安倍晋三の場合は自身の心がけの悪い行いの報いを他者にお鉢が回るごく珍しい正の社会的道徳律に恵まれている例

2018-07-31 11:48:13 | 教育


 一般的には心がけの悪い行いをすると、悪い行いをした本人がその報いを受けると言われる。それを以って「自業自得だ」とか、「因果応報だ」とか、当然視される。

 当然視は悪い行いに対して「自業自得」、あるいは「因果応報」が人間営為に於ける社会的道徳律となっていることを意味しているはずだ。

 社会的道徳律になっていなければ、「自業自得」や「因果応報」といった言葉は生まれない。

 安土桃山時代に盗賊の首長として活躍したとされる石川五右衛門は実在の人物か架空の人物か説が分かれるらしいが、時代末期に京都三条河原で釜茹での刑に処せられた例は実在・架空いずれであっても、あるいは義賊であるなしに関わらず、「自業自得」、あるいは「因果応報」の社会的道徳律を纏っていることになる。

 江戸時代中期以降義賊として活躍したとされる実在人物鼠小僧次郎吉は最終的には役人に捕らえられて、市中引き回しの上、小塚原刑場で斬首され、晒し首の刑を受けている歴史的事実にしても、「自業自得」、あるいは「因果応報」の社会的道徳律の例に洩れないてはいない。

 最近は耳にすることはなくなったが、親がかつて子どもを叱って正直であることを求めたセリフ、「ウソをつくと閻魔様に舌を抜かれるよ」も、「自業自得」、あるいは「因果応報」の社会的道徳律を前以って回避したい親心からの注意であろう。

 だが、現実にはウソをいくらついても、「自業自得」や「因果応報」を受けずに、いわば舌を抜かれることもなく、ウソを通用させて、ウソの数々から利益を受けている人間も数多く存在する。「憎まれっ子、世に憚る」と言うことなのだろう。

 当事者が「自業自得」にも、「因果応報」にも見舞われずに世に憚ることも一つの社会的道徳律となっていることを意味する。当事者にとってはこれを正の社会的公式とすると、「自業自得」や「因果応報」の形を取るそれは当事者に対しての負の社会的道徳律とすることができる。

 直接の死者74名を出した広島土砂災害時の2014年8月20日朝の7時半過ぎから、政府危機管理の先頭に立たなければならない安倍晋三は自身の別荘近くのゴルフ場でゴルフを開始し、死者が発生してもなおゴルフを続け、午前9時19分になってやっとゴルフを中止している。

 安倍晋三の一国の首相として負っている「国民の命と財産を守る」危機管理に対する怠慢、想像力の欠如はいつまでも記憶して置くために何度も書かなければならない。

 翌年の20154月25日放送のTBS「報道特集」 は広島土砂災害時の広島県警無線交信記録を入手、公表している。それによると、住民からの通報が相次いだのは1時間に100ミリを超える猛烈な雨が降った午前3時頃からで、当時の勤務員が全員で対応に当たったが、入電数が物凄く多くて、全てに対応し切れない状況だったという。

 番組は入手した警察無線を全て文字に起こして時間帯別に多く使われている言葉を抽出、その通報傾向から緊急状況の切迫化への推移を割り出している。

 午前3時台は、「増水」、「氾濫」、午前4時台は、「土砂崩れ」、「土石流」、午前5時台は、「人命」、「危険」、「倒壊」の言葉が多く占めたと言う。

 そして午前5時半には、人命が危険に及んでいる事案や土砂崩れの発生と家ごと流されている通報、生き埋めの可能性もあるとの通報が寄せられたと伝えている。

 広島市消防局はこういったことを裏付ける発表を行っている。8月20日午前3時20分頃の土砂崩れで土砂に埋まった子ども2人のうち1人が午前5時15分頃心肺停止の状態で発見されたと発表。

 この発表に基づいた2014年8月20日5時56分発信の「NHK NEWS WEB」記事では、裏山が崩れて土砂が住宅に流れ込み、子ども2人が生き埋めになったと見て消防が捜索するニュースを伝えている。

 その後その内の一人が心肺停止で発見されたとのニュースを6時25分の発信で報じている。ブログに何度も書いているが、水を大量に含んだ土砂に直接生き埋めになった場合、顔を水や土砂に塞がれて窒息状態を強いられ、例え心肺停止の発見であっても、それが5分も経過していれば、蘇生の可能性はゼロに等しい状況となる。

 このときの豪雨災害に対応すべく首相官邸危機管理センターに設置し、情報収集に当たっていた情報連絡室は広島県警や広島市消防局の無線交信記録からの情報収集やネットニュースからの情報招集を行い、重要と判断した情報はゴルフ場の安倍晋三に逐一報告しなければ、何か災害が発生するたびに「被害発生に備えて政府一丸となって情報収集に努めてまいります」とか、被害発生後、「被害の状況を把握すべく政府一丸となって情報収集に当たっています」といった言葉はウソになる。

 ところが、8月20日の午前3時4時頃から豪雨を受けて増水、氾濫、土砂崩れ、土石流の通報が広島県警や広島市消防局に伝えられていながら、それが国民の生命の危険への想像力、財産の損壊への想像力を働かせることができずにゴルフを2時間近くも続けていた。

 防災担当相の古屋圭司は、「最終的に死亡者が出た8時37分とか8分に総理にも連絡をして、その時点ではこちらに帰る支度をしてます」とウソをついてまでして安倍晋三のゴルフに問題はないとした。

 要するに安倍晋三は「死者が出たら連絡してくれ。ゴルフを切り上げるから」と決めていたことになる。国家及び国民の危機管理を預かる安倍晋三のこの心がけの悪さは如何ともし難いが、このような心掛けの悪い行いに対して人間営為に於ける負の社会的道徳律となっている安倍晋三自身に及ぶべき「自業自得」、あるいは「因果応報」は正の社会的公式に変えて世に憚り、その代わりに被災者だけがバカを見ている。

 同じことは西日本豪雨での安倍晋三の行動にも現れている。2018年7月5日に気象庁が記者会見で記録的な大雨と土砂災害や河川の氾濫への厳重な警戒を呼びかけていたことに対して安倍晋三は毎年のように発生している多大な人命の犠牲を伴う豪雨災害と同規模の自然災害を「国民の命と財産を守る」観点から想定、政府危機管理の先頭に立たなければならなかったが、既に死者が出ているにも関わらず、同8月5日夜、「赤坂自民亭」で飲酒していた。

 この「国民の命と財産」に対する想像力を欠如させて飲酒に励む心掛けの悪い行いは負の社会的道徳律である「自業自得」や「因果応報」という形で安倍晋三に鉄槌が下って然るべきだが、悪運強く正の社会的道徳律に変えて、さしたる影響を受けないでいて、やはりバカを見たのは被災者だけとなっている。

 財務省の森友学園に対する違法な国有地格安売却は安倍昭恵を介した安倍晋三忖度の疑惑を生み、加計学園獣医学部認可も安倍晋三による政治関与の疑惑を生じせしめ、状況証拠は限りなくクロそのものとなっている。

 心掛けが悪いからこそ、こういった疑惑を生み出しているのであって、当然、「自業自得」や「因果応報」を受けるべきだが、正の社会的道徳律に変えてカエルの面にションベンで、首相の座に居座ることができている。

 2018年5月29日に2012年12月の再登板以降の連続在任日数が1981日を記録、歴代3位につけただけではなく、次の総裁選では既に党内で6割の支持を集め、後3年間在任の勢いを見せていることは自身の心掛けの悪い行いを「自業自得」や「因果応報」といった正の社会的道徳律に向かわせることなく、全て正の社会的道徳律に転換させていることを示している。

 勿論、本人の意志の力がそうさせているのではなく、悪運の強さがそうさせている。在任日数で言うと、こういったことの割の合わなさを受けるのは次期総裁選挙で対抗馬と目されている石破茂で、その割の合わなさを一身に引き受けることになるだろう。

 そしてそれ以上二割の合わなさ、バカを見るのは国民であろう。アベノミクスのメッキがそろそろ剥がれるだろうからである。

 安倍晋三の場合はその悪運の強さから、自身の心がけの悪い行いからの「自業自得」や「因果応報」はそのような行いに無関係な他者に全てお鉢が回るようにできているようだ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

安倍晋三の外国人受け入れ拡大策は少子化政策の不首尾に関わる情報隠蔽を裏側に忍ばせている

2018-07-30 11:55:07 | 政治


 経済が活気づいて人手不足現象が生じた。と言っても、活気づいたのは国の経済とその恩恵の殆んど多く受ける富裕層のみで、一般国民の生活が活気づいたわけではない。個人消費が満足に増えていないことがそのことを証明している。つまり安倍晋三の経済政策――アベノミクスはカネ持ちミクスと言うことになる。

 人手不足の対策として外国人技能実習制度や高度外国人材の受入れ政策によって補ってきたが、焼け石に水ということなのだろう、安倍晋三はここに来て外国人材の受入れ拡大を目指すことになった。

 「外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議」(首相官邸/2018年7月24日)  
  
 安倍晋三「この2年半にわたり、47全ての都道府県で有効求人倍率が1倍を超える中、全国各地の中小・小規模事業者を始めとする現場では、人手不足が深刻化しています。このため、生産性向上や国内人材の確保を引き続き強力に推進する必要があることは言うまでもありませんが、それとともに、一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人材を幅広く受け入れていく仕組みを構築することは急務であります。

 新たな制度による外国人材の受入れは、来年4月を目指して、準備を進めてまいりたいと考えていますので、法案の早期提出、受入れ業種の選定等の準備作業を、速やかに進めていただくよう、お願いします。
 また、新たな制度による受入れを含め、在留外国人の増加が見込まれる中、日本で働き、学び、生活する外国人の皆さんを社会の一員として受け入れ、円滑に生活できる環境を整備することは重要な課題です。

 本日の閣議決定により、法務省が外国人の受入れ環境の整備に関する総合調整を行うこととなりました。法務省の司令塔的機能の下、関係府省が連携を強化し、地方公共団体とも協力しつつ、外国人の受入れ環境の整備を効果的・効率的に進められるよう、関係閣僚の御協力をお願いします。また、法務省には、在留外国人の増加に的確に対応するため、組織体制を抜本的に見直し、在留管理等に当たる新たな体制を構築するよう、検討をお願いします」

 新たな制度による外国人材の受入れは来年4月の導入を目指すと言っている。ネットで検索したところ、外国人技能実習制度による入国外国人数は2017年6月時点で25万1721人、高度外国人材の受入れ政策による入国外国人数は2017年年6月末現在、認定件数が8515件。家族同伴が許されているから、それ以上の人数となって、合計で34、5万程度だろうか。その他在留資格を得て入国している外国人数や不法滞在外国人数を含めると、相当な数に登るはずだ。

 2018年6月27日の党首討論で国民民主党共同代表大塚耕平は、「総理もよくご承知の通り、技能実習生は今国内に26万人、この技能実習生を含んで127万人の外国人労働者。しかし、これは統計上の話で、もっとたくさんいらっしゃると思います」と発言している。

 2018年6月5日の「第8回経済財政諮問会議」(首相官邸)での安倍晋三の発言。

 安倍晋三「地方の中小・小規模事業者を始めとして人手不足が深刻化しています。このため、一定の専門性・技能を有し、即戦力となる外国人材を幅広く受け入れていく仕組みを早急に構築する必要があります。本日提示した骨太方針の原案において、移民政策とは異なるものとして、新たな在留資格の創設を明記しました。
 
 地方の中小・小規模事業者を始めとして人手不足が深刻化しています。このため、一定の専門性・技能を有し、即戦力となる外国人材を幅広く受け入れていく仕組みを早急に構築する必要があります。本日提示した骨太方針の原案において、移民政策とは異なるものとして、新たな在留資格の創設を明記しました」

 外国人材受入れ拡大政策は「移民政策とは異なる」と断っている。

 断らずとも、安倍晋三の各言動、歴史認識から国籍を与える移民政策に反対していることは明らかである。だが、人手不足がカネ持ち層には機能しているが、一般国民には機能していないカネ持ちミクスであるアベノミクスに現在以上の悪影響を及ぼして息の根を止めかねない危機感から、人手不足解消を唯一の目的に止むを得ず選択した、在留資格による入国のみを認める外国人材受入れ拡大政策に過ぎない。

 つまり基本的には日本人の血に外国人の血を入れることに反対している。日本人の血を外国人の血で汚したくないと信念しているからだろう。汚すのは最小限に抑えて、純粋日本人を可能な限り残す。

 こういった信念は日本人優越民族意識に基づく。在留資格による入国外国人の在留期限延長を目玉にしているが、その目玉たるや、単に獲得人数増加のための募集要件の緩和に過ぎない。

 この新たに打ち出した外国人材の受入れ拡大は長年打ち続けてきた少子化政策が不首尾に終わっていることの裏返しという側面を否応もなしに抱えている。

  内閣府「第1章 高齢化の状況」によると、15歳から64歳までの生産年齢人口(いわゆる“現役世代”)は、〈平成7(1995)年に8,716万人でピークを迎え、その後減少に転じ、平成25(2013)年には7,901万人と昭和56(1981)年以来32年ぶりに8,000万人を下回った。〉と告げてから、出生数の減少に触れて、〈出生数の減少は、生産年齢人口にまで影響を及ぼし、平成39(2027)年に6,980万人と7,000万人を割り、平成72(2060)年には4,418万人となると推計されている。〉と解説している。

 要するに人手不足は少子化政策不首尾の裏返し、その反映でしかない。

 《人口減 産めぬ現実》と題した2005年12月23日付『朝日』朝刊。 

 先ず記事は厚労省の推計で2005年に生まれた子供の数が死亡者を1万人下回り、政府推計よりも1年早く人口の自然減が始まったと紹介している。

 記事発信の2005年12月23日は小泉政権下(任期2001年4月26日~2006年9月26日)の1日であり、当然、日本の経済に大きく影響するゆえに少子高齢化対策には真正面から向き合っていたはずだ。

 内閣官房長官は2005年10月31日~2006年9月26日まで安倍晋三が務め、総務相は小泉純一郎のブレーン竹中平蔵。

 2005年12月22日の閣議後の記者会見。

 竹中平蔵「日本が人口減少社会になっていくのは実は30年前に分かっていた。残念ながら30年間、我々の社会は有効な手段を準備できなかった」

 「我々の社会」ではなく、自民党一党独裁が続いていたのだから、「我々の自民党は有効な手段を準備できなかった」と発言すべきだったろう。 「30年前に分かっていた」にも関わらず、自民党政権は30年間も無為・無策だった。

 出生数と合計特出生率を竹中平蔵の上記発言の2005年から記録がある2013年までを、「少子化対策の現状と課題」(内閣府)のページで紹介しているエクセル文書から引用してみる。当方は四捨五入した。

 2004年 出生数 111万人 合計特殊出生率 1.29
 2005年 出生数 106万人 合計特殊出生率 1.26
 2006年 出生数 109万人 合計特出生率 1.32
 2007年 出生数 109万人 合計特殊出生率 1.34
 2008年 出生数 109万人 合計特殊出生率 1.37
 2009年 出生数 107万人 合計特殊出生率 1.37
 2010年 出生数 107万人 合計特殊出生率 1.39
 2011年 出生数 105万人 合計特殊出生率 1.39
 2012年 出生数  103万人 合計特殊出生率 1.41
 2013年 出生数  102万人 合計特殊出生率 1.43

 合計特殊出生率とは、15歳から49歳までに産む子供の数の平均を示すとある。また、合計特殊出生率が2であれば人口は横ばいを示し、これを上回れば自然増、下回れば自然減となるということである。

 2007年から2013年まで出生数が減少を続けているにも関わらず合計特殊出生率が上がっているのは女性人口に於いても少子高齢化の影響や、生活上、1子だけで我慢する家庭が増えたことを受けて、子どもを生む可能性の低い40代人口の割合が増えたものの、そのことに反して子どもを生む可能性の高い20代、30代の「年齢構成」が低下したことが原因ということである。

 要するに少子化防止は出生数減少の確実は歯止めと増加への転向がカギを握っていることになる。

 上記の2005年12月22日の閣議後の記者会見に官房長官として出席していた安倍晋三は日本の経済発展に大きく影響することから人口減少社会対策、いわば少子高齢化対策が喫緊の課題だと目の当りにした。あるいはそれ以前からだったかも知れない。

 小泉純一郎内閣末期の2006年に猪口邦子少子化担当大臣(当時)のもとで少子化対策が纏められた。だが、2006年、7、8年と出生数はほぼ維持しているのに対して合計特殊出生率が僅かにしか増えていないのは出産の可能性の高い「年齢構成」が低下していることからで、何よりも合計特殊出生率2に近づける勢いはなかった。

 当然、2006年9月26日に首相の座についた安倍晋三は少子化対策に大きな責任を負ったことになる。 

 《第165回国会における安倍内閣総理大臣所信表明演説》(首相官邸2006年9月29日)

 安倍晋三「我が国は、昨年初めて、総人口が減少に転じていく人口減少社会を迎え、合計特殊出生率も1.25と過去最低の水準になりました。直近の出生数は昨年を上回っていますが、第2次ベビーブーム世代がまだ30歳代である、残り5年程度のうちに速やかに手を打たなければなりません。

 内閣の総力をあげて少子化対策に取り組み、『子育てフレンドリーな社会』を構築します。出産前後や乳幼児期における経済的負担の軽減を含め、子育て家庭に対する総合的な支援を行うとともに、働き方についても、子育てを応援する観点から改革を進めていきます。子育ての素晴らしさ、家族の価値を社会全体で共有できるよう、意識改革に取り組みます」(一部抜粋)

 この所信表明では少子化対策に取り組むことを重要な公約の一つに掲げている。

 一つ付け加えてこくと、「財政再建と行政改革の断行」 に関わる所信では、各種改革を挙げた上で、「このような改革を徹底して実施した上で、それでも対応しきれない社会保障や少子化などに伴う負担増に対しては、安定的な財源を確保するため、抜本的・一体的な税制改革を推進し、将来世代への負担の先送りを行わないようにします。消費税については、『逃げず、逃げ込まず』という姿勢で対応してまいります」と約束しているが、この約束をほっぽり投げて、消費税増税を2度先送りしている。

 話だけ聞いていると、有言実行が確実な上にも確実に信用できる政治家に見えてくるが、言葉巧みに約束を破り、破ったことを言葉巧み隠す名人である。

 具体的に例を挙げる。2014年4月1日の消費税5%から8%への増税を乗り超えることができず、2014年11月18日の「記者会見」で増税の延期を告げることとなった。 

 安倍晋三「本日、私は、消費税10%への引き上げを法定どおり来年10月には行わず、18カ月延期すべきであるとの結論に至りました。本日、私は、消費税10%への引き上げを法定どおり来年10月には行わず、18カ月延期すべきであるとの結論に至りました。

  ・・・・・・・・・

 国民全体の所得をしっかりと押し上げ、地方経済にも景気回復の効果を十分に波及させていく、そうすれば消費税率引き上げに向けた環境を整えることができると考えます」

 ところが、「消費税率引き上げに向けた環境を整えることができ」ず、いわば消費税を増税できる程にアベノミクス=カネ持ちミクスを機能させることができずに2016年6月1日の「記者会見」で再延期を堂々と宣言することになった。

 安倍晋三「来年4月に予定される消費税率の10%への引上げについてお話しいたします。1年半前の総選挙で、私は来年4月からの消費税率引上げに向けて必要な経済状況を創り上げるとお約束しました。そして、アベノミクスを強力に推し進めてまいりました。

  ・・・・・・・・・

 内需を腰折れさせかねない消費税率の引上げは延期すべきである。そう判断いたしました」

 30カ月延期して2019年10月の引き上げを決定している。

 「1年半前の総選挙で、私は来年4月からの消費税率引上げに向けて必要な経済状況を創り上げるとお約束しました」と一見正直に話しているように見えるが、8%への消費税増税を受けた消費の頭打ち、あるいは消費の低迷に備えて公共事業予算を大量に配分するなどして経済対策を打ってきたのである。にも関わらず、増税できる環境を整えることができなかったということはアベノミクスにしても消費税対策にしても全て役に立たなかったということであり、そのことは隠して、一見正直を装っているに過ぎない。

 2015年9月24日の自民党総裁としての「安倍晋三記者会見」

 安倍晋三「夢を紡ぐ子育て支援であります。そのターゲットは、希望出生率1.8の実現です。

  ・・・・・・・・・

 待機児童ゼロを実現する。幼児教育の無償化も更に拡大する。三世代の同居や近居を促し、大家族で支え合うことも応援したいと思います。さらに、多子世帯への重点的な支援も行い、子育てに優しい社会を創り上げてまいります。

 『子どもが欲しい』と願い、不妊治療を受ける。そうした皆さんも是非支援したい。『結婚したい』と願う若者の、背中を押すような政策も、打っていきたい。誰もが、結婚や出産の希望を叶えることができる社会を、創り上げていかなければなりません。

そうすれば、今1.4程度に落ち込んでいる出生率を、1.8まで回復できる。そして、家族を持つことの素晴らしさが、「実感」として広がっていけば、子どもを望む人たちがもっと増えることで、人口が安定する『出生率2.08』も十分視野に入ってくる。少子化の流れに「終止符」を打つことができる、と考えています」

 「希望出生率」をネットで調べたところ、〈国民の希望が叶った場合の出生率のこと。 希望出生率は、結婚をして子供を産みたいという人の希望が叶えられた場合の出生率である。 現実には、仕事や家庭の事情で子供が産めなかった、あるいは、第2子、第3子を諦めたという人が人がいるため、「希望出生率>出生率」という不等式が成り立つ。〉(Weblio辞書)とあって、極めて不確かな数字であることが分かる。

 不確かな希望出生率を掲げて、それを「人口が安定する『出生率2.08』も十分視野に入ってくる」と、合計特殊出生率「2.08」に見せかける手品を見せただけである。

 2015年の合計特殊出生率は1.46で、確かに微増しているが、出生数の減少傾向(=人口減現象)に変わりはないのだから、人口増に転じる合計特殊出生率「2.08」の実現は少子化対策が全く功を奏していない中で困難な道のりであることを示しているに過ぎない。

 このように見てきたとおりに少子化防止(=人口増加)は出生数減少の確実な歯止めと増加への転換が第一のカギを握っている以上、第2次安倍政権の2012年12月26日から2018年7月末の今日までの安倍晋三の少子化対策は不首尾続きであったことが分かる。

 だからだろうか。通常国会が事実上閉会したあとの2018年7月20日の「安倍晋三記者会見」(首相官邸)では「少子化」には一言も触れていない。

 安倍晋三「深刻な人手不足に直面する中小・小規模事業者の皆さんへの支援もしっかりと行ってまいります。生産性を向上させるための投資には、固定資産税をゼロにするかつてない制度がスタートしました。

 ものづくり補助金や持続化補助金により、中小・小規模事業者の皆さんによる経営基盤の強化を応援します。4月からは相続税の全額猶予により、次世代への事業承継を力強く後押ししています。一定の専門性、特定の技能を持った優秀な外国人材を受け入れるための新たな在留資格の創設に向けて準備を進めてまいります」

 人手不足自体が少子化政策不首尾のツケでもあるが、当座の人手不足対策として外国人材受け入れ拡大が必要だとしても、「少子化」について一言も触れないのは少子化政策不首尾についての情報隠蔽に他ならない。

 消費税増税延期のときもそうだったが、アベノミクス=カネ持ちミクスの機能不全に目を向けさせない薄汚い情報操作で外国人材受け入れ拡大を推し進めようとしている。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

安倍晋三の傲慢さと度量の狭さ、ケツの穴の小ささが見えてくる岸田文雄との7月23日の面会否定

2018-07-27 11:07:59 | 政治
>

 自民党政調会長岸田文雄が2018年7月24日、都内の岸田派事務所で記者会見、前日の7月23日に安倍晋三と面会し、9月の党総裁選には自身は立候補せず、立候補確実な安倍晋三を同派として支持することを告げたと、2018年7月24日付産経ニュース が伝えていた。

 その箇所を【岸田氏会見詳報(3)】から見てみる。

 記者「首相と会見前に電話したときに不出馬と合わせて3選の支持も伝えたのか。昨日は直接会ったのか」
 岸田文雄「はい、まず先ほど、この会見の前に電話で連絡をさせていただいた際には、おっしゃるように不出馬と安倍総理支持、これについて会見することを申し上げました。昨日は直接お会いしてお話をさせていただきました」

 【岸田氏会見詳報(4)】の冒頭では次のような遣り取りとなっている。  

 記者「安倍晋三首相(自民党総裁)と話して、この政策は実現してほしい、こういったテーマを取り組んでほしいという話はしたか」

 岸田文雄「具体的に何を言ったか言わなかったか、やり取りしたか、これは控えます。基本的な政治の姿勢、取り組みということについて話をさせていただきました。以上です」

 岸田文雄が説明している話の内容は電話で遣り取りすることではない。7月23日に安倍晋三と直接面会して不出馬と安倍支持を伝えていたことが分かる。

 であるにも関わらず、岸田文雄は自身の記者会見前に安倍晋三に電話して、「不出馬と安倍総理支持、これについて会見することを申し上げた」と言っている。

 岸田文雄の安倍晋三に対する従順ぶりが物の見事に現れている。次の次の総裁選で安倍晋三の支持を願ったことからの、あるいは禅譲を期待したことからの従順ぶりなのかも知れない。

 従順さはプライドの売り渡しによって表現可能となる。

 奇妙なことに岸田文雄が記者会見で自ら説明していた7月23日の安倍晋三との面会を官房長官の菅義偉が否定したと2018年7月25日付「朝日デジタル」記事が伝えている。

 菅義偉「(首相は)会ったことはないということだった」

 記事解説。〈朝日新聞の首相動静によると、23日に首相と岸田氏が面会した記録はない。ただ、首相動静をつくる首相番の記者は主に首相官邸の正面玄関から入る面会者を確認する。官邸には複数の出入り口があり、その全てを確認できているわけではない。記者に分からないようにする「極秘会談」も過去にたびたび行われてきた。

 動静によると首相は23日午前、歯の治療で東京・富士見の日本歯科大付属病院を訪問。正午前に官邸に戻ってから3時間ほど、来客は記録されていない。午後3時前から自民党参院議員や外務省や防衛省の幹部らとの面会を重ね、7時前に東京・富ケ谷の自宅に帰宅。その後の来客も記録されていない。〉――

 岸田文雄がウソをつく理由も動機もないことは明らかである。次の次の総裁選で安倍晋三の支持を期待する、あるいは禅譲を願うには自らの記者会見前に電話で不出馬と安倍晋三支持の記者会見を開きますと伝えるだけであったなら、逆に失礼に当たる。このような電話は前以って面会して自身の不出馬と安倍晋三支持を直に伝えていてこそ、より有効となるだけではなく、支持の期待や禅譲を願う自身の従順ぶりをより鮮明に表現できることになる。

 となると、安倍晋三がウソをついていることになる。そのウソを菅義偉が記者会見でそのまま伝えた。

 安倍晋三がなぜウソをついたのか、それを解くヒントとなる一つの記事がある。《【自民党総裁選】迷った岸田氏、何も得ず 首相は不信感、宏池会冷遇も》産経ニュース/2018.7.25 05:30)

 記事の発信日は7月25日。岸田文雄の記者会見7月24日の翌日である。岸田文雄は記者会見前日の7月23日に安倍晋三と面会して、自身の不出馬と安倍支持を伝えたと言っているだけではなく、記者会見前にも安倍晋三に電話して、同じことを伝えたと明らかにしている。

 こういった経緯を前提に記事の内容を見てみる。岸田文雄の岸田派(宏池会、48人)はそれまで〈首相支持に回り3年後に首相からの「禅譲」を狙うべきだという意見と、9月の総裁選に出馬を促す「主戦論」が交錯〉していたと記事は伝えている。

 ところが、不出馬と安倍支持を伝えたのは7月23日。細田派(清和政策研究会、94人)、麻生派(志公会、59人)、二階派(志帥会、44人)は既に安倍晋三支持を打ち出していた。

 この7月23日について記事は、〈早期に支持を得たかった首相の不信感が最高潮に達した後〉だと解説している。故に、〈岸田氏が得るものは乏しく、遅きに失した判断となった。〉との見方を示している。

 但し安倍晋三の不信感が最高潮に達するにはキッカケがあったことを記事は伝えている。

 6月18日夜、安倍晋三と2人だけで会食した岸田文雄は冒頭、「私はどうしたらいいのでしょうか」と発言、安倍晋三を呆れさせたという。

 総裁選への自身の進退を自ら決めるのではなく、安倍晋三に尋ねた。安倍晋三から立候補をやめて自分を支持して欲しいと言って貰いたかったのかも知れない。

 この6月18日夜の会食時の岸田文雄の発言に対して安倍晋三がどのような発言で応じたのかは記事は紹介していない。岸田文雄の不出馬と安倍支持表明が6月18日から7月23日と1カ月以上も日数を置いたからなのか、〈総裁選をめぐる岸田氏の対応は首相の期待を裏切る形となった。〉と書いていいる。

 〈6月の会食後、安倍晋三は周囲に「今さら支持するといわれても遅い」と岸田氏への不快感を隠さず、石破茂元幹事長との総裁選一騎打ちを避けるため「岸田さんに出てもらった方がいい」と語るようになった。〉とも解説、岸田派幹部の、「政権が苦しいときに支持を打ち出しておけばよかった」との声を紹介、支持の価値観低下を嘆く様子も伝えている。

 前回2015年9月予定の総裁選は無投票当選であったが、前々回の2012年の総裁選挙は安倍晋三は国会議員票54票に対して石破茂34票と上回ったものの、地方票では安倍晋三87票に対して石破茂165票と倍近くの差を許し、総得票数で石破茂を下回って、決選投票で安倍晋三108票対石破茂89票で辛うじて逆転できたが、5人も立候補していて票が割れたことと、第1次安倍政権で見せた政権担当能力に対する不人気が影響した辛勝ということであって、現在の安倍一強の状況とは大きく異なっている。

 岸田文雄の不出馬と安倍晋三支持にしても安倍一強の状況を計算した選択であり、その結果の安倍晋三に対する従順さの迎合的態度と言うことなのだろう。 

 このような安倍一強が反映して、今回は自民党は衆議院議員283名、参議院議員122名の計405名の内、細田派94人、麻生派59人、二階派44人、合計半数近い197人が早々に安倍晋三支持を打ち出していた。

 そして岸田派に対しても早々とした支持表明を期待したが、6月18日夜の安倍晋三との会食時に「私はどうしたらいいのでしょうか」と自分では決めることができない煮え切らない態度を示され、安倍晋三は呆れて、「今さら支持するといわれても遅い」と思わせるに至ったのは、既に勝算を頭に描くことができていた余裕からだろう。

 勝算の余裕がなかったなら、側近の誰かを岸田文雄の元に遣わせて、それとなく支持を要請したはずだ。

 既に勝算の見込みがありながら、岸田派の支持さえ求めたのは記録的な圧倒的支持による記録的な圧倒的総裁選勝利が演出できて、それを元手に2021年9月の総裁任期切れまで政権運営に弾みをつけて、2019年夏の参院選挙の勝利、さらに状況が許せば、総裁任期切れ1カ月後の2021年10月の衆院議員任期前に解散・総選挙に打って出て、あわよくばそれをも勝利すれば、一度も国政選挙に負けたことのない首相としての金字塔を打ち立てることができ、政治史に名を残すことができるとの思惑があったからだろう。

 このような思惑からしたら、岸田派の支持は絶対的な必要性を備えていることになり、支持表明が遅れたとしても、素直に感謝すべきを、そうはせずに岸田文雄が不出馬と安倍支持を表明した、ウソをつく理由も動機もない7月23日の安倍晋三との面会を安倍晋三自身が否定したことは岸田派支持の安心感の上に立ちながら、岸田文雄の支持表明が遅れたことへの不快感から、岸田派の支持がなくても総裁選は勝利するし、政権運営にも困らないことの当てつけの態度と見る以外にない。

 この思惑と、それとは異なる実際に見せている不正直な態度との掛け離れように安倍晋三の度量の広さとは正反対の気持の狭さ、ケツの穴の小ささ、傲慢さを否応もなしに見る。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

杉田水脈の子どもを作らないことを生産性で解釈する人間存在への排除の論理以上に問題な二階俊博の姿勢

2018-07-26 09:25:36 | 政治

 2018年7月23日付「朝日デジタル」記事が、自民党衆院議員杉田水脈(みお―51歳)が7月18日発売の月刊「新潮45」に「『LGBT』支援の度が過ぎる」と題した一文を寄稿、〈「彼ら彼女らは子供を作らない、つまり『生産性』がない。そこに税金を投入することが果たしていいのかどうか」と行政による支援を疑問視〉、〈「『常識』や『普通であること』を見失っていく社会は『秩序』がなくなり、いずれ崩壊していくことにもなりかねません」などと主張した。〉と伝えている。

 記事は、〈人権意識を欠いた記述だと批判が上がっている。〉とし、自民党内の批判の声も紹介している。

 記事末尾で、〈杉田氏は2012年に初当選し、2期目。元次世代の党で、自民党が昨年の総選挙で比例中国ブロックに、比例単独候補としては最上位の17位で擁立した。〉と自民党(総裁安倍晋三)の厚遇ぶりを伝えている。

 このことは「Wikipedia」が「杉田水脈」の項目で紹介している2017年9月29日の櫻井よしこのツイッター投稿文、〈【速報】『杉田水脈氏、自民党から出馬』 「小池百合子、中山恭子から希望の党に来てくれと、猛烈なアッタクを受けたがそれを断り、自民党から出馬する事に。安倍さんが杉田氏は素晴らしいと。希望の党に希望を持つことができない。しっかりした自民党から出たいと、筋を通した」〉云々の安倍晋三の歓迎ぶりと対応する。

 先ず「彼ら彼女らは子供を作らない、つまり『生産性』がない」と言っていることの正当性を考えてみる。正当性ある主張なら、「税金を投入する」ことへの疑問も正当性ある主張と看做すことができる。

 杉田水脈が言っている「生産性」とは生きている上で世の中に役立って、様々な経済的価値を生むということを意味させているはずだ。

 経済的価値はたいして生まなくても、文化的価値を生む場合があるが、そのような価値は頭にはないのだろう。

 子どもを設けることができるか否かに「生産性」という言葉を当てて、その「生産性」の有無に人間存在としての価値の有無を置いている。いわば子どもを設けることができるか否かを「生産性」の全てとしている。

 子どもを設けることができなくても、そのことに取って代わって補う(生きている上で世の中に役立って、様々な経済的価値を生むことができる)何らかの「生産性」の存在を認めようとする度量はなく、人間存在に対する価値観を固定している。

 あるいは経済的価値は左程生むことができなくても、文化的価値をそれなりに周囲に与えるケースがあることは考慮に入れていない。

 「生産性」にしても多種・多様であり、人間存在に備わっている価値観も多種・多様と見る多様性への視点は杉田水脈の頭の中には影さえも宿していないようだ。

 このように「生産性」を基準とした価値観の固定=多様性の排除は自ずと人間排除の姿を取ることになる。一定を対象とした人間排除とは特定対象の人権の否定に他ならない。

 杉田水脈は、「日本国憲法 第3章国民の権利及び義務 第11条」の「国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる」、「世界人権宣言 第1条」の「すべての人間は、生れながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である」の否定論者に位置していることになる。

 「日本国憲法」と「世界人権宣言」に従わなければならない国会議員が衆議院議員として2期も務めている。当然、国会議員の資格がないことになるが、このような杉田水脈を安倍晋三が歓迎し、厚遇したというのは皮肉な判断となる。

 上記「朝日デジタル」記事は自民党内でも批判が上がっていることを紹介しているが、自民党幹事長二階俊博は問題視しない考えを示したと各マスコミが伝えていたから、その記者会見のテキスト分を拾ってみた。

 「二階俊博幹事長記者会見」(自民党/2018年7月24日(火)10:41~10:55)

 記者「TBSです。自民党の杉田水脈議員が月刊誌に対する寄稿で、LGBTの当事者に対して次のように寄せられております。『LGBTのカップルのために税金を使うことに賛同が得られるのか。彼ら彼女らは子供を作らない、つまり『生産性』が無い』ということであります。

 一方で杉田議員は、生き辛さに係わることをクリアできれば、LGBTの方々にとって日本はかなり生きやすい社会になるとも述べているんですが、この発言に対して野党や自民党内から批判の声が上がっています。

 自民党内からは、生産性の無い人間などはいない、政治では無く、ただのヘイトだという主張を寄せる議員もおります。自民党の政権公約の中で、多様性を受け入れる社会の実現を図るということを公約にも掲げているということで、この発言に対して幹事長のご所見をお伺いしたいと思います」

 二階俊博「この当事者の方が社会・職場・学校の場で辛い思いや不利益を被ることの無いように多様性を受けて入れていく社会の実現を図るということが大事だと思っておりますから。そういうことに今後も努力をしていきたいと思っております」

 記者「TBSです。このような発言が上がるということになると、党としては多様性を認めるということを掲げている一方でこういう主張をするということで残念だという声も上がっているんですけれども、幹事長は率直にどのように、ご発言を受け止めますか」

 二階俊博「いろんな考え方の人がおりますからね、それを右から左まで各方面の人が集まって自由民主党は成り立っておると思っておりますから。こういう発言があったということは、そういう発言だということに理解をしていくということで進めて行きたいと思っております」

 記者「TBSです。なかなか案件をたくさん抱えていらっしゃる中で、考えの中には無いのかもしれないですけれども、杉田議員から直接、幹事長室としてお話を聞くという機会を設ける考えはありますでしょか」

 二階俊博「今のところは特別そういう考えは持っておりません」

 ――(中略)――

 記者「朝日新聞です。杉田議員の寄稿について、かつて他の政党に所属していらっしゃって、落選中も同様の発言等をされておりましたけれども、その後に自民党が公認候補として擁立した責任を問う声も出ておりますが、この辺について幹事長はどうお考えでしょうか」

 二階俊博「まぁ人それぞれ政治的立場は元より、いろんな人生観もありましょうし、いろんな変化があるわけで、元野党に所属しておって今自民党ということだって有り得るわけですから。別にそのことに大きな驚きを持っているわけではありません」

 要するに二階俊博は杉田水脈の月刊「新潮45」寄稿文に現れている、日本国憲法や世界人権宣言に反する特定の人間存在に対する多様性の排除、特定対象の人間排除、同じく特定対象の人権否定の思想そのものは何ら問おうとはしていない。

 但し内容に問題があることには気づいている。だから、杉田水脈の思想とバランスを取る意味で、「多様性を受けて入れていく社会の実現を図るということが大事だ」などと言って誤魔化している。

 思想そのものの問題点を問おうとする気持がないことは、「いろんな考え方の人がおりますからね」とか、特に朝日新聞記者が「落選中も同様の発言等をされておりましたけれども、その後に自民党が公認候補として擁立した責任を問う声も出ておりますが」の問に対して「まぁ人それぞれ政治的立場は元より、いろんな人生観もありましょうし」との発言で、国会議員の資格があるとは思えない杉田水脈の思想を自民党に数多くいる政治家の中の単なる一政治家の一考えに過ぎないとしている点に如実に現れている。

 つまり公認の際に強く推挙したと言うことで安倍晋三自身の人を見る観察眼が疑われたり、あるいは思想の親近性を疑われた場合、こういったことが内閣支持率に影響したり、安倍晋三の人格そのものの評価に繋がることを避ける意味から、問題視しない事勿れな選択をしたということなのだろう。

 海千山千の政治家だけのことはある。総裁選三選を狙う安倍晋三のために騒ぎ立てまいとする嗅覚が働いた。だが、二階俊博や安倍晋三側に自分たちだけが利益とするどういった事情があるにせよ、「多様性を受けて入れていく社会の実現を図るということが大事だ」といったことで杉田水脈の差別思想を問題ないとすることはできない。LGBTの「彼ら彼女らは子供を作らない、つまり『生産性』がない。そこに税金を投入することが果たしていいのかどうか」といった差別思想を持ち、杉田水脈が国民の選良の一人であることに変わりはない以上、そのような差別思想をそのまま放置していい理由とはならない。

 放置した場合、国民の立場よりも自分たちの立場を考えてのこととなる。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

菅義偉の北方領土墓参団政府関係者等に対するロシア当局の衛星携帯没収抗議に見る不都合な情報の隠蔽

2018-07-24 11:40:07 | 政治

 【謝罪】 

 誤った情報の提供だったことを徹底周知するために再度謝罪文を載せることにしました。
 
 2018年7月16日付と2018年7月19日付の当ブログに、〈福岡県知事が7月5日19時00分に自衛隊に対して「人命救助及び物資輸送に係る災害派遣要請」を行い、引き続いて大分県知事が同7月5日19時30分に同じく自衛隊に対して「人命救助に係る災害派遣要請」を行っていることを2018年7月5日付け防衛省サイト、《九州北部における大雨に伴う人命救助等に係る災害派遣について(21時45分現在)》で記している。〉と書いたが、1年前2017年7月の北九州豪雨災害時の自衛隊派遣でした。

 誤った情報を与えたことを深く陳謝し、平成30年7月6日の防衛省西日本豪雨自衛隊災害派遣の記事に差し替えました。

 改めて深く陳謝します。  

 2018年7月22日、航空機による北方領土墓参団が国後島で入域手続きを行った際、ロシア側が政府関係者やマスコミ関係者らが持参していた衛星携帯電話を没収したこと、官房長官菅義偉が7月23日午前記者会見で記者からこのことを問われてロシア側に抗議したことを2018年7月23日付マスコミが伝えていたが、菅義偉が言う抗議に対するロシア側の反応を何も伝えていなかったから、この件に関する動画の遣り取りを見てみた。

 菅義偉の発言は最初はそれなりにはっきりと発音するが、最後の方になると声のトーンを下げてしまって、その多くがはっきりとは聞こえない発言の終え方をし、何度も聞き返さないと、言葉自体の聞き取りが遮られることになる。

 国会答弁も似たり寄ったりで、最後の一音まで明確に発音することなく、発言を端折るような不明確な話し方となる。

 記者や議場の各議員の背後にいる国民の存在まで意識することはなく、眼の前にいる記者や議員にのみ伝われば良しとの姿勢が最後まで明確に伝えようという意思を削ぐ結果を招いているに違いない。

 常に国民を意識していないから、このようなことが起きる。つまり「国民」という言葉を使う必要に迫られたときだけ国民を意識する、本質は不誠実な性格だということなのだろう。政治家として何様と思っているのかも知れない。

 《内閣官房 菅義偉2018年7月23日午前中記者会見》

 菅義偉(冒頭発言ナシ)「えー、どうぞ」

 記者「朝日新聞の古田です。昨日、北方領土の墓参に訪れた政府関係者とマスコミの衛星電話をロシア当局が没収したとの一部報道があります。事実関係と過去の同じ事例があったのかどうか、教えてください」

 菅義偉「誠に遺憾なことでありますが、えー、現地当局により政府同行者及び同プレスの衛星携帯が没収されたことは事実であります。
過去の個別事案について網羅することは困難でありますけども、現時点で確認した範囲では過去にイリジウム携帯などの電子機器類がロシア側当局によって没収されたことはあったということです。

 当然ながら我が国としては、その際にも抗議を行っております」

 記者「(朝日新聞の古田?)今回のようなビザなし渡航というのはですね、日露当局の主権を先ず棚上げした形で実施しております。そうした中でロシアの国内法を適用されたことへの受け止めと、日本政府として外交上どうした措置を採っていくかについておっしゃってください」

 菅義偉「先ず、ご質問どおり今回の航空機を利用した墓参は(・・・・・?)を利用して実施されております。四島に関する我が国の法的立場については何ら変わるものではありません。

 今般の事案の発生を受け、ロシア側に対しては外交ルートを通じて、『こうした行為は我が国の法的立場に鑑み受け入れられず遺憾である』。この申し入れを行い、抗議をすると共に没収された衛星携帯の早期返却を求めております」

 記者「2点確認差させてください。1点目は最初に紹介があった過去の事例というのはいつ頃起きたものなのかということと、後は抗議した日付等はいつ頃なんでしょうか」

 菅義偉「過去の件については(・・・・・)お聞き頂きたいというふうに思います。22日に抗議とありますけども、在ロシア日本大使館参事官レベルから同外務省に対して、また在サハリン州(?)のユジノサハリンスク総領事館から同地にあるロシア側外交代表部に対して抗議を行いました」

 日本政府の抗議に対するロシア側の反応は何も伝えていない。当初の反応の多くが「抗議内容を本国政府に伝える」というもので、回答までに時間がかかる場合が多いが、これもロシア側の反応の一つであって、抗議とそれに対する回答によって一つの情報としての纏まりを持つのだから、抗議したことだけを伝えるのは情報伝達の意味を成さない。

 特に過去のロシア当局によるイリジウム携帯などの電子機器類の没収は既に抗議に対する回答を得ているはずだから、今回の抗議に対する回答の参考例にならないとも限らないことを考えると、それを伝えないということは情報隠蔽に相当する

記者が「今回のようなビザなし渡航というのはですね、日露当局の主権を先ず棚上げした形で実施しております。そうした中でロシアの国内法を適用されたことへの受け止め」をと聞いたのに対して菅義偉は「四島に関する我が国の法的立場については何ら変わるものではありません」と答えている。

 「四島に関する我が国の法的立場」とは、断るまでもなく、「北方領土は歴史的にも国際法上も日本固有の領土」であり、いわば主権は日本国に所属するという立場を指す。

 だが、現実にはロシアは北方四島はロシアの主権下にあるロシアの領土であることを主張していることになる国内法を適用した。と言うことは、ビザなし交流は「我が国固有の領土」という日本の立場をもとに1992年から北方四島の元島民とロシア人島民らの墓参やその他の交流が始まっているということだが、このような交流に限って相手国の主権行為であるビザ発行を必要としない形でのロシアの主権の棚上げであることをロシアは示したことになる。

 いわばロシアが衛星携帯没収という手を使ってロシアの主権の棚上げはビザなし交流事業に限定した措置であって、北方四島そのものの主権は当方にありと主張したことは日本にとっては不都合な事実となる。そして過去に於いてもイリジウム携帯などの電子機器類没収で同じことを主張した。

 当然、その没収に向けた日本政府の抗議への回答にしても、日本にとって不都合な事実――都合の良い事実ではなかったということであるはずだ。都合の良い事実であるなら、再び没収という手を使って主権を主張することはない。

 このことはロシア側が北方四島はロシア領土であること、ロシアに主権があることを一貫して主張していることと符合する。

 今回の衛星携帯の没収を使った主権の主張は2018年7月18日に成立した「改正北方領土問題解決促進特別措置法」(正式名「北方領土問題等の解決の促進のための特別措置に関する法律の一部を改正する法律案」)に関係することはその内容と成立に対するロシア側の反応からも窺うことができる。

 改正内容は北方四島に於ける特定共同経済活動の円滑な実施のための環境整備等を謳い、2019年4月1日からの施行となっていて、領土権や返還については触れていないが、改正前の法律第1条目的は、〈この法律は、北方領土が我が国固有の領土であるにもかかわらず、北方領土問題が今なお未解決である現在の状況並びにこれに起因して北方地域元居住者及び北方領土隣接地域が置かれている特殊な事情にかんがみ、北方領土問題その他北方地域に関する諸問題についての国民世論の啓発、交流等事業の推進、北方地域元居住者に対する援護等の措置の充実並びに北方領土隣接地域の振興及び住民の生活の安定に関する計画の策定及びその実施の推進を図る等のために必要な特別の措置を定めることにより、北方領土問題及びこれに関連する諸問題の解決の促進を図り、ひいては北方領土の早期返還を実現して我が国とロシア連邦との間の平和条約を締結し、両国の友好関係を真に安定した基礎の上に発展させることに資することを目的とする。〉(文飾は当方)云々と、北方四島は日本が主権を有する日本固有の領土であり、早期返還の実現を目指すことを謳っている。

 いわばどう改正しようと、法律全体を見るとロシアが北方四島はロシア領だとしているのに対して「北方領土は歴史的にも国際法上も日本固有の領土である」という立場を取り、その早期返還を策していることになる。

 7月18日成立翌日の7月19日、ロシア外務省はは日ロ両国が北方領土で計画している共同経済活動の実現に向けて信頼醸成を図るとの合意に反し、同計画を進める上で「重大な障害」になると批判、同法が北方領土を日本固有の領土と規定し、「早期返還」を訴えていることを問題視し、平和条約締結問題の交渉に、受け入れられない選択肢を押し付ける試みだと断じる声明を発表したと、2018年7月20日付「沖縄タイムス」は早速のロシア側の反応を伝えている。

 声明は「日ロ関係が劇的に発展している今、なぜ法改正を行う必要があったのか理解できない」という指摘もしていると書いている。

 そこで早速ロシア側は衛星携帯没収という挙に出て、北方四島の主権がロシア側にあることを改めて知らしめたと言うことではないだろうか。

 日本政府にとっての最大の不都合はロシア側が北方四島を返還する気がないという事実である。その不都合な事実に関わる情報隠蔽を心掛ける余り、北方四島に関係する他の細々とした不都合な事実をも情報隠蔽することになる。

 目的は安倍晋三の対ロシア外交が順調に進んでいると見せかけるためである。

 まるで失恋がはっきりした男が相手の女との関係は続いているかのように周囲に思わせるようにである。

 情報はそれが都合・不都合に関係なく、誠意を持って正直に公表しない場合、内政にしても外交にしても国民にどこかでウソ・誤魔化しを働いていることになる。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

安倍晋三の提灯持ち産経阿比留瑠比の「『赤坂自民亭』批判はこじつけだ」は贔屓の引き倒しと人命への想像力欠如

2018-07-23 12:22:37 | 政治

 【謝罪】 
 
 2018年7月16日付と2018年7月19日付の当ブログに、〈福岡県知事が7月5日19時00分に自衛隊に対して「人命救助及び物資輸送に係る災害派遣要請」を行い、引き続いて大分県知事が同7月5日19時30分に同じく自衛隊に対して「人命救助に係る災害派遣要請」を行っていることを2018年7月5日付け防衛省サイト、《九州北部における大雨に伴う人命救助等に係る災害派遣について(21時45分現在)》で記している。〉と書いたが、1年前2017年7月の北九州豪雨災害時の自衛隊派遣でした。

 誤った情報を与えたことを深く陳謝し、今年の自衛隊災害派遣の防衛省の記事に差し替えました。

 改めて深く陳謝します。  

 文飾は当方。

 《【阿比留瑠比の極言御免】「赤坂自民亭」批判はこじつけだ》産経ニュース/2018.7.19 01:00)

 西日本豪雨への政府対応をめぐり、野党やマスメディアによる安倍晋三内閣批判が目立つ。対応の検証やそこから教訓をくみ取る努力は当然必要だが、ピント外れのものや政権のイメージダウンを狙った印象操作らしきものもある。
 特に標的とされたのが、自民党が5日夜に開いた懇談会「赤坂自民亭」だ。

 「自民党に強く申し上げたいが、首相、防衛相、官房副長官が『6日夜』に不適切な会合をしていた」

 立憲民主党の蓮舫副代表は15日のNHK番組でこう声を張り上げ、安倍政権幹部が「機能しなかった」と主張した。だが、この発言は二重の意味で間違いだといえる。

 懇談会の日付違い

 まず、自民党の中堅・若手議員が閣僚や党幹部と膝を交えて意見交換する赤坂自民亭が開かれたのは5日夜のことであり、被害の深刻さが明らかになってきた6日夜ではない。前提となる事実関係が異なるのでは話にならないが、蓮舫氏は間違いを指摘されても謝罪や訂正をしなかった。

 確かに、気象庁は5日午後2時の記者会見で「西日本と東日本では、記録的な大雨となるおそれがあります」と発表していた。ただ、安倍首相が赤坂自民亭に参加した午後8時半時点で、特に大きな被害が報告されていたわけではない。

 また、政府は気象庁の記者会見直後に、小此木八郎防災担当相出席の下で関係省庁災害警戒会議を開き、警戒態勢を整えていた。小此木氏はこの時点で「大災害を改めて思い出し、対策に万全を期すように」と指示している。

 もちろん被災者・関係者にとっては、赤坂自民亭は不愉快だったろうが、蓮舫氏が述べた「機能しなかった」は言い過ぎだろう。

 まして、立憲民主党は5日夜、手塚仁雄国対副委員長が「政治活動25周年感謝の集い」を催しており、蓮舫氏や枝野幸男代表、福山哲郎幹事長らも出席して祝杯を挙げていた。

 「危機管理の責任者は政府だ。(政府・与党と野党を)同じに議論するのは間違っている」(福山氏)という部分はあるにしても、居丈高に政府だけを責め立てる資格はあるだろうか。

 投稿利用する朝日

 メディアの姿勢にも疑問が残る。例えば朝日新聞は13日付朝刊の読者投稿欄で、「自民『宴会』 命の重さ考えたか」という投稿を掲載した。それは次のように記していた。

 「西日本各地に大雨警報や土砂災害警戒情報、避難指示・勧告が出て、人が亡くなる被害も伝えられていた5日夜、自民党議員数十人が『宴会』を開き、安倍晋三首相も出席していた」

 「安倍政権は緊張感を失い、傲慢になってしまった。国会議員の使命を軽視し、人間らしさを失った人たちには議員を辞めていただきたいと切に願う」

 だが実際は、気象庁が福岡、佐賀、長崎の各県に大雨特別警報を出したのは6日午後5時10分のことである。事実関係があいまいな読者投稿を利用して、安倍政権をおとしめようとしているようにも見える。

 朝日の6日付朝刊を確認すると、政治面に小さく赤坂自民亭開催の記事があったが、特に批判的なトーンはない。また、西日本豪雨の関連記事は第2社会面に載っているものの、あまり大きな扱いではなく、この時点で朝日もこのような惨事になるとは予想していなかったことが分かる。

 死者200人を超える大災害を、こじつけで政権批判に利用するような不謹慎なまねは、厳に慎むべきである。(論説委員兼政治部編集委員)

 文飾を施した箇所を改めて取り上げてみる。

西日本豪雨への政府対応をめぐり、野党やマスメディアによる安倍晋三内閣批判が目立つ。対応の検証やそこから教訓をくみ取る努力は当然必要だが、ピント外れのものや政権のイメージダウンを狙った印象操作らしきものもある。

まず、自民党の中堅・若手議員が閣僚や党幹部と膝を交えて意見交換する赤坂自民亭が開かれたのは5日夜のことであり、被害の深刻さが明らかになってきた6日夜ではない。前提となる事実関係が異なるのでは話にならないが、蓮舫氏は間違いを指摘されても謝罪や訂正をしなかった。

確かに、気象庁は5日午後2時の記者会見で「西日本と東日本では、記録的な大雨となるおそれがあります」と発表していた。ただ、安倍首相が赤坂自民亭に参加した午後8時半時点で、特に大きな被害が報告されていたわけではない。

政府は気象庁の記者会見直後に、小此木八郎防災担当相出席の下で関係省庁災害警戒会議を開き、警戒態勢を整えていた。小此木氏はこの時点で「大災害を改めて思い出し、対策に万全を期すように」と指示している。

死者200人を超える大災害を、こじつけで政権批判に利用するような不謹慎なまねは、厳に慎むべきである。 

 要するに自民党7月5日夜開催の懇談会「赤坂自民亭」への安倍晋三出席を標的とした野党やマスメディアの批判は〈ピント外れのものや政権のイメージダウンを狙った印象操作らしきものもある。〉と逆批判している。

 〈らしきものもある。〉と断定はしていないが、〈蓮舫氏が述べた(安倍政権幹部が)「機能しなかった」は言い過ぎだろう。〉とか、野党が、〈居丈高に政府だけを責め立てる資格はあるだろうか。〉と批判していること、朝日新聞が読者投稿欄を利用して、〈安倍政権をおとしめようとしているようにも見える。〉と批判している以上、野党やマスメディアに対する批判は限りなく断定に近い。

 産経新聞論説委員兼政治部編集委員阿比留瑠比は、〈まず、自民党の中堅・若手議員が閣僚や党幹部と膝を交えて意見交換する赤坂自民亭が開かれたのは5日夜のことであり、被害の深刻さが明らかになってきた6日夜ではない。〉と明晰な頭で事実関係を解説、〈確かに、気象庁は5日午後2時の記者会見で「西日本と東日本では、記録的な大雨となるおそれがあります」と発表していた。ただ、安倍首相が赤坂自民亭に参加した午後8時半時点で、特に大きな被害が報告されていたわけではない。〉と事実関係を更に補強、これらの事実関係を絶対とすることで安倍晋三の出席を批判されるべきないこととして擁護している。

 その上で、〈政府は気象庁の記者会見直後に、小此木八郎防災担当相出席の下で関係省庁災害警戒会議を開き、警戒態勢を整えていた。小此木氏はこの時点で「大災害を改めて思い出し、対策に万全を期すように」と指示している。〉として、政府の災害対応に不備がなかったことを強調している。

 但し防災担当相小此木八郎が「大災害を改めて思い出し、対策に万全を期すように」と指示した意味はここ何年か、毎年夏になると、集中豪雨や記録的短時間大雨といった異常気象が発生、日本列島のいずれかの地域が多くの人命の犠牲を伴う洪水被害や浸水被害に遭遇する最近の気象状況に備えた危機管理の訴えにあるはずである。

 7月22日のNHK日曜討論「西日本豪雨 命を守るために何が必要か」でも男性アナウンサーが「これまで経験したことがなかったような大災害が毎年のように起きている中、私たちの命を守るために何が必要か」と、ほぼ例年化している自然災害を発端とした人命に犠牲への対応を問いかけている。

 つまり小此木八郎の発言も、NHK「日曜討論」での男性アナの発言も、突発的豪雨災害がほぼ例年化していることを受けた人命への危機管理から出ている。

 気象庁の5日午後2時の記者会見にしても、単に記録的大雨の予想を発表しただけではなく、記録的大雨に伴う土砂災害や低い土地への浸水、河川の増水・氾濫への厳重な警戒をも呼びかけていたことは「気象庁7月5日報道発表」に記載されていて、当然、突発的豪雨災害がほぼ例年化している最近の気象状況と併せて予想される土砂災害や低い土地への浸水、河川の増水・氾濫によって人命の危険を伴うことまで予想し、そのような予想を前提とした関係省庁災害警戒会議であり、政府の危機管理でなければならなかったことになる。

 でなければ、危機管理とならない。

 果たして政府は全体としてそのような危機管理態勢を取っていたのだろうか。 

 安倍晋三は7月17日の参院内閣委員会で共産党辰巳孝太郎が安倍晋三の「赤坂自民亭」出席を批判したのに対して、「小此木防災大臣出席のもとで関係省庁災害警戒会議を開催し、政府全体として必要な警戒態勢を敷き、その後も被害拡大を想定して政府の対応態勢を拡大するなど、如何なる事態にも対応できる万全態勢で対応を取ってきたところであります」と答弁している。

 いわば「政府全体として必要な警戒態勢」を敷いていたのだから、安倍晋三自身の「赤坂自民亭」は問題ないとした。だが、辰巳孝太郎に対して「災害対応というのはですね、まさに基本的には私が陣頭指揮を取る」と発言している。

 当然、関係省庁災害警戒会議も含めて敷いていた「政府全体として必要な警戒態勢」であるなら、安倍晋三は「陣頭指揮を取る」政府のトップなのだから、「政府全体」とは一体不可分の関係にあり、トップとしての立場から「警戒態勢」に於ける最大の責任を有していた。

 だが、一体不可分の関係にある「政府全体」と自身を分けて「赤坂自民亭」に出席、何ら問題はないとした。

 このことがほぼ例年化している大規模な自然災害を予想しなければならない中で安倍晋三の人命に対する想像力の欠如を如何に物語っているかを産経新聞論説委員兼政治部編集委員阿比留瑠比が明晰な頭脳で挙げていた、〈赤坂自民亭が開かれたのは5日夜のことであり、被害の深刻さが明らかになってきた6日夜ではない。〉とする事実関係の正当性・合理性を問うことで検証してみる。

 7月5日午前、兵庫県猪名川町の工事現場で大雨で増水した溜池で排水口から外れたフィルターを回収作業中、作業員3人が逆に排水管に吸い込まれて約600メートル流され、1名が死亡、2名が骨折の重症を負ったと、7月10日付「神戸新聞NEXT」が伝えている。

 突発的豪雨災害がほぼ例年化している気象状況にあることから、人命の犠牲への危険性に備えなければならなかった記録的大雨を予想する気象庁記者会見の7月5日午後2時よりも前の同日午前中に既に大雨によって犠牲者が出ていた。

 7月6日05時20分発信の「西日本新聞」記事には、〈広島県安芸高田市の長瀬川では、5日から連絡が取れなくなっていた近くの無職宮根和彦さん(59)が発見され、死亡が確認された。〉と出ている。

 発見された日時が6日であったとしても、安否不明となったのは7月5日であり、大雨が降っている中で、あるいは大雨後に水に流された場合、それが目撃されていない場合、救助措置が後手に回ることから、救命の可能性は著しく低下する。

 目撃されていて、連絡を受けた消防や自衛隊が素早く駆けつけたとしても、大雨による出水によって救助は困難を極めることになって、100%の救命が保証されるわけではない。

 こういった情報は関係各省から首相官邸に集約されていなければならない。でなければ、自然災害発生のたびに安倍晋三が「人命第一で情報の収集に努める」と言っていることは嘘になる。

 福岡県知事からの防衛省に対する自衛隊への災害派遣要請も7月6日の9時56分に行われている。

 《福岡県北九州市における土砂崩れに伴う人命救助に係る災害派遣について(11時00分現在)》防衛省/平成30年7月6日)

 (1)要請日時 平成30年7月6日(金)09時56分
 (2)要請元 福岡県知事
 (3)要請先 陸上自衛隊第4師団長(福岡)
 (4)要請の概要 人命救助(以上)

 当然、この派遣要請とマスコミ記事が7月5日の時点で大雨による死者が出ていることを伝えていることと併せると、死者のみならず、数少なくない人命救助に関わる安否不明案件、あるいは行方不明案件は既に7月5日夜遅くには始まっていたと見なければならない。

 もし安倍晋三が国民の命に対する想像力を欠くことなく「国民の生命と財産を守る」意識・責任を真摯なまでに常に有していたなら、いわば人命への想像力を欠如していなかったなら、気象庁が7月5日の午後2時に日本列島の広範囲で記録的な大雨の危険性を予想した時点で、ほぼ例年化している自然災害を発端とした人命の犠牲を踏まえて、防災対応に於ける陣頭指揮者として政府一体となって首相官邸か首相公邸に陣取って「人命第一の情報」収集に努めると同時に予想される記録的な大雨の推移を見守っていなければなからなかったはずだ。

 人命への想像力の欠如という点では産経新聞論説委員兼政治部編集委員阿比留瑠比はに対しても同じ指摘ができる。〈赤坂自民亭が開かれたのは5日夜のことであり、被害の深刻さが明らかになってきた6日夜ではない。〉とする、そのことが問題となっているわけではなく、例年化に備えた前以っての危機管理が問題となっていることを無視した正当性・合理性を欠いた事実関係等を挙げて安倍晋三の危機対応の不備・満足に果たしていなかった人命への想像力の欠如に免罪符を与えることはできなかったろう。

 提灯持ちでなければできない危機対応に於ける責任の見逃しであろう。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

西日本豪雨:安倍晋三被災者支援「先手先手」・「時間との戦い」を言うなら、ヘリでの物資輸送を日常化してから

2018-07-20 11:26:25 | 政治

 安倍晋三は2018年7月8日午前8時に設置した「非常災害対策本部」で、「救命救助、避難は時間との戦いです」と言い、「先手先手の被災者支援」を指示した。

 被災者支援も「時間との戦い」でなければ困る。

 2018年7月9日、安倍晋三は首相官邸で「平成30年7月豪雨非常災害対策本部会議(第2回)」を開催、「各省横断の被災者生活支援チームの設置を指示」した上で、「このチームを通じ、生活支援物資の供給、そのための物流の確保、被災自治体への職員派遣や、クーラー設置等による避難所生活の環境整備、仮設住宅の確保など、必要が生じる事柄を先取りして、プッシュ型での支援によって確実に被災者の皆様の元に届くよう、国・自治体が緊密に連携して一丸となって迅速に進めてまいります」と約束した。

 西日本豪雨の後、一転して命に関わる危険な暑さ続いている。テレビのユースを見ると、被災者の避難場所となっている小・中学校の体育館に砕いた氷と水が入った大きな四角の箱にペットボトル入りのジュース類が沢山届いていて、被災者は選り取り見取りで何本も手に取っていった。被災者も、「冷たい飲み物は助かる」と言っていた。

 だが、裏を返すと、体育館がクーラーがなくて、暑いからだろう。

 但し2018年7月19日付「電気新聞ウェブサイト」記事を見ると、経済産業省の要請・電力会社や電気工事会社の協力で移動可能な床置式のスッポットクラーの設置が進んでいるようだ。被害の大きかった倉敷市真備町地区の3カ所の小学校体育館を始め、水島地区の2カ所小学校体育館、計5カ所で計15台のスポットクーラーを7月10日に設置したと書いている。

 安倍晋三が「クーラー設置等による避難所生活の環境整備」を指示したのが7月9日、クーラー設置が7月10日だから、素早い対応ということになる。

 尤も2018年7月11日付「時事ドットコム」記事を見ると、違った景色が見えてくる。

 真備町岡田の岡田小学校の体育館にエアコンが設置されたものの、体育館に入りきれずに10人程が寝泊まりに利用している教室には設置されず、依然として暑い生活を強いられているという。

 この記事翌日の7月12日付「経済産業省」のページには「支援物資の準備状況」が次のように記載されている。

物資供給の可能量(発災後1週間分の供給可能量)について(12日5時00分現在)

•大型クーラー
約1,400台(調達要請後即日(24時間以内に)出荷可能。出荷後の被災地への到着は道路事情による)

•スポットクーラー
約1,800台(調達要請後即日(24時間以内に)出荷可能。出荷後の被災地への到着は道路事情による)

•ルームエアコン
約150台(出荷可能日は未定)(以上)

 ここに書いてある「発災後1週間分の供給可能量」とは7月5日を起算日として7月12日5時までの1週間という意味なのだろう。と言うことは、大型の自然災害が発生した場合に備えて、クーラー設置について前以って電力会社や電気工事会社と契約していたと考えることができる。

 これこそが安倍晋三の言う「先手先手」の対応であり、「時間との戦い」を可能とする要素だが、倉敷市の2地区5箇所の体育館にクーラーを設置したのが7月10日となった理由は避難所の体育館までの道路が冠水していて、水が引くのを待つ、あるいは土砂崩れで通行止めになった道路の開通を待たなければならなかったといった事情があったからに違いない。

 但し真備町の住民が避難を開始したのは倉敷市が真備町地区に避難勧告を出し7月6日午後10時頃からだというから、7月6日の夜から7月10日まで暑い時間を過ごさなければならなかった。

 道路が冠水していたり、通行止め箇所があったなら、なぜヘリコプターを物資輸送とクーラー設置に必要な人員輸送に使わなかったのだろうか。使ってこそ、「時間との戦い」を制する「先手先手」となる被災者の要望に応えることができる「早急な避難所生活の環境整備」が可能となる。

 2011年3月11日の東日本大震災後の2011年3月30日付《ブログ》に物資輸送や物資支援にヘリコプターを使わないことの批判記事を書いたが、このヘリの物資輸送について河野太郎が傾けているウンチクをブログに併記した。一部抜粋。

 《自衛隊のヘリから物資を投下する?》(河野太郎公式サイト/2011年3月22日 00:21))

 〈「日本の航空法89条は空中からの物件の投下を禁止しているけれど、自衛隊は適用除外。今回の支援でヘリから物資を投下しているかといえば、していな い。なぜならヘリを降ろして積み卸しをしているから。

 自衛隊のヘリが物資を投下する方法は二つあって、ひとつは低速前進しながら後部ハッチを開け、機首を上げると物がハッチ から連続して滑り落ちていく。これは滑走路のような場所でやるが、今回はなかなかそんな場所がない。

 二つめは、大きな網の中に物資を入れて機体の下に吊す。低空でホバリングしながら降ろすことはできるが、これも今回、着陸して積み卸しができるの で、あまり意味がない。〉

 相変わらずバカな男。「着陸して積み卸しができ」ない場所にこそ降ろして、ヘリの存在意義が大きく出てくる。

 「AHS アカギヘリコプター株式会社」

KAMOV 国内最大の上昇性能と吊下げ能力(最大5.0t)を誇るヘリコプター。これまでのヘリコプターでは対応できなかった重量物質輸送を可能としました。建設工期(時間)の短縮やコストの削減を実現します。

LOGGING ロギング 山全体の木材を切り出す皆伐作業をはじめ、間伐切り出しおよび苗木運搬まで、林業に関するすべての輸送を、安全・確実かつ迅速に行います。とくにロングラインオペレーション(長吊り)技術は、これまで培った実績と経験によるもので、数多くの信頼と高い評価をいただいています。

建設協力 
山岳地での建設協力や食糧物資輸送には、ヘリコプターの利用は欠かせません。当社は、低騒音と高いコストパフォーマンスに優れたK-MAX機をはじめ多数を保有。

豊富な実績
送電線建設
山間部の治水や治山工事
山小屋食料運搬
災害からの復旧工事
無線関係施設の資材輸送
国立国定公園の遊歩道の補修資材や
トイレ等の環境設備輸送など

ニーズに応じた機種を採用し、安全第一でお応えします。

 このサイトにはいくつか画像が載っているが、山で伐採した丸太はワイヤーを降下させたヘリコプターがホバーリング状態で空中で待機、ワイヤーの先端を何本かに束ねた丸太か、太い丸太なら1本のままで括り付けた後、そのまま引き上げて、宙ぶらりんの状態で麓まで運搬する。


 もし物資輸送で着陸箇所がない場合は上記の逆のことを行って荷を降ろすことになる。風を受けて荷が少し揺れるが、余程の風がない限り、狙った位置に降ろすことができるはずだ。もし荷が地面に着地したときの衝撃を和らげる必要があるなら、底面に直径20センチ程度の一定の弾性を持たせたバネを取り付けたパレット(荷台)を開発して、その上に物資を乗せればいい。


 道路が冠水し、水が引いていない、あるいは土砂崩れで通行止めとなって支援物資のトラックが前へ進めないといったニュースを災害のたびに聞く。

 あるいは道路が復旧しても、全部の道路の復旧といかないから、勢い当座は渋滞することになって、物資輸送のトラックが立ち往生したりするといったことが災害時の見慣れた光景となっている。

 安倍晋三が「必要が生じる事柄を先取りして、プッシュ型での支援によって確実に被災者の皆様の元に届くよう、国・自治体が緊密に連携して一丸となって迅速に進めてまいります」と、政府が被災した自治体からの要請を待たずに必要不可欠な定番物資を調達し、被災地に緊急輸送する支援方法のプッシュ型をいくら実践したとしても、道路事情次第では、「先手先手」にしても、「時間との戦い」にしても、狙い通りの進行が阻害されて、直ちに被災者の要望に応えることができないばかりか、口先だけの言葉になりかねない。

 尤も安倍晋三は口先だけのところがあるから、本人は痛くも痒くもないかも知れないが、少なくとも一国の首相が「先手先手」、「時間との戦い」を口にする以上、ただでさえ様々な不安を抱えることになっている被災者の身になって災害支援でクリアしなければならないヘリの活用だと思う。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

安倍晋三の7/17参院内閣委「赤坂自民亭」出席問題なし答弁は政府全体と首相個人を分けた薄汚い言い抜け

2018-07-19 10:55:17 | 政治
 2018年7月17日付の「産経ニュース」が、7月17日の参院内閣委員会で共産党辰巳孝太郎の質問に対して安倍晋三が7月5日午後2時の気象庁の記録的大雨の恐れや洪水、浸水等への警戒を呼びかける記者会見後の夜の酒席懇親会「赤坂自民亭」の開催は「政府全体として必要な警戒態勢を敷いていた」から問題はないといった答弁をしたことを伝えていたから、事実そのとおりなのか、安倍晋三の例の如くの狡猾・巧妙な言い抜けではないのか、実際の遣り取りを取り上げてみることにした。文飾は当方。

2018年7月17日参議院内閣委員会

 辰巳孝太郎「日本共産党の辰巳孝太郎でございます。西日本を中心とした豪雨災害に於いて犠牲者は200名を超えました。今も多数の行方不明者も残っています。

 この連休中にもですね、この暑さで被災地が捜索(?)などが本当に大変であります。家屋、河川、山林、農産物の被害は甚大となっているわけでありますけれども、総理はですね、この災害対応に当たってできることは何でもやると、こうおっしゃっておられます。じゃあ、先ずカジノの審議やめて、災害対応の協力すべきだと思いますが、如何ですか」

 安倍晋三「あの、先程来申し上げておりますとおり、本日もですね、この委員会が開催されておりますが、しかしこの委員会が開催される前にですね、えー、既に官邸に於いて、私自身が危機管理官からですね、しっかりと現状認識についての報告を受け、それに対する対応を指示をしたところでございまし、その後、非常災害対策本部を開き、そこで関係閣僚からですね、報告を受け、それに対する指示をしているところございます。

 ま、その指示内容につきましては先程仰いましたように、例えば半壊があったとしても、仮設住宅に入居できるように。それは都道府県、地方自治体の判断でできるようにしたところ、そういう指示を出しているところでございますし、例えば真備町の廃棄物処理対策等についても、新たな自衛隊の派遣等についても、指示をしたところでございます。

 それ以外についても先程ご指摘のあった、例えば水道等でございますが、これは厚生労働省の方でございますが、今後の給水等の見通し等に対する更なる指示等もしたところでございます。

 そうした意味でできることは全て行っていますし、発災当初からプッシュ型によりですね、対応等も行っているところであります。本日も世耕大臣、あるいは農水大臣とですね、現地に派遣致しまして更に様々なご要望等を承りたいと、こう思っているところでございます。

 特に生業(なりわい)についても、心配、私も、現地を訪問した際、長い間醤油屋を営んできた方が殆どが水に浸かって、再開が困難だと、何とか再開をする見通しを持ちたいという話がございました。

 まさにオーダーメイド型化(?)してですね。一人ひとり、一企業一企業にあった対応しなければなりませんので、一軒一軒のご要望をこちらから承りにいってですね、対策をしていきたいということでございまして、経済産業省としてもそういう対応を取って参りますし、また農地等も大きな被害を受けておりますので、そうした農地、営農が再開できるようにですね、こちらも全力で支援をしていきたい。

 そういう意味に於いて我々政府一丸となって対応しているところでございます。国会のご審議につきましては国会決められることであろうと、このように考えております」

 辰巳孝太郎「そうじゃないんですよ。国民が求めているのは、この西日本豪雨による災害に於いて国会決議でも政府に対して全力で傾注して欲しいと求めてるわけですね。

 先程総理はですね、国土交通大臣を貼り付けにするのがこの審議ですよ。あるいは今日の審議だってこれ、委員長の職権で立てられましたけれども、連休様々なこともありました。熱中症でなかなか復旧作業も大変だという話が全国で起こっています。連休の最初の審議が、(?)入りの審議がカジノですよ。

 何でこんなことをしなきゃいけないのかっていう話なんですよ。総理、先程、要請をしなかったんだと、大臣を(被災現地に)貼り付けにしする要請をしなかったという話がありましたが、なぜそういう要請をしなかったんですか。与党にしなかったんですか。自由党(自由民主党?)にしなかったんですか」

 安倍晋三「あの、要請をしなかったかということでございますが、ですから、例えばですね、国会に於いて、こうした委員会に於いてですね、大臣ではなくて、副大臣が答弁できるということになっているのであればですね。それは副大臣が、副大臣を以って答弁をさせて頂きたいと、こう思うところでございますが、いわば国会の運営でございますから、国会に於いて決めることだと、このように思います。

 この委員会に於いてですね、副大臣ということで決定して頂ければ、副大臣に答弁させて頂きたいと、こう思っているところであります」

 辰巳孝太郎「総理、そういうことじゃないですよ。副大臣だからいいとか、大臣だからということじゃないんです。副大臣だって、大臣だって、一体となって災害対応してもらわな困るんですよ。カジノの審議やってる場合じゃないってのが国民の願いでしょ。

 何でこれに応えられないのか。なぜそういうこと、要請しないのかと。総理ね、今、6野党・会派が被災者生活再建支援法、これも議員立法でありますけれども、これ全壊であっても、上限が300万円しか出てこない制度なんですね。これを上限500万円まで少なくても引き上げようじゃないかと、いう法案を提出をしております。

 総理、こういう審議をやろうじゃありませんか。これ金曜日まで、22日までですけれども。改正案の審議、やろうじゃありませんか。できることは何でもやるとおっしゃるんだったら、この審議やってくださいよ」

 安倍晋三「あの、ま、災害対応というのはですね、まさに基本的には私が陣頭指揮を取るわけでございますが。担当大臣として防災大臣がいるわけでございます。小此木大臣が本部長としてまさに現場の指揮に当たっているわけでございますし、実際にですね、物事を動かしてくる上に於いてはなるべく現場に近いところが裁量権を持って進めていくことが大切であります。

 先程の半壊であってもですね。いわばこの仮設住宅に入居可能というのは政府ではなくて、まさに地方自体がそれをできることを可能としたわけでありまして、一つ一つ、この総理、あるいは大臣がですね、指示をしなくてはいけないという硬直的な対応では災害対応ということではできないわけであります。

 そういう意味に於きましてはまさに現場がですね、責任と権限を持ってしっかりと対応しているところでございますし、各被災県に対しましては政府からですね、このチームを派遣しているところでございますし、被災者生活支援チームを直ちに発足をし、避難所の生活環境の改善、あるいは一日も早くですね。安心した生活を取り戻せるような、そういう生活支援も政府機関として既にそういう対応をしてきているわけでございました。

 そういう中に於いてですね、まさにこの法案の審議についても政府として責任を持って対応しているところであります。そして議員立法に於きましてはまさ国会でですね、ご審議頂ければとそのように思います」

 辰巳孝太郎「総理、質問に答えて頂きたいんですよ。被災者生活再建支援法、現在全壊でも300万円です。余りにも少なさ過ぎる。
我々500万円、上限に引き上げるべきだと提案をしております。総理、ご存知かどうか分かりませんが、東日本大震災直後、自民党の政策提言でも、500万円、住宅支援。これ提言してますから。

 総理、300万円から500万円、これ審議やろうじゃありませんか。この我々の提言、どうお考えですか」

 安倍晋三「これまさに議員立法でございますから、国会でですね、各党・各会派がですね、ご議論頂ければと思っております」

 辰巳孝太郎「全く被災者に寄り添う姿勢ではないと思います。災害に於いて初動の対応は決定的だと思います。7月5日の午後2時に気象庁が記者会見で記録的な大雨の恐れがあるとして厳重な警戒を呼びかけました。

 午後10時までに大阪・京都・兵庫に於いて11万人に避難指示が出されました。ところが5日夜、『赤坂自民亭』と称した懇親会が開かれて、多くの批判の声がなされております。総理、なぜこれだけの批判が寄せられているとお考えですか」

 安倍晋三「えー、官邸に於いてはですね、ここ数年の気象状況を踏まえて6月に大雨に関する情報連絡室を設置をし、継続して情報収集を行うと共に6月29日に開催された地方防災会議に於いても私から梅雨末期の大雨による災害への対応を関係閣僚に指示をするのと大雨による災害に備えてきたところあります。

 今回の豪雨に対しては7月5日に気象庁が記録的な大雨となる恐れがあると発表した直後に小此木防災大臣出席のもとで関係省庁災害警戒会議を開催し、政府全体として必要な警戒態勢を敷き、その後も被害拡大を想定して政府の対応態勢を拡大するなど、如何なる事態にも対応できる万全態勢で対応を取ってきたところであります

 辰巳孝太郎「総理はこの5日の午後2時の気象庁の記者会見を知っていて、この『赤坂自民亭』に出席をされたんですか」

 安倍晋三「今、答弁させて頂きました。気象庁の発表があった直後に、発表がございましたから、小此木防災大臣の出席のもとで関係省庁災害警戒会議を開催をして、政府全体として必要な警戒態勢を敷き、その後も被害の拡大を想定して政府の対応態勢を拡大するなど、如何なる事態にも対応できる万全の態勢で被害の対応に当たってなきたところであります」

 辰巳孝太郎「知ってたということですね。これ飛んでもない話だと思いますよ。小此木防災大臣は13日の記者会見で、このときに自民党議員の懇親会が開かれていたことについて、『被災者が見たら面白くない話、一生懸命取り組んでいる者も大勢いる中で政治家として気を引き締めるべきだ』と述べておられます。総理、午後2時に気象庁が異例の記者会見をしたということを知っていたと言うなら、なぜこの懇親会に参加して、なぜこのような酒席は中止しろと言わなかったのでしょう」

 安倍晋三「今申し上げましたように私が知っているからこそですね、小此木防災担当、防災大臣出席のもとで関係省庁災害警戒会議を開催して、政府全体として必要な警戒態勢を敷き、その後も被害の拡大を想定して政府の対応態勢を拡大するなど、如何なるの事態にも対応できる万全の態勢で対応に当たってきたところでございます」

 辰巳孝太郎「ですから、なぜこのような酒席は中止しろと言わなかったんですか」

 安倍晋三私はこの政府としての対応について万全を期していく立場でございまして、政府としてはまさに今申し上げたようなですね、対応を取ってきたということでございます。いわば気象庁が記録的な大雨となる恐れがあると発表したときにですね、政府は対応を取っていないということではないんであろうと思います。

 まさに政府はですね、その直後に小此木防災大臣が出席のもとで関係省庁災害警戒会議を開催して、政府全体として必要な警戒態勢を敷き、その後も被害の拡大を想定して政府の対応態勢を拡大するなど、如何なる事態にも対応できる万全態勢で対応に当たってきたところでございます」

 辰巳孝太郎「政府全体と言いますけれども、まさに総理がその会合に出席して、官房副長官も出席していて、防衛大臣もお酒飲んでいたんですよ。

 これについては総理、全く不適切だと思わないということなんですか。防衛大臣、官房副長官、出席してるんですけど。これ不適切ではないというお考えなんでしょうか」

 安倍晋三「政府としての対応がですね、まさに今申し上げましたように7月5日に気象庁が記録的な大雨となる恐れがあると発表したと直後に小此木防災大臣出席のもとで関係省庁災害警戒会議を開催して、政府全体として必要な警戒態勢を敷き、その後も被害の拡大を想定して政府の対応態勢を拡大するなど、如何なる事態にも対応できる万全の態勢で対応に当たってきたところでございます

 辰巳孝太郎「先程総理がですね、西村官房副長官のツイッターについて発信を慎重に対応するに注意したって言うんですけど、何がじゃあ、悪かったんですか。西村さんの対応が悪くなかったんだったら、何が悪かったんですか」

 安倍晋三「先程各委員との遣り取りを聞いておられたんだろうと思いますが、そんときに西村副長官から誤解を与えたかもしれないということについての、いわば弁明があったわけでございまして、そういう意味で私が注意するように申し上げたところでございますj」

 辰巳孝太郎「誰も誤解していないんですよ。政府は初動対応、5日の夜にああいうことをしているついて国民は憤りを持って批判をしているわけですよ。それを素直にね、総理自身が認めないと、本当の国民の生命を守る政府なのかということになるかと思います。こんなときにカジノ
審議はするべきじゃないということを再度申し上げて、私の質問を終わります」

 辰巳孝太郎が気象庁の警戒予報情報記者会見後の酒席懇親会「赤坂自民亭」への出席は不適切ではないのかと追及したのに対して安倍晋三は「今回の豪雨に対しては7月5日に気象庁が記録的な大雨となる恐れがあると発表した直後に小此木防災大臣出席のもとで関係省庁災害警戒会議を開催し、政府全体として必要な警戒態勢を敷き、その後も被害拡大を想定して政府の対応態勢を拡大するなど、如何なる事態にも対応できる万全態勢で対応を取ってきたところであります」と繰返し答弁、出席は問題ないとした。

 このような答弁に対して辰巳孝太郎が「(気象庁の警戒予報情報記者会見を)知ってたということですね。これ飛んでもない話だと思いますよ」と批判しても、あるいは「なぜこの懇親会に参加して、なぜこのような酒席は中止しろと言わなかったのか」と追及しても、批判・追及を物ともせずに「私が知っているからこそですね、小此木防災担当、防災大臣出席のもとで関係省庁災害警戒会議を開催して、政府全体として必要な警戒態勢を敷き、その後も被害の拡大を想定して政府の対応態勢を拡大するなど、如何なるの事態にも対応できる万全の態勢で対応に当たってきたところでございます」とカエルにツラに小便を繰返している。

 要するに「政府全体として必要な警戒態勢を敷いていた」から、安倍晋三自身の「赤坂自民亭」への出席は問題ないとする構図を取らせている。

 但しこの構図は安倍晋三の首相個人の行動と政府全体の対応を分けた問題のすり替えに過ぎない。なぜなら安倍晋三自身は政府全体のトップに位置する最重要な一部分であって、自身と政府全体を分けることはできないし、当然、その行動と政府全体の対応を分けることもできないからだ。

 安倍晋三自身は「赤坂自民亭」に首相としてではなく、個人として出席したと言い抜けるかも知れないが、「政府全体として必要な警戒態勢を敷いていた」最中の出席なのだから、自身と政府全体を分けた個人としての出席という言い抜けは効かない。

 大体が安倍晋三はこの遣り取りの最初の方で「災害対応というのはですね、まさに基本的には私が陣頭指揮を取るわけでございますが」と答弁している。

 いわば「政府全体として必要な警戒態勢を敷いていた」だけでは済まないことを自ら口にしている。最低限、首相公邸にいて、陣頭指揮者である政府のトップとして「警戒態勢」を見守る責任が生じていたはずである。

 当然、「警戒態勢」をいっときであっても他人任せにしていいはずはない。ところが、安倍晋三は夜8時半過ぎに「赤坂自民亭」に約50分間も出席していて、終了後の記者団の「懇談はどうだったか」の問いかけに「和気あいあいでよかった」と答えたという。

  防衛省サイト 《福岡県北九州市における土砂崩れに伴う人命救助に係る災害派遣について(11時00分現在)》(平成30年7月6日)には次の記述がある。

 (1)要請日時 平成30年7月6日(金)09時56分

 (2)要請元 福岡県知事

 (3)要請先 陸上自衛隊第4師団長(福岡)

 (4)要請の概要 人命救助(以上)

 この派遣要請は死者のみならず、数少なくない人命救助に関わる安否不明案件、あるいは行方不明案件は既に7月5日夜遅くには始まっていたと見なければならない。始まっていたから、7月6日の朝9時56分という早い時間帯に派遣要請に出なければならなかった。


 例えこの派遣が「赤坂自民亭」出席後の時間帯であったとしても、気象庁の7月5日14時00分の災害予想情報を受けた時点で、ここ最近の例年の変化しつつある気象傾向から、少なくとも過去の豪雨災害事例同等の先行きの被害拡大を前以って想定する危機管理を政府全体で認識していなければならなかったことに変わりはない。危機管理は最悪の事態の想定を出発点とする。


 にも関わらず、安倍晋三は7月5日夜8時半頃に飲酒を伴う「赤坂自民亭」に出席した。「国民の生命・財産を守る」最高責任者に任じられていることからの国に於ける災害対応の陣頭指揮者という立場上、“政府全体として敷いていた必要な警戒態勢”を見守るぐらいの責任は発揮しなければならかった。

 ところが、例年の気象状況の変化からそういった危機管理を想定することなく、「政府全体」と自身を分ける国会答弁に饒舌なまでに執着・終始した。この狡猾・巧妙な言い抜け、責任回避は安倍晋三だからこそできる鉄面皮な芸当であろう。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

西日本豪雨での建物洪水・浸水被害後の後片付けを見て、その集約化と効率化を考えてみた

2018-07-17 11:53:36 | 政治
 2018年7月5日から7月6日を最大降水量として7月8日にかけて降った西日本豪雨は家屋被害が3万棟超にのぼるという。ほぼ全域で7月9日に雨が上がって、洪水・浸水被害、あるいは倒壊被害に遭った被災者は水が引くのを待って7月10日頃から自力でできる範囲で家の片付けに取り掛かったのだろう。豪雨被害に見舞われずに済んだ近隣居住の近親者が手伝いに駆けつける家もあったようだ。

 洪水・浸水被害に遭った多くの家々が1階部分の高い位置にまで浸水したことから、水が引いた後の建物の中にまで一輪車を持ち込み、角スコップで、それを少しでも傾けて水平状態が維持できなければこぼれてしまう、ヘドロ状になっていて掬いにくい汚泥を慎重に取り扱って、移動中の揺れでこぼれないように一輪車に少なめに盛って、それを家の外にまで運び出すといったことをテレビニュースで見た。

 順番から言うと、先ずヘドロ状の汚泥を処理してから、家具や家電製品、泥まみれになった畳を家の外に持ち出すことになり、それらの内、使えなくなった物は廃棄処分とする。

 各自治体は7月10日頃からボランティアを市内在住者等に限定して募集、7月14・15・16日の連休を狙って募集範囲を市外に広げたようだが、7月10日から7月13日までの間は、豪雨被害が広範囲に亘ってお互いに被災者の身となっていただろうから、近親者以外に多人数のボランティアは望めなかったはずで、その間主として家族だけの片付けとなったことは予想できる。

 当然、高齢者だけの家族、高齢単身世帯は本格的なボランティア活動が開始されるまで満足な片付けは望めむことはできなかったはずだ。家族単位の片付けではなく、町内単位、あるいは自治会単位で被災家族を集めて、それを何家族かに必要人数を振り分けて、決めた順番に片付けていき、片付け終わったら、次の何家族かの片付けに入るという方法を取れば、家族単位の片付けよりも時間を捗らせることができるし、高齢者だけの家族や高齢単身世帯でも、順番が来れば、それなりに満足な片付けが期待できるし、何よりも人力の集約化によって効率化を図ることができる。

 勿論、ボランティアが本格的な活動を開始してからも、同じ方法で順番に家々を片付けていくことにする。

 こういったことだけではなく、スコップと一輪車を使ったヘドロ状の汚泥の根気のいる片付けを見て思ったことだが、現在では汚泥を吸い上げる水中ポンプがある。例えば《寺田ポンプ製作所 汚水用水中ポンプ》の一つは土砂用で、運転可能最低水位については「1ミリ以下の排水の実現」を謳っていて、用途として、「ビル、マンション等の高架水槽の残水排水用」、「プール、水槽、各種ビットの残水排水用」となっている。

 いわば僅かに残っている土砂混じりの汚水でも、吸い上げてしまう能力がある。

 但しこのページには直径何ミリまでの小石まで吸引可能かの説明がないが、汚泥用水中ポンプの中にはホースの吸口先端に直径8mmの穴を細かく開けたストレーナー(液体から固形成分を取り除くために用いる網状の器具)がついていて、直径8mm以上の小石や異物を取り除くようになっているから、今後汚泥処分に自治体や自治会が防災用として汚泥用ポンプを用意する場合はストレーナー付きか、付きでなければ、ストレーナーを用意して、後から取り付けるようにすればいい。

 寺田製作所の水中ポンプは電源が必要だが、現在では殆んどの自治会が防災用に小型発電機を用意していて、東日本大震災での福島発電所の全電源喪失の経験から、水没による発電機の故障を避けるために、実行しているかどうかは分からないが、高い場所に置くことが常識となっている。

 住宅内の汚泥を処理する場合は一人がストレーナーの付いた筒先を垂直に床や畳に接着させて移動、吸い上げを効率良くするために他の何人かが移動に合わせてスコップで汚泥をストレーナーに向けて掻き寄せるか、掻き集める具合にすると、自ずと水位が高くなって、それだけ吸水能力が高くなることになる。

 排水用の筒は繋げれば、10メートルや15メートルぐらいは伸ばすことができる。

 今回の豪雨で家の外や敷地の外に出された汚泥が乾いて粉塵と化して、多くの住民の目や喉に障害を与えているようだが、通行可能な地域、あるいは交通可能となった地域は順番に重機が来て、汚泥をダンプに積んで片付ける方法を取っているが、そのような方法は汚泥が乾くに連れて粉塵を誘発することになる。
 
 このことを防ぐためにはタンクローリー型給水車と汚泥やヘドロ処理のバキュームダンパーの2台を一組として、給水車が汚泥が乾かないように適宜水を掛けてある程度ヘドロ状態に保ち、バキュームダンパーがその汚泥をホースで吸い上げてタンクに一杯にして、一杯にした所で産業廃棄物処理場に運んで処理するという方法を取れば、後々の粉塵化をかなり避けることができるし、処理の効率化を図ることができる。

 産業廃棄物処理場にまで運ぶについてはそこまでの道路に通行止め箇所があるということであれば、住宅街から離れた場所に仮置場を造って、その日の作業終了後にシートを掛けるなどして飛散を防ぐ処理を施さなければならない。

 但しバキュームダンパーは極く特殊使用であって、一般的ではなく、土砂を掴み取ってダンプ等に積む重機と比較して数が少ないかも知れないが、今後の豪雨災害に備えて、自治体はバキュームダンパーや給水車を所有している会社と前以って契約しておいて、順次配置する防災計画を立てておくべきだろう。

 《環境保全株式会社》というページには次のような記述がある。

 〈各種吸引(バキューム)

 遊水池の清掃から長距離吸引作業

 遊水池、調整池、公園池、ゴルフ場池、えん堤、ダム、沈殿池などの汚泥やヘドロをバキューム車で吸引して取り除く作業。

 例えば、ダムなど底の深い池や大量の土砂がある箇所には超強力吸引車が出動。林の奥で車が入れない池や、急斜面で車の止められない場所では、長距離パイプラインを敷設して作業します。〉云々――

 仕事の効率は重機での汚泥処理よりも遥かに高いはずである。

 今回の豪雨災害でも2017年7月5日から6日にかけて福岡県と大分県を中心として九州北部を襲い、死者40人を出した九州北部豪雨災害と同じように多くの流木によって河川が氾濫したり、家を押しつぶしたりしている。九州北部豪雨の場合は流木量20万トン以上と言われていた。

 自衛隊員が軽く一抱え近くもある、長さ2メートルか3メートルの大木を5、6人で両側から抱えて運んでいるのを見て、流木の山から鳶口を使って平らな場所に引っ張り出して、引っ張り出した後はそれくらいの流木なら、ローブを掛けて鳶口を天秤棒すれば、体力をそれ程使わずに簡単に短時間で移動させることができるできると思って、2017年7月24日の当ブログ、《九州北部豪雨災害流木20万トン以上:自衛隊その他の途轍もなく非効率・ご苦労な手作業処理 - 『ニッポン情報解読』by手代木恕之》に鳶口の使用を進めたが、非効率な仕事を相変わらず続けているようだ。

 この記事に載せた画像を再び載せておくことにする。

 住民が汚泥まみれになって汚れた畳を捨てるために畳を平にして長い辺に4人ぐらいずつ張り付いて総勢8人ぐらいで運んでいたが、鳶口を使えは、2人が畳を横に立てた上でそれぞれがの片側に位置して、鳶口をなるべく地面に近い、畳の横中央に突き刺して鳶口の柄自体を持ち上げれば、握る力も入って、少ない人数で、左程体力も使わずに移動させることができる。

 畳が左右どちらかに倒れようとしても、鳶口で両側から挟む形になるから、鳶口の柄や柄を握っている拳によって倒れるのを防ぐことができる。

 軽トラックに積んだ沢山の畳を仮の廃棄場に捨てるときも、軽トラの後部バタを倒して2人一緒になって畳を引きずり出し、荷台に乗った1人が畳の端を持ち上げてひっくり返す具合に廃棄場に積み上げていたが、後部バタを落とした軽トラを捨てる場所までギリギリにバックさせて、二人が捨て場所に立って鳶口を使って、そこに畳を引きずり出す具合にすれば、力も体力も使わずに順次畳を積み上げていくことができる。

 製材所で丸太を積み上げるときに下にある丸太を鳶口を使って順次上に運んで山にしていく方法と同じである。

 また、濁流に押し流されて家の庭に入った一抱えか、それ以上に岩と言ってもいい大きな石を移動させるのに長背後の2人がさ50センチ程の鉄パイプと見えるコロを石の下に置いて、移動と共にコロを石の前方に加えていきながら石を押し、前の二人が石の後方に掛けたローブを引っ張っていく方法で石の移動を行っていたが、2本の短いロープを石を絞る具合にかけて天秤棒にした鳶口でロープの1本ずつを二人で、合計4人で肩に担げば、200キロやそこらの石は一人ずつ50キロ程度の重さとなって、前者の方法よりも体力も時間も使わずに簡単に移動させることができる。

 手だけで持ったり押したりする力よりも肩で担ぐ力の方が大きな重量に耐えることができる。だから、昔の人は背負子に50キロや60キロの荷物を、時には100キロ近い荷物を乗せて、長い距離運ぶことができた。

 昔の人間の方が仕事の効率化を知っていたことになる。機械がある時代になって、機械頼りとなり、自力での効率化に無頓着になったようだ。

 自然災害直後の家の片付けや重機が入る前の流木等の処理は当たり前の道具を使った人力主力が当たり前となっているが、当たり前と思わずに当たり前以外の道具の導入を考えて、集約化と効率化を図るべきだろう。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

西日本豪雨:安倍晋三の初動対応に指摘どおりの遅れはあったのか、なかったのか 「朝日」や他の情報から見てみる

2018-07-16 11:42:34 | 政治
 安倍晋三は被災地視察先の岡山市で記者から、「初動の遅れが指摘されているが」と問われたのに対して「一丸となって発災以来、全力で取り組んできた」と述べ、初動に問題はなかったとの見解を示したという。

 大掛かりな自然災害としての大地震の場合、何の前触れもなく襲ってくるから、具体的な初動対応は止む得ず「発災以来」となるが、台風災害や豪雨災害の場合、前以って出している気象庁の災害予報を如何に読み取るかによって“発災前”から初動対応への備えは可能となる。

 可能を具体化することができれば、初動対応のスタートラインが自ずと違ってくる。当然、豪雨災害の場合、いくら「一丸となって」であろうと、「全力での取り組み」であろうと、「発災以来」では初動は自ずと微妙に遅れることになる。

 2018年7月13日20時39分付「朝日デジタル」《11万人避難指示の夜に「赤坂自民亭」適切だったか検証》は、〈西日本を中心に大雨特別警報が発表されてから1週間が過ぎた。政権幹部の危機意識や防災情報の共有は当初から図られていたのか。救命・救助活動への影響はなかったのか。平成で最悪となった豪雨災害の初動対応を検証する。〉を趣旨とした記事だが、無料部分で2018年7月に入ってからの政府や気象庁の動きを伝えている。

 日本列島に迫った台風7号が広範囲で雨を降らし、その通過に備えて関係省庁の課長級が集まって災害警戒会議を開いたのが7月2日午後。
 
 気象庁が記者会見を開き、7月5日から8日にかけて東日本から西日本の広い範囲で記録的な大雨となる恐れがあると発表、「早めの避難を心がけてほしい」と呼びかけたのが7月5日午後2時。

 内閣府が各省庁課長らを集めた災害警戒会議を開いたのが気象庁の記者会見から1時間半後の午後3時30分。

 記事は、〈小此木八郎防災担当相が出席したのは、24時間の雨量が400ミリに達するとの予報に政府内の緊張感が高まったからだった。〉と伝えている。

 この日は死者40人、行方不明者2人となった「九州北部豪雨」からちょうど1年に当たるとしている。

 小此木八郎「大災害を改めて思い出し、対策に万全を期すように」

 〈午後10時までに京都、大阪、兵庫の3府県約11万人に避難指示が出た。〉・・・・

 安倍晋三らが自民党の国会議員による酒席懇親会「赤坂自民亭」を開いたのは同7月5日午後8時頃からか。

 京都府が自衛隊に災害派遣要請を行ったのが7月6日未明。安倍晋三はこの日の朝までに秋の自民党総裁選を視野に入れた翌日からの鹿児島・宮崎訪問の取りやめを決定。

 気象庁が数十年に1度の重大な災害が起きる可能性が高まった際に出す「大雨特別警報」を「発表する可能性がある」と異例の警告を行ったのが7月6日午前10時半の会見。

 気象庁が大雨特別警報を8府県への発令を行ったのは7月6日午後5時10分以降。死者、行方不明者が相次ぎ、7月7日朝にかけての自衛隊への災害派遣要請は7府県10件にのぼる。

 政府が拡大する被害への対応を協議するため関係閣僚会議を開いたのは7月7日午前10時。

 安倍晋三指示「事態は極めて深刻だ。救命・救助に全力を尽くし、被害の拡大防止に万全を期してほしい」

 政府が2016年の熊本地震以来となる「非常災害対策本部」(本部長・小此木防災相)を設置したのは最初の大雨特別警報発表の約39時間後の7月8日午前8時。

 その時点で政府把握死者は既に48人。政府が安倍晋三の11~18日の欧州・中東訪問取りやめを発表したのは7月9日。岡山県に7月11日、愛媛県に7月13日の被災現場視察を決める。

 この政府把握死者48人という事実からのみ見ても、「非常災害対策本部」設置に見る初動対応は遅い。

 有料記事部分はどういった内容か分からないが、政府及び気象庁の時系列的な動きから、どう対応してきたかは把握できる。他の情報とも合わせて安倍晋三の初動対応に遅れはなかったかどうかを見てみる。

 気象庁が7月5日午後2時に記者会見を開いて7月5日から8日にかけて東日本から西日本の広い範囲で記録的な大雨となる恐れがあると発表、「早めの避難を心がけてほしい」と呼びかけてから1時間半後の午後3時30分に内閣府が各省庁課長らを集めた災害警戒会議を開いた。多分、責任者としてだろう、出席した防災担当相の小此木八郎が「大災害を改めて思い出し、対策に万全を期すように」と訓示した。

 災害警戒会議開催も、小此木八郎の発言も、気象庁の豪雨災害予想情報を受けた、初動対応を含めての万が一の発災への備えを意図した行動・発言であるはずである。

 繰返しになるが、地震災害と違って台風災害や豪雨災害の場合は気象庁の災害予想情報が発災への準備、初動対応への心構えを否応もなしに要請することになる。

 ところが、7月5日午後8時半頃から安倍晋三を筆頭に災害時に救助・救命に当たる防衛省のトップ小野寺五典を始め、何人かの閣僚の出席のもと、赤坂の衆院議員宿舎で酒席懇親会「赤坂自民亭」を開いたということは、気象庁の災害予想情報に基づいた発災への準備、初動対応への心構えに怠りないよう、細心の注意を払っていたのは政府の極く一部であったことになる。 

 上記記事が7月6日未明に京都府が自衛隊に災害派遣要請を行ったとしているが、福岡県も同日に災害派遣要請を行っている。《福岡県北九州市における土砂崩れに伴う人命救助に係る災害派遣について(11時00分現在)》

 (1)要請日時 平成30年7月6日(金)09時56分

 (2)要請元 福岡県知事

 (3)要請先 陸上自衛隊第4師団長(福岡)

 (4)要請の概要 人命救助(以上)

 この派遣要請は死者のみならず、数少なくない人命救助に関わる安否不明案件、あるいは行方不明案件は既に7月5日夜遅くには始まっていたと見なければならない。始まっていたから、7月6日の朝9時56分という早い時間帯に派遣要請に出なければならなかった。

 例えこの派遣が「赤坂自民亭」出席後の時間帯であったとしても、気象庁の7月5日14時00分の災害予想情報を受けた時点で、ここ最近の例年の変化しつつある気象傾向から、少なくとも過去の豪雨災害事例同等の先行きの被害拡大を前以って想定する危機管理を政府全体で認識していなければならなかったことに変わりはない。

 にも関わらず、安倍晋三は7月5日夜8時半頃に飲酒を伴う「赤坂自民亭」に出席した。

 安倍晋三も安倍晋三である。何も情報を受けていないでは済ますことはできない。その心掛けたるや、「国民の生命・財産を守る」意識・想像力の程度に関係してくる。

 自衛隊への災害派遣要請が7府県10件にのぼったこと自体が相当な死者と行方不明者を出していて、各消防署や警察署だけでは手がつけられないことの状況証拠以外の何ものでもない。

 但しその予兆は7月5日遅くには具体的な姿を取っていた。気象庁が7月5日午後2時に記者会見を開いて、7月5日から8日にかけて東日本から西日本の広い範囲で記録的な大雨となる恐れがあると発表後から5時間後同7月5日午後7時00分に自衛隊に対する福岡県への災害派遣要請、さらに大分県への派遣要請が5時間30分後の同7月5日午後7時30分にあったことを指す。

 この状況一つを取っても、激しい雨が急激に降り出していたことが分かる。しかも災害派遣の目的が人命救助。既にこの時点で死者と行方不明者をかなり出していて、各消防署や警察署だけでは手がつけられない状況が始まっていたことを証明することになる。

 当然、7月6日の早い時間帯に政府の危機管理として「非常災害対策本部」を設置して然るべきだったはずだが、設置したのは気象庁が7月6日午後5時10分以降、大雨特別警報を8府県に発令し、死者・行方不明者が相次いでいることから7月7日朝にかけて自衛隊への災害派遣要請が7府県10件にのぼったあとから1日を置いた、最初の大雨特別警報発表から約39時間後、1日と15時間置いた7月8日午前8時となった。

 「国民の生命・財産を守る」役目を負いながら、既にそれが失われている状況を目の前にして、あるいは今後共失われていく状況が進行形で継続していく危険性を抱えながら、「非常災害対策本部」の設置が遅くなった。この心掛け自体一つを取っても、安倍晋三の初動対応は自身の弁解とは裏腹に後手に回ったと指摘できる。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする