「尖閣諸島は日本の固有の領土である」イコール「尖閣諸島に領土問題は存在しない」とはならない

2010-10-31 08:53:49 | Weblog

 確かに尖閣諸島は日本の固有の領土である。だからと言って、中国との間に尖閣諸島を巡って領土問題が存在しないとする理屈は日中間の現実の政治が事実でないことを教えている。

 「尖閣諸島は日本の固有の領土である」と「釣魚島諸島は中国固有の領土である」を日本と中国がそれぞれの事実としている。そのことを認識しなければならないはずだ。

 いわば「尖閣諸島は日本の固有の領土である」イコール「尖閣諸島に領土問題は存在しない」となっていないことを現実の政治が否応もなしに教えている。

 だが、菅内閣は「尖閣諸島に領土問題は存在しない」とする態度を取り続けている。中国との間で中国に対しても「尖閣諸島は日本の固有の領土である」を事実とさせる真正面から取り組む強い意志を持ち得ないでいることからの逃げた姿勢としてある領土問題の否定であろう。

 菅内閣の今回の中国漁船衝突事件の乗組員と船長逮捕で中国に領土問題でのパンドラの箱を開けさせた。中国は単に箱の底にしまっておいたに過ぎない。箱の底には元々領土問題は存在していたのである。「領土問題は存在しない」ではなく、「中国が中国の領土だと主張しているが、日本の領土であることは歴史的にも国際法的にも事実なのだから、日本の領海内の問題として処理する」とする冷静、且つ毅然とした意志を基本的姿勢として問題処理に当たるべきだったろう。

 いわばどのような軋轢や衝突が生じることが予想されたとしても、また実際に軋轢・衝突が生じた局面に立ち至ったとしても、中国漁船が領海侵犯を犯した時点から、「尖閣諸島は日本の固有の領土である」とする日本側の事実に忠実に則った態度を取り、その態度を最後まで維持すべきだった。「わが国の国民への影響や今後の日中関係を考慮すると、これ以上、船長の身柄の拘束を継続して捜査を継続することは相当でないと判断した」などといった中国側の事実に配慮した理由をつけて処分保留で釈放するするのではなく、起訴に持ち込み、罰金刑を科す。中国側が罰金を払わない意思を見せたなら、漁船を差押さて罰金の代わりとし、乗組員と船長を強制送還する。

 だが、菅内閣は中国が取った対抗措置に狼狽し、「尖閣諸島は日本の固有の領土である」に忠実に従った態度を途中放棄した。徹頭徹尾真正面から取り組む姿勢を取ることができずに「尖閣諸島は日本の固有の領土である」とすることから逃げたのである。逃げたことを認めたくないためと国民に隠すために「領土問題は存在しない」を言い続けたに過ぎない。

 もし「領土問題は存在しない」が真正な事実なら、アメリカの助けを借りて、「尖閣諸島は日米安保条約の枠内にある」といった米側の発言を中国への間接的メッセージとする必要はないはずだ。

 ベトナムハノイのASAN首脳会議に各国首脳が集まるのを機会に日本側が求めて最後の最後になって中国側がオーケーした日中首脳会談が中止となった原因の一つが日中外相会議後の前原外相の発言だとしているが、明確にどう発言したかはマスコミも重要視していなかったのか、記事を捜してみたが分からないが、間接的に伝えている記事がある。《レアアース問題 今後も協議 日中外相会談》asahi.com/2010年10月29日14時1分)

 前原外相が中国側がレアアース(希土類)の輸出を止めている対応に懸念を表明したのに対して、中国側が「駆け引きの材料にしない」との認識を示し、今後も密接に協議していくことになったとする内容の記事だが、このことは前原外相が会談後に記者団に明らかにした内容だとしている。

 前原外相「中国への製品輸出として(中国自身に)ふりかかってくる問題だ」

 楊外相「この措置は環境保護、資源管理という中国の考え方に基づく」

 「駆け引きの材料にしない」が、「環境保護、資源管理」の観点から輸出調整、もしくは輸出制限はあり得るとの意思表明であろう。輸出調整、輸出制限が対日禁輸という形を取らない保証はない。
  
 勿論、前原外相は日中間に懸案事項となっている他の問題についても明らかにしている。戦略的互恵関係の構築の確認、そして領土問題。

 〈尖閣諸島の領有権を巡る議論では前原外相から話題を切り出し、「尖閣は日本の領土」とする日本の立場を改めて伝えた。中国側は、中国の原則論を述べたという。〉――

 前原外相自身が領土問題を「尖閣は日本の領土」だと切り出したなら、中国は、「釣魚島は中国固有の領土である」と切り返したはずである。

 だが、「中国の原則論を述べた」としてのみ扱い、日本は「尖閣は日本の領土」だと記者団を通して世界に向けて(少なくとも中国側はそう取ったに違いない)公表した。

 領土問題のこのよう扱いも真正面から取り組む姿勢ではなく、逃げた姿勢の現れであろう。なぜなら、日本側のみが「尖閣は日本の領土」であると言って片付く問題では既になくなっているからだ。その事実を厳しく認識するだけの合理性を取り得ていない。「中国は尖閣は中国固有の領土だと主張した。日本も尖閣は日本の固有の領土だと主張した。いつかはこの領土問題を日中間で解決しなければならないことを申し上げ、解決のための会談を提案した」という、真正面から取り組む態度を取るべきではなかったろうか。

 この日中外相会談に関する中国側の発言の全文を伝える記事がある。《胡正躍中国外務次官補の発言全文》時事ドットコム/2010/10/29-22:43)

 胡正躍外務次官補「周知の通り、中国側は一貫して、中日間の四つの政治文書を基礎に、中日関係の維持と推進に力を尽くしてきた。しかしながら、東アジア指導者による一連の会議の前に、日本の外交当局責任者は他国と結託し、釣魚島(尖閣諸島)問題を再びあおった。日本側はさらに、同会議の期間中、メディアを通じて中国の主権と領土保全を侵犯する言論を繰り返した。

 楊外相は中日外相会談で、中国側の釣魚島問題における原則と立場を説明し、釣魚島と付属の島が中国固有の領土であることを強調した。その後、日本側はさらに、外相会談の内容について真実と異なることを流布し、両国の東シナ海問題の原則と共通認識を実行に移すという中国側の立場を歪曲(わいきょく)した。日本側のあらゆる行為は衆目が認めるように、両国指導者のハノイでの会談に必要な雰囲気を壊すもので、これによる結果は日本側がすべて責任を負わなければならない」

 「東アジア指導者による一連の会議の前に、日本の外交当局責任者は他国と結託し、釣魚島(尖閣諸島)問題を再びあおった」の「他国」とは勿論米国を指し、ハワイでの日米外相会談を非難対象としている。

 楊中国外相は30日にハノイで行った米中外相会談で尖閣問題についてクリントン米国務長官に申し入れている。《尖閣問題に口挟むな=中国外相がクリントン長官をけん制―米は3国会合を提案》時事ドットコム/2010年10月30日(土)20:03)

 楊中国外相「高度に敏感な問題では言動を慎み、中国の主権と領土保全を尊重し、いかなる誤った言論も発表すべきではない」

 尖閣は中国の領土であり、中国の主権問題であるとしている。対してクリントン長官。

 クリントン長官「尖閣諸島は米国の対日防衛義務を定めた日米安保条約の適用対象である。・・・・日中間のいかなる意見の相違も平和的に解決するよう促してきた。日中の平和で安定した関係はわれわれすべての利益だ」

 その上で、〈米国が日中双方に対し、日中関係の緊張緩和に向けて日米中3カ国による外相級会合の開催を提案したことを明らかにした。〉という。

 だが、日中間に刺さっている双方が我が国固有だとする領土問題のトゲを取り除かない限り、本質的、且つ根本的なな緊張緩和は望むべくもないはずだ。日本自身が中国との領土問題解決の会談に乗り込み、歴史的事実を中国に対してぶつける以外に根本的な解決への道筋は見えてこないだろう。

 この真正面から取り組まない、逃げた姿勢は勿論前原外相だけの姿勢ではなく、内閣としての共通した姿勢であり、以前ブログに取り上げたが、菅首相の内閣の長にふさわしい率先した姿勢ともなっている。再度ここに取り上げてみる。

 ベルギーのブリュッセルで行われたASEM=アジア・ヨーロッパ首脳会議閉幕後の10月4日(2010年)夜に行われた菅首相と温家宝首相との例の25分間の懇談。菅首相は懇談後に記者団に発言している。

 b>菅首相「だいたい同じ方向に歩いていたんですが、『やあ、ちょっと座りましょうか』という感じで、わりと自然に普通に話ができました。・・・・温家宝さんの方から原則的な話があったもんですから、私の方も領土問題は存在しないという原則的なことを申し上げた」(朝日テレビ

 双方の「原則」として放置する、いわば「尖閣諸島は日本固有の領土である」と「釣魚島は中国固有の領土である」とそれぞれが主張する双方の事実を双方の事実としたまま放置する逃げた姿勢――真正面から取り組まない姿勢を取った。

 その結果としてある今日まで尾を引いている首脳会談中止だ、反日デモだの関係悪化であろう。

 「尖閣諸島は日本の固有の領土である」イコール「尖閣諸島に領土問題は存在しない」ことにはならないことを厳しく認識して、その認識に真正面から応じる、決して逃げない姿勢を模索すべきであろう。

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菅首相・岡田幹事長の「カネのかからない政治実現」姿勢なしの企業献金再開は「政治はカネなり」の実践

2010-10-30 09:47:41 | Weblog

 民主党は26日午後の党常任幹事会で受入れを自粛してきた国との契約が1億円未満の企業・団体からの献金を再開することを決定した。《民主、企業・団体献金を受領へ 自粛から一転、再開》asahi.com/2010年10月26日15時0分)
 
 記事は、〈民主党は09年マニフェストで「企業団体による献金、パーティー券購入を禁止します」と明記し、今年7月の参院選でも同じ内容を掲げた。〉と書いている。

 2009年総選挙民主党マニフェスト――

6.企業団体献金・世襲を禁止する

【政策目的】

○政治不信を解消する。
○多様な人材が政治家になれる環境を整備する。

【具体策

政治資金規正法を改正し、その3年後から企業団体の献金及びパーティー券購入を禁止する。
当面の措置として、国や自治体と1件1億円以上の契約関係にある企業等の政治献金・パーティー券購入を禁止する。
○個人献金を普及促進するための税制改革を実施する。
○現職の国会議員の配偶者及び三親等以内の親族が、同一選挙区から連続して立候補することは、民主党のルールとして認めない。
○政治資金を取り扱う団体を親族に引き継ぐことは、法律で禁止する。
○誹謗中傷の抑制策、「なりすまし」への罰則などを講じつつ、インターネット選挙活動を解禁する。

 だが、多分、自民党とは違うとして民主党のクリーンさをご披露に及ぶためにだろう、「国や自治体と1件1億円以下の契約関係にある企業等の政治献金・パーティー券購入」までも今年の1月から自粛してきた。岡田幹事長も後掲する自身のブログにこの自粛のことを書いている。

 いわばマニフェストに掲げたわけではない自主的に自粛した「国や自治体と1件1億円以下の契約関係にある企業等の政治献金・パーティー券購入」を解禁するだけのことだから、マニフェストに違反しているわけではないと岡田幹事長は言っている。

 上記「asahi.com」記事はマニフェストが「政治資金規正法を改正し、その3年後から企業団体の献金及びパーティー券購入を禁止する」というふうに禁止の条件としている「政治資金規正法改正」のめどが立たないことから、暫定措置として再開する方針を決めたと、再開の理由を伝えている。

 これは自民党その他の野党と同じ土俵に立たないまま「国や自治体と1件1億円以下の契約関係にある企業等の政治献金・パーティー券購入」まで禁止していたなら、不利になると考えたことを意味しているはずだ。

 例えどのような内容の「政治資金規正法改正」となっても、すべての党にその“規正”のアミを掛けることになるから、同じ土俵とすることができる。但し民主党としたら、なるべく目の粗い、大き目のアミを願っているのかもしれない。改正された「政治資金規正法」に我々も従わなければならないと。

 もし民主党が「政治資金規正法」の改正に関わらず、「国や自治体と1件1億円以下の契約関係にある企業等の政治献金・パーティー券購入」を自粛してきたように独自の禁止方法を取ると言うことなら、「政治資金規正法改正」の目途が立たないことが「1億円以下」解禁の条件とはならないことになる。

 ということは、他の政党と同じ土俵に立つことの方向をより目指した「1億円以下」の解禁の可能性が出てくる。

 記事は、〈今年9月、企業・団体献金に一定の理解を示す岡田氏が幹事長に就任。岡田氏は党副代表時代の09年3月、自らのメールマガジンで「企業・団体が政治の面で資金を出すことは、一定の範囲では認められるべきではないか」などと主張しており、今回の措置は、岡田氏の考えを反映したものとみられる。また、党内には献金がなければ、党財政や政治活動に支障があるとの指摘もある。〉と内情を伝えているが、民主党としてはマニフェストでクリーン政治に向けた理想を高々た掲げたものの、現実を知ったといったところだろうか。

 記事は菅首相が25日の参院予算委員会で公明党の草川議員に対して企業・団体献金の禁止や罰則強化を含めた政治資金規正法改正に協力を要請したばかりであることも解説しているが、鳩山首相退陣後の代表選立候補時から、自身の違いを見せるためでもあるのだろうが、「クリーン政治」を訴え、企業献金の禁止を主張してきている。9月の代表選でも、対立候補の小沢氏との差をつけるたもあるだろうが、「カネのかからない政治実現に向け、企業・団体献金禁止について議論し、年内に党方針をまとめる」毎日jp)と確約さえしている。

 菅首相は、多分岡田幹事長主導ということなのだろう、党常任幹事会決定事項に関して10月27日夜の首相官邸記者会見で次のように述べている。

 《「企業献金再開、マニフェストに反せず」27日の菅首相》asahi.com/2010年10月27日19時35分)
  
 ――企業団体献金。民主党が受け入れ再開を発表して、前原大臣、仙谷長官が否定的な姿勢を示した。民主党は去年の総選挙のマニフェストで「企業団体献金の全面禁止」を掲げたが、党代表としてどう考えるか。

 菅首相「あのマニフェストでは、法改正から3年後、そうした企業団体献金を禁止すると。そういう形になっていまして。マニフェストに反したということではありません」

 多くが「1億円以下」解禁を、“企業献金再開”と把えて批判しているが、菅首相が主張したのは「カネのかからない政治実現」である。 
  
 確かにマニフェストに違反はしていない。だが、「1億円以下」解禁は少なくとも現在以上に“カネをかける政治”への志向を示しているはずである。

 「カネのかからない政治実現」を母として、次の場面である「企業・団体献金禁止」を実現可能とする。

 決して「企業・団体献金禁止」を母として「カネのかからない政治実現」を自らの子どもとすることができるわけではない。

 このことは今回の「1億円以下」の解禁そのものが証明している。

 と言うことなら、先ず最初に「カネのかからない政治実現」に向けた努力を持ってくるべきだろう。

 だが、菅首相も岡田幹事長も、「1億円以下」解禁のみに目を向けている。いわば“カネをかける政治”への衝動を最初に持ってきているとも言える。

 菅首相は元々合理的判断能力を欠いているから、代表選で「カネのかからない政治実現に向け、企業・団体献金禁止について議論し、年内に党方針をまとめる」と発言したとき、「企業・団体献金禁止」のことしか頭になかったに違いない。

 だから、「1億円以下」解禁の方向にのみ向けた舵しか切ることができなかった。「カネのかからない政治実現」は最初からのカラ証文に過ぎなかったと言うことである。このカラ証文に過ぎなかったと言うことも、合理的判断能力ゼロの知らぬが仏に助けられて、菅首相の頭には一切意識することはあるまい。

 各議員は献金を除いた場合、歳費と政党助成金を基本的な政治資金とする。だが、岡田幹事長は、いわゆる“企業献金再開”がマニフェストに違反していないこと、メディアの反応は過剰で、事実に基づいた報道をすべきだと批判している自身のブログ《企業・団体献金―マニフェストに沿った決定、正確な報道を》岡田かつや TALK-ABOUT/2010/10/28)で、「『立法事務費』というものもありますが、政党交付金を中心とした税金で党の財政はほぼ100%賄われているのが現実です。それが、政党として健全な姿かどうかということです」と、政党助成金100%依存は健全な政治ではないと位置づけている。

 では、国会議員の歳費と政党助成金を見てみる。

 政党助成金は2010年度分であるが、共同通信の試算による。
 
 民主党――前年比36億3700万円増の172億9700万円。

 現在民主党は衆参410人として、1人頭は172億9700万円÷410人≒4200万円÷12カ月=350万(議員1人当りの月額政党助成金)

 政党助成金が党所属議員に平等に配布されていないとしたら、私自身は不公平であると同時に理不尽だと思っている。支払っている側の国民からしたら、平等を望むはずだろうと考えているからだ。

 政党助成金(350万)+一般議員歳費月額(130万1000円)+文書通信交通滞在費(100万円〈月額・非課税〉)=580万円(月収入)。

 これに期末手当がつくが、法律で、「期末手当の額は歳費月額及びその歳費月額に百分の二十五を乗じて得た額の合計額に、特別職の職員の給与に関する法律の規定により期末手当を受ける職員の例により一定の割合を乗じて得た額とする。」としている。

 後半を無視して歳費月額にプラスして歳費月額に100分の25をかけてみると、130万1000円+(130万1000円×0.25)≒162万円×年2回=324万円÷12カ月≒27万円(月平均)

 580万円+27万円平均=607万円

 2008年(平成20)年度所得分布を見るために年額に直してみると、607万円×12カ月=7284万円

 2008年(平成20)年度所得分布では7284万円は最高分布としている2000万円以上1.3%の高額所得者の中に入ることになる。日本の人口1億2千万の内、2000万円以上の高額所得者は1.3%かけて156万人、その中でも上位に位置する高額所得者となっている。

 勿論、歳費の中から生活費を賄わなければならない。国会議員ともなれば、付き合いにカネがかかりもするだろう。だとしても、一般的な生活者と比較して、遥かに高額所得者の位置につけている。

 歳費は生活費としてのみ支給されているのではなく、政治活動費としての支給も含んでいるはずである。その歳費を計算に入れずに、岡田幹事長は政党助成金100%依存は健全な政治ではないと言う。

 ここにも「カネのかからない政治実現」の姿勢を見ることはできないばかりか、より“カネをかける政治”への志向しか窺うことができない。

 岡田幹事長の健全な政治とは“カネをかける政治”=「政治はカネなり」ということになる。

 そして菅首相もこのことに同調している。 

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仙谷官房長官の地検に代って短いテープ提出を相当性あるとする弁解が政治介入を証明している(1)

2010-10-29 13:46:32 | Weblog

 昨10月28日の参議院内閣委員会で自民党の西田昌司議員が公開するという尖閣沖中国漁船衝突事件のビデオについて仙谷官房長官に質問した。

 西田議員「えー、自民党の西田昌司でございます。エー、早速ですが、あの、これ通告していないですが、官房長官にちょっとお尋ねしたいことがります。と言うのは、えー、今日の新聞等にも報道がありましたけれども、昨日菅総理と一緒に、例の尖閣のビデオを見られた、ということなんですが、このビデオが何分くらいのビデオだったんでしょうか」

 仙谷官房長官「えー、昨日、私が、あー、見ましたのは、あー、7分ぐらいのビデオであります」

 西田議員「私が質問をしたのは実は、今朝ですね、自民党の外交部会で、えー、この問題についての、えー、質疑がありましてですね、えー、法務省の定口(?)参事官が説明されたんですけども、それによりますと、要は、えー、この、今度の国会の方に提出するビデオ、ですね、えー、短く編集して、出したものであると、それ、5分少々であると、いうふうに発言されているんですね。

 そうしますと、我々が、あのー、要求したのは、えー、那覇地検に、ま、提出したものを、出せという形で要求したはずなんですが、先ず、それがですね、えー、那覇地検に提出したやつが、国会に提出されるようになっているんだけど、それだけ先ず確認しておきたいんです」

 仙谷官房長官「えー、私が聞き及んでいるところによりますと、すべてのテープを、海保が、あー、あー、撮影した、あー、すべてのテープを、那覇地検に送致したと。送ったと、オー、いうふうに聞いておりまして、えー、その中から、那覇地検が国会に、提出してきたものが、昨日衆議院議長を経て、予算委員長のところに届いたんだろうと。こういうふうに私は、承知しているところであります」

 西田議員「ということはですね、それともう一つ確認しますが、その、国会に送致されてきたビデオですよ、送られてきたビデオと、官房長官が総理と見られたビデオは同一のものじゃないと言うことですね」

 仙谷官房長官「全く同一のものでございます」

 西田議員「そこがちょっとずれるんですが、ですから、それが5分少々だと言ったのが、7分だとおっしゃるんで、微妙なズレがあるんですが、まあ、いずれにいたしましてでもですね、私が問題にしたいのは、要はですよ、我々が要求しているのは、あの事実関係なんですよ。あの海保が那覇地検に送ったと。で、それを見せろと言っているものをですよ、なぜ法務省がそこに手を入れるんですか。

 この前から検察の問題で、非常に大きな問題となっているのは、あのDVD、この証拠のですね、ビデオを、改竄をしたと、いう大きな問題となっている今ですよ、なぜ、なぜ、同じようにですよ、海保が出してきた資料を、法務省がそこで手を入れる、これはおかしいじゃないですか。これは政府の方針ですか、それは」

 仙谷官房長官「あのー、ちょっと、誤解があるようでございますが、そんなにいきり立たないで(いきり立ちを押さえ宥めるように両手で何度も上げ下ろしする)、あのー、結構でございますので。(少しヤジ)

 私が、私が、一番当初見たビデオは、5分ぐらいのものであります。で、これは逮捕、手続きに入るプロセスの中で、拝見したものでございます。当日、これは多分ですね、推測をいたしますと、撮影したビデオを、飛行機で送るわけにもいきませんから、多分電送等々の手段で、海上保安庁に、送られた、もの、多分、そのー、オー、この部分だけ、これは推測ですが、現地の海保がですね、この部分だけ、本庁の方へ送っておけと、よく分かる部分だと、いうことだったんでしょう。

 これ全部推測ですよ。この部分は。で、これが逮捕手続きをするに当たって、官邸に持ってこられて、私が拝見した。こういうことでございます。そこは捜査過程での一つ。

 それから、捜査の過程でですね、検察官がこの事件を処理するに当たって、色んな証拠の送致を受けます。検察官送致であります。で、そのときに、送られたビデオ、後どのくらいビデオがあるのか、私は確たることは知りません。そこまでは知らない方がいいと思っています。

 で、証拠として、送った物の中に、この、私共が昨日見た、ビデオもあると言うことでございます。で、検察官が、これをですね、これを、ア、那覇地検が、衆議院議長の、提出の、お、要求と言うか、あー、請求をされた、このことに対して出すビデオですと。従って、行政当局としても、この、ビデオを、出すんで、見ておいてくださいと。まあ、ある意味では、刑事事件としては、刑事事件証拠としては、例の刑事訴訟法47条本文ではなくて、但し書を適用して、この範囲が、相当と認められるので、本来は出せないけども、出すんですと。

 そしてさらに、これは内閣の責任でもありますから、内閣の方としては、ご意見をつけてくださいと、いう趣旨だと、いうことで、ご、意見をつけるについては、これは見ないと、意見をつけるわけにはいきませんから、私共は拝見をして、要望書という形で、内閣の意見、を、つけたと、いうことでございます」

 西田議員「ま、意味がよく分かりませんね。要するに大事なことは、衆議院の方が、ま、参議院も要求していますがね、この国会に提出せよと言ったのは、那覇地検のビデオを提出せよと言ってるんです。那覇地検には海保からビデオがそのままあると。それをそのまま提出するのが、それは義務じゃないですか。なぜ、それをわざわざするんですか。そしてそれが内閣の意見によって、やられたということを官房長官おっしゃっていますが、これはまさに国会に対するですね、国権の最高機関は内閣ではなくて、国会なんですよ。それを国会の要求に対して、なぜあなた方が、自分たちのですね、その、意見を、差し挟んで、そして、那覇地検にそういう編集をしろということを言うですか。

 おかしいんじゃないですか、それは」

 仙谷官房長官「あのー、随分誤解もあるし、私の発言を、内閣の意見を差し挟んで改竄したとか何とかおっしゃるけど、あくまでも、あくまでも那覇地検に送られたビデオが、そういう意味では、数種類あるんでしょう。数種類。

 つまり、私共が見た物の他にも、あるんだろうと思います、私は。ただ那覇地検はこれを国会に出すのが相当であると、相当性の判断をして、出したんだろうと思います。で、それでいて、行政全体としてですね、そのことでよろしいかと、あるいは行政全体として、刑事手法的観点を含むけど、それよりも広い範囲の中で、行政的な判断を、内閣も、何かおっしゃるんだったら、やってくださいと、そういうことだろうと思うんですよ。

 で、これから先はですね、いいですか、国権の最高機関の104条と、相当性の判断という関係になるわけですね。行政としては、このようなことを、考慮してくださいよと。考慮する事情としては、こういうことが、ありますよということを要望として、お伝えをしているということで、従来の例を見ますとね、ロッキードもリクルートも、あるいは、えー、協同銀行ですか、そういうときも、そういう遣り方でやっているということもございますので、証拠をですね、本来は外に出せない証拠を出す、場合には、こういう手順とか遣り方でやるということになってますから、その先例も見ながら、私共が意見を要望としてつけたと、こういうことでございます。

 あー、あの、テープを改竄するとか何とか、テープをどのようにするとか何とか、一切、我々は触っておりません。那覇地検があくまでも、相当と認める範囲で国会に送ってきたと、いうことであります」

 西田議員「あの時間が絶え(?)ていますから、簡潔に答えてくださいよ。要するにですね、要望されたとおっしゃってるから、要望によって、その出てくるテープが全体テープじゃなくて、一部編集されたことになったということじゃないですか。だから、何を要望されたですか。じゃあ、どう要望されてるんですか」

 仙谷官房長官「あの、我々が那覇地検に要望したわけじゃないんです。那覇地検が判断をされて、この範囲が、多分ですよ、このテープが、提出したテープが、相当の範囲だと、刑事訴訟法47条1項、但し書の、相当な場合に当たる部分が、この部分だという判断をされて、送られたと思いますね、それは。そういうふうに那覇地検の書類にも書いてございます。と、いうふうに読めるようにですね。

 で、私共はそれを踏まえて、さらにですね、これ、拒否するときは、拒否するときはですね、出せません。拒否するときは、内閣が声明を要求する段取りになってますよね。104条というのは、2項、3項。

 と言うことは内閣の責任も、この提出をするということについては、内閣の責任もあるということですね。で、その責任を果たすために、これは見なければ、責、見て、我々の考え方を纏めなければ、責任を果たせないということになりますから、その責任を果たすために、ビデオテープを拝見もし、要望書と言う格好で意見もつけたと、こういうことでございます」

 西田議員「だから、要望書の中身を聞いているんじゃないですか。だらだら長い答弁をしなくて、要望書の中身を聞いているんだから、それを答えてくださいよ」

 仙谷官房長官「それ、ご存知、ご存知で質問をされてると思ったんです(「です」を京言葉のように語尾を上げて答える)。ご存じなかったとすれば、誠に、あの、失礼なことをいたしましたが、読み上げます。昨日は、あのー、記者会見でも、全文読み上げましたので、ご存知だと思ったんです。

 平成22年10月24日付、衆議院発、158号、カッコ、(記録の提出要求について)、カッコ閉じる。の件について、点、那覇地方検察庁検事正は当該提出要求に対して、カッコ、(本年9月7日の尖閣諸島沖での我が国巡視船と中国漁船との衝突事案の映像記録)、カッコ閉じる、を衆議院議長に提出したところでございます。この記録はもとより捜査当局によって、検察、あー、ごめんなさい、もとより捜査当局によって、捜査の過程で収集された証拠であり、点、本事件被疑者について、未だに検察当局による処分がなされないと、点、海上保安庁に於ける海上警備、点、あ、これはナカボツ(中点のことか)。えー、海上警備・、ナカボツ、えー、取締り活動の秘匿性が格別に配慮される必要があると、点、関係者の名前・、ナカボツ、人権を保護する必要があること、点、国際政治情勢への影響も考慮することがあることなど、から、点、これを公にするに当たって、より慎重を期すことが相当だと判断されます。マル、従いまして、点、貴委員会の取扱いにつきましては、これは衆議院予算委員会という意味であります。貴委員会の取扱いにつきましては、点、視聴される方々の範囲、方法等を含め、点、極めて慎重な取扱いに特段の御配慮方要望をいたします。マル、

 これをですね、内閣官房長官仙谷由人から衆議院予算委員会委員長中井洽殿、えー、平成22年10月27日、要望書という表題の文書を作成しまして、中井衆議院予算委員長のところに要望をしたということでございます」

 西田議員「それは、だから、官房長官がね、中井予算委員長に対して要望をされた。それは分かりました。私が今言っているのはね、そもそも衆議院の方で予算委員会が那覇地検に要望しているのは、このテープそのものを、公開するように要求していまして、それをですね、先ず国会が見てですよ、国会が見た上で、その官房長官、おっしゃるように、外交的配慮をしなければならないかもしれない。

 それも含めて、我々が判断すべき問題で、なぜ入り口のところでですよ、那覇地検が判断して、この部分だけ出すということになるのかと。それはまさに、政府が国会に対して、そういう要望書を出したとおっしゃったけども、それが同時に那覇地検に対しても同じことを言っているからでしょう。だから、那覇地検が政府の方針として、国会に提出する分をですよ、わざわざ改竄しているわけですよ。編集しているのですよ。

 そういうことになると、国民の知る権利、国権の最高機関としての権利がですね、著しく侵害されることになるじゃないですか。そのことについて問題があるのではないかということを官房長官に指摘しているわけですよ。どう思いになってるんですか」

 仙谷官房長官「先程お読み申し上げたけども、読みましたけども、那覇地検検事正、えー、衆議院のこの記録提出要求についてという、題する書面が書かれているのは、えー、カッコつきでですね、本年、本年、9月7日の尖閣諸島沖での我が国巡視船と中国漁船との衝突事案の、映像記録と、いうふうに書かれていますね。この事案に関する、映像のすべてとか、証拠物一切と、いうふうにか書かれていませんですよね。

 で、これは、今、西田議員がおっしゃったけど、実は、私共の判断といたし・・・、私共と言うよりは那覇地検の判断といたしましては、刑事訴訟法47条、基づきますとですね、但し、公益上の必要、その他の事由、その場合には、ある種、国会に、提出、あるいは公開することができるという規定ですね。で、相当と認められるという場合は、現証拠中の、この部分であるという判断を、当然のことながら、検察庁としては、する。あるいは、実務上していると、いうことだろうと私は思います。

 で、内々、衆議院側と、那覇地検側から話があったかどうか私は存じませんけど、これを、つまり、さっき申し上げた7分物を、出すことが、相当であってですね、刑事訴訟法47条の相当性がある部分を、じゃあ、私共は出します。例えばですね、ロッキード事件のとき、実は、灰色高官を、全部出せと言われたときに、これは多分、私の、これは私が議員になっていませんが、よく分かりませんが、本当のこと分かりませんが、それじゃあ、灰色高官と言われている人たちの、なぜ、灰色高官と言われてて、誰と誰と誰と誰とだというのはですね、報告書を作成して、報告書を作成して出させたわけですよね。国会が、国会が――」

 委員長「簡潔に、簡潔に」

 仙谷官房長官「で、それと同じように相当な範囲を、話をしたかどうか知りませんけど、少なくとも那覇地検の、方では、こういう判断をして、このテープを出せばいいと、7分物を出せばいいと、いう判断をして、出されたと、私は理解をしております」

 西田議員「全く納得できません。委員長にお願いしたいと思います。この問題についてですね、当委員会で集中審議をしてください。これ要望します」

 委員長「本日理事会、理事懇で協議をいたします」

 (次の質問に移る。)

 仙谷官房長官の地検に代って短いテープ提出を相当性あるとする弁解が政治介入を証明している(2)に続く

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仙谷官房長官の地検に代って短いテープ提出を相当性あるとする弁解が政治介入を証明している(2)

2010-10-29 12:56:23 | Weblog

 全体を通して仙谷官房長官が簡潔とは正反対のくどくどしたあれやこれやの言葉を費やして行ったことは、那覇地検が7分だか5分だかの短いテープを提出したことが間違っていないことの弁解の一大展開に過ぎない。

 本来ならば、そのような提出の相当性が正しいか否かの主張は地検側が行うべき事柄であって、官房長官が代って行い得ないことを代って、「相当性の判断をして、出したんだろうと思います」と推測までしてやって、提出の正当性を訴えてやっている。

 この「だろうと思います」、あるいは。「これ全部推測ですよ」といった推測で提出の正当性を成り立たせている点で、言ってみれば、地検の身の潔白を、潔白かどうかも分からない事実を代って晴らそうとしている点で既に論理の破綻を生じせしめている。

 そうしなければならないということは政府が指示、もしくは要請して件のテープを提出させた以外の理由を考えることはできない。要請した通りの内容のテープであるかどうか確認するために、国会に提出したテープであるにも関わらず、国会に先んじて官房長官と首相が見なければならなかった。

 見た結果は、官房長官は27日午後の記者会見で述べている。《「逮捕となる事実分かる」=仙谷官房長官-尖閣衝突ビデオ》時事ドットコム/2010/10/27-16:46)

 仙谷官房長官「(中国人船長の)逮捕状請求、拘留の決め手となる事実が分かるビデオだ」

 ここに誤魔化しがある。なぜなら国会のビデオ提出要請はビデオによって検察が処分保留のまま釈放した時点で政治介入があったかどうかの証明を果たすことを目的としているのであって、「逮捕状請求、拘留の決め手となる事実が分かる」証明のためではないからだ。

 いくら「逮捕状請求、拘留の決め手となる事実が分か」ったとしても、そのことによって政治介入があったかどうかの判定はできない。

 すべてのテープの提出ではなく、一つの短いテープの提出を正しい、相当性あることだと偽装することによって、テープの内容自体の正しさ、相当性に代えて、尚且つその正しさ、相当性を以ってその閲覧のみで逆に那覇地検の事件処理の正しさ、相当性の証明に再度代えようとする意図を働かせた結果の「逮捕状請求、拘留の決め手となる事実が分かるビデオだ」としているのだろうが、逆にそのことが「逮捕状請求、拘留の決め手となる事実が分」からせる「ビデオ」のみの提出を指示したことを証明することになる。

 本来なら、「政治介入がなかったことを証明する事実が分かるビデオだ」としなかればならないところを、そのことに役立たないビデオであるところから、政治介入のプロセスを省略する、あるいは抹消する必要上「逮捕状請求、拘留の決め手となる事実が分かるビデオだ」としなければならなかった。

 那覇地方検察庁の鈴木亨次席検事が9月24日、船長を処分保留のまま釈放することにした午後の記者会見での発言を見てみる。

鈴木亨次席検事「衝突された巡視船の損傷の程度が航行ができなくなるほどではなく、けが人も出ていない。船長は一船員であり、衝突に計画性が認められない」

 鈴木亨次席検事「わが国の国民への影響や今後の日中関係を考慮すると、これ以上、船長の身柄の拘束を継続して捜査を継続することは相当でないと判断した」

 国会のビデオ提出要請はビデオによって政治介入の有無の証明を果たすことを目的としているはずだと書いた。当然、地検側はそこに政治介入がなかったことの事実と、国内法に則って粛々と事件の最初から最後まで処理したこと、特に中国人船長の処分保留のままの釈放を行った、上記記者会見で説明した地検自身の判断の相当性を提出したテープによって証明しなければならない義務と責任を負うことになる。

 また政府も政治介入を行っていないことの証明のために那覇地検が提出したビデオで証明しなければならない義務と責任を負うはずだ。

 くどいようだが、決して、「逮捕状請求、拘留の決め手となる事実」を「分か」らせる証明のためではない。

 それを7分だか5分だかのたった1本の短いテープで行おうとしている。本来なら、すべてのテープを提出することによって、計画性がなかっという判断の相当性だけではなく、悪質性がなかったことの判断の相当性と、処分保留のまま釈放した理由として「わが国の国民への影響や今後の日中関係を考慮」した判断の相当性の当否を証明する材料とし得るはずだが、いわば検察としての身の潔白を晴らすことができる材料とし得るはずだが、それを7分だか5分だかのたった1本の短い、「逮捕状請求、拘留の決め手となる事実が分かる」だけのテープで果たそうとしていること自体に無理があるだけではなく、矛盾がある。

 また国会が検察に提出を要請したテープを国権の最高機関である国会が閲覧する前に官房長官と菅首相が閲覧したことを、提出を「拒否するときはですね、出せません。拒否するときは、内閣が声明を要求する段取りになってますよね。104条というのは、2項、3項。と言うことは内閣の責任も、この提出をするということについては、内閣の責任もあるということですね」と正当化しているが、那覇地検が国内法に粛々と則って単独、独自の判断で逮捕から釈放に至るまで関わった事案であり、内閣は何ら関与していなかった、政治介入していなかった事案であるなら、検察の事件処理とテープの内容自体に関しは内閣の責任は生じないことになる。例え中国を刺激する場面があったとしても、例えば船長は中国に戻ってから道徳的規範の持主として表彰されたそうだが、それを裏切る内容が含まれていたとしても、出発点が国内法に則って粛々ということなら、あくまでも国内法の範囲内で最初から最後まで処理する問題となるのだから、内閣の責任云々するのは矛盾することになる。

 例え中国を刺激する内容を含んでいたとしても、西田議員が言うように「先ず国会が見てですよ、国会が見た上で、その官房長官、おっしゃるように、外交的配慮をしなければならないかもしれない」という段取りを取れば済んだはずだ。

 またビデオを国会に先んじて見るにしても、責任問題の観点から見る必要はなく、単なる外交問題への影響の観点からのみ見れば済む。要望書をつけるにしても、国会の判断を待つべきであろう。

 それを内閣の責任を云々し、慎重な取扱いを要請する要望書を提出しなければならなかったのは、そこに内閣の責任の関与を置くことで二重三重に7分だか5分だかの提出ビデオの提出の相当性と提出したビデオの内容そのものの相当性を担保する必要上からのこじつけしか考えることができない。そうすることによって検察も政府も政治介入の罪に関して無罪だとする論理の展開が可能となる。

 このことは仙谷官房長官の「あの、テープを改竄するとか何とか、テープをどのようにするとか何とか、一切、我々は触っておりません。那覇地検があくまでも、相当と認める範囲で国会に送ってきたと、いうことであります」という言葉が証明している。

 事実ビデオ自体を改竄する恣意、意図を働かせなかったとしても、数あるビデオの中で7分だか5分のビデオの一つを選択をして衆議院に送ったこと自体が、その選択に検察側の何らかの恣意、あるいは意図が働いたことになるだから、国会のビデオ提出要請はビデオによって政治介入の有無の証明である以上、数あるうちから短い一つを選択したその恣意、意図は政治介入を否定する恣意、意図を働かせた選択と見なければならない。

 恣意、意図を一切働かせる必要がなかったなら、すべてのビデオを提出しただろう。

 当然、送らなかったビデオについても、送らなかったことについての恣意、意図を働かせた選択となる。これも国会のビデオ提出要請が政治介入の有無の判断にあることからの送らなかった選択と見なければならない。

 その結果、「逮捕状請求、拘留の決め手となる事実が分かるビデオ」に絞ったということである。

 その政治介入とは中国を刺激することを恐れた措置としての介入なのは誰でも想像つくことであるが、仙谷官房長官は弁護士出身らしく物的証拠を徹底的に隠すことで政治介入の疑いを疑いのみにとどめる強い意志を、菅内閣が吹っ飛ぶ恐れがあるのだから当然でもあるが、強い意志で働かせてはいるものの、非事実を事実と企もうとする余り、検察に代って検察の正当性を証明しようとするくどくどとした回りくどい弁解の一大展開となったといったところに違いない。

 多分、ビデオのすべてを公開した場合、「衝突された巡視船の損傷の程度が航行ができなくなるほどではなく、けが人も出ていない。船長は一船員であり、衝突に計画性が認められない」の釈放理由の内、「計画性」を除いて否定され、逆に悪質性の証明と、「わが国の国民への影響や今後の日中関係を考慮すると、これ以上、船長の身柄の拘束を継続して捜査を継続することは相当でないと判断した」のみが正当な理由となって残り、そこから政治介入が浮かび上がって国内法に則って粛々として対応したとする釈放そのものが破綻を来たすことになり、そのことを恐れたことからの「逮捕状請求、拘留の決め手となる事実が分かるビデオ」ということなのだろう。
 
 結局はビデオのすべてを見ないことには政治介入は証明できなくても、仙谷官房長官の西田議員の質問に対する答弁は限りなく政治介入のクロを証言していると見ざるを得ない。
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特別会計事業仕分けが教えるすべてに亘る第三者監視機会の必要性

2010-10-28 09:16:28 | Weblog

 【再度謝罪と訂正】

 一昨日のブログ記事《23歳女性教諭の小学校3年生、「妹を殺す」授業の不適切な点》で、商業高校の教師が出した、襲われた校長が息を引き取る間際に残した数字「41124」から「校長を暗殺した犯人は誰か」を問うクイズに近いテストで、数字を上下逆にして「1」を「い」と読んで、「4124」の間違いではないかと書いたが、「11」を逆にした二本棒から「い」と読ませているということで、記事どおり「41124」が間違いのない数字でした。

 とてもついていけない教師の想像性ですが、謝罪します。


 ――このことは国政・内閣にも言えることである――

 特別会計仕分けが昨27日(2010年10月)から開始された。2010年度現在、国には18の特別会計があり、特別会計予算は一般会計予算の2倍から3倍を占めるにも関わらず、一般会計予算は国会で審議されるが、特別会計に所属する各事業は各省庁毎に所管、独自に予算を組み、国会の審議に付されることなく、執行・運営される特別扱いとなっているという。

 このような性格であることから、従来から「一覧性、効率性、透明性」に欠けると言われている。いわば国民の目からすると、ベールに包まれた状況にあった。「一覧性、効率性、透明性」欠如に隠れた、いわば「一覧性、効率性、透明性」が欠けていることをモッケの幸いとした特別会計事業への天下り、予算(税金の遣い道)のムダ遣い、不必要な事業の不必要なままの運営等を行ってきた。

 あるいは自分たちの好きにするために「一覧性、効率性、透明性」を意図的に隠すことを最初からの目的としていたのかもしれない。

 自分たちの懐を痛めることのない不必要な事業の不必要なままの継続は往々にして政・官・財の癒着や不正、独善的経営の温床となる。

 そこにメスを入れると言うのが今回の特別会計仕分けであろう。ムダな予算の洗い出しだけではなく、最終的には特別会計の「一覧性、効率性、透明性」を所定の性格とし、国民の目に見える状況に持っていくことを目的としているはずだ。

 だとしたら、特別会計予算にしても、も一般会計予算と同様に国会審議の義務づけが最善に向けた第一歩の方法となる。

 特別会計仕分け第一日の成果を、《1特会・5事業を「廃止」判定 事業仕分け第3弾》asahi.com/2010年10月28日0時34分)から見てみる。

 〈「無駄の温床」と指摘される7省所管の18特別会計(特会)51勘定が対象。省庁の「財布」といわれる特会に切り込み、税金の使い道や隠れ借金を明らかにする考えだ。

 初日は、経済産業省が所管する「貿易再保険特会」を「廃止」と判定し、独立行政法人「日本貿易保険」との一体化を求めた。農林水産省所管の「漁船再保険及び漁業共済保険特会」など3特会は「統合すべきだ」と結論づけた。厚生労働省所管の「労働保険特会」では、ジョブカード制度普及促進事業など計5事業を「廃止」と決めた。〉――

 「廃止」の判定を受けた経産省の「貿易再保険特会」はその継続理由を、「元々は国がやっていた」、「各国とも国がやっている」と主張したそうだが、事業の正当性や効率性よりも既得権維持に流されて、そのことのみを優先し、そのことが自己目的化していたことが分かる。

 特会のこの自己目的化は仕分けチームという第三者の目が入ることによって明らかにされ、そのことによって国民の目に対しても明らかとなる経緯を取ることになる。

 国民の目に見え、国民の目に明らかになることによって、国家や政治に対する国民の監視が可能となる。

 勿論、国民自身が間接的な立場ではなく、国会審議の中継等から直接的立場で監視者の役割を果たすことができる場合もあるが、多くはマスメディア等の第三者の監視を通して国民の監視とする間接的監視の形式を取ることになる。

 特別会計予算も国会審議を義務づけることによって、国民が直接監視可能とすることができるが、現在のところ仕分けチームという第三者の監視を通した国民の間接的監視の形式を取ることで特別会計事業への監視を可能としている。

 但し、確実に言えることは報道を含めた第三者の監視がより専門的、より的確な監視となり得るということであろう。

 「一覧性、効率性、透明性」を欠いていることを利用して、あるいは「一覧性、効率性、透明性」を隠すことによって事業運営や非効率な予算作成とその執行を誰の監視を受けることもなく自分たちの監視のみで行ってきたが、初めて仕分けの監視が入り、その運営実態が仕分けチームの監視を通して国民の間接的な監視を受けることとなった。

 このことを逆説すると、監視のない場所では事業経営に関して独善が横行しがちとなり、それを阻止するには監視する機会を適宜設けることが有力な手段となることを教えている。

 この教えは特別会計や一般会計のみならず、政府の運営や行動等の国政全般にも言えることで、監視の機会を設けなかった場合、いわば監視を怠った場合、例えば国民に向けて公開する情報の的確性は国民の目に見えるゆえに監視可能となるが、逆に公開せず隠すことで国民の目に届かない情報の的確性、さらに公開せずに隠すこと自体の正当性は誰の監視も受けないゆえに国民には判断不可能となり、政府独断の取捨選択による、自身に都合のいいだけの情報公開となる危険性が生じることも教えている。

 国民のこの監視不可能は政府が「国民のための政治」と言っていたとしても、実際に「国民のための政治」となっているかどうかの監視も不可能とすることになる。

 「国民に開かれた政治」と言いながら、その手段となる情報公開に関しては政府の都合・不都合で取捨選択した情報のみの公開で済ませて、公開した場合は都合の悪い政治の実態を隠して、監視不可能とする。

 自民党が民主党政権が行う今回の特別会計事業仕分け結果を検証することにしたと《自民 事業仕分けの結果検証へ》NHK/2010年10月27日 8時1分)が伝えているが、この検証は特別会計仕分けが的確に行われたかどうかの監視の役目を果たすことを目的としているだろうから、国民にとっての間接的な監視の役目を果たすことにもなる。

 記事は〈過去の事業仕分けの結果と現在の民主党の政策の間には多くの矛盾があるという指摘や、年金制度改革の全体像もないままに年金特別会計の事業仕分けを行っても細かな見直しにとどまるのではないかという意見〉が出ていて、〈今回の事業仕分けで民主党の政権公約通り不要な特別会計の廃止に切り込み、子ども手当などの財源をねん出できるかどうか確認する必要〉からの検証だとしている。
 
 このことは国政に対するすべてに亘る監視機会の必要性に適う監視機会の一つに位置づけることができる。

 尖閣諸島沖中国漁船衝突事件のビデオを今回政府はようやく公開することになったが、国民には公開せず、一部議員のみの公開となる方向だということだが、国民の監視を受けないビデオ公開ではこのことに関する政府の行動の適否、中国漁船の態度の適否は判断不可能となり、政府の側から国民に対して「国民に開かれた政治」となっているか、「国民のための政治」となっているのかの監視の受付を拒否することになる。

 また、すべてに亘る第三者監視機会の必要性に反する政府の措置となる。「国民に開かれた政治」と言いながら、そのことに応えていないということである。


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TPP参加は全体的な国民生活の利害を国益として判断すべき

2010-10-27 10:48:15 | Weblog

 今日本がTPPに参加するかどうかで政府内で賛否の議論が起きている。
 
 TPPとは《TPPとは》日本経済新聞電子版/2010/10/21 19:50)が解説している。

 〈▼TPP 環太平洋戦略的経済パートナーシップ協定(Trans Pacific Partnership)の略。域内の物品貿易は関税を即時撤廃するのが原則で、品目によっては10年間で段階的に廃止する。シンガポール、ニュージーランド、チリ、ブルネイで2006年に結んだ自由貿易協定が発端。現在は米国、豪州、ペルー、ベトナム、マレーシアを加えた9カ国で交渉が進んでいる。コメなど特定品目を関税撤廃の例外措置とするよう求めながら交渉に参加するのは現実的には難しい。〉――

 この解説だけで、農業分野所管の農水省反対が理解できる。省として自らが代弁する農業分野の利害に反すると看做しているからだろう。賛否の相違は利害の相違に対応する。利害を省益と置き換えることもできる。だが、省益は農業分野の利害とイコールとは限らない。省の利害を優先させる目的から農業の利害を後付するといったこともある。

 いわば省益に準じた農業の利害といった関係を取る場合が往々にして存在する。

 次に経産省。《経産相、環太平洋協定に慎重=外相は意見交換会参加を表明》時事ドットコム/2010/10/26-13:30)

 大畠経産相が当面は2国間の経済連携協定(EPA)締結の積み重ねを重視する考えを強調したという。理由は農業問題だけでなく、「非関税障壁」(輸入割当制や輸入課徴金等の関税以外の方法による輸入制限)の撤廃を求められる可能性を挙げたそうだ。

 TPPが関税撤廃例外措置を認めない全関税完全撤廃(=完全自由化)を目的としているなら、当然、すべての「非関税障壁」は否応もなしに無効化させられる。モノを売る国の側からしたら、完全自由化を謳いながら、「非関税障壁」によってモノが売れなくなるからだ。

 「非関税障壁」撤廃は「非関税障壁」を設けて保護している産業分野の利害に反するゆえに、それに応じて経産省の利害、省益に反すると言うわけである。

 記事は前原外相が閣議後会見で、11月に横浜市で開催のAPEC首脳・閣僚会議を前にTPP参加国が実施する事務レベルの意見交換会に日本が出席することを明らかにしたと伝えている。TPPに関心を示している中国、カナダ、フィリピンも出席する見込みだそうだ。

 TPPに日本が参加した場合の影響につい農水省と内閣府がそれぞれに試算している。《食料自給率14%に低下=GDPは2兆~3兆円増-TPP試算》時事ドットコム/2010/10/27-02:09)
 
 農林水産省、国内農業生産が減り、食料自給率(カロリーベース)が現在の40%から14%に低下。

 内閣府、実質GDP(国内総生産)を2兆~3兆円余り押し上げるメリットがあると推計。

 試算自体が反対の農林水産省、賛成の内閣府という関係を露にしている。

 問題は国民全体で見た場合の利害であろう。コメに700%を超す関税をかけ、その他様々な保護政策に税金を投与し、コメ生産農家を保護しておきながら、税金を生かすことができずに捨て金とする農業の荒廃、農村の過疎化、コメ余り等を実現させていることは一般国民の利害に合致した政治と言えるだろうか。

 主として食糧自給率向上の観点から食糧安全保障が語られ、食糧自給率向上の大義名分の名のもと税金を大量に投与して様々な規制を設け、その代償として国民の多くは高いコメやその他を食べさせられてきた。

 戦後以来ずっと続いてきたこの構図は国民全体に於ける総体的利害に合致する政策とその恩恵であると決して言えまい。グローバル化だと言いながら、グローバル化に忠実に従った購買に支えられていたなら安く手に入る物品を高い値段で買わされ、その分、消費の面で生活の幅を狭めされられてきた。長年、豊かな国の貧しい生活と言われてきた。

 高額所得者はこの生活の構図は当てはまらないだろうが、国税庁の「2009年の民間給与実態統計調査」によると、昨2009年の給与所得者平均年収は前年比24万円減の406万円、年間収入が200万円超300万円以下の生活者が男性では14.1%、女性では22.8%、100万円超200万円以下の生活者が男性では、7.9%、女性では27.2%、100万円以下の生活者は男性では3.1%、女性では17.7%、それぞれ合計すると、300万円以下が男性では25.1%、勤労者の約4分の一、女性が67・7%で、女性勤労者の約7割も占める。
 
 この平均年収減は1997年をピークとした12年間連続の減少傾向だそうだ。低所得層はそれ以前から、様々な輸入規制によって世界第2位の経済大国という名に反した窮屈な消費活動を強いられてきた。

 まさしく相当数の国民が豊かな国の貧しい生活を地で行っていた。国民の活力の喪失が言われ、消費活動の低迷が言われるのも収入に関わる以上の理由が関係していないはずはない。

 TPP参加による関税の完全撤廃は当然のこと、食糧自給率低下を自明の理とする。だが、そのことが食糧生産者の利害に反したとしても、国民全体で見た場合、総体的に国民の利害に添うかどうかで判断すべきだろう。

 保護される層だけが国民ではないからだ。

 その判断は利害の全体的なプラスマイナスで見て、プラスが優るかマイナスが優るかで見るしかない。プラスであることが全体的な国益となって現れるはずだ。

 一部養豚農家保護のための豚肉の差額関税制度によっても、多くの国民は長年高い豚肉を食べさせられてきた。値段の高騰感は中低所得層程強く感じていたはずだ。

 輸入価格の実勢と国内産価格を参考とした基準価格との差を関税として支払う差額が無視できない金額だからだろう、大手食肉会社が高額の豚肉を輸入したように見せかけてその分関税を低くする書類を偽造して税金を誤魔化す事件も発生している。

 国産と輸入品の価格差を埋めるための「政府売渡価格」制度によって国産小麦粉が保護されることによって輸入小麦粉が高い値段で設定され、小麦粉だけではなく、パンや麺類、菓子等の値段にも影響して、国民は余分な生活費を支払わされてきた。

 TTP参加は当然、こういった豚肉、小麦粉等の「非関税障壁」の撤廃もシナリオに加えるだろうから、「非関税障壁」に守られてきた利害層が損失を蒙ることに反して、より多くの一般的な国民の生活に余裕をもたらすはずだ。生活の余裕は生活の向上をもたらす。

 今年の猛暑の影響で世界の穀物生産に打撃を与え、ロシア等は小麦の輸出を停止した国も出現し、小麦粉の国際価格を高騰せしめたが、安いときは安い値段による消費を享受し、高騰したときは国民自身が負担するグローバルな市場淘汰に任せるべきだろう。

 低所得者は小麦粉関係の食品の消費を差し控える生活防衛を働かせて凌ぐだろう。そのためにも政府は一部生産者に対する保護ではない、備蓄等の手段で高騰を可能な限り和らげるセーフティネットを設ける義務と責任を負う。

 菅首相はTPP参加の方向でいる。《首相 開放と農業の両立は可能》NHK/2010年10月24日 20時48分)

 この記事では大畠経産相TPP参加積極派の一人となっている。

 大畠「貿易の自由化は非常に重要な問題だ」

 だが、時間を置かずに慎重派に転ずる。

 鹿野農水相「将来の食料安全保障や食の安全についても考慮すべきだ」

 菅首相「農業の育成と菅内閣が掲げる国を開くという目標は、両立が可能で、党や内閣、それに国民と議論しながら、一定の方向性を出したい」

 相変わらず指導力を感じさせない発言となっている。

 先に「農業の育成」と「国を開くという目標」の「両立が可能」だと言うなら、先ずは自らの指導力を以ってして「可能」と認めさせる合理的な「一定」の結論を出すべきで、その結論を国民に諮るプロセスを取るべきだろう。

 その結論には以下のことが含まれなければならない。TPP参加に向けた動きがそれぞれに利害の対立を生み、恩恵を蒙って利益を得る者と恩恵を受けずに利益を失う者が生じることは当然の事態と看做し、差引き総体的に全体としての国益が優ることの説明と、そのことを以って利益を失う者に対して保護一辺倒とはならない農産物の高品質化や特定農産物への特化を図る政策等の提示を一方で行い、そういった方向に乗ることができない高齢化等を理由とした農家が出てくることも否定できないのだから、そういった農家には何らかの救済策を施して利害の埋め合わせとする「両立」策である。

 国家戦略室を首相に対する政策提言を行う組織と予算編成、その他の重要政策の策定や総合調整を行う組織との二本立てでいくということだが、先ず自らがリーダーとなってそこで議論するなり、提言を受けるなりしてTPP参加が国に与える利益と損害から全体としての国益を計算して、こういう国の姿を取ると全体図を作成、それを以て菅首相自らが国民に示し、諮る方法を採用する前に「国民と議論しながら」と八方美人の姿を取るようでは菅首相自身の指導力は勿論、この組織をつくった意味を成さないことになる。

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23歳女性教諭の小学校3年生、「妹を殺す」授業の不適切な点

2010-10-26 07:33:12 | Weblog

昨25日エントリー記事、《北海道5区補選は菅内閣への審判を背景とした民主党候補への審判であり、「政治とカネ」だけの敗北ではない 》で、町村候補と与党民主党中前候補の票差約3万を30万票と間違えて記載してしまいました。訂正の上、謝罪します。

 12万5636票から9万4135票を直接暗算して、30万票という計算結果を出したのだから、学校の成績が分かろうというものです。悪しからず。

 10月23日の記事、《正解は「妹を殺す」 教諭、小3の授業でクイズ 杉並》asahi.com/2010年10月23日22時41分)

 東京都杉並区立浜田山小学校の女性教諭(23)が10月19日の2時間目の3年生算数の授業中に自殺や殺人を題材にしたクイズを出題して問題となったという記事。

 クイズ「3姉妹の長女が自殺し、葬式があった。その葬式に来たかっこいい男性に、次女がもう一度会うためにはどうすればよいか」

 解答(記事は「回答」と書いてある。どちらが正しいのだろうか)「三女を殺す(また葬式をする)」

 21日に岩崎校長に届いた保護者からの匿名の投書で発覚。

 女性教諭「授業時間が余っていたので、学生時代に友人からきいたクイズをふと思い出し、言ってしまった。授業を楽しくしたいと考えてのことだったが、軽率だった」

 《小学校授業で殺人肯定クイズ》NHK/2010年10月23日 23時53分)での女教師の釈明は次のようになっている。

 女教師「子どもたちにクイズを出すよう求められ、大学時代に友人と出し合った問題をとっさに出してしまった。非常に反省している」

 杉並区教育委員会が不適切な指導だとして教諭と校長を口頭で厳重に注意し、小学校は23日夜、緊急に保護者会を開いて事実関係を説明すると共に謝罪した。

 井出隆安教育委員会教育長「学校教育への信頼を失わせるものでまことに遺憾です。児童や保護者に深くおわびするとともに、信頼回復に努めます」

 かっこいい男性との新たな出会いの設定に最初の出会いが姉の葬式だったからと、次も葬式を出会いの舞台とするために妹殺しを必要条件とする。

 これだけなら笑い話とするクイズとしては最適かもしれないが、教育現場で取り上げて、答が「三女を殺す(また葬式をする)」、生徒が、なーんだで終わりとするなら、様々な欠陥(=非合理性)を無視し、様々な欠陥(=非合理性)を気づかせないまま当然のこととして生徒に教えることになる危険性を抱えかねない。

 第一番に最初の出会いの場が姉の葬式だったから、次の出会いの場も葬式以外にないとすることが他の場面を考えることができない間違った判断(視野狭窄、浅慮、あるいは妄信)であることを、いくら年端もいかない3年生が相手だとしても、教えないままにさせておいて、クイズによって示されたストーリー展開のままに納得させた場合、間違った判断(視野狭窄、浅慮、あるいは妄信)抜きの判断の短絡化を生徒に意図しないまま植えつけることになっているかもしれない。

 例えば、保護者が匿名の投書を出した経緯は、保護者の子どもが教師が出したクイズを不適切なクイズだとして親に知らせたか、面白いクイズだと受け止めていて、親が答えることができるかどうか試そうと教師が生徒に出したように面白がって親に出して、親が間違っているクイズだと気づいて匿名の投書を出したかいずれかであろう。

 後者だとしたら、その生徒は間違った判断(視野狭窄、浅慮、あるいは妄信)抜きの判断の短絡化を知らず知らずの内に植えつけられていて、そのことに気づいていなかったことになる。

 生徒に対するこのような判断の短絡化の教師による意図しない植えつけが一度や二度のことならまだしも、繰返され、積み重なった場合、判断の短絡化を習慣とした生徒に育ちかねない。いわば自分から考え、判断することのできない生徒である。
  
 例え相手が小学校3年生で、理解能力が満足に発達していなくても、分かりやすい言葉で教えることだけはしておくべきであろう。

 女性教師がこのクイズをクイズのままの形で出して、最後に答を教えてそれで終わりとしていたとしたら、女教師自身が判断を短絡させた能力の持主の疑いが出てくる。

 最初はクイズとして出してから、この方法は正しい方法なのかどうかを生徒に問い、生徒同士で議論させる。結論を得たところで、ではどうした方法が法に触れないベストな方法として考えることができるかを議論させる。今の子は年齢以上の情報をテレビやマンガ、友達から得ていて、いわゆるませた状況にあるから、このくらいの議論は可能のはずである。

 様々な議論の機会を用意し、議論を通じてそれぞれに違う考えを披露させ、その違いをも相互に考えさせ、議論の対象とする。

 このようなプロセスを取れば、授業の場では不適切なクイズであっても立派な教育となる。

 またこういった経緯を踏むことで生徒それぞれの考えの幅を広げることが可能となり、判断の短絡化を防ぐ有効な方法となり得るはずだ。

 上記「asahi.com」記事と同じ10月23日付の同社の《テストに「校長暗殺犯は?」愛知の高校、教諭厳重注意》は似たような内容を伝えている。

 愛知県立東海商業高校(同県東海市)総合ビジネス科「総合実践」の10月19日の中間試験で商業科の男性教諭(24)が出した設問。試験は3年生77人受けたという。

 襲われた校長が息を引き取る間際に残した数字「4124」から「校長を暗殺した犯人は誰か」を問うテスト。

 容疑者として同校の教員7人の実名が挙げられていたという。

 この設問は「頭の柔軟性を問う」を目的としていたという。

 「4124」の数字を上下逆さまにすると「カていカ」と読めることから、家庭科の教諭が「犯人」が答。記事の数字は「41124」となっていたが、これだと「カテイイカ」となってしまう。

 国枝校長「教諭は生徒に謝罪し、臨時教員会議で注意喚起をした。生徒の動揺はなく、迅速・適切な対応はできた」

 この問題を採点対象から外すことにして、男性教諭に対して口頭注意。

 バカげているの一言に尽き、こんなことで動揺するようではとても社会には出て行けない。それを「生徒の動揺はなく、迅速・適切な対応はできた」と自身の手柄とし、翻って男性教諭の不適切を何でもないことのように薄めようとしている。

 この目的とした「頭の柔軟性を問う」は数字をひっくり返したりして答が出てくるのだから、想像性(創造性)を発動させることによって「頭の柔軟性を問う」こととは一欠けらも無縁の単なる機転、と言うよりも機械的な思いつきで以て機械的な「頭の柔軟性を問う」設問でしかない。

 しかも上記女性教諭が出したクイズと違って、設問と答から教育的に何ら発展を見い出しようがない、その場限りの不毛な一過性しか見い出すことができない。

 生徒がこの設問を一過性とせずに、面白がっていつまでも頭に記憶させていたとしたら、そのことの方が問題となるだろう。

 23歳の女性教諭に24歳の男性教諭。しかも後者は高校の教師。このクイズ志向(嗜好?)はテレビの影響かもしれないが、それを子どもに伝えて子ども自身が既に持つクイズ志向(嗜好?)を尚のこと高めて、子どもの知性をクイズの類で埋めていく、そのような大人から子どもへの循環が当たり前の光景となっているのだろうか。

 日本の教育自体が子どもを大人にする教育、大人性を導くことを最終目的とする教育になっていないのかもしれない。

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北海道5区補選は菅内閣への審判を背景とした民主党候補への審判であり、「政治とカネ」だけの敗北ではない

2010-10-25 10:04:12 | Weblog

 昨24日投開票の北海道5区補選、野党自民党候補の町村信孝が12万5636票、与党民主党新人の候補者に約3万票の大差をつけて当選した。与党候補の敗因をマスコミの多くが「政治とカネ」の問題が響いたと書いている。町村本人も、当確後の発言で、「1年前は政権交代への期待があったが、民主党の政治とカネ問題への鈍感さ、隠そうとする体質への反発が有権者にあった」(毎日jp)と「政治とカネ」の問題を与党敗因の第一番に挙げている。

 だが、NHKは今朝のニュースで中国漁船対応への国民の評価や出口調査で内閣に対する「評価する」が47%に対して「評価しない」が53%だと敗因要素に加えていた。

 この47対53は「NHK」が10月12日に公表した世論調査による菅内閣支持率では「支持する」48%に対して「支持しない」35%の内、どちらとも言えないとした、あるいは支持・不支持を表明しなかった残り17%の内、その殆んどが「評価しない」に流れたとほぼ見ることができるはずである。

 世論調査は特殊な地域のみを対象とした調査ではなく、全国を対象としているだろうから、出口調査が北海道5区という一地域の調査であっても、基本的には相互に関連し合う関係にあり、共に準ずるだろうからであることと、出口調査は投票に来た有権者を対象としているため、一般的な世論調査と異なって、内閣や政党に対して態度を明確にしていると考えることができるから、どちらとも言えない、あるいは支持・不支持を表明しない要素が消えて、「評価する」と「評価しない」が47%対53%の全体で100%となったことも頷ける。

 尖閣沖中国漁船衝突事件での中国人船長の釈放は9月25日。その後の世論調査では釈放に対する評価と、その釈放が検察独自の判断であり、政治介入はなかったとしている政府の説明に対しても、釈放は「不適切」、説明は「信用できない」が共に80%前後を占めていたが、釈放から1ヵ月後の北海道5区補選投開票の24日に向けて、菅内閣に対する評価がさらに下がっていることが予想される。

 このことは依然として中国に対して毅然とした態度を一貫して取ることができない内閣の姿勢も影響しているはずである。日本側から常に関係修復の首脳会談を求め、相手の容認を得て会談が実現するという中国を上に置き、日本を下に置いた上下関係、あるいは中国を大国に位置づけ、日本を小国に位置づけたかのような中で両国関係が推移している状況に多くの国民は少なくとも不信と不満を抱いているはずだ。

 例えば菅内閣が今月末開催の東南アジア諸国連合会合で日中首脳会談の開催を中国に求めていることに対して前原外相は「時期は焦らなくていい」と発言しておきながら、中国がその発言に「分からない。なぜ急がなくていいのか。(前原氏は)毎日、中国を攻撃する発言をし、外交官の口から出るべきでない極端な言葉さえ使っている。・・・・両国関係はあまりにも重要だ。それを絶えず傷つけ壊すことには耐えられない。中国の指導者が何か言ったのか。我々は良好な接触をしようとしているのではないのか。なぜ必ず刺激しようとするのか」(asahi.com)と不快感を示すと、「日中は隣国であり、戦略的互恵関係を進めていくことが両国の国益に資する。わたしは、そういう大局に立って、互いの問題点を解決する努力が大事だと申し上げてきたつもりだ」(NHK)と釈明。

 この釈明に中国側は、「この表明に留意している。日本側が我々と共に努力し、戦略的互恵関係を維持、推進することを希望する」との談話を発表。

 これは日本側からの釈明の形を取った許しの要請であり、中国側がその許しを容認する、そのことによって物事が進むことを知らしめている、少なくとも心理的には上下関係の構図を暗に取っていう前原外相の釈明であり、それに対する中国側の談話であろう。それが、「この表明に留意している」の言葉に表れている。

 さらに言うと、「日本側が我々と共に努力」は「努力」の主体を日本のみに置いていて、いわば日本を努力させる側に置いていて、「中国と日本が共に努力する」と「努力」の主体を対等に両国には置いていない、双方を対等の立場に置いて対等に努力するとしていない談話となっている所にも上下関係としていることが端的に現れていることで、中国を上に置いた物言いと言える。

 「政治とカネ」だけを争点として投票行動を決定したのではなく、菅内閣が中国に対して一貫して毅然とした態度を取ることができないこと、世論調査に国民が示している、「政治に期待を持てない」、「指導力に期待できない」等をも有権者が投票判断に見据えた、菅内閣への審判を背景とした民主党候補への審判として現れた北海道5区補選の結果だと言うことであろう。

 では自民党町村当選は自民党政治への審判を背景とした町村候補への審判としての当選かと言うと、そうではなく、9月の民主党代表選で小沢候補に対する拒絶感の反動が菅候補に向かわせたのと同じ構図を取った、菅内閣に対する否定的審判が向かわせた、その反動としての肯定的な審判と見るべきで、それが3万票の差をつけたということであるはずである。

 民主党がいくら「政治とカネ」の問題を抱えていても、菅首相が首相としての信頼感を獲ち得ていたなら、あるいはリーダシップあるリーダーだと信任されていたなら、政党支持率では依然として民主党が自民党を上回っていることが政権交代への期待が決して萎んでしまっているわけではないことからして、敗北という結果を招くことはなかったはずである。

 基本的には参院選敗北と同様、北海道5区補選敗北も菅首相に責任があるということである。

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菅首相のリーダーシップ欠如と対を成しているリスク回避姿勢からの北海道5区選挙区入り回避

2010-10-24 07:32:15 | Weblog

 どうでもいい話のように見えるが、決してどうでもいい話ではないと思う。

 今日10月24日は衆議院北海道5区補欠選挙の投票日。北海道教職員組合から違法献金を受け取って議員辞職した民主党小林千代美前衆院議員の欠員補充選挙。民主党は38歳の新人中前氏を立て、自民党は昨年総選挙で選挙区落選、比例区当選の町村派領袖ご本人の66歳の町村信孝が立候補。

 中前候補は66歳の町村が自民党派閥領袖であることから、古い政治の代表者の一人と把え、古い政治からの脱却、新しい政治の確立、さらに地域主権を掲げ、町村は民主党の「政治とカネ」問題、その他の民主党政治の問題点を攻撃、そして「自民党が政権を失った最大の原因は、自民党の政策が国民の期待とかけ離れてしまったことにあると思います。今、自民党はその反省の上に立って、しっかり皆さんの声を聞く、それを政策に反映させていくという地道な作業に取り組んでいるところです。私もこの1年、そういう思いで有権者の皆さまの声に耳を傾けてまいりました」(町村HPより)と心入れ替えていくことを訴えている。

 それぞれのHPを見ると、民主党中前候補は「私の政策目標」と題して次の主張を掲げている。 

1.政権交代の定着と世代交代の実現
2.一人ひとりの努力が報われる希望ある社会
3.お年寄りも子供も安心して暮らせる地域の再生
4.雪と共生する豊かな地域づくり
5.北海道の政治的自立と日本における新たな北海道の位置づけの確立

 町村たいしたことない親分は――

「5つの危機を克服する」

① 経済・雇用
② 社会保障・少子化と財政
③ 教育
④ 平和と安全
⑤ 政治の信頼の政策を掲げさせていただきました。

 肝心なことは情勢である。どちらが有利な戦いを展開し、当選を獲ち取る可能性が高いか。告示は10月12日。だが、3日、4日後にはマスコミが早くも情勢調査を行っている。選挙戦は告示前から既に始まっていたということなのだろう。

 10月15~17日に行った「読売」によると――

 町村候補――自民支持層と公明支持層の各9割を固め、無党派層の支持も4割強。幅広い年代に支持を広
        げている。
 中前候補――民主支持層の7割を固めたが、無党派層の支持は1割強にとどまっている。

 選挙は無党派層の支持が大勢を決する傾向にある。元々政党支持率と比較して高い割合を確保している無党派層の、その割合が一際高いときは政党離れを起していて、割合が少ないときは少なくなった分、いずれかの政党への支持に回っている構図を取るゆえに、より多くの無党派層を獲得した陣営が有利な結果を得ることになる。
  
 10月16、17日に行った「朝日」―― 

 町村候補――自民支持層をほぼ固める。無党派層の7割の支持を集め、民主支持層の2割も取り込んでいる
        。政権のパートナーだった公明支持層でも大半を纏めている。職業別では各層から万遍なく支持
        を集めている。昨年の衆院選で小林氏に投票したと答えた有権者の2割強が町村候補に投票の意思。

 中前候補――民主支持層の7割以上を固めたものの、無党派層の支持は2割。

 10月17日に行った「北海道新聞」の情勢調査――

 町村候補――自民党支持層の9割超、公明党支持層の8割超。支持政党なしの「無党派層」からも4割以
        上の支持。
        年代別では町村候補の支持は60代以外のすべてで中前候補を上回り、40代と70代以上で5割を超
        えた。
        地域別では厚別区以外は先行。

 中前候補――民主党支持層の約7割、無党派層の支持は2割超のみ。
        年代別では60代のみリード。
        地域別では、厚別区のみ4割超の支持。

 10月12日の告示、10月24日の投開票、その中間点での情勢。実質的な選挙戦を満足に戦わずして、情勢の上では勝敗の行方が既に占われている。

 菅改造内閣発足後の初の国政選挙、一選挙区の選挙ではあっても、その民意が国民全体の民意の一部分を代弁していない、あるいは国民全体の民意と多少なりとも重なっていないと否定できるわけではなく、当然、マスコミも伝えているように菅内閣に対する評価を問う選挙と位置づけることができる。

 この評価は、これもマスコミが伝えてもいるが、勝敗如何によっては菅内閣の今後の政権運営に影響を与えることになり、政権与党にとっては大事な選挙となる。

 仙谷官房長官もこのことに触れている。《仙谷氏、衆院北海道5区情勢「厳しい」「ぜひ勝たせてほしい」》MSN産経/2010.10.22 21:24)

 仙谷官房長官「情勢は厳しい。『政治とカネ』の問題や、自民党候補者がドブ板を踏みながら一生懸命やっている話ぐらいしかない」

 仙谷官房長官「もちろん政権運営に対する何らかのサインが出るので、ぜひ勝たせてほしい。投票日まで民主党を挙げて頑張ってほしい」

 「何らかのサインが出る」大事な選挙だと言うことなら、菅内閣は是が非でも勝利してベストのサインを出す責任を負っていることになる。だから、「投票日まで民主党を挙げて頑張ってほしい」という叱咤の言葉となったのだろう。

 この「民主党を挙げて」は菅内閣に対する評価を問い、菅内閣の今後の政権運営に影響を与える選挙である以上、内閣まで含んだ「民主党を挙げて」であるはずだ。このいきさつを持つゆえに前原外相、馬淵国交相、蓮舫行政刷新担当相、岡田幹事長、枝野幹事長代理等、錚々たるメンバーが選挙区入りして、民主党候補の応援演説を行った。

 だが、菅内閣に対する評価を問い、菅内閣の今後の政権運営に影響を与える大事な選挙でありながら、内閣まで含む「民主党を挙げて」の選挙戦に菅首相は一度も参戦しないで今日24日の投開票日を迎えた。

 大事な試合なのに自分から進んで一度もバッターボックスに立たなかった。当然、バットを一度も振ることもなかった。例え負け試合でも、点差が次の試合に向けた気持に影響してくる。選挙に於いても僅差で敗れるのと、大差で敗れるのとでは今後の展開が多少なりとも違ってくる。「政治とカネ」の問題で元々不利な状況に立たされていたのである、最少点差に持っていくことができたなら、その不利をある程度撥ね退けたことになり、見せ掛けではない強い姿勢で今後の展開に臨むことも可能となる。

 いや、そういったことよりも何よりも、リーダーには闘う姿勢が求められているはずだ。求めに応じて、闘う姿勢を示す義務と責任を負う。

 一度も選挙区入りしなかった理由は民主党候補の情勢が不利とされていることを除いて他にはないはずだ。もし有利と報道されていたなら、進んで選挙区入りし、所信表明演説や国会の答弁で、そのことを発言する段になると気力もなく原稿を読むときと違って声に気力を漲らせ、滔々と、「政権の本格稼働だ」、「有言実行内閣だ」、「20年間の日本の閉塞状態を打ち破るには私一人、あるいは民主党一つの政党ではできない、熟議の民主主義だ」、「先送りしてきた重要政策課題を遣り残して次の世代に遺してはいけない」等々、例の如くの菅節でツバを飛ばすが如きの熱弁を振ったに違いない。その勝利を自身の成果とするためにも。

 菅首相が応援に行かないことを《首相、衆院補選応援に行かず 内からも「逃げ菅」批判》asahi.com/2010年10月21日22時18分)が次のように伝えている。

 〈補選は地域問題が争点になることが多く、予算配分を握る与党に有利と言われる。それだけに歴代首相は現地入りし、有権者へのアピールを欠かさ〉いにも関わらず、アピールチャンスに反して、〈菅改造内閣として初の国政選挙となる衆院北海道5区補選(24日投開票)の応援演説に、菅直人首相が入ろうとしない。首相が単発の補選の応援に行かないのは低支持率にあえいだ森喜朗元首相以来で、民主党内からは「逃げ菅」との批判も出ている。 〉

 首相周辺「首相が無理して矢面に立つ必要はない」

 回避が得策だとしている。

 幹事長経験者「今の官邸にはどうしても勝ちたいという気持ちが足りない。逃げては駄目だ」

 選挙区入りしなかったことについて菅首相は22日の記者会見でその理由を述べている。《小沢氏即時抗告棄却「コメントしない」22日の菅首相》asahi.com/2010年10月22日19時52分)

 ――衆議院北海道5区の補選ですけれども、24日に投開票されます。世論調査で民主党候補は追いかける展開となっていますけれども、党代表として戦況をどう分析しているでしょうか。従来の衆議院補選では総理が応援に入るケースが多いですけれども、今回応援に入っていないのはなぜでしょうか。

 菅首相「若い候補者で、若い閣僚や、いろんな仲間が応援に行っているという風に聞いています。私自身のことは岡田幹事長に判断を任せています

 菅内閣に対する評価を問い、菅内閣の今後の政権運営に影響を与える選挙でありながら、その選挙情報に関しては、誰々が「応援に行っているという風に聞いています」と、距離を置いた言い方となっている。この間接性の装いには敗北した場合の批判、責任から最初から距離を置こうとする姿勢を自身の中で既に決めていることの兆候とすることができる。

 このことは、「私自身のことは岡田幹事長に判断を任せています」の言葉にも現れている。菅改造内閣発足後の初の国政選挙であり、尚且つ菅内閣に対する評価や今後の政権運営を占う選挙であり、そうである以上、これらのことのみならず自身の責任や批判にも直接影響する事柄となるのだから、自身の判断に従うべきを、自らの闘う姿勢をどこかに置き忘れて幹事長の判断だと距離を置き、置くことで菅内閣評価や政権運営のみならず、自身の責任や自身に対する批判から自身を離れた場所に置こうとしている。

 いわば選挙に距離を置いた姿勢は責任や批判に距離を置いた姿勢と相互対応している。

 この相互に距離を置いた姿勢はリスク回避の姿勢からきていることは断るまでもない。例え敗色濃厚な情勢であっても、選挙区に乗り込み、乗り込んだだけの成果を見ることができなくて責任を問い、批判の声が上がることが予想されても、それを恐れることなく、ダメ元で自身の政治を訴える、政治主張を訴える、その気概がない、意気込みを持てずに選挙区入りを回避したということは選挙区入りしてまで負けた場合のより大きくなる責任、より激しくなる批判のリスクを回避したということであろう。

 リスクを回避するリーダーにリーダシップを望むべくもないのは至極当然のことである。リスク回避姿勢とリーダシップ欠如とは対応し合っているということである。

 中国人船長の処分保留のままの不透明な釈放も、中国の「釣魚諸島(尖閣諸島)は中国固有の領土である」に真正面から向き合うことをしなかったリスク回避がもたらした結末であるはずだ。
 
 リーダーシップを欠いているから、そういった展開を招く。

 仙谷内閣だ、影の内閣仙谷官房長官と言われるのも、リーダーシップ欠如からの答弁や政策の丸投げに見るリスク回避の姿勢がそう仕向けている二重権力構造のはずだ。

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改めて、船長釈放を含めた中国漁船対応は「我が国固有の領土」に即した行動だったのか

2010-10-23 08:17:58 | Weblog

 以前当ブログに、〈菅首相も前原外相も岡田幹事長も仙谷官房長官も、その他大勢、中国漁船逮捕を、「国内法に則って粛々と対応する」と言い、「尖閣諸島は歴史的にも国際法上も我が国固有の領土」だと言っている。

 だとするなら、検察庁も海上保安庁も今回の事件のような事案に関しては「国内法」と「我が国固有の領土」に厳格に則って自らの活動を行う義務と責任を負うことになる。〉と書いた。

 勿論、政府にしても領土問題に関しては、「我が国固有の領土」だとしていることに厳格に則った政治行為を要求され、そのことに義務と責任を負う。

 領土に関わるこのような行為を、“我が国固有の領土”表現と書いた。今回はより簡潔、且つ直截に“固有領土”表現とする。

 以下も上記記載と兼ねて同じブログに取り上げているが、9月30日の衆議院予算委員会で尖閣問題の集中審議が行われ、富田茂之議員(公明党)の質問に鈴木久泰海上保安庁長官が答弁している。

 富田議員「公務執行妨害罪で逮捕したとされているが、なぜ領海侵犯事案として逮捕しなかったでしょうか。報道によれば、この漁船で日本の領海内に於いて、魚を獲り上げているのを保安庁の職員が目視しているという報道もあった。そうだとしたなら、漁業目的の領海侵犯ということなら、外国漁船の漁業規制に関する法律違反ということでも摘発も可能だったと思うのだが、その点はどうでしょうか」

 鈴木久泰海上保安庁長官「尖閣諸島周辺海域に於いては兼ねてより中国漁船、あるいは台湾漁船が多数操業しておりまして、本年につきましては8月中旬以降、多数の中国漁船が領海の付近の海域で操業しておりました。そのうちの一部が領海に侵入している状況が確認されています。このため私共は巡視船を配備して、退去警告、あるいは場合によっては、立ち入り検査等を実施しております。

 通常、多数の操業がありますので、退去警告、あるいは立ち入り検査で追い出すというのを原則としております。今回の事案につきましては、退去警告中の相手の漁船が網を上げて突然走り出して、巡視船『よなくに』に衝突し、さらにこれを追いかけた巡視船『みずき』に衝突してきたということでありまして、これは公務執行妨害事案として(聞き取れない、「対応すべき」?)ということで、我々は『みずき』が強行接舷をして、海上保安官6名が移乗して、これを停船させて、このあと捜査に入ったということであります。

 さらに沖縄の簡易裁判所に令状を請求して、令状を頂いて、逮捕したという経緯でございます」――

 海上保安庁の領海侵犯(=領土侵犯)事案に対して「退去警告、あるいは立ち入り検査で追い出すというのを原則」としていること自体が既にここで「尖閣諸島は我が国固有の領土」だとする“固有領土”表現の厳格な宣告と宣告どおりの厳格な実効とは程遠い曖昧で事勿れな措置となっている。

 これは政府の方針に従った表現であるはずだと、これも以前のブログに書いた。領土の保全は政府占有の政治権限であり、海上保安庁は領土保全に於ける政府方針に従った単なる実行部隊に過ぎないからだ。

 だが、今回の中国漁船に関しては「退去警告、あるいは立ち入り検査で追い出すというのを原則」としていた政府方針に反して、2回に亘る悪質な体当たりを以って逮捕した。逮捕に至るまでに関係省庁が2回に亘る協議を行ったことからも分かるように政府の判断が働いた、従来の「原則」に反した逮捕なのは明白である。

 いわば海上保安庁が政府方針に反したのではなく、政府が従来の政府方針を変更し、その変更した政府方針に海上保安庁が従ったということであろう。政府の判断に従った逮捕劇だったということである。

 だが、政府は中国人釈放に当たっては政治介入はないとしている。あくまでも検察が国内法に則って粛々と行った釈放だと。

 那覇地検が釈放に当たっての記者会見で次のような釈放理由を述べている。

 鈴木亨次席検事「衝突された巡視船の損傷の程度が航行ができなくなるほどではなく、けが人も出ていない。船長は一船員であり、衝突に計画性が認められない。・・・わが国の国民への影響や今後の日中関係を考慮すると、これ以上、船長の身柄の拘束を継続して捜査を継続することは相当でないと判断した」

 検察は国内法に則って粛々とこのように判断したということだろう。この点に於いては一見すると整合性ある措置に見える。だが、ここにあるべき「尖閣諸島は我が国固有の領土」だとする“固有領土”表現は一切影を潜めていて、“固有領土”表現よりも「わが国の国民への影響や今後の日中関係」を優先させた判断となっている。

 また検察のこの釈放判断に於ける「尖閣諸島は我が国固有の領土」だとする“固有領土”表現の脱落は海上保安庁の政府方針に従った、領海侵犯船に対する「退去警告、あるいは立ち入り検査で追い出すというのを原則」としていることに見ることができる「尖閣諸島は我が国固有の領土」だとする“固有領土”表現の脱落と対応関係にあるはずだ。

 検察にしても海上保安庁にしても領土保全に関しては政府占有の政治権限である領土保全の政策、または方針の範囲内でのみの活動しか許されていないからだ。

 後者の脱落が政府方針に従っているなら、前者も政府方針としなければ矛盾が生じる。

 要するに海上保安庁が領海侵犯船に対して「退去警告、あるいは立ち入り検査で追い出すというのを原則」としていたことが招いた「わが国の国民への影響や今後の日中関係」優先の中国人船長の釈放と看做すこともできる。

 そもそもから“固有領土”表現に於いて毅然とした態度を取ってこなかったことが招いた中国人釈放に於いても発揮されることとなった毅然としない“固有領土”表現とも言える。

 「尖閣諸島は我が国固有の領土」だとする“固有領土”表現の厳格な宣告と宣告どおりの厳格な実効を原則としていたなら、中国漁船の日本の領海内での巡視船体当たり事件に於ける検察処理に於いても「尖閣諸島は我が国固有の領土」だとする“固有領土”表現の厳格な実施となっていただろう。

 しかし最終的にはその逆の、従来どおりの対応を取った。

 いわば政府は逮捕によって一旦は見せた「尖閣諸島は我が国固有の領土」だとする“固有領土”表現を中国の様々な圧力に屈して、「わが国の国民への影響や今後の日中関係」を口実に「尖閣諸島は我が国固有の領土」だとする“固有領土”表現を早々に捨て去ってしまったのである。

 その一例を10月10日(2010年)の参議院決算委員での自民党丸山和也議員の質問に対する仙谷官房長官の答弁に見ることができる。

 丸山議員「自民党の丸山和也でございます。宜しくお願いします。まず質問を全般を通して、えー、少し、全部ではないですけど、このパネルを上げさせていただきます。(テーブル左側にパネルを立てる)これは、えー、南洲翁遺訓ということで、まあ、西郷隆盛がですね、えー、言ったことを旧庄内藩主が、えー、これはいいって書き残した、と言われております。

 まあ、今回の質問にも関連しますので、暫く、えー、ここに置かせていただきます。まあ、あのー、決算委員会ですね、平成20年のですね、審査をですね、終了していなくて、前国会に於いてですね、決算委員会を開いてくれってことを再三、我が党の方からも要求したんですけれども、おー、民主党さんが色んな、まあ、事情、おー・・・・、説明されてですね、まあ、大臣の出席が難しいと、言う一点張りでですね、結局開かれないでしまったと、いうことで非常にまあ、決算重視の参議院としてはですね、歴史に汚点を残したと(「そうだ」のヤジ)、いう思いがあります。

 それでようやくですね、まあ、今日決算委員会開かれたわけですけれども、あるいはですね、これからは決算重視ということを、えー、総理大臣、官房長官、それからすべてですね、肝に銘じて、やっていただきたいと、いうことを一言、お願いをしておいてですね、それであのー・・・・、いわゆる菅内閣がですね、発足しましてですね、えー、多くの国民、多くでないかもしれないけど、かなりの国民がですね、やっぱり期待をですね、えー、していると思うのですけれども、まあ、あのー・・・、この菅内閣というのはですね、私もあのー、官房長官にですね、仙谷さん、仙谷官房長官が選ばれたということはですね、僕唯一の、これはまあ、本人を目の前にしてですけれども、別にホメ殺しするつもりじゃないんですけど、すべての閣僚を見ただけで、でも、 官房長官だけは、実力があるなあと、人物、見識、まあ、見識も色々ありますけれど、人間的総合力としての、これはだから、仙谷内閣だと、いうふうに(パチパチと拍手)私はそのとき思ったの。

 で、ちょっと私の買い被りかなあと思ったら、やっぱり菅総理大臣が、おー、官房長官に仙谷氏を指名した理由として、『仙谷さんは実力がある方ですから』と。他の大臣と比較されたのかどうか分かりませんけれども、そういうふうにおっしゃって、まあ、そういう意味では、総理大臣も人を見る目があるんだなと、いうことですね。――」

 「国民は指導力はないと見ているが」を付け加えて、「人を見る目はあるんだな」と言えば、相当に小馬鹿にすることができたはずだが。

 丸山議員「まあ、仙谷内閣のようなつもりでですね、私もずっと見させていただいているんですけども、そこでですね、えー、今回早速にでもと言うか、官房長官の力量を発揮されるべき、事件が、中国人船長逮捕ということで起こりました。それで、やぁー、私もねぇー、素晴らしいと思ったの。素晴らしいと思った。

 なぜ素晴らしいと思ったのか。ね、国内法に従って粛々とやります。私も弁護士をやってましたから、当たり前のことを粛々とやることがどれだけ大事か。またときによってはどれだけ難しいかということを、よく分かった上でおっしゃったんだ、さすが仙谷官房長官とくらいに思った。

 そして前原、当時の国土交通、えー国交相の大臣でありましたけれども、前原さんもやはり、法律に従って粛々とやりますと、こうおっしゃた。その他の大臣も、求められたときには、えー、みなその言葉に倣うように、法に従って粛々とやりますと。この言葉を聞いたとき、私は、ねぇ、もう1%の疑いもなく、あー、これは、刑事訴追されると、恐らく確信犯ですから、実刑か、執行猶予か、別にしてですね、有罪判決下りるなと。その後強制送還になるなあと、まあ、私の弁護士経験から踏まえましてもですね、なーんの疑いもなく、すなおーに、そう思いました。恐らく日本国民すべてが、常識のある人はそう思ったと思います。

 法に従って粛々とやるということはですね、まあ、難しいことを言うまでもなく、単純にそういうことなんですよ。私は疑わなかった。逮捕の決定は、私が下しましたと、天下の前原ね、えー、さんがね、おっしゃったわけですよ。ね、それが間違いないと、二重三重の確信をしておりましたところ、どうです結果は、私はこれまたビックリしたんですがねぇ、これは本当にビックリした。25日に釈放されたと。すぐ午前1時3分釈放された。2時13分チャーター機で帰ったと。

 これは私はねぇ、まさかと思った。誤報かと思った。それでビックリしてですね、あのー実は、仙谷長官に連絡を取らせてもらった。こっちから先は仙谷長官、多少喋ってもよろしいでしょうかね。もしどうしても喋らないでくれと言われるんなら、私は伏せておきますけれども、(ほんの少し仙谷官房長官の方を見てから)得にアレがないようですから、喋らせていただきますけれども。

 これは私はですね、別に政治的に特別な意図があるとか、与野党対立してこうだとかではなくて、私が余りにもビックリしたもんだから、法に従って粛々とやると言ったのが、釈、無条件釈放とはどういうことかなあと、私の法律の理解を超えていましたから、是非、官房長官の意見をお聞きしたいということで、お電話をさせていただいた。

 ま、気さくな官房長官でありますから、すぐ電話に出ていただいて、ね、これは問題あるんじゃないでしょうかと、いうふうに私はお聞きしました。すると官房長官は、どこが問題があるんだ、どう思うんやというようなことがありまして、君ならどう思うんだと、いうことがありましたんで、私は先程言いましたように、訴追をされてそれから判決を得て、それから送還するなりというのが、ですね、法律に従って粛々とやることになるんでしょうかと、いうふうに私の見解を、ま、申し上げさせていただいた。

 すると官房長官、まあ、これはあのー、そんなことをしたら、APECが、吹っ飛んでしまうぞと、というふうに、ま、来月ありますねえ。そこまでやってええつうんなら、だったら別だけどね、吹っ飛んでしまうぞと、まあ、中国関係、国際関係を考慮されたんでしょう。

 それで私は、ま、生意気でしたけれども、いけないですかと、一度ぐらい。ね、日本の国益が初めて日中関係で大々的に試されているときなんだから、法に従って粛々とやるっていうことを一回やってみましょうよと、確か申し上げたんですけれども、ま、そっからは、まあ、その時期ではないと、いうご意見だったと思うんですけれども、まあ、あのー、詳しいことは分かりませんけれども、私は未だに法に従って粛々とやるということが、阻害されたと、重大事件だと。

 それで、これが、仮に色々な質問がありましたけれども、一種の政治判断からそうしたと言うことなら、是非アレでしょうけれど、一つの筋は通ると思うんですよ。でも、これはこれ程重大事件でありながら、私、那覇地検が下から、それを了としたというだけでは、ちょっと結末のつけ方がですね、余りにも小さ過ぎる。ね、大官房長官の発言にしてはですね、結末が小さ過ぎる、いう感じがしましてですね、これから私の質問なんですけども、えー、総理大臣よりも官房長官に先にお聞きしてよろしいでしょうか。

 じゃあ、聞かせていただきますけれども、官房長官は、まあ、官房長官の言によりますと、これは那覇地検の、えー、独自の判断であって、一切政治的な、えー、意見は言っていないと、こういうことをおっしゃってんですが、まあ、仮に百歩万歩譲って、その通りだったとして、そういう決定を下して、那覇地検が釈放してくれたということで、(芝居がかった大きな声で)有り難いなーと、思われているのか、勝手にそんなことして、ねぇ、俺の出る幕がなくなったじゃないかと、政治判断してやろうと思ったのにと、ま、そこまで思われないでしょうけど、重大な国益ですね、那覇地検が釈放してしまって、結果は事勿れに終わったけれども、大きな問題を残したなと、そういうふうに思われているのか、結果的に、那覇地検の行為はよかったなと、やれやれと思われているのかどうか、その点について、ええ、一つお聞きしたいと思います」

 仙谷「えー、丸山議員は、あー、生れた年、生れた月が同じでございまして、私よりも多分、8日、お下でいらっしゃると思います。で、同業者でございますので、え、大変好意的なご評価をいただいておりまして、誠に恐縮、この上、ございません。

 そしてさっき、24日のあとにですね、えー、先生からお電話をいただいたという、ことでありますが、あの、最近健忘症にかかっているのか分かりませんが、そういう電話で、丸山議員、が、この場で、えー、暴露されたような、会話をした記憶は、全く、ないことをまず申し上げて、おきたいと、あのー、存じます。

 えー、そこで、あのー、事件全体の、評価、とりわけ、9月24日の、那覇地検の処分を聞いてどう思うわれたかと、どう思ったかと、こういうお話でありますが、私はずっとお答えしているように、那覇地検が、あー、刑事訴訟法248条に従って、収拾した証拠捜査を遂げた上で、事件全体、総合判断をして、こういう処分されたんだなあ、そういうふうに受け止めたと。こういう次第であります」

 丸山議員「えー、昔から、記憶にございません、覚えていませんというのが政治家のですね、よく使うことで、段々政治家も偉くなると、こういう言葉を使ってくるんですねえ。我々のようなペイペイだとなかなか使えないんですけども、官房長官ぐらいになると、平然と覚えていませんと、記憶にございませんとおっしゃるもんですから、まあ、記憶にないと言うんではですね、まあ、すぐに思い浮かべるのは無理でしょうから、これ以上は言いませんけれども、それと続いてですね、えー、ここにありますけれども」と言って、先程の南洲翁遺訓というフリップを大臣席に向けて見せてから、自分で読み上げる。

 「Wikipedia」に載っていたものをここに記載して代わりとする。
 
 「正道を踏み国を以て斃(たお)るるの精神無くば、外国交際は全(まった)かる可(べ)からず。彼の強大に萎縮し、円滑を主として、曲げて彼の意に順従する時は、軽侮を招き、好親却(かえっ)て破れ、終に彼の制を受るに至らん。」
 
 「好親」(行進)を丸山議員は「こうしん、親しい交わりですね」と言っていた。

 要するに丸山議員は遺訓を例に取って続く質問の中で政治家に国を守る気概が必要であることを言った。

 だが、「尖閣諸島は我が国固有の領土である」とする“固有領土”表現を口では言っても、ご都合主義化させて則った行動を取る気概を持てないのだから、西郷隆盛の言葉を持ち出して何を言おうとカエルの面にショウベン、事実仙谷官房長官は答弁で遺訓を相対化している。

 仙谷「南洲翁がなぜ、征韓論を唱えて、ついには参議を辞して、鹿児島に帰られて、西南戦争を、本意ならずとしても、その、総大将に祭り上げられて、斃れていくという課程が、その、その遺訓と、という、何と言うんですか、その遺訓に添っているのか、遺訓と、その、すれ違ったところがあるのか、これまた私共は拳拳服膺しなければならないと思います」

 遺訓を言った本人が遺訓どおりの志を果たせずに、その半ばで斃れてしまったいるではないかとの言いである。

 仙谷官房長官の「記憶にない」は肯定した場合、“固有領土”表現よりもAPECを優先させ、政治介入をしたことになって責任問題に発展する。否定した場合、事実が露見した場合にやはり責任問題に発展する。そのことからの記憶にないと肯定でもない否定でもない曖昧な場所に持っていった「記憶にない」であろう。

 この発言に関して記者会見で釈明している。《丸山参院議員 「仙谷氏、APEC吹っ飛ぶと話す」と暴露》毎日jp/2010年10月18日20時26分)

 仙谷「(仮に)友人関係でしゃべったとしたら、国会の場で援用して質問するのは甚だ不本意だ」

 会話を仮りの話としているが、事実なかった会話なら、友人関係で喋ったことなのだから、国会の場に持ち出すのは問題だとする注文は必要ない。事実だから、「不本意だ」としなければならない。

 いずれにしても、菅内閣は、首相を始めその閣僚全員が、「尖閣諸島は我が国固有の領土」だとする“固有領土”表現を口では盛んに言っても、終始一貫した態度とすることができなかった。

 そのことが中国に付け入る隙となって現在もなお様々な摩擦問題となって尾を引く状況をつくっているはずだ。

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