総務相の右翼政治家高市早苗が11月28日の記者会見でNHKや日本民間放送連盟に対して慎重な当確放送を要請する方針であることを明らかにしたというマスコミ記事を読んで、どういったことなのか、報道への政治の介入と言うことなら問題だと思って、総務省のサイトにアクセスしてみた。記者会見の概要が記載されていた。
読みやすいように段落を変えた。文飾は当方。
《高市総務大臣閣議後記者会見の概要》(総務省/2014年11月28日)
上出義樹フリーランス記者「フリーランス記者の上出と申します。実績が無くて申し訳ありません。二つ質問させてください。何れも関連あることなのですが、今日の朝刊に新聞に出ている問題です。
自民党が選挙報道に対して、民放、東京の民放各社にですね、公平中立にやってほしいというような要請を出したんですが、大変細かく街頭インタビューの方法とか、ゲスト出演のこととか、そういうことについても気を付けなさいというような趣旨で、新聞によっては批判的に取り上げているところがありました。識者の方からですね、政権与党がこういうようなものを出すということは、それだけで圧力になるという見解です。これが一つの質問です。
もう一つはですね、これとは違うんですけれども、総務省が平成7年からですね、当選確実の報道で誤報があるということで、そういうことがないようにという、要請という、これは、形ですけども、行っております。
ずっと行っていたんですけど、民主党の政権の時は二回の国選でこれをやらなかった。これは、そういうことが圧力になったためだということらしいんですけども、で、去年の参議院選挙で復活しまして、公示日の7月8日に2行ほどで簡単ですけども、そういうことをやっています。
これ、今度の公示については、12月2日どうするか、まだ決まってないという担当課の話ですけども、もしこのことをご存知でしたら、総務省としての考え方、政権与党とか総務省がそういった要請をするってことは、非常にデリケートな、言論の自由にとってデリケートな問題ですので、どのようにお考えかってことを、ちょっと長くなりましたがお願いします。
高市早苗「私も朝刊、それから、また、ネットニュース、各社のですね、ニュースなどで拝見いたしました。
与党からも野党からも、選挙報道の公正・中立を求めるものが放送事業者に届いているといった報道になっておりました。
ただ、申し訳ございませんが、その内容、事実関係詳細については、私はまだ承知をいたしておりません。
いずれにいたしましても、総務省としての考え方を申し上げますと、これは放送事業者におかれまして、放送法の規定にあるとおり、政治的に公平、報道は事実を曲げないといった原則に従って、放送番組を編集することになっているということでございます。
ですから、特に選挙期間中の報道、解散になってから公示日までの報道について、何か総務省から申し上げるということはございません。
2点目の、その当確放送のことなんですけれども、これは、お願いをしたいと思います。
やはり投票日の当確放送、これを間違えることによって、相当大きな混乱が生じます。ですから、これはまた、NHK及び民放連に対して、当確放送については慎重にお願いしたい旨を、要請したいと考えております」
上出義樹フリーランス記者「ちょっとよろしいでしょうか。実際の文章はそんな、今回の自民党のようにですね、事細かく書いているわけじゃなくて、抽象的な形で国民の信頼を得るようにと言っているんですけども、これを書くこと自体がプレッシャーになったりとかですね、公的な権力と言ったらあれですが、そういう政党の与党とか、そういうところが出すこと自体が圧力になるんだという考え方の意見も聴かれます。それについては如何でございますか。
高市早苗「やはり、報道の自由、国民の知る権利というところには十分配慮しているからこそ、番組の個別の内容に立ち入ることなく、ただ、当確放送については過去に間違いが、残念ながらございまして、それは本当に大混乱を生じさせる結果となりました。
当該選挙区の有権者の方にとっても、それは大変なことでございますし、特に立候補された御本人やその支援者にとっては、バンザイをした後に、残念だったということでお詫びに回られたり、反対に、落選をされたといったことの中で、皆さんが、がっかりしてお帰りになって、その後、そうではなかったことが判明したり、そういったことがありましたので、あくまでも放送法第4条の公平であること、また、報道は事実を曲げないということ、これに従って、しっかりした報道をしていただくことを要請する、特に当確放送については、慎重にすることを要請するといった趣旨でございます」(以上)
上出義樹氏が最初に取り上げたのは自民党が11月20日、「自由民主党 筆頭副幹事長 萩生田光一/報道局長 福井 照」の差出し人名で在京テレビキー局の編成局長、報道局長宛てに、各政党からのテレビ出演者の発言回数や発言時間、ゲスト出演者の選定、「テーマごとの議論に関して特定の立場から特定政党出演者への意見の集中」と街角インタビューや資料映像等使用に関しての一方的な意見の偏り、あるいは特定の政治的立場の強調等々に留意し、公平中立・公正を期すよう、文書で要請したことを指す。
このことは明らかに政治的介入だと、11月28日の当ブログ記事、――《安倍晋三と側近たちのテレビ局にアベノミクスを評価する声をもっと出せと情報操作を要求する時代錯誤な圧力 - 『ニッポン情報解読』by手代木恕之》に書いた。
上出義樹氏は総務省が平成7年からマスコミの選挙時の当選確実報道に誤報があるからと、要請という形で誤報がないように求めていたが、民主党政権時代に中止していた要請を自民党は去年の参議院選挙から復活したと言い、今回の総選挙でも要請するのかと、言論の自由に対する政治の圧力に当たるのではないかという文脈で尋ねた。
対して高市早苗は、我々は「報道の自由、国民の知る権利というところには十分配慮しているからこそ、番組の個別の内容に立ち入ること」はないと断言しながらも、「当確放送については過去に間違いが、残念ながらございまして、それは本当に大混乱を生じさせる結果とな」った、「あくまでも放送法第4条の公平であること、また、報道は事実を曲げないということ、これに従って、しっかりした報道をしていただくことを要請する、特に当確放送については、慎重にすることを要請するといった趣旨」でテレビ局にお願いをすると答えている。
確かに当選もしていないのにテレビ局から当確を伝えられて支持者共々バンザイしたところ、後になって当選は幻で、落選が現実だと知らされたなら、当の候補者から見たなら非常に大きなショックを伴う悲劇、第三者から見たら喜劇となる。
しかし外部の人間に対して大きな迷惑を掛けたとしても、これは放送局内の選挙速報チームの責任問題である。迷惑をかけた相手に対して何らかの謝罪をし、問題を起こしたチームに対しては原因を究明して、そこに重大な間違いがあったなら、局側が何らかの懲罰を与えて、二度と間違いを犯さないような体制を取ることがテレビ局としての責任の取り方であるはずである。
また、間違えられた方も一つの局の報告だけではなく、他の局の報告まで待つ慎重さが必要である。当選したい一心から、つい信じてしまうのだろうが、そうだとしても、「原発神話」ならぬ「報道神話」に陥っていることになる。特に過去に間違いがあるなら、尚更慎重な姿勢が必要となる。
もし精神的な被害を受けたということなら、当確を間違えられた候補者が抗議するなり、精神的苦痛を被ったといった損害賠償の裁判を起こすなりして、報道の責任を追及すればいい。
投票用紙の数え方は各投票所の投票箱を体育館等の広い場所に集めて、中の票をそれぞれの候補者に仕分けて、テーブルの上に候補者ごとの山にし、その山が全て同一候補者の投票用紙であるか間違いがないかを再度読み直す確認をしてから、候補者ごとの票を機械にかけて票数を読み取る方法を取ると聞いたことがある。
各陣営の関係者がその投票所に出張って、山ごとに候補者名を記したカード立てがテーブル上に置いてあるか、名前を書いた紙をテーブルの端にセロハンテープで貼ってあるかして、自分の候補者の山を確認して、その大きさで当落の検討をつけるそうだ。
もし間違えるとしたら、似た大きさの山があって、どちらが多いか少ないかの判断を取り違えたといったことから起きるのかもしれない。
候補者を確認する目印が何もなければ、開票に関わる市町村職員に渡りをつけておいて、指で差して貰うかして確認できるはずだ。
テレビ局にしても世論調査や出口調査だけではなく、投票用紙の山を見て当落を予想する同じ方法を取るはずだ。なぜなら、すべての投票所で出口調査を行っているわけではないし、世論調査で支持政党や候補者を決めていない有権者が殆どの場合、最も多い数を占めているから、誰に投票するのか、棄権するのか、世論調査だけでは判断がつかないからだ。
当確の間違いが、間違えられた当人にとっては大きな間違いであったとしても、当確の最終判断は報道機関が握っているわけではないのだから、政治的な意味合いを持っているわけではなく、あるいは政治的な意味合いから故意にそうすることもできないはずで、単なる手続き上の過ちに過ぎない。
にも関わらず、総務省の方から当確放送は間違いないように慎重に報道するように要請する方針だという。
その理由として、過去の間違いを挙げた。
一見、正当性ある理由に見えるが、報道に対する個々の報道人の責任感からの自己規律に対してそこに政治がさざ波を立てることになる。このさざ波が当確放送に限るならまだしも、過去に於いてNHKが安倍晋三や中川昭一などの政治家の意図を忖度してテレビ番組の内容を変更したと高裁が判決したことは政治介入に等しい何らかの接触の存在があったからこそのNHKの政治家の意図の忖度であり、安倍晋三が11月18日、TBS「NEWS23」に出演したとき、景気の実感を街行く人にインタビューした際のアベノミクスに否定的な街の声に対してテレビ局側が人を選んだのではないかと情報操作を疑う言葉を発信したことは政治家の側から番組の手続きを規制したい欲求があったからであり、その2日後に、上出義樹氏が高市早苗に対する質問で指摘していた、安倍晋三側近名で在京テレビキー局の編成局長、報道局長宛てに出した放送内容についてのこまごまとした要請は、公平中立・公正を期すことを要請すると称しているものの、明らかに安倍晋三のテレビ番組に対する政治家側からの規制欲求を具体的な形に現した要請であり、政治介入以外の何ものでもない。
そしてこのような度重なる情況から考えると、安倍晋三とその同類たちは公平中立・公正の名の下、自分たちに都合の良い報道を欲し、都合の悪い報道は規制したい政治介入の欲求を体質として抱えていると判断しないわけにはいかない。そうである以上、当確放送程度の要請であっても、他との関連から報道側は政治介入の思惑を忖度せざるを得ないことになる。
忖度は報道機関側の自己規律が報道に対する自身の在り様の模索であるのに対して自然と政治の意思に対する自己の在り様の模索へと変質しかねない危険性を抱えることになる。
前者の自己規律は自発的・内発的であるが、後者は他発的・外発的となる。ジャーナリストとして、あるいはジャーナリスト集団(=各テレビ局)として、自らの判断で立たずに政治の判断で立つことになる。
勿論、報道機関側が如何なる政治介入をも跳ねつける強い意志を持っているなら、問題は生じない。
だが、この程度なら政治介入に屈したことにはならないとほんの小さな妥協を行った場合、それが小さな妥協に応じた小さな自己規制であったとしても、自己規制であることに変わりはなく、そういったことが誘因となって度重なることになり、自己規制を常態化させた場合、政治家側が自分たちの要求は何でも通ると受け止めることになって、政治家側と報道機関側双方から政治介入のさらなる常態化を誘導することになって、民主主義にとって非常に危険な状況に陥ることになる。
例えそういった危険な状況に陥らずとも、政治家側の政治介入こそ、自己規制すべきだろう。自己規制できない状況を見かけたなら、特に安倍晋三とその同類たちが政治介入の体質を抱えている以上、国民の側が厳しい自己規制を求める声を上げる必要がある。
生活の党PR
《11月30日(日)小沢一郎生活の党代表 テレビ出演のご案内》
番組名:NHK『日曜討論』 (生放送)
日 時:平成26年11月30日(日)9:00~10:15 (※放送枠拡大)
内 容:迫る公示 党首討論(仮)
○“アベノミクス”の是非について
○景気の好循環をどう実現するか
○消費税率10%への引き上げ延期と財政再建について
○安倍外交2年の評価について
○安全保障法制について
番組の詳細はこちらから 『日曜討論』番組サイト(意見を投稿できます。)
11月26日、安倍晋三が朝日新聞のインタビューに応じて集団的自衛権に関して次のように発言したという。
安倍晋三「解釈の変更については、それは憲法改正をしなければ、これ以上はできないということだろうと思う。
基本的に(過去の)政府見解に則って変えた。これ以上変えていくには、基本的な考え方自体を変える必要がある。それは憲法解釈についての継続性、安定性を損なう。現時点で、国民の命を守るためにやらなくてはいけない解釈の変更は、今回の変更で十分だろうと考えている」
安倍内閣は憲法解釈変更による集団的自衛権行使容認を今年2014年7月1日に閣議決定している。これ以上憲法解釈を変更するのは「憲法解釈についての継続性、安定性を損なう」から、憲法改正が必要だと言っている。
このことの裏を返すと、憲法改正を経ずに憲法解釈変更のみで集団的自衛権の行使容認を認めることができるのは今回のケースまでだと言っていることになり、自身の憲法解釈変更に自分で正当性のお墨付きを与えていることになる。
自らお墨付きを与え、これ以上の変更は憲法改正しかないとすることで国民の納得を得ようという魂胆なのだろう。
正当性を判断するのは国民であるから、これ程手前勝手なお墨付きはないし、その魂胆にしても心がけがいいとは言えない。
7月1日の閣議決定後の各マスコミの世論調査では安倍内閣支持率は軒並み下げて、低いところでは40数パーセントとなった。閣議決定が一つの節目となって、国民の憲法解釈変更による行使容認反対の意思がマイナスの力を伴って内閣支持率に改めて反映されたということであろう。
このことは閣議決定に当たって十分な議論が行われたとは思えないという国民が多数派を占めたところに現れている。
いわば国民の多くは憲法改正の手続きを踏むべきだと考えているにも関わらず、憲法解釈を手段とすることの是非についての時間をかけた丁寧な議論も行わずに閣議決定したことを不誠実だと見た。
多くの国民のこのような意思表示に対して安倍晋三は憲法解釈変更に自分で勝手に正当性のお墨付きを与えた。独善的としか言い様がないが、その根拠を「基本的に(過去の)政府見解に則って変えた」と、「1972年の自衛権に関する政府見解」に置いた。
いわば勝手に憲法解釈を変更したわけではない、政府見解の範囲内だと、そこに正当性を置いている。
だとしたら、政府見解の範囲内の憲法解釈にとどまり、尚且つそれが「憲法解釈についての継続性、安定性」は損なうことなく維持できているとしさえすれが、さらなる憲法解釈変更は可能とすることができることになって、安倍晋三のインタビュー発言と矛盾することになる。
このことに多くの国民や野党は危険性を嗅ぎ取ったはずである。閣議決定で憲法解釈を変えることが可能になると、内閣が変わるたびに解釈が変わる可能性が生じて、法的な安定性は損なわれると。
だから、「解釈の変更については、それは憲法改正をしなければ、これ以上はできない」と自分から制限を設けて国民の納得を得て、憲法解釈のみで済まそうと魂胆したということなのだろう。
そもそもからして安倍晋三の集団的自衛権の行使容認に関わる憲法解釈が1972年の政府見解に則っていると言っていること自体、虚偽そのものである。政府見解は個別的自衛権は認めているが、集団的自衛権は憲法上許されないとしているからだ。
このことは2014年7月8日の当ブログ記事――《NHK「日曜討論」石破が言う安全保障環境の時間と距離の短縮を和らげる外交努力を安倍晋三はしていのか - 『ニッポン情報解読』by手代木恕之》に既に書いたが、改めて触れてみる。
『1972年の自衛権に関する政府見解』(全文)
〈国際法上、国家は、いわゆる集団的自衛権、すなわち、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにかかわらず、実力をもって阻止することが正当化されるという地位を有しているものとされており、国際連合憲章第51条、日本国との平和条約第5条、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約前文並びに日本国とソビエト社会主義共和国連邦との共同宣言3第2段の規定は、この国際法の原則を宣明したものと思われる。そして、わが国が国際法上右の集団的自衛権を有していることは、主権国家である以上、当然といわなければならない。
ところで、政府は、従来から一貫して、わが国は国際法上いわゆる集団的自衛権を有しているとしても、国権の発動としてこれを行使することは、憲法の容認する自衛の措置の限界をこえるものであって許されないとの立場にたっているが、これは次のような考え方に基づくものである。
憲法は、第9条において、同条にいわゆる戦争を放棄し、いわゆる戦力の保持を禁止しているが、前文において「全世界の国民が平和のうちに生存する権利を有する」ことを確認し、また、第13条において「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、……国政の上で、最大の尊重を必要とする」旨を定めていることからも、わが国がみずからの存立を全うし国民が平和のうちに生存することまでも放棄していないことは明らかであって、自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛の措置をとることを禁じているとはとうてい解されない。
しかしながら、だからといって、平和主義をその基本原則とする憲法が、右にいう自衛のための措置を無制限に認めているとは解されないのであって、それは、あくまで外国の武力攻撃によって国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底からくつがえされるという急迫、不正の事態に対処し、国民のこれらの権利を守るための止(や)むを得ない措置としてはじめて容認されるものであるから、その措置は、右の事態を排除するためとられるべき必要最小限度の範囲にとどまるべきものである。そうだとすれば、わが憲法の下で武力行使を行うことが許されるのは、わが国に対する急迫、不正の侵害に対処する場合に限られるのであって、したがって、他国に加えられた武力攻撃を阻止することをその内容とするいわゆる集団的自衛権の行使は、憲法上許されないといわざるを得ない。〉(以上)
要約すると、〈国際法上、国家は、いわゆる集団的自衛権、すなわち、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにかかわらず、実力をもって阻止することが正当化されるという地位〉は、〈主権国家である以上、当然〉有しているが、日本国憲法が国民に約束し、国家権力に国民に約束したことの違約に制約を加えている平和主義の精神に則った場合、〈自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにかかわらず、実力をもって阻止する〉集団的自衛権まで認めているとすることはできず、あくまでも〈わが国に対する急迫、不正の侵害に対処する〉個別的自衛権までが許されるとしている。
その結論部分が、誰が見ても分かるように最後の、〈他国に加えられた武力攻撃を阻止することをその内容とするいわゆる集団的自衛権の行使は、憲法上許されないといわざるを得ない。〉に当たる。
この政府見解が暗に言っていることは、もし集団的自衛権を国家として行使しなければならない安全保障上の環境に迫られた場合は国民の理解を得て、憲法を改正しなさいということであろう。
あるいは憲法を改正する以外は集団的自衛権の行使は許されないと暗に言っているはずである。
だが、安倍晋三はこの政府見解を勝手に解釈して、「基本的に(過去の)政府見解に則って」憲法解釈を変えたとインタビューに答えている。しかも、集団的自衛権に関わる憲法解釈変更はここまでだと、勝手に自身の変更に正統性のお墨付きを与えて、国民を納得させるダシにしようとした。
多くの国民の意思を無視した薄汚い正当性の自己付与としか言い様がない。
生活の党PR
《1月28日(金)深夜 松崎哲久政審会長代理テレビ出演のご案内》
番組名:テレビ朝日『朝まで生テレビ!』(生放送)
日 時:平成26年11月29日午前1:25~午前4:25
内 容:《激論!総選挙直前!これでいいのか?!日本の政治》
○今回の総選挙、ネーミングはこれだ!
○もし政権を取ったら第一にこれをやる!
○“安倍政治”の2年間をどう見るか?
《11月29(土) 小沢一郎代表『ニューズ・オプエド』(NOBORDER)生出演ご案内》
番組名:ニコニコ生放送『衆院選2014】ネット党首討論』
日 時:11/29 (土)20:00~21:30(予定)
出演者:小沢一郎 代表
小沢一郎 公式サイト
内 容:衆議院総選挙に向けて各党代表が集まり、ネット視聴者に向けた討論を実施。
ネット視聴者から事前に質問を募集し、ニコニコ生放送のアンケートで選ばれた質問も実際に党首に投げかけます。
11月18日、安倍晋三がTBS「NEWS23」に出演して、番組が景気の実感を街行く人にインタビューした、いわゆる街の声を聞いて、テレビ局がさも情報操作紛いのことをしているような発言をしたとマスコミが伝えていたので、ネット上の動画から、関連部分を文字起こししてみた。文飾は当方。
情報操作を疑うだけならいい。だが、疑うだけで終わらずに、その情報を自分の側に都合のいい方向に操作しようとする何らかの行動に出たとしたら、問題である。
男性(30代?)「誰が儲かってるんですかねえ。株価とか、色々上がってますからねえ。僕は全然恩恵受けていないですね。給料上がったのかなあ、上がっていないですよ(半ば捨鉢な笑い声を立てる)」
男性(3、40代?)「仕事量が増えているから、給料が、その分、残業代が増えているぐらいで、何か景気が良くなったとは思わないですねえ」
男性(4、50代?)「今のまんまではねえ、景気も悪いですし。解散総選挙して、また出直し?民意を問うて、やればよろしいじゃないですか」
男性(5、60代?)「株価も上がってきたりとか、そういうこともありますし、そんなに、そんなにと言うか、効果がなかったわけではなく、効果はあったと思う」
30代後半と見える女性二人連れ。
女性「全然アベノミクスは感じていない」
女性(子供を抱いている)「株価は上がった、株価は上がったと言うけど、大企業しか分からへんちゃうの?」
安倍晋三(ニコニコ笑いながら)「これはですね、街の声ですから、皆さん選んいると思いますよ。もしかしたら。
だって、国民総所得というのがありますね。我々が政権を取る前は40兆円減少しているんですよ。我々が政権を取ってからプラスになっています。マクロでは明らかにプラスになっています。ミクロで見ていけば、色んな方がおられますが、中小企業の方々とかですね、小規模事業者の方々が名前を出して、テレビで儲かっていますと答えるのですね、相当勇気がいるのです。
納入先にですね、間違いなく、どこに行っても、納入先にもですね、それだったら(儲かっているなら)、もっと安くさせて貰いますよと言われるのは当たり前ですから。
しかし事実6割の企業が賃上げしているんですから、全然、声反映されていませんから。これ、おかしいじゃないですか。
それとですね、株価が上がれば、これはまさに皆さんの年金の運用は、株式市場でも運用されていますから、20兆円プラスになっています。民主党政権時代は殆ど上がっていませんよ。
そういうふうに於いても、しっかりとマクロで経済を成長させ、株価が上がっていくということはですね、これは間違いなく国民生活にとってプラスになっています。資産効果によってですね、消費が喚起されるのはこれは統計学的に極めて重視されていくわけです。
倒産件数はですね、24年間で最も低い水準にあるんですよ。これもちゃんと示して頂きたいと思いますし、あるいは海外からの旅行者、去年1千万人、これは円安効果。今年は1千300万人です。
で、日本から海外に出ていく人たちが使うおカネ、海外から日本に入ってくる人たちが使うおカネ、旅行収支と言うんですが、長い間日本は3兆円の赤字です。ずっと3兆円の赤字です。これが黒字になりました。
(司会の岸井成格が口を挟もうとするが、口を挟ませずに)黒字になったのはいつだったと思います?大阪万博です。1970年の大阪万博です、1回、あん時になりました。あれ以来ずっとマイナスだったんです。これも大きな結果なんですね。
ですから、そういうところをちゃんと見て頂きたい。
ただ、まだデフレマインドがあるのは事実ですから、デフレマインドを払拭するというのはですね――」
ここで岸井成格がやっと口を挟む。中小零細企業や低所得者は好循環は実感できていないのではないのかといったことを質問したのに対して安倍晋三は、まだ政権を取って2年しか経っていないとか、個人消費の底上げや地方経済の底上げを図っているといったこと、野党が選挙準備が整っていないからといって12月の選挙に反対するのは、政権を取ることを使命としているはずだから、野党としての責任放棄だとか発言していたが、情報操作という当ブログの趣旨に関係したいために省略する。
安倍晋三は全体的にはアベノミクスに否定的な街の声に対して、「街の声ですから、皆さん選んいると思いますよ。もしかしたら」とテレビ局の情報操作を疑い、6割の企業が賃上げしているにも関わらず、「全然、声反映されていませんから。これ、おかしいじゃないですか」と同じく情報操作を疑い、倒産件数が減っていることを「これもちゃんと示して頂きたいと思います」と、偏った報道であるかのように言っている。
これらの疑惑はアベノミクスが格差を拡大しているという認識がゼロであることから明らかに発している。その結果、家計等のミクロ経済を無視して、安倍晋三お得意のフレーズ「地球儀を俯瞰する外交」ならぬ国家全体を俯瞰したマクロ経済だけを言い立てることになっている。
いわば都合のいい統計だけの提示となっている。都合のいい統計のみを選択し、格差等の都合の悪い統計や情報は排除するという自身の情報操作には気づいていない。
このことは「24年間で最も低い水準」と言い、「これもちゃんと示して頂きたいと思います」と言っている倒産件数に最も如実に現れている。
東京商工リサーチと帝国データバンクの調査を載せた《企業の休業・廃業・倒産件数》を見ると、確かに倒産件数は年々減少している。だが、休廃業・解散件数は逆に増えている。
東京商工リサーチと帝国データバンクとで、統計にズレがある。
東京商工リサーチ
2011年 2012年
休廃業・解散件数 25743件 休廃業・解散件数 27825件
倒産件数 12743件 倒産件数 124124件
帝国データバンク
2011年 2012年
休廃業・解散件数 25008件 休廃業・解散件数 26050件
倒産件数 11435件 倒産件数 10710件
二つの調査共に休廃業・解散件数は倒産件数の2倍以上で、倒産件数の減少に対して逆に増加している。
休廃業・解散は十分に利益を上げていれば、誰かが継ぐだろうし、人手も集まってくるから、身内の後継者不足や人手不足(従業員不足)だけが理由ではなく、利益が上がらない、あるいは先の見込みがないといったことから、倒産の手前でいわば仕事を畳むという意味での休廃業・解散の形を取るということであろう。
街の声にしても、既に世論調査に現れている国民の声である。
11月22日と23日実施の「FNN」の世論調査。
「安倍政権のもとで景気回復を実感している」 16.6%
「実感していない」 79.7%
11月1、2日実施の「JNN」の世論調査。
「アベノミクスによる景気回復について
「実感はない」 89%(先月比+2ポイント)
「実感がある」 8%(先月比-2ポイント)
11月3日、4日実施の「読売新聞」の世論調査。
安倍内閣のもとで景気回復を「実感していない」 76%。
「実感なし」の原因は誰もがそう見ているように何よりも名目賃金は上がっていても、実質賃金が上がっていないことにあり、このことが個人消費が伸びない要因となっていることからの「実感なし」であろう。
内閣府が毎月行っている、小売店の従業員やタクシーの運転手等、働いている2000人余りを対象に景気に対する実感を聞く「景気ウォッチャー調査」にしても、消費税増税に対する駆け込み需要の反動減を乗り越えて消費が上向いていい時期であるのに、前月比-3.4ポイントの44.0ポイントと減っている。
2014年10月の一般世帯の「消費者態度指数」は前月比-1.0ポイントの38.9、やはり減少している。
「雇用環境」44.7ポイント(前月比-1.9ポイント)
「耐久消費財の買い時判断」36.5ポイント(前月比-1.3ポイント)
「暮らし向き」36.4ポイント(前月比-0.7ポイント)
「収入の増え方」38.0ポイント(前月比-0.2ポイント)
「資産価値」43.3ポイント(前月比+0.2ポイント)
上昇しているのは資産価値に関する意識のみで、減少対上昇の相違からは格差の光景しか見えてこい。
要するに安倍晋三は格差の認識もなく、自分に都合のいい統計を駆使し、強弁する逆の情報操作を用いてテレビ局が情報操作を行って、アベノミクスのマイナス面を強調しているのではないかと疑った。
これがここで終わるなら、まだいい。安倍晋三がTBS「NEWS23」に出演して、自身の情報操作は棚に上げて「街の声ですから、皆さん選んいると思いますよ。もしかしたら」とテレビ局の情報操作を疑ったのは11月18日。その2日後の11月20日、「自由民主党 筆頭副幹事長 萩生田光一/報道局長 福井 照」の差出し人名で在京テレビキー局の編成局長、報道局長宛てに文書が送られてきたという。
《安倍自民党がテレビ各局に文書で圧力》(リテラ/2014.11.27)
〈選挙時期における報道の公平中立ならびに公正の確保についてのお願い
さて、ご承知の通り、衆議院は明21日に解散され、総選挙が12月2日、14日投開票の予定で挙行される見通しとなっています。
つきましては公平中立、公正を旨とする報道各社の皆様にこちらからあらためて申し上げるのも不遜とは存じますが、これからの期間におきましては、さらに一層の公平中立、公正な報道にご留意いただきたくお願い申し上げます。
過去においては、具体名は差し控えますが、あるテレビ局が政権交代実現を画策して偏向報道を行い、それを事実と認めて誇り、大きな社会問題となった事例もあったところです。
・出演者の発言回数及び時間等については公平を期していただきたいこと
・ゲスト出演者の選定についても公平中立、公正を期していただきたいこと
・テーマについて特定の立場から特定政党出演者への意見の集中がないよう、公平中立、公正を期していただきたいこと
・街角インタビュー、資料映像等で一方的な意見に偏る、あるいは特定の政治的立場が強調されることのないよう、公平中立、公正を期していただきたいこと〉――
記事は、〈おそらく、この最後の街頭インタビューのくだりが、この文書の最大の目的だろう。陰謀論に凝り固まった安倍首相が『NEWS23』に怒りを爆発させ、「街頭インタビューをつぶせ!」と指令を下したのは想像に難くない。〉と反安倍も露わに解説しているが、安倍晋三がテレビに出演してテレビ局の情報操作を疑った2日後だから、このように解説されても無理はない。
安倍晋三もその発言から、安倍の側近である萩生田も、これも側近なのだろう、福井照も、要望書の趣旨から、その他の仲間も加えてのことに違いないが、テレビ局は、あるいは新聞も含めて、情報操作を用いた偏向報道に侵されていると信じていることが分かる。
だが、実際はテレビ局は厳格に公平中立・公正を期している。世論調査で、7、80%の国民がアベノミクスによる景気回復に「実感なし」としているのである。街の声に10人登場させたとしたら、7、8人は「実感なし」を訴え、2、3人のみが「実感あり」としなければならない。
「NEWS23」は街の声に5人登場させて、アベノミクスの効果を評価したのは1人。残る4人は「実感なし」とした。意図したことかどうか分からないが、これ程公平中立・公正を期した登場のさせ方はない。十分率に換算すると、世論調査通りの割合となる。
このことを無視して、公平中立・公正を期せと要求するのは、国民の実態を歪めてアベノミクスを評価する声をもっと出せと情報操作を要求する圧力以外の何ものでもなく、この手の要求願望は安倍晋三やその一派にとって、奴らの偉大で古き良き時代の戦前の感覚かもしれないが、戦前では通用したとしても、基本的人権が憲法で保障されている今の民主主義の時代に通用するはずもない報道の自由・思想信条の自由、あるいは表現の自由の時代錯誤な侵害に当たる。
常々言っているように安倍晋三の危険性はこのような国民の人権無視の衝動を内包した国家主義にある。
生活の党PR
《生活の党2014年衆議院総選挙重点政策》
小学4年生放送部の「中村」君が「#どうして解散するんですか?」名のサイトを立ち上げて、衆院を解散した安倍晋三首相に疑問をぶつけたものの、多分、その主張に小学4年生らしからぬ臭いを嗅ぎ取られて、少なからぬ訪問者から非難混じりの疑問が投げつけられることになったのだろう、NPO法人「僕らの一歩が日本を変える。」代表理事の慶応大学2年生青木大和(20)氏がサイト作成者は自分だと名乗り出て、非難・批判・誹謗・中傷などのコメントが殺到して炎上状態になったという。
安倍晋三がこの偽装に反応して、自身のフェイスブックに一文を寄せたところ、このことがまた話題となって、マスコミやインターネットで取り上げられることになり、「大人気ない」とか、「余裕ない」といった批判を受けることになった。
どういった一文なのか、安倍晋三のフェイスブックからブロックされていてアクセスできないから、直接知ることができない。インターネット上にその一文を載せている画像が貼り付けてあったから、水谷豊の『相棒』の鑑識課米沢守になった気分で、と言ったら大袈裟かもしれないが(これも偽装かな?)、画像を拡大して読み取ってみた。
安倍晋三「小学生による投稿と言われ巷で話題となった『どうして解散するんですか?』ですが、今回『NPO法人 僕らの一歩が日本となる』代表理事の大学生が小学生になりすまし行っていた事が明らかになりました。
批判されにくい子供になりすます最も卑劣な行為だと思います。
選挙目当ての組織的な印象操作ではないでしょうが、選挙は政策を競い合いたいと思います」(以上)
相変わらずトンチンカンな認識能力を曝け出している。子供が「批判されにくい」からと言って、子供になりすましたわけではないだろう。大学生は、「今、なぜ解散なのか」と感じた自身の素朴な疑問を小学生も感じる素朴な疑問だと思わせたくて、そのように世間に流布させて解散を批判したかったから、小学生を名乗ったのではないのか。
商品を売り込むためにキャッチコピーを多くの消費者の頭に刷り込むことを狙うように、「小学生さえ疑問に感じる解散だ」とキャッチコピー紛いに多くの有権者の頭に刷り込むことを狙い、それが成功したなら、反安倍につなげることげできると。
但し疑問に感じたなら、自分の考えと自分の言葉で解散を正々堂々と批判する主張を展開して反安倍につなげるべきだったことは認める。小学4年生を騙(かた)ったことは周囲を騙したことになるが、その過ちは考えが浅いことから来ている軽率程度で、「最も卑劣な行為」との断罪は、一国の首相であるという立場からしたら、事実大人気ないし、過剰反応に過ぎる。
安倍晋三が大人気もなく過剰反応するということは「どうして解散するのか」、そのことを過度に意識していることの裏返しであろう。
安倍晋三は11月21日の解散表明記者会見で「アベノミクスを前に進めるのか、それとも止めてしまうのか。それを問う選挙であります」と言って解散を表明し、「この道しかない」と自信を持って「アベノミクス」に信頼を置いた。
だったら、解散に関しては胸を張っていればいいことで、「どうして解散するのか」を過度に意識することはないはずである。「どうして解散するのか」は、選挙に勝つことで結果的に「この道しかない」ことを国民に知らしめるためだとすれば片付く話である。
いわば「この道しかない」ことのみを過度に意識し、常に過剰反応の対象にしていればいい。
但し「この道しかない」ことの最終的な正解はまだまだ先のことである。
だが、「どうして解散するのか」に過剰反応した。しかも「最も卑劣な行為」だと激しく非難した。
この心理学を解くとしたら、大学2年生の小学4年生を偽装したことを「最も卑劣な行為」だと非難することで目立たせて、自身が過度に意識している「どうして解散するのか」の疑問を逆に目立たなくさせようとする意図を働かせたという答を見い出すことができる。
だから、解散の正当性に対する疑問に一言も言及せずに、「選挙は政策を競い合いたいと思います」と、政策の競い合いを前面に押し出した。
簡単に言うと、大学2年生だけではなく、多くの有権者が抱いている「どうして解散するのか」、安倍晋三が決めた解散の正当性に対する疑問を打ち消したいだけの程度の低さしか認めることができない。
安倍晋三のフェイスブックへの批判的なコメントの書き込みを一国の首相当立場上、正々堂々と受け止めて、我が道を行く姿勢を示さずにブロックすることの方が「最も卑劣な行為」である。
また、「選挙は政策を競い合いたいと思います」と言っているが、政策はいくら言葉で公平性や平等性を装おうとしても、主義主張や人柄が現れる。格差を大して問題視していなから、非正規社員が増えていることを無視して、雇用の全体だけを把えてその増加を言い立てることができる。
政策の競い合いは主義主張や人柄の競い合いでもある。解散が支持率が下がる前に手を打った長期政権狙いだとか、閣僚の政治資金規正法等の違反に終止符を打つためだとかの不純な動機が疑われている。
安倍晋三は勿論、否定するだろうが、安倍晋三の最たる主義主張となっている国家主義や人柄も、政策に最も密接に影響する以上、争点とすべきであろう。
――安倍晋三の総選挙は結局国民の生活を考えてのことではなく、アベノミクスの成功と政権運営だけを考えている――
自民党の野田毅税調会長と公明党の北側一雄副代表が11月19日に国会内で会談して、2017年4月に軽減税率導入を目指すことで合意したと、《軽減税率、消費増税と同時に…首相が自公公約に》(YOMIURI ONLINE/2014年11月20日 03時00分)が伝えている。
合意に基づく公約案に「2017年度からの導入を目指して対象品目、区分経理、安定財源などについて早急に具体的な検討を進める」と明記したという。次期衆院選の自民、公明両党の共通公約とする意向だそうだ。
記事は解説している。〈自公両党は昨年末、軽減税率を「消費税率10%時」に導入することで一致しており、公明党は2015年10月の10%への引き上げ時の導入を求めていた。これに対し、自民党は「制度設計が間に合わない」と引き上げ時の導入に難色を示していたが、増税の1年半先送りを首相が表明し、時間的な制約が解消された。政府・与党は15年度の与党税制改正大綱に同時導入を目指すことを盛り込む考えだ。対象品目について、首相は「専門的な話だから、税調で議論していただきたい」と語った。〉――
記事は11月19日の読売新聞のインタビューに対する安倍晋三の発言をほんのちょっぴり載せている。
安倍晋三「専門家同士が合意したということになれば、共通の選挙公約ということで議論を進めているのだろう」(以上引用)――
要約すると、自公両党は昨年末、軽減税率を「消費税率10%時」に導入することで一致していたが、野田・北側会談で10%増税が先送りになったために2017年4月に軽減税率導入を目指すことで合意、合意に基づく公約案に「2017年度からの導入を目指す」と明記、政府・与党は15年度の与党税制改正大綱に同時導入を目指すことを盛り込む考えを示した。
以上の経緯から見ると、自公両党は十分に意見の一致を果たしたように見えるが、記事は、〈導入時期で両党に認識の違いが残り、対象品目の絞り込みなど導入に向けた課題も多い。〉と、必ずしも一致はしていないことを伝えている。
次の記事を見ると、意見の一致は表向きの装いだったことが分かる。
《軽減税率:導入時期を明記すべきか 足並みそろわぬ自公》(毎日jp/2014年11月24日 22時30分)
自公両党は軽減税率について共通公約で消費再増税との同時導入を目指すことで合意していることを受けて公明党が消費税率10%への引き上げと同時の「2017年4月の導入の実現」を衆院選公約に明記しようとしたところ、自民党から「努力目標にとどめるべきだ」と横やりが入って、調整が難航していると、内幕を伝えている。
これに公明党が反発。
公明党「党の公約は我々で決める」
共通公約は、〈主張通り「2017年4月1日の導入」と読める半面、「4月以降」への先送りにも含みを持たせた文面。軽減税率を衆院選でアピールしたい公明党が時期の明記にこだわったため、本音では導入を先送りしたい自民党が提示した「ぎりぎりの折衷案」(自民党税調幹部)だった。〉
野田毅(11月20日記者会見)「読んで字のごとし。『目指す』は文字通りだ」
斉藤鉄男公明党税調会長「4月1日からの導入を(公約の)柱にする」
自民党税調幹部(公明党の公約の内容を伝え聞いて、11月21日)「そこまでは合意していない。信義則違反だ」
この幹部、共通公約を破棄する可能性まで口にしたという。
公明党幹部「「政党単独の公約にまで注文をつけてくるのは筋違いだ」
記事解説。〈山口那津男代表は衆院解散後、東京都内の街頭演説で「軽減税率導入を目指すことが第一の柱」と訴えた。2012年衆院選と2013年参院選で軽減税率導入を掲げてきた公明党には、主張をさらに進めたいという思惑がある。〉――
要するに野田毅等自民党側は、「目指す」としていることは言葉の意味通り、実現を「目指す」のであって、期日を区切って、“実現させます”という意味で合意したわけでも、約束したわけでもないということなのだろう。
いわば軽減税率導入は“目標”であって、決定ではないと言うことなる。決定には至らない永遠の“目標”にしたいに違いない。
言葉のマジックである。公明党の北側一雄が言葉のマジック過ぎない自民党側の約束に騙されて合意すること自体が間違っている。
10月10日の安倍晋三と習近平国家主席の会談を実現させるために日中が合意した4項目もこのような言葉のマジックを駆使したに違いない。
言葉のマジックは、野田・北川会談合意を反映させているのだから、当然と言えば当然だが、次期総選挙の自民党公約《自民党重点政策2014》(自民党/2014年11月25日)の「軽減税率」に関する言及にも現れている。
〈経済再生と財政健全化を両立するため、消費税率10%への引上げは2017年4月に行います。また、軽減税率制度については、関係事業者を含む国民の理解を得た上で、税率10%時に導入します。2017年度からの導入を目指して、対象品目、区分経理、安定財源等について早急に具体的な検討を進めます。〉・・・・・
「税率10%時」とは税率が10%となる2017年4月を指しているわけではない。2017年4月から消費税率が10%である間ということを意味している。10%以上に増税するまで、「税率10%時」と言うことになるからだ。
「2017年度からの導入を目指して」にしても、「2017年度」は2017年4月から2018年3月までの期間を言うから、その間のいつかということになるが、その間のいつかにしても、既に触れたようにあくまでも“目標”であって、導入決定を約束しているわけではない。
結局のところ、軽減税率を導入したら社会保障費が不足するとか何とか言って、先延ばしにすることになるに違いない。
一見、軽減税率導入に前向きな姿勢を見せているようで、実際は言葉のマジックを用いで導入を回避しようとしている。このこと自体、国民を騙す遣り方そのものである。
株価が大きく上がっても個人消費回復の決定打足り得ていないことの裏を返すと、国民全体から見ると、株所有者はごく少数派で、株を持つ余裕のない国民の方が大多数と言うことなると、何日か前のブログに書いたが、であるなら、世論調査で80%の国民が10%増税と同時の軽減税導入を求めていることからしても、安倍自民党の軽減税率に関わる公約は言葉のマジックで消費税増税で生活を苦しくしている大多数の国民を騙していると同時にそれら国民の生活を頭から追いやった軽減税率導入回避としか言い様がない。
尤も安倍晋三は基本のところでは国民の在り様よりも国家の在り様を優先して現代版富国強兵を目指す国家主義者である。経済的にも安全保障の面でも強い日本になればいいと思っている。国民の給与アップはそのための方便に過ぎない。アベノミクスの成功と長期の政権運営がそれを可能にすると信じている。軽減税率導入回避は当然の措置と見なければならない。
次期総選挙の投票日に安倍晋三の基本の姿をどのように判断して一票を投じるかは、国民の判断にかかっている。
安倍晋三が消費税再増税先送りして解散・総選挙を行うなら、再増税判断有識者「点検会合」は儀式・形式の類いに過ぎなかったことになる。「点検会合」は2015年10月の予定通りの増税賛成派が多数を占めたにも関わらず、それを反故にしたのだから。
10月6日午前の衆院予算委員会で消費税増税判断について次のような質疑があった。
松野「総理、まず、ことし最大のテーマは、消費税の引き上げをいつ決断されるかということでありますが、総理はこれをいつ決断されるつもりでありますか。
安倍晋三「消費税につきましては、伸びていく社会保障費に対応する、そして子育ての支援のための費用を確保する、国の信認を維持する、そうした目的のために消費税を引き上げていくこととしたわけでございますが、同時に、経済は生き物でありますから、経済が打撃を受けている状況、あるいはまた、消費税の引き上げによって経済が腰折れをして、結果として成長がはかばかしくないということになり、デフレ脱却が困難となり、その結果、税収減につながり、よって財政の再建にもマイナスになるようであれば、これは考慮しなければならないわけでございます。
つまり、経済の指標を分析し、判断する必要があるんだろうと思います。そのための指標となるものが7月、8月、9月の指標でございまして、どれぐらいの成長率なのかということでありますが、足元のさまざまな数値が7月、8月、9月とそれぞれ出始めるわけでございますので、昨年も行ったマクロ経済の専門家等による議論を早目にスタートしたい、こう考えているわけでございまして、そうした議論も進めながら、7~9の数字を見て年内に判断をしたい、このように考えております」
「昨年も行ったマクロ経済の専門家等による議論を早目にスタートしたい」とは有識者を集めてそれぞれの判断を伺う「点検会合」のことを指す。第1回は11月4日となっていたから、安倍晋三のこの発言は点検会合の1カ月前の発言となる。
点検会合の「議論を進めながら」と言っているが、「7~9の数字を見て年内に判断をしたい」としている以上、安倍晋三は7~9月期の国内総生産(GDP)速報値を優先させていることになる。
いわば決定権は7~9月期の国内総生産(GDP)速報値が握っていることになる。この速報値が安倍晋三の判断基準となるということである。
だとしたら、この発言から1カ月後に「点検会合の」を開く必要があったのだろうか。
《「今後の経済財政動向等についての点検会合」について》(内閣府/2014年11月4日)には次のように書いてある。
〈消費税率の10%への引上げについては、「税制抜本改革法」にのっとって、経済状況等を総合的に勘案して、判断を行うこととされている。その際の参考とするため、今後の経済財政運営に、どのような留意点があり、対応が求められるか、幅広く国民各層の有識者・専門家を招いて意見を伺うべく、昨年と同様「今後の経済財政動向等についての点検会合」を開催する。〉
有識者・専門家は計45名。場所は現在は右翼の巣窟首相官邸。
11月4日第1回。(全般的な観点から)
5人が予定通りの再増税増税
3人が増税時期の延期
11月13日第2回。(国民生活・社会保障の観点から)
再増税賛成4人
反対3人
11月14日第3回 。(地方・地域経済の観点から)
6人が予定通りの再増税賛成
1人が増税延期
2人が賛否保留
11月17日第4回。(経済・金融の観点から)
8人が再増税賛成
2人が引上げに反対
11月18日第5回。(経済・産業の観点から)
7人が賛成
1人が延期
1人が賛否保留
この賛成の打率は30人、6割7分の67%だとマスコミが伝えていた。反対は2割2分の22%、45人中10人の貧打。賛否保留が5人。バッターボックスに立たなかった。
既に9月8日の時点で内閣府は2014年度第1四半期(4月~6月)GDP確定値を物価変動を除いた実質で前期比マイナス1.8%、年率換算マイナス7.1%と発表していた。さらに 日銀が8月上旬から9月上旬にかけて行った個人の景気判断は2期連続の悪化を示し、内閣府発表の8月の景気動向指数は2カ月ぶりに悪化、10月1日発表の「景気が良いと答えた企業から悪いと答えた企業」を引いた日銀9月短観(企業短期経済観測調査)は大企業の製造業の景気判断はプラス13ポイントと小幅ながら2期ぶりに改善したものの(実質的には横ばいだそうだ)、大企業の非製造業は小売り等が悪化、プラス13ポイントと前回を6ポイント下回り、2期連続で悪化、中小企業の製造業が前回を2ポイント下回ってマイナス1ポイント、非製造業は前回を2ポイント下回って0ポイント、双方共に2期連続の悪化と、景気を示す各指標は芳しい内容ではなかった。
いわば7~9月期のGDPは前以て予測がついていた。そのような予測を前提として安倍晋三は点検会合開催の1カ月前から7~9月期の国内総生産(GDP)速報値を判断基準として予定通りに増税か、先送りかを決めるとし、そして速報値の11月17日発表を受けて先送りを決めたばかりか、衆議院を解散までした。
当初からGDP速報値を判断基準とすることを既定路線としていて、それを貫いたことになる。そのために45人も集めて5回も開催した「点検会合」の予定通り2015年10月消費税10%増税賛成多数を反故にした。
このような経緯からも、やはり「点検会合」に意味があったのか、疑問に感じざるを得ない。
単に体裁を整えるための儀式・形式の類いに過ぎず、時間とカネの壮大なムダではなかったか。
「点検会合」の45名の報酬がどのくらいかは分からない。
2004年7月26日の古い記事になるが、「しんぶん赤旗」が政府の各種審議会でかけ持ちの委員が4人に1人と多数占めていて、委員の最高報酬額は月額131万円だと書いている。
2005年2月27日付の朝日新聞《審議会 見えぬ人選》は、〈元官僚、861ポストに〉という副題で、〈官僚出身と判明した861ポストのうち、、244が経産省関連だった。
・・・・・・・・
厚労省では、会長職が10人。社会保険審査会は常勤6人うち3人が官僚出身者で、委員長は旧厚生省の元局長。委員長、委員共に、月給は114万円6千円だ。〉とある。
要するに政府審議会委員長職・委員職は官僚たちの天下り先になっている。
〈委員長、委員共に、月給は114万円6千円〉だとすると、民間の委員にしても同程度に準じることになる。なぜなら、官僚出身者の方が報酬が高いということになると、それが噂となって広がって特別待遇といった批判に結びつかない保証はなく、役人共はそういった噂や批判を恐れて同程度とするか、あるいは民間の方を少し高くして口止め料のの役目を持たせると同時に自分たちの報酬額を守る手段とするだろうからである。
当然、官僚と民間の間には自ずと慣れ合いの力学が働くことになる。
いずれにしても安倍晋三は最初から「点検会合」の判断を増税するか先送りするかの決定要件としていなかったのだから、出席した顔触れからしても、実質的には儀式・体裁の類いに変じることになった時間と報酬の壮大なムダで終わらせたことになる。
安倍晋三は行政のムダの排除を言いながら、自分からムダを作っている。
現在は絶版になっているが、自由民主党東京都支部連合(自民党都連)事務局広報部長小粥義雄(おがい よしお)が1994年4月に著作した『HITLER ヒトラー選挙戦略』(1994年4月出版)に現在安倍右翼内閣の総務相となっている右翼高市早苗が推薦文を寄せていて、そのことを書いている記事を紹介するツイッターに出会った。
《「説得できない有権者は抹殺」高市早苗推薦、自民党のヒトラー本が怖すぎる》(ライブドアニュース/2014年9月13日 21時45分)
最初の画像はその表紙である。
インターネットで調べたことだが、この書物が出版された1994年4月は38年間続いた自民党単独政権が崩壊し、非自民連立細川政権が誕生した1993年8月から6カ月後のことで、当時既に細川政権から羽田政権に移行していたが、要するに自民党が政権奪取に危機感を抱き、その危機感がヒトラー自身の思想が生み出した選挙戦略に親近性を抱かせたといったところなのだろう。
勿論、便宜的な一時的利用ではなく、独裁的思想を血としているがゆえの拒否感なき親近性でなければならない。この親近性については後で取り上げる。
書物をどのように解説し、どのような内容の記事となっているかはアクセスして貰って理解して貰うことにするが、記事が紹介している高市早苗の推薦文と、書物の一節を紹介している文言を取り上げて、自分なりに解説したと思う。
先ず書物の一節。
選挙活動の過程で「説得できない有権者は抹殺するべきです。この抹殺とは人を殺すことではありません。政治的活動を一切させないように工作することです」・・・・・
記事解説は、〈考えてみると、「「政治的活動を一切させないように工作」というのも相当に恐ろしい。それって、反自民党的な有権者ならびに市民団体や政治勢力を弾圧して、政治に関与させないようにする!ってことじゃないか?〉となっているが、言論の自由、思想・信条の自由の抹殺の意味を込めた“政治活動妨害”であって、独裁的思想を血としていなければこういった発想は生まれないだろうし、だからこそのヒトラーに対する拒否感なき親近性であろう。
このようにヒトラーに対する拒否感なき親近性から著した書物に高市早苗は推薦文を寄せた。同じ右翼の血を持たなければできない。
高市早苗推薦文「著者の指摘通り勝利への道は『強い意志』だ。国家と故郷への愛と夢を胸に、青年よ、挑戦しようよ!」
「国家と故郷への愛と夢を胸に、青年よ、挑戦しようよ!」とは、最終的に国家への奉仕を要求する言葉である。
国家への奉仕は自身を国家と一体化させることである。自身の国家との一体化とは自分なるものを捨てて、国家の思想を自身の思想とすることを意味する。国家を唯一絶対として、お国のために命を投げ打てと言われたら、言われるがままに無条件に命を投げ打つ。
このことはまた個人としての自律性を自ら放棄することに他ならない。自分から考えて、自分の考えで行動することの放棄である。
もし個人が何かに尽くすとしたら、高市早苗の言葉を借りるなら、何かに対して「愛と夢を胸に」抱いて「挑戦」するとしたら、何らかの他者の幸せへの奉仕を挑戦対象としなければならない。
政治家なら、国民という他者に対しての奉仕であって、国家に対してではない。
自分を捨てたなら、自分であることを失う。個人の幸せへの奉仕は他者へと自己を一体化させることではない。他者を唯一絶対とすることでも、自己を唯一絶対とすることでもなく、あくまでも自他を自律的存在として相互関連づけつつ個人の幸せを考え、行動しなければ、冷静な客観性・冷静な判断を失って、情緒的行動に堕すことになる。
高市早苗の国家への奉仕の要求は、当然、国家主義思想を纏っていることになる。
だからこそ、ヒトラーに対する拒否感なき親近性から著した書物に推薦文を寄せることができた。高市早苗の国家主義思想そのものから出た推薦文の言葉だということである。
次の総選挙で安倍自民党を大勝させて、高市早苗や稲田朋美、山谷えり子、その他の危険な右翼を再び好きにのさばらせてはいけない。
衆議院選挙は12月2日公示、12月14日投投開票と決まった。11月19、20両日、「共同通信社」が有権者の選挙動向に関する全国電話世論調査を行っている。
「比例代表の投票先政党」
自民党 25・3%
民主党 9・4%
まだ決めていない 44・4%
「望ましい衆院選結果」
与党野党伯仲 51・4%
「安倍晋三の衆院解散表明について」
「理解できない」 63・1%
「理解できる」 30・5%(以上)
有権者の半数以上が次期衆議院の勢力図を与党野党伯仲であって欲しいと望みながら、比例代表の投票先は民主党の3倍近くの25・3%も自民党が占めている。
比例代表投票先は合計79・1%。他の5野党(みんなの党は11月19日解党して、議員の多くは現在無所属となっている。)合わせて20・9%となり、民主党を加えると30・3%となって自民党を超えることができるが、立候補区を住み分けた場合、各野党に対する個々の政党支持率は自民党と比較して少ない数字となって、その影響を受けるだろうし、住み分けずに乱立の形を取った場合、お互いが食い合って自民党を利することになり、合計しただけの力は反映されないことになる。
与党野党伯仲を51・4%の有権者が意志している以上、比例代表の投票先が自民党と民主党が拮抗して初めて理想的な意志の整合性を見ることができるが、そうはなっていない矛盾を抱えている。
「asahi.com」の《緊急世論調査―質問と回答〈11月19、20日実施〉》を見てみる。
(数字は%。小数点以下は四捨五入。質問文と回答は一部省略。丸カッコ内の数字は11月8、9日の調査結果)
◆安倍内閣を支持しますか。支持しませんか。
支持する 39(42)
支持しない 40(36)
◆今、どの政党を支持していますか。
▽自民32(33)
▽民主 5(6)
▽維新 1(1)
▽公明3(2)
▽次世代0(0)
▽共産3(2)
▽生活0(0)
▽社民0(1)
▽大地0(0)
▽太陽0(0)
▽改革0(0)
▽その他の政党1(0)
▽支持政党なし40(48)
▽答えない・分からない15(7)
◆仮に今、衆議院選挙の投票をするとしたら、比例区ではどの政党に投票したいと思いますか。次に挙げる政党の中から一つだけ選んで下さい。
▽自民37
▽民主13
▽維新 6
▽公明 4
▽次世代0
▽共産 6
▽生活 1
▽社民 1
▽大地 0
▽太陽 0
▽改革 0
▽その他の政党 2
▽答えない・分からない30(以下略)
比例区投票先は自民37に対して野党合計33で、かなり拮抗した姿を取るが、これを個々の選挙区に振り分けた場合、やはり多くの選挙区で全体的な政党支持率の影響を受けるだろうから、以上の世論調査の結果からは「与党野党伯仲」といった勢力図を望むことは現状では難しいのではないだろうか。
共同世論調査で有権者が勢力図を与党野党伯仲と望んだ理由は安定多数とか絶対安定多数といった与党圧勝の場合に現出しかねない与党の独裁的な政策遂行の恐れを頭に置いているからだろう。
これは経験で知ったことであるはずである。2012年総選挙で自民党は絶対安定多数の269議席を25議席も上回る294議席を獲得、公明党の31議席と合わせて憲法改正の発議に必要な3分の2の320議席に迫る300議席に達して、議会運営を恣(ほしいまま)にすることのできる切り札を手に入れた。
勿論、切り札として使うかどうかは与党の姿勢にかかっている。使うことによって、独裁的な政策遂行の姿が露わとなる。
「asahi.com」記事によると、2013年11月7日、「特定秘密の保護に関する法律」(特定秘密保護法)は衆議院特別委員会で審議入りし、11月26日まで約45時間の審議を行った。
参議院に移り、2013年11月28日に参議院特別委員会で審議入りし、2013年12月5日まで約22時間の審議を行っただけで強行採決に入って可決、翌日の12月6日に参院本会議で与党賛成多数で可決・成立させた。
記事は次のように解説している。
〈衆院の45時間という数字だけでみると、消費増税関連法案(昨年8月成立)の約129時間▽郵政民営化関連法案(2005年成立)の約120時間▽教育基本法改正案(06年成立)の約106時間――に遠く及ばない。〉――
短時間の審議時間と強行採決を可能としたのは委員会と本会議での与党の圧倒多数という議席数であることは断るまでもない。
但し特定秘密保護法が国民の支持を受けていて、野党のみが反対しているなら、短時間の審議時間に基づいた強行採決は独裁的な政策遂行とはならない。だが、世論調査では賛成を反対が大幅に上回っている。
2013年12月7日実施の朝日新聞の世論調査から主なところを拾ってみる。
「特定秘密保護法の賛否」
賛成 24
反対 51
「国会での議論は十分か否か」
十分だ 11
十分ではない 76(以上)
ついでに「NHK」の世論調査を見てみる。
「特定秘密保護法の評価」
▽「大いに評価する」6%
▽「ある程度評価する」27%
▽「あまり評価しない」35%
▽「全く評価しない」23%
「国民の知る権利侵害の可能性」
▽「大いに不安を感じる」27%
▽「ある程度不安を感じる」46%
▽「あまり不安を感じない」15%
▽「全く不安を感じない」5%
「国会で議論が尽くされたか」
▽「尽くされた」8%
▽「尽くされていない」59%
▽「どちらともいえない」27%
「自民1強体制の是非」
「よいことだ」19%
「よくないことだ」68%
「自民支持層の是非」が
「よくない」56%
「安倍内閣や自民党に国民の声を聞こうとする姿勢を感じるか否か」
「感じる」16%
「感じない」69%(以上)
この結果が当然そうさせたのだろう、両方の世論調査とも内閣支持率を下げている。朝日新聞の場合、前月比49%から46%だが、NHKの場合は前月比マイナス10ポイントの50%となっている。
朝日の世論調査では一強多弱体制に多くの国民が危惧を抱いていることを示している。当時のこの危惧が記憶に残って、今回の共同新聞の世論調査の「与党野党伯仲」願望となって引き継がれたはずだ。
だが、そのように意志しながら、「比例代表の投票先政党」では圧倒的に自民党が占めている。
国民の「与党野党伯仲」願望は集団的自衛権問題に対しても現れているはずだ。世論調査は集団的自衛権の行使に反対が50%を上回り、賛成は40%前後、憲法改正ではなく憲法解釈の変更での対応にしても、同じく反対が50%を上回り、賛成は40以下といった傾向を見せているが、この状況に反して安倍内閣は今年7月に集団的自衛権の行使容認の閣議決定を行い、その行使容認の安全保障法制関連法案を来年2015年5月頃に審議入りする方針でいる。
選挙の結果、自民党の勢力が現状を引き継ぐようなら、国民の反対は無力の状態に置かれる。
「与党野党伯仲」願望を願望のまま終わらせたのでは同じ轍を踏んで、安倍内閣の独裁的な政策遂行を許すことになる。願望を投票行動で実態的に示して初めて、願望は実際の姿を取ることになる。
安倍内閣の独裁的な政策遂行をストップさせるためにも、次の総選挙では自民党の安定多数は阻止し、可能な限り与野党伯仲状態に持っていくべきだろう。
〈衆院選にかかる費用は約700億円。民意を問うコストは高いのか、安いのか。〉と、「安倍政権打倒を社是としている」と安倍晋三自身が憎悪対象としている朝日新聞のインターネット記事「asahi.com」が伝えていた。
安倍晋三は11月21日午後衆院解散後、午後6時から解散記者会見を開いた。会見からは700億円かけて総選挙を行う必然性・解散の大義は一向に見えてこなかった。
発言は《安倍晋三解散記者会見》(首相官邸/2014年11月21日)に依った。文飾は当方。
安倍晋三は解散を「アベノミクス解散」と名づけた。「アベノミクス」という経済政策を解散するという意味に受け取れないこともない。だとしたら、国民にとって正解となる。
安倍晋三「アベノミクスを前に進めるのか、それとも止めてしまうのか。それを問う選挙であります。
・・・・・・・
私たちの経済政策が間違っているのか、正しいのか、本当に他に選択肢はあるのか、国民の皆様に伺いたいと思います」
しかし後の方で、「この道しかないのです」と言っている。
11月18日の解散表明記者会見でも同じことを言っている。
安倍晋三「デフレから脱却し、経済を成長させ、国民生活を豊かにするためには、たとえ困難な道であろうとも、この道しかありません。景気回復、この道しかないのです。国民の皆様の御理解をいただき、私はしっかりとこの道を前に進んでいく決意であります」
「ロイター」が伝えている経済再生担当相の甘利明の発言。
甘利明「(アベノミクスが)頓挫したとか、色々なこと言われているが、経済再生にはこの道しかないのです。内閣として退路を断ってこの道を選んでいることを理解してほしい。
この道しかない解散だ」
かくこのように安倍晋三を筆頭に雁首揃えてアベノミクスに対して「この道しかない」と絶対的信頼を置いているのだから、失敗だ、何だの雑音に煩わされずに我が道を行けばいいのに、「民主主義の原点は税制であります。税制に重大な変更を行った以上、選挙をしなければならないと考えています」と解散の正当性を説明しているが、「変更」を行う前に「変更」の是非を問うのならまだしも理解できるものの、「変更」を既に決めた後に問うのは厳密には民主主義と言うことはできないのだから、「原点」云々の言葉を以って解散の正当性を与えることはできない。
若い男女が自分たちのみで結婚式の日取りを決めた後に親に結婚の許しを問うようなものである。
またこの解散・総選挙は国民の70%以上が再増税に反対していることに対する増税先送りという受け狙いと、先送りによるアベノミクスの立て直しの狙い、さらに例え議席数をかなり減らしたとしても、過半数は維持できることを安全牌とした(勝敗の予想がつかなければ、わざわざ解散などしないだろう)、このような狙いを持たせている以上、「国民に信を問う」と言っても、真に純粋な動機からではなく、不純な動機を含んでいると見做さざるを得ず、この点からも解散の正当性を見い出すことはできない。
もし安倍晋三が経済的に疲弊し、沈滞し切っている地方に対して一時的に年末だけでも活気づけようと経済効果を狙った700億円の解散・総選挙だとしたら、アベノミクスで勝負すべき地方活性化を解散・総選挙の力を借りることになって、邪道そのものとなる。
安倍晋三の自身の経済政策「アベノミクス」に対する「この道しかない」の絶対的信頼性は次の発言にも現れている。
安倍晋三「2年前を思い出していただきたいと思います。リーマン・ショックから4年も経ち、世界経済は立ち直ろうとしていたにもかかわらず、日本だけはデフレに苦しみ、3四半期連続のマイナス成長となっていました。
行き過ぎた円高は、多くの企業を海外へと追いやり、空洞化が進みました。私の地元山口県でも、若者たちを500人以上雇用していた大きな工場が行き過ぎた円高のために工場を閉めざるを得なくなりました。どんなに頑張っても、どんなに汗を流しても、どんなに良いアイデアを出しても、行き過ぎた円高のために競争に勝てない。そして、多くの雇用が失われていたのです。失業者が増え、下請企業は仕事がなくなり、連鎖倒産という言葉が日本中を覆っていました。当時、私は、野党の党首でありましたが、どこへ行っても、『安倍さん、この景気を何とかしてくれよ。』と言われたことを今でも忘れません。
その日本全体を覆っていた強い危機感が、私たちの政権交代へとつながりました。強い経済を取り戻せ。これこそが総選挙で示された国民の皆様の声であると信じ、三本の矢の政策を打ち続け、経済最優先で政権運営に当たってまいりました。
その結果、雇用は100万人以上増え、高校生の就職内定率は10%アップしました。9月末の時点で既に半分以上の学生が内定を貰っている。15年ぶりの出来事です。今年の春は、過去15年間で最高の賃上げが実現しました。企業がしっかりと収益を上げれば、雇用を増やし、賃金を上げることができる。その好循環を回していく。これがアベノミクスなのです」――
この発言のどこに国民に信を問わなければならない政策の不備を見つけることができると言うのだろうか。「アベノミクスを前に進めるのか、それとも止めてしまうのか」と問う必要もない、アベノミクスの完璧さの証明にしか聞こえない。
実際には「雇用は100万人以上」は正規社員の減少・非正規社員の増大という年々の傾向を隠した統計であり、当然、「高校生の就職内定率10%アップ」に対してもこの年々の傾向は反映されることになって、何ら問題も矛盾も含んでいない統計値ではない。
だが、安倍晋三は何ら問題も矛盾も感じることなく統計を挙げてアベノミクスを誇り、絶対的信頼を置いている。安倍晋三自身にとっても解散・総選挙の必要性はなく、当然、大義もないことになる。
安倍晋三は「行き過ぎた円高は、多くの企業を海外へと追いやり、空洞化が進みました」と言い、暗に円高を是正できなかった民主党政権を批判しているが、円高による産業の空洞化は悪一方ではない。
先進国の企業が開発途上国や後開発途上国に移転することによって、それらの国の経済が発展し、発展に応じてそれらの国民の賃金が上がってが豊かになっていけば、国家間の経済格差が縮小していく。
これらの経緯は中国、タイ、インドネシア等に見てきたとおりである。
もし先進国の企業が海外移転をせず、全てが国内に留まって生産活動し、海外に対しては輸出のみで経営を維持していたなら、後進国が先進国企業の海外移転をキッカケとした経済振興は期待不可能となって、先進国以外は後進国の地位をいつまでも引きずることになり、それらの国では両者間の経済格差に怨嗟の声が起こり、輸入品ボイコット運動も起こりかねない。
先進国企業の海外移転によって豊かになっていく開発途上国の特に豊かになった国民が先進国からの輸入品を求めるようにもなる。
国家間の経済的バランスを取るためにも先進国企業の海外移転(自国にとっての産業空洞化)は悪一方とは決して言うことはできない。悪一方だとする考え方は一国平和主義の偏った思想に囚われているからだろう。
安倍晋三の次の発言は野党政策への批判と、野党政策とは比較にならないアベノミクスへの信頼を示めす内容となっている。
安倍晋三「都市と地方の格差が拡大し、大企業ばかり恩恵をこうむっている、そうした声があることも私は十分承知しています。それでは、日本の企業がしっかりと収益を上げるよりも前に、皆さんの懐から温まるような、手品のような経済政策が果たしてあるのでしょうか。また、バラ撒きを復活させるのでしょうか。その給付を行うにも、その原資は税金です。企業が収益を増やさず、そして、給料も上がらなければ、どうやって税収を確保していくのでしょうか。それこそが2年前までの風景ではありませんか。
私たちは違います。私たちは景気を回復させて、企業が収益を上げる状況をつくり、そして、それが皆さんの懐へと回っていく、この経済の好循環を力強く回し続けることで、全国津々浦々に至るまで景気回復を実感できる、この道しかないのです。
景気回復、この道しかありません」――
既に触れたことを再度繰返すことになるが、「この道しかない」の発言は誰が何度聞いても、条件反射的に、だったら、我が道を行けよ、解散・選挙せずにと言いたくなるような物言いとなっている。
解散・総選挙の必然性・大義を見つけることはできない。
大体がアベノミクスの正当性の根拠として「それでは、日本の企業がしっかりと収益を上げるよりも前に、皆さんの懐から温まるような、手品のような経済政策が果たしてあるのでしょうか」と言っていること自体が合理的な認識能力を欠いた矛盾そのものとなっている。
確かに個人よりも企業の収益が優先される。と同時に個人(=国民)の収益も公平に優先されなければならない。
一部の企業が収益を上げて、その収益を従業員に再分配して、再分配された従業員が他の企業の製品を買うことによって、その企業も収益を上げ、その収益を自社の従業員に再分配して、その従業員が他の企業の製品を買っていく循環が広範囲に広がっていけば、全体的な経済が回復していく。
だが、日本の大企業が「しっかりと収益を上げ」ていながら、内部留保に回すだけで、その収益を雇用者及び大企業以下の中小企業に再分配しないから、いわば企業の収益優先一方のみで、個人の収益を蔑ろにしているから、日本の経済及び個人消費が全体的に機能しない原因となっているのであって、安倍晋三がこの点に留意するだけの合理的な認識能力を欠いたままま、「手品のような経済政策が果たしてあるのでしょうか」と言っていること自体、アベノミクスの欠陥を物語って余りある。
企業が自らの収益優先一方のみであるのは、PDF記事《大企業内部留保 1年で5兆円増》から参考引用した画像が何よりの根拠となる。
いずれにしても安倍晋三はアベノミクスに「この道しかありません」と絶対的な信頼をおいている以上、700億円も賭けて解散・総選挙する必然性も大義も見い出すことはできない。
――そのための消費税再増税の先送りであり、再増税時の軽減税率導入である――
安倍晋三が今日11月21日午前の閣議で衆議院解散の決意を表明、解散を決める閣議書に閣僚が署名して正式に衆議院の解散を決定するという。
安倍晋三「(アベノミクスに)批判や抵抗もあるなか、成長戦略を前に進めるには、国民の声をどうしても聞かなければならないと判断した」(NHK NEWS WEB)
11月18日、NHKの番組に出演して、解散の理由をそう述べたという。
そして総選挙を戦うために消費税の10%への増税を2015年10月から2017年4月に1年半延期し、10%増税時に同時に軽減税率導入を決めている。
そもそもからして公明党2012年総選挙マニフェストは「公明党は軽減税率の実現をめざします」と謳っているのに対して自民党2012年総選挙マニフェストは軽減税率に一言も触れていない。
自民党・政府は軽減税率導入に慎重な姿勢を見せていた。と言っても、実際は反対であった。
2013年12月12日、自公間で2014年度与党税制改正大綱を合意した。その全文。
〈軽減税率に関する与党の合意内容
軽減税率、導入は「10%時」
消費税の軽減税率制度については、「社会保障と税の一体改革」の原点に立って必要な財源を確保しつつ、関係事業者を含む国民の理解を得た上で、税率10%時に導入する。
このため、今後、引き続き、与党税制協議会において、これまでの軽減税率をめぐる議論の経緯及び成果を十分に踏まえ、社会保障を含む財政上の課題とあわせ、対象品目の選定、区分経理等のための制度整備、具体的な安定財源の手当、国民の理解を得るためのプロセス等、軽減税率制度の導入に係る詳細な内容について検討し、2014年12月までに結論を得て、与党税制改正大綱を決定する。〉(asahi.com)
2014年度与党税制改正大綱で合意していた10%時導入を、本体の増税を1年半先送りするなら、このことに伴って軽減税率導入も自動的に先送りされる形で導入されることは既定路線であるはずだが、今更ながらに安倍晋三が山口公明党代表と会談(11月17日夕、都内ホテル)し、導入を求められて、導入を前向きに検討する考えを伝えるという経緯を取らなければならなかった。
こういった経緯を取ったのは、2014年度与党税制改正大綱合意の2013年12月12日の2日前12月10日午前の麻生副総理・財務相の閣議後記者会見発言が全てを物語っている。
麻生太郎「軽減税率は、何を対象にするのかが難しい。また、食料品を対象としても1兆円近い減収となるのでその不足をどう補うのか。このほか企業側の事務負担もある」(NHK NEWS WEB)
要するに自民党・政府共に軽減税率導入に反対だったものの、公明党の主張を税制改正大綱に盛り込むことにしたが、導入に対して抵抗勢力であることに変わりはなく、合意の実施決定は今回の解散まで待たなければならなかったといったところが実態だったということなのだろう。
このことの証明として野田毅自民党税制調査会長の11月18日夜のBSフジの番組での発言を挙げることができる。
野田毅(2017年4月軽減税率同時導入について)「(制度設計が)まだ煮詰まっていない。同時にやるにはまだ(国民に混乱を招くという)リスクがある。対象品目の選定や所要財源など(の問題)でかなり準備期間が必要だということは自民、公明両党で理解が進んでいる」(時事ドットコム)
2013年12月12日の2014年度与党税制改正大綱で導入に合意していながら、「(制度設計が)まだ煮詰まっていない」とか、「かなり準備期間が必要だ」などと言っている。
では、なぜ安倍晋三は同時導入を決めたのだろうか。自民党税制調査会が反対し、国家のカネを握る麻生財務相が導入に反対している。と言うことは財務省自体が反対していることになるが、この反対を押し切ることになるのだから、再増税反対世論調査70%以上に配慮した同時導入の決定であり、当然、答は唯一、選挙対策ということになる。
いずれにしても安倍晋三の経済政策「アベノミクス」三本目の矢である「成長戦略」の歩みを確実にするために10%増税を1年半先送りすることにした。いわば成長戦略の財源ともなる消費税10%増税であるから、成長戦略から消費税再増税を当面外したことになる。
但し一方で解散を決行することによって、成長戦略の柱と位置づけた「女性活躍推進法案」と「労働者派遣改正法案」、「国家戦略特区法改正案」などが廃案となる。
安倍晋三は2013年4月19日、日本記者クラブで講演し、6月に纏める成長戦略の第1弾を発表している。
安倍晋三「女性の活躍は、しばしば、社会政策の文脈で語られがちです。しかし、私は、違います。『成長戦略』の中核をなすものであると考えています」
2014年3月20日2015年度予算成立記者会見。
安倍晋三「さらに、6月には成長戦略を一段と強化します。女性の活躍を阻むあらゆる壁を突き破らねばなりません。女性の就労を後押ししてまいりま す。
企業が国際競争に勝ち抜いていくための税制改革の検討を進めます。女性や高齢者など、多様な人材が自分のライフスタイルに合わせて仕事 ができるワーク・ライフ・バランスに考慮した労働制度の見直しも大きな課題です」
2014年年6月24日記者会見。
安倍晋三「新しい成長戦略でも、岩盤のように固い規制や制度に果敢にチャレンジしました。多様な働き方を実現する労働制度改革や能力ある外国人材の活用に踏み込みます」
2014年9月29日第187国会所信表明演説。
安倍晋三「民間のダイナミックなイノベーションの中から、多様性あふれる新たなビジネスが生まれる。大胆な規制改革なくして、成長戦略の成功はありません。農業・雇用・医療・エネルギーなど、岩盤のように固い規制に、これからも果敢に挑戦してまいります。
その突破口が、国家戦略特区です」
「女性活躍推進法案」や「労働者派遣改正法案」、「国家戦略特区法改正案」などのアベノミクス成長戦略の柱となる政策を早期に成立させて直ちに実施に移さなければならないにも関わらず、解散することによって国会成立と実施を先送りすることになった。
当たり前のことを言うが、実施したからといって、直ちに政策が実現するわけではない。取り掛かってから実現までに長期の時間が必要となるし、実現しない場合もあるから、その成果は先行き不透明の状態にあるものの、成長戦略の柱として掲げた以上、先ずは早期に試行しなければならない。
でなければ、何のために掲げたか意味不明となる。
このように直ちに取り掛からなければならないこれらの成長戦略政策の実施を、選挙結果が判明する僅かな日数であったとしても、解散・総選挙によって結果的に先送りしたことになって、成長への寄与を遅らせたことになる。
安倍晋三がそのように仕向けた。
アベノミクスの成長戦略政策の実効性が先行き不透明である中、アベノミクス経済好循環の主要な柱としている雇用者の賃上げのみが確実視されている。11月19日の政労使会議。
安倍晋三「賃金が上がっていく展望を示すことができれば、経済の好循環の2巡目は大きく前進していく。きのうの(首相官邸での解散表明)記者会見でも、来年の春、再来年の春、そのまた翌年の春と、賃金が上昇していく環境を作ることを国民に約束した」(NHK NEWS WEB)
要するに成長戦略の柱となる各政策の国会成立と実施を先送りする中、雇用者の賃金が上がって個人消費が増えて、経済が活性化し、GDPが増加するより確実視できるプロセスに成長戦略を託した。
消費税8%を受けた物価高と円安による生活物資価格高騰を上回る賃金上昇率を願ったのだろう。そして経団連もこの要請に応じる姿勢を見せた。
と言うことは、安倍晋三は日本の景気回復を自らが掲げたアベノミクス成長戦略の各政策によってではなく、自身の要請に基づいた賃上げを武器とした個人消費の刺激によって果たそうとしていることになる。
だから、成長戦略の各政策の国会成立と実施を先送りすることになる解散ができたのであり、賃上げを武器とした個人消費を確実にするために消費税増税を先送りし、70%を超える国民の消費税再増税に対する拒絶感を和らげて総選挙に勝利するために1年半後の再増税と同時の軽減税率導入を決めることができた。
アベノミクスの成長戦略は個人消費刺激策のみに堕したも同然である。