菅義偉の無症状感染者関係の危機管理欠如がコロナ対策を失敗に導き、ワクチン接種のリスクコミュニケーション欠如が信頼喪失を招く

2021-03-29 10:54:05 | 政治
 緊急事態宣言は首都圏を除く6府県に対して2021年2月28日に解除決定。但し特に感染者が多かった首都圏1都3県の緊急事態宣言はさらに2月8日から3月7日までの1カ月延長されることになった。我が日本の首相菅義偉は2月28日の解除決定を伝える2月26日の「記者会見」で次のように勇ましく宣言した。

 菅義偉「今後改めて、今申し上げました1都3県については解除の判断を行いますが、3月7日に全てが解除できるように、正に、感染拡大防止の、飲食の時短を始めとして、やるべきことを徹底して行っていきたい、このように思います。政府としてはあらゆることを考えておりますが、今大事なのは、やはり、感染拡大防止を徹底して行って、3月7日、全国で解除することが大事だと思います」

 「やるべきことを徹底して行っ」た結果、2021年3月5日の「記者会見」で次のように述べることになった。

 菅義偉「先ほど新型コロナ対策本部を開催し、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県において緊急事態宣言を2週間延長し、3月21日までにすることを決定いたしました」

 言っていることとやっていることが異なる有言不実行は、当然、国民の信頼を獲ち得ない。

 この記者会見でワクチンの効果についてある情報が伝えられる。

 岩上安身(フリーランサーIWJ代表)「ワクチンだけが全ての決め手になる。何かワクチン万能論のような感じが世の中にあふれかえっているわけですけれども、しかし、実際にはワクチンには発症や重症化の予防効果はあっても、感染そのものの予防効果はないということが明らかになっております。

 これは、2月24日の(記者会見で)田村厚労大臣が私どもIWJの記者の質問に答えて、感染予防が十分なエビデンスはないとはっきり明言されておりまして、この頃、ファイザーのワクチンがイスラエル等で感染予防効果があったというロイター等の報道はありますけれども、査読前の論文です。これを確認しました、厚労省にです。厚労省の担当課は、この件について、国としての姿勢として、感染予防効果はないという姿勢を、これらの報道で改めるつもりはないというふうにはっきりとおっしゃっています。

 感染予防効果がないということは、実は、発症しない人を増やすということであって、感染しても発症しない、本人が気付かない、無症状者を増やすに等しいことであって、かえって無症状者による市中感染を増やす可能性があります。ということは、これは同時に、無症状者に対する無差別のPCR検査を大量に行っていく必要がある。片方でワクチン、片方でPCR検査の社会的検査を無差別に拡充するということをやると。そこで陽性者を洗い出していくということをやっていって、初めて成り立つものではないかなというふうに思います

   ・・・・・・

 PCR検査の拡充について質問させていただいたのですけれども、全量検査は必要ないと当時、総理はおっしゃったのですね。その御認識は変わらないでしょうか」

 要するに岩上安身氏はワクチンには感染予防効果があるわけではない。発症予防効果と重症化予防効果があるのみだから、感染しても、発症しないままに、重症化しないままにさらに感染を広げていく可能性は否定できない。その過程で予防効果が常に絶対と言うことはないから、中には発症し、重症化する例も出てくる。当然、ワクチンを接種したから、全てオーケーというわけではなく、ワクチン接種の過程や接種後に無症状感染者が出るのを少しでも抑え込むために現在から無差別のPCR検査を大量に行って、無症状感染者を割り出して、隔離、陰性に持っていく必要があると主張していることになる。

 それが「片方でワクチン、片方でPCR検査の社会的検査を無差別に拡充する」と言うことになる。

 岩上安身氏が「全量検査は必要ないと当時、総理はおっしゃったのですね」と指摘していることは2020年12月25日「記者会見」で同じ岩上安身氏が「中国が全量検査を徹底して、感染を抑え込み、経済を回復させた中国と比べて日本は全量検査に熱心ではない」と質問したのに対して菅義偉が「全国、全員ということは、私は、色んなところに相談しますけど、そうした必要性はない。こういうふうに思っています」と発言したことを指す。

 野党はPCR検査の拡充を一貫して要求していたが、政府は同じく一貫してその必要性を認めてこなかったが、菅義偉のこの発言にもその姿勢が如実に現れている。

 岩上安身氏が上記2021年3月5日の記者会見で社会的PCR検査の無差別な拡充を求めたのに対して菅義偉と新型コロナウイルス感染症対策分科会会長の尾身茂のそれぞれの答弁を取り上げてみる。

 菅義偉「私自身もワクチンは発症、重症の効果がある、このことの理解を示しています。発症と重症化にはワクチンは効果がある、こういう中であります。ですから、一日も早く国民の皆さんにワクチン接種をしたい。それと同時に、検査の充実、これも必要だと思います。先ほど私、最初の一連の挨拶の中で高齢者施設に対して集中的に今月中に3万か所やるということを申し上げました。さらに、繁華街でモニタリング検査を実施する。こういうこともこれから大都市でやっていきたい、このように思っています」

 菅義偉自身もワクチンは発症予防と重症化予防には効果があると保証している。裏を返すと、感染予防効果が絶対的にあるわけではないとしていることになる。その上で感染防止対策として3万か所の高齢者施設に対して集中的にPCR検査を行う。繁華街でPCR検査を通した感染状況のモニタリング検査を実施する。この二つの実施共に感染が判明する前の検査であって、当然、無感染者であるか、感染はしているものの、無症状者であるかの判別を行ない、後者の場合は2次感染、3次感染を防ぐために病院等への隔離に持っていくということになる。

 勿論、菅政権として今まではしてこなかったこのPCR検査の拡充は既に触れたようにワクチン接種の過程や接種後に無症状感染者が出るを少しでも防ぐために無症状感染者の数を少しでも減らしていくための方策であろう。

 この姿勢は野党のPCR検査拡充の要求に一貫して消極的であった菅政権の180度の政策転換を示すことになる。180度の政策転換は前の政策が間違っていたことを意味する。2020年10月29日の衆議院本会議代表質問で共産党委員長志位和夫が「無症状の感染者を把握、保護することを含めた積極的検査への戦略的転換を宣言し、実行に移すべきではありませんか」と求めたのに対して菅義偉は「医療機関や高齢者施設等に勤務する方や入院、入所者、さらには感染者の濃厚接触者等に対しては、既に無症状であっても行政検査の対象とするなど、積極的な検査を実施しているところです」と答弁。要するに医療機関や高齢者施設等で感染が確認された場合はその濃厚接触者も含めて、つまり全員、無症状であっても行政検査の対象とするが、感染が確認されない場合は行政検査の対象とはしないと答えている。

 言っていることはPCR検査の実施は感染して症状が出るまでは待つという姿勢でいたことになる。医療機関や高齢者施設、あるいは劇場や飲食店、家庭等の人が集まる閉鎖空間では感染者が出れば、その濃厚接触者は割り出し可能となって、PCR検査を実施、陰性のみを病院等に隔離していけば、概ね事は片付いていく。だが、最初にコロナウイルスを持ち込んだ人間は感染していると思っていなかったから、持ち込んだのであり、閉鎖空間での濃厚接触者扱いとなって、感染経路不明者とは扱われにくくなる。つまり発症時間に個人差があるから、感染が誰から始まったのか把握しにくく、逆に感染経路不明という事態が起こりやすくなる。

 さらに現実には人が集まる閉鎖空間での感染ばかりとは限らず、東京都の殆どの場合、感染者の半数か半数近くを占めてきた感染経路不明者は誰から感染したのか分からない、どこから感染したのか分からないということからの感染経路不明ということなのだから、その大半はコロナウイルスに感染はしているものの無症状の感染者(無症候病原体保有者)からの市中感染と見るのが妥当で、だから、感染経路不明に繋がっていくという危機管理意識を当初から持っていなければならなかったはずだ。だからこその野党側の無症状感染者に対するPCR検査拡充の要求であった。

 菅政権が野党の要求に応じてこなかったのは感染経路不明者の多くは無症状の感染者からの感染の可能性を疑う危機管理に立つことができなかったからだろう。そしてワクチン接種という段階に至ってから、初めてこの手の危機管理の考え方を採用することになった。ワクチンが発症予防効果と重症化予防効果はあるものの、感染そのものの予防効果は必ずしも保証するものではないというその性格上、感染があった場合、無症状の感染者からの感染と限定せざるを得なくなり、今からPCR検査等を通して無症状感染者を減らしていく必要に迫られた。

 そのため政策転換であるはずだが、感染経路不明者の大半が無症状の感染者からの感染の可能性を疑う危機管理に立ち、PCR検査を通して市中に放たれている無症状感染者を割り出す政策を怠ってきたことのこの場に至ってのPCR検査の拡充であって、従来からのPCR検査体制の失敗を物語ることになる。

 尾身茂「今、おっしゃる重症化あるいは発症化予防。これが非常に重要で、しかし、それだからといって、実は仮に、よく分かりませんけれども、普通の常識を使えば、日本の(ワクチン接種の)候補者になる人々の恐らく90パーセントが接種することはないでしょうね。国民の7割が仮に打ったとしますよね。子供さんとかは別に。そうなっても、実は、私は、時々のクラスターはそれからも起きると思います。なぜならば、ワクチンの感染力防止ということと同時に30パーセントは打っていないわけですよね」

 国民の7割がワクチンを接種すると予想。30パーセントは接種しない。この30パーセント内で感染と被感染が繰り返されたなら、当然、クラスター発生の可能性も出てくる。但し30パーセント内での感染だけとは限らない。ワクチン接種の7割内でも無症状感染者を出す可能性は否定できないのだから、7割の中の無症状感染者から無接種の30%に対しての被感染の可能性も否定できず、東京都の場合、感染確認のうち約20%は無症状だということだから、無接種の30%に対して無症状の約20%はほぼ維持するかもしれないが、ワクチンを接種していない分、残りの80%分から重症患者を出す少なからずの可能性にしても否定できないことになる。

 岩上安身氏が取り上げた2月24日の田村憲久の記者会見での記者とのワクチンの感染予防、発症予防、重症化予防についての遣り取りを見てみる。

 記者「昨年10月2日の第17回厚生科学審議会予防接種ワクチン分科会の『ワクチンの有効性・安全性等副反応の捉え方について』という資料の中で、ワクチンの効果についてというページがございます。接種した人は感染しないという効果については実証が難しいと書かれています。ある意味心配な記述ですが、その後これについての見解の変化ということはございますでしょうか」

 田村憲久「感染予防の効果があるかということですかね」

 記者「そうです」

 田村憲久「これは今のところ、世界中で、感染予防効果があるということ自体が認められているということではない、と我々は理解しています。実際例えばファイザーのワクチンに関しても、我が国においては発症予防に関しては確認できていると。

 重症化予防に関しては重症者の事例が少ないため確認はできていないのですが、ただ重症化予防というよりは重症者が減るかということから考えると、発症者が減れば重症化しないわけですから、発症者が減った分は重症者が減るのだろうと思っております。

 ただ、感染予防という意味からすると、これは十分にエビデンスがまだないので、そういう意味では我々はこれを確認できておりません。あるかないかが分からない」

 かくこの通り発症予防と重症化予防についてはそれなりの効果はあるはずだとし、感染予防については「十分にエビデンスがまだない」

 記者はコロナワクチンの予防効果についての情報根拠を2020年10月2日の「第17回厚生科学審議会予防接種ワクチン分科会」の「資料3 ワクチンの有効性・安全性と副反応のとらえ方について」に置いている。どんな記述になっているか見てみる。

 「新型コロナウイルス感染症のワクチンの接種に関する分科会の現時点での考え方(一部抜粋)新型コロナウイルス感染症対策分科会」(2020年8月21日)

 〈新型コロナワクチンの治験に関する論文報告(概説)

 誘導された免疫による発症予防効果や重症化予防効果の有無、免疫の持続期間については、まだ評価されておらず不明。

※ 自然感染においては、抗体が比較的早期に低下するとの情報がある。〉

 〈一般的に、呼吸器ウイルス感染症に対するワクチンで、感染予防効果を十分に有するものが実用化された例はなかった。従って、ベネフィットとして、重症化予防効果は期待されるが、発症予防効果や感染予防効果については今後の評価を待つ必要がある。しかし、今から、安全性と共に有効性が妥当なワクチンが開発されたときに備えて準備を進めていく必要がある。〉

 結論は、〈誘導された免疫による発症予防効果や重症化予防効果の有無、免疫の持続期間については、まだ評価されておらず不明〉であり、〈発症予防効果や感染予防効果については今後の評価を待つ必要がある。〉とどちらも「不明」の評価を下している。

 だが、この分科会の「議事録」では次のような発言となっている。

 林予防接種室長「ワクチンが開発されたときに効果があるかどうかが分かるのは、発症予防、重症化予防という観点の効果だと考えます。感染予防の効果については、まず治験を行っても、その瞬間には分からない、社会の中でしっかり使ってみないと分からないという性格のものであるということです。

 これは内閣官房のほうの分科会でも議論になったと承知していますが、なかなか呼吸器感染症のウイルスのワクチンで、感染予防に効果があるというものはこれまで開発されていないという御指摘もありますので、開発されたときには発症予防や重症予防、期待できるとしてもそのようなものが期待でき得るという考えの中で、いろいろな優先順位も含めて考えていく必要があるのではないかというのが、今の時点の内閣官房の分科会の議論も含めた現時点の考え方だと思います」

 ワクチンが「開発されたときには発症予防や重症予防、期待できるとしても」、「感染予防の効果」は「社会の中でしっかり使ってみないと分からないという性格のものであ」り、「呼吸器感染症のウイルスのワクチンで、感染予防に効果があるというものはこれまで開発されていないという指摘がある」と感染予防効果にかなり懐疑的になっている。総合すると、発症予防効果や重症化予防効果は期待できるが、感染予防効果は期待しにくいということになる。

 そしてこのような情報の国民に対する取り扱いについて1人の委員が発言している。

 大石委員「私も、前半の議論を踏まえて意見を述べたいと思います。臨時接種の接種勧奨・努力義務ということについて、あるいは接種率の目標について、やはり重要なのは、国民にワクチンのリスクコミュニケーションをしっかりしていくことだろうと思います。ワクチンを接種することで、個人の重症化予防ということだけではなくて、医療の逼迫を最小限にするといった社会的役割を国民にしっかり伝えていくことが大変重要なのだろうと思います。そうすることで、ワクチン接種の理解が接種率の向上に当然つながってくるわけですから、義務だとか言うよりも、やはり国民の理解を高めることが一番肝要になってくるのだろうと私は思います。以上です」

 2020年10月2日の時点でワクチンの感染予防効果や発症予防効果、重症化予防効果について議論が行われていながら、少なくとも菅義偉が記者の指摘に応じて公に取り上げたのは5カ月後の2021年3月5日の記者会見ということになる。しかも大石委員が指摘したようにワクチン接種のリスクを国民にしっかりと伝えて、そのリスクを国民と共有する目的のコミュニケーションという体裁を取ったものではない。質疑応答で記者に質問されて、その質問に手短に応じて伝えるべきリスクの類いではない。

 リスクコミュニケーションの意図を有していたなら、冒頭発言で早々にこのリスクを具体的に明らかにしておかなければならなかった。だが、そうはしていなかったのだから、コロナワクチンは発症予防効果や重症化予防効果は一応認められるものの、感染予防効果についてはかなり疑問符がつくというリスクに関しての情報を、少なくとも公にははっきりとさせない意図の隠蔽を働かせていたことになる。

 菅政権が現在着手し始めている高齢者施設に対しての集中的なPCR検査と繁華街でのPCR検査、それらのモニタリング検査が無症状感染者を少しでも多く割り出して隔離に持っていくことで、今から無症状感染者を抑え込んでいき、コロナワクチン接種後の無症状感染リスクを最小限にとどめるための政策であるはずであることからすると、無症状感染者をピックアップするためのPCR検査に消極的であった従来の政策が誤りであったことを証明となるにも関わらず、その誤りを認めないばかりか、コロナワクチン接種のリスクを国民と共有するためにそのリスクを公にする情報開示とは逆の、リスクを曖昧にしておく形での情報隠蔽まで働いている。

 菅義偉は常々「国民から信頼される政府を目指します」を謳っているが、自分では逆の信頼を失うことをしていることに気づかないでいる。
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民間企業と官僚の意見交換に酒食が伴い、その支払いを企業が負う官僚のたかりは人間の習性の一つの現れであり、「再発防止」は掛け声で終わる

2021-03-22 10:38:32 | Weblog
 官僚の意見交換を口実とした民間企業に対する酒食のたかりは、民間企業側から言うと、相手が許認可権等を握る優越的立場にある以上、接待という名で誤魔化し、将来、何かで返ってくるかもしれないと我慢の気持ちで応じざるを得なくなる。官僚側は思うに法律を作り、政治家を動かし、企業まで動かしているとの思い込みから持つに至っている自分たちの絶大な力の証明の見返りを政治家に求めるわけには行かず、民間企業に許認可権等を楯に求めることになって、それが酒食のたかりとなって現れている現象ということもあり得る。

 但し民間企業側が官僚側のこの酒食のたかり、民間企業がそういった形にせざるを得ない接待という形に便乗して官僚側の許認可に何らかの手心を求め、官僚側が許認可に関わる何らかの便宜を企業側に図った場合、酒食のたかりと接待の間に生じた金品の遣り取りは贈収賄という形を取ることになる。

 2021年2月3日付「文春オンライン」が〈総務省の幹部らが、同省が許認可に関わる衛星放送関連会社東北新社に勤める菅義偉首相の長男から、国家公務員倫理法に抵触する違法な接待を繰り返し受けていた疑いがあることが「週刊文春」の取材で分かった。〉と報じた。このことについて野党から国会で追及を受け、総務省幹部が曖昧な答弁に終止したことから、総務省内で調査を開始、2021年2月24 日に総務大臣武田良太から国家公務員倫理審査会会長秋吉淳一郎に報告書が提出された。報告書は37件の供応接待を受けた等の疑いが判明したとし、11人もの処分者を出した。

 これで1件落着となったわけではなかった。調査の適格性とその適格性に応じた処分の適格性について野党からなお国会で追及を受けることになった。特に総務省総務審議官であった谷脇康彦は東北新社以外から違法な接待は受けていないと国会で答弁していたにも関わらず、その答弁の信憑性は2021年3月3日付文春オンラインが総務省の谷脇康彦総務審議官ら複数の幹部がNTTグループ側から高額な複数回の接待を受けていたと報道し、NTT側が接待を認めるに及んで、一気に崩れることになった。

 さらに2021年3月11日発売の週刊文春がNTTが総務省幹部だけではなく、高市早苗や野田聖子の総務相経験者をも接待していたことを報道。勿論、両者共に会食はしたものの、接待であることを否定している。これで終わりではなく、3月17日付文春オンラインが昨年11月に現役総務大臣武田良太とNTT社長澤田純が会食で同席していた報じることになった。

 2021年3月15日参議院予算委員会の質問一番手は自民党大家敏志(おおいえ・さとし)。 

 2021年3月15日参議院予算委員会

 大家敏志「私から先ずNTTの社長澤田(純)さんにお尋ねしたいと思います。NTTによる総務省幹部への接待が問題になり、かつ歴代総務大臣ら政治家への接待に関しても同じくであります。『危機管理の要諦は情報公開だ』と、これは私の尊敬する元北九州市長末吉興一さんから何度も聞いた言葉であります。

 NTTが国会議員と会食を行ってきたのは事実でしょうか。お尋ね致します」

 澤田純「お答の前に大家委員の貴重なお時間を頂いてしまうんですが、お詫びをさせて頂きたいと思います。この度の件でご関係の皆様に大きな迷惑とご心配をかけた、そのことに関してですね、心よりお詫びを申し上げさせて頂きます。その上でお答えさせて頂きます。

 私共日頃より、例えばマスコミ、あるいは与野党の国会議員の方々、を始めと致します、いわゆる各界の有識者と懇談を行ない、将来の社会や国際情勢全般について意見交換をさせて頂く、そのような場を設けております。お答えとしてはそういう場を設けているということでございます」

 大家敏志「与野党を超えて国会議員と意見交換を行ってきたと。目的は何だったんでしょうか。もう一度と言うか、具体的にあればお答えください」

 澤田純「基本的には国会議員のセンセイ、どなたもそうなんですが、非常に見識や知識が幅広い方々です。私共に取りましては非常に刺激になる、よい勉強になる場を提供して頂いているということでございまして、業務上の要請であるとか、あるいは逆に便宜を受けるとか、そのようなお話はしておりません。以上、お答えを致しました」

 大家敏志「まあ、国会議員の見識にも個人差はあると思いますが、次にお伺い致しますが、NTTと総務省幹部との会食、について事実関係、それからこれもまた併せて目的についてお答えください」

 澤田純「私が社長に就任いたしましたのは2018年の6月でございます。3月8日の総務省の調査では私が総務省の幹部の方と会食を持ったのは2回ということになっていたんですが、これは私のことですので調査を致しまして、もう1回のお辞めになっている方とですね、会食がございましたんで、この3年間で3回ということになります。
 
 2018年の秋に2回、2020年の6月に1回。こういう構図であります。話の中身は基本的には将来の社会、特にAIが入ってきた折りの社会のプラスの面、マイナスの面、こういうことについてですね、広く一般的なお話を意見交換させて頂いております。以上、お答え申し上げました」

 大家敏志「様々な方から疑念を持たれた以上は全てをつまびらかにしてその上でルールに則って判断・行動されることが求められると思っております。公務員倫理規定、大臣規範等に照らして、きちっとした対応を求めたいと思います」

 大家敏志の質問には意図的な情報操作が仕組まれている。大家敏志は自民党に席を置くゆえに週刊誌等で報道された接待を受けた元総務大臣の野田聖子と前総務大臣の高市早苗と現総務大臣の武田良太と総務省幹部等に対してそこに行政を歪める何らかの不正な取引きはなかったかと疑われている、言ってみれば被告の側に立つ弁護士の役割を担っている。罪を追及する検事の思いで質問に立っていたわけではない。

 さらにNTT社長澤田純が「NTTの業務に関する便宜を図るようにお願いした」から始まって、「手心を加えるように要請した」、あるいは「一定の配慮を要望した」といったことを、事実そうしていたとしても、自ら告白するはずはないと分かっていて、こういった状況を前提にしていたから、大家敏志は最初は贈収賄罪の匂いを漂わせかねない「接待」という言葉を一旦は使っておきながら、その匂いを断ち切った「国会議員と会食」のレベルに持っていく誘導を行ない、その誘導に応えて、NTT社長澤田純が政治家との会食も総務省幹部との会食も一般的な意見交換の機会に過ぎなかったと明らかにしたことで野田聖子や高市早苗、武田良太全員を贈収賄罪から無罪放免する意図的な情報操作に成功している。

 尤も政治家も官僚も過去から現在まで「意見交換」を免罪符に接待の場に臨み、接待する側の政治や行政と利害関係にある企業にしても、「意見交換」の名のもとに接待の場を設ける構図を慣習とさせている。結局のところ、大家敏志は与党側弁護士の役割上、従来からのこの構図に意図的に誘導したに過ぎない。

 NTT社長澤田純にしても、「例えばマスコミ、あるいは与野党の国会議員の方々、を始めと致します、いわゆる各界の有識者と懇談を行ない、将来の社会や国際情勢全般について意見交換をさせて頂く、そのような場を設けております」と懇談や意見交換は元総務大臣の野田聖子と前総務大臣の高市早苗と現総務大臣の武田良太や総務省幹部だけではなく、マスコミ関係者、一般的な与党国会議員、さらに野党の国会議員、さらに各界の有識者とも行っていることだと一般化することで、そこにさも利害関係など存在しないかのような誘導、意図的な情報操作を行っている。

 この日の参議院予算委員会の4番手は立憲民主党の斎藤嘉隆である。

 2021年3月15日参議院予算委員会斎藤嘉隆

 斎藤嘉隆「企業が目的なく接待をすることは私はあり得ないと思います。当然、NTT本来の進展のためにですね、接待を行ったものと考えていますけども、この親睦会や懇親会を深めることによってNTTの事業にですね、どのような影響があったか、どのように認識をされているかお伺いします」

 澤田純(NTT代表取締役社長)「意見交換しないかっていうの、実は投げかけられまして、それに対して私は認識が甘いものですから、では会食だというふうにお話をさせて頂いた流れがございます。意見交換をしたい、私もしたい。その一番の内容は将来のAIが入った折りのマイナス面ですとか、あるいは私共が考えて、デジタルツインという世界がこれから参りますが、その折りに社会学的にどうかと、こういうようなところをお話させて頂きました。

 非常に色んな意見を頂きましたので、有用であったというふうに考えております。以上でございます」

 NTT社長澤田純のこの答弁は大家敏志に対する答弁と大分趣を異にしている。斎藤嘉隆が被告の側に立つ弁護士の役割からではなく、罪を追及する検事の役割を担っているとみていることからの趣の違いということなのだろう。

 「意見交換しないかっていうの、実は投げかけられまして、それに対して私は認識が甘いものですから、では会食だというふうにお話をさせて頂いた流れがございます」云々の意味するところは政治家や官僚の側から意見交換を求めてきて、その求めに対して会食で応じている構図となっていることを明らかにしたことになる。この手の構図は繰り返し行われていることによって完成する。つまり常態化していることを証明していることになる。

 企業側は許認可に関係した事務手続きで何か厭がらせでも受けたら困るからと、意見交換が口実であっても、飲み食いの会食で応じる。政治家や官僚側も許認可権を握る優越的立場から相手が簡単に断ることができないことを知っていて、実態は飲み食いが目的の意見交換を求める。まさに政治家や官僚による意見交換の名を借りた飲み食いへのたかりであり、元々が人間はタダで飲み食いしたいという欲求を人間の習性の一つとしているが、このようなたかりを彼らは自分たちの生態の一つとしているということである。

 この常態化した生態となっているたかりの過程で企業側が自らの企業経営に関わる役所側の特別な手続きを必要とした場合、たかりに応じていることの見返りに、要するにタダで飲み食いさせていることの見返りにその手続きに何らかの便宜を求めることがあったとしても、このような場面は決してないと否定しきれない。政治家や役人側から言うと、飲み食いをたかっている手前、あるいはタダで飲み食いさせて貰っている恩義から企業側が求めた便宜に応じない保証はないとは言い切れない。

 前総務大臣高市早苗や現総務大臣武田良太が自身が飲み食いした代金は支払っていると主張しているのは、それが事実だとすると、タダで飲み食いさせて貰っている恩義から何らかの便宜を要求された場合、応じてしまうことを恐れているからだろう。あるいは何らかの便宜を図ったと疑われることを恐れて、支払ったことにしていると装っている可能性もあり得る。

 要するにタダで飲み食いしていても、飲み食いの代金はタダで済んだとしても、タダで済まない何かでタダで済んだ代金の埋め合わせをするということが往々にして存在する。

 いずれにしても、企業と役所間の贈収賄はこのようなタダで飲み食いの常態化したたかりの構図から発生する。そして常態化は既に触れたように繰り返されることによって完成する構図であり、生態だから、似たような事例を過去の世界から引き出すことができることになる。既にマスコミが似た事例としてノーパンシャブシャブ事件を盛んに取り上げている。「Wikipedia」「大蔵省接待汚職事件」として紹介している。一部を取り上げてみる。文飾当方。

 〈1998年(平成10年)に発覚した大蔵省を舞台とした汚職事件である。大蔵省の職員らが銀行から接待を受けた際に、中国人女性が経営する東京都新宿区歌舞伎町のノーパンしゃぶしゃぶ店「楼蘭」を頻繁に使っていた事が発覚(店名の楼蘭は、新疆ウイグル自治区の地名)したことからノーパンしゃぶしゃぶ事件とも言われている。

 官僚7人(大蔵省4人、大蔵省出身の証券取引等監視委員会の委員1人、日本銀行1人、大蔵省OBの公団理事)の逮捕・起訴に発展。起訴された官僚7人は、執行猶予付きの有罪判決が確定した。この責任を取り三塚博大蔵大臣と松下康雄日本銀行総裁が引責辞任し、財金分離と大蔵省解体の一つの要因となったと言われているが、実際は改革は族議員に骨抜きにされ、名称が財務省に代わった程度で、抜本的に変化した訳ではない。

 罪状は銀行や証券会社側の官僚に対する飲み食いの贈賄、官僚側の銀行や証券会社側に対する便宜供与と飲み食い収賄等となっている。

 この事件は1998年の発生である。この事件の再発防止策として翌1999年8月に国家公務員倫理法が成立、さらに翌2000年4月に施行の運びとなった。だが、官僚が意見交換という口実でタダで飲み食いを受ける接待はなくなることはなかった。NTT社長澤田純が「意見交換しないかっていうの、実は投げかけられまして」と言っている官僚側からの働きかけによるたかりは一つの構図としてノーパンシャブシャブ事件でも現れていた。文飾は当方。

 《風俗店は宮川室長から誘う MOF担当ら1200人が会員 ノーパンシャブシャブ》(朝日新聞/1998年1月27日)
 
「ぜひ一度行ってみたい。来週どうしても行こう」 風俗店、宮川室長から誘う

 収賄容疑で逮捕された大蔵省の金融証券検査官室長・宮川宏一容疑者(53)が第一勧業銀行の大蔵省担当職員(通称・MOF担)に対し女性従業員の過激な接待を売り物にする東京・新宿の会員制しゃぶしゃぶ料理店に連れて行くよう要求し、接待を受けていたことが東京地検特捜部の調べで明らかになった。店の会員には1200人を超す金融機関の社員が登録しており、接待額は一人1回辺り3万円を上回ることが多い。宮川室長以外にも多くの大蔵省幹部が接待を受けたと複数の金融業界関係者が指摘している。特捜部は27日にも同店を家宅捜索し、常識離れした大蔵官僚の接待漬けの実態を解明する方針と見られる。

 東京新宿の会員制しゃぶしゃぶ店 MOF担ら1200人会員

 この店は、下着をつけない女性が付き添って接客することで知られ、「ノーパンすあぶしゃぶ」の通称で呼ばれることもある。

 特捜部の調べによると、宮川室長は第一勧銀のMOF担に対し、「ぜひ一度行ってみたい。来週どうしても行こう」と要求したとされる。宮川室長は同行から11回の飲食接待を受けたなどとして逮捕されたが、この容疑事実の中には同店での接待も含まれている。

 この店での接待費用は現在、コース料理で一人当たり1万9千180円。これに加え、コンパニオンの女性に1万円のチップを渡すと、女性が下着を脱いで接客する。消費税や女性の飲み物代を含めると、費用は客一人当たり3万円を大きく超えることになる。

 この店で検査対象の金融機関から接待を受けた大蔵官僚は宮川室長だけではない。宮川室中の部下に当たる別の検査官も数年前、ある元MOFに対し、「おもしろいところだから行こうよ」と持ちかけ、銀行局の係長と共に同店で接待を受けたという。 

 この元MOF担は「当時はそんな店があるとは知られていなかった。はっきり言って、びっくりした。目が点になりました。もっとびっくりしたのは向こう(大蔵省職員)が慣れていたこと。何度も来たことがあるという感じだった」と明かした。

 ある銀行幹部は「MOF担になったばかりのころ、ある証券会社から会員カードを借りて大蔵省の人と行きましたけど、もう二度と行くまいと思いましたね。店の女の子はあっけからんとしているけど、私としてはいたたまれない感じでした」と振り返った。

 別の金融機関の広報部は「うちのMOF担は、大蔵省接待といっても、せいぜいこの店程度だと言っています」と話し、MOF担の間で、こうした接待が半ば常態化している実情を明かした。

 店の説明によると、会員は約1万3千人で、このうち銀行や証券会社の社員が1200人余にのぼる。ほとんどの都市銀行や大手証券会社、外資系金融機関で、社員が会員になっており、大蔵省を担当する総合企画部の幹部行員の名前もある。

 店の経営者は「金融関係のお客さんは多いけど、どういう人をお連れになっているかはわからない。店では、接待する側も、される側も、楽しく笑い声を上げている。普通の料亭にいくより、接待の効果は高いはず」と話している。

 【MOF担】《MOFは大蔵省・財務省を表すMinistry of Financeの頭文字から》大蔵省(現財務省)との折衝を主な任務とした銀行・証券会社などの担当者の通称。かつて金融監督官庁であった同省の動きを事前につかむために、担当官僚と密接な関係を持った。》(「goo国語辞書」

 官僚側から飲み食いと女性サービスをたかっていた。宮川宏一は各銀行から400万円以上の飲み食いの接待供与を受けていただけではなく、マンションの一室を購入した際、代金の一部の440万円を銀行に負担させる利益供与まで受けていた。

 大体が役所にとって利害関係者に当たる企業との意見交換に飲食を伴わせ、その代金を企業側に支払わせること自体が、その意見交換がどのようにまともな話題に基づいていても、企業側にとってどのように有用なものであったとしても、役人側のたかりを構図としていることに変わりはない。たかりをペイするために役所側の権限で応えない保証はない。企業側も持ち出し一方となっている支払いをペイして貰うために何らかの便宜を求める誘惑に駆られない保証はない。

 人間がタダで飲み食いしたいという欲求を自らの習性の一つとしている以上、そのことが飲み食いを通した贈収賄のキッカケとなることを防ぐためにも意見交換という名目でその機会を手に入れることを国家公務員倫理規定を改めて禁止しければ、過剰接待の再発も、タダでの飲み食いを通した贈収賄の再発も危うい。意見交換と言うなら、一部の企業幹部や一部の役所幹部だけで行うのではなく、企業の若手や役所の若手官僚を交えて、企業か役所の会議室でペットボトルのお茶のみの提供で行った方が健全な、幅広い意見交換となり、若手の勉強にもなり得るはずである。NTT社長澤田純が言っているように「非常に刺激になる、よい勉強になる場の提供」を幹部のみならず、若手にも与えることになる有意義な機会とすることができるはずだ。

 たかりという役人たちの卑しい行為をなくすこともできる。

 少なくとも意見交換という名で役人側がタダで飲み食いする不健全なたかりを繰返して行ない、いつ贈収賄に発展するかも分からない危うい状況にあることを無視して、「再発防止」だけを言い、それが掛け声倒れとしてしまうのは政治側の不作為に当たる。

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2021年2月25日山田真貴子参考人招致衆議院予算委員会の黒岩宇洋と後藤祐一の追及を身の程知らずにも添削する

2021-03-15 11:47:48 | Weblog
 2021年2月25日衆議院予算委員会は山田真貴子当時内閣広報官、日本放送協会会長前田晃伸、総務省総務審議官谷脇康彦の3人を参考人招致して行われた。その日の質疑は午前中のみで1番手が立憲民主党の黒岩宇洋、2番手が同じく立憲民主党の後藤祐一、3番手が同じく立憲民主党今井雅人、4番手が日本共産党藤野保史。

 国会議員は追及のプロである。与党議員の閣僚に対する質問は追及の色彩は消え、政府政策の持ち上げ、あるいは宣伝の色彩を帯びるケースが多々見られるが、野党議員の追及は厳しく、執拗である。その追及をド素人の当方が添削するというのだから、身の程知らずもいいとこだが、敢えて身の程知らずに挑戦してみることにした。対象は立憲民主党黒岩宇洋の質疑少々と同立憲民主党後藤祐一・
 
 彼らの追及の主題は山田真貴子の総務省次官級ポスト総務審議官(国際担当)当時の2019年11月6日に総務省の放送に関わる許認可権行使対象の、それゆえに「国家公務員倫理法」「第二章国家公務員倫理規程」で「利害関係を有する者」として関係を規制されている衛星放送関連会社東北新社のメディア事業部趣味・エンタメコミュニティ統括部長菅正剛(菅義偉長男)との会食に於いて許認可権に関わる何らかの便宜の要請を受けたか、その要請に対して何らかの便宜を与えたかにあった。

 1番手の黒岩宇洋は会食に関する追及の前に一部報道によって知り得た情報として以下の真偽について追及を行った。この追及に関して当方なりの添削を行ってみる。菅義偉が2020年10月26日夜のNHK『ニュースウオッチ9』に出演した際、キャスターによる日本学術会議任命問題についての何度もの質問を受けて、「説明できることとできないことがある」と不快感を顔に見せた。その当日なのか、翌日なのか、山田真貴子はNHKの原政治部長に「総理、怒っていますよ」と抗議の電話をかけたと言う。かけたことが事実なら、政府による報道介入となる。勿論、山田真貴子は「総理が出演後、電話を行ったことはありません」と否定した。対して黒岩宇洋は同じく参考人として呼び出していたNHK会長前田晃伸に質問をぶっつけた。

 黒岩宇洋「NHK会長にきのう通告して、NHKの内部でも確認して頂きたいと。山田広報官から26から27日にかけて、NHK、この職員関係者に電話がかけられたという、こういった事実は確認しておりますでしょうか」

 前田晃伸「現場に確認に致しましたが、山田広報官から抗議の電話を受けたという事実はございません」

 黒岩宇洋「会長、抗議の電話ではなく、電話がかかってきた事実はないという明言でよろしいでしょうか」
 
 前田晃伸「取材制作の過程に関わる事項につきましては原則としてお答えすることは差し控えております。ただ、現場にも確認致しましたが、山田広報官からの抗議の電話を受けたことはございません」

 黒岩宇洋「山田広報官に事前にお願いしてあるんですけども、山田広報官の携帯電話の通話履歴、これは携帯の事業会社に確認すれば、全て残っていますから、この履歴を調べて欲しいとお願いしたが、調べて頂けましたか」

 山田真貴子「通話履歴は通信事業社に確認したところ、通話履歴の確認につきましては昨年の11月までしか遡れないとのことでした。一方で、私自身の携帯の電話履歴を確認いたしましたが、NHKへの発信の記録はございませんでした」

 黒岩宇洋「11月までしか記録は・・・。これはちょっと。ご本人が(NHKに電話はしなかったと)明言したことを裏付けることになる。これはご本人にとっても利益だと思っているので、そういう意味で(履歴の確認を)お願いを致しました。ただ、今申し上げたとおり客観的にですね、携帯事業会社が記録を上げていなかったということで、この点についてまだ、まだ私としても得心することはないので、今後とも確認をさせて頂きます」

 黒岩宇洋は以後、山田真貴子と菅正剛との会食の質問に移る。

 山田真貴子がNHKに実際に抗議の電話を入れたとしても、黒岩宇洋は山田真貴子もNHK会長の前田晃伸も素直に認めるとでも思っていたのだろうか。事実でなければ、当然否定する。事実であっても、なおさらに否定する。否定して当然であり、否定自体を前以って想定内として追及に臨まなければならなかった。

 当然、山田真貴子が「電話はしなかった」、NHK会長の前田晃伸にしても、「山田広報官からの抗議の電話を受けたことはございません」と一旦は否定させたところで、「否定は分かりきっていました」とした上で、分かりきっていたことの理由を述べればいい。それを単なる推測と取るか、可能性として十分に有り得る推測として取るかは追及を聞く者をして任せる以外にない。

 最も信憑性の高い分かりきっていたことの理由は次のようなことが考えられる。

 山田真貴子がNHKに報道圧力となる抗議の電話を入れたと報じたのは2020年11月15日付ネット記事《総理が怒っていますよ…官邸からNHKへの「クレーム電話」その驚きの中身》と題した
「週刊現代」である。黒岩宇洋が追及した通りのイキサツが書いてある。

 山田真貴子がNHKに抗議の電話を入れたとされている疑惑日は菅義偉がNHK『ニュースウオッチ9』に出演した、「週刊現代」では「その翌日」となっているが、黒岩宇洋は「26から27日にかけて」と言っている2020年10月26、27日から「週刊現代」がネット報道する2020年11月15日まで2週間以上、19日も経過している。さらに国会で最初に取り上げたのは、2021年2月22日付「asahi.com」記事でで知り得た情報だが、黒岩宇洋が2021年2月25日に取り上げる3日前の2021年2月22日午後の衆院予算委員会で同じ立憲民主党の本多平直であって、抗議電話の疑惑日から「週刊現代」による疑惑報道まで19日、疑惑報道から本多平直が国会で追及する2021年2月22日までが3ヶ月と7日、合計3ヶ月と22日、約4ヶ月も経過している。一応、このことを前置きしておく。

 本多平直の追及相手は菅義偉。記事が伝えている菅答弁を取り上げておく。

 菅義偉「(山田氏)本人に確認したところ、NHKにクレームの電話をしたという報道は事実ではないと報告を受けている」

 (「クレームの電話はしてないというが、電話はしたのか」の再度の追及に)私が承知しているのは先程来、申し上げた通り。電話してないんじゃないかなと思いますけれども、確認したら(山田氏は)そういうことだと言っていた」

 黒岩宇洋はこの3日後の衆院予算委員会で今度は山田真貴子本人に対して同じ追及をし、同じ答弁を得たに過ぎないことになる。

 山田真貴子がNHKに抗議の電話を入れたことを一応、事実と仮定しよう。その抗議の電話をNHK側が報道機関に対する国家権力による報道介入だと受け止めた場合は、あくまでも受け止めた場合だが、NHK側から報道機関の使命として国家権力の報道介入という危険な姿勢に警告を発し、それを改めさせるべく、即菅内閣に対して抗議の電話を入れているだろうし、それだけにとどまらずに、そのような姿勢の危険性を社会に知らしめるためにこれこれの報道の介入を受けたことから、これこれの抗議を行ったと広く公表、公表することによって国家権力に対抗する力を得るために社会を味方につけるべ取り計らうはずである。

 だが、報道介入に当たることになる抗議電話の疑惑日から本多平直の国会追及までの間、その3日後の2021年2月25日の黒岩宇洋追及までの合計約4ヶ月もの間、NHK自身は音無しの構えでいた。その答は山田真貴子から報道介入に当たる抗議の電話などなかったからだと考えることができる。なかったとすると、「週刊現代」の山田真貴子に関わる取上げ記事は火のないところに煙を立たせた虚偽報道と言うことになる。

 但し山田真貴子のNHKへの抗議電話と「週刊現代」の報道を共に事実と仮定した場合、当然、NHK側の抗議によってその事実が表沙汰になったのではなく、「週刊現代」の報道が表沙汰にした事実となる以上、NHK内部の誰かの報道機関向けの内部告発という意図的な行為の介在なくして「週刊現代」が知り得る情報とすることはできない。そしてそのような内部告発の目的はNHK側自身が報道機関の使命として国家権力の報道介入に警告を発すべく、抗議の電話を菅内閣に入れることもせず、結果的にその危険な事実を社会から隠すという報道機関の使命に反した振る舞いに対する反発と仮定することができる。

 要するに黒岩宇洋は2021年2月25日の予算員会で山田真貴子がNHKに抗議の電話をしたかしなかったの追及自体を相手の否定を前提として行った上で否定した時点で「週刊現代」の報道はNHK内部の者による内部告発の可能性に言及、その内部告発はNHK自身が報道機関の使命として果たすべき国家権力による報道介入への断固とした拒否を政府側の反発を恐れて事勿れに処理したことに対する個人的な懲罰に発したよくある典型的な例の一つではなかったかといった経緯を描くことによって、道理として十分に有り得る事実として印象づける方向へと持っていくべきではなかったか。

 少なくともNHK側からも、菅内閣側からも、山田真貴子本人からも「週刊現代」に対して事実でないことを書かれ、広く報道された、NHKの信用を損なわせた、山田真貴子本人の名誉を傷つけられたといった抗議が何もされなかったのだから、いくらNHKと菅内閣が否定したとしても、あるいは山田真貴子本人が否定したとしても、抗議の電話をしたのは事実ではないかと憶測される事案であり、往々にしてその種の憶測は独り歩きし、憶測そのものを増殖させていく。この独り歩きによる憶測の増殖に便乗して抗議の電話を入れることで報道介入に走ったのは週刊誌の報道通りの事実そののものではないのかとの印象操作に持っていくのも一つの手だろう。ただ否定されて引き下がる手はない。

 NHK『ニュースウオッチ9』出演で受けた扱いに反発した菅義偉のNHKに対する山田真貴子を使ったNHKに向けた報道介入の疑いに関わる黒岩宇洋の追及をこのように添削してみたが、如何だろうか。最低限、黒岩宇洋は週刊誌の記事は虚偽報道ということになるから、山田真貴子に「週刊現代」対して名誉を傷つけられたとして何らかの抗議すべきではないか、する気があるのかないのかと問い、その答弁からも抗議の電話をしたのかどうかを探るべきだったろう。

 次に同じ立憲民主党の質疑のプロ、後藤祐一の山田真貴子に関わる追及の要所、要所を取り上げて、恐れ多くも添削を試みてみる。そして最後に山田真貴子に関係する追及箇所と総務審議官谷脇康彦に対する追及少々を載せておくことにする。

 山田真貴子は黒岩宇洋に対しても同様だったが、反省の意を示すためか、つつましげで低姿勢の様子を見せていて、そのために声を低く話すように努めているようで、なおかつマスクをしているせいで、聞き取りにくい。「行政を歪めるような不適切な働きかけはなかった」としていることと、「飲み会を絶対に断らない女」をウリにしている矜持からすると、もう少し胸を張っていていいはずだが、逆の態度が演出めいていて、胡散臭い感じを与えている。
 
 後藤祐一「きのう官房長官の記者会見で、山田真貴子さんと東北新社側との関係を問われて、会食としては1回限りだという話を聞いております。あとは具体的にはどこのタイミングか分からないけれども、名刺交換等を行ったと、こういった関係にあるということでございますという発言を官房長官はされておられます。山田広報官にお伺いますが、菅正剛氏と最初にお会いしたのはいつですか。この会食があった言われている令和元年(2019年)11月6日の会食のときですか」

 山田真貴子「お答え申し上げます。大変失礼ながら、いつ名刺交換したのかというのは記憶にないんですけども、私自身が菅総務大臣以来、菅正剛様が秘書官をやっておられたということは今回の報道で初めて知りまして、と申すのはその当時、自治体に出向しておりまして、ひと月程しか重なっていないということでございます。

 というわけで、総務省の職場で面識を得たということはございませんでした。名刺交換をさせて頂いたのは残念ながら、いつだったということは記憶がないものですから、ただ、比較的最近ではないかなというふうに思っています」

 この答弁の中に既にウソをついていると思わせる箇所がある。答弁のこういった綻びを追及していかなければ、事実を引き出すことはできない。先ず名刺交換ついて。「いつ名刺交換したのかというのは記憶にない」、「名刺交換をさせて頂いたのは残念ながら、いつだったということは記憶がない」と時期そのものの記憶がないことを言いながら、「比較的最近ではないかなというふうに思っています」と「比較的最近」という時期に記憶を置き換えている。

 「比較的最近」への記憶の置き換えはそうすることの方が山田真貴子にとって何らかのメリットがあるからだろう。つまり置き換えるについてのウソがある。後藤祐一は山田真貴子が「はっきりとは覚えていません」と応じるかもしれないが、「比較的最近とは菅正剛と会食した2019年11月6日当日なのか、以前なのか、以後なのか」と一応は追及しなければならなかった。いつ頃かによって両者の関係性の意味合いが異なってくる。

 山田真貴子の経歴をネットで調べてみると、菅正剛らと会食した2019年11月6日当時は総務省総務審議官(国際担当)に就いていた。在任期間は2019年7月5日から2020年7月20日までの1年余。自治体への出向は2007年4月までは世田谷区副区長を務めていて、2007年7月に総務省に戻り、総務省総合通信基盤局国際部国際政策課長に就いている。菅正剛は菅義偉が第1次安倍政権で総務大臣として初入閣(2006年9月26日)した際、総務大臣秘書官に抜擢され、2007年7月5日まで総務大臣秘書官として務めたとなっている。但し山田真貴子の経歴には2007年7月に総務省に戻ったことになっているから、「ひと月程しか重なっていない」と言っていることにかなりのズレがある。ネット上の総務大臣秘書官退任の2007年7月5日の日付が間違っているのか、山田真貴子が曖昧な記憶に頼って発言したことからのズレなのかもしれない。後者だとしたら、菅正剛との会食の件で衆議院予算委員会に参考人招致されたのだから、菅正剛と自身の経歴をしっかりと把握した上で質疑の場に臨むべきをそうしていなかったことになる。全てを記憶が曖昧で片付ける必要上、正確に頭に把握しておかなければならない事柄にまで曖昧にしてしまう過剰反応を見せてしまう場合がある。そうだとしたら、そこにもウソがあることになる。

 山田真貴子は自治体に出向していた事情で、「菅正剛様が秘書官をやっておられたということは今回の報道で初めて知りました」述べていることにもウソを見なければならない。この理由を述べる前に山田真貴子は東北新社という会社そのものに対しても「東北新社様」と呼び、その社長に対しても「様」付で呼び、菅正剛に対しても「様」付で呼んでいる。総務省は放送事業者に対して許認可権を審査・認可する関係上、厳格な態度(偉ぶった態度ではない)で臨まなければならない性格の役所であり、その役所に所属している者として両者の関係性から言うと、相手を「様」付けで呼ぶのは異常なまでのへりくだりに見える。

 かくまでも東北新社に対して自身を下に置かなければならない山田真貴子の理由は何なのだろうか。

 役人は特に人事に敏感な生き物であるはずである。誰が次の次官を射止めるか、誰が次官レースから脱落するか、その人事次第で、所属する派閥の成員の人事にも影響してくる。この傾向は次官や審議官の下に配置される各局の人事に於いても言えることであろうし、総務省所掌の行政事務をトップの責任者として管理・監督することになる総務大臣人事については特に敏感にならざるを得ないはずである。当然、2006年9月26日に菅義偉が総務大臣に任命された際、その政治手法・官僚掌握術に無関心ではいられなかったであろう。しかも総務大臣就任と同時に自身の長男である菅正剛を総務大臣秘書官に取り立てたことと、菅正剛の前職がバンド活動していて、政治活動とは無縁であったということと相まって省内ではこの縁故採用の話題で持ち切りとなったはずであるし、縁故採用が省内人事に何か影響することがあるのだろうかといったことにも話は及んだはずだ。

 当然その話題は菅義偉の総務大臣就任と菅正剛の総務大臣秘書官就任時に山田真貴子が出向していたとしても、総務省に残っている親しくしていた同僚から、「今度任命された大臣秘書官、総務大臣の長男だって。縁故採用もいいとこ」といった形で連絡が入るか、飲み会を断らない女なのだから、出向の息抜きに彼ら同僚たちと飲み会をしていたとしたら、菅正剛を酒の肴にしてお喋りが盛り上ったことは十分に考えられる。

 つまり自治体に出向していたとしても、世田谷区と霞が関は乗り物を使った移動距離では左程遠い距離というわけではなく、電話やパソコン等の通信手段を使った通信距離は感覚的には目と鼻の先であるし、情報や往来の途絶まで伴うわけではない。にも関わらず、「私自身が菅総務大臣以来、菅正剛様が秘書官をやっておられたということは今回の報道で初めて知りまして」と言い、その理由として「自治体に出向しておりまして、ひと月程しか重なっていない」ことを挙げる。まるで情報も往来も途絶した関係を強いられた出向に見える。こんなことはあり得るだろうか。

 後藤祐一は「あなたが出向中、総務省の知り合いの同僚と会ってお茶をしたり、飲み会をしたりするといったことは一度なく、電話等で連絡も取り合ったことがなかったのですか」と聞かなければならなかった。「会ってお茶をしたことがある、飲み会をしたことがある、連絡を取り合ったりしたこともある」と答えたなら、「総務大臣の長男であるという稀有な関係性と政治経験がなく、バンド活動が前歴の稀有な素性であることから、総務大臣秘書官に就いた菅正剛なる人物の話題で総務省内はいっときでも賑わったはずです。同僚と会うか連絡を取り合った際にどんな人物か、どんな印象の男か、どんな風貌をしているのかといったことかを聞かされたりしたことは一度もなかったのか」と。

 「お茶も飲み会もしたことがあるし、電話で連絡を取り合ったこともあるが、菅正剛について一度も話は出なかった」と答えたなら、「同僚との会話は上司や部下、あるいは同じ同僚でも距離を置いている相手の人物評価に花が咲くものですがね、どうも本当のことを話しているようには見えない」

 こう答えて、山田真貴子の答弁を信用ができないところへと持っていく。

 後藤祐一はこういったことは一切聞かずに山田真貴子が言っていることが事実かどうかは菅正剛に聞かなければ分からないから、菅正剛を国会に参考人招致することを委員長に求める。

 後藤祐一「全く面識のない菅正剛氏とそしてこの東北新社との関係は先程会ったことはないということでしたけど、社長の就任祝いという名目で開かれた会になぜ急に参加することになったのですか。その経緯をお話ください」
 
 山田真貴子「今のお話でございますが、菅正剛様とは名刺交換というのはこの会合以前にしていたというふうに思っております。で、先程、名刺交換だけでございまして、突っ込んだ話をしたり、会話したりということは記憶にないところでございます。で、東北新社様とは菅正剛様とお話させて頂きましたが、前の社長様、植村徹様と記憶しておりますが、新しくなられまして、二宮様に代わられたということでご挨拶されまして、そのときに(菅正剛と)お話があったんではないかなというふうに思っています。

 私自身、そのときには放送の担当は外されておりまして、国際政策の担当をしておりましたので、そういう意味では直接に交わる、語るお話と言うよりは世界的な映像事務ですとか、映像一般のお話をお伺いするということをしたと考えていたというふうに思っております」

 会食は社長の就任祝いという名目で開かれた。しかし総務省総務審議官(国際担当)だった山田真貴子が後藤祐一のそのような会食に「なぜ急に参加することになったのか」についての経緯を尋ねたのに対して何も答えていない。なぜ山田真貴子が選ばれたのか。聞かれたことをそのまま答えないというのは聞かれたままに答えたなら何かまずいことがあるからで、聞かれたこと以外の答は何らかの誤魔化し・ウソで成り立たせていることになる。

 山田真貴子は聞かれてもいないのに、しかも前のところで名刺交換は「いつだったということは記憶がない」とか、「比較的最近ではないかなというふうに思っています」云々と記憶が曖昧であることを装っていながら、ここでは「菅正剛様とは名刺交換というのはこの会合以前にしていたというふうに思っております」と名刺交換の時期についての記憶をかなり限定する言い換えを行っている。

 この会合で菅正剛とは初対面で初めて名刺交換をしたが事実なら、この会食に山田真貴子がピンポイントで招待された理由はかなり特殊な意味合いを持つことになる。それを避けるために後藤祐一に聞かれてもいないのに菅正剛様との名刺交換を「この会合以前」とし、前々から親しくしていて、たまたま会食に誘われた関係を装った疑いが出てくる。そして同じく聞かれてもいないのに「放送の担当は外されておりまして、国際政策の担当をしておりました」と東北新社の放送事業とは無関係の部署であることを示して、便宜供与が発生する余地がないことを訴えた可能性が出てくる。

 しかし国際担当とは言え、総務省総務審議官は次官級ポストだと言われている。仕事上の関連部署や長年の勤務の間の同僚や部下の異動先に対する影響力は相当なものがあるはずで、その影響力を駆使すれば、自身は放送事業とは無関係の部署にいたとしても、東北新社の放送事業と関連する部署への働きかけは不可能ではない。その上、谷脇康彦総務審議官、吉田眞人総務審議官、秋本芳徳前情報流通行政局長、湯本博信大臣官房審議官等々、錚々たる幹部が東北新社から接待を受けていたのだから、山田真貴子も加えて、お互いが周囲に対して「東北新社のこの件、よろしく頼む」と口添えしていったなら、山田真貴子が例え東北新社の放送事業と無関係の部署にいたとしても、影響力の行使は不可能ではなくなる。

 後藤祐一は山田真貴子が菅正剛との名刺交換の時期について微妙に言い換えていることに気にも留めずに会食した店が「どんなお店だったのか」とか、「お店の特徴について覚えている限りでお話ください」と求め、山田真貴子は「和食レストランというカテゴリーだと思います」と明確には答えない。最初から記憶が明確ではない文脈で答弁しているから、記憶が明確ではないことに合わせた疑いはある。

 後藤祐一の「どんな会話をしたのか」の問には次のように答弁している。

 山田真貴子「私自身、繰り返しになりますけども、その時点では放送の関係でございませんでした。私自身も仕事の指揮としましては移動したときがそのような仕事(国際政策)に就いて、過度に派手に関与すべきではないと、こういう意見をしっかりと頂くべきであるという考えのもとに仕事をしてきております。で、そういったことでございますので、元々こういう場(会食の場)で何か仕事の話をするタイプでもございません。

 勿論、放送業界ですとか、業界全体の実情に関する話はあったかもしれませんけども、全体的としては一般的な懇談であったというふうに思います」

 この答弁はくどい。「放送業界ですとか、業界全体の実情に関する話はあったかもしれませんけども、全体的としては一般的な懇談であったというふうに思います」と後段の端的な答弁のみで総務省の放送事業者に対する許認可に関わる不当などのような働きかけもなかっとの説明となる。にも関わらず、「私自身、繰り返しになりますけども、その時点では放送の関係でございませんでした」とここでも再び東北新社の放送事業とは何の関わりのない部署に所属していたこと、「過度に派手に関与すべきではないと、こういう意見をしっかりと頂くべきであるという考えのもとに仕事をしてきております」と自らの仕事に対するスタンスまで説明、不正に関与する性格の人間ではないことを示した上で、「元々こういう場(会食の場)で何か仕事の話をするタイプでもございません」と言わなくてもいいことまでわざわざ口にしている。

 こうまでもくどく説明しなければならないのは、山田真貴子自身が答弁で描いていることの状景の裏に逆の事実を隠している可能性がある。隠していなければ、くどくどとした説明は要らないし、簡単な答弁で済む。事実ではないから、事実であると相手に信じ込ませるために余分な言葉が必要になる。後藤祐一はおかしいじゃないかとこの点を突かなければならなかったが、「極めて東北新社という会社にとっては重要な政策論についてお話したことはありませんか」と、山田真貴子側にとって不都合な事実となる、否定して当然なことを余りにも単刀直入に追及をしている。否定自体を前以って前提とした追及を心がけなければならないことを忘れている。だから、ムダな追及が多くなる。
 
 後藤祐一の上記追及に対して山田真貴子が「働きかけというものはなかったというふうに思っています」と答えると、「特に東北新社に関係するような放送行政に関係するような話題はありませんでしたか」と同じく正直に答えるはずもない繰り返しの追及を試みる時間のムダを費やしている。

 山田真貴子「繰り返しになりますけれども、放送業界全体の実情に関する話はあったかもしれませんけれども、全体としては一般的な懇談であったとかというふうに考えております」

 結局は後藤祐一自身が2019年11月6日の菅正剛らと山田真貴子との会食の場で思い描いていた東北新社側からの行政を歪めるような不適切な働きかけとその働きかけに内々で応じる山田真貴子の状景に関しては何一つ追及できなかった。

 以下添削とは関係ないが、この日の3番手の質疑者立憲民主党今井雅人の質問を少々取り上げてみる。

 今井雅人「事前に(菅正剛を認識していた)ということではなく、4人の方と会食されたわけでしょ。呼ばれたら断らない方ですから、どういう方と会食した、その人の名前が分からないまま会食されるということはないと思いますので、会食をした時点では菅正剛さんはいらっしゃってると認識しておられましたね」

 山田真貴子「(菅正剛と)会食していたときには認識していたのかなとは思います。ただ当時は名刺交換はなかったと思います。それから(カウンター席に?)横並びだと思うのでお話はしておりませんので、そういう意味で私自身、その場にどういう方がいらっしたかということについては俄には思い出せなかったということでございます」

 ネットで調べてみると、会食の出席者は5人。東北新社側が二宮清隆新社長、三上義之取締役執行役員、木田由紀夫執行役員、そして菅正剛を含めて4人。対して山田真貴子が外部の人間として一人。合計5人の会食。

 いくら社長就任祝いの会食であったとしても、会食の主催者は山田真貴子ではなく、東北新社側であって、山田真貴子はいわばお客さんである。会食の費用を東北新社側が持ったことでも、この関係性は証明される。気を遣われるべきはたった一人のお客さんである山田真貴子であって、横並びの席に着席していたとしても、横並びの関係から「お話はしておりません」はあり得ない。カウンター席に5人が並んだとしても、話し合う者同士が顔を他の者の背後にのけぞらしたり、前に突き出したりしていくらでも話を盛り上げることができる。当然、「その場にどういう方がいらっしたかということについては俄には思い出せなかった」ということもあり得ない。

 大体が今井雅人の前に質問した後藤祐一に対して山田真貴子は「東北新社様とは菅正剛様とお話させて頂きましたが、前の社長様、植村徹様と記憶しておりますが、新しくなられまして、二宮様に代わられたということでご挨拶されまして、そのときに(菅正剛と)お話があったんではないかなというふうに思っています」と会話を交わしたことを口にしている。

 今井雅人に対する菅正剛とは会話はしていない、同席者が「俄には思い出せなかった」が怪しい答弁なのは「ただ当時は名刺交換はなかった」と答弁していることが証明している。山田真貴子は後藤祐一に対して「菅正剛様とは名刺交換というのはこの会合以前にしていたというふうに思っております」と答弁している。つまり山田真貴子は菅正剛と会食前に既に名刺交換していたから、会食時に名刺交換は必要なかった。会食前からお互いに面識があったということであって、いくら横並びの席であっても会話を交さないということもあり得ないし、「(菅正剛と)会食していたときには認識していたのかなとは思います」という相手に対するあやふやな印象もあり得ない。虚偽答弁そのものであろう。

 2015年2月25日衆議院予算委員会立憲民主党後藤祐一対山田真貴子参考人招致

 聞き取りにくく、意味不明な箇所は「?」か、「・・・・」で処理した。

 後藤祐一「では、山田真貴子広報官にお話を伺いたいと思います。内閣広報官というお仕事は政府で起きている事実関係を世の中に正しく伝えるということがお仕事だと思うんですが、政府の説明責任をいわば代表している立場だと思いますが、如何ですか」

 山田真貴子「お答え申し上げます。説明責任という言葉は確か書いてなかったと思いますけども、政府の政策を広く知って頂くということが大事な仕事かなと考えております」

 後藤祐一「本日も政府の中で何が起きているのかきちっと説明するためにこられておりますので、是非事実を包み隠さずに述べて頂きたいと思います。

 きのう官房長官の記者会見で山田真貴子さんに関連して内閣広報官としての重責を担っていることを改めて自覚して頂き公正に職務を遂行して頂きたいと申し込まれたということでございます。この点は総理からの指示だったということでございます。 

 いわば続投が総理の指示だったという趣旨のご発言でありますが、山田広報官を辞めさせないというのは菅総理のご判断ですか」

 加藤勝信「昨日記者会見で、申し上げ、その前に山田広報官に対してですね、この一連について国家公務員倫理法違反に当たる行為により国民の皆様の疑念を抱く結果になったことは甚だ遺憾であり、反省して貰いたい。今後このようなことが二度とないように厳重に注意して貰いたい。今回の件を重く受け止め、真摯な反省の上に立って内閣府広報官という重責を担っていることを改めて自覚し、国民全体の奉仕者として高い倫理観を持って公正に職務を遂行される、一層奨励されて貰いたい、こういうことを伝えたところでありますが、これはまさに総理からこの指示を頂いて、山田広報官に私からこのことを伝えたことを記者会見で申し上げたところでございます」

 後藤祐一「総理の指示だったと。続投は総理の指示だったという答弁だったいうことだと思いますが、山田広報官に伺います。本当は辞めたかったんじゃないですか。辞表を認めた、あるいは杉田副長官(内閣官房副長官杉田和博)か官房長官辺りに辞表をお渡しした、あるいは口頭かもしれませんが、何らかの辞表のお知らせをした。そういったことはなかったですか」

 山田真貴子「色々(?)私が国際担当総務審議官在任中に国家公務員倫理法違反の行為があったことにつきましては改めて国民の皆様に深くお詫び申し上げたいと存じます。今のお話にございましたとおり、官房長官から厳重にご注意頂いたところでございます。私自身、内閣府広報官としてお願いして頂いている立場でございます。大変僭越ながら、辞表というものをお渡ししようとしたとかいう事実はございません」

 後藤祐一「きのう官房長官の記者会見で、山田真貴子さんと東北新社側との関係を問われて、会食としては1回限りだという話を聞いております。あとは具体的にはどこのタイミングか分からないけれども、名刺交換等を行ったと、こういった関係にあるということでございますという発言を官房長官はされておられます。山田広報官にお伺いますが、菅正剛氏と最初にお会いしたのはいつですか。この会食があった言われている令和元年(2019年)11月6日の会食のときです」

 山田真貴子「お答え申し上げます。大変失礼ながら、いつ名刺交換したのかというのは記憶にないんですけども、私自身が菅総務大臣以来、菅正剛様が秘書官をやっておられたということは今回の報道で初めて知りまして、と申すのはその当時、自治体に出向しておりまして、ひと月程しか重なっていないということでございます。

 というわけで、総務省の職場で面識を得たということはございませんでした。名刺交換をさせて頂いたのは残念ながら、いつだったということは記憶がないものですから、ただ、比較的最近ではないかなというふうに思っています」

 後藤祐一「全く面識のない菅正剛氏とそしてこの東北新社との関係は先程会ったことはないということでしたけど、社長の就任祝いという名目で開かれた会になぜ急に参加することになったのですか。その経緯をお話ください」
 
 山田真貴子「今のお話でございますが、菅正剛様とは名刺交換というのはこの会合以前にしていたというふうに思っております。で、先程、名刺交換だけでございまして、突っ込んだ話をしたり、会話したりということは記憶にないところでございます。で、東北新社様とは菅正剛様とお話させて頂きましたが、前の社長様、植村徹様と記憶しておりますが、新しくなられまして、二宮様に代わられたということでご挨拶されまして、そのときに(菅正剛と)お話があったんではないかなというふうに思っています。

 私自身、そのときには放送の担当は外されておりまして、国際政策の担当をしておりましたので、そういう意味では直接に交わる、語るお話と言うよりは世界的な映像事務ですとか、映像一般のお話をお伺いするということをしたと考えていたというふうに思っております」

 後藤祐一「令和元年(2019年)11月6日の会合、1回しかしてお会いしていないと言っておりますが、どんなお店だったのですか。ホテルの中のお店だとか、和食の座敷みたいなところだとか、出た料理について少しありましたけど、お店の特徴について覚えている限りでお話ください」
 
 山田真貴子「和食レストランというカテゴリーだと思います。ご利用(?)頂いている企業などにもアンケートを行っているところでございまして、お店の営業に影響がないようにこれ以上は差し控えせさせて頂きます」

 後藤祐一「どんな会話をされたんですか。BS、CS、あるいは・・・・無線、架線(?)、・・・(?)の配分。あるいはちょうどその頃にはもう少し支援してほしい、おカネがかかる、何とかして欲しい。色んなお話があったと思いますけども、こうしたBS、CS・・・・・こういったようなお話なかったですか」

 山田真貴子「私自身、繰り返しになりますけども、その時点では放送の関係でございませんでした。私自身も仕事の指揮としましては移動したときがそのような仕事(国際政策)に就いて、過度に派手に関与すべきではないと、こういう意見をしっかりと頂くべきであるという考えのもとに仕事をしてきております。で、そういったことでございますので、元々こういう場(会食の場)で何か仕事の話をするタイプでもございません。

 勿論、放送業界ですとか、業界全体の実情に関する話はあったかもしれませんけども、全体的としては一般的な懇談であったというふうに思います」

 後藤祐一「この委員会に提出された『山田真貴子の事案について』の中でこの会合のときの会話については業界に関する話が繰り返し話題が出た。しかし行政を歪めるような不適切な働きかけはなかった。この3つの条件を厳しくしたという。『行政を歪めるような』、『不適切』、『働きかけ』

 行政を歪めているかどうかは分からない。適切か不適切かどうかは分からない。働きかけとなっているかどうかは分からないけども、極めて東北新社という会社にとっては重要な政策論についてお話したことはありませんか」

 山田真貴子「働きかけというものはなかったというふうに思っています」

 後藤祐一「働きかけに限りません。東北新社に取ってはテロップ(?)の配分ですとかBS、CSこれからどうなっていくかっていうのはこの先の会社の命運を分ける話になるわけです。働きかけではないかもしれないけれど、行政を歪めるかどうかは分からない、不適切ではないかもしらないけど、こういったBS、CS、特に東北新社に関係するような放送行政に関係するような話題はありませんでしたか」

 山田真貴子「繰り返しになりますけれども、放送業界全体の実情に関する話はあったかもしれませんけれども、全体としては一般的な懇談であったとかというふうに考えております」

 後藤祐一「BSの無線のところは開けるとかね、左のところはお客が少ないから、そこは何とかするっていう話は東北新社に直接影響する話なんですよ」

 総務大臣武田良太に検証委員会できちんと検証すべきだと求める。武田良太の答弁は省略。

 後藤祐一「山田広報官、この検証委員会から来てくださいと言われたら、きちんと来て頂いて、審議させて頂きますか」
 
 山田真貴子「お答え申し上げます。検証委員会がどういった形なのか、まだ私の立場ではその場に行っていいのかということにつきましては今の時点で判断することがちょっと難しいかなと思っております」

 後藤祐一「呼ばれた場合にはお越し頂けるということでよろしいですか。呼ぶかどうか検証委員会の方々が判断する話だと思いますけど。呼ばれた場合には起こし頂くということでよろしいですか」

 山田真貴子「呼ばれた場合に私の一存で行けるかどうかということはそこは一応組織の人間でございますので、ご相談した上で判断させていただきますので、私自身は何か予断を持っているわけではございませんが、私一人では判断しかねるところでございます」

 後藤祐一「そうかも知れませんね。官房長官か総理が判断するのかもしれませんね。総理の責任が問われるわけです。そこは是非総理に来て頂いたときに聞いてみましょ。

 谷脇(康彦)総務審議官にお越し頂いておりますけども、今回の事案につきまして22日の、広田委員のこの委員会での質問に対して今回の事案につきまして公務員の倫理法に抵触する恐れのある事案でございますけど、過去に於いて放送事業者と同様なことをしたということはございませんということで、東北新社と同同様な会食はほかの放送事業者に対してはしていないと答えていますが、同様かどうかは関係ありません。同様でなくても、結構ですが、東北新社以外の放送事業者、そして谷脇総務審議官はむしろ情報通信の世界のプロだと伺っておりますので、情報通信関係の関係者と会食したことございますか」

 谷脇康彦「お答え申し上げます。先ず今般、公務員倫理規定の違反をしたとして今般、懲戒処分を受けましたことにつきまして深く反省をし、またお詫び申し上げたいと思います。

 委員のお尋ねでありますけども、通信事業者、あるいは放送事業者を問わず、東北新社以外の事業者と公務員倫理法に抵触する恐れのある会食をしたという事実はありません」

 後藤祐一「修飾語はつけないで、単に東北新社以外の放送事業者、その関係者、そして情報通信関係の会社とその関連の会社の関連の方々と会食をしたことはございますか。色々と修飾語をつけないでお答えください」

 谷脇康彦「お答え申し上げます。意見交換を目的として通信事業者、もしくは情報通信事業者と会食をするということはございます」

 後藤祐一「それは利害関係者に当たるかどうかはもう本人の言うことはもう信用できないわけですよ。是非、法務大臣、この検証委員会は今のようなこと、東北新社以外の放送事業者、その関連の方々だけではなくて、通信関係の谷脇さんなんかは大きな影響力を持っているわけですから、今回の(事案?)、まさにそうじゃないですか、この方々と利害関係者に当たるか当たらないか、みんな間違えていたわけですから、本人たちに判断させたなら。利害関係者と飯を食っていないと言うに決まってるじゃないですか。

 ですから、利害関係者に当たるか当たらなかは置いておいて、当たらないと思っているような人であっても放送関係者、情報通信関係者と会食したかどうか、これ検証委員会で検証して頂く必要があるんじゃないですか」

 武田良太(総務大臣)「先程から申し上げていますように二度とこういうことが起きないようにするための機関でありますので、ありとあらゆるものを検証して頂きたいと思いますので、最終的に委員会が判断すべきだろうかと思っております」

 後藤祐一「委員会だって東北新社限定なのか、東北新社以外の放送事業者まで入るのか、あるいは通信の世界まで入るのか、その場合を決めて貰わないと困りますから。大臣、情報通信まで含めてやるっていうことでよろしいですね」

 武田良太「二度と国民の疑念を招くようなことにならないように機能できる委員会を期待しております」

 後藤祐一「是非、どう対処していくのか、みんなも見ていると思いますので、出して頂きたいと思います」

 山田真貴子に対する追及は終わる。

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食事用の布マスクが頭に思い浮かび、その仕組を形にしてみた 仕組み通りに実用性に適うかどうかは分からない

2021-03-08 12:05:56 | 政治
 食事用の布マスクが頭に思い浮かんだ。Google画像で既存の食事用マスクを調べたら、顔一面を覆うフエイスシールドを口に飲食物を運ぶたびに上げ下げする仕掛けのものとか、布マスクの口の部分を二重にして、ひと重側の布を持ち上げると、ふた重側の口に当たる布部分がくり抜かれていて、右利きなら、ひと重側の布を左手で持ち上げておいて、その間に右手で食べ物をくり抜いてある場所から口に運ぶ方式のものなどがあった。

 当方が考えたファスナーと形状記憶合金ワイヤーを使った食事用の布マスクは見当たらなかった。但し実際に製作してみたのではなく、頭に浮かんだ仕組みをその仕組み通りに画像と言葉の形にしただけのものだから、実際に着用可能なのか、着用可能でも、実用性があるのかどうかも分からない。専門家が一目見ただけで、使い物にならないといった評価を下す代物かもしれない。だが、折角頭に浮かんだから、ここに紹介してみることにした。

 画像にして説明することにしたが、手直し箇所があるので、改めてテキストで説明し直すことにする。

 〈ズボンのファスナーはスライダーを上に上げると閉まり、下げると開くが、逆の開閉にする。ファスナーの外側に沿って布の中に0.3ミリの形状記憶合金ワイヤー仕込む。スライダーを上げて、ファスナーを開くと、ワイヤーが上に跳ね上がって、口元に茶碗等を持っていけるようにマスクの端を表側に湾曲させる形で左右に開く仕掛けとする。食べ終えたら、スライダーを下げて、マスクとしての形に戻して、お喋りをするなりする。〉
 
 より具体的に説明すると、ファスナーの片方の歯列〈Zep teeth(務歯・むし)〉を前以って通してあるスライダーにもう一方の歯列を通して左右の歯列を噛み合わせ、ファスナーを閉じることができるようにする蝶棒(ちょうぼう)と呼ばれている小さな部品と、蝶棒を受け止める箱と呼ばれている部品は不必要なため、取り付けず、左右各歯列の下端(布マスクの最下端)にスライダーが抜け落ちないようにストッパーのみの取り付ける。

 スライダーはマスクを閉じている間はマスクの顎の下にイヤリング様のアクセサリーとして吊るしておくことになる。

 当方のファスナーを用いた食事用布マスクは、実用性があった場合はという条件付きとはなるが、飲食物を口に入れる直前にファスナーを上げておけばいいから、フエイスシールドや布二重マスクのように口に頬張るまで空いている方の手で支えていなければならない面倒は省くことができる。但し何らかの面倒を必要としても、既存の食事幼まずくは実用性という点で優るということなのかもしれない。

特にフエイスシールドの場合は何よりも相手の表情が透明なアクリル板を通して眺めることができる点が長所となっているのだろう。

いずれにしても、家庭内感染や飲食の機会の場の感染が多いということは複数で飲食する際には対人距離が最も狭まる状態でマスクを外す回数が多くなることがより大きな要因となっているはずだ。政府側は家庭内での生活は個室すること、食事や寝るときも別室にすること、食事の際はなるべく会話を交さない、その他頻繁に手を触れる場所を消毒することといった注意を一貫して出しているが、飲食の機会の場と共に家庭内の感染が多い傾向は変わらない。

 家庭内感染の場合の原因は空間的にも時間的にも家族それぞれが別室で生活する、あるいは時間をずらす生活をすることのできる余裕のある家庭がどれ程にあるかということに尽きるはずだ。家の狭さに応じた空間的な部屋数の少なさ、子どもが複数いて、親も共稼ぎなら、子どもを幼稚園や学校に間に合わせ、親自身も出勤に間に合わなければならない時間的な余裕の無い家庭の絶対数がより多いということを考えなければならない。

 感染者のウイルスはクシャミや咳だけではなく、これらの生理現象を伴わなくても、目前の距離で会話する場合に生じる飛沫が他者や物に付着することによって感染を広げていく仕組みを取るということを考えると、特に別室で別々に、あるいは時間をずらして食事を摂る空間的余裕も空間的余裕もないとなれば、最も対人距離が一定の時間狭くなる食事の際に飲食を口に運ぶとき以外はなるべくマスクをして会話を交わす必要に迫られる。

 このことは飲食店という飲食の機会の場でも言うことができる。と言うことは、これと言った面倒を煩わされることなく使用できるより実用的で感染防止により効果的な食事用マスクが必要になる。

 既存のマスクがその用を既に果たしているなら、家庭内感染や飲食の場でも感染はもっと減っていいはずだ。
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安倍内閣・菅内閣の国産ワクチン開発政策の大失態とそれを糊塗する愚かしい論理

2021-03-01 10:11:19 | 政治
 なぜ大失態なのか。その答は簡単である。菅政権は2021年1月7日に1都3首都県に2月7日期限の緊急事態宣言の再発令を行ない、1月13日になって対象地域を栃木県、愛知県、岐阜県、京都府、大阪府、兵庫県、福岡県へと拡大した。そして2021年2月2日の記者会見で栃木県のみの緊急事態宣言を最初の期限としていた2月7日で解除することとし、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、岐阜県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県、福岡県については3月7日まで1か月延長することを決定したと。

 菅義偉2021年2月2日記者会見質疑

 タカハシ「イギリスの軍事週刊誌、ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー、東京特派員のタカハシと申します。

 ワクチンについて伺います。総理、2月中旬から接種を開始したいとの意向を示されましたが、世界では既に60か国近くがワクチン接種を開始しております。日本は何でこんなに時間がかかるのでしょうか。G7の中でワクチンの接種を開始していないのは日本だけです。OECD(経済協力開発機構)加盟国37か国中、ワクチンをまだ未接種なのは日本やコロンビアなど僅か5か国。そもそもワクチンは、国家安全保障や危機管理で凄く重要な、日本でやるべき生産、開発だと思うのです。なぜこんなに日本はできないのか。

 なおかつ、総理はいつも日本は科学技術立国と名乗っていますよね。その立国を名乗るならば、なぜメード・イン・ジャパンのワクチンを生産できないのか。こういう状況で、ワクチンも駄目、あと検査も日本は人口比当たり138位です、世界で。検査不足、ワクチン未接種、この中でオリンピックを強行していいのでしょうか。危機管理でもっとコロナに専念してというのは国民の願いではないでしょうか」

 尾身会長にも、ワクチンは何でこんなに日本が遅いのか、一言伺えればと思います。以上です」

菅義偉「先ず、日本のワクチン研究にも国として支援をしていることは事実であります。しかし、現実的にはまだまだ遅れているということであります。

 ただ、このワクチンの確保は、日本は早かったと思います。全量を確保することについては早かったと思います。ただ、接種までの時間が海外に遅れていることは事実であります。それは日本の手続という問題も一つあると思います。慎重に慎重に、いろいろな治験なりを行った上で日本が踏み切るわけでありますから、そういう意味で、遅れていることは現実であるというふうに思います。

 ただ、こうしてようやくこのワクチン接種の体制ができて、これから始めるようにしたいと思っていまして、始まったら世界と比較をして、日本の組織力で、多くの方に接種できるような形にしていきたい、このように思っております」

 尾身茂(政府新型コロナウイルス感染症対策分科会会長)「日本の国内でも、実はもう御承知のように、ワクチンの生産を今、始めているわけですよね。それで、なぜ日本はというのは、これは今の直接の問題よりも、ワクチンというものの全体の日本の状況を世界と比較すると、日本のワクチン業界というのは、もうこれは個々の企業は本当に頑張っていますけれども、やはりこれはグローバルなスケールという意味では、これは今日の今のことではなくて、全体として日本のワクチン業界というのが、欧米の非常に競争力の強いというものに対して、少しスケールメリットがということだと思います。

 それからもう一つは、今回、欧米の今、話題になっているようなのは全く新しい方法をつくったわけですよね。これについて、日本の場合にはもう少ししっかりと、比較的今までに分かっている方法をという、そういう文化の違いもあるし、だけれども、一番の違いはやはり私は日本のこれは今、今日のことではなくて、ずっとワクチン業界のこのグローバルな競争力というものが本質的にあったのではないかと思います」

 タカハシ記者は日本のワクチン接種の遅れと国産ワクチン開発スピードの遅さを尋ねた。対して尾身茂は「日本の国内でも、実はもう御承知のように、ワクチンの生産を今、始めているわけですよね」とは言っているが、製薬会社や研究所の5組織程が開発に関わっているが、政府の資金を2、3百億と得て、最短で2021年3月から臨床試験開始の意向とか、2021年末までに3000万人分の生産体制構築の目標等を掲げているのみで、臨床試験用のワクチンは生産しているだろうが、効果の承認を受けて、本格的生産に至ることができるのかどうかの保証もない状態にあるのだから、尾身茂の答弁は一種のペテンに過ぎない。

 但し日本のワクチン業界はグローバルスケールが小さく、欧米の競争力と比べた場合、劣るといった趣旨で一応はワクチン開発のスピードの遅さの理由については述べているが、菅義偉は「日本のワクチン研究にも国として支援をしていることは事実であります。しかし、現実的にはまだまだ遅れているということであります」と、なぜ遅れているのかの理由には答えずに表面上の遅れのみを言ってかわすペテンを演じている。

 その上、国産ワクチン開発の遅れをカバーできるはずもないのにカバーできるが如くに「このワクチンの確保は、日本は早かったと思います」と早かったことを以って得点とするトンチンカンは大失態を糊塗する愚かしい論理に過ぎない。

 この「早かった」は厚労相田村憲久が2021年1月20日に記者団に対してファイザーとの間でワクチンが日本国内で承認されることを前提に年内に7200万人分にあたる約1億4400万回分の供給を受ける契約を正式に結んだと発表したことを指す。ワクチン確保の契約が「早かった」ことが欧米と比較したワクチン開発の遅れと接種開始の遅れをカバーできる理由とはならない。

 菅義偉は接種の遅れに関しては国会でも答弁している。

 2021年2月17日衆議院予算委員会

 長妻昭「私も多くの方から色んな聞かれることが多いんですね。その中の一つにですね、素朴な疑問として欧米に比べて何で接種が遅れたんだろうと、こういうことがよく聞かれて、担当の大臣からはですね、色んな河野大臣や田村大臣から色んなお話はこれまであったと思うんですけども、全体を統括する総理としてですね、総理の口からこういう理由だから遅れているんだというのを分かりやすく、今日初めてでございますので、総理の口からご説明頂ければ、ありがたいと思います」

 菅義偉「私自身も早くならないかということで何回となく厚労省始め、関係者と打ち合わせをしました。色んな中で先ずワクチン承認が諸外国と較べて遅い。こうした分析があります。

 我が国は欧米諸国と比較して感染者数は一桁以上少なく、治験での発症者数が集まらず、治験結果が出るまでにかなり時間を要する。これが先ず一つ。

 また一方、ワクチンは人種差が、これ想定されて、欧米諸国の治験データーのみで判断するのではなくて、やはり日本人を対象者とした一定の治験を行う必要があると。さらに有効性・安全性に配慮した結果、時間を要したことは事実だというふうに思います。

 そうした様々なご指摘を真摯に受け止めてさせて頂いて、何とか今月(接種が)始まりますので、ある意味慎重にではありますけども、遅れを取り戻すような多くの国民の皆さんに1日でも早くですね、摂取できる環境をしっかりつくっていくのがこれは政府の責任だと思っています」

 菅答弁で抜けていることは外国産ワクチンに頼ったことが接種遅れの原因の一つになっているということである。勿論、効果の承認を受けた国産ワクチンは未だ一つとしてない。だが、果たして国産ワクチン開発の有効な政策の構築という目は皆無だったろうか。


 この答弁はまた、菅自身が気づいていたのかどうか分からないが、気づいていなかったとしたら、鈍感過ぎるが、そのまま国産ワクチン開発の遅れの理由と重なる。

 「NHK NEWS WEB」記事、「新型コロナ ワクチン接種 海外は開始 日本は2021年2月下旬以降か」 

 2020年12月28日の記事である。この記事の中に「国産ワクチン 開発の現状は?」と「国産ワクチンの効果 確認が難しい?」の中見出し付きでそれぞれに解説が加えられている。前者は省略、後者のみの全文を取り上げてみる。文飾は当方。

 国産ワクチンの効果 確認が難しい?

ただ日本で行う臨床試験には課題があり、欧米や南米などと比べると感染者の数が少なく、臨床試験に参加した人が感染する可能性が各国に比べると低いため、ワクチンの効果を確かめるのは難しいと指摘されています。

また、今後海外メーカーのワクチンが国内で広く接種されるようになると、感染者の数がさらに少なくなったり、多くの人が免疫を持ついわゆる「集団免疫」の状態に近づいたりして、臨床試験で予防効果を確認する難しさが増すのではないかという指摘もあります。

このため国内で医薬品の審査を行うPMDA=医薬品医療機器総合機構は、国内で少人数を対象に行う初期段階の臨床試験を終えたあとは、海外で大規模な臨床試験を行うことも選択肢の1つだとしています。

 この国産ワクチン開発が抱えている困難な条件を伝えている記事前半は上記2021年2月17日衆議院予算委員会で菅義偉がワクチン接種の遅れについて述べたこととほぼ重なる。本来なら、菅義偉は国産ワクチン開発の遅れにも留意が必要だったが、タカハシ記者から日本のワクチン開発の遅れについての質問を受けていながら、「ワクチンの確保は、日本は早かったと思います」と言い抜けるのみで、開発遅れについての留意は見当たらない。

 では、菅義偉が「ワクチン承認が諸外国と較べて遅い」と言っていたことの現状を次の記事から確かめてみる。

 「ファイザー日本法人、日本で新型コロナワクチンの治験開始」(化学工業日報/2020年10月21日)
  
 記事冒頭、〈ファイザー日本法人は2020年10月20日、新型コロナウイルスワクチン「BNT162b2」の日本国内第1/2相臨床試験(P1/2)を開始したと発表した。〉と伝えている。

 20~85歳の健康成人を対象とする日本人160例を登録し、21日間隔で2回接種して、安全性や免疫原性などの評価を行う。この国内第1/2相臨床試験(P1/2)と海外で実施中のP2/3(第2/3 相臨床試験)データを合わせて日本で承認申請を行う方針だとしている。

 このような国内での治験の結果、2020年10月20日の日本国内に於ける治験開始後から約4ヶ月近く経った2021年2月14日に厚労省はその有効性に基づいて「特例承認」とし、国内初の新型コロナワクチンとして正式承認、2021年2月17日から医療従事者を対象とした先行接種の運びとなった。

 ファイザーは2020年7月から米国など6カ国で4万人超を対象に国際共同治験を実施、英政府が他国に先駆けて2020年12月2日に承認している。要するに国際共同治験開始から英国の承認までに約5ヶ月がとこを要している。と言うことは、ファイザーの日本国内治験開始から承認までの約4ヶ月近くとさして変わらない。この近似値は国際共同治験対象が4万人超であることに対して日本人の治験対象が160例と少ないことと、既に国際共同治験で実績を上げていたことから考えた場合、日本での治験結果獲得に日数が掛かり過ぎているように見えるが、上記NHK NEWS WEB記事が指摘しているように、〈欧米や南米などと比べると感染者の数が少なく、臨床試験に参加した人が感染する可能性が各国に比べると低いため、ワクチンの効果を確かめるのは難しい。〉ことが影響していた可能性がある。

 結果として国際共同治験に日本人は治験対象に加えて貰えずに日本国内の治験が後回しにされて、菅義偉が言っているように「ワクチン承認が諸外国と較べて遅い」と状況が生じたのだろうか。

 但しいずれにしても人種差は認められなかった。認められたなら、日本国内での承認を受けることもできなかったし、接種開始に至ることもなかった。

 だとしたら、安倍政権にしても、菅政権にしても、ファイザーの国際共同治験方式を見習って、国産ワクチン開発に取り掛かっている日本の製薬会社や研究所に対して多人数の治験対象を得やすいアメリカ等で治験に臨むことができるような政府援助を伴ったワクチン開発政策を構築できなかっただろうか。

 例えば国産ワクチン開発の塩野義製薬が国内2例目の臨床試験を開始したと伝えている「NHK NEWS WEB」(2020年12月16日)記事を見てみる。1例目となる臨床試験は2020年6月に大阪大学発製薬ベンチャー「アンジェス」(大阪)が行っている。

 塩野義製薬の臨床試験開始は2020年12月16日。214人の健康な成人が対象。ワクチンに似せた偽の薬、偽薬のどちらかを3週間の間隔をあけて2回投与し、1年間にわたって追跡して評価する。この治験は第1/2相臨床試験を指す。1年間追跡後に効果が証明されたなら、第3/4相臨床試験に着手ということなのだろう。この第3/4相臨床試験から承認に至るまでに一定の日数を要することになる。ファイザーが2020年7月から国際共同治験を開始し、約5ヶ月後の2020年12月2日に英政府が承認したスピード感とは桁違いの遅い様相となっている。

 このスピード感も最初のNHK NEWS WEB記事に書いてあるように日本人感染者数が欧米や南米と比較すると極端に少ないことと、、臨床試験参加対象者が感染する可能性が各国に比べると低いことといったことが影響しているのだろうか。

 アンジェスが2020年6月に国内治験開始後の約6ヶ月後の2020年12月18日に米国で第1相臨床試験(P1)の開始を発表したと2020年12月21日付「化学工業日報」が伝えている。

 〈安全性などが確認されたら、中等症~重度の新型コロナ患者を対象としたP2へ進める。P2で良好な結果が得られれば、米国食品医薬品局(FDA)に緊急使用許可(EUA)を申請する予定。米国の進捗を見ながら、日本でも開発を検討する。〉と記事は解説している。

 この米国での第1相臨床試験(P1)の開始は記事が解説しているようにアンジェス単独の開発ではなく、カナダのバイオベンチャー、バソミューン・セラピューティクスとの共同開発となっていることから、米国を臨床試験の場所として選んだ可能性が窺うことができる。例え事実は異なっていても、多人数の治験対象者を望むことができる米国で第1相、第2相と効果を確かめつつ、承認を視野に入れた段階で日本国内でも続きの第2相臨床試験を行って、承認に持っていくという計画を立てていることが予想される。

 ファイザーの国際共同治験方式を見習って、国産ワクチン開発に取り掛かっている日本の製薬会社や研究所に対して多人数の治験対象を得やすいアメリカ等で治験に臨むことができるような政府援助をなぜしなかったのだろうか。

 つまりアンジェスは日本国内で第1相臨床試験を開始したものの、米国で改めて第1相臨床試験を開始、第2相を経て承認まで持っていき、成果としたその技術の効果を日本人でも試して、米国内の承認だけではなく、国内承認を獲得する。

 となると、国外から攻めて日本国内の承認に漕ぎつけたファイザー方式と殆ど変わりはない。アンジェスが行った日本国内での第1相臨床試験をファイザーが省き、後回しにした点の違いのみで、アンジェスにしてもこの点を省いて、最初から米国での臨床と承認に的を絞っていたなら、開発のスピードは格段に上がっていたはずである。

 だとしたら、安倍政権にしても、菅政権にしても、ファイザー方式を見習って、国産ワクチン開発に取り掛かっている日本の製薬会社や研究所に対して多人数の治験対象を得やすいアメリカ等で治験に臨むことができるようにワクチン開発の政策を立て、政府援助していたなら、国産ワクチン開発の遅れや接種の遅れを国会や記者会見で追及される恐れは最小限度に抑えることも可能となったはずである。

 こういったことが安倍内閣・菅内閣の国産ワクチン開発政策の大失態の答である。安倍晋三は記者会見で、「政府としても一日も早く皆さんの不安を解消できるよう、有効な治療薬やワクチンの開発を世界の英知を結集して加速してまいります」とか、「私たちは自由民主主義、基本的人権、法の支配といった普遍的な価値をしっかりと堅持していく。そしてこうした価値を共有する国々と手を携え、自由かつ開かれた形で、世界の感染症対策をリードしていかなければならないと考えます」と、安倍晋三自身がさも実効性の実力を備えているかのように見せかけることもなかっただろうし、

 菅義偉が記者から日本の国産ワクチン開発の遅さと接種の遅れを指摘されたのに対して「ワクチンの確保は、日本は早かったと思います」などと、このことを以って国産ワクチン開発政策の大失態の代償とすると同時にその大失態を糊塗する愚かしい論理とする必要性も生じなかったはずだ。

 国産ワクチンを早期に開発できていたなら、日本時間の2021年2月26日夜のオンライン開催のG20=主要20か国の財務相・中央銀行総裁会議で麻生太郎が「低所得国にもワクチンがきちんと配布できるよう資金を出し合って、サポートしなければならない」などと今更ながらに言う必要はなく、ファイザーの日本に回したワクチンを低所得国に回す余地も出てくる可能性は疑い得ない。

 菅義偉が「第75回国連総会における菅総理大臣一般討論演説」で、「第一に新型コロナウイルス感染症から命を守るために治療薬・ワクチン・診断の開発と途上国を含めた公平なアクセスの確保を全面的に支援していきます」と国際公約したことをほんの僅かでも果たすことができていたかもしれない。

 あるいはワクチン担当相の河野太郎が記者会見でワクチンの配送状況を聞かれるたびにファイザー社と合意した供給量の各機関への配送を「EUの(輸出)承認が前提だ」と出たとこ勝負の不安定な保証を振り撒く必要性もかなり減らすことができたはずだ。あるいは高齢者の次の番となる一般国民への具体的な接種時期について、「まだ分からない」などと無計画性を曝け出すこともなかったはずだ。

 全てが国産ワクチン開発政策の大失態から始まっている。当然、河野太郎が言っていることも、結果として大失態を糊塗する愚かしい論理から否応もなしに発していることになる。

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