松山政司の台風19号の甚大な被害を脇に置いた、八ッ場ダムの効果一つで自民党の公共土木事業を誇るゲス根性と安倍晋三の綺麗事答弁

2019-10-28 11:31:21 | 政治

 台風第19号が2019年10月12日19時前に強い勢力で静岡県伊豆半島に上陸、その後、関東甲信地方を通過、東北地方へと進み、10月13日未明に福島県沖の太平洋上に抜け、宮城県から岩手県の沖を北東に進んで記録的な広範囲に亘る記録的な大雨をもたらした末に10月13日12時に日本の東で温帯低気圧に変わった。

 10月13日朝までに東京、栃木、静岡、長野、宮城、福島、茨城、岩手の8都県から自衛隊への災害派遣要請があり、全国で14都県391市区町村それぞれに10月12日付で災害救助法の適用を決定したと10月19日に内閣府が公表しているから、どれ程に広範囲に大雨を降らせ、どれ程に甚大な被害をもたらしたか、理解できる。

 台風19号の被害状況を伝える、別の内閣府記事から河川の状況を見てみる。

 (2019年10月26日6時00分現在・内閣府非常災害対策本部)
 国管理河川堤防決壊12箇所(20日に12箇所全ての仮堤防が完成)
 県管理河川堤防決壊128箇所

 死者、行方不明者、負傷、家屋浸水等を伝えている消防庁の報告から被害状況を見てみる。

 令和元年台風第19号及び前線による大雨による被害及び消防機関等の対応状況(第31報)
(これは速報であり、数値等は今後も変わることがある。)
 2019年10月27日(日)16時00分
 消防庁災害対策本部
 ※下線部は前回からの変更箇所

 死者90人(うち関連死1人)
 行方不明者9人
 重症38人
 軽症409人
 家屋全壊603戸
 家屋半壊3124戸
 家屋一部損壊4786戸
 床上浸水33158戸
 床下浸水36057戸

 マスコミ報道によると、この死者の7割が60歳以上だそうだ。常に災害弱者を直撃する。河川の決壊は西日本豪雨の際は25河川37か所だったそうだが、今回は国と県管理の河川で5倍強の合計140箇所となっている。

 その他、水道管破裂や浄水場浸水により断水が各地で起こった。これもマスコミ報道だが、浸水した面積は2018年7月の西日本豪雨の約1万8500ヘクタールを超えて、約2万3000ヘクタールに達したという。農林水産業の被害については安倍晋三が2019年10月25日夕方の首相官邸開催の「非常災害対策本部」で、「現時点で1000億円余りに上る」と発言したそうだ。

 かくかように台風19号は記録的な大雨と強風を広範囲にもたらし、甚大なまでの記録的な被害を与えた。この状況は自然の猛威に対して無力であることを思い知らすことになる。大きな自然災害に襲われるたびに改めてのように「無力」を突きつけられる。

 「無力」であるということは、自然災害に手も足も出ない状況を言う。勿論、国は自然災害の猛威に対してそれを防ぐ公共土木事業を積み重ねてきた。だが、現実問題として一方で手も足も出ない状況を目撃させられることになる。と言うことは、公共土木工事にいくらカネを積み上げても、カバーしきれない状況が引き続くことになるという事実を否応もなしに突きつけられることになる。

 政治側から言わせると、公共土木工事にカネを注ぎ込まなければ、もっと手も足も出ない状況を招くことになると言うだろうが、自然災害が場所を選んでくれればいいが、そうではないし、いくら可能な限りカネを注ぎ込んできたとしても、あるいはこれから可能な限りいくらカネを注ぎ込もうとも、防災・減災の公共土木工事で日本国土の全ての面を残らずカバーできるわけではないから、手も足も出ない状況は引き続くことになる。つまり公共土木事業が自然災害を追いかける状況の追っかけっこを続るという限界を抱えることになる。

 このような限界を抱え込まざるを得ない以上、少なくとも今現在、抱え込んでいる以上、自然災害の猛威を防ぐための人間の可能性に謙虚に向き合い、これまでの公共土木事業に何が足りなかったのかを検証して、その検証を通して何が必要なのかを拾い出さなければならないはずだ。

 台風通過から3日後の2019年10月16日の参議院予算委での自民党松山政司の質問と安倍晋三の答弁にこのような謙虚な手続きを窺うことができただろうか。

 松山政司「自由民主党の松山政司でございます。本日は大きな節目の200回の国会の参議院予算委員会、2日目、政審会長としてトップバッターを務めさせて頂きます。これから片道方式ですので、時間の制約もありますので、少しだけ駆け足などで質問させて頂きますのでよろしくお願い致します。

 質問に先立ちまして、先ず凄まじい豪雨と強風を伴い、また広い範囲で甚大な被害をもたらした台風19号、そして先月猛烈な強風などによって千葉県を初めとして大きな損害を与えた台風15号、こられの度重なる自然災害によって亡くなられた方々のご冥福を心からお祈り申し上げ、被災された方々にお見舞いを申し上げます。

 現在政府ではこの度の台風19号につきましては、被害の全容の把握と共に消防や警察、自衛隊、海上保安庁などが救助と捜索に全力を挙げてくれています。電力網、道路、鉄道網の寸断、農地などの生産施設の被害が大きく、迅速かつ手厚い支援が必要です。私ども自民党は即座に緊急役員会を開きまして、被害状況を聴取させて頂いて、非常災害対策本部を設置しました。

 昨日も早朝から、朝8時から急遽180名の議員の出席のもとにこの対応について協議をいたしました。政府が各自治体と緊密な連携を持って頂いて、人命の最優先、そして被害が拡大しないように、また復旧・復興に向けて全力を挙げて頂くよう強く申し入れたところであります。数十年に一度という自然災害が毎年、毎月のように襲ってくる時代です。私の地元福岡も、多くの方が犠牲となられた九州北部豪雨から毎年のように大雨災害に見舞われています。

 福岡、佐賀、長崎を始め、九州3県、九州を襲ったこの8月の豪雨災害、これも観測史上1位の記録的な大雨となりまして、各市の河川が氾濫をしまして、そして市街地で広範囲な冠水が発生しました。

 被災した自治体から話を伺いますと、被害を受けた方々の生活、あるいは生業を一日も早く取り戻すためには復旧・復興事業すぐに進めたいけれども、政府からの財政支援、これが決まらないうちはなかなか決めかねるとは、そういう声がございます。

 現場で激甚災害の迅速な指定などを通じて政府が必要な支援を行っていくという強い姿勢は、これを示すことが不可欠であります。我々自民党が強く要望しておりました8月号豪雨から台風17号にかけまして、この災害に対して政府から一連の災害を纏めて、激甚災害の指定をして頂くという異例の対応を示して頂きました。この纏めて指定をして頂くことで幅広く地域が指定しやすくなるという画期的な対応であります。今回の台風19号による被害が明らかになりつつある今、これも既に激甚指定の方針を固めたとのことでございますけれども、是非とも速やかな対応を重ねてお願いしたいと存じます。

 そこで今回の台風19号含めて、被災地で救援を待たれている方、あるいは不安を抱えながらも、迅速な復旧・復興を願い、懸命に頑張っていこうとしてる方々に安倍総理から全力で取り組んでいくという力強いご決意を改めてお願いしたいと思います。

 安倍晋三「台風19号はですね、大雨特別警報が13都県に発表され、極めて広範囲に亘る甚大なの被害となっていることから、13日に非常災害対策本部を設置しました。政府一丸となって全力で対応に当たっているというところであります。警察、消防、海上保安庁、自衛隊の部隊が人命第一として救命・救助活動や、あるいは行方不明者等の捜索に全力で当たっておりますが、ライフラインの早期回復、被災地のニーズを踏まえた生活必需品のプッシュ型支援を今進めており、先手先手で対策を講じてきているところでございます。

 また8月下旬の九州北部地方を中心とする大雨では多くの浸水被害が発生したほか、浸水により佐賀県大町町の鉄工所から流出した油が家屋や農地に流入をしました。9月には台風第15号の記録的な暴風雨により関東地方を中心に大規模かつ長期の停電が発生すると共に約4万棟の一部破損等の住家被害が報告をされております。政府に於いては九州北部での豪雨や台風第15号を含む8月から9月の前線等に伴う大雨による災害を激甚災害に指定したところでございますよ。

 そして、先程来、答弁させて頂いておりますが、台風第19号による災害についても激甚災害に指定する方向で調査を進めてまいりますが、どうか自治体のみなさんはですね、躊躇することなく安心をして必要な対応を取って頂きたいと思います。

 加えて人家の被害については被害の実態に即して、九州北部の大雨では流出した油による被害を台風第15号では豪雨による被害を加味した被害認定調査を行うこととし、一部損壊についても、災害救助法の選定を拡充し、そして屋根等に日常生活に支障をきたす程度の被害が生じた住宅については支援の対象にするなど、被災地のニーズに応じて弾力的な対応ができるよう取り組んできたところであります。

 引き続き台風19号による被災者を含め、被災者の皆様が1日も早く安心した生活を取り戻せるようですね、被災地自治体と緊密に連携をしながら、この我々政権としても、何回かの災害を経験をしてきたところでございますが、こうした経験、反省点も踏まえながら、先手、先手で対応していかなければならないと、こう思っておりますが、被災地のみなさまに寄り添った復興に全力を尽くして参ります」

 松山政司「しっかりした、また力強いご支援のご決意、ありがとうございました。

 次に昭和33年に1200人以上の犠牲者を出した狩野川台風は、これに匹敵する程の強力かつ巨大な台風と言われた台風19号、数多くの河川が決壊し、氾濫を致しました。そこで治水対策についてお伺いしたいと思います。

 報道によりますと、利根川では八ッ場ダムが大量の洪水を止めたとされています。八ッ場ダムといえば、『コンクリートから人へ』という掛け声のもとで紆余曲折
を経てきたと記憶していますが、この台風19号での八ッ場ダムの効果について赤場国土交通大臣にお伺いします」

 赤羽一嘉「今回の台風19号では八ッ場ダムがある利根川におきまして大変な記録的な大雨となりまして、10時間に亘りまして氾濫危険水位を超過する状況でございました。実は13日の未明、夜中の2時ぐらいだったと思いますが、関東地方整備局がこの埼玉県加須市で堤防から越水する恐れがある旨を発表するなど大変な切迫した状況でございました。最終的にはですね、計画高水位(堤防などを作る際に洪水に耐えられる水位として指定する最高の水位)、あと30センチまで迫ったギリギリのところで上昇が止まりまして、越水を回避することができましたが、これは分析するにですね、下久保ダムですとか、八ッ場ダムを含めた上流のダム群、渡良瀬遊水地に於いて洪水を貯留したことが大きな原因だったというふうに分析をしております。

 この八ッ場ダムの洪水調節容量はですね、計画上6500万立方メートルでございまして、ここの全ての既設のダムで確保してきた洪水調節容量の約1億1千万立方メートルの約6割に相当する大変大きなものでございます。利根川流域の住民の安全な暮らしに大きく寄与するものと考えております。

 今回のですね、台風19号に際しましてはたまたまと言うか、本格的な運用前に安全性を確認するためにですね、試験的には水を貯めるオペレーションをこの10月1日に開始したばかりではございまして、まだ水位が低かったことからですね、結果的には予定の容量より多くですね、約7500万立方メートルを貯留することができたところでございます。

 こうしたインフラ整備は防水、防災、減災が主流となる安全安心な社会づくりの根幹を成すものだというふうに考えてもおりますし、八ッ場ダムにつきましても昭和42年から施行でございますので、今年度中の完成に向けて、引き続きしっかりと取り組んでいきたいと考えております」

 松山政司「極めて大きな効果を出し、住民の命を守ってくれたと。本当にインフラ整備というものはキャッチフレーズだけで語るようなものではなく、着実にそして計画的に実施をすることが極めて重要であると改めて申し上げたいと思います。

 関連してさらに計画的な公共投資、国土強靭化に関してお尋ねしたいと思います。ただ今申し上げましたようにこの一連の激甚化する自然災害などの状況に鑑みれば、事前防止等のためのインフラ整備は極めて重要であります。防災、減災、国土強靭化ののための3カ年緊急対策は、令和3年度に終了します。しかしそれ以降も、高度経済成長期に整備されたインフラの老朽化対策、これは喫緊の課題でもあります。また、これらの対策を担う国、地方の公共団体の職員や現場の担い手の確保、これも含めて防災、減災、国土強靱化にしっかりと取り組むことが重要だと考えています。加えて、来年には東京オリンピック・パラリンピックが開催されますが、その大イベントが終了した後の経済動向についても、下振れリスクが顕在化しないよう、一過性ではない経済対策、事前にしっかりと完成させておくことも重要であります。

 このような観点から国民のより一層の安心・安全の確保を確かなものとするために、そして生産性の向上による経済の好循環を実現するためにも将来世代に亘って投資効果が享受できる公共投資、国土強靭化は益々重要性を増していくと思いますが、安倍総理のお考えをお聞かせください」

 安倍晋三「インフラの整備については今まで様々な議論が行われてきたところでございます。当然インフラを整備するためにはですね、これは予算が必要であります。国民の税金からなるものでありますし、国債を発行する場合がある。そのときに後世にツケを回すのではないかという我々、緊張感を持たなければならないのでございますが、同時に例えば今八ッ場ダムの例を挙げられました。大変な、これは財政的な負担もあったのでありますが、これは果たして、では後世に負担を残したのかと言えばですね、当然、それはこの財政に対してこれは国民みんなで幾世代に亘ってですね、対応していかなければならないものでありますが、同時にですね、まさに国民の後世の人たちの命を救うことにもなるわけであります。

 そういう緊張感の中で正しい判断をしていくことが大切だろうと、こう思うところでございます。平成の時代は大きな自然災害が相次ぎ、昨年から今年にかけても、集中豪雨、地震、激しい暴風、異常な猛暑など異次元な災害が相次いでおります。災害への対応はもはやこれまでの経験や備えだけでは通用せず、命に関わる事態を想定外と片付けるわけにはいきません。

 そのため、防災、減災、国土強靱化のための3カ年緊急対策を取り纏め、ハードからソフトまであらゆる手を尽くし、集中的な取り組みを進めているところであります。この緊急対策を講じた後も、国土強靭化基本計画に基づき必要な予算を確保した上でオールジャパンで国土強靭化を強力に進め、国家百年の大計として災害に屈しない強さとしなやかさを備えた国土を創り上げてまいりたいと考えています。また委員が、松山政司委員がご指摘になられた、我が国のですね、東京オリンピック・パラリンピック大会の終了以降も、力強く成長するためには中長期的な観点から物的・人的投資を喚起しながら、。生産性を引き上げ、経済の成長力を強化していくことが必要であると、こう認識をしております。このため公共投資についてはワイズペンディング(コトバンクから:「賢い支出」という意味の英語。経済学者のケインズの言葉。不況対策として財政支出を行う際は、将来的に利益・利便性を生み出すことが見込まれる事業・分野に対して選択的に行うことが望ましい、という意味で用いられる。)の考え方を重視しつつ、生産性の向上や民間投資の誘発、雇用の増加などの、いわゆるストック効果が最大限発揮されるよう、必要な社会資本整備を進めてまいりたいと考えております」

 松山政司は「私ども自民党は即座に緊急役員会を開きまして、被害状況を聴取させて頂いて、非常災害対策本部を設置しました」、「昨日も早朝から、朝8時から急遽180名の議員の出席のもとにこの対応について協議をいたしました」と素早い対応を誇っているが、台風19号が広範囲な被害の爪痕を残したあとに自分たちの対応の早さを誇って何になるのだろうか。被害後に求められる対応の早さは政府の自衛隊、消防、警察等を使った救助・救援であり、自治体の生活復旧支援である。

 非常災害対策本部会議では運転免許証の更新時期が過ぎても有効期間を延長できるなどの被災者に行政上の特例措置を適用する「特定非常災害」への指定や補正予算案の早期提出を求める意見などが出されたということだが、被災者の立場に立った場合、自民党側のこういった決め事よりも自分たちの生活を一通り元に戻すこと、あるいは現状をどうにか乗り越えて、将来に向けた展望が曲がりなりにも開けるようにしたいといったことが何よりも切実な問題であって、そういったことしか頭にないはずで、被害の大きさに便乗して自民党の宣伝を先決問題にする。その心得違いからは被災者に対する気遣いは見えてこない。

 松山政司は民主党政権下で「コンクリートから人へ」のキャッチフレーズに基づいて一旦建設中止を決め、その中止を撤回した「八ッ場ダム」が台風19号に果たした成果について公明党国交相の赤羽一嘉に問い質している。

 赤羽一嘉は八ッ場ダムがある利根川では10時間に亘って氾濫危険水位を超過する状況にあったが、八ッ場ダム自体は上流のダム群を含めて洪水を貯留したために計画高水位(堤防などを作る際に洪水に耐えられる水位として指定する最高の水位)にあと30センチまで迫ったが、越水することなく利根川流域の住民の安全な暮らしに大きく寄与したと八ッ場ダムの効果を評価している。

 但し「本格的な運用前に安全性を確認するために試験的には水を貯めるオペレーションをこの10月1日に開始したばかりで、まだ水位が低かったことから結果的には予定の容量より多く約7500万立方メートルを貯留することができた」ことを越水回避の理由に挙げている。

 八ッ場ダムは2009年9月16日に鳩山由紀夫内閣が正式に発足し、国交相就任の前原誠司が認証式後の就任会見で八ッ場ダムの事業中止を明言、鳩山由紀夫が翌17日の記者会見でこれを支持して事業中止が決定。2011年12月22日に同じ民主党政権の国交相前田武志が八ツ場ダムの建設再開を表明。当時の民主党首相野田佳彦が了承という経緯を取っている(Wikipedia)。

 つまり建設再開にまで2年3ヶ月を要している。「コンクリートから人へ」のキャッチフレーズで工事を一旦中止していなければ、当然、ダム工事は続行されていて、ダム本体完成は2年3ヶ月前後は早まることになる。その時点から試験貯水を含めて貯水が開始されているだろうから、台風19号が来る前にかなりの量が貯水されていて、「予定の容量より多く約7500万立方メートルを貯留することができ」なかった可能性が出てくる。

 松山政司は八ッ場ダムは「極めて大きな効果を出した」と絶賛しているが、その「効果」の元々は民主党政権下の一時工事中断と言うこともできるし、何が幸いするか分からない「効果」と言うこともできる。

 そして松山政司が「本当にインフラ整備というものはキャッチフレーズだけで語るようなものではなく、着実にそして計画的に実施をすることが極めて重要であると改めて申し上げたいと思います」と言っていることは民主党政権と比較した自民党政権の公共土木事業の効果性への言及そのものとなる。

 但しである、台風19号に対しても、これまでの大きな自然災害に対してと同様に手も足も出ない状況を目の当たりにしなければならなかった。その結果の最初に書いたように広範囲に渡る甚大な被害であり、多くの被災者を出して、生活に大きな打撃を与えることになった。10月16日の参議院予算委当時も、それ以後も、多くの被災者が後片付けに負われ、近親者から行方不明者を出した被災者はその安否に胸を痛め、将来の生活への不安を抱えることになった。

 手も足も出ない状況は自民党のこれまでの公共土木事業をひっくるめたとしても、安心・安全を全てカバーしきれていない状況をイコールさせていることになる。そのことへの謙虚な思いもなく、八ッ場ダムの「極めて大きな効果」一つを以ってして自民党の公共土木事業を誇っていてもいいのだろうか。誇るのは自民党の公共土木事業が国民の安心・安全を全てカバーしきれたときである。

 それを待たずに、しかも被災者の困窮を前にして誇る。ゲス根性を宿していなければできない自慢である。

 安倍晋三は八ッ場ダム建設は「大変な、これは財政的な負担もあったのでありますが、これは果たして、では後世に負担を残したのかと言えばですね、当然、それはこの財政に対してこれは国民みんなで幾世代に亘ってですね、対応していかなければならないものでありますが、同時にですね、まさに国民の後世の人たちの命を救うことにもなるわけであります」との答弁で、「国民みんなで幾世代に亘って」、いわばツケを回収するものだとしているが、果たして正当なツケだと正当化できるだろうか。

 財務省の発表によると、2018年末時点で国債と借入金、それに政府短期証券を合わせたいわゆる「国の借金」は1100兆5266億円。「最近20カ年間の年度末の国債残高の推移」(財務省)から公共土木事業にどのカネをかけているか見てみる。
 
 2018年特例国債残高(赤字国債残高) 579兆1千220億円(見込み)
 2018年建設国債発行残高 272兆7千294億円(見込み)

 その他に特例国債などがある。

 勿論、建設国債発行残高272兆7千294億円が全て防災・減災のための公共土木事業に費やされるわけではないが、大部分を占めているはずだ。そして国債を含めたこのような巨額の赤字を戦後の自民党政権がほぼ一貫して積み上げてきた。例えこのような赤字が「国民の後世の人たちの命を救うことにもなった」としても、「国民みんなで幾世代に亘って対応していかなければならない」は自分たちの責任を棚に上げて、国民にだけ責任を押し付ける図々しい言い草に過ぎない。

 なぜなら、歴代自民党がどれ程にムダな公共投資を行い、どれほどにムダに国の借金を増やしてきたか、問題にしなければならないからである。「このため公共投資についてはワイズペンディング(賢い支出)の考え方を重視しつつ」と言っていることは面の皮が厚くなければ口にはできない綺麗事となる。もし安倍政権がワイズペンディングな公共投資を行っていると言うなら、その厳格な検証と「歴代自民党政権とは違って」との断りを入れなければらない。

 さらに安倍晋三は最近の巨大化する自然災害による「命に関わる事態を想定外と片付けるわけにはいきません。そのため、防災、減災、国土強靱化のための3カ年緊急対策を取り纏め、ハードからソフトまであらゆる手を尽くし、集中的な取り組みを進めているところであります」と発言して、「防災、減災、国土強靱化のための3カ年緊急対策」に安倍政権の防災・減災政策の正当性を置いている。

 正当性の言い立ては優秀性への言い立てとなる。でなければ、「ハードからソフトまであらゆる手を尽くし、集中的な取り組みを進めているところであります」と宣言はできない。

 但しこういった正当性・優秀性は松山政司が八ッ場ダムの「極めて大きな効果」一つを以ってして自民党の公共土木事業を誇っていたのと同様にこれまでの自民党を含めた安倍政権の公共土木事業にしても巨大自然災害に手も足も出ない無力な状況、国民の安心・安全を全てカバーしきれていない状況を否応もなしに抱えていることに反した正当性・優秀性の誇示であって、謙虚さの一カケラも見い出すことはできない。

 大体が公共土木事業なるものが巨大自然災害に対して常に完璧ではないという謙虚さが少しでもあったなら、「国家百年の大計として災害に屈しない強さとしなやかさを備えた国土を創り上げてまいりたい」は大言壮語に等しい綺麗事以外の何ものでもないと気づいて、決して口にできないはずだ。

 事実としてある、あるいは現実として横たわっている公共土木事業の不完全さにもどかしさを持つことのない松山政司の、だから、八ッ場ダムの「極めて大きな効果」一つを以って自民党の公共土木事業を誇ることができたのだが、台風15号を加えた台風19号の「こられの度重なる自然災害によって亡くなられた方々のご冥福を心からお祈り申し上げ、被災された方々にお見舞いを申し上げます」にしても、安倍晋三のもどかしさなど薬にしていないから、綺麗事を言うことができるのだが、「被災地のみなさまに寄り添った復興に全力を尽くして参ります」にしても、口先だけの言葉に過ぎないことになる。

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水産庁漁業取締船「おおくに」の北朝鮮漁船=違法操業の予断に基づいた違法な放水が招いた沈没の疑い

2019-10-21 04:48:16 | 政治
 (文飾は当方)

 2019年10月7日朝、能登半島沖の日本の排他的経済水域(EEZ)内「大和堆」(やまとたい)で水産庁漁業取締船「おおくに」と北朝鮮籍漁船が衝突、漁船が沈没した。マスコミ記事を纏めてみる。

10月7日午前8時50分頃、「おおくに」が「大和堆」内にいる北朝鮮漁船を発見、約200メートルの距離まで接近し、並走しながら音声による警告を開始
同   午前9時4分頃、放水開始。直後に漁船が取締船に接近
同   午前9時7分頃、漁船の左舷と取締船の右舷が衝突
同   午前9時27分頃、漁船は沈没

 水産庁漁業取締船「おおくに」は北朝鮮漁船の違法操業を確認したために音声による警告を開始し、無視されたために放水を開始したのだろうか。それとも違法操業しているものとの予断に基づいて、警告と放水を行ったのだろうか。

 なぜこういうことを言うのかというと、日本の排他的経済水域は天然資源(漁業資源、鉱物資源等)の探査、開発、保存及び管理等の特定事項に限定して日本の法令の適用は許されているが、特定事項以外の行動については日本の法令適用は不可能で、外国船の航行は自由となっているからである。

 《国際海事条約における外国船舶に対する管轄権枠組の変遷に関する研究》(国土交通省国土交通政策研究所/2007年7月)

 〈[排他的経済水域]

排他的経済水域(Exclusive Economic Zone(EEZ))とは、領海に接続する水域であって、国連海洋法条約に特別の規定のあるものをいい(国連海洋法条約55条)、基線から200海里まで設定することが認められている(同57条)。

領域主権が及ぶと解されてきた領海とは異なり、排他的経済水域において認められる沿岸国の管轄権の行使は、「機能的な主権・管轄権」とされ、国連海洋法条約における個別規定によって規律される。沿岸国は、天然資源の開発等にかかる主権的権利及び海洋環境の保護及び生物資源の保存・利用等一定の事項に関する管轄権のみを有するが、これら条約に規定された沿岸国の権利を除いては、航行中の船舶に対する管轄権については、公海と同様に扱われる。

 〈航行中の船舶に対する管轄権については、公海と同様に扱われる。〉――つまり違法操業、その他の特定事項に関わる違反行為をしていない限り、航行の自由は保障される。北朝鮮籍漁船の違法操業を確認しない限り、取締はできないはずである。

 立憲民主党長浜博行は安倍晋三の所信表明演説に対する2019年10月8日の代表質問でこの件に関して問い質している。

 長浜博行「また昨日、水産庁は会見で、漁業取締船『おおくに』が大和堆において北朝鮮の漁船と衝突したと説明しています。最近の大和堆周辺水域における漁業取締方針と、今回の衝突事案に関する事実関係の詳細について、政府に伺います」

 安倍晋三「大和堆経済水域に於ける漁業取締方針等の今回の報告事案に関する事実関係についてお尋ねがありました。日本海大和堆周辺の我が国排他的経済水域に於ける北朝鮮魚船等による操業は違法であるのみならず、我が国漁業者の安全操業の妨げにもなっており、極めて問題であると考えております。

 このため我が国漁業者が安全に操業できる状況を確保することを第一に水産庁漁業取締船及び海上保安庁巡視船を重点的に配備し、放水等の厳しい対応によって我が国排他的経済水域から退去させております。

 今回の報告事案については10月7日午前9時7分頃、日本海大和堆の我が国排他的経済水域内に於いて水産庁取締船と北朝鮮籍と見られる船舶が接触し、漁船が沈没しましたが、水産庁取締船が救助に当たり、漁船の乗組員によれば、全員が救助されたとの返答を受けました。

 救助された乗組員については北朝鮮籍と見られる他の漁船に移乗しており、今回沈没した漁船による違法操業等が確認されていないこと等から身柄の拘束といった強制措置は行わず、水産庁取締船が厳重に警告の上、我が国排他的経済水域から退去させております。

 また北朝鮮側に対し、北京の大使館ルートを通じて抗議を行っております。政府としては引き続き、我が国排他的経済水域内の外国漁船による違法操業の防止のため、毅然として対応してまいります」

 「日本海大和堆周辺の我が国排他的経済水域に於ける北朝鮮魚船等による操業は違法である」と言っていることは、操業していなければ、EEZ内での航行は違法ではないとの意味となる。

 「救助された乗組員については北朝鮮籍と見られる他の漁船に移乗しており、今回沈没した漁船による違法操業等が確認されていないこと等から身柄の拘束といった強制措置は行わず、水産庁取締船が厳重に警告の上、我が国排他的経済水域から退去させております」

 船が沈没してしまっていたために違法操業の物的証拠を押さえることができなかった、漁船の乗組員も物的証拠を押さえられる心配がないことから一様に違法操業を否定、結果、違法操業の確認が取れなかったから、「身柄の拘束といった強制措置は行わず、水産庁取締船が厳重に警告の上、我が国排他的経済水域から退去」させたということなのだろうか。

 安倍晋三の「救助された乗組員については北朝鮮籍と見られる他の漁船に移乗しており」の答弁は乗組員が他の北朝鮮漁船に移乗してしまっていたから、違法操業していたのかどうか問い質すことができなかったとの言い草に聞こえる。

 だが、救助に当たったのは水産庁取締船の職員であり、北朝鮮漁船員から、「これで全員」との返答を受けている以上、違法操業の有無を問い質す時間ぐらいはあったはずである。他の漁船への移乗は関係しない。移乗前の救助した段階で違法操業を問い質したのか、問い質したが、全員が否定したのか、その点を抜かしたまま、「違法操業等は確認されなかった」としている。

 しかも他の北朝鮮漁船が近くにいながら、それらの漁船に対する違法操業の有無を確認する立入検査も行わなかった。もしこのことが水産庁漁業取締船「おおくに」側が北朝鮮漁船に対して早々に立ち退きを願う目的の回避行動だったとしたら、放水・衝突・沈没の経緯は「おおくに」側に何らかの過失があった疑いが出てくる。

 立入検査が可能なことは海上保安庁の2019年1月16日のPDF記事、「平成30年の海上犯罪取締りの状況」が証明している。

 〈北海道紋別沖我が国EEZにおけるトーゴ共和国籍船舶による立入検査忌避事件(紋別海上保安部)

 平成30年8月、北海道紋別沖の我が国EEZにおいて、しよう戒中の巡視船が、漂泊中のトーゴ共和国籍船舶(202トン、ロシア人等14名乗組)を発見、立入検査を行うために接近したところ、同船が逃走したため、巡視船により追跡・停船させ、ロシア人船長を排他的経済水域における漁業等に関する主権的権利の行使等に関する法律違反(立入検査忌避)疑いで現行犯逮捕しました。〉

 日本側に何ら過失がなく、と言うことは、違法操業を確認した上での水産庁漁業取締船「おおくに」の放水に対して北朝鮮漁船の方から衝突してきたなら、その場にいた他の漁船に対しても違法操業有無の確認を目的に立入検査は可能なはずである。

 安倍晋三の答弁は今回の事案での放水については直接触れていないが、マスコミ報道と併せると、違法操業の確認前に放水を行ったことになり、この点が日本側の過失に当たる可能性が出てくる。音声による警告は「ここは日本の排他的経済水域に当たる。ここでの漁業の操業は違法であって、禁止されている」程度は許されるはずだ。

 北朝鮮当局は10月12日になって沈没船に対する賠償と再発防止を要求してきたが、違法操業であったか、なかったか、最早確認しようがないことを逆手に取り、違法操業の確認前に放水を行ったことを日本側の過失と看做したそれらの要求だとしたら、北朝鮮側のその要求に正当性を与えることになる。

 2019年10月11日の衆議院予算委員会、午前最後の質疑で国民民主党の岡本充功(みつのり)が北朝鮮漁船沈没案件について質問していて、より詳しい経緯を知ることができる。最初に岡本充功の配布資料から水産庁漁業取締船「おおくに」が救助に当たった際の画像を載せておく。画像文字は当方が挿入。

                   

 岡本充功「水産庁の取締船の話にいきたいと思います。皆さんのお手元に、これまた写真を用意してます。パネルで今回北朝鮮の漁船と思われる船、これが沈没した船を映しています。

 これはそもそも漁船なのか。60人も乗っていたという話です。この上の写真であります。全長が30メートル。30メートルで、集魚灯がある部分が、これで(パネルの船の写真)見ると、十数メートルですよ。真ん中のところ。ここで60人もの人がですね、釣りができるか。釣りをやるんだそうです。

 十数メートルのところで、両側で例えば20メートルだとしても、1人の幅、30センチか40センチですよ。そんなところで釣りをするというのはどう考えても、現実的ではないと思うんですが、この船を漁船だと判断したのは、後ろに漁網がある。

 これだって、盛り上がっているように見えますけど、この網の下に何があるか分かりません。そういう意味でこれが漁船だと判断した根拠は何ですか」

 農水相江藤拓「北朝鮮籍の漁船という認識でこれに対して放水を致しました。これは漁船であるかの判断は難しいというご指摘でありますが、我々は漁船であるという認識のもとに対処したものであります。

 そして目の前で急旋回をしましたので、ぶつかって、沈没しましたので、人命第一ということで救命胴衣、それから救命手を出して、助け出したということであります」

 岡本充功「60人乗ってですね、作業する場所ないですよ、これね、本当に漁船だと判断した理由は何なのかと聞いたわけですよ。これ、他の目的で来たんじゃないんですか。だってイカも干していないし、集魚灯は少ないし、そもそもそんなに人が沢山いる、目的はよく分からない。これを漁船だと判断する根拠は何なのかと聞いているんです」

 江藤拓「委員の仰るようにですね、日本のイカ釣り漁船に比べれば、極めて脆弱な装備だと私も思います。しかし日本の基準とですね、外国の船は当然違って然るべきだと思います。イカ釣り漁船に人が乗っていても、操業中に全員が船舷に並ぶわけでは、日本もありません。船倉の中で作業する人間もいたりですね、操舵員がいたりですね、機関員がいたりですね、色んな人間がいますので、操業中にぜーんいん(全員)がですね、甲板に上がって、操業するということは日本ではありません。

 しかも集魚灯がついている。いうことはですね、我々はやはりこれはイカ釣り漁船であると、いう認識で対処したことは間違いなかったと思っています」

 岡本充功「この問題は結局ですね、この乗組員から聞いていないということですよ。『あなた達、何で来たんですか』ということをやっぱり聞くべきですよ。

 そしてどうしてぶつかったのかを私はきちっと解明するべきだと思います。急旋回したとまだ聞いてもいないことを答えられましたけど、急旋回したなら、それは一体(録画を)見せてくださいよ。これ、偶発的な事故なのか、意図的にぶっつかったのか、これでははっきりしないじゃないですか。(録画を)出すべきなんですよ。これ偶発的なんですか、意図的にぶっつかってきたんですか。どっちなんですか」

 江藤拓「偶発的だったのか、意図的であったのか、それは相手様のことがありますので、我々には判断できません。そしてですね、どうして聞かなかったのかとの話でありますが、海上におった船員に対してですね、我々は色々と聞きました。例えば60名ということでありましたけども、最初は20名ということでありましたね。60名だったわけですが、『これで全員ですか。全員の命を救うことができましたか』という問いには答えました。

 それ以外の問いもしましたが、一切の、その他の問いに対しては全く答えをしてくれないということでありました」

 岡本充功「それはね、正確じゃない、それはもう北朝鮮の船に乗ってから聞いてるんです。『これで全員ですか』

 それは北朝鮮の船に乗ってから聞いている話であって、この北朝鮮の漁民と思われる方から私は聞くチャンスはまだほかにもあったと思います。ちょっと聞きます。このイカ釣り漁船は借りた船だと聞いています。もっと言えば、取締官は1人だと聞いています。

 これ、なぜ放水したのですか。取締官でない人が放水できるんですか。漁船だと考えたのになぜ放水したのか。放水の理由を聞きたいと思います」

 江藤拓「先ずですね、相手の船に移乗してからではなくて、救命艇の上で聞き取りを致しております。それからですね、漁業者とか漁民の思いがあります。この大和堆(やまとたい)というですね、素晴らしい漁場に度々外国の船が入ってきて、漁場を荒らして、そして我々はですね、漁労中、いわゆる網を降ろしたとかですね、そういう作業をしていなくてもですね、いわゆるですね、漁業等付随行為許可を得ずにですね、探索をして、例えば魚群探知機を使って探索をして、そういうときにはですね、最後に付随する探索がありますから、我々は放水するということになっている」

 岡本充功「これ、じゃあ、ちょっと違った角度で聞きましょうか。これ、ぶつかったのは9時7分。沈没したのは9時25分だと海上保安庁は報告しています。これ沈没したのは9時25分なんです。

 これ、沈没したんだから、通報したんですよね。ぶっつかったから、通報したんじゃないですよね。沈没船になったから、通報したんじゃないですか。通報した理由、通報した内容、何だったんですか」

 江藤拓「ご質問に十分に答えられるかと思いますが、一応、私の答え得る範囲でお答え致します。9時7分に接触、14分に『おおくに』から水産庁に連絡、そして海上保安庁にも通報。そして24分に沈没、そしてその6分後の9時30分に私の方に報告があり、そしてそのあとですね、(?)関係を通じて、関係各省、勿論、総理の方にもですね、連絡を入れたというところです」

 岡本充功「海上保安庁、9時25分に通報受けてますね」

 国交相赤羽一嘉「9時25分、えー、9時7分頃、北朝鮮籍と見られる漁船と衝突したということと漁船が沈没したということを連絡を受けました」

 岡本充功「これ、沈没したから通報したんです。24分に沈没して、25分に通報しているんです。ぶつかったのは9時7分ですよ。つまり沈没したから、通報したんです。如何ですか、赤羽大臣。

 じゃ、聞きたい。このエリアで一体どれだけの船が日頃衝突してるんですか。通報するに至らない衝突はほかにもあるんじゃないですか。今回、衝突だけだったら、通報しなかったんじゃないですか。沈没したから、24分に沈没したから、25分に通報したんじゃないですか。

 そういう意味で通報に至らない衝突はどのくらいあるのかということを予め聞いていますから、そのことについてお答え頂きたい」
 
 江藤拓「海上保安庁じゃないでしょうか。海難事故ということなら、海上保安庁が管轄だと承知しております」

 岡本充功「農林水産省水産庁が持つ船が接触をして、海上保安庁に連絡して、海上保安庁が初めて介助するんです。つまり、連絡もせずにしょっちゅうぶっつかっているのかということについて水産庁に聞いたんです。それについての答弁を求めています」

 江藤拓「えー、誠実にご答弁したいと思いますが、通告はございませんでしたので、今はお答えできません」

 岡本充功「何遍もその話はしておりますよ。もっと言ったら、『通告したいから、私の部屋に来てくれ』と言ったら、『これ以上のことは何にも言えないから、通告は結構です』と答えたのは水産庁じゃないですか。ひどい話ですよ。これはハッキリ言っておきましょう。『私の部屋に来てくれ』と何遍も言ったけど、『これ以上のことは何も言えない。だから、通告は結構です』と言ったのは水産庁でしょう。

 ほかの省庁はみんな来ましたよ。名前も私は聞きましたよ。『あなたは誰ですか』

 流石にテレビの前で役人の名前を言うのは忍びないから、言わないけれど、この指示を出したのは、大臣、あなたじゃないですか。それを通告はないなどと言うことですか。
 
 では、次のことを大臣に聞きます。相当程度ぶっつかっている。

 では(パネルの)下の写真でいきます。下の写真、これは水産庁の救難艇が出ています。手前の、横でありますが、まだ水に入っていて、浮き輪ですか、何かに掴まっている方がいる。この向こうが救命艇があります。完全に水から上がっている北朝鮮の漁民と見られる人がいます。この船の上に日本の施政権は及びますか」
 
 外相茂木敏充「国際法上ですが、EEZを持っている沿岸国は、この排他的経済水域、EEZに於きまして生物資源を含み、天然資源の開発、探査、保存及び管理等のための主権的権利、主権的権利を有しております」

 岡本充功「そんなことは聞いていない。私が聞いているのはこの船の上について、この船は救難艇です。この上は、当然、日本の船が出している救難艇です。これ、北朝鮮の船が出している船なら、北朝鮮です。これ、日本の船が出している救難艇です。この上は、当然、日本の主権が及びますよね」

 江藤拓「日本の国有財産であるという部分に於いてですね、仰るとおりだと思います」

 岡本充功「そのとおりなんです。これは散々確認したんです。これは日本の行政権、施政権及ぶんです。その上にいるこの漁民と思われる方になぜ聞かないのか、なぜ尋ねないのか、どうして来たのか、誰が船長なのか、どうしてぶっつかったのか。

 さっき聞きましたように偶発的なのか、意図があったのか、これすら聞かない。今さら聞けないですよ。

 じゃあ、ちょっと聞きます、外務大臣。これ、抗議されたということでありますけども、一体誰に、どういうルートで、北京の外交ルート、報道では出ていますけども、具体的に誰に、どういう抗議をしたのか、(EEZに)入ってきたことを抗議したのか、ぶっつかったことを抗議したのか、それとも何を抗議したのか。そしてさらに言えば、相手は何を言ったのか」

 茂木敏充「先ずですね、外交上の決まった遣り取りにつきましては、当然、控えさせて頂きますが、今回の衝突事案発生後、我が国のEEZ内に於きます北朝鮮籍と見られる漁船の行為を踏まえまして北朝鮮に対して速やかに北京の大使館を通じて厳重に抗議を行ったところであります」

 岡本充功「私が聞いたのは抗議とは何ですか。ぶっつかったことですか。日本のEEZの中で魚群レーダーで探知していたこと、それとも何を抗議したのですか。抗議の内容ぐらい言えるでしょう。そして誰に言ったのか。そして相手方はどういう対処したのか。それぐらい言えるでしょ」

 茂木敏充「あの、冒頭申し上げましたようにですね、外交ルートでは話をしておりますけども、それにつきましては答弁を慎重にさせて頂きますが、大和堆周辺海域に進入してきます外国漁船等の数が大変多い中で北朝鮮籍と見られる漁船に対して退去勧告を行いましたところ、当該船舶が急旋回したことから漁業取締船と接触し、沈没したとの事実関係を踏まえて行ったものです」

 岡本充功「それは何を抗議したのか、さっぱり分からない。悪いですけど、こういう姿勢を取っているから、ナメられるんだと思いますよ。一体、誰にどう何を抗議をして、どういう反応だと、相手に必ず伝わっているという確証はあるんですか。

 伝わっていない可能性はないんですか。誰かを帰しておいて、その人が伝えていなければ、伝わっていないかもしれませんよ。必ず北朝鮮に伝わっているという確証はあるんですか」

 茂木敏充「北京ルートを通じて確実に厳重な抗議を行っております」

 岡本充功「テレビを通じているみなさん、分かると思いますよ。北京ルートを使って、抗議を行った。ルートはもしかしたら、誰か第三者がいるかもしれない。その人が北朝鮮に言わなければ、伝わらないんです。本当に北朝鮮側に伝わったかどうかすら、答えられない。

 じゃあ、北朝鮮側に確実に伝わったと言えるんですか」

 茂木敏充「北京の大使館ルートを通じましてですね、伝わるような形で厳重に抗議を行っております」

 岡本充功「これ以上、なりませんけどね。伝わるような形でって言ってね、伝わったかどうかもはっきりしないじゃないですか。総理にちょって聞きます。この事案についてはいつ総理の耳に入り、総理から具体的にどういう指示を出されたのですか」

 安倍晋三「本事案については発生直後から随時、状況報告を受けたところであります。本事案は海上保安庁及び水産庁が尋問・救助・救出すると共にそれぞれの任務に基づき現場に於いて適切な調査活動等を行ったものであります。

 私が個々の事案の捜査状況等について報告を受け、あるいは指示をすることはありません」

 岡本充功「総理にこの事故の概要が入ったのは何時何分ですか」

 安倍晋三「何時何分だったかということですが、通告、ございませんから。何時何分だったかということは通告ございませんが、発生直後から随時、状況報告を受けたということであります」

 岡本充功「まあ、そういうことになると、発生直後からということですから、北朝鮮の船が現場を離れる前に総理には連絡が入った、そういうことなんですね。もう、北朝鮮の船がどこかへ行っちゃって、見えなくなってから、総理に入ったわけではなくて、まさに現に救助している、その状況で総理はこの事案が発生していたことは承知をしていた。そういう理解でよろしいですか」

 安倍晋三「あの、北朝鮮の船はもう沈没しているわけですから、北朝鮮の船はありませんが、あの、船員が乗っているということですか。救助中だという報告は受けた、ところであります」

 岡本充功「いずれにしても、これを判断するためには動画が必要ですよ。委員長、動画の提出を私は求めたいと思います。水産庁、海上保安庁が持っている、この件に関する動画を当委員会に提出することを求めたいと思います」

安倍晋三「公表についてはですね、官房長官が今日11時の記者会見でお答えさせて頂いておりますが、公表する方向で検討しております」

 岡本充功「是非、全部出して頂きたいと思います。まだ、公表する方向ですから、まだ、されていない。もうされていますか」

 安倍晋三「衝突してですね、採用等の手続きがございますが、その中で今判断しているわけですが、基本的に公表するということで私自身がその方向で検討させているところでございます」

 岡本充功「是非、全部出して頂きたいと思います」

 岡本充功は「これはそもそも漁船なのか」、「ここで60人もの人がですね、釣りができるか」、「これ、他の目的で来たんじゃないんですか。だってイカも干していないし、集魚灯は少ないし」と問い質しているが、官房長官の菅義偉が2019年9月13日の閣議後記者会見で8月23日午前9時半頃、「大和堆」の西側で北朝鮮の海軍のような旗を掲げている高速艇が水産庁巡視船に対して30メートル程の距離にまで接近し、高速艇乗組員1人が小銃を構えて威嚇してきたとする事件が発生しているから、そういった類いの船だとでも思ったのだろうか。

 例えイカ釣り漁船でなかったとしても、安倍政権がイカ釣り漁船だとして、乗組員を釈放してしまい、しかも沈没付近は水深が深く、引き揚げは極めて困難だということからしてイカ釣り漁船だとした事実は変えることはないのだから、ムダな質問に時間を割いていることになる。

 また江藤拓が「海上におった船員に対してですね、我々は色々と聞きました」、「その他の問いに対しては全く答えをしてくれないということでありました」と既に答弁しているのに岡本充功はあとの方で救命艇の「上にいるこの漁民と思われる方になぜ聞かないのか、なぜ尋ねないのか、どうして来たのか、誰が船長なのか、どうしてぶっつかったのか」、衝突は「偶発的なのか、意図があったのか、これすら聞かない。今さら聞けないですよ」などと益もない質問をしている。

 江藤拓は「海上」という場所について、「相手の船に移乗してからではなくて、救命艇の上で聞き取りを致しております」と救命艇での聞き取りであったことを説明しているが、要するに聞き取りによって違法操業であったかどうかの証言を得ることができなかった。

 と言うことは、違法操業の有無の確認前に放水を行っていた事実を示すことになる。

 岡本充功の「これが漁船だと判断した根拠は何ですか」の問いに対して江藤拓が「北朝鮮籍の漁船という認識でこれに対して放水を致しました」と答弁しているが、言っていることの意味に留意せずに、「なぜ放水したのですか。取締官でない人が放水できるんですか。漁船だと考えたのになぜ放水したのか。放水の理由を聞きたいと思います」などと遠回りな質問をしている。

 江藤拓のこの答弁箇所は違法操業をしているか否かの確認をせずに北朝鮮籍の漁船だからという理由で直ちに放水した事実を物語ることになる。そのことが許されるのかどうかを端的に質問すべきだったろう。

 但しあとになって北朝鮮籍の漁船だからという理由で直ちに放水したわけではないことを答弁している。

 「いわゆる網を降ろしたとかですね、そういう作業をしていなくてもですね、いわゆるですね、漁業等付随行為許可を得ずにですね、探索をして、例えば魚群探知機を使って探索をして、そういうときにはですね、最後に付随する探索がありますから、我々は放水するということになっている」
」と言っている。

 要するに網を降ろして作業をしていたわけではないが、魚群探知機を使って魚群を探索していた。それが漁業等付随行為許可を得ない探索だったから、魚群探知機が発する音波を水産庁漁業取締船「おおくに」がキャッチして、放水に至ったということになる。岡本充功も、「日本のEEZの中で魚群レーダーで探知していた」と発言している。

 となると、江藤拓が「北朝鮮籍の漁船という認識でこれに対して放水を致しました」と最初に答弁したことと矛盾するし、安倍晋三が長浜博行の代表質問に対して「今回沈没した漁船による違法操業等が確認されていないこと等から身柄の拘束といった強制措置は行わず、水産庁取締船が厳重に警告の上、我が国排他的経済水域から退去させております」と答弁したこととも矛盾する。

この矛盾を解くには北朝鮮漁船が魚群探知機を使って魚群を探索していたことはキャッチしていたが、実際に漁獲していた現場を目撃していたわけではないし、漁獲した魚を確認したわけではないから、いわば証拠を上げることができずじまいだったから、違法操業だと断定するまでに至らず、止むを得ず無罪放免にしたという経緯を取らなければならない。

但し違法操業であるかどうかを断定する前に、と言うことは、証拠を上げる前に放水が行われていた事実は北朝鮮籍の漁船だから放水した(「北朝鮮籍の漁船という認識でこれに対して放水を致しました」)とした江藤拓が最初の答弁で示した認識と符合することになる。

このような符合は何らかの予断なくして成り立たない。魚群探知機の音波をキャッチするの待つまでもなく、北朝鮮漁船=違法操業との思い込みのもと、実際にほぼ100%、そのとおりなのだろうが、実際に違法操業を確認しないままに北朝鮮漁船と見れば、放水を行っていた予断である。

 とすれば、音声による警告にしても予断に基づいて行われ、放水にバトンタッチするための単なる形式的な手続きとなる。そして放水によってEEZ内から退散させる。北朝鮮漁船を発見すれば、違法操業だと断定する一足飛びの予断は否応もなしに恒常性を持つことになる。

 物的証拠を見つけることができない警察の取り調べで、こいつが犯人に決まっていると予断を持つと、自白を強要させてまでも犯行を認めさせたくなり、一度でも実行し、成功すると、物的証拠を見つけることができない取調べでは自白の強要が恒常化するようにである。

 こういった予断は魚群探知機の音波をキャッチすることやキャッチした音波を記録する作業を往々にして疎かにしたり、後回しにしたり、最悪省いたりしかねない。いわば最初に警告、即放水という状況を作りかねない。

 いずれにしても違法操業を確認する前に警告と放水を行った。だから、安倍晋三が答弁しているように「今回沈没した漁船による違法操業等が確認されていないこと等から身柄の拘束といった強制措置は行わ」なかったという経緯を取ることになった。

この動かしようがない事実はこれまではEEZ内という国民の目が届かない密室で恒常的に行われていたが、今回の事案で北朝鮮漁船が急旋回して「おおくに」と衝突、沈
没した結果、密室状態が破られて、違法性が顔を覗かせることになったと見ることができる。

このことは取締リの映像が公開されたとしても変わりはない。政府は10月18日夜、約13分間の「映像」水産庁HP を公開することになったが、映像は放水直前からスタートして、衝突、沈没、救助を経て、救命艇から他の北朝鮮漁船に移乗し、その漁船が走り去っていくまでの約13分間の映像であって、水産庁は編集はしてないとしているとマスコミは伝えているが、若い男の声で「退去警告に従わないため、撮影を開始する」との声が聞こえて、そして同じ若い男の声で「只今から、放水を開始する」と言ってから衝突まで約3分30秒、衝突から立ち去っていくまでが約9分20秒であって、沈没した北朝鮮漁船を発見した時点からの映像ではない。発見から放水直前の場面が見えない。

 最初にマスコミ報道の時間経緯を伝えたが、発見から放水開始までが14分。放水開始から衝突まで約3分を経て、沈没までが20分。だが、映像は放水開始から衝突まで約3分30秒。船が傾いて、傾いた側の右舷から海水が浸入したのが6分20秒後、右舷を下にしてほぼ沈没した状態になったのが約7分後、その30秒後には完全に沈没。マスコミ報道の放水→沈没の23分から、映像の放水→沈没の7分30秒を引くと、15分30秒の空白が生じる。

 江藤拓が「9時7分に接触、14分に『おおくに』から水産庁に連絡、そして海上保安庁にも通報。そして24分に沈没」と発言している接触→沈没までの17分と比較しても、映像では衝突が映像開始から約3分30秒後、ほぼ完全に沈没が映像開始から約7分20秒後、その間の経過時間は3分20秒で、江藤拓が口にした経過時間とは13分40秒の開きがある。この開きにしても、映像から消えていることになる。

 この事実にしても、水産庁側の何らかの過失を隠す必要性があった隠蔽と疑うことができる。いきなり放水したのか、最初の音声による警告はしたものの、お座なりなもので、直ちに放水に移ったのか、画像からは放水しながらの音声による警告は聞こえているが、放水前の音声による警告は画像には見えてこないし、聞こえもしない。

 以上がマスコミ報道や国会質疑から浮かんできた、北朝鮮漁船=違法操業とする「予断」が違法操業確認を省いた音声による警告と放水の恒常化ではないのかとの疑いだが、政府側はいくらでも情報隠蔽を謀ることができる。

 実際には魚群探知機を使っていたことをキャッチしていただけではなく、網を降ろして作業をしていたことを確認してから、音声を用いてEEZ内からの退去を求めたが、素直に従わなかったために放水に至った。ところが放水にも従わずに急旋回してきて衝突して沈没するという自爆行為を招いた。素直に従っていたなら、たくさんある日常的な光景の一つとして消えていくが、違法操業+衝突してくるという悪質な公務執行妨害を働いた上の沈没は日常的な光景を破って、北朝鮮漁船の悪質さのみを浮き立たせることになり、その公表が北朝鮮当局を刺激した場合、拉致解決で北朝鮮側に接近したい安倍政権にとっては不利な状況として働きかねない。そのことからの穏便な措置として行った違法操業は確認できなかったとする無罪放免という疑いもできる。

 疑いは疑いでしかないが、ときには事実の形を取ることもある。

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安倍晋三の古い時代にとどまりながら、見栄えのよい政治家に見せるための「新しい時代の日本に求められるのは多様性であります」

2019-10-14 10:54:57 | 政治

                         center
 文飾は当方。

 【参院本会議】長浜博行参院議員会長、安倍総理の所信表明に対し代表質問(立憲民主党サイト/2019年10月8日)   

 長浜博行「『「みんなちがって、みんないい」新しい時代の日本に求められるのは、多様性であります。みんなが横並び、画一的な社会システムの在り方を、根本から見直していく必要があります。多様性を認め合い、全ての人がその個性を活かすことができる。そうした社会を創ることで、少子高齢化という大きな壁も、必ずや克服できるはずです』

 私の言葉ではありません。4日にこの議場で行われた『第200回国会における安倍内閣総理大臣所信表明演説』の中の一節です。感激しました。やっと気づいてくださったのか。しかしいくら吠えても張り子の虎(すなわち中身が何もない)では、演説を聴かれた国民は失望してしまいます。不言実行、有言更なりであります。ここからが私の質問です。

 来年の東京オリンピック・パラリンピック大会に向けて、ユニバーサルデザインの街づくりや『心のバリアフリー』の取組が行われていますが、価値観やライフスタイルの多様化が進んでいる現状からすれば、まだまだ不十分です。共生社会の実現のため、誰一人取り残さないという強いメッセージを政治の側が発信することが求められています。私どもは、誰もが個人として尊重される多様性ある社会を目指して、手話言語法案・情報コミュニケーション法案、LGBT差別解消法案等の法案を衆議院において共同提案しております。

 しかし、与党は一切審議に応じておりません。手話は、コミュニケーション手段であると同時に、日本語と同等の第一言語です。ろう者が手話言語を習得する機会を拡大し、手話文化の継承・発展を図る手話言語法案、そして、全ての視聴覚障害者等に対し、情報の取得やコミュニケーション手段についての選択の機会を確保・拡大していく情報コミュニケーション法案の制定が、今こそ求められていると考えます。総理の所見を伺います。

 民間の調査によりますと、日本ではLGBTなどの性的マイノリティに該当する方の割合が8%以上に達すると言われております。特に、いわゆる「SOGI(ソジ)ハラスメント」対策については、先の通常国会において女性活躍推進法等改正案に対する両院の附帯決議にも盛り込まれ、一定の前進が見られましたが、その進捗状況について政府の説明を求めます。

 さらに、性的指向や性自認にかかわらず、誰もが差別されることなく自由に生きる社会を実現するため、行政機関・事業者による不当な差別的取扱いの禁止やハラスメントの防止については、しっかりと法律で定める必要があると考えますが、総理の所見を伺います。

ジェンダー平等

 性別を問わずその個性と能力を十分に発揮することができるジェンダー平等社会を実現するため、野党会派共同で、選択的夫婦別姓法案や性暴力被害者支援法案等の法案を提案しておりますが、これまた与党は一切審議に応じておりません。特に選択的夫婦別姓については、本年7月に日本記者クラブで開かれた7党首討論会で、制度導入に賛成かとの質問に対し、ただ1人、自民党総裁である総理だけが手を挙げず、大きな話題となりました。

 国際社会の共通目標である『持続可能な開発目標(SDGs)』は、ジェンダー平等の実現を掲げています。総理は、先の通常国会で『SDGsの達成に尽力し、SDGsの力強い担い手たる日本の姿を国際社会に対して示す』旨述べていました。にもかかわらず、選択的夫婦別姓の導入を求める国連の勧告は放置したままです。総理は、先月の国連本部の会合で、SDGsに関する実施指針を年内に改定し、新たな取組を示す方針を表明しましたが、その取組に選択的夫婦別姓を入れるつもりがあるか、また、婚姻後も姓を変えない権利を認めることこそが、SDGsが目指す誰一人取り残さない社会の実現につながるのではないでしょうか、総理の見解を伺います」

 長浜博行の「選択的夫婦別姓」の質問に対する安倍晋三の答弁(動画から文字化)

 安倍晋三「SDGsと選択的夫婦別氏(べつうじ)制度についてお尋ねがありました。先ず指摘のSDGsについては人間の安全保障の理念に基づき、誰ひとり取り残さない社会を実現すべく、教育や保健の分野を始めとして、国際社会の取組をリードし、SDGsの達成に向け、貢献してまいります。

 他方、夫婦の別氏の問題については、家族の在り方と深く関わる問題であり、国民の間に様々な意見があることから、この対応についてはSDGsの議論とは別に慎重な検討が必要と考えております

 安倍晋三や類似の保守政治家が言う「家族の在り方」とは伝統としてきた古い時代からの「家族の在り方」を意味させている。なぜなら、選択的夫婦別姓にしても、同性婚にしても、新しい時代の新しい「家族の在り方」を意味しているのだから、この対立概念として位置させた「家族の在り方」となるからである。

 明治から大正、昭和戦前、戦後と続く「家族の在り方」を時代に抗って、永遠に守り通したいと願っている。このことは戦前型天皇主義者であり、日本民族優越主義者である安倍晋三からしたら当然の姿勢ということになる。

 「SDGs」なる言葉は初耳だから、ネットで調べてみると、「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称だそうで、「貧困ゼロ」、「飢餓ゼロ」「不平等ゼロ」、「平和と公正さの平等の実現」、「公平・平等で高質な教育機会の実現」などの17の目標の中に「ジェンダー(社会的性差)解消と社会的に男女平等であることの実現」を掲げているという。

 長浜博行が安倍晋三の「第200回国会における所信表明演説」での「多様性」についての発言を紹介しているから、具体的にどう述べたのか見てみる。

 「第200回国会における安倍晋三所信表明」(首相官邸/2019年10月4日)
  
 安倍晋三「(一億総活躍社会)

 15年前、一人のALS患者の方にお会いしました。

 『人間どんな姿になろうとも、人生をエンジョイ出来る』

 全身が麻痺(ひ)していても弾くことができるギターを自ら開発。演奏会にも伺いましたが、バンド活動に打ち込んでおられます。更には、介護サービス事業の経営にも携わる。その多彩な活動ぶりを、長年、目の当たりにしてきました。

 令和になって初めての国政選挙での、舩後靖彦さんの当選を、友人として、心よりお祝い申し上げます。

 障害や難病のある方々が、仕事でも、地域でも、その個性を発揮して、いきいきと活躍できる、令和の時代を創り上げるため、国政の場で、共に、力を合わせていきたいと考えております。

 令和を迎えた今こそ、新しい国創りを進める時。これまでの発想にとらわれることなく、次なる時代を切り拓いていくべきです。

 かつて採られた施設入所政策の下、ハンセン病の患者・元患者の御家族の皆様に、極めて厳しい偏見、差別が存在したことは、厳然たる事実です。そのことを率直に認め、訴訟への参加・不参加を問わず、新たな補償の措置を早急に実施します。差別、偏見の根絶に向けて、政府一丸となって全力を尽くします。

 『みんなちがって、みんないい』

 新しい時代の日本に求められるのは多様性であります。みんなが横並び、画一的な社会システムの在り方を、根本から見直していく必要があります。多様性を認め合い、全ての人がその個性を活かすことができる。そうした社会を創ることで、少子高齢化という大きな壁も、必ずや克服できるはずです。

 若者もお年寄りも、女性や男性も、障害や難病のある方も、更には、一度失敗した方も、誰もが、思う存分その能力を発揮できる、一億総活躍社会を、皆さん、共に、創り上げようではありませんか」

 長浜博行が「特に選択的夫婦別姓については、本年7月に日本記者クラブで開かれた7党首討論会で、制度導入に賛成かとの質問に対し、ただ1人、自民党総裁である総理だけが手を挙げず、大きな話題となりました」と指摘している点についても、安倍晋三の党首討論でのLGBTと選択的夫婦別姓に関しての発言を見てみることにする。挙手していない画像は最初に載せておいた。

 日本記者クラブ・参院選7党党首討論会(2019年7月3日1300 〜 1500 10階ホール)

 枝野幸男「安倍総裁にお尋ねします。今日は、あの自民党総裁として出てきて頂いているので、お答え頂けると思いますが、立憲民主党などが国会提出をしている法案は原発ゼロ法案、LGBT差別解消法案、選択的夫婦別姓法案、これらは残念ながら、与党のみなさん、審議に応じて頂けていません。原発ゼロ法案に至っては昨年の通常国会では所管の経産委員会の法案がなくなって空いてる状況だったにも関わらず審議に応じて頂けていません。原発ゼロは原発事故から8年経過して、その後の社会状況の変化でもはやリアリズムです。

 LGBTの差別解消については、あの自民党さんの方向性が示されておりますが、実際の当事者の皆さんのことを踏まえたものとはなかなか感じられません。選択的夫婦別姓については、先日のネットでの答弁でですね、『選択的夫婦別姓は経済成長と関係ないから、必要ない』とも受け取れる答弁がありました。

 これらの3つの法案について自民党としての見解と審議に応じていただけない理由についてお話を頂きたいと思います」

 安倍晋三「先ず原発ゼロでありますが、これは責任あるエネルギー政策とは言えないと考えております。今、多くの原子力発電所、原発が止まっていることによってですね、一般家庭で年平均2万2千円のご負担、増が生じておりますし、中小企業で1千2百万円、燃料費が上昇しているわけであります。そしてCo2の削減をしなければいけないという義務も負っている。

 そしてエネルギーの自給率の問題もあることから、その原発ゼロを直ちに決めていくのは責任ある政党とは言えないんだろうと思っています。その意味に於いて私たちは、考え方が違うということ。

 また夫婦別姓については、これはマイナンバーカード、あるいはパスポート等に於いて修正の必要が可能になっております。意識調査についても意見が色々分かれている中に於いてですね、国民的なコンセンサスを得ていく必要があるんだろうと、こう考えています。

 そして審議するかしないか。私はずっと総理の立場でありますから、国会運営は党に任せおりますが、総理の立場で今出ていますが、このことについては積極的に議論していくべきだろうと思っております」
   ・・・・・・・・・・・・・
司会「第一部でも話題になりましたが、選択的夫婦別姓を認めるっていう方は挙手をお願いします」

 安倍晋三だけが挙手しない。

 司会「もう一つ、LGBTに関して法的な整備が茨城県が初めてやったんですが、渋谷区も始めたりしてますが、LGBTの法的な権利を与えるっていうのを認めるという方は」

 安倍晋三と公明党代表山口那津男だけが挙手しない。

 安倍晋三「単純化して、ショーみたいにするのはやめた方がいいですよ。政策的な議論をちゃんとしないとですね、イエスかノーかということでは政治はないですから」

 司会「勿論」

 安倍晋三「どういう議論してるんだ(ということが大事で)。今の段階で答えられなくても、直ちにノーではないんですから。印象操作するのはよくないと思いますよ。何か意図を感じるな」

 司会「いや、いや。でも、それについて今安倍さん、ちゃんと説明されたわけでしょ。説明しないしね、ただ手を上げろって言っているわけじゃありませんから。それを説明を今、されたわけですから。今、そういう場合の非常に難しい問題、これ簡単に賛成、反対とはなかなかいかない問題なんだってことは逆に分かったんじゃないですか」

 安倍晋三「ありがとうございました」(笑いながら頭を下げて、誤魔化す)

 枝野幸男が「選択的夫婦別姓については、先日のネットでの答弁でですね、『選択的夫婦別姓は経済成長と関係ないから、必要ない』とも受け取れると答弁がありました」と言っていることをネットから探し出してきた。

 「選択的夫婦別姓 「経済成長と関わりがない」 首相 発言に批判」(しんぶん赤旗/2019年7月3日)

 2019年6月30日にインターネット動画サイト「ニコニコ動画」で行われた党首討論での発言だと言う。

 司会者(?)「選択的夫婦別姓は女性の社会参画のためには不可欠では」

 安倍晋三「いわば夫婦別姓の問題ではなくて、しっかりと経済を活性化させ、みんなが活躍できる社会をつくっていくことではないか」

 司会者「選択的夫婦別姓制度はいらないという返答でいいか」

 安倍晋三「経済成長との関わり合いがないと考えている」

 要するに選択的夫婦別姓制度は経済成長要因となるなら、考えもするが、そうではないから、横に置いておき、経済成長要因となる女性の雇用(=女性の労働参加)などに重点を置いて、先ずは経済を活性化させることで誰もが仕事で活躍できる社会の実現を優先させるべきではないかと言っていることになる。

 と言うことは、安倍晋三は国民を男女共々経済を活性化させる働き手と看做していることになる。だから、選択的夫婦別姓制度をアベノミクスの圏外に置くことができる。

 かくこのように「ニコニコ動画」の党首討論では経済成長との関係で選択的夫婦別姓制度不要論を唱えた。これは安倍晋三の中で選択的夫婦別姓制度に関わる政治思想そのものとして抱えているはずである。であるなら、そのような思想を抱えている以上、「ニコニコ動画」での発言を日本記者クラブでの党首討論で繰り返さなくても、司会者から「選択的夫婦別姓を認めるっていう方は挙手をお願いします」と促されたとしても、いわば「イエスかノーか」で単純化した形で問われたとしても、選択的夫婦別姓制度に関わる自らの政治思想に従い、挙手しないことによって「ノー」の意思表示をするのが当然であり、それを「単純化して、ショーみたいにするのはやめた方がいいですよ。政策的な議論をちゃんとしないとですね、イエスかノーかということでは政治はないですから」などと批判するのは自身の選択的夫婦別姓制度に関わる政治思想を隠して、印象が悪くなるのを避ける狡猾な行為そのものであり、一国の首相として要求される正々堂々とした態度に反する。

 立憲民主党の「婚姻平等法案・LGBT差別解消法案」は解説で「民法を改正して、同性婚を可能にし、婚姻の平等を実現します」と謳っているが、安倍晋三は同性婚について国会で、日本国憲法「第3章 国民の権利及び義務 第24条」、〈婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。〉を根拠に「現行憲法の下では、同性カップルの婚姻の成立を認めることは想定されていない。同性婚を認めるために憲法改正を検討すべきか否かは、我が国の家庭のあり方の根幹に関わる問題で、極めて慎重な検討を要する」と答弁、古くからある伝統的な「我が国の家庭のあり方」を保守すべく、実質的に反対している。

 このような思想を自らのものにしている以上、日本記者クラブでの党首討論で司会者から「LGBTの法的な権利を与えるっていうのを認めるという方は」と挙手を求められたことを「単純化」した問いかけだと批判することも同性婚に関わる自らの思想を隠す態度となる。

 安倍晋三は経済成長との関係でのみ、選択的夫婦別姓制度不要論を政治思想としているわけではない。伝統的な家族制度解体要因そのものとして強固に反対している。経済成長要因ではないことからの不要論は事実そう思っていても、付け足しで、後者にこそ、本質的な理由を置いているはずだ。

 「第190回国会 衆議院予算委員会」(2016年2月29日)

 岡田克也「総理が野党時代の発言を紹介したいと思います。夫婦別姓の問題ですね。

 総理は、『夫婦別姓は家族の解体を意味します、家族の解体が最終目標であって、家族から解放されなければ人間として自由になれないという、左翼的かつ共産主義のドグマです』、こういうふうに発言されていますね。これはどういう意味ですか。お答えいただけますか」

 安倍晋三「突然の質問でございますので、後ほど確認させていただきたい、このように思います」

 岡田克也「これは昔の発言じゃないんですよね、野党時代の発言ですから。これは、『WiLL』という雑誌の平成22年7月、そのときの対談ですね。自民党の何人かの議員が対談しておられる中での総理の発言なんですよ。

 こういう考え方で夫婦別姓というものを考えていれば、我々は選択的夫婦別姓、法案も国会に出していますが、そういうことについて頭から、もうイデオロギー的にダメだということですか」

 安倍晋三「こういうものは、前後でどういう発言をしているか、対談ですから、それを見ないと私も俄にはお答えのしようがないわけでありますが、私は、家族の価値を重視する保守党としての自民党の考え方を恐らく述べたものであろう、こう考えるわけでございます。

 いずれにいたしましても、夫婦別氏に対する考え方については、政府としての長である内閣総理大臣として既に答弁をしているとおりでございます」

 岡田克也「自分で御発言になったことですから、覚えていないというのはあり得ないというふうに思うわけですね。いずれにしても、ここに総理のやはり基本的な考え方というのが出てきているんじゃないかと思うんですよ。

 この前、最高裁が、憲法違反ではない、そういう判決を下しました。後は立法の問題だ、国会で議論する話だ、こういうことであります。ですから議論しているし、我々は、選択的夫婦別姓、別に夫婦別姓を強制するんじゃなくて、そういうことも可能ですよという法案を国会に提出しているわけであります。

 この最高裁の判決の中で、憲法違反でないという判決に反対した裁判官が何人かいらっしゃいます。女性の裁判官三人全員が憲法違反だという意見を述べられました。

 そこでどういう論理を述べておられるかというと、結局、多くの場合には夫の姓になってしまう、現実的に96%が夫の姓になるんですね、結婚した場合に。妻となった者のみが個人の尊厳の基礎である個別識別機能を損なわれ、また自己喪失感といった負担を負うことになり、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚した制度とは言えない、だから憲法違反だと言っているわけです。

 私は、憲法違反だという考え方に立つものでは必ずしもないんですが、それは最高裁が判断されたわけですから尊重しますが、ここの論理というのは、やはり立法的にしっかり対応すべきだということになるんじゃないでしょうか。男女平等の本質に反するような、同姓を強制する、そういう仕組みはやはりおかしいんじゃないですか。先進国の中で、結婚したら同じ姓にしなければいけないと強制している、そういう国はありませんよね、日本だけですよね。なぜここに固執されるのか私はわからないんですが、いかがですか。

 安倍晋三「諸外国では、中国や韓国はそうでありますが、そもそも別氏であったわけでございます。

 夫婦の氏の問題は、単に婚姻時の氏の選択にとどまらず、夫婦の間に生まれてくる子の氏の問題を含め、我が国の家族のあり方に深くかかわる問題であろうと考えています。

 選択的夫婦別氏制度については、国民の間でさまざまな意見があるのも事実だろうと思います。例えば、直近の世論調査を例にとってみますと、反対が36・4%、容認が35・5%、通称のみ容認が24・0%などといった結果になっているところでございます。そのため、最高裁判決における指摘や国民的な議論の動向を踏まえながら、慎重に対応する必要があると考えております」

 岡田克也「これは日本の伝統だと言う人もいますけれども、明治31年からですね、法制的には。それまでは、一部の人を除いて、そもそも日本人は氏がなかったわけでしょう。

 いずれにしても、総理がこういう固定観念を持っておられると、この選択的夫婦別姓の話というのは全く進まないですよね。そこはしっかり考えを改めていただきたいというふうに申し上げておきたいと思います」

 安倍晋三は2010年7月の雑誌『WiLL』での対談発言、「夫婦別姓は家族の解体を意味します、家族の解体が最終目標であって、家族から解放されなければ人間として自由になれないという、左翼的かつ共産主義のドグマです」の意味を問われて、最初に「私は、家族の価値を重視する保守党としての自民党の考え方を恐らく述べたものであろう、こう考えるわけでございます」と答えている。

 確かに安倍晋三の雑誌「WiLL」の対談と同じ年の「自民党政策集J-ファイル2010」(当時は谷垣総裁)には、「わが国のかたちを守ります」と題して、〈民主党が導入を目指す「夫婦別姓」・「外国人地方参政権」は、わが国を根底から覆そうとする意識が働いているとしか考えられないものです。わが党は、夫婦別姓法案と外国人地方参政権付与法案に反対し、わが国の地域社会と家族の絆を守ります。〉の一文が挿入されていて、「自民党の考え方」と言うことができる。

 だが、当時は一度首相を経験している立場にあった以上、「これは自民党の考え方だが、自分は異なる立場にある」といった断りがなく述べたなら、自身も同調している同じ考え方を披露したことになる。もし断っていたなら、対談で「夫婦別姓」を話題にした以上、自民党の考え方とは異なる夫婦別姓に関わる自身の考え方を明らかにする責任を負う。
 
 要するに断りを入れた、入れないに関係なく、「WiLL」の対談発言は安倍晋三自身の考え方でなければならない。それをさも自身の考え方が「自民党の考え方」と異なるかのように言辞を弄するのは卑怯である。

 安倍晋三が対談で語った「夫婦別姓は家族の解体を意味します」云々と、岡田克也に答弁した「夫婦の氏の問題は、単に婚姻時の氏の選択にとどまらず、夫婦の間に生まれてくる子の氏の問題を含め、我が国の家族の在り方に深くかかわる問題であろうと考えています」の正当性を見てみる。

 安倍晋三がここで口にしている「家族の在り方」は既に触れたように伝統としてきた古い時代からの「家族の在り方」を意味させている。「我が国の」と一国に限定して「家族の在り方」とした場合、その「家族の在り方」は歴史的連続性を持つことからも、伝統としてきた古い時代からの「家族の在り方」でなければならない。

 「夫婦別姓は家族の解体を意味」するなら、「夫婦同姓」は家族解体の防壁であることを意味しなければならない。だとすると、現実に頻発している夫婦同姓下での離婚や家庭内別居、家庭内孤立、あるいは家庭内対立、夫か妻いずれかの、あるいは夫と妻双方の不倫といった家族の解体は夫婦同姓が家族解体の防壁であることに真っ向から矛盾することになる。そして夫婦同姓が現在の家族制度の根幹をなしている関係からして、夫婦同姓下の家族の解体は現在の日本の家族制度そのもののが、いわば「我が国の家族の在り方」そのものが家族の解体に対して必ずしも絶対でないことを証明することになる。この非絶対性は夫婦同姓の非絶対性と相互性を意味する。

 現実にそうである以上、家族の在り方、あるいは夫婦の関係・在り方を決定づけている要因は夫婦同姓の家族制度そのものではなく、夫と妻が、ときには舅、あるいは姑、子どもが加わって、相互に影響し合って、それぞれの関係性を彩ることになる人間性(=人柄や姿勢、生き方、相手への思いやり等)が家族の解体か否かを決定づける要因となっていることを示しているはずである。

 こういった合理性からすると、夫婦別姓制度が別姓で始まった夫婦にとって常にその関係性を最後まで維持する保証とはならないということになり、現実にもそうなるだろうから、夫婦同姓、あるいは夫婦別姓といった家族制度が決定づける夫婦の関係・在り方ではなく、あくまでもそれぞれの人間性が決定づけるそれぞれの関係・在り方であることを認識していなければならない。

 このような認識に基づくと、「夫婦別姓は家族の解体を意味」は合理的な根拠は何らない内容空疎な主張と化す。当然、「家族の解体」を「最終目標」としていると解釈している点も、根拠のない考え方となる。

 当然、岡田克也に答弁した「夫婦の氏の問題は、単に婚姻時の氏の選択にとどまらず、夫婦の間に生まれてくる子の氏の問題を含め、我が国の家族の在り方に深くかかわる問題であろうと考えています」といった認識にしても、著しく正当性を欠く主張に過ぎないことになる。

 夫婦同姓の家庭と違って、夫婦別姓の家庭に育った子どもが夫婦別姓を受け入れるか否かはその子どもをどのような人間性を持った子どもに育てるかにかかっているのであって、制度そのものが決める問題ではない。

 安倍晋三はまた、夫婦別姓を「家族から解放されなければ人間として自由になれないという、左翼的かつ共産主義のドグマです」と否定思想としている以上、夫婦同姓の家族こそが「人間としての自由」を獲得できると考えていることになる。

 「人間としての自由」は夫婦同姓とか夫婦別姓に関係なく、自律的な主体性を自らの姿勢とすることができるかどうかにかかっている。自律的・主体的な生き方をするための必須要件として家族からの解放を出発点とし、「人間としての自由」を到達点とする場合を除いて、「家族から解放され」る、されないが「人間としての自由」を決定づけるわけでもなく、夫婦同姓の家族制度、あるいは夫婦別姓の家族制度が決定づける「人間としての自由」でも決してない。

 夫婦同姓下であっても夫に束縛さられて「人間として自由」を失っている妻はいくらでも存在する。夫から家庭内暴力を受けて耐え忍んでいる妻は典型的な例に入る。夫が家事・育児を何もせずに獲得している「自由」は「人間としての自由」ではなく、自らの横暴によって手に入れている単なる時間的自由に過ぎない。

 家事。育児の負担に束縛され、耐えている妻の例は夫婦共々自律的・主体的な生き方から程遠く、両者共に自律性・主体性を失っている点、妻だけではなく、夫にしても「人間としての自由」からは程遠い場所に位置していることになる。

 以上見てきたような安倍晋三のこれらの認識の偏りは伝統としてきた古い時代からの「家族の在り方」という形式だけに拘り、その中身としての「人間としての在り方」にまで考えが回らならない偏見を生み出す要因になっているはずだ。夫婦別姓は家族制度というよりも「人間としての在り方」により重点を置いていることに思い至らない。

 長浜博行が代表質問で指摘することになった安倍晋三の所信表明の「多様性」についての発言を再び見てみる。

 「『みんなちがって、みんないい』、新しい時代の日本に求められるのは多様性であります」

 つまり安倍晋三が所信表明で追求を約束した「多様性」「新しい時代の日本」に合致することを条件としていることになる。そういった「多様性を認め合い、全ての人がその個性を活かすことができる。そうした社会を創る」と国民に向けて約束を掲げた。

 但し伝統としてきた古い時代からの「家族の在り方」を断ち切らなければ、「新しい時代の日本」に合致した「多様性」は追求不可能であるし、新しい時代が常に求めている「人間としての在り方」に踏み込むことはできない。

 なぜなら、伝統としてきた古い時代からの「家族の在り方」は家事・育児妻任せの点に典型的に現れているように古い時代からの男尊女卑の思想を残していて、新しい時代が求めている「人間としての在り方」は阻害され、殆どの夫・妻が自律的・主体的な生き方をしているとは言えないからである。

 だが、安倍晋三は長浜博行の代表質問に答えて、「夫婦の別氏の問題については、家族の在り方と深く関わる問題」だと答弁、「家族の在り方」を決定づけるのは伝統的な夫婦同姓の家族制度だけだと限定していて、「人間としての在り方」については何の考えも持たない。

 所信表明で「新しい時代の日本に求められるのは多様性であります」「多様性を認め合い、全ての人がその個性を活かすことができる」と言いながら、夫婦別姓を「多様性」の一つと見ることも、「個性」の一つ、「人間としての在り方」の一つであると見ることができない。 

 伝統としてきた古い時代からの「家族の在り方」に足を踏み入れたまま、夫婦別姓も同性婚も日本に於ける新しい時代の「人間としての在り方」への欲求であり、「個性」であるという観点から眺めることもできない。

 そのような立場に立った夫婦別姓や同性婚抜きの「多様性」であるなら、何度口にしようとも、古い時代にとどまりながら、見栄えのよい政治家に見せるための口先だけで、内容空疎なの「多様性」に過ぎないことになる。

 安倍晋三は夫婦同姓の家族制度が必ずしも家族解体の防壁とはなっていないことから目を逸らし続けることになるだろう。夫婦別姓が家族解体の要因となるとする頭からの妄信から目覚めることもないだろう。

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安倍晋三の行政の私物化・政治関与による加計学園獣医学部認可であることを首相秘書官柳瀬唯夫の参考人招致答弁から証明

2019-10-07 11:39:59 | 政治
 2016年末に情報公開された加計学園に関わる今治市の文書のうち情報開示請求で一旦公開され、のちに非公開とされた2015年4月2日付の「復命書」と題した今治市の文書は企画財政部企画課長秋山直と課長補佐波頭健が今治市長菅良二宛に、〈平成27年4月2日(木)に、内閣府国家戦略特区(大学獣医学部)の協議のため東京に出張いたしましたが、その状況は次のとおりでありました。〉と書かれている。

 「相手方」と「当方」と書いてあるそれぞれの人物名は黒塗りにされている。つまり秘密を要する人物ということになる。さらに「復命書」の2枚目と3枚目と4枚目は全て黒塗り。「協議」の内容も秘密にする必要があったということであろう。

 「別紙」があって、そこには東京での訪問先が記載されていて、都道府県会館東京事務所と内閣府、首相官邸の3箇所となっている。この3箇所の用件共に「獣医師系養成大学の設置に関する協議」と記入してあるから、獣医師系養成大学の設置のための「協議」を面会目的としていたことが判明する。「復命書」も、面会目的を「内閣府国家戦略特区(大学獣医学部)の協議のため」としているから、当たり前のことだが、「復命書」と別紙は一体のものであることが分かる。
 
 3箇所の訪問場所と住所は「東京都千代田区平河町2-6-3都道府県会館」、「東京都千代田区永田町1丁目6-1内閣府」、「東京都千代田区永田町1丁目6-1首相官邸」となっている。

 重要な点であるから、改めて断っておくが、面会目的はあくまでも「獣医師系養成大学の設置に関する協議」、いわば設置に向けた何らかの働きかけであって、その一点であることを頭に入れておかなければならない。

 首相官邸での面会応対者は当時の首相秘書官柳瀬唯夫だと目されていて、それを質すために2017年7月24日の加計学園衆院予算委員会閉会中審査と翌日2017年7月25日参議院予算委員会閉会中審査に柳瀬唯夫を参考人招致して質疑が行われたが、柳瀬唯夫は面会を「記憶にない」の一点張りでかわし、安倍晋三自身も無関与を主張、野党は満足な追及はできずじまいとなった。

 安倍晋三「獣医学部新設について働きかけや依頼は全くなかったということをまず明確に申し上げたいと思います」

 安倍晋三(今治市獣医学部新設提案に関して加計学園に便宜を図るように指示したことはあるかの問いに)「私がこの獣医学部新設について指示をしたことは全くございません」

 清廉潔白の証明となっている。

 2018年4月9日、愛媛県がこれまでないとしてきた加計学園獣医学部新設関連の文書の存在を確認、詳しい事実関係は調査中であることをマスコミが報じた。翌2018年4月10日、「asahi.com」記事が愛媛県が調査中で、政府関係者に渡っていた文書をスクープし、その文書の題名は「獣医師養成系大学の設置に係る内閣府藤原次長・柳瀬首相秘書官との面談結果について」となっていると紹介、〈2015年4月、愛媛県や今治市の職員、学園幹部が柳瀬唯夫首相秘書官(当時)らと面会した際に愛媛県が作成したとされる記録文書が存在することがわかった。〉と報道。記事添付の画像には2015年4月2日に首相官邸で三者と面会した際の柳瀬唯夫の発言として「本件は、首相案件となっており」の文字が記されている。

 「首相案件」とは安倍晋三の指示を受けた加計学園獣医学部新設・認可に向けた動きであることを意味することになる。

 同2018年4月10日午後5時、中村時広愛媛県知事が県庁で緊急記者会見して、「文書そのものは県庁内には確認できていないが、会議に出席した担当職員一人一人に聞き取りを行った結果、報告するための備忘録として職員が書いた文書だと判明した」(NHK NEWS WEB)と発言。

 中村時広愛媛県知事は「asahi.com」記事が報じた愛媛県文書は2015年4月2日に今治市職員と共に愛媛県職員、さらに加計学園関係者が首相官邸を訪問した際の県への報告書作成のための備忘録であると出所根拠を明らかにしたことになる。つまり、ガセネタでもない、怪文書でもない、真正な文書だと証言したことになる。

 中村時広愛媛県知事は1ヶ月11日後の2018年5月21日に記者会見して、「参院の与野党合意で国会から関連する文書やメモをすべて出してほしいと要請があった。関連部署や個人ファイルを含めて探し、出てきたものを国会の要請に基づいて21日午後に提出した」と発言。それらの文書が次々に報道されることになったが、この提出は元首相秘書官柳瀬唯夫が2018年5月10日午前中の衆院予算委員会に、午後の参院予算委員会に参考人招致されて受けることになった追及には間に合わなかった。

 柳瀬唯夫はこれ以降、中村愛媛県知事や加計学園理事長加計孝太郎も含めた柳瀬唯夫本人の参考人招致にしても、証人喚問にしても、野党の求めに対して自民党が受け入れなかったために全面的に公表された愛媛県文書に基づいた新たな追及を免れることになった。

 例えば柳瀬唯夫は今治市職員が2015年4月2日に首相官邸を訪問した事実は記憶にないとしてきたが、2018年5月10日午前中の衆院予算委員会では加計学園関係者以外に大勢いて、今治市や愛媛県の職員が混じっていたのか記憶にない、さらに名刺交換しなかったのかと問われて、保存してある中には加計学園関係者以外の名刺はなかったからと暗に名刺交換はしなかったかのように答弁、追及を凌いでいるが、愛媛県がのちに柳瀬唯夫の名刺を載せた文書を公表、当然、面会者側からしたら首相秘書官相手に渡さずに貰うだけの名刺交換は儀礼上考えられないないから、愛媛県文書に基づいた新たな追及を免れることができたことはウソを剥がされる危険性を避けることができたことになる。

 但し前出の「asahi.com」記事を含めて、マスコミが5月10日の衆参予算委員会前にいくつかの愛媛県文書を掘り出していたから、これまでのように「記憶にありません」だけで済ますことができなくなって、掘り出された愛媛県文書で明らかになった新事実に関係する追及を受けることになった。

 マスコミ報道の愛媛県文書に対して中村時広愛媛県知事が出所根拠を明らかにし、文書の正当性を証明した2018年4月10日と同じ日に柳瀬唯夫はコメントを発表している。

 平成30年4月10日
 経済産業審議官 柳瀬唯夫

 朝日新聞等の報道に関しまして、以下のコメントをさせていただきます。

 国会でも答弁していますとおり、当時私は、総理秘書官として、日々多くの方々にお会いしていましたが、自分の記憶の限りでは、愛媛県や今治市の方にお会いしたことはありません。

 自分の総理秘書官時代には、国会でも答弁していますとおり、50年余り認められていなかった獣医学部の新設がどうなるかという制度論が議論されており、制度を具体的にどこに適用するかという段階ではありませんでした。実際、その後、獣医学部新設を追加規制改革項目として、取り上げるかどうかについては、いわゆる「石破四原則」の決定により、検討が開始されることになり、翌年の平成28年11月に、獣医学部新設が国家戦略特区の追加規制改革事項として、決定されたと認識しています。

 具体的な地点の選定手続きは、私が総理秘書官の職を離れてかなり時間が経ってから始まり、今治市が特区を活用して、獣医学部新設を行う規制改革が決まったのが平成29年1月だったと認識しています。

 したがって、報道にありますように、私が外部の方に対して、この案件が首相案件になっているといった具体的な話をすることはあり得ません。

 もし加計学園獣医学部認可が安倍晋三の行政の私物化・政治関与を受けた賜物――便宜供与であったなら、「獣医学部の新設がどうなるかという制度論が議論」されていた段階であろうとなかろうと関係ない。何しろ今治市は2007年から加計学園を事業主体とする「大学獣医学部設置による地域再生」を掲げて、今治市への構造改革特区指定を2014年までに14回とか、15回申請し続け、全て却下されたのだから、このような却下の流れを受けて裏側で「首相案件」としていたなら、「獣医学部新設を行う規制改革が決まったのが平成29年1月だった」といった表向きのスケジュールは意味をなさない。

 改めて「asahi.com」記事がスクープし、中村時広愛媛県知事が県職員が備忘録として書いたものだと証明した愛媛県文書の題名を見てみる。太字、蛍光ペン等の文飾は当方。

 題名は「獣医師養成系大学の設置に係る内閣府藤原次長・柳瀬首相秘書官との面談結果について」(27.4地域政策課)

 そして既に触れたように記事は、〈2015年4月、愛媛県や今治市の職員、学園幹部が柳瀬唯夫首相秘書官(当時)らと面会した際に愛媛県が作成したとされる記録文書が存在することがわかった。〉と解説しているから、2015年4月2日の首相官邸面会者がこれまで扱われてきたように今治市職員だけではなく、愛媛県職員、さらに加計学園関係者が加わっていたことが判明する。そして文書の題名が「獣医師養成系大学の設置に係る内閣府藤原次長・柳瀬首相秘書官との面談結果について」となっている以上、面会目的は「獣医師養成系大学の設置」に向けた何らかの働きかけであることを示していて、この面会目的は今治市文書「復命書」に記載されている面会目的と一致する。一致は当然であって、一致しないと奇妙なことになる。

 改めて触れるが、その文書には首相秘書官柳瀬唯夫の「主な発言」として、〈本件は、首相案件となっており〉との文言が記されている。この発言を柳瀬唯夫がどう否定しようとも、今治市と愛媛県、加計学園関係者の柳瀬唯夫に対する面会目的が「獣医師養成系大学の設置」に向けた何らかの働きかけであることに何ら変化を与えない。

 今治市が国家戦略特区活用目的に「国際水準の獣医学教育特区」を提案したのが2015年6月4日。その2ヶ月前の2015年4月2日の午前中に国家戦略特区を用いた規制改革の所管部署である内閣府地方創生推進室の次長である藤原豊と面会、さらに午後に首相官邸で首相秘書官の柳瀬唯夫と面会して、「獣医師養成系大学の設置」についての要望を行い、柳瀬唯夫からは「本件は、首相案件となっており、何とか実現したいと考えている」と鬼に金棒のお言葉を頂戴した。

 勿論、これらは今治市文書や文科省文書、そして愛媛県文書等に現れている事実であって、現実世界で実際に起きた出来事であることの証明を受けた事実でない。

 少なくとも2018年5月10日午前中の衆議院予算委員会柳瀬唯夫参考人招致の質疑を、午後に参議院予算委員会柳瀬唯夫参考人招致の質疑を迎えることになったとき、野党側はその時点までに自らの発掘によるか、あるいはマスコミ報道によって知り得た各文書に現れている数々の事実を頭に入れて臨んだはずだ。

 そしてそれらの事実に基づいて組み立てた加計学園獣医学部新設・認可に関わる全体像は全面的に「首相案件」であることの疑惑によって黒々と塗り込められていたに違いない。

 では、衆参の柳瀬唯夫参考人招致から柳瀬唯夫への面会目的が「獣医師養成系大学の設置」に向けた何らかの働きかけであることは動かし難い事実であることのみに絞って、質問と答弁を見てみる。そして最後に上記「asahi.com」 記事が伝えた愛媛県文書を愛媛県が参院に提出後に公表された画像からテキスト化して記載することにする。

 最初に衆議院予算委員会(2018年5月10日)

 自民党後藤茂「平成27年4月2日に愛媛県、今治市が官邸を訪問したことについて、愛媛県のメモが公表され、また、農水省も愛媛県の文書を保有するなどの事実が明らかになっております。4月10日、柳瀬元秘書官は、自分の記憶の限りでは、愛媛県や今治市の方とお会いしたことはないとコメントを出していますが、国民の中で、事実関係についての疑念は拭えておりません。

 4月2日に柳瀬元秘書官は愛媛県、今治市、加計学園関係者と会っていないのか、まず最初にしっかりと説明してください。

 柳瀬唯夫「御質問の点でございますけれども、加計学園の事務局の方から面会の申入れがありまして、4月ごろに、その後の報道などを拝見すると恐らくこれが4月2日だったのではないかと思いますけれども、加計学園の方、その関係者の方と面会をいたしました。

 その面会のときには、相手方は、10人近くの随分大勢でいらっしゃいました。そのうち、加計学園の事務局に同行されました獣医学の専門家の元東大教授とおっしゃっている方が、世界の獣医学教育の趨勢は感染症対策にシフトしているのに日本は全くついていっていないという、獣医学教育に関するお話を情熱的にとうとうとされた覚えがございます。あわせまして、加計学園の事務局の方から、国家戦略特区制度を活用する方向で検討しているというお話がありました。

 面会では、メーンテーブルの真ん中にいらっしゃいましたその元東大教授の方がほとんどお話しになっていて、それと、加計学園の事務局の方がお話しになっておりました。そのために、随行されていた方の中に愛媛県の方や今治市の方がいらしたかどうかという記録は残ってございません。

 ただ、その後の一連の報道や関係省庁による調査結果を拝見しますと、私は、今でも愛媛県や今治市の職員の方が同席者の中にいたかどうかはわかりませんけれども、十人近くの同席者の中で、メーンスピーカーでない方の随行者の中に愛媛県や今治市の方たちがいらっしゃったのかな、かもしれないなというふうに思います」
   
         ・・・・・・・・・・・・・・・

 柳瀬唯夫「(元東大教授の方から)獣医学部が過去50年余り新設されていないこと、四国には鳥インフルエンザなどの感染症対応の獣医が不足していること、過去、構造改革特区で今治市から何度も獣医学部新設を申請してきているが実現していないことというふうなお話があったと思います。その際に、従来の構造改革特区とは別に、新たに国家戦略特区制度が始まったという話も出たようにも思いますけれども、そのときには特に具体的な話にはならなかったように思います。

 このときに、50年以上も獣医学部が新設されていないというお話を伺いまして、強く違和感を覚えました。しかし、私自身、獣医学部新設については詳しくなかったので、基本的に、聞きおいたということだったと思います」

 柳瀬唯夫の答弁は加計学園関係者である元東大教授が、「獣医学部が過去50年余り新設されていないこと、四国には鳥インフルエンザなどの感染症対応の獣医が不足していること、過去、構造改革特区で今治市から何度も獣医学部新設を申請してきているが実現していないこと」という獣医学部新設に向けた加計学園が置かれている状況を説明しに来ただけという説明になっている。

 三者側の面会目的があくまでも「獣医師養成系大学の設置」に向けた何らかの働きかけである以上、状況説明だけで終わらずに、このような状況だからこそ、獣医師養成系大学の設置に何らかの助力をお願いしたいを結語として初めて面会目的は完成する。

 もし三者側が状況説明だけで終えて首相官邸を辞したとしたら、面会目的を果たさなかったことになるだけではなく、この衆院予算委開催前に表沙汰になった愛媛県文書はそこに現れている通りの内容とはならない。このことは今治市文書「復命書」についても言えることで、この矛盾を突かなければならないが、他の質問者も同じような質問をし、同じような答弁を柳瀬唯夫に許している。

 つまり面会目的を省いているところに柳瀬唯夫の答弁は虚偽そのものとなる。午後の参院予算委員会で立憲民主党の蓮舫が「面会は午後3時から始まって3時40分に関係者全員が退室している」と発言しているが、大の大人たちは面会の40分間を状況説明のみに費やして、面会目的に触れずじまい、柳瀬唯夫の方も、面会目的についての何らかの要請に耳を傾けもしなかったことになる。門前払いでない以上、特段の理由がない限り、そのような面会など存在はしない。

 立憲民主党長妻昭「柳瀬さんにお伺いいたしますけれども、2015年の4月2日の会談は認められましたが、それ以降、加計学園関係者にお会いしたことはありますか」

 柳瀬唯夫「総理に御一緒した際に、加計学園の方とお会いしたことがございました。その後、2015年の2月から3月頃に一度、官邸にアポイントをとって来られましたので、そのときにお話を伺いました。そして、同じ2015年年4月に、今話題になってございます面会をさせていただきました。それで、その後、今治市が戦略特区の提案を出すということをお話しに一度来られたという記憶がございます」

 長妻昭「そうすると、2015年4月2日以降は、今治市と加計学園に一度しか会っていないということですか」

 柳瀬唯夫「まず最初に、申し上げ忘れましたけれども、申しわけございませんが、私の国会の答弁をきっかけとして大変御迷惑をおかけして、申しわけございませんでした。これは、与党も野党にもどちらにも御迷惑をおかけしましたので、おわびをさせていただきたいと思います。
 
 その上で、お答えさせていただきます。

 その意味で、官邸でお会いした3回は覚えてございます。それ以外はちょっと覚えが、官邸でお会いした覚えは、それ以外はございません」

 長妻昭「そうすると、加計学園とは首相官邸で三回お会いをした、四月二日とその以前一回と四月二日以降も、三回、加計学園関係者とお会いしたと。官邸でですね」

 官邸以外でこれまで、期限を区切らずに、加計孝太郎理事長を含めて加計学園関係者とお会いしたのは、会食、ゴルフもあったのかもしれませんけれども、何回ぐらいですか。

 柳瀬唯夫「私が記憶していますのは、一度ゴールデンウイークに、総理の別荘が河口湖にございまして、そこにお供をしたときに、たくさん総理の御親族の方や御友人の方が集まっておられまして、そこで、総理の御自宅というか別荘でバーベキューなどを、これはいつもよくやってございますけれども、やったときに、加計学園の理事長さんと事務局の方がいたという記憶がございます。それと先ほど申しました官邸でお会いした三回と、私が総理秘書官時代、お会いした記憶は以上でございますけれども、それ以外にお会いしたかどうかは、ちょっと今覚えているものはございません。

 長妻昭「そうすると、加計学園関係者と会ったのは、官邸で三回、そして、官邸以外では一回しかないと。(柳瀬参考人「一回はお会いしています」と呼ぶ)一回は覚えている、それ以外もあるかもしれないけれども、覚えていないということだと思います。

 これは、多分、今、バーベキュー云々かんぬんという話は、2013年の5月6日、平成25年ですね、ゴルフのコンペではないかと思うんですけれども、ゴルフはされましたですか」

 柳瀬唯夫「その当時、私、ちょっと首を痛めてからはやらなくなりましたけれども、そのころ、お供をしたときには御一緒に、総理が大体友人の方たちとやっておられて、秘書官は緊急連絡要員ですので、その後のパーティーで追っかけていくということがありましたので、多分そのときも、バーベキューを前の日にやって、翌日ゴルフをやって、いつものように総理がやっておられて、そのパーティーの後ろの方で秘書官たちでついていったということだと思います」

 長妻昭「そうすると、ゴルフもされたということですね」

 柳瀬唯夫「多分、ちょっと首を痛める前だと思いますので、そのころであればしていたと思います」

 長妻昭「ゴルフの代金はどなたが払ったんですか」

          ・・・・・・・・・・・・・・・

 柳瀬唯夫「私、総理秘書官になりまして大変違和感を覚えましたのは、本当に外の話が聞けなくなる、だんだんもう、自分は世の中からどんどんずれているんじゃないかということを強く思いまして、できるだけ、外の方からアポイントがあれば時間が許す限りお会いするようにしていました。別に総理の親友だからということではございませんで、私は、都合がつく限り、どなたであってもアポイントのあった方はお会いしたというふうに覚えております」

 加計学園と何回会ったのかだとか、ゴルフを一緒にしたのかだとか、ゴルフの代金は誰が払っただとか、どうしようもない質問ばかりを続けて、愛媛県、今治市、加計学園側の面会目的は何だったのか、一言も尋ねていない。 

 柳瀬唯夫は二度「アポイント」という言葉を使っている。相手側がアポイントを取るについては先ずアポイントの目的(=面会目的)を伝えて、アポイントを受ける側の了承を得る手続きが必要となる。柳瀬唯夫は最初に加計学園の方が「2015年の2月から3月頃に一度、官邸にアポイントをとって来られましたので、そのときにお話を伺いました」と答弁している。当然、どのような面会目的を伝えられたのか、相手のどのような面会目的に応じて官邸で応対したのか聞いていたなら、これまでの状況説明に来ただけで、面会目的には触れない答弁の矛盾を突くことができたかもしれないが、そのまま遣り過している。

 長妻昭「安倍総理は、昨年の1月20日に加計学園の獣医学部新設の計画を知ったというふうにおっしゃっているんですね、国会で。でも、今の話を聞いていると、柳瀬さん本人は相当前に知っていますよね。

 初めて獣医学部新設の計画を加計学園が持っているというのを知ったのはいつでございますか」

 柳瀬唯夫「平成27年の2月から3月に官邸にお越しになったときにこの獣医学部の話をされていまして、そのときに、これは、このときは国家戦略特区ではなくて構造改革特区として今治市が申請しているということを加計学園の方がおっしゃっていましたので、その時点で、加計学園は獣医学部の新設というのを今治市と一緒にやろうと考えているんだなということを認識しておりました」

 長妻昭「そうすると、2015年ですよね、平成27年。2月か3月というと、日にちは覚えていないですか、いつ来たかというのは」

 柳瀬唯夫「申しわけございませんが、4月より1、2カ月前だったなというぐらいの印象しか残っておりません。済みません」

 長妻昭「私は、実は首相経験者にもお話を聞いたし、首相秘書官関係者にもお話を聞きました、これまで経験した方に。やはり首相と秘書官というのは一心同体で、目となり耳となって、いろいろな報告はまめにしている、勝手に外部の事業者と会うということは基本的にはないと。

 そうすると、柳瀬さんは2015年の2月か3月に加計学園の獣医学部新設の計画を知ったということで、総理は去年なんですよ。すごく、2年弱空白期間があるんですけれども、その間に何にも、総理大臣に一切、加計がこういう計画があるとか、加計と会ったことすら何にも、雑談も含めて何にも報告しなかったということですね」

 柳瀬唯夫「私、いろいろな方とお会いしましたけれども、きのうこういう会社の人とお会いしましたとか、こういう市町村の方とお会いしましたと総理に一々報告したことは、別にこれに限らず、ございませんし、私は、平成27年の8月の4日だったと思いますけれども、総理秘書官を退任していますので、今、長妻先生が29年とおっしゃいましたけれども、私は、4月2日から、あるいは2月から、3月からしても、その後、半年足らずで官邸を出ていますので、その後総理が、今、認識された年は29年の初めですか、その1年半ぐらいの間、総理がどこでどう認識されたかというのは、私にはちょっとわかりません」

 柳瀬唯夫は加計学園が2015年の2月か3月に首相官邸に来た際に「獣医学部の新設というのを今治市と一緒にやろうと考えているんだなということを認識した」と答弁している。長妻昭は「考えていることを認識させることだけが相手の面会目的であったのか」と柳瀬唯夫に問い質さなければならなかった。

 子供の使いでなければ、「考えていることをぜひ実現したい。つきましてはご助力をお願いします」までいってこそ、今治市文書の「復命書」別紙の面会目的を「獣医師系養成大学の設置に関する協議」と記載することの整合性を取ることができ、愛媛県文書の「獣医師養成系大学の設置に係る内閣府藤原次長・柳瀬首相秘書官との面談結果について」と面会目的を記載する正当性を得ることができる。

 そもそも首相官邸で柳瀬唯夫と面会するアポイントを取る際に面会目的を伝えているはずで、面会した以上、その面会目的に添った話し合いが行われなければならないが、その面会目的について一言も話し合わなかったと見せかける国会答弁は虚偽の事実によってしか成り立たせることはできない。

 午後の参院質疑で立憲民主党の蓮舫のみが面会目的を尋ねている。但し深く考えもせずに横道に逸れてしまった。

 蓮舫「何の案件でお会いをしたんですか」

 柳瀬唯夫そのときに具体的な案件の申入れがあったかどうか、ちょっと記憶にありませんけども、まあ上京されてお会いしたいということでしたのでお会いをしました」

 蓮舫「具体的な案件が分からないけれども、上京したのでお会いをしたい、つまり、首相秘書官である柳瀬さんと加計学園関係者はそれぐらい密接な関係ということでしょうか」

 柳瀬唯夫「元々、総理の別荘のバーベキューでお会いして、まあ面識はありました」

 それから、私は総理秘書官時代、まあちょっと相当時間タイトでありましたが、時間がある限りは外の方のアポイント、申入れはお会いするようにしていましたし、私の記憶ではアポイントの申入れをいただいてお断りをしたことはなかったと思います」

 蓮舫「このバーベキュー等でお会いをした、どなたから紹介されたんですか、加計理事長、学園関係者は」

 柳瀬唯夫「これはですね、総理はよく河口湖の別荘に行かれて、御親族の方や御友人らをいっぱい集めてバーベキューをやるということはよくやっておられました。そのときに、秘書官も緊急時対応でいつも何人か御一緒をしてございました。

 したがって、御紹介いただくとかいうそういう場ではございませんで、わあっとそこのお庭に総理の御親族やお友達の方がいて、秘書官がいて、まあ総理の、政府の何人かの方がいてと、そういう場で何十人もいるところでお会いをしたということで、特に誰かに紹介されたわけではございません」

 蓮舫「つまり、全く紹介されていなくて、何十人もいる、たくさんいる中でお会いをしたその人からアポイントの連絡が来て、案件も分からないで、それでお会いをする間柄なんですか」

 柳瀬唯夫「先ほど申し上げましたように、私は基本的にアポイントの申入れがあれば、政府の外の人、お会いするようにしていましたので、まあこれも例外じゃないということでございます」

 蓮舫「3月24日の面会、先ほどあなたは4月2日に学園関係者側から国家戦略特区という提案があったと言いましたが、3月の会合時点で既にあなたから加計学園関係者に国家戦略特区でいこうと助言していませんか」

 柳瀬唯夫「そこの具体的なやり取り、記憶がクリアではありませんけども、その三月の、その最初にお会いしたときも、構造改革特区で何度もやっているけどうまくいかないという話がございまして、そのときにはもう国家戦略特区制度がスタートしていましたし、安倍政権として大事な柱でございましたので、それは、当時、その戦略特区をPRするというのは……」

 蓮舫「3月に言いましたか」

 柳瀬唯夫「ええ。それで、そのときに国家戦略特区の話になったと思います。ただ、そのときどこまで具体的な話になったかは、そこはよく分かりません」

 蓮舫「つまり、もうそこで既にもう国家戦略特区の話題が出たら、その後の4月2日のアポイントのときに、国家戦略特区でいくと事業者ではないから愛媛
県、今治市も行った方がいいだろうと、それを呼ぶように加計学園に提案していませんか」

 柳瀬唯夫「ちょっと、私の方から呼ぶようにと言った記憶はございませんけども」

 蓮舫は「何の案件でお会いをしたんですか」と面会目的を尋ねた。対して柳瀬唯夫は「そのときに具体的な案件の申入れがあったかどうか、ちょっと記憶にありませんけども、まあ上京されてお会いしたいということでしたのでお会いをしました」と答弁。それに応えて蓮舫は「具体的な案件が分からないけれども、上京したのでお会いをしたい、つまり、首相秘書官である柳瀬さんと加計学園関係者はそれぐらい密接な関係ということでしょうか」といとも簡単に横道に逸れてしまった。

 既に明らかになっている今治市文書と愛媛県文書には面会目的が「獣医師系養成大学の設置」についてのことだと記載されていることを踏まえていたなら、「上京してお会いしたいということ」だけで面会に応じたとしたら、「例の件で」という言葉が最初にあって、「例の件」が何なのか、その意味を両者間が共通認識としていることが条件となる。

 当然、「例の件」とは「獣医師系養成大学の設置」に関してのことだとしなければならない。蓮舫としたら、「今治市文書にしても愛媛県文書にしても『案件』は『獣医師系養成大学の設置』となっているのだから、その案件での面会だったはずだ」と追及しなければならなかった。

 今治市文書と愛媛県文書が面会目的を記載しているのだから、それを根拠に同じ面会目的を柳瀬唯夫の口から引き出さない限り、「3月の会合時点で既にあなたから加計学園関係者に国家戦略特区でいこうと助言していませんか」とか、「つまり、もうそこで既にもう国家戦略特区の話題が出たら、その後の4月2日のアポイントのときに、国家戦略特区でいくと事業者ではないから愛媛県、今治市も行った方がいいだろうと、それを呼ぶように加計学園に提案していませんか」と尋ねようと、素直に「ハイ、そうです」と答えるはずはない。

 引き出したとき初めて、面会目的に添う会話が交わされたはずだと追及できる確かな手がかりを手にすることができる。

 柳瀬唯夫は一貫して面会目的に触れるのを避ける答弁か、面会目的とならないような言葉を並べる誤魔化しの答弁に終始した。面会目的を明らかにしたなら、交わされた会話の中身までが知れることになるからなのは断るまでもない。このことだけを取り上げても、加計学園獣医学部新設と認可が安倍晋三の行政の私物化・政治関与の産物であることを証明することになる。

 でなければ、面会目的を隠す必要は何もない。この証明を元にした場合、「asahi.com」記事が伝えた以下の愛媛県文書は題名に現れている面会目的と内容が一致していて、全て事実を記していると見ることができる。

 「獣医師養成系大学の設置に係る内閣府藤原次長・柳瀬首相秘書官との面談結果について」

                       27.4
                      地域政策課   
                    
 《藤原地方創生推進室次長の主な発言(内閣府)11:30》

  ・要請の内容は総理官邸から聞いており、県・今治市が
   これまで構造改革特区申請をされてきたことも承知。
  ・政府としてきちんと対応をしていかなければならないと考
   えており、県・市・学園と国が知恵を出し合って進めてい
   きたい。
  ・そのため、これまでの事務的な構造改革特区とは異なり、
   国家戦略特区の手法を使って突破口を開きたい。
  ・国家戦略特区は、自治体等から全国レベルの制度改革提供
   案を受けて国が地域を指定するものであるが、風穴を開
   けた自治体が有利。仮にその指定を受けられなくても構
   造改革特区などの別の規制緩和により、要望を実現可能。
  ・今年度から構造改革特区と国家戦略特区を一体的に取り
   扱うこととし、年2回の募集を予定しており、遅くとも
   5月の連休明けには1回目の募集を開始。
  ・ついては、ポイントを絞ってインパクトのある形で、2、
   3枚程度の提案書案を作成いただき、早い段階で相談さ
   れたい。
  ・提案内容は獣医大学だけでいくか、関連分野も含める
   かは、県・市の判断によるが、幅広い方が熱意を感じる。
  ・獣医師会等と真っ向勝負にならないよう、既存の獣医学
   部と異なる特徴、たとえば、公務員獣医師や産業獣医師の
   養成などのカリキュラムの工夫や、養殖魚病対応に加え、
   ペット獣医師を増やさないような卒後の見通しなどもし
   っかり書き込んでほしい。
  ・かなりチャンスがあると思っていただいてよい。
  ・新潟市の国家戦略特区の獣医学部の現状は、トーンが少
   下がってきており、具体性にかけていると感じている。

 《柳瀬首相秘書官の主な発言(総理官邸) 15:00》
 
 ・本県は、首相案件となっており、内閣府藤原次長の公式
  のヒアリングを受けるという形で進めて頂きたい。
 ・国家戦略特区でいくか、構造改革特区でいくかはテクニ
  カルな問題であり、要望が実現するのであればどちらで
  もいいと思う。現在、国家戦略特区の方が勢いがある。
 ・いずれにしても、自治体がやらされモードではなく、死
  ぬほど実現したいという意識を持つことが最低条件。
 ・四国の獣医大学の空白地帯が解消されることは、鳥イン
  フル対策や公衆衛生獣医師確保の観点から、農水省・厚
  労省も歓迎する方向。
 ・獣医師会には、直接対決を避けるよう、既存の獣医大学
  との差別化を図った特徴を出すことや卒後の見通しなど
  を明らかにするとともに、自治体等の熱意を見せて仕方
  がないと思わせるようにするのがいい。
 ・加計学園から、先日安倍総理と同学園理事長が会食した
  際に、下村文科大臣が加計学園は課題への回答もなくけ
  しからんといっているとの発言があったとのことであり、
  その対応についての意見を求めたところ、今後、策定す
  る国家戦略特区の提案書と併せて課題への取組状況を整
  理して、文科省に説明するのがよいとの助言があった。

  ついては、県としては、今治市や加計学園と十分協議を行
  い、内閣府とも相談しながら、国家戦略特区の申請に向けた
  準備を進めることとしたい。 
   また、これと併行して、加計学園が構想する事業費や地元
  自治体への支援要請額を見極めるとともに、今治市新都市への
  中核施設整備の経緯も踏まえながら、経費負担のあり方につ
  いて十分に検討を行うこととしたい。  

 

コメント
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