安倍晋三が5月30日の参院法務委員会で、「当選した当初の数年間加計学園の監査を務め、年間14万円受け取っていた」ことを明らかにしたと同日付でマスコミが報じていた。質問者は民進党の小川敏夫。
記事を読んだときの第一印象は監査という役職の報酬はそんなに安くないはずだということと国会議員を務めながら、実際に監査の仕事をしていたのだろうかという疑問であった。
会計監査にしても業務監査にしても、そんなに簡単な仕事ではないからだ。当然、報酬はそれ相応に高額になるはずだ。
勤務実態がないままに監査という役職で年間14万円の報酬を得ていたとしたら、つまり勤務実態がないからこそ、14万円程度だと言うことなら、その金額はある意味妥当と言えるが、逆に勤務実態がなければ、勤務させていることを装った政治献金という意味合いを持つはずだ。
また、実際に14万円ポッキリの報酬だとは限らない。形式的な勤務に見せかけて14万円という金額に妥当性を持たせながら、裏でそれ以上のカネを支払っている場合もあるはずだ。
ネットで調べたところ、「監査役.com」なるサイトに「監査役の報酬額の目安(年額)」が記載されていた。
常勤監査役 500万~1500万円程度
非常勤監査役 100万~500万円程度
小川敏夫が勤務実態があったのかどうかまでを追及したのかどうかはどの記事を読んでも、何も書いてない。ネットから動画をダウンロードして、関係個所を文字に起こしてみることを思い至った。法務委員会でテロ等準備罪に関する審議がテーマであったが、持ち時間の最後の方で加計学園疑惑に質問を移した。
小川敏夫「ところで総理、総理はこの加計学園、あるいは加計孝太郎と大変親しい関係だと伺っておりますけども、総理ご自身加計学園の役員を務めたことはございませんか。加計学園の役員をしたことはございませんか」
安倍晋三「確か当選した当初でありますから、そうとう昔でありますが、ま、数年間ですが、監査、そういったものを務めたことはございます」
小川敏夫「報酬を受けてますね」
安倍晋三「これはですね、きちんと、これは報告をしているわけでありますが、1年間に14万円という報酬を受けたことはございます。ま、しかしこれはまさに小川委員の先程の言葉を借りればですね、印象操作であって、これは遙か昔のことでございます。
そうしてですね、今まるで小川さんはですね、私が友人である加計さんのために便宜を図ったが如くの前提でですね、議論をしておられますが、ええー、これは極めて私はですね、恣意的な議論であろうと私は思います。
先程申し上げたように私は国家戦略特区全体に於いてですね、岩盤規制を、これはまさに破っていかなければならない。岩盤規制という、今まで改革できなかったところですから・・・・・」
以下長々と岩盤規制の改革について述べる。
小川敏夫は報酬を受けていることを尋ねた。一言、「年間14万円受けていました」と答弁すれば、小川敏夫の質問に用を足すことができるのだから、当然、このことを答弁の最初に持ってきてから、「きちんと政治資金収支報告書に報告しています」と続けて、何も問題はないことを示すべきだが、常識的には自然な順序を逆にしている。
逆にしなければならなかったのはどうしても正当性を最初に持ってきたかったからで、その裏の心理にしても、逆の状況にあるからだろう。逆の状況にあるから、「印象操作だ」、「加計さんのために便宜を図ったが如くの前提で議論をしている」だ、「恣意的議論だ」と余分なことを言い、聞かれもしない、しかも岩盤規制について国会答弁で何度も口にしている同じことを長々と説明しなければならなかった。
ウソつきがウソでないことの前に言ったことのある同じ弁解を長々と述べるようにである。
安倍晋三は岩盤規制の説明に続けて、次のようなことを口にしている。
安倍晋三「私は私の知り合いだからと言って、私が知り合いだから頼むといったことは一度もないわけでございます。そのことは何回も申し上げているわけであります。
そうでないと言うのであればですね、小川さんはそれを証明して頂きたいと、こう思うわけであります」
小川敏夫「総理、私はですね、総理が加計学園に関してですね、何らかの指示をしたと断定しておりません。ただ大きな疑問を抱(いだ)いております。
ところで総理は私の方で立証しろと仰っている。別にこれ、裁判の場ではありませんから、私が立証する責任はありません」
小川敏夫は加計学園の質問に入った最初のところで安倍晋三は自民党のトップだから、前川前文科省事務次官の証人喚問の手続きを進めるよう、党に指示する考えはないかといった趣旨の質問をしている。
この質問に対して安倍晋三は長々と岩盤規制について述べた後の最後の最後に「参考人招致は委員会がお決めになることだ」の一言で逃げている。
安倍晋三が小川敏夫に対して証明しろと言ったとき、「証明するためにも前川前事務次官の参考人招致は必要だ。参考人招致を我々は疑惑解明の重要な手がかりとしている。立証することを我々に預けながら、参考人招致には応じないということは矛盾していないか」となぜ追及しなかったのだろうか。
小川敏夫は安倍晋三のかつての報酬年間14万円監査役の勤務実態を最後の最後まで聞きもしなかったし、時間切れが来て質問を終えることになった。結局のところ、森友学園疑惑追及と同じで、これまで繰返してきた質疑応答と本質的には何も変わらなかった。