからこそ、「国際社会が腰を抜かすぐらいの巨額支援」を必要としたのだろう。
2010年が2010年4月の2010年度からの5年間だとしても、既に4カ月も経過している。給油支援に代る国際貢献策として計画した2009年11月からすると、10ヶ月近くになる。
一向にテロの攻撃が沈静化せず、治安回復が遅々として進まない、却って悪化しているアフガンの待ったなしの現状を見た場合、「テロの根源を断つ」べく5年間で最大約50億ドルの支援を打ち出した以上、2010年4月から実施できるように前以て「アフガニスタン支援室」を設置、具体策を練り上げて、2010年4月1日を以って実行に移すべきを、「アフガニスタン支援室」を8月内に立ち上げる予定だ、「首相のイニシアチブで議論」を始めている、官邸主導だなどと言っている。
急ぐべき政策でありながら、一つの政策を計画してから、政策の形にしていくまでのスピードがこれ程までに時間がかかるものなのだろうか。他の政策も似たようなスピードで決定していくのだろうか。
確かに民主党政権は鳩山前首相から2010年6月8日に菅内閣に移行している。だが、このことは同じ政策を引き継いで実行しようとしていることと、日本にとっての重大な国際貢献と位置づけている点で何ら変更はないことからすると、政策決定遅滞の理由にはならない。
いわば「首相のイニシアチブ」であろうと誰の「イニシアチブ」であろうと、実行段階での政策の有効性・無効性に関わる検証の議論はあったとしても、政策決定の「議論」は終わっていて、既に実行されているべき政策でありながら、そうはなっていない物事決定のスピードの遅さは勿論、そうはなっていない政策を今更ながらに「首相のイニシアチブで議論」を始めている、官邸主導だなどとするのは単にそう思わせる口先だけのゴマカシにしか思えない。
大体が遅滞している政策決定を「首相のイニシアチブで議論が始まっている」とすること自体、「首相のイニシアチブ」は政策の計画段階にあって然るべきだから、菅首相の場合は政権を引き継いだ6月からあって然るべきだから、矛盾した状況設定となる。
福山官房副長官は何事も官邸主導・政治主導で行われていて、決して官僚主導ではないこと、菅首相のリーダーシップの下政策が決定していることを印象づけようとしたのだろうが、わざわざ印象づけなれればならないこと自体が菅首相の指導力のなさを物語っている。指導力は第三者が印象づけるものではなく、発揮の主体自体が自らの実行力で印象づけなければならない能力だからだ。
9月の民主党代表選に菅首相の対抗馬として小沢前幹事長擁立の党内の動きに閣僚から牽制する発言が相次いでいる。
岡田外相「一般論として選挙はやったほうがいいが、国のトップが何回も替わることは、国益上大きなマイナスだ。しかも菅総理大臣をわれわれが選んでからわずかしかたっておらず、しっかりと支えていきたい」(時事ドットコム)
「国のトップが何回も替わること」がなぜ、どういった理由で「国益上大きなマイナス」なのか、何ら述べていない。「国益」と言えば正当性を得るとしたら、「国益」なる言葉は水戸黄門の葵の印籠と化す。
官房機密費の億単位の支出も「国益」の名の下に行われている。「国益」を葵の印籠としている。「国益」だと言えば、常に正しいことになるのか。
岡田外相「最終的にはご本人の判断だ。ただ、これまで民主党は、起訴された議員に厳しい措置を科してきた。そういう感覚からすると、起訴される可能性のある方が代表・総理大臣になるということに違和感を感じている。民主党の立党の原点に返ったときに、小沢氏に『出てください』と言っている人たちは、どうなのかという感じでみている」(同時事ドットコム)
「起訴される可能性のある方」と言っているが。「可能性」はあくまでも「可能性」であって、決定事項ではない。「起訴」されたとしても、罪が確定するわけではない。岡田外相の発言は“推定無罪”を侵すものであろう。
蓮舫行政刷新相「民主党に求められているのはクリーンな政治だ。『政治とカネ』の問題をこれ以上起こしてほしくないという思いが昨年の政権交代につながった」(YOMIURI ONLINE)
「クリーンな政治」は確かに政治に於ける重大な価値観だが、小沢幹事長は現在のところ、疑わしきは罰せずの“推定無罪”の状況にある。
蓮舫議員は以前次のように発言している。
蓮舫「9月に代表選があること自体は歓迎したいが、もしここでまた代表・首相が代わるなら、(解散)総選挙が筋だ」
解散・総選挙に関して、6月半ばの記者会見で仙谷官房長官が答えている。
記者「民主党は野党時代に総理大臣が交代した場合は国民の信を問うべきだと主張してきたが、衆議院を解散する可能性はあるのか」
仙谷「わたしからどうこう言う筋合いのものではない。前段の話は、論理的にはそのように考えるが、論理的にそうだからと言って現実政治の中でそうするのかはまさに政治判断であり、総理大臣が考える話だ。どの時期にどのような問題提起をして、国民の信を問うかは、まさに高度な政治判断だ」(NHK)
この発言は蓮舫議員の「(解散)総選挙が筋だ」にも言えることであろう。
だが、仙谷官房長官の発言を正当ある発言とするなら、民主党は野党時代、「現実政治の中で」、解散・総選挙が「高度な政治判断」を要件とする場合もあることを考えもせずに、「総理大臣が交代した場合は国民の信を問うべきだと主張してきた」ことになって、その非合理性を同じ民主党に所属していながら、自身も同じことを言っていたかもしれない仙谷官房長官は間接的に批判したことになる。
渡部恒三元衆院副議長「たった1人が諸悪の元凶だから、この人がいなくなればすぐ挙党一致できる。党を分裂させている元凶が『挙党一致』なんて(言うのは)こっけいな話だ」(時事ドットコム)
渡部恒三元衆院副議長(国務大臣の訴追には首相の同意が必要とした憲法の規定を念頭に)「もし小沢(一郎前幹事長)氏が首相になれば、指揮権発動よりもっとひどい疑惑隠しになる。しばらく休んでいろというのが国民の声」(asahi.com)
確かに渡部恒三が言うように「しばらく休んでいろというのが国民の声」となっている。
昨日だかの『朝日』社説にも、就任わずか3カ月だ、参院選敗北の責任はあっても、実績を残すだけの時間が経っていない、退かなければならないほどの失政もない、民意も続投支持が多いと菅続投を支持しているが、続投の要件は唯一指導力であろう。リーダーシップの有無である。
指導力、リーダシップのない首相を長い任期を務めさせること程日本の政治に利益となると言えるというなら、就任わずか3カ月だは続投支持の正当な理由となる。
逆に指導力、リーダシップのない首相を長い任期を務めさせること程日本の政治に不利益となるが正当性ある言い分なら、就任わずか3カ月だは続投支持の正当な理由とはならず、短い任期で終えさせるべきとなる。
以前のブログで次のように書いた。
〈指導力のない政治家を首相という職にとどめておくのは国民に対する冒涜であるばかりか、(指導力を)必要として求められながら、求めに応じることができていないという点で逆説そのものを演じていることになるからだ。〉と。
昨8月21日、菅首相は京都市の新卒者を対象に就職支援を行う施設「京都ジョブパーク」を視察し、新卒者や施設の職員らと意見交換したと言う。《首相 “新卒者支援特命チームを》(NHK/10年8月21日 19時32分)
菅首相「ことし以上に来年の就職は厳しいといわれているので、省庁を超えて様々な活動ができるように特命チームをスタートさせる」
寺田総理大臣補佐官を中心に総理大臣官邸に省庁横断の特命チームを設置して新卒者の就職を支援していく考えを示したという。
政府が検討を進めている追加の経済対策については次のように発言している。
菅首相「今、関係閣僚から話を聞き、また日銀との間で、コミュニケーションを取っている。週明けには、そういういろんな意見をまとめて経済対策をとりまとめる段階に進めていきたい」
確かに新卒者の就職率の低下は特に新卒当事者にとっては切実な問題ではあるが、直接的には新卒者の問題ではあっても、根本的には「100年に一度の世界的な金融危機」から兎に角も脱して、上向きになった経済がここにきて円高等が原因となって足踏み状態となり、先行きの経済不安がもたらしていることが原因の雇用状況となっているはずである。
となれば、日本の景気を確実に回復させることが第一義であって、このことが解決しない限り、「新卒者支援特命チーム」を設置したとしても、名前が何であれ、望ましい状況に常に届かない不完全な対処療法で終わることになる。すべては景気回復の原因療法にかかっているといしなければならない。
いわば景気回復の原因療法とすべき政策の構築と実施を何よりも先に持ってきて、何よりもそのことに専念し、「新卒者支援特命チーム」等の設置は関係閣僚と協議し、責任者を決めて指示して機能させていく、そういう態勢を取ることで十分なはずである。
それを視察と称して自分からわざわざ新卒者対象の就職支援施設「京都ジョブパーク」に乗り込んで、記者会見に応じて、新卒者就職対策として、「省庁を超えて様々な活動ができるように特命チームをスタートさせる」と記者団に向かって宣言する。
一方、専念すべき原因療法としての追加経済対策は「週明けには」、「とりまとめる段階に進」む予定だとしているが、肝心要は原因療法の成否にかかっているのだから、視察する暇があるなら、21日の土曜日も次の日の22日の日曜日の休日もなく、関係閣僚及び日銀と協議し、一刻も早く満足のいく追加経済対策の構築にエネルギーを注ぐべきであろう。円高が進行している状況からしても、原因療法の取り掛かりはそれ程にも待ったなしのはずである。
だが、そうなっていない。「京都ジョブパーク」施設視察のNHK記事を読んで、偏見混じり、固定観念混じりなのか、菅首相に指導力欠如を決定的に見た感がした。
指導力、リーダーシップは合理的判断能力を基本として成り立たせる能力であるのだから、どうすべきなのかの判断を欠いていたなら、当然、指導力、リーダーシップも欠くことになる。
菅首相に指導力、リーダシップがあると見るか、ないと見るか、いずれにしても首相は指導力、リーダシップを基準として選ぶべきではないだろうか。