右翼の軍国主義者安倍晋三が小池百合子の首相動静特定秘密指定欲求の恣意性を担わない保証はない

2013-10-31 09:34:06 | 政治


   
 ――右翼の軍国主義者安倍晋三の特定秘密保護法案・秘密指定は既に始まっている――

 右翼の軍国主義者安倍政権が国防・外交・安全保障関係の重大問題について情報収集・情勢分析から中長期の戦略立案、緊急時の政策決定までを行うとしている安全保障機関である「国家安全保障会議(日本版NSC)」の設立を目指し、この日本版NSCを運営・機能させる目的の国家の安全保障上特に秘匿が必要な情報を「特定秘密」に指定、漏洩した場合の公務員らに最高で10年の懲役刑を科す等の規定を盛り込んだ「特定秘密保護法案」の成立を両者一体的に目指しているのはご存知のとおりである。

 自民党議員の小池百合子が10月28日の衆院国家安全保障特別委員会でこの「特定秘密保護法案」に関連した質問の中で、複数のマスコミが日々伝えている「首相動静」に対して国民の知る権利を超えているとして秘密指定の欲求を示したという。

 発言の主なところは横着して、次のインターネット記事から採録、そのまま利用することにした。《首相動静は「知る権利を超えているのでは」小池百合子元防衛相が指摘》THE HUFFINGTON POST/2013年10月28日 18時33分)

 既にご存じの方は大勢いると思うが、「THE HUFFINGTON POST」なる名前を私は知らなかったから、調べてみた。読みは「ハフィントン・ポスト」。アメリカ合衆国のリベラル系 インターネット新聞だそうで、日本版をハフィントン・ポストと朝日新聞が合弁で運営、20113年5月7日にオープンしていると言う。

 小池百合子「私、毎日、新聞に首相の動静とかですね、何時何分に誰が入って、何分に誰が出てとか、必ず各紙に出ていますね。私は、これは知る権利を超えているのではないだろうかと思いますし、また中にはですね、自分は首相に近いからそのことを見せつけるためにわざわざ総理官邸に行って書いてもらったりですね、ぜひこのレストランには来てくださいみたいなそんな風に使われているようなところも無きににしもあらずでございますけれども。

 (中略)

 諸外国のですね、首相大統領の動静ということで、国会図書館にお調べいただいたのですが、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランスの主要な新聞15紙を調べていただいたものでございましてね。結果はいわゆる首相動静のような記事を日々掲載しているものは確認できなかったんです。アメリカではワシントンポストがwebサイトで日々のオバマ大統領の動向を掲載しているというのがあるんですが。いわゆる日本のような詳細なものではございません。かつ、2012年の6月20日を最後に更新をされていないということでございます」――

 記事はこの発言以下は解説する形で紹介しているが、他のWeb記事から発言自体を引用する。
 
 小池百合子「日本は機密への感覚をほぼ失っている平和ぼけの国。首相動静とか各紙に出ているが、国民の知る権利を超えているのではないか。何を伝えてはいけないか精査してほしい」(TOKYO Web)――

 諸外国では指導者の動静を伝えないのが一般的だから、日本でそれを伝えているのは「平和ぼけの国」だからこそであり、「国民の知る権利を超えているのではないか」との趣旨となっている。

 要するにマスコミが日々伝えている「首相動静」は国民の知る権利を超えた高度の国家機密であり、当然、特定秘密保護法が成立した場合は秘密指定にすべきではないかとの欲求を露わにしている。

 但し、諸外国では一般的ではないことのみを基準にして日本も諸外国に倣って、一般的ではないことにすべしというのは単細胞に過ぎる。その欲求には国情を条件として入れていないからだ。

 社会を恐怖と混乱に陥れる大規模なテロが時折り発生し、そのテロが国家指導者に及ばない保証はなく、常に及ぶ危険性を抱えながら、その危険性を想定して高度の警護を怠るわけにはいかない諸外国の国情とテロに無縁な日本の国情とは自ずと異なる。

 また無縁であっても、それなりの厳格な警護を施しているはずだ。
 
 勿論、今後テロが発生しない保証はないし、そのテロが日本の首相を標的としない保証はないが、「首相動静」はあくまでも既に行われた過去の出来事の報道であって、今後行う近い将来の予定行動を逐一伝える報道ではない。

 テロ犯は過去の出来事にどう先回りがすることができると言うのだろうか。

 テロ犯がタイムマシンに乗って過去の世界のある一日に潜行して、その日の首相の行動を過去の出来事から未来の出来事に変え、現実の世界で手に入れた「首相動静」の情報に従ってその行動を追い、テロを仕掛けるという映画の話しなら、過去の出来事への先回りも可能となる。

 いわばマスコミは「首相動静」でテロを行おうと先回りすることは不可能な時間のみを記しているに過ぎない。このような情報を「機密」だと言って、特定秘密指定にすることができるのだろうか。 

 毎日のように一定の時間内に一定の行動を繰返し行う場合は「首相動静」から読み取ることができ、先回り可能となるが、その唯一の予定行動は首相公邸から、途中どこにも向かわずに直接首相官邸へと向かう朝の時間帯の出勤ぐらいのものであろう。

 一般的には首相に就任すると首相公邸に住み移って、同じ敷地内にある首相官邸へと出勤するが、それなりにテロに対する警備は万全な備えを施しているはずだから、敷地内の移動に関しては、それが一定の時間内の一定の行動であったとしても、「首相動静」はテロ犯の先回りの情報足り得ない。

 但し右翼の軍国主義者安倍晋三の場合は渋谷区富ヶ谷にある私邸から千代田区永田町の首相官邸まで通っている。「首相動静」が伝えている朝の時間帯に私邸近くで見張っていたなら、テロ攻撃のターゲットにすることは十分に可能となる。

 だが、現実には既に行われた過去の出来事の報道である「首相動静」の情報の内、予定行動であると解釈可能な一定時間内に日々反復されるほんの一部分の情報を取り上げて、そのような情報を許しておくことは「平和ぼけの国」だと言うなら、首相公邸に住まずに私邸から朝の時間帯に出勤することで容易にテロ攻撃を誘発し得る右翼の軍国主義者安倍晋三こそが「平和ボケ」と言わざるを得ない。

 右翼の軍国主義者安倍晋三が首相公邸に住まずに私邸からの出勤としているのはパトカーに先導されて車列を組んで走る、その物々しさの演出者である自分が一台の高級車の後部座席にゆったりと座っていることによって何か融通無碍のオールマイティを手に入れた大層偉大な人物となったような高揚感に浸ることができる得難い至福の時間帯となっているからではないだろうか。

 少なくとも首相公邸から徒歩での首相官邸への朝の移動では決して味わうことのできない毎朝の高揚感であるはずである。

 小池百合子が前日の、あるいは午後から見て午前という過去の首相行動の報道でしかない「首相動静」さえも成立した場合の「特定秘密保護法」で特定秘密に指定したい欲求を抱えているのである。その恣意性と「特定秘密保護法案」では特定秘密の指定が妥当かどうかチェックする仕組みはないこと、さらに右翼の軍国主義者安倍晋三の国家最優先の国家主義とを考え併せると、国家優先の立場から「国民の知る権利」を無視して、小池百合子の恣意性を安倍晋三までが担わない保証はない。

 そもそもからして安倍晋三は「特定秘密保護法」の成立を待つまでもなく、既に恣意的な秘密指定を行っている。飯島訪朝の経緯と結果について何ら「国民の知る権利」に応えていない。

 これは「国民の知る権利」を無視した恣意的なある種の秘密指定と言うことができる。

 いわば秘密指定は既に始まっている。

 このこと一つを取っても、「特定秘密保護法案」が成立した場合、特定秘密の指定が妥当かどうかチェックする仕組みがない以上、その法律を楯に自らの恣意的意志の都合に任せて、「国民の知る権利を超えている」からと理由をつけて小池百合子並みの秘密指定に走らないとは決して言えない。

 秘密指定の乱用は同時に「国民の知る権利」に対する侵害以外の何ものでもない。成立した場合の「特定秘密保護法」が指定妥当性検証のチェック機関の不在によって秘密指定が「国民の知る権利」に対する侵害と隣り合わせとなるということである。

 10月25日午前、民主党は特定秘密の指定が妥当かどうかを裁判所がチェックできるようにする情報公開法改正案を提出している。同日午後の民主党代議士会での海江田代表の発言。

 海江田代表「(「特定秘密保護法案」は)多くの問題がある。特定秘密の対象となる情報が不明確。

 閣僚が特定秘密を指定する際に第三者機関によるチェック機能がない」(日経電子版)――

 裁判所ではなく、国会自体に責任を持たせるべきではないだろうか。国会に与野党同数の議員と第三者の有識者数人をメンバーとした検証委員会を設けて、秘密指定の妥当性を検証する。

 余程の事案でなければ秘密指定はできなくなる。

 秘密指定した事案の情報をメンバーの議員や有識者が漏らすような責任感のなさを見せるようでは、国家の程度を世界に知らしめることになる。当然、メンバー自体も指定された秘密を情報公開の日まで数十年と守らなければならない。秘密指定した情報の重大性と責任の重さを痛感することになるだろう。

 裏を返すと、生半可な事案は秘密指定できないということである。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

右翼の軍国主義者安倍晋三と下村博文と塩崎恭久になぜ日本ではベンチャー企業が育たないのかの判断能力なし

2013-10-30 04:22:33 | 政治



      生活の党PR

      NSC(国家安全保障会議)設置法案に於ける文民統制形骸化の懸念をテーマとした《10月25日(金)衆議院本会議・玉城デニー生活の党幹事長代理質問全文》   

 2013年10月21日衆院予算委で塩崎恭久自民党議員がここ20年来、30年来の日本の企業の低迷と対比させて、日本ではベンチャー企業が育たない、アメリカのアップルとか、マイクロソフト、グーグル、フェイスブック、アマゾン等々のようにベンチャーから大きく育っていく例が日本では少ないと指摘していた。

 当然、なぜ日本ではそうなのか、その原因を探らなければならないが、塩崎は日本の経済風土・経済文化だとするばかりで、本質的な原因を探りもせず、安倍晋三の答弁も原因に気を止めない、普段から口にしている抽象的な文言を振り回すばかりであった。

 途中、省略する個所もあるが、録画したNHKの放送から文字に起こしてみた。年を取ると共に文字起こしがしんどくなり、省略箇所が増えることになる。その最終的な人生のすべての省略が死ということなのかもしれない。(余分な一言)

 塩崎恭久「アベノミクスがやらなければならないことは、日本がこうまでにも競争力を失って、収益力を失ってしまった、その原因は何なのか。

 多分それは風土とか、経済文化だとか、かなり根深い問題が問題がたくさんあって、これを解決しない限りは色々な対策をやっても、恐らく一時のもので終わってしまうだろうなあと思うわけであります。

   ・・・・・・・・・

 (低迷している企業を再生するには新陳代謝が必要であることを訴えてから)新陳代謝の典型は開業率も起業率も政府の方も倍にするのだと、欧米並みにするという話をしてますけども、やはり大事なのは、大事なことは雇用をつくることが我々としては大事なことで、勿論、雇用があれば所得を生む、それが生活水準を上げていくということになるわけで、実は企業もつくってから3年以内の企業というのが一番雇用をするんですね。

 ですから、規制改革の話の中にもありましたけど、ベンチャー企業なども、さっきのような雇用形態(簡単には整理できない柔軟性のない雇用形態)も大変だろうなと思います。新しく企業を起こす、創業というのはとても大変だと思う。

 ところが政府は今まで20年、30年ベンチャー、ベンチャーって言ってきました。しかしなぜか、本当に凄いベンチャーというのは出てこない。殆どというふうになっています。

 一方でシリコンバレーというのは1年間に1万7千社が誕生して、そして1万2千社がなくなっていく。あるいはM&Aで合併する。結局ネット(正味)で5千社増えているという、まさにこれは新陳代謝が凄くいいということなので、やっぱり、こういう形に日本中していこうということが我々は大事なことなんじゃないかなあと思っている。

 私たち自民党の中で、さっきの中間提言の中で、提案をするとあったときに敢えてベンチャーについてはワンチャプター特出しで、新陳代謝のプラスの面として取り上げたわけでございますが、そこの中の議論の結果は、なぜ今まで我々は20年、30年、ベンチャーと言っても、なかなかうまくいかなかったんだろうか。これは経産省の担当の人たちとも議論して結果としてですね、これは我々が提案したものですけども、切れ目のない、やっぱりサポートシステム、支援の仕組みというものがなければいけない、というのが私たちの結論だったと思うんです。

 それも官が全部やるかというと、民がやるのを官が後ろからバックアップするとか、あるいは民だけでやるとか、何でもいいわけです。何しろ、途切れることなく、企業が生態系と同じように育っていくということが大事なので――。

 (若いベンチャー起業家たちと食事したとき、政府がバーンとした成功例をつくって貰って助かった、野茂の大リーグ挑戦を持ち出して、大丈夫かなあと思ったが、成功して、松井秀喜やイチローが続いたといった例を示してから)

 ドーンと成功する例があれば、日本人というのは割合いそれについて行くという、新しい道を行くということが結構ありますので、この点についても見習って頂いて、是非考えて頂きたいと思います」

 安倍晋三「起業は日本経済活性化のカギだと思っています。日本再生戦略に於いても開業率100%台を目指すと、野心的な目標を掲げて、大きな柱として打ち出したところでございまして、起業支援は各省横断的な取組みが不可欠であると、私も考えています。

 このため全閣僚がメンバーとなる経済再生本部や官邸に設置した産業競争力会議に於いて、成長戦略を重要な柱として起業支援を検討していきます。

 ご指摘の点は極めて重要であると思いますので、今後共タテ割りに陥ることなく、我が国をベンチャー精神溢れる創業大国にするためにですね、政府全体で起業支援と取組んでいく体制について真摯に検討していく考えであります」

 塩崎恭久「大変前向きなお言葉を頂いたので、心強くして、我々自民党サイドとしても、色々やっていきたいというふうに思っております。

 次に先程申し上げた日本の経済文化とか風土とか、そういう根深い問題についても一緒に考えていこうというふうに思っておりまして、次に我々日本経済再生を考えるときに。答を出さなければいけない疑問というのがいくつかあると思います。

 なぜ日本の企業というものはこの20年来、競争力を低下しながら、でも、何で生き延びてこられたんだろうか。

 こういうさっきの新陳代謝が悪いということですよね、なぜこういうことが許されちゃうのか。これがやっぱり解決されないと、難しいんじゃないのかな。

 もう一つは、なぜ日本には、例えば、あのアメリカのアップルとか、マイクロソフトとか、グーグルとか、フェイスブックとかですね、えー、色んな、アマゾンでもそうですが、色んな、やっぱりベンチャー企業から大きな企業なり、育っていく。日本は殆どできていく例がないんだろうか。

 ということも大事なことで、これもやっぱり総理がおっしゃる新陳代謝のいい経済にするためにはやっぱりその原因には企業の文化・風土など根深いものを一つ一つ潰していかなければならない。

 そのためのメニューとして日本経済再生本部、今甘利大臣の所で取り纏めて頂きましたけども、その中にも我々の中間提言にも入っているメニューがあって、これは先ずは規制改革、それから、金融機関改革というものも大事だと思います。

 コーポレートガバナンス(企業の不正行為の防止と 競争力・収益力の向上を総合的に把え、長期的な企業価値の増大に向けた企業経営 の仕組み。企業統治とも訳される。)の改革、つまり企業が本気にならない限り、やっぱり何をやったってうまくいかない。

 それから機関投資家改革・・・・・」(以下略)

 塩崎は日本ではベンチャー企業が育たないのかと疑問を提示し、答を出さなければいけない問題としておきながら、この疑問に対する本質的な問題点を解こうともせず、このことも問題だが、政府が成功例をつくれば、後に続く形でベンチャー企業がさも育っていくかのようなことを発言したのに対して、右翼の軍国主義者安倍晋三は、「全閣僚がメンバーとなる経済再生本部や官邸に設置した産業競争力会議に於いて、成長戦略を重要な柱として起業支援を検討していきます」とか、「我が国をベンチャー精神溢れる創業大国にするためにですね、政府全体で起業支援と取組んでいく体制について真摯に検討していく考えであります」とか、既に何度も言っている、こうします、ああします等々の方針を繰返すだけの紋切り型の答弁で済ます単細胞振りを示すのみとなっている。

 このようなアホな答弁しかできないようでは、右翼の軍国主義者安倍晋三にはトップの資格が実質的にあると言えるのだろうか。

 このなぜは解かなければならない本質的な問題であるにも関わらず、解こうとする姿勢が塩崎ばかりか、安倍にもない。二度目の塩崎の質問に対する安倍晋三の答弁を聞いても仕方がないから、省略することにした。

 塩崎に至っては右翼の軍国主義や安倍晋三のアホな答弁に対して「大変前向きなお言葉を頂いた」と前向きでも何でもない、具体性も何もない、体裁だけの空疎な言葉を持ち上げてさえいる。

 塩崎は大リーグに挑戦した野茂や松井等を例にして、「ドーンと成功する例があれば、日本人というのは割合いそれについて行くという、新しい道を行くということが結構あります」 と言っているが、野茂も松井秀喜もイチローもそれぞれに優れた独自性を持っていた。野茂の成功は後に続く者を勇気づけただろうが、勇気だけでは解決する問題ではなく、あくまでも本人の資質が優れた独自性を持っているかどうかであって、先人の成功例自体が後に続く者の活躍・成功を保証するわけではない。

 大リーグに挑戦して長続きしなかった日本のプロ野球選手の少なくない存在がこのことを証明している。

 こういった経緯に対する認識もなく、成功例が解決策になるとする考えの甘さは如何ともし難い。

 当然政府が「ドーンと成功する」模範例をつくり、その真似から入ったとしても、起業した企業自体が独自の経営方法・製品やサービスに関する独自の創造性を持たなければ、大きな企業への発展は難しいことになる。模範例とズレが生じるはずだ。

 いわば起業した企業がその企業に特有な優れた独自性を如何に有効に発揮できるかどうかが世界的な大企業化への道であり、その点に本質的な問題があることになって、そのことを問題とせずに成功例をつくれだ、規制改革だ、金融機関改革だ、コーポレートガバナンス改革だと支援の仕組みに必要性を説いた上で、「企業が本気にならない限り」などと精神論を振り回すだけでは単細胞な履き違えとしか言い様がない。

 要するに塩崎にしても右翼の安倍晋三にしても当てにならないことを言っているに過ぎない。

 前々から日本人はモノづくりの才能は世界的に優れているが、独創性に欠けると言われていたし、日本人自身による指摘もあった。独創性とは創造性という点での最大の独自性を意味するはずである。

 独創性の基本は知識である。それも自ら創り上げた知識でなければならない。それが最初は他人の知識の受け売りであっても、それを自身の知識に創り変えて、それを原資として自らの創造性で発展させていかなければ、独創性は生まれてこないはずだ。

 一般的には日本の場合、公式的な体系的知識の取得は学校教育によって授かることから始まる。そのような形式を基本的としている。だが、日本の教育は教師が伝える知識・情報を児童・生徒が丸の形で体系的に暗記する暗記教育――いわば教師の知識・情報をモノマネする教育となっていて、児童・生徒それぞれが自身の発想を訓練する教育とはなっていない。

 教師が伝える知識・情報に対して自身の発想を付け加える余地のない教育の場ではそれらの知識・情報を自身の知識情報に創り変えていくことは難しく、当然、そこに創造性の発展は期待できないことになって、なかなか独創性は生まれてこないことになる。

 教育の成果にしても如何に多くの知識・情報を正確に暗記しているかによって評価されることになる。

 当然のことだが、日々の正確な暗記の訓練、その積み重ねによって否応もなしに児童・生徒を知識・情報に対してモノマネ思考型の人間に育てていくことになる。

 このモノマネ思考が日本の製造業のモノづくりを発展させた原動力であるはずだ。モノづくりの見本があって、その見本のモノマネから入り、それを改良・発展させる能力を日本のモノづくりは基本としている。

 塩崎が「日本ではベンチャー企業が育たない」と言っている本質的原因が日本の教育にあるとしたなら、長い時間がかかるかもしれないが、日本の教育を知識・情報のモノマネでしかない暗記教育からベンチャー企業が育つような、児童・生徒の発想を訓練し、成長させていくような教育へと変えてモノマネ思考から脱却させ、独創性を思考型とするよう、方向転換を図らなければならないはずだ。

 だが、右翼の軍国主義者安倍晋三も塩崎も教育の転換ではなく、様々な規制改革を日本に於けるベンチャー企業育成の要点だと見做す履き違えから抜け出せないでいる。
 
 この履き違えは大学入試制度改革でも見て取ることができる。

 次の記事が伝えているところによると、「大学が求める人材像と入学者選抜が評価している能力とのギャップが生じている」ことから、政府の教育再生実行会議(座長・鎌田薫早稲田大総長)が10月11日(2013年)に会合を開き、大学入試制度改革の提言素案を委員に示したという。

 《教育の質や人材育成考慮 大学入試改革の提言素案》日経電子版/2013/10/12 1:42)

 現在の大学入試センター試験に代わる新共通テストと高校生の学習到達度を確かめる基礎学力テストの2種類を創設するのが柱だとしている。

 だが、この「高校生の学習到達度を確かめる基礎学力テスト」というのは、日本の教育が暗記教育を構造としている以上、暗記知識の正確さとその量を確かめる儀式であることに変りはないはずだ。

 思考能力を確かめるにしても、暗記知識の範囲内の思考能力を試すことはできるだろうが、児童・生徒それぞれの発想を訓練することから始まって独創性を育む教育とはなっていないことを前提としなければならない。

 大学に於ける人材選抜の儀式がその程度のものでよしとするなら、塩崎等が「日本ではベンチャー企業が育たない」と、その独創性の欠如を嘆くのは整合性を失うことになる。

 日本でもアップルやマイクロソフト、グーグル、フェイスブック等々の世界に冠たる知的産業を育てたいというなら、大学入試制度そのものが問題ではなく、日本の教育そのものに問題点があることに留意して、自分たちの履き違えを是正しなければならない。

 教育再生実行会議冒頭の右翼の軍国主義者安倍晋三の挨拶。

 安倍晋三「能力や意欲を多面的、総合的に評価し判定する方向に転換する必要がある」――

 尤もらしい発言に聞こるが、多くの識者や教育評論家等が既に何度も言い、使い古された言葉を再び持ち出したに過ぎない。

 大体が暗記教育によって独創性とは無縁のモノマネ思考を育てておいて、「多面的、総合的に評価し判定」できるような「能力や意欲」を備えていることに関しては限界があることに気づきもしない。限界があるからこそ、日本では見るべきベンチャー企業が育たないということであろう。 

 また、入試制度そのものを問題として「大学が求める人材像と入学者選抜が評価している能力とのギャップが生じている」としているが、大学が求める人材が高校にゴロゴロしていたなら、少しぐらい入試の方法が間違っていても、求める人材は否応もなしに大学に転がり込んでくるはずだ。

 だが、「ギャップが生じている」、いわば転がり込んでこないということは、入試制度ではなく、高校までの日本の教育自体に問題があると見做さなければならないはずだ。

 当然、少しぐらい入試制度を改革しても、選抜した人材にさしたる変わりはないことになる。

 下村博文等々の日本の教育を問題とせずに入試制度を問題視する履き違えは客観的認識能力の欠如の提示以外の何ものでもなく、教育行政に携わる人材の客観的認識能力欠如は滑稽な逆説そのものだが、当然、下村博文にしても、その客観的認識能力欠如が災いして、なぜ日本ではベンチャー企業が育たないのか、その根本的原因に気づく目を持たないことになる。

 右翼の軍国主義者安倍晋三や塩崎の履き違え同様に入試制度改革に於ける下村博文等の履き違えを正さない限り、少なくともマイクロソフトやグーグル、アップル、フェイスブック等の創業者並みの独創性を持った人材の日本での育成は難しいだろう。

 それとも当方の履き違えに過ぎないのだろうか。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

野田毅自民税調会長の消費税の軽減税率導入は線引きが難しいは税収減を恐れる国家優先・国民無視の思想

2013-10-29 05:23:06 | Weblog


 
 あの曲者の野田毅自民税調会長が10月28日、福岡市で講演して、食料品などの生活必需品に関して消費税率を低く抑える軽減税率の導入には「さまざまなハードルがある」と指摘、慎重な姿勢をあらためて示したと同日付の「MSN産経」記事が伝えている。

 どういった品目に軽減税率を適用するのか「境界線を引くのが難しく、様々なハードルがある」ということらしい。

 野田毅「最大の問題は(消費税増税分の)社会保障の使い道を世の中に明らかにしていることだ」

 記事解説は、軽減税率導入による社会保障の財源不足に対する懸念を示した発言となっている。

 公明党が消費税率を10%に引き上げる時点での軽減税率導入を強く主張しているのに対して自民党の税務調査会がだろう、自民、公明両党関係者からのヒアリングを10月30日に終える予定だと書いてある。

 野田毅「来月ぐらいから公明党と相談しないといけない」――

 要するに如何に公明党を説得して、公明党が主張する軽減税率導入を断念させるかという趣旨なのだろう。

 野田毅の意向は自民党総裁を兼ねた右翼の軍国主義者安倍晋三の意向を受けたものであるはずだ。いわば安倍晋三も軽減税率導入は線引きが難しいという考えのもと、導入を回避する姿勢でいることになる。

 右翼の軍国主義者安倍晋三は10月17日の衆院本会議で次のように答弁している。

 安倍晋三「軽減税率については、財源、中小事業者の事務負担の課題が挙げられ、与党で関係者にヒアリングなどを通じて精力的に議論が続けられている。今後の議論を見守っていきたい」(MSN産経

 「今後の議論を見守っていきたい」とは言っているものの、「財源、中小事業者の事務負担の課題」を言っている以上、そのような課題に重点を置いた判断に立っていることを示す。

 民主党政権も同じように線引きが難しいと言っていた。

 だが、日本人は外国のマネが得意なのだから、外国の軽減税率対象品目の「線引き」をマネすればいい。日本の技術はマネで成り立ってきたと言っても過言ではない。

 2013年1月16日付の「ZAKZAK」記事が、フランスのチョコレートがカカオの含有量で標準税率(19・6%)か軽減税率(5・%)かに分かれている事例を線引きの難しさの一例に挙げているが、そういった区別はつけずに、カカオ購入時に支払った消費税を含有量で割った金額をチョコレート代金に含めばいいことで、外国の例を挙げて問題を難しくすることはない。

 マネが行き過ぎると、日本の状況に合わないことになり、却って問題をややこしくする。

 業界の力関係やそれぞれの業界を支援する政治家の力関係が関与して対象品目に違いが出る懸念を言うケースがあるが、最終的には国民の納得であろう。

 食品を軽減税率課税の対象品目とした場合、低所得者よりも高額所得者の方が食品にかける金額が多いことから、逆進性対策とならず、金持ちにより有利な仕組みとなるという指摘から軽減税率導入の反対を唱えるケースがあるが、高額所得者が有利となる分、所得税の累進課税率を強めて、カバーすれば済むことであるはずだ。

 金持ちの有利性を回避するために低所得層の有利性まで回避することになったなら、福祉国家とは言えなくなる。

 野田毅「(軽減税率)導入にはインボイス(商品・サービスごとに価格と税額を細かく記した送り状)が必要だ」(同ZAKZAK

 岡村日商会頭(インボイス作成の手間で)「中小企業の事務負担が過剰になる」(同ZAKZAK

 まさか各中小企業や各商店ががそれぞれに計算機で税率を弾き出して、手描きで書類を作成するわけではあるまい。コンピューター時代だという認識を無視している。
 
 政府がプログラム作成・開発会社何社かに軽減税率導入対象品目のインボイス作成ソフトの共同開発を依頼して、政府が購入、中小企業や商店に安価に頒布すれば、後はパソコンでそのソフトを開いて、それぞれの数字を入力して送り状が完成する仕組みにすれば、事務負担が過剰になるということはないはずだ。

 具体的な内容は知らないが、インターネット上には次のような記述もある。〈Nutcacheは無料のインボイス送付と&時間管理のための多言語対応オンラインアプリです。

 当社の非常に優秀な人材は無類のユーザーエクスペリエンスを提供する製品の製作に注力しており、Nutcacheのゴールは細かなことやインボイスに現在お困りのフリーランサーや小規模の企業家の生活の品質を改善することです。 Nutcacheのアプリケーションがあなたのビジネス拡大に成功するように祈っております!〉――

 上記「ZAKZA」Kには、〈軽減税率導入で年間3・1兆円の税収減となるとの試算もある。消費税1%分(2・5兆円)以上が吹き飛ぶ計算だ。軽減税率導入は容易なことではない〉との解説もある。

 要は軽減税率導入なしで、低所得層には一時金配布で済ませることで消費税増税からの税収を限りなく増やし、それを社会保障費に回せば、それまで社会保障費として使っていた予算が身軽になる。その予算を公共事業等の予算に回して選挙区に公共事業などを持ってくれば、地元利益誘導に適い、「先生、先生」と崇め立てられて票も獲得できるといったところではないのか。

 「2011年国民生活基礎調査の概況」(厚労省)によると、岩手県、宮城県及び福島県を除く平均所得金額(538万円)以下の割合は 61.2%で、300万円以下は32.9%となっていて、後者は国民の3割に迫る。

 軽減税率導入がなければ、低所得層程、消費を抑えることになって、窮屈な生活を強いるだけではなく、その分消費税収も減ることになる。

 それを無視してまで軽減税率導入を回避しようとするのだから、まさに全体的な税収減を恐れるための国家優先、少なくとも3割の国民無視の、強者のための思想と言うことができる。

 右翼の軍国主義者安倍晋三がやりそうなことである。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

NHK世論調査に見る右翼の安倍内閣経済政策に対する国民の評価判断の滑稽な大間違い

2013-10-28 05:54:20 | Weblog

 

 昨日(2013年10月27日)の日曜討論で安倍内閣の経済政策に関する評価についての10月12日から15日にかけて行ったNHK世論調査を用いて、賃金が上がるかどうか質問していた。
 
 先ずNHKの世論調査から。

 安倍内閣の経済政策に対する評価

 「大いに評価する」6%
 「ある程度評価する」56%
 「あまり評価しない」25%
 「まったく評価しない」9%

 安倍内閣の経済政策のもとでの労働者の賃金が上がる可能性

 「上がる」11%
 「上がらない」46%
 「どちらともいえない」38%

 この質問に対する各党の政策責任者である政務調査会長や会長代理の発言をNHKは記事で伝えているから、それを利用して、自民党と民主党と生活の党と共産党と社民党の発言のみを紹介することにする。

 《賃上げや雇用の確保巡り各党議論》NHK NEWS WEB/2013年10月27日 12時6分)

 棚橋自民党政務調査会長代理「安倍政権が目指しているのは、経済界が潤うことではなく、ビジネスチャンスを広げて、ビジネスに対する投資を向上させることで賃上げが行われ、失業率が低くなることだ。大胆な規制改革などを行う『国家戦略特区』の構想を経済を成長させる起爆剤にして、ビジネスチャンスを広げることにより、雇用を増やし、労働者の待遇をよくしていく」

 櫻井民主党政策調査会長「民主党政権のやり方に問題があったことは認めざるをえないが、今は株は上がっているものの、暮らしは何も変わっていないというのが多くの人たちの声だ。特に中小企業は、円安で原材料費が上がっても価格転嫁ができず、賃金を上げられない状態だ。政府は、賃上げに向け、地方や中小企業に目を向けるべきで、経団連頼みの政策では実現は難しい」

 山下共産党書記局長代行「企業の内部留保270兆円を1%活用すれば8割の企業で月1万円の賃上げができるはずだ。賃金低下の最大の要因は非正規雇用であり、派遣労働や有期雇用を一層、拡大しようとする政府の姿勢は支離滅裂だ」

 270兆円も溜め込む一方であるということは溜め込む方向への力学を1%取り崩す方向へ今まで一度も発動させなかった程に強固な力が働いていたということであって、賃上げが倍返しになる経済の保証――好景気が約束されない限り、その慣習は簡単には崩しはしないのではないだろうか。

 玉城生活の党幹事長代理「賃金を上昇させるには、非正規雇用の人たちを正規雇用に変えた企業への減税を行うような政策が必要だ。アベノミクスの効果は地方にまでは至っておらず、今こそ地方に財源や主権を渡すべきだ」

 吉川社民党政策審議会長代理「過去の経験から、企業の収益が増えても賃金には結びつかない。雇用分野での規制緩和も賃金を押し下げる圧力にしかならず、賃上げには労働側に有利になる規制の強化が求められる」――

 安倍晋三が掲げる「国家戦略特区」を共産党が「解雇特区」と呼称したことに対して棚橋が「安倍晋三は成熟産業から成長産業への人材の移動を考えているので、できれば解雇特区と呼ばないで欲しい」と訴え、それに対して櫻井民主党政策調査会長が、「自民党は労働者派遣法改正の時も同じで、その人達の能力を生かすために他の産業にに移っていった方がいいのじゃないですかと言って派遣業を遣りやすくしただけのことで、今の惨状があるのではないか」と追及すると、棚橋は次のように発言している。

 棚橋「つい最近の派遣事業の例の法案のとき、民主党さんがもう一度法案を出そうとしたときに労働者の方々の母が反対だったということは、ご記憶にあると思います。

 『派遣労働を禁止したら、自分たちの職がなくなるだけで、自分たちは正社員になれるわけではない』というふうに、経済のパイが広がらない限りはそうはならないということは働いている方が一番よく分かっています」――

 「例の法案」とは2010年10月の菅無能内閣が臨時国会に提出した製造業での派遣の原則禁止等を掲げた労働者派遣法改正案であって、民主・自民・公明3党で「製造派遣、登録型派遣の原則禁止」等を削除、いわば共同謀議による骨抜きを謀って自民党に政権が交代する9カ月前の民主党政権下の2012年3月8日に衆議院可決、3月28日参議院で可決、成立している。

 派遣労働を禁止しても、必要な人材は雇用しないわけにはいかず、全員正社員という雇用の形を取ることになる。棚橋が言うように職がなくなるわけではない。

 但し、企業はより安い人件費を求めて海外移転を加速させるか、従来の正社員の給与を抑えることで、派遣から正社員となった被雇用者の賃金を派遣時とほぼ変わらない金額で抑えるといった防御策に出るはずだ。

 後者の場合、従来からの正社員と元派遣との賃金格差の縮小の可能性は期待できるかもしれないが、全体的賃金の低下は避けることができなくなる。

 だが、右翼の軍国主義者安倍晋三はアベノミクスが謳う好循環を実現させるためには好循環の必要不可欠で最重要な条件である賃金上昇は実現させなければならない。

 逆説するなら、賃金上昇の実現がなければ、アベノミクスの好循環は崩れ、経済政策そのものが崩壊する。いわば賃金上昇は安倍右翼内閣の経済政策に欠かすことのできない絶対的条件であり、一体的な位置を占めている。

 にも関わらず、NHK世論調査では安倍内閣の経済政策に対して「大いに評価する」6%+「ある程度評価する」56%=62%も評価していながら、そのような経済政策のもとでの賃金上昇の可能性に関しては、「上がらない」が46%に対して「上がる」が11%の評価しか与えていない。

 しかも「どちらともいえない」の半信半疑が38%も占めている。

 賃金上昇が右翼の国家主義者の経済政策(=アベノミクス)に対する一体的条件である以上、経済政策そのものに評価を与えるなら、賃金上昇に関しても期待しなければならないはずだが、期待できずに疑っているということはその一体性を認めていないことになる。

 当然、好循環の否定となる。賃金上昇のない好循環は逆説そのものである。

 あるいは賃金上昇に関して期待不可なら、経済政策に対する評価も期待不可として初めて評価判断に一貫性を持たせ得る。

 この一貫性のない相反する評価判断は国民の頭がどうかしたとしか思えない滑稽な大間違いでしかない。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

右翼の軍国主義者安倍晋三は戦前日本の侵略戦争を認めて初めて中国の平和的抬頭を求めることができる

2013-10-27 05:35:03 | 政治



      生活の党PR

      《10月27日玉城デニー生活の党幹事長代理NHK『日曜討論』テレビ出演案内》

      ☆・日 時:平成25年10月27日(日)9:00~10:00
      ☆衆議院議員玉城デニー公式ウェブサイト『Denny dot com』 
 右翼の軍国主義者安倍晋三が10月25日(2013年)、米紙ウォール・ストリート・ジャーナルのインタビューを受け、その際中国についての言及の一つに次のような発言がある。

 《安倍首相単独インタビュー:一問一答》The Wall Street Journal/2013年 10月 25日 23:57)
 
 WSJ「中国の勢力が大きくなってきくなっているが、それをチェックする機能というのも果たしていくべきというふうに考えているか」

 安倍晋三「中国が法の支配ではなく、力による現状変更を試みようとしていることに対しての懸念がある。しかし、中国はその道を取ることによって平和的な台頭の道をとることができなくなる。つまり、その道をとるべきではない、ということを日本が強く主張することを多くの国々が期待をしている。日本がしっかりと主張していくことによって中国が国際社会において責任ある行動を取っていくことになるということが望まれている」――

 中国政府の中国国民に対する人権の抑圧は目に余るものがある。その巨大な軍事力と併せて、決して平和国家と言うことはできない。だが、その中国に対して軍事的台頭の道を採ることの危険性に警告を発し、「平和的な台頭の道」を求めるなら、警告を発し、求める自身にしても平和思考を自らの政治的体質としていなければならないはずである。

 いわば平和的政治性の政治家であった場合は中国に対して平和的であることを求める資格を持ち得るが、平和的政治性の政治家でなかった場合、立場上の整合性を失うゆえに求める資格はないことになるはずだ。

 4月23日(2013年)の参院予算委。

 安倍晋三「特に侵略という定義については、これは学界的にも国際的にも定まっていないと言ってもいいんだろうと思うわけでございますし、それは国と国との関係において、どちら側から見るかということにおいて違うわけでございます」――

 右翼の軍国主義者安倍晋三は侵略の定義は定まっていないとすることによって、日本の戦前の侵略戦争を否定した。戦前の天皇を利用した天皇独裁の軍国主義国家日本を肯定し、間違っていない戦争としたのである。

 このような歴史認識に対して平和思考を自らの政治的体質としていると言うことができるだろうか。 

 5月15日(2013年)参院予算委員会。

 安倍晋三「私は今まで日本が侵略しなかったと言ったことは一度もないわけでございますが、しかし、言わば歴史認識において私がここで述べることは、まさにそれは外交問題や政治問題に発展をしていくわけでございます。

 言わば私は行政府の長として、言わば権力を持つ者として歴史に対して謙虚でなければならない、このように考えているわけでありまして、言わばそうした歴史認識に踏み込むことは、これは抑制するべきであろうと、このように考えているわけでございます。つまり、歴史認識については歴史家に任せるべき問題であると、このように思うところでございます」――

 「歴史に対して謙虚でなければならない」とすることによって、あるいは「歴史認識に踏み込むことは、これは抑制するべきであろう」とすることによって、自身に不都合な歴史認識――日本の戦前の戦争は侵略戦争だとする歴史認識をも歴史の背景に隠そうという意図なのだろう。

 「私は今まで日本が侵略しなかったと言ったことは一度もない」という言葉がその証拠となる。ストレートとは決して言えないこのような屈折した言い方によってしか、侵略に関わる歴史認識の表現を可能とし得ない。

 いわば侵略だったとも、侵略でなかったとも、明確に表現することができない。その限界、曖昧さが、侵略の定義は定まっていないとしていることと併せて侵略を二重にも三重にも否定していることになる。

 このような歴史認識の持ち主を平和思考を自らの政治的体質としている政治家の範疇に入れることができるだろうか。

 本質のところで平和思考を思想的血肉としていない安倍晋三が「積極的平和主義」を言い、中国に対して「平和的な台頭の道」を求める。

 見せかけそのもの、矛盾そのものではないか。

 「積極的平和主義」を言い、中国に対して「平和的な台頭の道」を求めるなら、先ずは日本の戦前の侵略戦争を肯定して、自らの平和思考を明らかしてからにすべきだろう。

 ウソ偽りのない、あるいはマヤカシのない平和思考こそが真の平和志向の資格を得る。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

右翼の軍国主義者安倍晋三自民党総裁下の自民党議員なら、海外視察は観光旅行であってもいい

2013-10-26 06:24:18 | Weblog



      生活の党PR

      《10月23日(水)鈴木克昌代表代行・幹事長定例記者会見要旨》
   
      《☆『小沢一郎代表インタビュー政治の現状と抱負を語る。』特集ページ》

 10月24日、自民党行政改革推進本部の無駄撲滅プロジェクトチーム(PT)が、公費による国会議員の海外視察先がフランスなど欧州に集中しているのは「選定が恣意的だ」として、適正化を図るよう求める提言を纏めて佐藤勉国対委員長に提出、国会改革をめぐる各党協議での議論を要請したと、次の記事が伝えている。

 《国会議員の海外視察、欧州に集中 自民PT「選定恣意的」》MSN産経/2013.10.24 18:45)

 過去10年間の衆院の海外視察は72カ国・地域、延べ270回。海外視察国は多い順にフランス32回、ドイツ17回、英国とイタリア各14回。

 少ない国では、(「過去10年間」でと断りを入れておく)中国、韓国各3回、サウジアラビアなど30カ国は1回の訪問。

 記事解説。〈海外視察に関しては「半分は観光旅行」(ベテラン議員)との指摘がつきまとっていた。〉――

 河野太郎PT座長「議員外交が重要だというなら、行き先をもっと戦略的に選ぶべきだ」――

 海外視察が「半分は観光旅行」だと言うなら、自民党議員に限るなら、「選定が恣意的だ」と言うことにはならない。戦略的とさえ言うことができる。

 自民党議員に限ることは後で説明する。

 「Wikipedia」が伝えている、国際連合専門機関の世界観光機関による2012年の世界観光客ランキング国は、1位がフランスで8301万人、2位はアメリカ合衆国の6696万人、3位が中国で、欧州ではないが、以下4位スペイン、5位イタリア、7位ドイツ、8位イギリスと欧州勢が続いている。

 観光が目的なら、その目的地として欧州に集中するのは意図的選択であり、その上、どうせ国民の税金を使っていくならと、世界の観光客ランキング国上位を狙うのは戦略的と言えないことはない。

 自分のカネで行くなら、安くて済む近場の韓国かフィリピン、タイなどなどを選択する。

 因みに日本は32位の836万人。2011年の東日本大震災の影響で落ち込んでいたが、2012年は大幅に増加して、以前の順位に近づいているという。

 これもついでだが、国際観光収入の1位はアメリカ合衆国の1262億米ドル、2位スペイン559億米ドル、3位フランス537億米ドルで、日本はトップテンに顔を出していない。

 国際観光支出は1位が中国1020億米ドル、2位ドイツ838億米ドル、3位アメリカ合衆国835億米ドル、イギリス、ロシアと続いて、6位フランス372億米ドル、8位日本279億米ドルとなっていて、出かける方は日本も頑張っていることになる。

 観光目的の外国訪問に限ると日本もそれなりに頑張っている傾向は日本の国会議員の海外視察が欧州に集中し、尚且つ「半分は観光旅行」という決して「恣意的」ではない、戦略的選択に準じた傾向であるのかもしれない。

 海外視察と称して世界に名の知れた観光地に出かけて、そこで世界に名の知れた観光スポットの絵葉書を買い、秘書にパソコンを使った毛筆体の文章を書かせて、筆ペンを使ったサインだけは自分、地元の支持者にばら撒くように送るのが相場だと知れている。

 支持者たちは外国の有名な土地ら届いた自身を指名した先生からの頼りだと有り難がって、家のお宝とし、知人に見せては、今先生は海外視察中なんだと、先生も偉くなり、自分も偉くなったような気分になって吹聴する。

 これまた相場として見える支持者たちの光景であろう。

 「半分は観光旅行」だという視察傾向は自民党議員に限って言うと、彼らは右翼の軍国主義者安倍晋三自民党総裁下に活動しているほぼ似た者集団――ほぼ同じ穴のムジナ集団と見ていい。類は友を呼ぶである。当然、右翼の軍国主義者安倍晋三の外交センスとほぼ同質・同程度を相互反映させているはずだ。

 右翼の軍国主義者安倍晋三は外国訪問を、「1週間で2万8千kmを移動する強行軍」だと移動距離で価値づけ、「地球儀を俯瞰する視点で、23カ国を訪問し、延べ110回以上の首脳会談」を行ったと、訪問国数と首脳会談数を外交能力と等価値と見做し、「総勢100名を超える、経済ミッションにも同行していただいた」と、随行者の人数を以って外交成果とするような、ゆえにどのような長期的・全体的展望を持った外交訪問なのか発言のどこからも窺うことのできない、表面的な形式を国民に売り込むだけの政治的創造性の持ち主である。

 勿論、「日本の『強み』を売り込んでまいりました」とか、「日本の魅力を売り込んでまいります」、あるいは「医療システム、食文化、エネルギー、インフラなど幅広い分野にわたり、日本企業がかかわるプロジェクトが動き出しました。手ごたえは、十分です」とか、それぞれに成果、あるいは成果の見込みを宣伝しているが、それは他の国の首脳も行っていて、外国の強み・魅力との間に常に相対化の力学を受けることになるのだから、その相対化の中で日本の強み・魅力を如何に優位的な絶対化へと持っていくのか、そのことのヒントを示すべきだが、外交能力の抽象的な自己宣伝で終わっている。

 その証拠の一つとして、「いつでも対話のドアが開いている」と言いながら、ドアを開けてある部屋に中国や韓国の首脳を招き入れることのできる外交的才覚をいつまで経っても発揮できない事態を挙げることができる。

 相手の方からやってくるのを待ち構えているとしたら、余りにも能がないということになる。もし待ち構えているのだとしたら、ASEANとかG20の場で自分の方から相手に話しかけるべきではない。同じように待ち構えるべきだろう。

 日本にいるときは待ち構えて、外国で顔を合わせた場合は自分から話しかけるでは一貫した態度とは言えない。矛盾が過ぎる。

 親分である右翼の軍国主義者安倍晋三がこの程度の外交的な発想しかない外国訪問を繰返しているのだから、自民党議員に限った場合の海外視察が「半分は観光旅行」であったとしても、似た者同士・同じ穴のムジナ同士として許されるはずだ。

 むしろ親分に準じて、「半分は観光旅行」であってもいいはずだ。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

東電の危機意識のなさが民主党政権と安倍政権の危機意識のなさに伝染した汚染水対策

2013-10-25 13:26:18 | Weblog



 大畠民主党幹事長が10月24日、民主党本部で定例記者会見を開き、汚染水対策に関して恒久的な対策の検討に入るべきをそうしなかったことを謝罪した。

 「NHK NEWS WEB」記事や「YOMIURI ONLINE」記事、その他が伝えているが、《「民主党として大いに反省」現在の汚染水問題招いた陸側遮水壁見送りで大畠幹事長》民主党HP/2013年10月24日)に拠ることにした。
   
 2011年8月17日の統合対策室「事故収束に向けた道筋(ロードマップ)進捗状況報告」

 1~4号機の既設護岸前面に遮水壁を設置する工事に着手することをステップ2の目標として挙げる記述の図面中に海側・陸側遮水壁が共に記載されていた。

 2011年11月17日の統合対策室「事故収束に向けた道筋(ロードマップ)進捗状況報告」

 2011年10月26日の東電「海側遮水壁の工事着手および陸側遮水壁の検討結果について」の報告で「陸側遮水壁については再度検討・判断する」としたことを受けて、「陸側については、設置した場合の効果や影響について総合的に検討し、現時点においては、海側のみで対応することが適当と結論」づけて、陸側遮水壁工事の見送るを承認した。

 大畠幹事長「当時は原子炉の冷温停止、いかにして使用済み燃料や溶け落ちた燃料を冷却するかに全力を挙げており、地下水の問題については錯綜する状況だったろうと私も実感している。

 現在の状況を考えると、12月16日に冷温停止に達したときに応急的な対策から恒久的な対策に切り換える検討に入るべきだった。その点については民主党政権として大いに反省すべきであるし、汚染水問題を大変申し訳なく感じる」

 民主党として野党に転じた今後も汚染水問題、福島第1原発事故対策に全力で取り組んでいく」(下線部分解説文を会話体に直す。)

 東電の10月26日の報告には、「海側遮水壁の工事着手」となっている。

 但し、陸側を見送り、海側のみの工事に結論づけた東電の決定を野田政権が了承した経緯についてはこの記事にも添付の「『遮水壁』等に関する事実調査結果」pdf記事にも何も触れていない。

 この経緯については馬淵民主党選対委員長が9月18日午前の党会合で、陸側遮水壁工事によって新たに1000億円の債務が加わることになることから、多額の費用負担による経営破綻を懸念した東電側の意向を当時の野田政権が受け入れたからだと明らかにしている。

 馬淵氏選対委員長「総理大臣官邸などの判断で発表は取りやめたが、東京電力は遅滞なく計画を進めることを約束していた。にもかかわらず、その後、工事が進まなかった」(NHK NEWS WEB)(下線部分解説文を会話体に直す。)

 この事実は同じ日に当時経産相だった海江田民主党代表も追認している。

 海江田代表「あの時点では間違っていなかった。東電が破綻すれば、被災者への賠償はどうなる、ということを考えねばならない。

 (国費を投入しての遮水壁設置について)『東電に責任を取らせるべきだ』という当時の世論では難しかった」(YOMIURI ONLINE

 東電は債務問題を陸側遮水壁工事見送りの理由としているが、原子炉のメルトダウンした核燃料を冷却する循環冷却水が放射能に汚染されて地下に漏れ、地下水と混じって汚染水と化す危険なプロセスの既に始まっている可能性を識者やマスコミが指摘していながら、なかなか認めなかった危機感のなさが自らに許した陸側遮水壁工事の見送りでもあったはずだ。 

 経済産業省原子力安全・保安院解析による福島第1原発各号機メルトダウンは次のようになっている。《保安院 1号機メルトダウンは5時間後》NHK NEWS WEB/2011年6月6日 21:10更新)から。  

 1号機――地震発生から約5時間後
 2号機――地震発生から約80時間後の3月14日午後10時50分頃
 3号機――地震発生から約79時間後の3月14日午後10時10分頃

 これがただのメルトダウン(炉心溶融)ではなかった。

 2011年5月25日公表の東京電力解析――

 1号機――地震発生から18時間後に格納容器に直径3センチ相当の穴
       50時間後以降に直径7センチ相当に拡大の可能性 

 2号機――地震発生から約21時間後に格納容器に直径10センチ相当の穴
       3月15日に圧力抑制室=サプレッションプールで爆発音があった以降、圧力抑制室に直径10センチ相
       当の穴が開いた可能性

  東京電力「あくまで解析で出た結果で、実際にこうした大きさの穴が開いているかどうかは分からない」(NHK NEWS WEB

 危機管理が最悪の事態を想定してそのことに備えることである以上、実際に大きな穴が開いたと仮定して、対策を取るべきだが、そうはしなかった。

 東電のこのような危機管理意識の希薄さ――危機感のなさは以後も続く。

 東電は2011年3月31日、1号機の建屋近くにある地下水の排水設備の水から原発敷地境界の法定限界値の約1万倍の濃度にあたる1立方センチ当たり430ベクレルの放射性ヨウ素131を検出したと発表している。

 《福島第一、地下水も放射能汚染 限界値の1万倍のヨウ素》asahi.com/2011年4月1日1時36分)

 地下水の排水設備とは、記事によると、建物が地下水の浮力で動かないようにポンプで地下水をくみ上げて側溝に排水する仕組みの設備だという。

 当然、地下水が放射能に汚染されている危険性を疑わなければならない。

 東電「タービン建屋などの高濃度の汚染水がしみ出したのではなく、放射能を含むちりが雨水でしみこんだと考えられる」――

 要するに建屋からの汚染水の漏出を否定している。この否定は地下水の放射能汚染の否定へとつながっていく。当然、メルトダウンした核燃料を冷却するための循環冷却水が放射能に汚染されて、それが地下に漏れ、放射能に汚染された地下水(=汚染水)となっている可能性の立場を取らず、「放射能を含むむちりが雨水でしみこんだ」地下水(=汚染水)の可能性を取っているために、そのような可能性からの危機管理対応となる。いわば、前者の可能性に手を回さない対策となる。

 問題はメルトダウンした核燃料を冷却する循環冷却水が放射能に汚染されて地下に漏れ、地下水と混じって汚染水と化す場合の経路である。

 東電が2011年5月25日に1号機と2号機の格納容器に直径7センチから直径10センチの穴が開いている可能性を解析していながら、「あくまで解析で出た結果で、実際にこうした大きさの穴が開いているかどうかは分からない」としていた判断に対して政府が2011年6月8日国際原子力機関(IAEA)に提出した報告書では、破損した1~3号機の原子炉圧力容器の底部から溶融した核燃料が漏れ出し、格納容器内に堆積している可能性を指摘している。

 汚染した冷却水が地下水と混入して汚染水化している場合の考えられる経路の一つは、東電が2011年3月31日に1号機の建屋近くにある地下水の排水設備の水から原発敷地境界の法定限界値の約1万倍の濃度にあたる1立方センチ当たり430ベクレルの放射性ヨウ素131を検出した事実と併せてメルトスルーした核燃料が格納容器底部を貫通、格納容器底部を覆って保護している厚さ最大で2.6メートル、最小1.02メートルのコンクリートとコンクリートを下部で支える鋼鉄板は共に高熱には弱い性質があり、溶融か亀裂か、何らかの破損個所を生じさせて、核燃料を冷却する循環冷却水が地下に漏れて、地下水と混入する経路である。

 勿論、現在のところ、汚染水の地下水との混入がコンクリートと鋼鉄板からの経路を取っているのかどうかは不明である。だが、危機管理上、どのような経路であっても、汚染水が地下水に混入しているケースを想定しなければならなかったはずだ。

 政府が国際原子力機関(IAEA)に報告書を提出した2011年6月8日から18日経過の2011年10月26日東電発表の、大畠民主党幹事長が謝罪で触れている、「海側遮水壁の工事着手および陸側遮水壁の検討結果について」を見ると、汚染水の地下水への混入自体を想定していない。

 当然、経路は考慮の範囲外に置いている。

 〈海洋汚染の拡大防止については、第一義的には建屋内滞留水を地下水へ流出させないことが重要であり、遮水壁は万が一このような事態が生じた場合においても、汚染地下水の海洋への流出を防止するための対策と位置付けることが適当です。このため、建屋内滞留水の流出リスクを増大させるような対策は回避すべきであると考えております。〉――

 〈第一義的には建屋内滞留水を地下水へ流出させないことが重要であり〉と、その時点では地下水への流出の事態はないとしている。

 この東電発表の10日前の6月16日、小出裕章京大原子炉実験所助教授があさひテレビの番組で冷却水の地下水への混入の危険性を訴えている。

 《風知草:株価より汚染防止だ=山田孝男》毎日jp/2011年6月20日)

 山田孝男とは毎日新聞社の編集者らしい。

 小出助教授「東京電力の発表を見る限り、福島原発の原子炉は、ドロドロに溶けた核燃料が、圧力鍋のような容器の底を破ってコンクリートの土台にめり込み、地下へ沈みつつある。一刻も早く周辺の土中深く壁をめぐらせて地下ダムを築き、放射性物質に汚染された地下水の海洋流出を食い止めねばならない」――

 ここで言っている地下ダムとは、〈ところが、さらに取材すると、東電の反対で計画が宙に浮いている実態がわかった。原発担当の馬淵澄夫首相補佐官は小出助教と同じ危機感を抱き、地下ダム建設の発表を求めたが、東電が抵抗している。

 理由は資金だ。ダム建設に1000億円かかる。国が支払う保証はない。公表して東電の債務増と受け取られれば株価がまた下がり、株主総会を乗り切れぬというのである。〉と解説し、さらに、〈筆者の手もとに、東電が政府に示した記者発表の対処方針と応答要領の写しがある。6月13日付で表題は「『地下バウンダリ』プレスについて」。バウンダリ(boundary)は境界壁、つまり地下ダムだ。プレスは記者発表をさしている。〉と書いているから、陸側遮水壁のことを指すはずだ。

 要するに小出助教授は汚染水の地下への漏出による地下水との混入の経路として、原子炉の格納容器の底部を保護しているコンクリートから地下への経路の危険性を懸念していた。

 だが、東電はこの時点に於いても、どのような経路であったとしても、汚染冷却水の地下への流出と地下水への混入の危険性に対する危機感を持っていなかった。地下水から放射性物質が検出されても、放射能を含むちりが雨水でしみこんだ程度のことだとしていた。

 東電は2011年11月30日になって、メルトダウンした核燃料が鋼鉄の原子炉の底を突き破って相当量が格納容器に落下、容器の底のコンクリートを溶かして最大で65センチの浸食が推定されるとする解析結果を公表している。

 但し、コンクリートと鋼鉄板からの汚染水の流出が確認されたわけではない。

 そして2012年となり、2012年6月20日、東電は《福島原子力事故調査報告書》を公表している。 

 〈タービン建屋には、3月11日に発生した大津波による海水が流入していたものの、その溜まり水は低線量であった。3月24日に確認された高線量の水は、原子炉冷却のために注水していた水が原子炉から格納容器へ漏えいし、更に、原子炉建屋を経由して隣接するタービン建屋地下階に流出したものであり、その過程において高濃度の汚染水(Cs-137で2.3×106Bq/cm3)になったものと推定された。1,2号機についてもタービン建屋に滞留している水の放射能濃度を測定した結果、3号機と同様に高濃度の汚染水であることが判明した。

    ・・・・・・

 地下水を経由した海洋汚染の防止対策

 現時点では、建屋内の滞留水の水位は地下水の水位と同程度であり、地中へ大量に流出することはないと考えられるが、今後、滞留水が地中へ漏出し、海洋汚染を拡大させる可能性は否定できない。このため、1~4号機の既設護岸の前面に、原子炉建屋周りの難透水層の透水係数と同程度となる10-6cm/secの遮水性を有する鋼管矢板による遮水壁(海側)を設置するとともに、遮水壁(海側)と既設護岸との間に地下水ドレンを設置し、地下水が海洋に漏れ出さないように管理する計画である。遮水壁(海側)の延長は約800m、鋼管矢板の長さは22~24mで、下部の難透水層まで根入れする計画である。(H23/10/28から開始し、工期は約2年の予定である)〉――

 冷却水が原子炉、さらに原子炉圧力容器から漏れて、タービン建屋地下階への流出を認めているものの、「現時点では、建屋内の滞留水の水位は地下水の水位と同程度であり、地中へ大量に流出することはないと考えられるが」と、汚染した冷却水のタービン建屋地下階を経た地中への大量流出を否定しているが、その理由として「建屋内の滞留水の水位」と「地下水の水位と同程度」としていること自体が、建屋と地下水がある地下とがつながっていることを認めていることになる。

 いわば決して地下へと漏れてもいない、地下水と混入してもいないとは否定出来ないことになる。

 当然、地下水の流入とその圧力を抑制するための陸側の遮水壁の設置工事を同時に進める計画を立てなければならなかった。だが、債務問題を恐れて、危機感もなく先送りした。

 債務問題への危機感の方が強かったということである。あるいは債務問題への危機感を優先させた。

 2013年4月、地下の貯水槽から高濃度の放射性物質を含む汚染水の水漏れが見つかった。

 東電は2013年4月6日、〈漏れた量の推定を約120トン、漏れた放射能は約7100億ベクレルと発表。事故前の年間排出上限の約3倍の量。2011年12月に政府が事故収束宣言して以来最大という。遮水シートの継ぎ目部分などから現在も地中に漏れ続けているとみられ、地下水と混じり合っている可能性もある。 〉(asahi.com

 尾野昌之東電原子力・立地本部・本部長代理「海への流出は今のところない」(同asahi.com

 建屋から海水取水口や排出口を経て、直接港湾内への流出はなくても、マスコミが可能性を指摘している地下水との混入が事実と仮定した場合、建屋周辺以外の場所からの海への流出の可能性は否定できないはずだが、一切ないとう趣旨の発言となっている。

 これも危機感のなさの一つの例となる。

 2013年5月になって、混入の事実を裏付けることになる。

 2号機の海側にある放射能濃度観測用の井戸の地下水から高い濃度の放射性物質が検出された。いわば地下水自体の放射能汚染が判明した。

 但し東電は東電専用港湾内の海水の放射性物質の濃度が上昇したにも関わらず、汚染水の港湾内への流出を認めなかった。

 2013年、7月22日になって、放射能濃度観測用の井戸の地下水が海の潮位と連動して上下していることが判明、東京電力は汚染水の港湾内への流出が続いていたことを初めて認めた。

 経路として当然考えられる場所は高濃度の放射性物質を含む汚染水の水漏れが見つかった地下の貯水槽であろう。

 勿論、未だ確かめようがなく、それゆえに経路ではないと完全には証明しきれない格納容器底部を保護しているコンクリートと鋼鉄板の何らかの破損個所を通した汚染水の地下への経路を取った地下水との混入の可能性を否定することはできない。

 要は疑うことである。疑うことが危機意識を強めて、危機意識に応じた危機管理で対応することになる。

 このことは台風26号襲来時の伊豆大島の大島町にも言えるはずである。

 だが、東電は終始強い危機意識で対応することはなかった。東電の危機意識のなさが民主党政権の危機意識のなさに伝染し、汚染水対策を東電任せにした安倍内閣の危機意識のなさに伝染した。

 右翼の軍国主義者安倍晋三がアルゼンチン・ブエノスアイレスで開催のIIOC総会で日本時間2013年9月7日夜のオリンピック東京招致最終プレゼンテーションで「フクシマの汚染水は完全にコントロールされている」と、実際の状況とは異なることを言ってしまったものだから、帰国してから、「東電任せにせずに、国が前面に出て」と約束、危機意識がなかったことを露呈することになった。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

右翼の軍国主義者安倍晋三が言う「汚染水完全ブロック」は海水が主役であって、東電ではない

2013-10-24 10:22:54 | Weblog

  

 今臨時国会で野党は待ち構えていたように東電の汚染水が果たしてコントロールされているのかされていないのか、右翼の軍国主義者安倍晋三に対する追及を開始した。

 追及に至る経緯はご存知だと思うが、改めて振り返ってみる。

 2020年夏季オリンピック開催都市決定が行われたアルゼンチン・ブエノスアイレスで開催IIOC総会で右翼の軍国主義者安倍晋三が行った日本時間2013年9月7日夜のオリンピック東京招致最終プレゼンテーションで福島原発の汚染水について次のように発言した。

 安倍晋三「フクシマについて、お案じの向きには私から保証をいたします。状況は、統御されています。東京には、如何なる悪影響にしろ、これまで及ぼしたことはなく、今後とも、及ぼすことはありません」(NHK NEWS WEB)――

 英語での演説で、「状況は、統御されています」は「the situation is under control」と発言、他の記事の多くは、「状況はコントロールされている」と訳している。

 プレゼンテーション後に於ける質疑。

 安倍晋三「汚染水による影響は、福島第一原発の港湾内の0.3平方キロメールの範囲内で完全にブロックされている。福島の近海で行っているモニタリングの数値は最大でもWHO=世界保健機関の飲料水の水質ガイドラインの500分の1だ。また、わが国の食品や水の安全基準は世界で最も厳しいが、被ばく量は日本のどの地域でもその100分の1だ。健康問題については今までも現在も将来も全く問題ない」」(NHK NEWS WEB)――

 ところが、周知の事実となっているが、9月13日の民主党会合で山下和彦東電フェローが「今の状態はコントロールできているとは思わない」と発言。

 原発事故当事者の発言だから、当然、安倍発言は問題となる。

 但し民主党会合があった9月13日の夕方になって早くも東電は山下和彦東電フェロー発言を撤回、「首相と同じ認識」と釈明した。

 要するに汚染水の影響は福島第1原発の港湾内0.3平方キロメールの範囲内で完全にブロックされているとする安倍認識と同じ立場だとした。

 野党としたら、東電の言い直しを認めることはできない。政府の協力を得なければならない立場上、安倍発言に遠慮したと解釈したはずだ。

 そのような解釈にとどまらず、10月16日衆院本会議各党代表質問に対する右翼の軍国主義者安倍晋三答弁が野党追及の炎をなおのこと掻き立てたはずだ。

 安倍晋三「貯水タンクからの汚染水漏えいなど個々の事象は発生しているが、放射性物質の影響は港湾内の0・3平方キロメートルにブロックされている。このため全体として状況はコントロールされていると考えている」(TOKYO Web)――

 「完全にブロックされている」から、「全体として状況はコントロールされている」に微妙に修正した。

 「全体として」という意味は、部分的にはコントロールされていないケースがある、あるいは箇所があるという意味で、最初の発言の否定となる。

 ところが、10月22日午後の衆議院予算委員会で笠井亮共産党議員に、「完全にブロックされている」から「全体として状況はコントロールされている」に発言が変わったことを問われた。

 安倍晋三「基本的に同じだ。汚染水の影響はブロックされている。健康への被害という意味でも完全にブロックされている。この考え方は変わっていない。

 モニタリングの結果は基準値をはるかに下回る数値しか出ておらず、汚染水の影響は完全にブロックされている」(ロイター)――

 この発言で気をつけなければならないことは、「汚染水の影響は完全にブロックされている」と言っているブロックの主役は東電ということになる。

 いわば東電が港湾内の汚染水をコントロールしていて、外洋への影響を遮断しているということになる。

 その根拠は東電が福島第1原発1~6号機取水口付近に設置した、海中にカーテンを降ろす形式で放射能の流出を遮断する目的のシルトフェンスに置いている。

 東電も、「港湾内(シルトフェンス外側)・港湾境界付近における海水の放射性物質濃度はほぼ検出限界値未満」との見解を取っている。

 菅官房長官の9月10日の記者会見。

 菅官房長官「水は当然行き来している。シルトフェンス内でも週1回検査し、(放射性物質は)基準値を大幅に下回っている。だから、(右翼の軍国主義者安倍晋三は)完全にブロックという表現を使った」(時事ドットコム)――

 要するに海水はシルトフェンスの内と外を行き来しているが、東電がシルトフェンスによって放射性物質の東電専用港湾内への流出をブロックしているという趣旨となる。

 当然、専用港湾外の外洋への放射性物資の流出にしても、東電がゼロにしているということになる。

 水は行き来しているが、水に混じった放射性物質の行き来はないというのは矛盾そのものだが、シルトフェンス外の海水の放射能を測定しても、基準値以下であることを根拠にして、ブロックしているとしなければ、矛盾は解くことができない。

 但し希釈されるという問題が浮上する。

 原子炉を冷却するために循環させている冷却水がメルトダウンした核燃料に触れて汚染水と化し、地下に漏れて地下水と混じり、その放射能濃度を計測するために井戸を掘って、井戸に溜まった地下水が放射能に汚染されていた場合、汚染されたその地下水を一時的に貯めておく貯留タンクの量よりも東電専用港湾内の海水量は遥かに大量である。

 当然、貯留タンク内の放射能濃度よりも湾内・湾外の放射能度は格段に低くなる。

 大量の海水に希釈されて、測定しても基準値以下となっていたということなら、東電が専用港湾内及び専用港湾外=外洋の放射性物資をブロックしているのではなく、海水自体がブロックしていることになる。

 先ず海水がシルトフェンスの内側と外側の行き来に応じて放射能物質も行き来していることを伝えている記事を見てみる。

 《セシウム濃度13倍に上昇=港湾内、土壌固め影響か-福島第1》時事ドットコム/2013/10/10-02:09)

 東電の10月未明の発表。

 2号機取水口前の港湾内の水の移動を抑制する水中カーテン「シルトフェンス」の内側から採取した海水から、最大で1リットル当たり1200ベクレルの放射性セシウムを検出。

 記事解説。〈2号機取水口近くの護岸では、汚染された地下水が海に流出するのを防ぐため、薬剤で土壌を固める工事が行われている。東電は「薬剤を注入する際の圧力で、汚染された土の一部が港湾内に出たため」とみている。〉――

 と言うことは、壁(=護岸)の内側の土には相当な量の放射性物質が浸透していることになる。

 但し、同じく工事が原因したのだろう、〈シルトフェンス外側でも、セシウムが1リットル当たり227ベクレルと前日採取分(同106ベクレル)の2倍に上昇した。〉と伝えていて、海水の行き来=放射能物質の行き来を伝えている。

 このセシウム1リットル当たり227ベクレルは海水の動きによって拡散され、希釈されて1リットル当たりの測定値を下げていき、更に外洋に出て、測定不可能の値となっていくはずである。

 だが、拡散され、希釈された状態で、いわば自然な状態では存在しない形で放射性物質は存在することになる。

 このことを茂木経産相が国会答弁で認めている。先に触れた、右翼の軍国主義者安倍晋三が笠井亮共産党議員の質問に答えて「汚染水の影響はブロックされている」と答弁した10月22日午後の衆議院予算委員会の午前である。

 《汚染水は湾外の水にも混入、重要なのは基準値以下であること=経産相》ロイター/2013年 10月 22日 12:44)

 茂木経産相「汚染水については、0.3平方キロメートルの湾内と湾外で水自体は入れ替わって混ざっている。そして希釈される。重要なのは、それが様々な悪影響を与えるかどうか、基準値以下かどうかだ。

 外洋の検査では、放射性物質は基準値を大きく下回っている、あるいは、測定ができない」――

 要するに外洋の大量の海水が混入した放射性物質を希釈して、「基準値を大きく下回っている、あるいは、測定ができない」濃度にしていると言っている。希釈されて、「様々な悪影響を与え」ない濃度になってさえいればいいのだと。

 と言うことは、右翼の軍国主義者安倍晋三が言っているようにブロックの主役は東電ではないことになる。あくまでも大量の海水がブロックの役ということになる。

 いわば自然界頼みの「under control」ということである。

 では、あくまでも推定だが、東電専用港湾内と外洋にどのくらいの放射性物質が流出しているのだろうか。二つの記事から見てきる。最初は東電専用港湾内。

 《原発汚染水 専用港に流出し続けていた可能性》NHK NEWS WEB/2013年3月15日 4時15分)

 東京海洋大学研究グループが、〈福島第一原発の専用港で海水に含まれるセシウム137の濃度が去年春以降、高いところで、国の基準を上回る1リットル当たり100ベクレル前後から殆ど下がらなくなっていることから、原因の究明に役立てるため独自に試算〉したもの。

 結論1 専用港の海水は、海流や潮の満ち干で1日に44%が入れ替わると推定され、セシウム137が公表されている濃度になるには1日当たり80億から930億ベクレルが流れ込んでいる計算になる。

 結論2 その結果、汚染水の流出が止まったとされる一昨年6月以降の1年間では、事故前の保安規定で定められた排出限度の73倍に当たる16兆1000億ベクレルが専用港に流れ出た可能性がある。

 1日の間に港湾内の海水の44%が外洋の海水と入れ替わるということは、港湾内の海水で希釈された放射性物質は1日に港湾内の海水44%分の外洋の海水流入によってなお希釈され、また潮の満ち引きによって外洋に流出していって、なお希釈されていくということになる。

 では、専用港に流れ出た可能性がある排出限度の73倍に当たる16兆1000億ベクレルという濃度の危険性はどうなのだろうか。

 専門家「1年間に排出限度の73倍に当たる放射性セシウムが流出したとしても、外洋の生物にはほとんど影響はないが、港の中に生息する魚介類が体内に取り込む恐れがある」(下線部分は解説文を会話体に直す。)

 要するに外洋の方が海水量が遥かに大量だから、希釈度も高く、放射性物質が「外洋の生物にはほとんど影響はない」が、港湾内では海水量の違いから外洋と比べて希釈度が低くなるから、魚介類への悪影響の恐れがあるということであろう。

 いわば海水の量が握っている危険性ということになる。

 神田穣太東京海洋大教授「海水の測定データから、原発の敷地内の土が雨で流れ込んだ影響とは考えにくく、地下水や壊れた配管などを通じて汚染水が漏れ出している可能性がある。詳細な調査を実施し、原因を特定すべきだ」――

 東電は前者の影響を主張している。

 東京電力「様々な調査の結果から、発電所の敷地から放射性物質が海に流出しているとは考えていない。ただ、専用港の海水で放射性セシウムの濃度が下がらない原因は分かっていないので調査を続けたい」――

 東電は最初は常に否定の立場を取る。冷却水の建屋地下への流れと地下水との混入を否定し、汚染水の発生原因は雨によって流された土やちりに含まれている放射能だとしていた。

 2011年3月31日。

 東電「タービン建屋などの高濃度の汚染水がしみ出したのではなく、放射能を含むちりが雨水でしみこんだと考えられる」(asahi.com

 次に外洋への放射性物質の流出。《外洋に1日600億ベクレル放出 福島第1原発放水口から》(中国新聞/'13/9/19)

 青山道夫気象庁気象研究所主任研究官の9月18日の国際原子力機関(IAEA)科学フォーラムでの報告。

 原発北側の放水口から放射性物質のセシウム137(半減期約30年)とストロンチウム90が(半減期約29年)合わせて1日計約600億ベクレルが原子炉建屋地下からいったん港湾内に染み出た後、炉心溶融を免れた5、6号機の取水口から取り込まれ、北側放水口から外洋(原発港湾外)に放出されている。

 記事解説。〈青山氏らの海洋モニタリング調査では、第1原発の放水口から出るセシウム137は、事故後の2011年3月26日~11年4月7日は1日当たり約100兆ベクレルだった。その後、徐々に低下し、12年初めごろから現在まで約300億ベクレルで推移。ストロンチウム90も現在、300億ベクレル出ているとしている。

 1~3号機の溶融燃料の冷却に使って汚染された水はセシウムを除去して循環させ、再び冷却に使われるため、濃度が徐々に下がるはずだが、海に出ている汚染水の濃度は下げ止まっている。青山氏は冷却水が汚染されるだけではなく、原子炉建屋地下にたまる水と溶融燃料が直接、触れている可能性があるとみている。〉――

 東電「法定基準以下の濃度と確認して放水しており問題ない」

 青山主任研究官放水口付近のセシウム137などの濃度は1リットル当たり1ベクレルで法定基準以下だが、この水の中に魚が生息すると放射性物質が濃縮され、日本の規制値を超える。

 沖合では薄められ、漁業に影響しない」(下線部分は解説文を会話体に直す。)

 上記記事の専門家の見立てと同じで、放射性物質の海洋へのブロックは海水が主役であって、東電ではないという意味となる。単に希釈さているに過ぎないと。希釈されて、茂木経産相が言っているように「放射性物質は基準値を大きく下回っている、あるいは、測定ができない」状態になっている。 

 東電が言うように法定基準以下の濃度での放水のみであったなら、港湾内で放射性物質が、それが基準値以下であったとしても、測定されることはない。だが、測定されている。

 右翼の軍国主義者安倍晋三の放射性汚染物質の海洋への影響のブロックの主役を東電に置いている、「汚染水の影響は完全にブロックされている」とする発言は全く妥当性を欠き、見当違いの発言となる。大量の海水によって助けられているに過ぎない。

 当然のことだが、一見「汚染水による影響は、福島第一原発の港湾内の0.3平方キロメールの範囲内で完全にブロックされている」ように見えたとしても、実際は港湾内に於いても港湾外の外洋に於いても、東電のコントロール下には決してないことを意味する。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

気象庁の土砂災害警戒情報をオオカミ少年としていた大島町が最後に食らったツケ

2013-10-23 08:12:31 | 政治

 
 
 台風26号に伴う土石流で10月23日未明時点で死者29人、行方不明18人の被害を出した東京都大島町(伊豆大島)が、気象庁と都が「土砂災害警戒情報」の運用を始めた2008年から今年4月までの計7回、同情報を出していたにも関わらず、町が避難勧告の対応を取ったことが一度もなかったと次の記事が伝えている。

 《大島町:土砂災害情報あったのに 避難勧告一度も出さず》毎日jp/2013年10月22日 02時38分)

 土砂災害警戒情報は東京都には08年2月に導入。大島町対象の警戒情報は今回の土石流発生前の3回を除けば08年6月~13年4月までに計7回発令。 

 記事解説。〈気象庁が「土石流が起こりやすく多くの災害が発生するレベル」と定める1時間降水量50ミリに迫る雨量を観測していたケースもあり、台風など大雨に対する警戒の認識が以前から脆弱(ぜいじゃく)だった実態が浮かんだ。〉――

 記事は、〈気象庁の記録では、警戒情報を出した後に、土砂災害につながる激しい雨が降るケースが多〉いと書いているが、「土砂災害警戒情報」を出すについては前以て雨量を予測するからだろう。

 土砂災害が予測される激しい大雨が降り出してから「土砂災害警戒情報」を出したのでは意味はない。

 大島町に発令された「土砂災害警戒情報」発令から大雨が降るまでの時間と観測降水量。

 2008年9月20日――発表約2時間後・1時間降水量47ミリ
 2009年8月11日――発表約1時間後・1時間降水量48.5ミリ

 東日本大震災の際は地震発生から津波到達まで最短で30分、岩手県大船渡市で約30分後に3・2メートル以上の津波が襲ったということだから、大地震が発生したなら、揺れが収まってから30分以内を目安に高台等に避難できるように心掛けることを慣習化しなければならないように、大島町の場合、過去の例で最短で発表約1時間後ということなら、それが4時間後、5時間後となるケースがあったとしても、「土砂災害警戒情報」が発令されたなら、自治体自身は例え土砂災害が発生しなくても、最低限直ちに避難勧告を発令して、住民に警戒を呼びかけると同時に、当初は最短の発表約1時間後を目安に、1時間が経過したなら、順次時間を伸ばして大雨が去るまで、あるいは山からの絞り水が土砂崩れに影響する可能性も考慮するなら、雨脚が弱まった以降もハイレベルの警戒を心掛けることを慣習化 なければならないことになる。

 だが、大島町は2008年から今年4月までの計7回の「土砂災害警戒情報」の発令に対して避難勧告等の対応を一度も取らなかった。但し土砂災害も一度も発生しなかった。

 東京都建設局大島町に警戒情報が出された過去7回で土砂災害が発生した記録は残っていない」(下線部分解説文を会話体に直す。)

 町幹部(警戒情報を重視していなかった事実を認めた上で)「島の土壌は水はけが良く、これまでの大雨でも被害は下水溝が詰まって土のうを積んだ程度。土砂災害が発生するとは予測していなかった」――

 だが、10月16日に台風26号が襲った今回は最初の「土砂災害警戒情報」(10月15日午後6時05分)発令から約6時間後の2回目の「土砂災害警戒情報」(10月16日午前0時10分)発表時には1時間降水量が52ミリとなった。

 3回目の「土砂災害警戒情報」(10月16日午前2時35分)発表時には、「雨による大規模災害発生の恐れが強く、厳重な警戒が必要」とされる1時間降水量80ミリを超える92ミリ。

 その14分後の10月16日午前2時49分、元町地区の住民から「家の中に泥が流れ込んできた」と署に通報があったと「MSN産経」が伝えているが、それが最初の土石流だとしたなら、1回目の「土砂災害警戒情報」から8時間44分後の遅い土石流の発生ということになるが、1時間降水量92ミリの大雨が降り続いていた以上、最大限の警戒は続けなければならなかった。

 だが、気象庁が10月14日夕方には、「台風26号は強い勢力のまま、水曜日の日中に東海から関東に最接近」と警告予報し、10月15日5時12分には、大型で強い台風第26号が10月16日には東日本太平洋側にかなり接近する恐れがあり、15日から16日にかけて西日本から北日本では広い範囲で暴風や高波、大雨に対する厳重な警戒が必要であることを呼びかけ、伊豆諸島に於ける10月16日にかけて予想される最大風速(最大瞬間風速)を35メートル(50メートル)、10月16日6時までの24時間に予想される降水量を300ミリと予報していたにも関わらず、「土砂災害警戒情報」発令のケースも想定せず、刻々の情勢・情報の変化を追うこともせず、大島町長は10月15日朝、出張に発ち、町の幹部や防災担当者は10月15日午後6時半頃までに帰宅、町役場はカラッポとなって、10月16日午前0時頃に出勤して来た総務課長が東京都が送信した「土砂災害警戒情報」のファクスに気づきながら、夜間だったという理由で避難勧告や避難指示を出す対応を取らなかった。

 避難勧告や避難指示を出さなければならない場合は夜間であろうと何であろうと時間を選ばないはずだから、夜間だったという理由は後付けの自己正当化に過ぎず、上記記事を読むと、実際は大島町が過去7回の「土砂災害警戒情報」の発令に対して避難勧告を一度も出したことがないことと同様の今回の対応であることから判断すると、過去いずれの「土砂災害警戒情報」発令の場合も土石流が発生せず、避難勧告を出さずに済んだことを教訓としてしまって無対応を慣習化することになり、今回の無対応を当たり前としたということではないだろうか。

 結果として、大島町は知らず知らずのうちに「土砂災害警戒情報」をオオカミ少年としていた。何ら危機感のない形式的な報告程度と見做していた。

 だから、台風接近下、刻々の情勢・情報の変化を追うこともせずに全員が町役場から帰宅することができ、東京都からの「土砂災害警戒情報」発令を知らせるファクスに気づいても、夜間であろうとなかろうと関係なしに放置することができた。

 「土砂災害警戒情報」を何ら危機感を感じないオオカミ少年としていたことの結果が、少年一人が狼に食べられてしまう被害で終わらずに10月23日未明時点で死者29人、行方不明18人の被害を出すことになった。

 最後に喰らうこととなったそのツケは取り返しがつかないゆえに大きい。

 大島町は台風被害の事後処理が終わらない内に気象庁の予報で台風27号のコースの予報円内に置かれることとなり、その備えとして避難所での生活が難しい高齢者や障害者の島外への一時的避難を考慮し、打診に入った。

 10月21日の発言。

 大島町長「町民の命を守る使命を最大限に果たしたい。町内での避難所の確保に万全を期すとともに、自力での避難が難しい人については、安全確認が取れるまで島の外に避難してもらうことを考えている」(NHK NEWS WEB)――

 「町民の命を守る使命を最大限に果たしたい」は台風26号の襲来前に言わなければならないことで、死者29人、行方不明18人の惨状を前にして聞くと、その言葉は虚しく響く。

 すべての事態処理後、「土砂災害警戒情報」をオオカミ少年としていたことの責任を取らなければならないだろう。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

A級戦犯と重なる戦前の日本指導部は無能集団、無能と無能が響き合う今日の国家指導部の靖国参拝

2013-10-22 11:20:04 | 政治


 
 この記事では、「Wikipedia」が取り上げている情報や『文藝春秋』2007年4月特別号の『小倉庫次侍従日記・昭和天皇戦時下の肉声』に記してある情報、あるいは2012年8月15日NHK総合テレビNHKスペシャル「終戦 なぜもっと早く決められなかったのか」で放送された情報等、既に広く知られている情報を、以前ブログに利用した趣旨と違って、戦前の日本指導部が如何に無能集団であったかを証明する趣旨で再度利用することになることを前以てお断りしておく。

 中国も韓国も閣僚やその他の国会議員の靖国参拝をA級戦犯が合祀されていることを主たる理由として批判している。対して右翼の軍国主義者安倍晋三に任命された菅官房長官の立場は、右翼の軍国主義者安倍晋三のお友達なのだから、当然のことだが、A級戦犯合祀容認の立場を取っている。

 《A級戦犯も慰霊対象=菅官房長官》時事ドットコム/2013/10/18-20:23)

 10月18日の記者会見。 

 菅官房長官「国のために戦って貴い命を犠牲にされた方に尊崇の念を表明するのは当然のことだ。

 (A級戦犯合祀に関して)亡くなった方というのは皆、一緒にとらえるのが日本の歴史ではないか」――

 要するに生きて国家の運営に携わっていた責任の質は一切問題とせず、死ねばその責任の質は消え去り、国家指導者も一般戦死兵士もそれぞれの責任を問題としない同等の存在となるということを宣言している。

 死後はそのような扱いでいいのかもしれない。死後のことを問題にしているのではない。生きて国家の運営に携わっていた責任の質を問題にしているのであり、歴史を記すためにも問題としなければならないはずだ。

 問題としないから、日本は、あるいは日本人は戦争を総括することができない。戦前の日本はどこが間違っていたのかの歴史的検証を回避することになる。

 国家の指導部に所属した人間の生きて国家の運営に携わっていた責任の質を問わないということは、同時に歴史の否定となるはずである。少なくとも歴史の曖昧化の意志を窺うことができる。

 「亡くなった方というのは皆」、如何に無能な人間たちであり、無能な人間たちによって戦前の日本の国家指導部が成り立っていたのかということと、国家指導部に属した人間を一般戦死兵士と「一緒にとらえ」て、死後の世界の問題とのみ把えて矮小化することも、歴史の事実を抹消することも決してできないことを証明したいと思う。

 先ず、日本の対米英開戦時の内閣総理大臣である東条英機。東京裁判でA級戦犯(平和に対する罪)に問われて死刑宣告を受け、処刑され、1978年(昭和53年)10月17日、「昭和殉難者」(昭和の時代の国家の犠牲者)として靖国神社に合祀された。

 国家の犠牲者と把えるのではなく、国家を犠牲にしたと把えるべきだろう。

 「Wikipedia―東条英機」から。

 1940年(昭和15年)7月22日から第2次近衛内閣、第3次近衛内閣の陸軍大臣を務める。
 1941年(昭和16年)10月14日の閣議。

 近衛首相(日米衝突の回避を願って)「日米問題は難しいが、(中国に於ける)駐兵問題に色つやをつければ、(和平の)成立の見込みがあると思う」

 東条英機陸軍大臣「撤兵問題は心臓だ。撤兵を何と考えるか。譲歩に譲歩、譲歩を加えその上この基本をなす心臓まで譲る必要がありますか。これまで譲り、それが外交か、降伏です」

 形は天皇統治下の内閣制であっても、軍部が実権を握っていた。「軍部大臣現役武官制」によって陸軍大臣・海軍大臣共に補任資格を現役大将・現役中将と規定され、シビリアンコントロールの思想は未だ存在していなかった。首相主導の政策に不満があった場合、陸軍大臣か海軍大臣のいずれかが辞任して後任を送らなければ、内閣は機能停止し、総辞職せざるを得なくなって、結果として政治をコントロールできる。

 近衛文麿は東条の反対によって、逆に辞表を提出。

 近衛文麿辞表「東條大将が対米開戦の時期が来たと判断しており、その翻意を促すために四度に渡り懇談したが、遂に説得出来ず輔弼(ほひつ・天皇を補助すること)の重責を全う出来ない」

 「Wikipedia」――〈近衛の後任首相については、対米協調派であり皇族軍人である東久邇宮稔彦を推す声が強かった。皇族の東久邇宮であれば和平派・開戦派両方をまとめながら対米交渉を再び軌道に乗せうるし、また陸軍出身であるため強硬派の陸軍幹部の受けもよいということで、近衛や重臣達だけでなく東條も賛成の意向であった。

 ところが木戸幸一内大臣は、独断で東條を後継首班に推挙し、天皇の承認を取り付けてしまう。この木戸の行動については今日なお様々な解釈があるが、対米開戦の最強硬派であった陸軍を抑えるのは東條しかなく、また東條は天皇の意向を絶対視する人物であったので、昭和天皇の意を汲んで戦争回避にもっとも有効な首班だというふうに木戸が逆転的発想をしたととらえられることが多い。天皇は木戸の東條推挙の上奏に対し、「虎穴にいらずんば虎児を得ず、だね」と答えたという。この首班指名には、他ならぬ東條本人が一番驚いたといわれている。〉――

 木戸幸一内大臣「あの期に陸軍を押えられるとすれば、東條しかいない。(東久邇宮以外に)宇垣一成の声もあったが、宇垣は私欲が多いうえ陸軍をまとめることなどできない。なにしろ現役でもない。東條は、お上への忠節ではいかなる軍人よりも抜きん出ているし、聖意を実行する逸材であることにかわりはなかった。・・・優諚(ゆうじょう・天子の有り難い言葉)を実行する内閣であらねばならなかった」

 東条英機は天皇の意向を受けて、対米戦争回避=対米和平交渉に努める。外相に対米協調派の東郷茂徳を据えたのも、その現れだとしている。

 日本側の和平案に対してアメリカは1941年11月26日提示のハル・ノートを以って返答とした。

 中国本土からの即時全面撤退
 重慶政府(蒋介石国民党政権)以外の政府の否認
 三国同盟の否認(『大日本史広辞典』山川出版社)

 当時南京に日本傀儡政権の汪兆銘政権が存在していた。毛沢東の中共軍は第2次国共合作によって蒋介石国民党政権に組み込まれていた。

 日本と日本軍が汪兆銘政権を使って戦う相手は重慶の蒋介石国民党政権であったから、それを唯一の政権として認めることは中国に於けるすべての権益の放棄を意味し、中国本土からの即時全面撤退と同意味を成す。全面撤退は汪兆銘政権の崩壊へと進み、蒋介石国民党政権を唯一政権とすることを結果とするだろうからである。

 東条英機はハル・ノートを最後通牒と受け止め、対米開戦へと傾いていく。

 だが、東条英機の本質は中国大陸の維持=日本化である。東条にしたら、それまでに支払った日本の甚大な犠牲から判断してもを中国を手放すことはできなかったろう。

 犠牲に見合う権益を中国大陸に確保しない限り、アメリカのどのような妥協を図る和平案も受け入れることはできなかったに違いはない。

 勝てる見込みのないことを計算できずに勝てる見込みありと計算して対米戦争に突入していったのだから、どのみち開戦を選択したはずだ。

 以下、「Wikipedia―総力戦研究所」から。

 昭和15年(1940年)9月30日付施行の勅令第648号(総力戦研究所官制)により内閣総理大臣直轄の研究所として総力戦研究所が設立された。

 国家総力戦に関する基本的な調査研究と同時に総力戦体制に向けた教育と訓練を設立目的とし、研究生は各官庁・軍・民間などから選抜された若手エリートたちとなっている。

 昭和16年(1941年)7月12日、飯村総力戦研究所長から研究生に対して日米戦争を想定した、研究生を閣僚とした演習用の青国(日本)模擬内閣実施の第1回総力戦机上演習(シミュレーション)計画が発表された。

 東条英機が1941年(昭和16年)10月18日に首相就任する3カ月前で、当時は陸軍大臣の地位にあった。

 〈模擬内閣閣僚となった研究生たちは1941年7月から8月にかけて研究所側から出される想定情況と課題に応じて軍事・外交・経済の各局面での具体的な事項(兵器増産の見通しや食糧・燃料の自給度や運送経路、同盟国との連携など)について各種データを基に分析し、日米戦争の展開を研究予測した。

 その結果は、「開戦後、緒戦の勝利は見込まれるが、その後の推移は長期戦必至であり、その負担に青国(日本)の国力は耐えられない。戦争終末期にはソ連の参戦もあり、敗北は避けられない。ゆえに戦争は不可能」という「日本必敗」の結論を導き出した。

 これは現実の日米戦争における(真珠湾攻撃と原爆投下以外の)戦局推移とほぼ合致するものであった。

 この机上演習の研究結果と講評は8月27・28日両日に首相官邸で開催された『第一回総力戦机上演習総合研究会』において当時の近衛文麿首相や東條英機陸相以下、政府・統帥部関係者の前で報告された。

 研究会の最後に東條陸相は、参列者の意見として以下のように述べたという。

 東条英機「諸君の研究の労を多とするが、これはあくまでも机上の演習でありまして、実際の戰争といふものは、君達が考へているやうな物では無いのであります。

 日露戦争で、わが大日本帝國は勝てるとは思はなかつた。然し勝つたのであります。あの当時も列強による三國干渉で、止むに止まれず帝国は立ち上がつたのでありまして、勝てる戦争だからと思つてやつたのではなかつた。

 戦といふものは、計画通りにいかない。意外裡な事が勝利に繋がつていく。したがつて、諸君の考へている事は机上の空論とまでは言はないとしても、あくまでも、その意外裡の要素といふものをば、考慮したものではないのであります。なほ、この机上演習の経緯を、諸君は軽はずみに口外してはならぬといふことであります。」〉――

 先ず第一に1904年(明治37年)2月8日から1905年( 明治38年)9月5日までの日露戦争を戦った時代と1940年代後半の時代との違いを無視している。日本でもその時代から技術の進歩を果たして、当時の日本に至っているはずだが、アメリカの技術にしても進歩を果たしていて、その両者の進歩の速度・違いを見極める合理的な目を持っていない。

 陸軍大臣でありながら、この無能は如何ともし難い。

 本来なら、「如何なる策を以ってしたなら、勝算ありや」と聞き、それもでなお総力戦研究所の模擬内閣閣僚たちが、「如何なる策を以てしても勝算なし」と答えたなら、譲歩に譲歩を重ねて対米開戦を回避すべきを、そういった選択をしなかった。

 また技術の進歩や自国資源の違いによって生じる、国民総生産は約1千億ドルと10倍以上、総合的国力は約20倍の格差があったと言われていた、総力戦研究所の研究生によって構成された模擬内閣閣僚が目を向け、現実の日米戦争に於ける(真珠湾攻撃と原爆投下以外の)戦局推移とほぼ合致していたのだから、冷静かつ合理的に計算したその日米の差に向ける目をも欠いていた。

 また、現役の軍人であり、陸軍大臣でありながら、国力や軍事力、戦術等の彼我の力の差を計算に入れた戦略(=長期的・全体的展望に立った目的行為の準備・計画・運用の方法)を武器とするのではなく、それらを無視して、最初から「意外裡」(=計算外の要素)に頼って、それを武器にして巨大国家アメリカに戦争を挑もうというのだから、精神力に傾斜した合理性の欠如を指摘されても仕方があるまい。

 だが、こういった無能な人物が大日本帝国軍隊で出世し、関東軍参謀長となって、陸軍大臣となり、ついには首相となって、日米開戦を決定した。

 大日本帝国陸軍自体が無能集団であったからこそ、無能な人物の出世を許すことになったはずだ。

 無能な人物をトップに据えるということは組織の構成員が全体的に無能だからである。全体的に有能な人物で組織が構成されていたなら、無能な人物が組織のトップに上りつめることなどあり得ない。

 無能のどんぐりの背比べで組織内で出世できるシステムになっていたからこそ、無能がトップを占めることができる。そして無能なトップに無能集団が動かされることになる。

 いわば大日本帝国軍隊という集団の無能があって、その偉大なる反映として陸軍大臣東条英機の、あるいは大日本帝国総理大臣東条英機の無能があったと言うことができる。

 太平洋戦争開戦時の陸軍参謀総長だった杉山元の無能さ加減を見てみる。

 『小倉庫次侍従日記・昭和天皇戦時下の肉声』文藝春秋/2007年4月特別号)から。

 〈日記「昭和16年9月5日(金)」

 近衛首相4・20-5・15奏上。明日の御前会議を奉請したる様なり。直に御聴許あらせられず。次で内大臣拝謁(5・20-5.27-5・30)内大臣を経、陸海両総長御召あり。首相、両総長、三者揃って拝謁上奏(6・05-6・50)。御聴許。次で6・55、内閣より書類上奏。御裁可を仰ぎたり。〉――

 これだけの記述だが、昭和史研究家・作家の半藤利一氏が解説を加えている。

 半藤一利氏解説「改めて書くも情けない事実がある。この日の天皇と陸海両総長との問答である。色々資料にある対話を、一問一答形式にしてみる」

 昭和天皇「アメリカとの戦闘になったならば、陸軍としては、どのくらいの期限で片づける確信があるのか」 
 
 杉山陸軍参謀総長「南洋方面だけで3ヵ月くらいで片づけるつもりであります」
 
 昭和天皇「杉山は支那事変勃発当時の陸相である。あの時、事変は1カ月くらいにて片づくと申したが、4ヵ年の長きにわたってもまだ片づかんではないか」

 杉山陸軍参謀総長「支那は奥地が広いものですから」

 昭和天皇「ナニ、支那の奥地が広いというなら、太平洋はもっと広いではないか。如何なる確信があって3ヵ月と申すのか」

 半藤一利氏解説「杉山総長はただ頭を垂れたままであったという」――

 以前ブログに次のように書いた。〈支那の奥地が広いことは支那に侵略して初めて知った地理的特徴ではなく、最初から把握し、その情報をも参考にして立てた支那支配の、あるいは支那植民地化の戦略であったはずである。

 それを後になってから支那の奥地の広さを知ったかのように戦争膠着化の言い訳に使う。

 1937年(昭和12年)7月7日の蘆溝橋事件に端を発した支那事変(日中戦争)は結局のところ日本が1945年8月15日のアメリカとの戦争による敗戦に伴って終結することになった。1カ月くらいで片付けるつもりであったのが、その96倍の8年間も手こずって、手こずったままの状況で日本の方が退散することとなった。

 大日本帝国軍隊が支那一つに手こずっていたにも関わらず、国力も軍事力も桁違いに大きなアメリカに「3カ月くらいで片づけるつもりで」1941年(昭和16年)12月8日、真珠湾奇襲を以って戦争を挑み、「3カ月」が3年8カ月もかかって、それも戦争に勝利したなら、「3カ月」が3年8カ月もかかろうと言い訳も立つが、日本の方が無残にも片付けられた。

 杉山陸軍参謀総長のこの有能さを以ってのことなのだろう、二人しか存在しないうちの一人として、陸軍大臣、参謀総長、教育総監(日本陸軍の教育を掌る役職)の陸軍三長官を全て経験した上で元帥という最高峰を極めたというのだから、最高峰中の最高峰だったわけで、杉山なる軍人に最高峰中の最高峰を許した最高峰以下の日本の軍人の有能さは押して知ることができることになる。〉・・・・・・

 この無能な人物の簡単な略歴を「Wikipedia」から見てみる。 

〈1937年(昭和12年)、林銑十郎内閣下の陸軍大臣に就任、続く第一次近衛内閣でも留任。盧溝橋事件では強硬論を主張し、拡大派を支持。1938年(昭和13年)辞任。軍事参議官となり、同年12月北支那方面軍司令官となり山西省攻撃を指揮。

1939年(昭和14年)、靖国神社臨時大祭委員長。1940年(昭和15年)から1944年(昭和19年)まで参謀総長に就任し、太平洋戦争開戦の立案・指導にあたる。1943年(昭和18年)元帥。

1944年(昭和19年)の東條英機首相の参謀総長兼任の際には統帥権独立を盾に抵抗するが、山田乙三教育総監を味方につけた東條とその一派(富永恭次陸軍次官など)の策略に屈して辞任し、教育総監に再任。小磯國昭内閣で陸軍大臣に再任される。1945年(昭和20年)、鈴木貫太郎内閣成立後、本土決戦に備えて設立された第1総軍司令官となったが、敗戦後の9月12日に司令部にて拳銃自決。〉

 拳銃自殺していなければ、A級戦犯に列していたはずだ。

 この無能な人物を陸軍大臣や陸軍参謀総長、教育総監等の地位に就けることとなったのは周囲の人物を見る目があったからこそであろう。尊敬の対象とする目、敬意の対象とする目が鈍(なまく)らであった。

 要するに無能と無能が響き合った成果として導き出した陸軍大臣や陸軍参謀総長、教育総監等の地位であった。

 大日本帝国陸軍だけが無能集団だったわけではあるまい。大日本帝国海軍は制海権・制空権を失いながら、当然、米軍に対して全体的な打撃を与えて形勢を決定的に逆転し得る戦術とはならない、いわば点と線をつなげていって全体的な面に影響を及ぼす戦術とはならない、物量を誇っていた米艦船一隻一隻を点とする単一的攻撃で終わる人間魚雷を考案したこと自体、そして実戦配備したこと自体が無能集団ならではの一時凌ぎとしかならなかった戦術であろう。

 最後に陸軍・海軍だけではなく、当時の政府自体も無能集団であった決定的証拠は、ソ連の戦勝国に位置すべく謀った参戦意志を見誤ったこと、最早戦争を維持する国力を失いながら、なおかつソ連の参戦を受けても、効果的な終戦の道を見い出せなかったことにある。

 広島と長崎に原爆を投下され、結局後がなくなって、降伏を受け入れざるを得なくなって受け入れた。

 かくこのような無能集団の中から指導部を形成した無能な指導者の面々が、その無能ゆえにA級戦犯(平和に対する罪)として断罪されたにも関わらず、菅官房長官は「亡くなった方というのは皆、一緒にとらえるのが日本の歴史ではないか」とその無能と無能ゆえの責任の質を無罪放免とし、A級戦犯に対する参拝を容認する。

 相互に無能ゆえの責任の質を響き合わせなければできない戦前日本国家指導部の責任の質の無罪放免であり、A級戦犯に対する参拝容認でなければならない。

コメント (5)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする