2017年3月24日の参議院予算委で共産党の辰巳孝太郎が質問に立ち、国交省航空局長の佐藤善信に対して森友学園に小学校建設用地として格安で売却した国有地に国土交通省大阪航空局の見積リ通りのゴミが果たして地中に埋まっていたのか問い質した。
大阪航空局は不動産鑑定評価額9億3200万円の国有地に対してゴミの撤去・処理費用を8億1900万円と見積り、その価格を差し引いた約1億3400万で森友学院に売却している。
この質問に関しては2017年3月25日付「しんぶん赤旗」が纏め記事を書いている。
当方は質疑のあらましを取り上げて、おかしな点を指摘してみたいと思う。余分な発言は省いている。
辰巳孝太郎「9.9メートルまでゴミが存在するという根拠は何か」
佐藤善信「本件土地の北側や西側については昭和40年代初頭まで沼や池があり、その後昭和42年から43年にかけて埋め立てがなされ、急速に宅地化が進んでいることが確認されているほか、当時は大幅に規制が強化された昭和45年の廃棄物処理法の施行前であり、廃材等の不法投棄などにより、宅地化の過程、あるいはそれ以前から地下の深い層から浅い層にかけて廃材等を含む相当量のゴミが蓄積することになったと考えております。
以上のことから、地下埋設物の撤去・処理費の見積りに当り、杭掘削個所については9.9メートルまでの深さまで廃材等が存在していると設定して見積りを行うことが合理的であると判断したものであります」
まさに役人の答弁である。沼や池があって、不法投棄が多く行われた。沼や池の広さがどのくらいの広さだったか、ネットで調べたが分からなかったが、どのくらいの広さであったとしても、その広さはゴミが水平方向に拡散している範囲の根拠にはなるが、9.9メートルまでの深さにまでゴミが到達している根拠とはならない。
根拠とするには沼や池がどのくらいの深さがあったのか、その深度を提示しなければならない。9.9メートルはビルの1階を2.5メートルとすると、4階の高さ、3メートルとすると、3階以上の高さは優にあることになる。
日本人成人男性の平均身長は170センチ弱、6人分ぐらいの深さがあることになる。
街中にある沼や池でそれ程までの深さがあるそれらはどれくらい存在するのだろうか。
だが、沼や池の深さを提示しないままに「9.9メートルまでの深さまで廃材等が存在していると設定して見積りを行うことが合理的であると判断した」と正当性を言い立てている。
辰巳孝太郎「当初出てこなかった資料で途中から出てきた資料を読み解くと、有益費の分として2010年の調査で地下3メートルまでの部分がコンクリートや廃材等、約1万7000トンがあるだろうという記述がある。
撤去すると、有益費で返されるものだが、実は全て撤去されずにそのうち720トンしか撤去されていない。それは事実か」
佐藤善信「有益費の工事に於きましてはコンクリートガラなどを撤去したわけでございます。廃材等は残っているというふうに認識しております」
2017年2月17日の衆院予算委員会で民進党の福島伸享議員が森友学園国有地売却に関わる追及のために使用し、ネット上に配布した資料の年譜を見ると、2009年~2010年、土壌汚染(鉛・ヒ素)、廃材・コンクリートガラ等の地下埋設物が発覚となっていて、2015年7月29日~12月15日、森友学園による土壌改良、埋設物撤去工事等の実施となっている。
この工事に関しては1億3176万円の有益費(目的物の価値の増加のために支出された費用)が国から森友学園に返還されている。
いずれにしても地下3メートルまではコンクリートガラ等を撤去する工事は行ったが、その際、廃材等は残しておいた。
ここに幾つかの疑問が生じる、なぜコンクリートガラだけを撤去したのか。なぜ廃材等は撤去しなかったのか。
コンクリートガラを撤去するについては重機で掘削する。掘削ついでに廃材も重機のバケットに紛れ込んでくる。コンクリートガラだけを撤去したのなら、ガラと廃材をわざわざ分別して、廃材だけを埋め戻したことになる。廃材まで撤去・処理せずに何のためにわざわざ埋め戻したのだろうか。
考えられる合理的な理由は廃材を撤去する必要がなかったからとしなければならない。
あるいは後で杭打ちの際、スクリューに絡まってゴミが出たとする証拠を作り出す必要から埋め戻した。
小学校建設スペースの基礎コンクリートを打つ前の3メートル程の掘削時に廃材を拾い出してついでに撤去する予定だっというのは理由にはならない。廃材を埋め戻す手間を余計に掛けたことになるからだ。
このコンクリートガラだけを撤去し、廃材等は撤去しなかったことの“なぜ”に食いつかなければならないはずだが、辰巳孝太郎くん、気づかなかったようだ。
辰巳孝太郎「そういうことなんです。当初あると言われていたコンクリートガラ、廃材のうち、コンクリートガラだけを取り除いた。これが720トンで、つまり当初言われていた16分の1ぐらいしか取り出していないですから、まだ残っているわけなんですよ。
そこで聞きますが、9.9メートルの杭打ち工事の過程でゴミが出てきたというこれ3メートルのところまで、十分に残っていながら、そういう廃材が(杭打ち機の)スクリューに絡まったとか仰っていますけど、その可能性は否定できない。できるかできないかだけお答えください」
佐藤善信「この論点は要は地下埋設物の撤去・処理費用見積もりに当り、杭掘削工事の深さを9.9メートルと設定したことが合理的かどうかということに帰着するわけでありますが、それは先程私が答弁した理由によりまして地下埋設物が撤去・処理費用見積もりに当り杭掘削個所については9.9メートルまで廃材等が存在すると設定して見積もりを行うことが合理的だと判断したものであります」
3メートル以下9.9メートルまでの深さにゴミが果たして存在しているのかどうかを問い質しているのに対して杭の深さが9.9メートルだから、その深さまでゴミが存在すると設定したと、ゴミの存在を前提にしている。
この合理的でも何でもない答弁に質疑が中断することになった。答弁のやり直し。
佐藤善信「先程の答弁の中にもありましたが、そもそも9.9メートルという深い個所から実際にゴミ等が出ている様子を職員が直接確認するのは困難であるというふうに認識しております。
そう認識しておりますから、工事関係者からヒアリングであるとか、掘削工事実施中の工事写真であるとか、本件土地の(少し聞き取れない)職員による現場確認であるとか出来る限りのチェックを行った結果、杭掘削個所に於きましては9.9メートルの深さまで廃材等が混在していると設定して見積もりを行うことが合理的であると判断したわけであります」
辰巳孝太郎「なぜこれを答えることができないかということなんですよ。元々置いてあるんですよ。廃材を3メートルまでのところにスクリューでやれば、そこのところに引っかかってそのまま9.9メートルのところまで行ったかもしれません。
(スクリューを)持ち上げて出したら、ゴミまで出てきたと。それが3.3メートルまでのところに廃材、ゴミがあることの可能性は否定できないでしょ?」
辰巳孝太郎が3.3メートルまでのところにあった廃材やゴミが杭打ち機のスクリューに絡まって出てきたとしていることはあくまでも可能性に対する予測であって、事実として実証することはできない。
このような質問では海千山千の役人には太刀打ち出来ない。
そこで辰巳孝太郎は森友学園側が2014年12月に小学校建設工事のために行った「地盤調査報告書」に基づいて、その際のボーリング調査で明らかになった地質分析を国立研究開発法人「産業技術総合研究所」にメールで依頼、その結果を持ち出して追及している。
辰巳孝太郎「ボーリングデータからは二つ(2個所)のポーリングとも、深度3.1メートルまではビニール片や木片が大量に入っているという記載があリ、恐らく3メートル程度までは人工的に埋めた埋設土からなり、それより深い部分は天然の堆積物と思われると、3メートル以下は人の手が加わっていない土質であると言って頂きました。
メールだけでは心配だから、私のところに来て頂いてくださいました。この研究所の研究企画室長理学博士のことですが、その方に私は『深度10メートル当たりまでのボーリング調査でゴミが出てくることはありますか』と聞きますと、『あり得ません』と答えて頂きました。
専門家の皆さんはこのボーリング調査を見ると、9.9メートル辺りの深さでゴミは出ないのは常識的な話だと、こういうふうに答えていただいております」
辰巳孝太郎は国交大臣公明党の石井一に8億余の撤去・処分費用の見積りは過大だと思わないかと尋ねた。
石井一「今ご紹介頂きましたけども、このボーリングっていうのは、2箇所ですよね。全体8千平米(へいべい)の土地、尚且つ今回は地下埋設物があると認識したのは5千平米です。
その中の2個所、それも片や6.6センチ(ボーリングの穴の直径)、方や11.6センチ、そういうところでですね、5千平米以上の地層を全部代表するのはこれは極めて困難だと思います。
実際にそういう形で色んなボーリングデーターを見ると、地域によって地層が全然違います。従いまして委員がお示ししたもので、9.9メートルでゴミはないと言うのは無理だと思っています」
時間切れとなり、辰巳孝太郎は引き続いて追及することを約束して終了となる。
石井一は天才的な薄汚いゴマカシをやらかしている。2個所のボーリングで「5千平米以上の地層を全部代表するのはこれは極めて困難だ」と抜かしている。
だが、地上から3メートル以下9.9メートルまでのは2個所のボーリング調査でゴミが大量に存在すると見做して、全体の撤去・処理費用を8億1900万円と見積ったのである。根拠が2箇所のボーリング調査以外にないとしたら、同じ2箇所のボーリング調査から地質分析して、人の手が加わっていない天然の堆積物だと、5千平米以上の地層を全部代表してどこが悪い。
にも関わらず、いわば2箇所のボーリング調査からゴミの存在を推定していながら、薄汚い石井一は「色んなボーリングデーターを見ると」と他のボーリングデータまで持ち出して、「地域によって地層が全然違います」と根拠から外れたことを言っているが、地下3メートル近辺まで地下埋設物が埋まっているとしているのはそこが元沼であって、コンクリートガラやゴミ、廃材等が不法投棄されていたからで、要するに沼の水深は3メートル程度だったということなのだろう。
それ以下、地表3メートルから杭深度9.9メートルまでの間は辰巳孝太郎の「産業技術総合研究所」への調査依頼によって地表の風化によって生成された砕屑 (さいせつ) 物、火山噴出物、生物遺骸などが海底や地表に堆積した「天然の堆積物」だとしている以上、例え「地域によって地層が全然違」っていたとしても、天然の堆積物であることに変わりはないから、ゴミが存在する根拠とはなり得ない。
このことは「堆積物」という言葉と「地層」という言葉の違いによっても証明できる。ネットで調べたのだが、「地層」とは「平板状に広がって土砂等が堆積してでき堆積岩を言う」とあり、「堆積物」とは、「礫や砂、泥などの岩石片や鉱物、生物遺骸、火山噴出物、水中の溶解物などが、水中ないし大気中の特定の場所に積み重なったもので、一般には岩石化していないルーズな状態の土砂であり、堆積物が続成作用によって固結した岩石を堆積岩と言う」と解説されている。
要するに「産業技術総合研究所」の見立てでは小学校建設用地は岩石化している地層一歩手前の岩石化していない堆積層であって、そうであっても、そこに長い年月の経過が存在する以上、人間の手によって捨てられたゴミなどは存在することはなく、土と共にコンクリートガラやゴミ、廃材等が埋まっている層とは非なるものであると言うことである。
また沼や池はそこに如何なる不法投棄物が埋まっていたとしても、地層とも言わないし、天然の堆積物でできた堆積層とも言わない。
にも関わらず、石井一は地層の違いを言うことで、地層に存在するはずはない人間の手によって作り出されたゴミが存在するかのように巧妙なペテンを働かせた。
石井一がこのようにウソを付いてまでしてペテンを働かせなければならないのは地下3m以下はゴミは存在しなかった何よりの証明以外の何ものでもない。
こういった薄汚い政治家が国交省を務めている。
国側は役人答弁で巧妙・狡猾にゴマカシているが、杭打ちも9.9メートルの深さまで掘削してゴミを取り除いてからではなく、掘削せずにそのまま杭打ち工事を行っている。ゴミが役人たちが言っていることと違って存在しないままゴミの撤去・処理費用を8億1900万円と見積ったとなれば、そこに政治家の関与がなければ、役人たちのみでは行ない得ない8億1900万円の値引きと言うことでなければならない。
8億1900万円と言うことなら、そこら辺のペイペイ政治家ではなし得ない金額で、安倍晋三級の政治家の口利きを想定しないわけにはいかない。