小野寺防衛相の仏揚陸艦対ロ売却中止要請と日本の対ロ追加制裁はG7内安倍晋三の存在感希薄化回復が目的か

2014-07-31 09:50:08 | Weblog



 小野寺五典防衛相が7月29日、フランスのルドリアン国防相と防衛省で会談。フランスは現在ロシアに強襲揚陸艦2隻を売却する交渉を進めている。

 《日仏防衛相会談:小野寺防衛相、揚陸艦対露売却中止求める》毎日jp/2014年07月29日 20時44分)

 小野寺防衛相「日本の安全保障の観点から強い懸念を持っている」

 記事解説によると、この発言を以って売却中止を求めたとなっている。

 ルドリアン国防相「ロシアから支払いが既にされている。武器が搭載されていない、輸送目的の船だ。

 (欧州連合(EU)の対露制裁協議で)売却が制裁の対象になれば決定に従う」――

 ハーフ米国務省副報道官も、7月22日の記者会見で、フランスが計画しているロシアへの強襲揚陸艦引き渡しは「完全に不適切だ」と批判している。

 ハーフ米国務省副報道官「我々は(揚陸艦を)引き渡すべきではないと(フランスに)言っている」(asahi.com

 揚陸艦とは、「Wikipedia」によると、〈人員や物資の輸送を目的とした艦船のうち、岸壁などの港湾設備に頼ることなく、自力で揚陸する能力をもった軍艦のこと。海岸に直接、もしくは自らに積載したヘリコプターやホバークラフト、上陸用舟艇を介して歩兵及び装甲戦闘車両などを上陸させる。物資や人員を素早く陸揚げすることから、揚陸艦の名が付いた。第二次世界大戦期に急速に発達した。〉と説明している。

 ルドリアン国防相は「武器が搭載されていない、輸送目的の船だ」と言っているが、武器搭載はロシア側が行うことで、兵士はライフル銃や機関銃、携行ロケット砲等々を装備できるだろうし、「Wikipedia」の説明のようにヘリコプターも装甲戦闘車両も装備できる。

 日本の菅官房長官も7月24日午前の記者会見で売却に警戒感を示した。

 菅官房長官「1隻は極東に配備される。わが国としては安全保障上の観点から注視している」(MSN産経)  

 ルドリアン国防相がEUの対ロ制裁協議で「売却が制裁の対象になれば決定に従う」と言っていたことに対して米、英、仏、独、伊の首脳は7月28日、ロシアに対して「新たな措置」を取る方針を確認したと、「毎日jp」記事が伝えている。ロシアの銀行の欧州連合(EU)域内での資金調達の禁止やロシアへの武器の禁輸措置を想定しているということだが、禁輸措置は過去に遡らない方針で、フランスがロシアへの売却契約を交わしているミストラル級強襲揚陸艦は対象から外れる見通しだとしている。

 日本政府はなぜ今、強襲揚陸艦の1隻が極東に配備計画だからと言って、フランスの対ロ輸出に反対の意思表示を示したのだろうか。フランスに対する輸出反対の意思表示は日本の安全保障に関係するロシアに対する警戒感の意思表示に他ならない。非常に矛盾を感じるし、不思議な気がする。

 2006年8月策定、2015年を目標年次のロシア連邦政府「クリル諸島社会経済発展計画」に基づいてロシアが国後島や択捉島を着々開発し、ロシア化を進めていることに安部政権は表立った、最低懸念の意思表示を示してこなかったし、この「クリル諸島社会経済発展計画」を2013年9月12日にさらに10年延長を決めたことに対しても、やはり表立った何らの意思表示を示さなかった。

 ロシア国防省が今年、2014年4月18日に露極東やシベリア地域を管轄する露軍東部軍管区の再軍備計画の一環として北方領土の択捉島と国後島に2016年末までに兵士用の居住施設などの軍施設を増設することを発表したと、インタファクス通信の報道を引用して「MSN産経」記事が伝えているが、安部政権がこのことに対しても直接抗議を伝えるといった表立った反対意思を示したことを伝える報道を知らない。

 同じ「MSN産経」記事が、露軍東部軍管区令官スロビキン陸軍大佐が同4月18日、サハリンとクリール諸島(北方領土と千島列島)に駐留している軍部隊に今年も新型の戦闘機や対空ミサイルなどを配備、軍装備を増強すると発表し、さらにこの3年間でサハリンとクリール諸島に戦車などを含む350の最新兵器を配備したことも明らかにしたと伝えているが、安部政権はこういった北方四島に於けるロシアの軍備増強に懸念、あるいは反対、抗議の声を上げたのだろうか。

 ところが今になってフランスが予定している強襲揚陸艦2隻のロシア売却に関して小野寺防衛相が「日本の安全保障の観点から強い懸念を持っている」と表立って売却中止を要請して、間接的にロシアに対する安全保障上の懸念を伝え、菅官房長官は「1隻は極東に配備される。わが国としては安全保障上の観点から注視している」と、同じくロシアの軍事的計画に、間接的にではなく、直接的に懸念を示している。

 ロシアのクリミアのウクライナからの分離とロシア併合、ウクライナ東部でウクライナ政府と戦闘状態にある親ロシア派武装勢力に対するロシアの武器援助や兵士支援、さらに親ロ派武装勢力のマレーシア旅客機ミサイル撃墜に対する親ロ派武装勢力の調査妨害等に対してその動きを阻止すべく科した欧米対ロ制裁は徐々に厳しい内容となって、ロシアを経済的な困窮に追い込んでいる。

 対して安部政権の対ロ制裁は欧米に大きく後れを取っている。内容は欧米の厳しさに反して手ぬるく、事勿れな対応にとどまっていた。いわば対ロ制裁に於ける安部政権のG7内に於ける存在感は極めて薄かったと見なければならない。

 7月17日のマレーシア航空旅客機ミサイルで撃墜以降、関係する欧米各国が相互に電話会談を繰返して原因究明や遺体の処理、調査団派遣等を話し合っているとき、安倍晋三は蚊帳の外に置かれた状態になっていた。欧米の首脳は誰も安倍晋三に対して電話会談を申し込まなかったし、安倍晋三も一度も誰とも電話会談をしなかった。

 差し迫った状況で欧米首脳同士の電話会談が行われている最中、安倍晋三はのんびりとゴルフを楽しんでいたくらいである。

 いわば対ロ制裁に関してばかりか、マレーシア旅客機ミサイル撃墜以降の親ロ派武装勢力に対するプーチンを介した影響力行使の実効性に電話会談を通して躍起となっていた欧米首脳たちの動向に関しても、それに加わえて貰えず、また加わろうともせず、安倍晋三の首脳としての当時の動向は極めて存在感が希薄な状態に置かれていたはずだ。

 欧米各国はプーチンがウクライナ国内の親ロ派武装勢力に対して影響力を行使しないばかりか、親ロ派へのロシアからの兵器供与続いていると看做して、追加制裁の検討に入った。

 そのような状況下で菅官房長官が7月28日午前の記者会見で日本政府として追加制裁の実施を決めた。ロシアによるクリミア併合やウクライナ東部の不安定化に直接関与していると判断される個人と団体に対して日本国内にある資産の凍結とロシアによるクリミア併合を決して承認しない立場から、クリミア産製品の輸入制限措置の新たな導入(NHK NEWS WEB)である。

 ロシアによるクリミア併合を決して承認しない立場を言うなら、なぜもっと早くに厳しい制裁措置に出なかったのだろう。また菅官房長官は日本の追加制裁の理由としてG7との連携重視を謳っているが、連携重視を言うなら、やはり最初から欧米各国に準じた制裁を科すべきだったが、連携どころか、2000メートル走で言うと、1周も2周も遅れた制裁であった。

 だが、遅巻きではあっても、対ロ制裁に関しては安部政権はそれなりの存在感を示すことになった。示すというよりも、それなりの存在感を取り戻すことができたと言った方が正確かもしれない。

 意図したものかどうか、あるいは結果的にそうなったかどうかは分からないが、極めて希薄な状態に置かれていた安倍晋三の首脳としての存在感を取り戻すための日本の対ロ追加制裁ではなかったろうか。

 そこへ来て、安部政権は今までロシアの北方四島に対する軍備増強に何も物申してこなかったにも関わらず、7月29日、小野寺五典防衛相がフランスのルドリアン国防相と会談。日本の安全保障を口実として強襲揚陸艦2隻の対ロ売却に反対して、ロシアに対する日本の厳しい姿勢を示した。

 当然、G7内で希薄化を余儀なくされていた安倍晋三の存在感はこの点に於いても見直されたはずだ。

 これまで適当なところで収めていたことに反する日本としてのG7に準じる追加制裁と言い、北方四島に於けるロシアの軍備増強に懸念も反対も抗議も示してこなかったことに反する今回の小野寺防衛相のフランスの強襲揚陸艦対ロ売却反対と言い、もはや結果的にではなく、意図して行った安倍晋三の希薄化していた存在感回復のための両パフォーマンスと解釈しないわけにはいかない。

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「YOUは何しに日本へ?-指さし旅」とNHK「Rの法則 外国人高校生」云々から見える日本の教育

2014-07-30 09:35:36 | Weblog



 2年前から土曜授業校が倍増したという記事を1週間程前にお目にかかったが、日本の教育の問題点は教育委員会制度や6・3・3制といった学制の問題であるよりも、教育の構造自体が問題であるように思う。

 そうであることを教えてくれるテレビ番組二つを挙げてみる。

 成田空港や関西空港などのロビーで出会った外国人に先ず確か、「Where did you come from? 」(「どこから来ましたか」)だったと思うが、そのように問いかけて国籍を尋ねてから、「YOUは何しに日本へ」と日本語で問いかけて、続けてこれも確か、「What did you come to Japan?」だったと思うが、日本へ来た目的を尋ねて、インタビューしたTV局の人間が興味がありそうだと感じた来日目的の場合、その跡を追う密着取材を敢行するという、テレビ東京の番組「YOU は何しに日本へ?」の(当方は放送日が異なるフジテレビの再放送版)7月26日放送で、デンマーク指さし旅完結編を流していた。

 デンマークの高校卒業生2人が高校卒業後の進路としてノープランの日本旅行をした。一人が分厚いガイドブックを折り曲げるようにしてページをペラペラとめくると、もう一人が目に手を当てて見えないようにして、適当にページに指を突き立て、当たったページが案内している観光地に出かけるというノープランの日本旅行。

 バイトで貯めた一人60万円を持参。期間は90日間滞在予定。

 完結編終了間近くで一人の方のナレーションが入る。

 「デンマークでは高校に出たあと、将来を考えるための時間をくれるんだ。だから、今は余計なこと(多分日常生活的な事柄)は考えなくていいんだ。今は未知の世界に飛び込んで、どう生きていくかを探ることができる。

 旅をするのにこんなにいい国はないと思う。日本のみんなには感動したよ。親切で色々と助けてくれた。

 外国の文化に初めて触れたときは違いにばかり目がいくけど、人々と接するうちに気づくんだ。文化が違っても、やっぱり同じなんだって。僕らはみんな人間なんだから」

 文化や生活様式は違いながらも、それぞれが同じように人間として喜怒哀楽の感情を持ち、生き、生活している。

 これが彼らの3ヶ月間のノープランの日本旅行の結論だったと言うことなのだろう。

 いわば自己をデンマーク人としてのみ考えるのではなく、また日本人を日本人としてのみ考えるのではなく、文化や生活様式を超えてそれぞれを一個の人間としても把えてみる相対化の術を日本旅行で学び、一個の人間として見た場合、同じ人間なんだということを感受することができた。

 これだけのことを60万円の元手と3ヶ月間の期間で学習することができた。高校を卒業したばかりの年齢の若者にしては貴重な収穫であるはずだ。
 
 「デンマークでは高校に出たあと、将来を考えるための時間をくれる」とはどういうことか、インターネットで調べてみた。

 デンマークのみならず、英国やカナダなどでも高校卒業後、そのままストレートに大学に入学せずに1年間から中には数年間、外国を訪問したりして人生経験・社会経験を積む「ギャップイヤー」(空白の年)を経てから大学に入学する慣習があるそうで、一般的なギャップイヤーの過ごし方は一定期間フルタイムでバイトをしてお金を貯め、そのあとに世界各地に旅行する、あるいは旅行先の国でボランティア活動をするといったところらしい。

 そのためにデンマークでの大学入学時の平均年齢は20歳から22歳くらいだそうだ。

 問題は「ギャップイヤー」の過ごし方を自分で考え、判断して決めるということである。結果的に大学の入学の年齢まで自分で決めることになる。

 小中学高校生の頃、先輩たちがギャップイヤーをどう過ごすか、自分たちで考え、判断して決めていく姿を直接見たり、あるいはそうしていく姿を活字媒体や映像媒体を介して間接的に見聞きするだけで、ギャップイヤーの過ごし方だけではなく、何事もそれぞれが自分で考え、判断して決めていく姿勢を学び、身につけていくことになるはずだ。

 そのような姿勢が大切であることを。

 日本でも「ギャップターム」(空白の期間)と称して、ギャップイヤーと類似の考え方が存在する。大学の入学時期を9月とし、高校卒業の3月から大学9月入学までの約半年間を人生経験・社会体験の時期とする考え方である。

 安倍晋三は2006年自由民主党総裁選挙で総裁に選ばれ、首相となったが、官房長官時に、政権構想の柱となる「教育再生」の一環として、国公立大学の入学時期を9月に変更し、高校卒業からの約半年間を、「例えばボランティア活動やってもらうことも考えていい」と、社会奉仕活動を義務付ける改革案の検討を始めている。

 だが、国が上から押し付けることへの反対意見が強く、また9月入学が決まっていなかったために立ち消えとなった。

 さらに2012年総選挙時の政策集、『J-ファイル2012 自民党総合政策集』で、〈大学の9月入学を促進し、高校卒業から入学までのギャップターム(半年間)などを活用した大学生の体験活動(国とふるさと、環境を守る仕事、例えば、海外NGO、農業・福祉体験、自衛隊・消防団体験等)の必修化や、学生の体験活動の評価・単位化を行い、企業の採用プロセスに活用します。〉と提案している。
 
 体験活動はいくつか挙げて、その中から選択する形式となっているが、「必修化」は一種の強制であって、本質的には自分で考え、判断して決める生徒の自由選択を奪う形式以外の何ものでもない。

 例えば文学の嗜好性の強い生徒がギャップタームの間、毎日のように図書館に通って、読書三昧の時間の過ごし方をしてもいいわけだし、美術に強い関心のある生徒が日本各地を旅行するか、いずれかの外国を訪問して、写生三昧の日々を過ごしてもいいわけで、それぞれが人生に於ける貴重な時間となるはずである。

 だが、日本ではどうしても国家が上から押し付ける形式しか考えることができない。それも“体験”という聞こえのいい名目で本質的には上が決めた奉仕活動に機械的に応えさせようとする。

 このような形式は生徒それぞれの自由な選択――自分で考え、判断して決める自発性と主体性を不在としているから、その結果、古くて新しい問題として、児童・生徒の考える力の不足を言い続けることになる。

 このことは教育委員会制度を改めても、6・3・3制を改めても、あるいは中高一貫教育を推し進めようとも、残されていく教育の構造問題であるはずだ。

 NHK教育番組「Rの法則 外人高校生が見た!ちょっと不思議な日本の高校生」は昨年、2013年5月17日放送である。放送当時視聴して、スウェーデンやフィンランドの高校生と比較した日本の高校生の考える力の不足を感じた。

 「外国人高校生が見たちょっと不思議な日本人高校生」がテーマで、日本の高校に留学している外国人高校生と日本人男女高校生の討論。司会者はTOKIOの山口達也。
 
 ゲスト、お笑いタレント2人組のTKOの木本武宏と木下隆行。

 先ず、「全国の外国人高校生200人(21の国と地域)へのアンケート」が示された。

 「日本の高校生活での不思議トップ5」

 1位 宿題
 2位 制服
 3位 先生
 4位 弁当
 5位 部活

 「部活」についての討論と「宿題」についての討論から考えてみる。

 スウェーデン人男子高校生「スウェーデンでは部活は全然ないです」

 日本人女子高生「普段は何してるんですか、放課後とか」

 スウェーデン人男子高校生「まあ、スポーツをやりたかったら、街のチームとか、エリアのクラブがあるので、それは入ります」

 フィンランド人女子高校生「学校も朝から大体午前3時30分まであるんじゃないか。何か学校終わってからも、同じ人と部活やったり、ちょっと嫌になる」

 木下隆行「部活って、学校のコミュニケーションの一つというか、仲間を作ったりするところでもあるんですよ」

 日本人女子高生「青春できないじゃん」

 日本人男子高生「青春できひん」

 フィンランド人男子高校生「地域と街のチームで他の学校の人と会うでしょ。他の学校の友達作れるんですから、(友達が)凄く多くなっちゃう」

 日本人女子高生「部活って、ずっと一緒にいるから、本当にチームワーク、滅茶苦茶いいんですよ」

 山口達也「この仲間で勝っていきたいっていうことか?」

 日本人女子高生たち頷く。

 山口達也「この学校としてっていうとこか?」

 木本武宏「自分たちの学校への愛が強いもんね。この学校を強くしたみたいなね」

 フィンランド人男子高校生「それは他の街で友だちがいたら。フィンランドは他の街にも友だちがいる。それが同じように。

 けど、もうちょっと(交際範囲と交際エリアが)広い。街の中の学校だけど、フィンランドの中の街。同じこと」

 木本武宏「この街を強くしたいってことか」

 日本人女子高生「でかいね」

 日本人男子高生「でかいな」

 日本人女子高生「でかいんだ」

 フィンランド人男子高校生「朝練があって、そして学校、そしてまた練習があって、帰る。他のことに時間がないでしょ。それが(指を折り数える)練習、学校、寝る。練習、学校、寝る。無限地獄だ。人生は3つのことじゃないでしょ」――

 日本の場合、クラスの何人とか、部活の部員とか、それが一定程度に濃密な人間関係であっても、限られた人間関係の日々の繰返しだから、部活動以外の学ぶ経験が限定されることになる。

 だが、欧米では交際範囲と交際エリアが広い分、人間関係が多岐に亘ることになり、様々な人間関係を通した見聞や体験から多くを学ぶことになる。

 但し前者・後者、このような経験が考える力の素材とし得ることができるかが問題となる。

 日本と外国の宿題の違いから見てみる。日本は勿論、中国とかベトナム等のアジアの国々では暗記教育が主体で、宿題も多いものとなっている。

 スウェーデン人男子高校生「スウェーデンでは暗記じゃなくて、自分が調べる宿題が多いんですよ。歴史の作文とか、そういう宿題は本当に自分で考えないといけないので、とてもいいと思います」

 フィンランド人男子高校生「フィンランドはスウェーデンとよく似ていますから、作文とかプレゼンテーションとか、そんなので(宿題を)作っています」

 女性解説「フィンランドはプレゼンテーションで先ず『時間軸を守ること』、そして『結果とその原因を続けて話すこと』を教わる。

 その二つを守ることで、かなり話しやすく話すことができるという」

 鏡を使って目線や姿勢をチェック。

 家族や友達の前でも練習し、自身をつけることを実践しているという。

 スウェーデン人男子高校生「プレゼンテーションの中身が凄く良くても、ブツブツ小さい声で言ったら、誰も分からないでしょ?だから自信で(自信を持って)、みんなの目を見てると、そういうプレゼンテーションをしないと――」

 山口達也(背後のヒナ檀に座っている日本の男女子高生たちに聞く)「もしかして、夏休みとかで自由研究の発表とかって、そういうことがあると、プレゼンテーションでということですか」

 女子高生たち、口々に「ない、ない」(男子高生は映らなかった。)

 フィンランド人女子高校生「日本人てあんまりみんなの前で話したことがないから、何か普通の自己紹介を本当に難しそう。何て言っているか全然聞こえないし――」

 背後で日本の女子高生が「あー」と納得の声を上げる。

 日本人男子高生「それはあるかも知れない」

 フィンランド人男子高校生「あの、宿題の量は大事なことじゃない。それより宿題の中身が大事。将来とかって、後で役に立つのか。それが大事。例えばプレゼンテーションでは色んなことを調べるから、それはそれが調べ方も習うでしょ?

 将来会社に入るときは上司は何か調べなさいって。調べ方知ってるから、早い」

 日本の男女子高校生、みんなして「あー」と声を上げて納得する。

 日本の場合は暗記教育だから、与えられた量の宿題をこなすことが重要となる。調べる問題が入っていても、教科書を読み返すか、何かの事典を調べて、そこに書いてることを問に埋めていくことで片付けることができる。

 だが、プレゼンテーションの場合、何かを調べて参考にしても、最終的には如何に自身の考えを組み立てるかが問題とされるから、調べたことをそのまま提示した場合、自身の考えとは看做されないことになる。

 調べたことを自身の考えの中に取り込んで、調べたことをさらに発展させることで、自身の考えとしての独自性が生まれて、誰それのプレゼンテーションとして成り立つことになる。

 欧米の児童・生徒が幼い頃から、そういった考える習慣に慣らされた場合、学校の放課後、部活という限られた人間関係ではなく、一つの街のクラブで異なる学校環境の児童・生徒と交わることで得ることができるより多岐に亘る人間関係での見聞き・体験は考える作用(=思考作用)を通してその人の考えへと発展していく機会となり得るはずである。

 勿論、すべての日本人の児童・生徒が暗記教育に飼い慣らされてしまって、考える力を不足させているわけではないはずだ。中には暗記教育を物ともせずに自由な発想を育み、独自の創造力を駆使することのできる成長を果たして、素晴らしい発明をしたり、素晴らしい独自の能力を発揮したりする例が多々ある。

 だが、一般的に言って、日本の児童・生徒の考える力の不足が世間的評価となっているということは、やはり教育制度の問題というよりも、授業の内容――教育構造に問題があると見なければならないはずだ。

 同じ年頃のフィンランド人女子高校生に「日本人てあんまりみんなの前で話したことがないから、何か普通の自己紹介を本当に難しそう。何て言っているか全然聞こえないし――」と言われて、日本の女子高生が「あー」と納得の声を上げているようでは、自分で考える力が覚束ないことを曝しているようなものである。

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安倍晋三のお友達プーチンはウクライナ問題で「ウソを100回言えば事実となる」を実践中

2014-07-29 05:08:40 | Weblog



 「ウソを100回言えば事実となる」はヒトラーによって国民啓蒙・宣伝相に起用された、あの悪名高いパウル・ヨーゼフ・ゲッベルスが言った言葉を要約したバリエーションの一つである。

 実際に言った言葉は「もしあなたが十分に大きな嘘を頻繁に繰返せば、人々は最後にはそのウソを信じるだろう」だと、インターネット上に紹介されている。

 「ウソを信じる」と言うことは、そのウソを事実と看做したということを意味する。

 ゲッペルスは自身が言った言葉の原理を用いて、ドイツ国民や占領地の国民、ユダヤ人をどれ程に騙し、ナチス政策の推進にどれ程に役立てたのだろうか。ヒトラーによって国民啓蒙・宣伝相に起用された理由が理解できる。

 「Wikipedia」には次のように記されている。〈「プロパガンダの天才」と称され、アドルフ・ヒトラーの政権掌握とナチス党政権下のドイツの体制維持に辣腕を発揮した。敗戦の直前、ヒトラーの遺書によってドイツ国首相に任命されるが、直後に家族とともに自殺した。〉――

 実際にはプーチンが同じウソを100回ついているわけではない。但しそれがたったの1回であったとしても、世界中のマスコミが取り上げ、そのウソを事実として報道したなら、100回どころか、1000回もウソをついて事実とさせたことに相当するはずだ。

 クリミア自治共和国内の60%を占めるロシア系住民がウクライナからの独立の動きを強める中、安倍晋三のお友達プーチンは2014年2月4日、モスクワ郊外の大統領公邸で記者会見した。

 プーチン「クリミアの『併合』は検討していない。(但し)住民には自らの将来を決める権利がある」(NHK NEWS WEB)――

 この発言を正直に解釈すると、クリミアのロシア併合はない、あったとしても、クリミアのウクライナからの独立までだという意味となる。だが、ウクライナ憲法は領土問題はウクライナ全土での国民投票で決めると規定している。

 プーチンがウクライナのロシア系住民とロシアの国益を守る権利だとして軍事介入の構えを見せている状況下にあって、プーチンは2014年3月4日、モスクワ郊外で記者会見している。

 プーチン「軍の投入が必要な緊張状態は消えた。(クリミア自治共和国のロシア連邦編入について)考えていない。

(クリミアに展開している部隊は)地元の自警団で、ロシア軍は関与していない。

 (クリミアの将来は)安全かつ自由な意思表示のできる条件下で、住民自身が決定できる」(毎日jp

 世界中がこの発言に接したはずだ。ロシアから親ロ派武装勢力にコサックや元軍人等が流れていることが報じられているにも関わらず、ロシア軍は一切関与していない地元自警団だと言っている。

 プーチンが考えていないとしていたクリミアのロシアへの併合が、この日の記者会見から1周間も経つと急転直下する。

 2014年3月11日、クリミア自治共和国議会はウクライナからの独立を宣言。

 2014年3月16日、ロシアへの編入を問う住民投票を実施。96.77パーセントの賛成。

 2014年3月18日、プーチン、クリミア自治共和国のロシアへの編入を表明、編入の条約に調印。

 2014年3月21日、条約をロシアの議会で批准、編入手続きが完了。

 プーチンはウクライナ東部上空でのマレーシア旅客機ミサイル撃墜事件でも「ウソを100回言えば」を実行している。2014年7月18日。

 プーチン「ウクライナ東部が平和で、戦闘が再燃しなければ、事件は起きなかっただろう。この恐ろしい悲劇に対して事件の起きた国に責任がある」(NHK NEWS WEB

 非常に尤もらしく聞こえるロシアの正当性となっている。

 だが、ウクライナ憲法に違反し、主権と領土の一体性を原則とした国際法にも違反した、秘密裏なロシア軍介入のクリミアのウクライナからの分離とロシアへの併合という前提と、ウクライナ東部でのクリミアの二匹目のドジョウを狙った、ロシアの支援を受けたロシア系住民の武装蜂起という二つの前提を抜かした“戦闘の再燃”である。

 ロシア系住民はあくまでもウクライナからの分離、ロシアへの併合の意志を捨てていない。プーチンはウクライナ政府の主権と領土を守る国家的意志を無視して、ウクライナ政府に責任転嫁しているに過ぎない。

 ロシア系武装勢力が墜落原因究明の外国からの調査団の調査を妨害したり、機体残骸に切断の跡があるということは、ノータッチにしていたなら、不都合が生じる恐れを抱いていることの証明としかならない。

 要するに証拠を隠そうとする意志が働いたが故にタッチすることになった。特に後者は犯罪現場の証拠には手を触れないが原則の逆を行くもので、犯罪者の証拠隠滅以外に物語るものはない。

 プーチンは2014年7月21日もビデオ声明で同じ“ウソ”を繰り返している。

 プーチン「「ウクライナ東部の戦闘が再開されていなければ、悲劇も起きなかっただろう」(MSN産経

 プーチンは「ウソを100回言えば事実となる」を押し通して、すべての責任をウクライナ政府に押し付けたいようだ。ロシアは悪くはない。と言うことは、安倍晋三のお友達プーチン大統領はどのような責任も負っていないということである。

 ロシア国防省が「如何なる武器も供与していない」と表明したことも、プーチンを代弁した「ウソ100回」に入るだろう。

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安倍晋三が言うように北朝鮮に核・ミサイル両開発と経済の再生の両立はできないと知らしめることは可能か

2014-07-28 02:28:00 | Weblog

 

 ――安倍晋三に北朝鮮ミサイル発射を「安保理決議違反」と批判する資格なし――

 昨日、2014年7月27日当ブログ記事――《百田の「ニュース9」大越キャスター批判は卑怯者のすること、誰に対しても言論の自由を振り回す資格なし - 『ニッポン情報解読』by手代木恕之》で、一つお断りしておくことがある。

 百田尚樹の発言を「毎日jp」記事通りに「韓国併合後に強制連行はなかった」としたが、「asahi.com」記事ではその発言が、「日韓併合直後から強制連行があったように受け取られかねない」、「誤ったイメージを視聴者に与えるのでは」となっていることに後から気づいた。

 大越キャスターは日韓併合直後から強制連行があったとする文脈で発言したわけではあるまいし、そのように発言したとは思えない。例え日韓併合直後から強制連行はなかったとしても、そのことを以って日本という国家が朝鮮人に対して行った過酷な強制連行という罪の全体性は否定したり、薄めたりすることはできない。

 もし百田尚樹が日韓併合直後から強制連行はなかったとすることによって大越キャスターの発言そのものを封じようとしていたとしたら、意図したわけではない部分的不正確さを取り上げて全体を不正確にすり替えようとする奸計を仕組むようなものである。

 百田尚樹の発言がどのようなものであっても、自身の発言を議事録に記載しないよう求めたことは世間の目から自身の姿を隠して放送現場の言論をコントロールしよう意図したことに変わりはない。百田尚樹は別の場所で、NHKの経営委員としてではなく、作家とかの立場で堂々と「ニュース9」の大越キャスターの発言を「日韓併合直後から強制連行があったように受け取られかねない発言」だと批判すべきだったろう。

  北朝鮮が7月26日夜、再び日本海に向けて弾道ミサイル1発を発射した。前回7月13日にミサイル2発を発射したとき、〈北朝鮮による弾道ミサイルの日本海に向けた発射は今年に入って5回目〉だと「スポニチ」が伝えていたが、だとすると、今回で日本海向け発射は今年6回目となる。

 つまり北朝鮮は今年に入って「安保理決議違反」を6回も無視した。決議違反を何とも思っていないということを意味する。

 外国への訪問回数を増やして記録を立てることも目的の一つに入れたメキシコ訪問中の安倍晋三がこの発射についてキシコ市郊外で記者団に発言している。《安倍首相:北朝鮮ミサイル「安保理決議違反」と批判》毎日jp/2014年07月27日 04時12分)

 安倍晋三「国連安全保障理事会決議違反であり、北朝鮮がこうした行動を取らないよう、国際社会の意志を北朝鮮に伝えていきたい。北朝鮮に核開発やミサイル開発と経済の再生の両立はできないと知らしめていく必要がある。

 (情報収集や航空、航海の安全の確認、国民への情報提供を各省庁に指示したことを明らかにしたうえで)北朝鮮側に厳重に抗議するよう指示をし、既に抗議をした」

 果たして安倍晋三は自身が言っているように知らしめることができると考えているのだろうか。あるいは知らしめることが可能と認識して、言葉を選んだのだろうか。

 2012年11月15~16日に野田政権下での初めての日朝政府間協議が行われていたが、12月1日北朝鮮がテポドン発射を予告、12月5日予定の2度目の協議を野田政権は延期を決め、北朝鮮は2012年12月12日に予告通りにテポドン3号を発射している。

 いわば野田政権は日本として国連決議違反であることを日朝協議延期という態度で示した。

 だが、安部政権はミサイル発射が国連決議違反であることを口では唱えはしたものの、日朝協議を延期とか、中止とかで態度で示すことはしなかった。

 今年5月26~28日にスウェーデン・ストックホルムで開催した日朝政府間協議で設置を取り決めた「特別調査委員会」の、その組織実効性を問うために7月1日に再度開催を予定していた中で、北朝鮮は6月29日午前5時頃、弾道ミサイル2発を日本海に向けて発射した。

 安部政権は国連決議に違反する北朝鮮のこのミサイル発射に対して7月1日の日本と北朝鮮の政府間協議の開催に変更はないとした。

 勿論、政府間協議でミサイル発射を議題にするとしたが、北朝鮮は安保理決議違反を承知で発射しているのだから、まともに議題として取り扱うはずもなく、そのことは7月1日政府間協議の約2週間近く後の7月13日のミサイル発射が証明していることで、このことはまた、政府間協議開催に変更はなしとしたことで、いわばミサイル発射に日本としてはある種の免罪符を与えたことの証明ともなる。

 但し安部政権が北朝鮮がミサイルを発射したとしても、野田政権とは違って政府間協議開催に変更はなしとしたことを間違っているとは言わない。あくまでも安部政権の外交に於ける優先順位である。ミサイル発射よりも拉致解決を優先させる外交策を取った。

 7月13日にミサイル発射のとき、安倍晋三自身が免罪符を与えている。国連安全保障理事会決議違反だと批判し、北京の大使館ルートを通じて厳重抗議したことを明らかにしつつ次のように発言している

 安倍晋三「ミサイル発射が(日朝政府間協議に)影響を及ぼすことはない。拉致問題はしっかり解決に向けて取り組んでいく」(スポニチ

 北朝鮮側からしたら、あなた方がミサイルを発射しても、日朝政府間協議に影響を及ぼすことはありませんよとされたのだから、ある種の免罪符を与えられたと解釈したとしても不思議はないだろう。

 妻が不倫したことを知った夫が、「妻の不倫は我々の夫婦生活に影響を及ぼすことはない」と言ったとしたら、妻は自身の不倫に免罪符を与えられたと解釈したとしても不思議はないだろう。その免罪符は今後の不倫に対しても有効期限を保つと看做されるに違いない。

 そして今回7月26日夜の弾道ミサイルの発射である。

 安部政権は北朝鮮がミサイルを発射しても日朝政府間協議に変更なし・拉致進展へ対話継続の態度を採用してきたが、今回のミサイル発射に対してどのような態度を取るのか、今のところ明らかにしていないようだ。

 今更後戻りはできないだろう。北朝鮮にしても、安部政権は後戻りはしないと踏んでいるはずだ。アメリカや国連がいくら反発したとしても、安部政権の間に拉致全面解決を訴えていたことと、ミサイル発射に対してある意味免罪符を与えたことが、その有効期限が生き続けていることを教えているはずだ。

 もはや「安保理決議違反」を前面に出して批判する資格はないはずである。国際社会がどう見ようと、拉致解決に向けて、突っ張るしか道は残されていないだろう。

 安倍晋三はメキシコで、「北朝鮮に核開発やミサイル開発と経済の再生の両立はできないと知らしめていく必要がある」と言っているが、金正恩は自分たち親子三代の父子継承の独裁体制を北朝鮮に於ける絶対的な国家体制と信じている。だが、国際社会が忌むべき体制として排除することを目論んでいることを国連決議やアメリカの批判を通して認識しているはずだ。

 その排除の動きに対して自己の国家体制を守る最終手段が核兵器の保有であり、核兵器を運搬するミサイルの開発なのだから、核実験をやめることもミサイル発射をやめることもないだろう。

 それらの実験は自己の独裁体制を絶対死守するシグナルと見なければならない。

 当然、安倍晋三の「ミサイル開発と経済の再生の両立はできないと知らしめていく必要がある」は聞こえのいい言葉ではあるが、金正恩に対しては釈迦に説法となる。多分、金正恩は北朝鮮が崩壊することはあっても、その崩壊の瞬間まで核開発を続け、ミサイル発射実験を繰返すだろう。崩壊の寸前、北朝鮮疎外の反動としての世界に対する憎しみから北朝鮮の国家崩壊の道連れに世界の破壊を目論む衝動に衝き動かされる危険性を暴発させない保証はない。

 安倍晋三こそ、拉致解決進展と北朝鮮の核開発・ミサイル開発阻止の両立はできないと知るべきである。大体が拉致解決進展がもたらす日本の経済制裁解除が北朝鮮の独裁体制延命に少しでも役立った場合、北朝鮮のミサイル開発と経済の再生の両立を可能とする選択肢となりかねない。

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百田の「ニュース9」大越キャスター批判は卑怯者のすること、誰に対しても言論の自由を振り回す資格なし

2014-07-27 07:53:32 | Weblog

  

 安倍晋三とお友達であり、お友達であるがゆえに公共放送のNHK経営委員にNHKの放送全般に対する監視役として差し向けられたのだろう、連合国軍総司令部(GHQ)が占領時代、日本人に徹底した自虐思想を植え付けたとする歴史認識に立ち、 今年(2014年)2月9日投開票の都知事選での田母神俊雄候補の応援演説で細川護煕候補や宇都宮健児候補を「人間のクズ」呼ばわりした、いわば自分を何様に置いた百田尚樹が夜9時から放送の7月17日NHK「ニュース9」での大越健介キャスターの発言を7月22日の経営委員会で強く批判したと、次の記事がが伝えている。

 《百田尚樹氏:強制連行説明でNHK番組を批判》毎日jp/2014年07月25日 21時03分)

 大越健介キャスター(在日コリアン3世の結婚観を取り上げた後)「在日コリアンの1世の方たちというのは、1910年の韓国併合後に強制的に連れてこられたり、職を求めて移り住んできた人たちで、大変な苦労を重ねて、生活の基盤を築いてきた」

 何様百田尚樹の7月22日の経営委員会での批判。

 百田尚樹(後日公表される議事録には記載しないよう求めた上で)「韓国併合後に強制連行はなかった」(などと発言)

 上村達男委員長代行(放送法は経営委員に対して個別の番組への干渉を禁じているため、放送法の条文を読み上げた上で)「発言は単なる感想ですよね」

 つまり批判ではなく、「単なる感想」に変えて、決着させた。これは事勿れ主義の処理に当たらないだろうか。

 記事は末尾で、〈百田氏はこれまでにも講演などで「南京大虐殺はなかった」などの発言を繰り返している。〉と解説。

 5月24日土曜日午後の岐阜市内で開かれた自民党岐阜県連の定期大会での講演では次のような発言もしている。

 百田尚樹「私は憲法改正派です。軍隊は家に例えると、防犯用の鍵であり、(軍隊を持つことは)しっかり鍵を付けようということ。

  軍隊を持たないバヌアツ、ナウルは家に例える と、くそ貧乏長屋で、泥棒も入らない」(時事ドットコム

 百田尚樹は「韓国併合後に強制連行はなかった」などとする歴史認識をどこから持ち出したのだろう。何度かブログに引用しているが、内務省嘱託であった小暮泰用が朝鮮半島内の食料や労務の供出状況について調査を命じられ、1944年7月31日付で内務省管理局に報告した「復命書」は次のように記されている。

  《植民地朝鮮の戦時労務動員―政策と実態―》 

 復命書「…徴用は別として其の他如何なる方式に依るも出動は全く拉致同様な状態である其れは若し事前に於て之を知らせば皆逃亡するからである。

 そこで夜襲、誘出、其の他各種の方策を講じて人質的略奪拉致の事例が多くなるのである、何故に事前に知らせれば彼等は逃亡するか。 要するにそこには彼等を精神的に惹付ける何物もなかったことから生ずるものと思はれる。内鮮を通じて労務管理の拙悪極まることは往々にして彼等の身心を破壊することのみならず残留家族の生活困難乃至破壊が屡々あったからである」――

 「人質的略奪拉致」の言葉は身体的な強制力を用いた暴力的な強制連行そのものを意味し、「労務管理の拙悪極まること」とは労働環境・労働条件が劣悪であったことを意味している。

 戦争の長期化・激化による戦死兵士の増加に対する兵士補充のために学徒動員として大学生や徴兵検査で甲種・乙種に次ぐ、現役不適格とされた丙種合格の最終対象年齢の45歳までの男子を赤紙一枚で戦場に駆り立て、そのことによって生じた国内と朝鮮の労働力不足を朝鮮人や中国人を強制連行して代償し、過酷な労働を強いて、その多くが賃金は日本人の半分、その半分を様々な名目を用いてピンハネしてタダ同然で働かせ、与える食事は粗末な最低限の食事だったという。

 いわばなり振り構わない無秩序な極めて威嚇的な権威主義が横行していた。

 このことは軍隊入りした新兵に対する古参兵の陰湿なイジメが証明の一つとなる。

 朝鮮人や中国人に対する威嚇的な権威主義の横行の理由は日本人を優越民族とし、朝鮮民族や中国民族を劣る民族とした差別観以外に考えることはできない。

 百田尚樹は自身の歴史認識に不都合な情報は遮断し、都合の良い情報だけを受入れて自身の歴史認識を成り立たせているようだが、何よりも問題なのは、後日公表される議事録には記載しないよう求めたことである。

 自身の歴史認識に関する主張が公になることは隠蔽する形にして、自身が所属する組織の内部で秘かにその主張を、失敗したものの、押し通そうとした。

 もし成功していたら、百田尚樹の歴史認識に反する発言は困難になるか、最悪、避けることになる。

 あるいは失敗しても、放送現場で百田尚樹の歴史認識を忖度して、面倒なことは避けようとする種類の自己規制が働かない保証はない。

 いずれにしても百田尚樹が自身の発言を議事録に記載しないよう求めたことは世間の目から自身の姿と自身がそうさせようとしたことを隠して放送現場の言論をコントロールしようとしたことを意味する。

 言論の自由の権利のもと、社会常識的に節度を保った批判は許されている。但し批判は言葉を手段として相手の言動を自身の言動と同じに変えさせようとする、あるいは変えさせたい意思を持つ。

 そのような意思を持たない批判は言うだけの批判となって、批判としての役目を果たさない。
 
 議事録に記載されることを承知のうえで自身の歴史認識を、正しいか間違っているかは別にして、堂々と主張し、大越キャスターの歴史認識を批判したなら、言論の自由を言う資格はある。だが、批判者としての自身の姿と自身が放送現場の言論をコントロールしようとしたことを隠そうとしたのだから、あるべき言論の自由の姿を壊したことになって、誰に対しても言論の自由を振り回す資格はないし、大体が自身の姿を見せないようにした批判は卑怯者のすることである。

 これが安倍晋三のお友達、百田尚樹の正体と言ったところなのだろうか。

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何となく後が怖いような気がする外国旅客船・旅客機事故の日本人乗客なしの幸運は安倍晋三のツキの反映か

2014-07-26 03:25:10 | Weblog


 
 大型旅客船や旅客機の事故が相次ぎ、多くの死者を出している。こうも続くのは異様で、何となく先行き良からぬ事が起きるのではないかといった予兆を感じてしまう。

 そもそもの発端はマレーシアのクアラルンプールから中国の北京に向かっていたマレーシア航空の定期旅客便が2014年3月8日、タイランド湾上空で消息を絶ち、現在も行方不明となっている不可解な事件かもしれない。

 幼児5人を含む乗客227人と乗員12人が搭乗していた。世界各国の軍隊が協力して海と空から捜索したが、行方不明の状況に変わりはなかった。

 乗客の内中国人が152人を占め、ついでマレーシア人の38人。以下各国に少しずつ分散しているが、日本人の乗客はなし。

 次の悲惨な大型の事故は2014年4月16日に韓国の大型旅客船セウォル号が全羅南道珍島郡の観梅島(クヮンメド)沖海上で転覆・沈没した事故である。

 2014年6月24日現在、乗員・乗客 293人死亡、乗員・乗客 11人が行方不明、捜索作業中の民間ダイバー 2人と同じく捜索作業中の消防隊員 5人が犠牲となっている。

 転覆原因は積み荷の過度な積載オーバーと積み荷の固定装置未装着。マニュアル通りに運行していなかった。転覆すべくして転覆して、そして沈没した。いわば乗客は徒に犠牲になったことを意味する。

 乗客の中に修学旅行の男女高校生が大勢乗っていたということだが、何人が救助されたのか、前途あるべき若者の生命(いのち)を大人たちの卑しいカネ儲け主義が奪ってしまった。

 今回も日本人は乗船していなかった。

 ついで7月17日(2014年)、マレーシア航空旅客機ボーイング777がウクライナ東部上空1万メートルの高度を飛行中、ミサイルで撃墜され、乗客283人と乗員15人の298人全員が死亡した。

 安倍晋三は7月18日、邦人被害の確認を関係各省に指示、菅官房長官は朝の記者会見で、「現在のところ邦人被害の情報には接していない」(時事ドットコム)と述べている。

 岸田外務大臣は日本時間の7月18日未明、訪問先のウクライナで記者団に、「報道は承知している。私から事実関係と日本人の安否を至急確認するよう指示を出した」(時事ドットコム)と発言。

 日本人の乗客の確認、搭乗していた場合の安否確認は「国民の生命と財産」を預かっている政府として当然の措置だが、しかし外国人であっても、現に生命(いのち)を犠牲にしている乗客がたくさんいる。

 難しい対応だが、日本人の安否確認だけを優先させて各国の犠牲者や搭乗していると分かっている乗客の近親者の恐怖に無頓着であったのでは、自国中心主義に走り過ぎていることになる。

 7月23日夜、台湾の離島・澎湖島で乗客乗員58人が乗った復興航空(トランスアジア航空)機が着陸に失敗し、炎上、マスコミは当初47人とか48人死亡したと伝えていたが、51人の死亡の可能性もあるとしている。

 着陸失敗は台風10号の通過による天候不良だそうだが、日本の対台湾窓口機関の交流協会高雄事務所が日本人搭乗の情報を伝えていないことから、安否確認は不必要となった。

 そして立て続けにと言うか、7月24日未明、アルジェリアのアルジェリア航空機が西アフリカ・ブルキナファソの首都ワガドゥグからアルジェに向かう途中、消息を絶った。乗客110人と乗員6人の計116人が搭乗していた。

 当初墜落場所の情報が錯綜していたが、マリの領土内で残骸が発見されたという。民間航空機の墜落は1週間で3回目だという。

 在ブルキナファソ日本大使館によると、搭乗リストに日本人は載っていないと言うことだから、幸いなことに今回も犠牲者から除外されたことになる。

 だが、それぞれの外国を国籍とする多くの外国人が犠牲者のリストに載ることになった。具体的には乗客110人、乗員6人。フランス人が51人と最も多く、乗客と乗員は計15カ国に亘るそうだ。

 世界を移動する日本人の数が少ないのか、あるいは移動範囲が狭いのか、単なる偶然に過ぎないのか、理由は考えつかないが、こうも続けて日本人が乗船せず・搭乗せずと続くのも珍しいのではないだろうか。

 もしこれを日本人の幸運であるとしたら、犠牲となった外国籍の人間の不幸を背後に置いた幸運と言えないこともない。犠牲者は外国籍ばかりで、その中に日本人がいなくてよかったという幸運である。

 この幸運は安倍晋三の政権運営に於ける数々のツキが影響している幸運なのかもしれない。もしウクライナでミサイルで撃墜されたマレーシア旅客機の全員死亡の犠牲者の中に日本人が含まれていたなら、親友プーチンに対して西欧各国の厳しい対応を他処にこれまで事勿れな態度を取っていたが、国内世論の手前、厳しい態度に切り替えざるを得なくなり、窮地に追い込まれることにもなったろう。

 いわば日本人の搭乗者がいなかったこと自体が日本の幸運であるばかりか、安倍晋三自体の幸運でもあった。

 と言うことは、安倍晋三のツキの続きということかもしれない。

 ツキの悪さは人生の最後の最後まで付き纏われることがある。だが、逆のツキはいつまでも続く保証はない。ツキが余り続くと、却って不安になるのはこのためだろう。

 日本人が乗船せず・搭乗せずの幸運にしても、余り続くと、そのうちトンデモナイことが起きるのではないかと却って良からぬ先行きを考えてしまう。そのトンデモナイこととは安倍晋三のツキの剥落を意味するのかもしれないし、あるいは南海トラフ地震や首都直下型地震とかの大規模自然災害ということかもしれない。

 勿論、後者はお断りしたいし、何事も起きないことを祈るし、飛行機の墜落も、船の沈没もないに越したことはないが、いずれも人間には避けようのない異常事態となっていることも事実である。

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安倍晋三の戦前肯定歴史認識から発した国家主義が日本の国の将来像を決めていく

2014-07-25 04:07:48 | Weblog

 

 安倍晋三が7月8日(2014年)、豪州を訪問。その日の午前、豪州議会で演説した。戦争に関わった他の国々の戦没兵士の数から比較したら少数派に属するが、太平洋戦争で亡くなった豪州兵士を悼み、「歴史の暴戻を前に、私は語るべき言葉を持ちません」と、日本の戦争を歴史に責任転嫁した。

 歴史が戦争をつくり出すのではなく、人間、あるいは人類が戦争をつくり出すという認識がない。安倍晋三という人間が持つ認識の暴戻がそう言わしめたに違いない。

 そしてR.G.メンジーズ元首相が言ったという言葉を借りて、間接的に中韓に未来志向を呼びかけた。

 安倍晋三「Hostility to Japan must go. It is better to hope than always to remember.(日本に対する敵意は、去るべきだ。常に記憶を呼び覚ますより、未来を期待するほうがよい)」――

 以上は何日前かのブログで取り上げたが、〈だが、加害者が言うべき言葉だろうか。 同じ戦争でも、国によって受けた傷や被害の質と量、戦死者の人数等、それぞれに異なる。オーストラリアの被害と比べたなら、韓国や中国が受けた被害は比べ物にならないだろう。〉と書いた。

 要するにメンジーズ元首相はオーストリアの立場はこうあるべきだと言ったのであって、他の国々まで同じであるべきと言ったわけではないだろう。言ったとしたら、僭越も甚だしい。

 安倍晋三は7月19日(2014年)、長州「正論」懇話会で講演した際、豪州議会の演説後にアボット首相が記者会見で語ったという言葉を紹介している。

 安倍晋三「先週、オーストラリア議会で演説する機会を得ました。冒頭、70年前の戦争で命を失ったオーストラリアの若者に哀悼の意を捧げた。その痛切な反省のもとに、日本は平和で民主的な国を作り上げてきた。そのことを申し上げた。いまや基本的な価値を共有する歴史の試練に耐え、経済安全保障をあらゆる分野で進化させていくべき。こうオーストラリアの議員の皆さん、国民の皆さんに訴えてきました。最大の敵が最高の友人になる。オーストラリアの皆さんから心温まる賞賛の声を頂きました。この演説の後アボット首相が大勢のメディアの前に毅然としてこう語った。この言葉を最後に紹介して、私の講演を締めくくりたいと思います。

 『日本はフェアに扱われるべきだ。70年前の行動ではなく、今日の行動で評価されるべきだ。日本は戦後ずっと世界に第一級の市民として貢献し、法の支配の下で行動してきた。私たちは過去ではなく、今の日本を評価すべきだ』

 私は本当にアボットの言葉を聞き、胸が熱くなる思いだった。まさに正論だった。正論に国の壁はありません。今後いっそう、こうした評価と期待に応えていきたいと思います」――

 アボット首相の言葉が安倍晋三を正論だとしてその胸を熱くさせた。結構毛だらけ、猫灰だらけ。

 メンジーズ元首相が言ったという言葉とアボット首相の言葉はほぼ同じ趣旨となる。

 日本は「70年前の行動ではなく、今日の行動で評価されるべきだ」と言っているが、日本の側から言うと、日本の「70年前の行動」に対する日本に於ける今日(こんにち)の歴史認識は日本の「今日の行動」の一つを成し、「今の日本」の姿に映し出さる。

 いわば歴史認識が日本の「70年前の行動」と「今の日本」をつなげて、日本の「今日の行動」をつくり出している。少なくとも行動の一つの基準となる。

 このことは安倍晋三の靖国神社や歴史認識発言を見れば、格好の証明となる。

 確かに戦後の日本は平和憲法のもと、「世界に第一級の市民として」かどうかは分からないが、戦争をしない平和国家として戦後の歴史を歩んできた。だが、安倍晋三とその同類の日本の政治家たちの日本を経済大国としてだけではなく、軍事大国としても世界に君臨させたいとする願いは日本の「70年前の行動」に対する歴史認識がそうさせているはずだ。

 決して平和の歩みを進めてきた戦後の歴史に対する認識がそうさせるはずはない。戦前の歴史を否定し、戦後の歴史を肯定する立場に立っていたなら、つまり日本国憲法と共に歩む歴史認識を行動基準としていたなら、軍事大国化という思いを頭に思い浮かべることもないはずだ。

 だが、安部政権は2014年4月1日、防衛装備の輸出を原則禁じる武器輸出三原則を見直し、それに代わる「防衛装備移転三原則」を閣議決定して、軍拡競争の仲間入りを果たそうとしている。

 日本の「70年前の行動」と「今日の行動」、あるいは「今の日本」をつなげるのも断絶させるのも歴史認識である。表面上は「戦後ずっと世界に第一級の市民として貢献し、法の支配の下で行動してきた」としても、内なる行動基準が歴史認識を反映させ、歴史認識を反映させた行動基準が国の姿に影響を与えていく。

 安倍晋三の戦前肯定の歴史認識から発した国家主義が日本の国の将来像を決めていく。

 当然、安倍晋三自身が戦前の日本の歴史と戦後日本の歴史をつなげようとしている以上、アボット豪首相の「70年前の行動ではなく、今日の行動で評価されるべき」との発言を正論だとする正当性は一切存在しない。

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3号機瓦礫撤去作業に伴う1兆ベクレル超放射能飛散情報隠蔽は国民の知るべき情報ではないとしたということ

2014-07-24 11:31:33 | Weblog



 昨年2013年8月19日、東電福島第1原発が3号機の瓦礫撤去作業を行った際、放射性粉塵が飛散して、20キロ余り離れた南相馬市の14個所で収穫されたコメから国の基準の1キログラム当たり100ベクレルを超える放射性セシウムが検出されたことは7月17日の当ブログ記事で既に取り上げていたが、果して隠蔽してもいい情報なのかどうかに焦点を当てて、改めて記事にしてみる。

 「asahi.com」記事によると、南相馬市のコメから国の基準値を超える放射能セシウムが検出されたのは10月以降と記している。

 11月20日、南相馬市農業委員会は作付開始反対を表明。 

 12月13日、南相馬市の農業関係者会合で農水省から「基準以下のコメは政府備蓄米として買い取る。基準超は東電が賠償する」と説明され、作付再開受入れを決定。但し農林省はコメへの放射性セシウム付着が福島第1原発の瓦礫撤去作業による放射性物質飛散の可能性を説明しなかった。

 いわば情報隠蔽を謀った。

 今年2014年3月3日、農水省は東電に対して瓦礫撤去がコメ放射能汚染の可能性を伝えて、再発防止を要請。

 7月14日、朝日新聞が瓦礫撤去が汚染原因の可能性を報道。

 7月18日、農水省は瓦礫撤去が汚染原因の可能性を初めて地元に説明。

 7月22日、林農水相が「不安を招いた。申し訳ない」と陳謝。

 7月23日になって、各マスコミが瓦礫撤去作業で飛散した放射性物質は1兆ベクレルを超えるという推定結果を東電が発表したと報じた。最大で1兆1200億ベクレルの推定値だそうだ。

 〈福島第一原発では、現在も1時間当たり平均で1000万ベクレルの放射性物質が放出されているとみられてい〉ると、「NHK NEWS WEB」記事が伝えている。

 以上のような経緯を新聞やテレビニュース、更にはテレビの各ワイドショー番組で突きつけられた場合、汚染場所が南相馬市限定、あるいは汚染農産物がコメ限定と考える人間がどれ程いるだろうか。

 限定ではないと疑うのが人間としての自然な疑問であるはずだ。

 場所に限って言うと、疑いが疑いで終わらずに事実であることを示す証拠となる記事がある。小泉昭夫京大教授(環境衛生学)の研究グループが福島県内で実施した調査のうち、住民の被曝量推計のために相馬市、南相馬市、福島県川内村の3カ所で大気中の粉塵を集めて放射性セシウム濃度を計測したところ、原発から北西48キロの相馬市玉野地区で集めた、東電3号機瓦礫処理の時期と重なる昨年8月15~22日分から、他の時期の6倍を超す1立方メートル当たり1.28ミリベクレルの放射能を検出したと、7月17日付「河北新報」記事が伝えている。

 相馬市は原発から約50キロ離れているという。つまり第1原発から20キロ余り離れた南相馬市に限らず、さらに約30キロ離れた相馬市をも、汚染量は遥かに少ないものの、他の時期の6倍を超す量で汚染させていた。

 また、人体への放射能汚染を疑う人々も出てくるに違いない。

 だからと言って、隠してもいい事実であり、情報だったのだろうか。

 林農水相がこれらの情報隠蔽に謝罪したという記者会見発言の中から、情報隠蔽の理由を話している個所のみを農水省のHPから転載してみる。

 林農水相「はい。この間、申し上げたようにですね、その段階で分かったことをですね、申し上げるということについてですね、いろんな調査の結果について、白黒はっきりしないものについてはですね、現場の混乱を避けるという意味で申し上げなかったことがあったと、こういう報告を受けておりますが、今後は、こういう、この先方からですね、そういう御要請があったので、今後はですね、白黒はっきりしないことであってもですね、しっかりと共有をすると、こういうふうにいたしたいと、こういうふうに思っております」――

 「白黒はっきりしないものは現場の混乱を避けるために申し上げなかった」が、「今後は白黒はっきりしないこともしっかりと情報共有する」と言っている。

 いわば白黒はっきりしない事実の情報開示は現場の混乱が生じると言っているが、だからと言って、国民の生活や活動に関係していく情報を開示とは逆の方向の隠蔽を謀っていいものだろうか。

 無能菅仮免政権も原発事故に関しては不必要な混乱を招かないためとか、不必要な不安を生じさせないためとかの理由をつけて情報隠蔽を犯してきた。

 原発事故が発生して大量の放射漏洩が起きたとき、無能菅仮免政権は当初SPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)を用いた地域ごとの放射能物質拡散状況と地域ごとの放射能物質量の推定値を公表しなかった。

 菅仮免は「所管する文部科学省などから説明がなく、事故から数日たってもその存在すら知らなかった」と言っている。

 だが、無能菅は2010年10月20日に自身を原子力災害対策本部長とした浜岡原発事故想定の「平成22年度原子力総合防災訓練」をテレビ会議システムの使用も含めて行い、SPEEDIを用いて漏洩想定の放射能拡散予測を行っているのだから、存在を知らないでは済まない立場にいた。

 当時の細野首相補佐官が2011年5月2日の記者会見で公表しなかった理由を述べている。

 細野補佐官「(SPEEDIの予測結果を)公開することによって、社会全体にパニックが起きることを懸念したというのが実態であります」

 公開・未公開の最終決定判断は細野にあるはずはなく、菅仮免にあるはずでだから、太々しい殺人犯が物的証拠を突きつけられながらしらばっくれるみたいにシラを切っていたということなのだろう。

 無能菅仮免政権ではSPEEDIのみならず、米エネルギー省が2011年3月17日から3月19日にかけて軍用機を使って福島上空の放射線量を測定した「福島上空放射線量測定データー地図」を文科省と保安院に伝えながら、官邸に報告もせず、公表もしなかった。

 果たして官邸に伝えなかったというのは事実なのだろうか。原発事故から2ヶ月しか経過していない。SPEEDI同様に「社会全体にパニックが起きることを懸念」して官邸の指示で公表しなかったが、米エネルギー省からデータが渡っていたことが世間に知れて、官邸が情報隠蔽ということになったら支持率に響くから、文科省と保安院が揃いも揃って官邸に報告しなかったことにした怠慢の罪で片付けた疑いは捨てきれない。

 確かに南相馬市のコメから国の基準1キログラム当たり100ベクレルを超える放射性セシウム検出は福島原発3号機瓦礫撤去作業に伴う1兆ベクレル超放射能物質飛散の原因可能性の公表はなかなか払拭できない風評被害を一気に拡大方向に持っていきかねない危険性を抱えて、政府の責任を追及する声も上がるだろう。

 安倍晋三も福島・岩手・宮城の被災3県をほぼ1ヶ月に1回視察し、そのうちの何回かは福島に訪れてイカやタコやシラスや、その他その他を試食して、風評被害払拭に努めている努力に冷水を浴びせかねず、支持率に影響が出かねない。何事もなかったと装うのが一番である。

 いわば風評被害抑制や現場の混乱防止、あるいは人体への放射能汚染懸念回避を優先させて、一部分、安倍内閣の支持率低下を避けるために国民の知るべき情報ではないとした。

 言い替えるなら、国民の生活や活動に不都合な情報は、一部安部政権に不都合な情報も含めて開示とは正反対の情報隠蔽を謀った。

 確かに情報を隠すことによって風評被害の拡大防止には役立つかもしれない。だが、コメ生産の現場はコメの放射能汚染量が急に増えて、生産したコメを全部廃棄している。しかも原因が不明で、その得体の知れなさに今後の生産の見通しを含めて不安に陥れることはなかったろうか。

 例え同じ廃棄するにしても、原因が分かっていることによって、将来の生産の見通しが立つ。

 実際には作付を開始したものの、放射能に対する不安は原因不明なのだから、消えなかったはずだ。原因不明の病気にかかった患者の不安に似ているはずだ。不安を抱えたままコメを生産していくことになる。

 人体への影響にしても、政府の情報隠蔽によって人体が汚染されていることを知らぬが仏で特に不安を感じていなくても、実際に影響が出てきたとき、現実にも甲状腺異常の子どもが増えているということを考えると、原因不明の不安は途轍もない空恐ろしさを与えるはずだ。

 こういったことは一切ないと仮定したとしても、開示は不都合だからと言って、国民の生活や活動に混乱を招かないためにという理由で政府の判断で国民の知るべき情報ではないと選択して隠蔽を謀ってもいいだろうか。

 それがいつ国民のためであるよりも政府のための選択に早変わりしない保証はない。政府のために国民の知るべき情報ではないとした場合、これ程の恐ろしいことはないはずだ。

 大体が農水省が最低昨年2013年12月13日の時点以前にコメへの放射性セシウム付着が福島第1原発の瓦礫撤去作業による放射性物質飛散の可能性を把握していながら、東電に対して瓦その可能性を伝えて、再発防止を要請したのは約3カ月近く経過した12月13日である。

 当初の情報隠蔽がそうさせた情報伝達の遅れであるはずである。いわば情報隠蔽がなかったら、情報伝達の遅れもなかったとすることができる。

 1号機で瓦礫の撤去を行うために建屋を覆うカバーの解体が近く予定されているという。カバー内側にも大量の放射性物質が付着しているはずだ。

 もし朝日新聞が報道していなかったら、例え農水省が対策を東電に要請したとしても、東電は情報隠蔽を前提に対策をカネをかけないためにいい加減なところで手を打ち、ある程度の放射能物質飛散は止むを得ないとカバー解体工事ばかりか、瓦礫処理そのものも強行しないとは限らない。

 昨年8月、汚染水を貯留しておく組み立て式タンクから高濃度の放射性物質を含んだ汚染水約300トンが漏れた事態が発生したにも関わらず、昨年9月27日に衆院経済産業委員会で参考人として呼ばれた〈広瀬東電社長は組み立て式のタンクが溶接型に比べて漏洩の可能性が高いことを認めつつ、「組み立て式は圧倒的に施工のスピードが速いので、まず優先して造った」、「急いで造ったのは事実」〉と発言、実際にはその中に中古品が含まれていることに一切触れていなかったと2014年7月23日付の「毎日jp」が伝えている。

 中古品の数は20~30基。溶接型に比べて漏洩の可能性が高い組み立て式タンクの中古品と言うことなら、なおさらに漏洩の危険性が高まることになる。だが、そういった危険性に対する危機管理もなく、経費も安価に済むことになり、数さえ揃えればいいとしたのだろう、いい加減なところで手を打った。

 この前科は瓦礫処理でも発揮されかねない危険性の証明に十分になり得る。特に情報隠蔽の状況下にあったなら、前科は後ろ暗さもなく再犯されかねない。

 だが、国民の生活や活動に混乱を招きかねないとする口実で情報隠蔽を謀らず、情報開示していれば、マスコミや国民の目が監視役を務めて、東電の元々からある杜撰な体質を反映させたいい加減なところで手を打つ遣り方の防止策となるはずである。

 だが、こういったことを考えない農水省の情報隠蔽は、林農水相に伝達されていなかったとしたら、省の秘密体質はなおさらに問題となるが、安倍内閣成立・公布(施行は公布の2013年12月13日から1年以内)の特定秘密保護法との関連付けで言うと、何を秘密とされるか分からない恐ろしさを提示させていることになる。

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マレーシア旅客機撃墜対応の各国首脳電話会談から見る安倍晋三の「地球儀俯瞰外交」の正体

2014-07-23 09:25:18 | Weblog




      生活の党PR

       《インタビュー:安倍首相はピーク越えた、年内選挙ない=小沢一郎氏》ロイター/2014年
       7月 22日 11:44)

      《小沢氏 野党協力すれば政権交代も可能》NHK NEWS WEB/2014年7月20日 16時17
       分)    

      《7月23日(水) 小沢一郎代表『ニューズ・オプエド』(NOBORDER)生出演のご案内》

      ・番組名:Ustream/NOBORDER『ニューズ・オプエド』
      ・日 時:平成26年7月23日(水)16:00~17:00(生放送)
      ※代表の出演時間は16:30から

      ・内 容:安倍政権「集団的自衛権行使容認」について

 ――各国首脳が対応に追われている中、安倍晋三は世界秩序の維持に外交的に関わろうとはせずにゴルフを愉しんでいた――

 7月17日(2014年)、マレーシア航空旅客機ボーイング777がウクライナ東部上空1万メートルの高度を飛行中、ミサイルで撃墜された。乗客283人と乗員15人の298人全員が死亡したと「日経電子版」が伝えている。

 298人の中には夏休み中の子ども80人が含まれていた。

 「日経電子版」による国別犠牲者は次のとおりとなっている。

 オランダ 193 人
 マレーシア 43人
 オーストラリア 27人
 インドネシア 12人
 英国 10人
 ドイツ 4人
 ベルギー 4人
 フィリピン 3人
 カナダ 1人
 ニュージーランド 1人

 当初単に墜落とされていた原因が翌7月8日にはアメリカが親ロ派武装勢力のミサイル発射による撃墜と疑い、それがウクライナ軍と親ロ派武装勢力の戦闘中に武装勢力側の支配地域での戦闘とは関わりのない民間機の撃墜であり、戦闘とは関わりのない298人の民間人の犠牲を伴っていることから、特に悲惨で重大な出来事として各国首脳は外交を活発化させることとなった。

 但し日本を除いて。

 7月17日、ロシア側の要請でプーチン大統領とオバマ米大統領が電話会談。プーチンはウクライナ情勢を巡って米国前日発動の新たな経済制裁に強く抗議、約1時間に及んだ会談半分を過ぎた辺りで、「ついでに言うと」といった感じでプーチンが事件の一報に触れたと「MSN産経」が伝えている。

 電話会談のとき、オバマ大統領には墜落がまだ伝わっていなかったようだ。

 プーチンは旅客機の墜落がミサイルによって撃墜された事実をまだ知らなかったとしても、武装勢力側の支配地域に墜落した、戦闘とは関わりのない民間機の墜落である以上、重大な問題意識を示さなければならないはずだが、ロシアに発動された新たな経済制裁を優先問題とし、墜落の報告を後回しにした。

 プーチンが安倍晋三と同様の国家主義者であることは今更言うまでもないことだが、国家主義者の顔を覗かせた瞬間であるはずだ。

 同7月17日、オバマ大統領は墜落機が離陸したオランダのルッテ首相と電話協議。痛ましい事件であることを伝え、哀悼の意を伝えたたはずだ。

 オバマ大統領「迅速で信頼性の高い国際的な調査が、妨害を受けないように行われるべきだ」(MSN産経

 プーチンとウクライナ国内の親ロ派武装勢力を信用していないニュアンスを窺うことのできる発言となっている。

 7月18日、プーチンがオランダのルッテ首相と電話会談。最も多くの犠牲者を出したオランダに対して哀悼の意を述べたのだろう。

 プーチン「戦闘が続くウクライナ東部の危機的状況をできるかぎり早く平和的に解決する必要がある。(調査について)客観的で綿密に行われなければならない」(NHK NEWS WEB

 親ロ派武装勢力発射のミサイルが疑われている状況下での「客観的」調査の必要性の訴えである以上、親ロ派武装勢力ではないとしたい「客観的」調査を衝動としていたことになる。

 同7月18日、オバマ大統領が27人の犠牲者を出したオーストラリアのアボット首相と電話談。大切な人を失った家族に対して哀悼の意を表している。早期の原因究明と親ロ派武装勢力を如何にウクライナ領土から排除したらいいか、対ロ制裁の効果的運用方法の検討を含めて話し合ったはずだ。

 同7月18日、続いてオバマ大統領はキャメロン英首相、ドイツのメルケル首相と相次いで電話協議、マレーシア旅客機が撃墜されたウクライナ東部の親ロ武装勢力支援を続けるロシアへの制裁強化の可能性を話し合い(MSN産経)、原因究明に向けた国際的な調査を直ちに実施する必要性の確認、親ロシア派の武装集団に調査団の安全の確保と証拠の保全を求めることで一致(NHK NEWS WEB)。さらにロシアが武器流入停止に「明確な責任がある」点を話し合った。(毎日jp

 同7月18日、ウクライナのポロシェンコ大統領がオーストラリアとドイツ、それにイギリスの首相と相次いで電話会談。原因究明のための調査に協力を求めた。(NHK NEWS WEB)

 7月19日、プーチンがドイツのメルケル首相と電話協議。国連の専門機関・国際民間航空機関(ICAO)が関与した「独立した国際調査委員会」が撃墜現場で調査を行うことで合意している。(毎日jp

 7月19日、オランダのルッテ首相がブーチンと前日に続いて電話会談。

 7月20日、キャメロン英首相がドイツのメルケル首相と電話会談。マレーシア旅客機撃墜現場に欧州安保協力機構(OSCE)調査団が立入りを制限されていることに懸念を共有し、キャメロン首相はロシア側の非協力的な姿勢不満を表明(MSN産経)、一刻も早い遺体の収容や原因の究明のためにはロシアのプーチン大統領が親ロシア派への影響力を使い、説得する責任があるという認識で一致。(NHK NEWS WEB

 同7月20日、キャメロン首相がメルケル首相との電話会談後、プーチン大統領と電話会談。ロシアがウクライナ東部の安定に取り組むかを世界が注視していると、対応を迫った。(NHK NEWS WEB

 同7月20日、オランダのルッテ首相が7月19日に続いてブーチンと電話会談。マスコミは触れていないが、ルッテ首相の原因究明調査が当たり前に進まないことに苛立っている様子を窺うことができる。

 7月21日、オーストラリアのアボット首相がロシアのプーチン大統領と電話会談、マレーシア航空機の撃墜への対応について協議している。プーチンの尻を叩く形で会話は進められたはずだ。

 7月22日、オランダのルッテ首相がプーチンと4回目の電話会談。国連の安全保障理事会で国際調査に向け各国に協力を呼びかける決議が採択されたことを評価し、専門家の現地入りを実現するためにも親ロシア派とウクライナ軍の停戦が重要だということで一致。(NHK NEWS WEB

 かくこのように西側各国首脳はプーチンに対して苛立ち、不満を持ちながらも、ミサイル発射勢力の特定の調査進捗とウクライナ情勢の平和的解決を求めて外交を活発化させていた。

 このような外交努力は世界秩序維持の努力でもあるはずだ。

 では、親友同士であるプーチンと今年2月のソチ五輪後、電話を含めた首脳会談を行っていない我が日本の安倍晋三はどのような動静にあったのだろうか。オバマ大統領やドイツ首相などが旅客機撃墜前からプーチンに対して親ロ派武装勢力に対する影響力を行使するよう求める電話会談や西側首脳同士がウクライナ国内の戦闘の停戦等について電話会談を行っていたにも関わらずである。

 7月19日、安倍晋三は地元山口で開催の長州「正論」懇話会1周年で講演している。 

 安倍晋三「さて私はこれまでに22回、月1回以上のペースで海外に出かけました。既に42カ国を訪問しました。これは、結構くたびれることもあるんですが、大切な仕事だと思っています。後、半月後にはこれが47になります。まさに地球儀を俯瞰する外交を展開してきました。

 今年4月にはオバマ大統領が来日しました。民主党政権で崩れかけた日米関係は復活するどころか、かつてないほど強固になったと確信しています。5月にはNATOで日本の安全保障政策について、スピーチしました。日本とEUは経済のみならず、安全保障などあらゆる面で、価値観と利益を共有するかつてないパートナーとなっています。

 プーチン大統領とは 1年半で5回、首脳会談を行いました。ロシアには、責任ある国家として、国際社会の問題に、建設的に関与してもらわねばなりません。そのためには、私はプーチン大統領との対話を続けていきます。1日も早い平和条約の締結に向けて粘り強く、交渉していきます」(首相官邸HP

 プーチンが世界秩序に挑戦する形で国際法とウクライナの主権を踏みにじってウクライナからクリミアを分離させてロシアに併合させた領土拡張に飽きたらず、ウクライナ国内の親ロ派武装勢力のウクライナ政府に対する武装攻撃に託して更なる領土拡張欲を充足させようと意図しているにも関わらず、ロシアに対して痛くも痒くもない紋切り型のメッセージを発するにとどめ、マレーシア旅客機ミサイル撃墜を含めた現在のウクライナの情勢に電話会談等を使った外交的な関わり合いは一切行わないままに訪問国数と訪問回数のみ言い立てているに過ぎない「地球儀を俯瞰する外交」を自慢している。

 世界秩序の維持に外交的に関わろうとしない、いわばプーチンの世界秩序挑戦に西欧各国首脳が制裁を科し、色々と物を申している中で何も物申さない「地球儀を俯瞰する外交」とは、一体何を意味するのだろうか。

 7月21日祭日、安倍晋三は、相互に電話会談して、壊れかけたウクライナ情勢を建て直し、世界秩序を繕い直そうと努力している世界各国の首脳を他処に神奈川県茅ケ崎市で友人や秘書官とゴルフを楽しんでいる。

 ホール移動の合間に記者団に発言している。

 安倍晋三「楽しむことが一番だ」(MSN産経

 同7月21日、このゴルフに、何が「地球儀を俯瞰する外交」だと苦々しく思ったのか、あるいはゴルフを知らずに発言したのかかどうかは不明だが、メデイロス米国家安全保障会議(NSC)アジア上級部長が訪米した自民党の河井克行衆院議員とワシントンで会談。

 メデイロス上級部長「国際社会が透明性を持った調査をできるよう日本政府も声を上げてほしい」(時事ドットコム//07/22-06:58)

 7月22日11時03分からの岸田外相記者会見。

 岸田外相「この墜落の原因につきましては,現在,情報の収集あるいは分析中でありますが,撃墜行為による可能性が高いと思っていますし,国際社会として強く非難すべきであると思います。関与した者は,この重大な責任をとらなければならない。このように感じています。

 真相究明につきましては,分離派武装勢力の妨害によって検証活動が円滑に進んでいないことを懸念しております。全ての関係者のアクセスが確保されるよう,この墜落現場へのアクセスが確保されるよう,分離派武装勢力の協力を強く促していきたいと思っております。

 その関係で,ウクライナの主権,そして,一体性を侵害する分離派武装勢力の行動を強く非難いたします。そして,これに対する外部からの支援は情勢の悪化をもたらすものであり,即刻停止すべきであると考えます。そして,ロシアにつきましては武装勢力に対し,和平に向けた対話に応ずるよう,また,マレーシア航空機墜落事件に関する国際的調査に協力するよう,影響力を行使することを求めます」(外務省HP

 この「撃墜行為による可能性が高いと思っていますし」という発言について、「NHK NEWS WEB」記事は、〈撃墜された可能性が高いという認識を政府として初めて示し〉たものだとしている。

 要するにロシアを追いつめたくない気持が撃墜された可能性を云々したくない姿勢にさせていたが、前日(時差の関係で1日は経っていないかもしれない)、メデイロス上級部長から日本もプーチンに対して影響力を発揮しろと促されて、仕方なく可能性高は高いという認識を示したのだろうか。外圧には弱い日本である。

 マレーシア旅客機に日本人乗客は搭乗してはいず、当たり前のことだが、ミサイル撃墜で犠牲者を一人として出していない。

 だからと言って、世界秩序維持の外交努力は果たさなくてもいいという理由にはならないし、安倍晋三が言う「国民の生命・財産を守る」は自国日本人に限定した国家的使命ではなく、外国政府のその国の「国民の生命・財産を守る」の国家的使命にも相互に共鳴させなければならない思想であるはずで、そのような普遍性を持たせることによって、その言葉はホンモノとなり得るはずだ。

 他国民の生命・財産はどうでもいいとした、自国民の生命・財産は守るの国家的使命・思想は逆説的に過ぎ、決して正当性を得ることはできまい。

 だが、安倍晋三は日本人の犠牲者は一人もいないという理由でか、外国人のみが関わった犠牲に対する真相究明の調査の進行に外交努力を何一つ果たしていない。

 「国民の生命・財産を守る」国家的使命・思想が、もし日本人の生命・財産に限定しているなら、首相の立場にある自身の何らかの利害を目的とした便宜性のための国家的使命・思想であることを免れることはできない。

 それが電話会談等の外交努力を一つとしてせず、ゴルフを楽しんでいたという場面に現れたということなのだろう。

 この程度の「地球儀を俯瞰する外交」であり、この程度の「積極的平和主義外交」だということである。

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スローガン満載の安倍晋三がスローガンのオンパレード「暴力団追放市民大会」パレード参加の滑稽さ

2014-07-22 07:24:22 | Weblog


 ――安倍晋三の「暴力団追放市民大会」パレード参加が単なるスローガンの提示でしかないことの証明をしよう――

 安倍晋三が7月18日に福岡市博多区中洲で行われた「暴力団追放市民大会」のパレードに赤色のハッピを着用して参加、約100人の参加者と共に右手を上げて、「暴力団に協力しないぞ」とか、「安全安心な町、中洲をつくるぞ」とか暴力団追放のシュプレヒコールを上げ、行進したという。

 出発式での安倍晋三の参加者に対する呼びかけ。

 安倍晋三「福岡県は暴力団の現状が最も厳しい県の一つ。市民の皆さんの暴力団追放の勇気ある活動に敬意を表したい。暴力、暴力団追放の活動を一緒に頑張っていきましょう」(asahi.com

 最近支持率が下がっているから、目につくものは何でも飛びついているのだろうか。

 尤も行進したのは10分程だというから、ほんの体裁といったところか。

 大体が安倍政治は打ち上げるスローガンは華々しく、スローガンのオンパレードとなっているが、華々しく賑やかな割には成果が伴わないスローガン先行となっている。アベノミクスにしても、三本の矢として、「大胆な金融緩和」、「機動的な財政出動」、「民間投資を喚起する成長戦略」をスローガンとして打ち上げたが、現在のところの景気回復は第一の矢の「大胆な金融緩和」は日銀の異次元の金融緩和策におんぶした成果であって、安倍晋三自身の第二の矢と第三の矢は未だスローガンの域を出ていない。

 そのためにアベノミクスの全体的成果を危ぶむ声も出始めている。

 日銀の異次元の金融緩和策にしても、円安と株高を実現して、日本の大企業の懐をダブダブに潤わし、その利益を安部政権の「経済の好循環」とかの口実を用いた圧力で賃金に少しは回したが、一般国民にとっては円安によって物価が高騰、賃金の上昇が追いつかない実質賃金の目減りを生じせしめている始末にある。

 このようにスローガン好きの安倍晋三が殆ど「暴力追放」のスローガンを並べ立てるだけの「暴力団追放市民大会」のパレードに参加して、「暴力追放」を叫び立てたというのだから、滑稽そのものである。

 確かに「暴力団追放市民大会」の主たるスローガン「暴力団を利用するな 利用されるな」に関しては組事務所の立退きやマンション入居反対、あるいは飲食店等のみかじめ料お断り等の方法で暴対法と警察の後押しもあって市民の力は効果を上げているし、金融機関も暴力団との取引きを自粛するなど暴力団排除に力を貸しているが、こういったことが一方で暴力団の仮面を外したフロント企業などを増殖させ、延命に与っていることも現実としてある。

 金融機関に関して言うと、中小零細企業が経営が悪化して資金繰りが苦しくなり、傾きかけると、資金調達・融資にソッポを向くために経営者は組経営のヤミ金融に走らざるを得ない、「暴力団を利用するな 利用されるな」とは正反対の社会の仕組みとなっているのも現実の状況としてある。

 そして金融機関は倒産した企業から借金のカタに敷地・建物を取り上げ、債権回収のために裁判所で競売にかける。暴力団が裁判所の競売に堂々と出入りして、裁判所が公告した中から目的の物件を落として、それを転売したりして利益を上げ、組資金としている。

 いわば社会的排除を相殺する社会的受容であり、ときには排除を上回る社会的受容となっていないだろうか。上回っているとしたら、「暴力団追放市民大会」の「暴力団排除」の言葉はまさしくスローガンの提示そのもで終わっていることになる。

 暴力団の競売介入に関しては私が実際に目にした限りでは40年も前から行われていて、組長本人が幹部2、3人と5~6名の20歳前後の戦闘服を着た若者を連れて出張るといったことをしていた。

 戦闘服の若者はボディガードと言うよりも、堅気の落札者に対する威嚇用であって、「触らぬ神に祟りなし」の諺を思い出させる役目を果たしている。金額を上げていく過程で暴力団がどの物件を狙っているか分かると、程々のところで手を引くことになる。そのために暴力団はただでさえ相場よりも安価に手に入れることができる競売物件をより安価に落札することになって、多額の利益を手に入れることができる。

 結果的に暴力団を利することになるこのようなことも、「暴力団を利用するな 利用されるな」のスローガンを裏切る一般市民の行動となる。

 現在も暴力団が裁判症の競売に出入りしているのかインターネットで調べてみた。

  2013年1月5日の記事である。《不動産競売における暴力団排除》日本裁判官ネットワークブログ/くまちん/ 2013年01月05日)

 〈1月4日付の読売新聞に、大要、以下の記事が載っていた。〉という出だして、読売記事を紹介している。

 〈「暴力団の有力傘下団体が、全国の裁判所の競売で少なくとも32か所のビルなどを入手し、組事務所にしていたことが、日本弁護士連合会民事介入暴力対策委員会(民暴委)などへの取材で分かった。」

 「北海道、千葉、神奈川、岐阜、京都、大阪、広島、長崎の8道府県で1985年以降、計32か所の組事務所が競売で取得されていた。このうち北海道、岐阜、大阪、広島、長崎の5道府県・11か所では、稲川会、山口組、共政会系の組長の名前で堂々と落札していた。」

「競売の入札参加規定に暴力団排除条項がないためで、組長本人が落札したケースも11か所判明。民暴委は競売に同条項を設けるため、民事執行法の改正を求める方針だ。」〉――

 そこで日本弁護士連合会は2013年6月21日、《民事執行手続及び滞納処分手続において暴力団員等が不動産を取得することを禁止する法整備を求める意見書》を法務大臣と最高裁判所長官宛てに提出している。

 では現状は禁止できているのだろうか。

 「民事執行法」の最終改正は2013年12月11日となっているが、暴力団員の不動産取得の禁止事項は条文のどこにも含まれていない。

 例え禁止しても、暴力団の仮面を取ったフロント企業が出入りして競売参加ということもあるが、少なくとも法律規制の一歩前進のためにも、あるいは暴力団排除というメッセージを出すためにも、多額の利益を上げることのでき、大きな組資金とすることができる競売物件落札への参加は禁止すべきだが、未だ野放しとなっている。 

 自民党内に暴力団と利害を一致させる既得権集団が存在していて、それが障害となって法改正を規制する岩盤となっているのかどうか分からないが、安倍晋三お得意の「私がドリルになって規制という岩盤を打ち破る」には至っていない。

 だとしたら、安倍晋三は第一番に「民事執行法」改正の実質的行動に動くべきだが、「暴力団追放市民大会」のパレードに赤いハッピを着用、参加して、右手を振り上げて、「暴力追放」を叫び、行進して自身をアピールした。

 まさしく安倍晋三のパレード参加は実質的なものは何もない、滑稽なだけの単なるスローガンの提示に過ぎない。

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