教師用必読本 イジメの根絶に向けて小1から人間を哲学させる

2021-02-22 05:11:27 | 教育
 《教師用必読本 イジメの根絶に向けて小1から人間を哲学させる》

 目  次

(1)はじめに日に三度の声掛け         
(2)イジメをイジメだと気づかない主な二つの理由 
(3)イジメを「才能」で解く 
(4)一人ひとりが生きて、成長している命であることの教え
(5)誰の命も対等であり、命の営みも対等であることの教え
(6)一人ひとりの命の誕生と成長 
(7)イジメの個々のケースから一人ひとりの命を考える 
   その1 無視(シカト)は許される
   その2 羨みや嫉妬からのイジメ
   その3 ネット上のイジメ
   その4 動作が鈍くて、動きの遅い子へのイジメ
(8)最後に  

 (1)はじめに日に三度の声掛け

 小学校では「命の授業」として動植物に触れ、命への温かな感情を芽生えさせる、動植物の世話を通して、命の素晴らしさを知らしめる等々のことを行っているようだが、この読本ではもっと直接的に命そのものについて哲学させることを目的としている。

 哲学と言っても、大層な解釈を施しているわけではない。個々の命はどうあるべきかを直接的に述べているに過ぎない。

 以下、この教師用必読本に述べている命に関係させた哲学をイジメ根絶に向けた取っ掛かりの一つ一つとする。小学校全学年を対象としたこの教師用必読本を用いたイジメ根絶に向けた授業は教師が一人、二人行っても、効果は出ない。学校として採用の可否を決め、採用したなら、校長を含めた教職員全員による内容の検討と把握を経た上で、学年に応じた言葉の使い方等の最適な授業方法と改善点の検討を話し合ってから行わなければならない。

 この授業は主として道徳の時間等を適宜使って行うことが好ましいが、採用決定後は「朝の会」と午後の最初の授業時間、さらに「帰りの会」にほんの少しの時間を使った次の声掛けを行うこととする。

 この日に3回の声掛けは同じ言葉の繰り返しとなるが、毎日続ける。相手が小1で、理解できないと思っても、それを無視して声掛けを続ける。目的の一つは教師が口にする文言を繰り返しの外部刺激として与えることで、文言そのものを何となくであっても頭に記憶させて、何となく記憶したその文言を次の段階の意味の理解に持っていくためである。

 江戸時代の武士の子は今の小学校1~2年生の頃から、返り点と送り仮名をつけた漢字で書かれた論語とか、孟子等の中国の古典の素読をやらされることを当たり前としていたということを考えてみる。

 先生(師匠)と子どもが一対複数で向かい合い、先生が意味・解釈を加えずにただ単に読み上げる言葉をその言葉通りに子どもが読み上げていくのが素読だが、それを繰り返すうちに自然と意味を解釈していくという。

 現在の子どもには真似はできないだろうが、武士の子であるという役割意識と武士の間では伝統となっている教育制度であることの伝統意識が武士の子供をしてそういった環境への慣れをつくり上げていったとすると、先ずはイジメ根絶に向けて必要とする勉強であり、小学1年生であろうと、通らなければならない関門であるという意識の植え付けが必要となる。そのためでもある日々の声掛けとする。

 先ず「朝の会」での声掛け。

「君たちは一人ひとりの人間である以前に一個一個の命としてこの世界に生まれてきた。誰もが毎日毎日を一個一個の命として生きて、少しずつであっても、成長している。これからも生きて、成長していく。

 折角この世界に授かった命なのだから、今の命を今日一日、どう生きて、どう成長させていくか、考えて行動してみるのも悪くはないと思う。

 なぜなら、生きて、成長していくということは一日一日の積み重ねだから、一日一日をどう生きて、どう成長させていくかを疎かにしてはならないからだ」

 生徒を一人ひとりの人間としてではなく、常に一個一個の命として扱う。                         

 そして午後の最初の授業時間に全ての教室で教卓の前に立った教師は席に座っている生徒に次のような声掛けをする。
                            
「みんな、先生の顔を見てほしい。今日の午前中の半日、君たちは一個一個の命として、その命をどう生かしたか、半日の行動をちょっと振り返ってほしい。まさかイジメで自分の命を思う存分に生かした生徒なんかいなかっただろうな。イジメられて、自分の命をほんの少しでも思うように生かすことができなかった生徒はいなかっただろうか」

 教師は生徒全員の顔を見渡していき、反発から睨み返す生徒、あるいは不貞腐れたように顔を背ける生徒がいたらな、要注意人物とする危機管理意識を働かせ、弱々しい表情を見せて顔を俯かせるような生徒がいたら、イジメの被害者ではないだろうか等を疑い、注意深く見守っていく対象としなければならない。

 自分の命を半日の間でも十分に生かすことができたかどうかの声掛けはいた場合のイジメる生徒、イジメられる生徒をも含めて、生徒それぞれに自分は半日をどう行動したか、その行動の有意義性、無意義性を省みる自己省察の習慣を持たせるためである。

 この自己省察をイジメ根絶に向けた大きな柱とする。自分で自分を省みさせるために手を挙げさせて答を求める場合と、求めずに数秒程度の省みる時間を与える場合を臨機応変に使い分ける。

 自己省察に持っていくためには色々と考えさせる多方面からの様々な声掛けが必要となる。当然、以下述べる声掛けも自己省察を目的とする。

「この半日、自分の命がどのように生きたか、自分の命をどのように生かしたか、振り返ることができただろうか。授業時間も休み時間も自分の命を楽しく、元気に生かすことができただろうか。

 もし生きることも、生かすこともできたなら、今日半日はそれなりに意味のあった命とすることができたことになる。午後の半日も楽しく、元気に生かして、それなりに意味のある命にしてほしい。

 もしこの半日、自分の命を楽しく、元気に生きることも、生かすこともできなかった生徒がいるとしたら、できなかった原因が自分にある場合もあるだろうし、ほかの生徒にある場合もあるだろうが、原因がほかの生徒にあって、自分一人では解決できないことなら、(担任なら)先生かカウンセラーの先生(いればの話だが)に相談してほしい」

 担任でなかったなら、なかったなりの同様の声掛けをする。

「一日一日を生きていく命なのだから、それなりに意味のある命にしなければならない」

 毎日の帰りの会では、「今日一日、自分の命を自分が思ったとおりに十分に生かすことができただろうか振り返ってみてほしい。生かすことができたなら、一日分を十分に生きて、成長させることができたことになる。それなりに意味のある一日の命にすることができたことになる」・・・・(以下有料)

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菅義偉長男菅正剛による総務省幹部官僚接待疑惑は安倍晋三森友疑惑と同じ構造の可能性 菅義偉への忖度が便宜付与の動機か

2021-02-15 09:24:48 | 政治
 森友学園理事長籠池泰典が安倍晋三妻安倍昭恵を国有地格安購入疑惑が問題になるまで森友学園ホームページに学園新設予定の小学校名誉校長として紹介していたのは安倍昭恵の背後に控えている首相安倍晋三への忖度が国有地売却側の財務省の役人に働いて、売却が有利に進むことを期待してのことだろう。

 「文春オンライン」が2021年2月3日付で、〈総務省の幹部らが、同省が許認可に関わる衛星放送関連会社に勤める菅義偉首相の長男から、国家公務員倫理法に抵触する違法な接待を繰り返し受けていた疑いがあることが「週刊文春」の取材で分かった。〉と報じた。翌日衆院予算委で立憲民主党の黒岩宇洋(たかひろ)がこの接待疑惑を取り上げ、菅義偉を追及した。

 2021年2月4日衆院予算委員会 

 要所要所に青文字で大したこともない解説を入れていくことにする。

 黒岩宇洋は質問冒頭、「総理は先日緊急事態宣言の延長を決定した。国民にはさらなる自粛を、行動の制約をお願いした。その中でコロナを克服するためには政府に求められるのは国民からの信頼だと思う。この一年以上、安倍政権、菅政権に於いて不祥事が重なり国民からの信頼を損ねている。一昨年の菅原経産大臣、公職選挙法の疑いがあるということで大臣を辞職した。

 次に河井克行法務大臣、公職選挙法で起訴され、裁判中です。妻の河合案里参議院議員も巻き込んで、前代未聞の大掛かりな選挙買収という状況になった。そのあとは桜を見る会、これは1年を経って、昨年秋からこの問題を巡って前総理の公設秘書が政治資金規正法違反で起訴、有罪になった。安倍前総理自らも退陣して3ヶ月で検察から事情聴取を受けた。正直、国民からも失望の声が上がった。

 これも昨年になるけども、IR汚職、秋元元内閣府副大臣が逮捕、起訴された。昨年夏には鶏卵事業者の問題で吉川元農水大臣がこれも起訴された。年明けになって、直近では与党の複数の議員が銀座でハシゴ酒。本当に国民の信頼をどんどん失墜させている云々と菅義偉たちにとっては痛くも痒くも感じないことを長々と前置きしてから、目的の質問に入る。

 黒岩宇洋「今日お聞きするのは私は本当に恐縮で残念なんですけども、総理ご自身のご長男、放送事業会社に勤めているということが報道されていますが、本来原則では接待することが禁止されている、そんな所管官庁である総務省に対して総理のご長男が接待したという、こういう疑惑が出てきました。
 
 私は総理に誠意を持ってこの事案についての説明をお願いしたいと思います。これ、総理の著書、敢えてコピーを持ってきましたが、ここに書いてある、『国民の「当たり前」私が実現する』、今日、総理、あくまでも『国民の「当たり前」というモノサシでですね、自己不信(?)や官僚の答弁のようではなく、きっちりと国民に向けて説明して頂きたいとおもいます。

 先ず総理、今日発売された、総理のご長男の事案となっている週刊誌、お読みになられましたか」
 
 菅義偉「全体像は掌握しています」

 「全体像の掌握」ということなら、週刊誌は菅長男接待疑惑を報じているのだから、長男が不法な接待主側に立たされていることは承知していることになる。

 黒岩宇洋「お読みになられたのか、巻頭のグラビア写真等はお読みになられたのか、簡単にお答え願います」

 菅義偉「それは見ていません」 

 黒岩宇洋「モノクロの巻頭カラー(?)で、トップ。そこでですね、目を目隠ししていますけど、総務省の高級官僚に、今日ですね、週刊誌を資料として出したいと言ったのですけども、理事会で拒否されたんで、残念ながら、うん。

 で、口頭で説明するご無礼を国民の皆様にはご容赦頂きたいと思います。黒目隠しが入って、長髪の方で、タクシーチケットを総務省官僚に渡していると思しきこの方はどなたですか」

 菅義偉「それは分かりません」

 黒岩、自席から「えっ」と声を上げる。

 黒岩宇洋「今、総理、週刊誌のグラビア写真もご覧になったと仰いましたよね。これ、総理のご長男、指摘されている方ですよ。それはご長男だったのか、そうではなかったのかお答えください」

 菅義偉は「全体像は掌握しています」と言ったのであって、巻頭のグラビア写真等は「見ていません」と答えている。「ご長男が接待疑惑をかけられていることは承知しているんですね」という場所から追及を進めていくべきを回り道ばかりしている。

 菅義偉「正直言って、そうかどうかは分かりません」

 黒岩宇洋「総理、国民の当たり前でいきましょうよ。自分の息子が、しかもかくかくしかじかときっちりと背景を説明されて、写っている写真。だったら、その方が自分のご子息かどうか、ご子息に確認されたんですか」

 菅義偉「確認はしていません」

 黒岩宇洋は菅義偉が「どう全体像を掌握しているのか」と問うべきだったろう。否でも週刊誌が菅長男を接待疑惑の主役と目していることに触れざるを得ない。

 黒岩宇洋「報道によりますと、我々の驚くべき事実が書かれているんですよ。昨年の10月7日、そして12月の8日、10日、14日と立て続けに霞が関総務省のナンバーツー以下、ちゃんと幹部官僚が接待を受けていた。

 では、ここで報道されている12月14日、これは総理がステーキ会食をして猛省をされた日です。けども、これ昨日事前通告して、ちゃんと事実確認してくださいと総理にお願いしたんです。総理のご子息は高級官僚と何をされていましたか」

 菅義偉「先ずですね、関わった者が誰であったか、国民の皆様から疑念を抱かせることがないように総務省がしっかりと事実関係を確認した上で、ルールに則って対応して欲しいというふうに思っています。先ずお尋ねが私の親族であるとは言え、公的立場ではない一民間人に関するものであります。本人や家族の名誉、プライバシーに関わることであり、本来このようなことでお答えすべきことでは私はないと思います。

 ただ週刊誌に民間会社に報道にあるように勤めていることは事実であります」

 あくまでも把握している「全体像」には触れないようにしている。下手に触れたなら、自身と関連付けられることを恐れている可能性はある。

 総理大臣ともなると、その権威は周囲の人間までが身に帯びることもある。例えば首相の国会議員初当選時代からの長年の政策秘書ともなると、その地位にあるというだけで地元の市長や県知事よりも権勢を振るう者が出てくる場合もあるし、首相との関係を利用して、その権威を自己評価を高める道具に代えて、自分を売り出す者も出てくる。勿論、好むと好まざるとに関わらず、親族は首相の権威を身に纏うことになって、首相の身内の誰々さんだと手厚いもてなしを受けたり、畏れ多い扱いを受けたりする。特に権威主義を行動様式・存在様式としがちな日本人は何かと上の権威に対して自分の方から勝手に有り難ったり、畏れたりする傾向に囚われがちとなる。こういった上の地位の人間を畏れ多い存在だと見る上下関係が往々にして忖度という一方的な義務行為を生じさせることになる。

 いくら菅義偉が長男は「公的立場ではない一民間人」だと言っても、長男を相手にする総務省の役人たちが長男の背後に菅義偉の存在を全然見ないという保証はない。もし長男と菅義偉を切り離すことができなかった場合は忖度という心理的作用が働く余地を自ずと抱えることになる。2月4日にマスコミが長男接待疑惑を報じた次の日の2月5日にTwitterに次のような投稿をした。

 〈安倍昭恵の友人たちに対する「私の肩書を自由に使って」云々は安倍晋三の虎の威を借りた首相夫人としての肩書が持つ権威が周囲を従える効き目があることを知っていたから。菅義偉の息子が別人格であっても、父親の持つ権威が息子自身を優越的立場に置くベースとなっていなかったかどうかが問題。〉

 黒岩宇洋「ちょっと総理、勘違いされていると思いますね。何か自分の身内だから公私混同、公の立場ではなく、私人のことって言うんですが、この疑念・疑惑は私人にかけられたものではなくて、菅政権そのものにかけられた疑念・疑惑なんですよね。これを払拭するためにその事実関係を知り得る方が身近にいらっしゃったら、その方に総理としてお聞きすることがある意味当然なことじゃないんですかという趣旨で質問しているんです。

 12月14日、これは報道によりますが、総理のご長男は高級寿司店で会食されていたということでございます。父親は高級ステーキ店で会食をした。ご子息は高級寿司店で会食をした。こうしたことが事実だかどうか、本来、確認したいと思いませんか、総理。例えば事実でないんなら、ご子息に確認して、総理は昨日から、もっと言えば、おとといからネット報道されてから、ご子息と直接、ないしは電話で話をされていますか」

 「菅政権そのものにかけられた疑念・疑惑」だとしているなら、菅長男を介して総理である菅義偉個人に対する忖度が総務省官僚をして衝き動かすことになった菅長男に対する接待を伴った何らかの利益供与の形で現れた「疑念・疑惑」とは見ていないことになる。但し安倍政権の間に政治の疑惑や不祥事に対して役人側が協力して文書を改竄したり、破棄したりしたように総務省の接待疑惑が菅政権に波及しないように口裏を合わせて疑惑自体を隠そうとしていると見ているなら、その疑いを口に出さなければ、「菅政権そのものにかけられた疑念・疑惑」だと根拠づけることはできないし、口で言っているだけと受け取られることになる。

 菅義偉「電話では確認をしました」

 黒岩宇洋が少し前に「写っている写真。その方が自分のご子息かどうか、ご子息に確認されたんですか」と質問したき、菅義偉は「確認はしていません」と答えている。要するに目のところに黒のモザイクが入った写真の主については確認しなかったが、週刊誌が報じている接待疑惑につては自身の長男が標的にされていることを知って、「電話では確認をしました」ということになる。となると、やはりどの程度に「全体像」を把握しているのかを、菅義偉自身の神経を逆撫でしてイライラとさせるためにも聞くべきだったろう。

 黒岩宇洋「では、その接待は事実かどうか、これについてご子息からお聞きになったことをお伝え下さい」

 菅義偉「接待と言うよりも、私は調査が入ったら、事実関係に対してそこは協力するようにということは申し上げました」

 あくまでも掌握しているという「全体像」に於ける細部には触れないようにしている。不法接待を議題に長男を語ることも、語ることによって自身と関連付けられることも避ける自己防衛意識が働いているからだろう。

 身近な周囲が疑惑を否定しても、その否定が事実かどうかの調査が入る。肯定すれば、なおさらのことに具体的な経緯を知るためと再発防止のために調査が入る。菅義偉の「調査が入ったら」は調査を覚悟している言葉となるが、疑惑の否定を成功させるためには総務省の役人との口裏合わせという連携プレーが必要になる。この場合、長男の背後にいる菅義偉に対する忖度が連携プレーを確かなものとするかどうかの鍵を握ることになる。

 黒岩宇洋「私はね、ちょっとこれも常識とは残念ながら、かけ離れているのではないのかと。一般の親子、まさに国民の当たり前から言えばですね、息子さん、こんだけ報道されて、公知の事実としてこういった疑惑を持たれたときにそれはやっぱり詳らかに話を聞いて、そして今度は総理として今度はしっかりと国民に伝える。

 これは国民の当たり前だと思うんです。その上でですね、総理が、私が冒頭申し上げたとおり、こういった疑念、それについて事案に私は誠実に丁寧に答えているとはなかなか思えない。

 この点についてさらに何点か話を進めてお聞きしたいと思います。今日ですね、接待を受けたとされる4人の官僚のうち、残念ながら総務省の審議官のお二人は出席を拒否されました。今日いらっしゃっている秋本芳徳総務省情報流通行政局長、いらっしゃっていますか。

 じゃあ、局長、お聞きします。(2020年)12月10日、六本木の小料理屋で総理のご子息から接待を受けたのはこれは事実ですか」

 秋本芳徳「お答えいたします。会食をさせて頂いたことは事実でございます」

 黒岩宇洋「会費はご自身で支払われましたか」

 秋本芳徳「お答えいたします。当初出席者の中に利害関係者がいないと認識しておりましたため、自己分の負担を行っていませんでした。事後に取材を受ける過程で出席者の中に東北新社の社員であると共に利害関係者であると思われる子会社の社長等を兼ねている方がいることが判明いたしましたため先ず確認できる範囲での返金を行っています」

 「当初出席者の中に利害関係者がいないと認識しておりました」。つまり2020年12月10日の面会の時点では初対面だったことになる。でなければ、事後の取材で「利害関係者であると思われる」人物の存在を知ることにはならない。

 但し初対面の場合であっても、高級官僚が外部の人間と会合を持つ場合、会合の約束を取り付ける段階で相手がどこの誰と分かっているはずだし、顔を初めて合わせた段階で双方共に名刺を出しながら、自己紹介し合うごくごく一般的な儀礼をこなすものだが、誰と合うのかも分からずに待ち合わせ場所にのこのことでかけたことになるし、自己紹介も名刺交換もせずに飲食の伴う会合をこなしたことを意味することになる。

 つまり少なくとも役人側は相手の氏素性を知らないままに一定時間の会合を持ったことになる。一杯屋でカウターに隣り合った者同士がお互いに相手の素性を知らないままに酒を酌み交わし、お喋りにいっときの時間を費やすということはあり得るが、ここで取り上げられている飲食に関しては秋本芳徳がウソをついていることによってのみ、こういった場面が成り立つ。当然、
「当初出席者の中に」云々は出てこない。

 さらに秋本芳徳は
「事後に取材を受ける過程で出席者の中に東北新社の社員であると共に利害関係者であると思われる子会社の社長等を兼ねている方がいることが判明いたしました」と言っているが、黒岩はここで「どういった利害関係に当たるのか」と聞かなければならなかった。「利害関係者であると思われる子会社の」云々では秋本芳徳自身はこの期に及んでも利害関係者かどうかははっきりとは把握していないことになるからである。

 黒岩宇洋「簡略化して再度お答えください。要はその日は自分では一切お金を払わずにご馳走になったということでよろしいですね」

 秋本芳徳「事後的に額、確認できる範囲での額を確認致しまして、振り込みをさせて頂きました次第であります」

 黒岩宇洋「その日は払っていないわけですから、ご長男からご馳走になったということでよろしいですね」

 相手の戦法は「当初出席者の中に利害関係者がいないと認識」していたためにご馳走になったが、後で分かったから、返金した。何も問題はないと無実を主張するもの。ご長男と審議官が最初から利害関係にあることを相互に知っていたという両者の関係を確定しなければ、黒岩宇洋の追及は空回りすることになる。当然、利害関係者がいるとは知らなかったとする言葉のカラクリを見破らないことには事は始まらないことになる。

 加計学園獣医学部新設に向けた安倍晋三の便宜供与疑惑が生じたとき、2015年4月2日に首相秘書官の柳瀬唯夫が首相官邸で愛媛県と今治市の職員と面会したかどうかが疑惑解明のカギと目されたものの、2018年5月10日午前中の衆院予算委員会に参考人招致された柳瀬唯夫は面会者が大勢いて、中に県市職員が混じっていたのに気づかなかった、名刺交換しなかったのかと問われて、保存してある中には加計学園関係者以外の名刺はなかったからと暗に名刺交換はしなかったかのように答弁させただけで追及を見事免れさせてしまった失敗を野党は教訓にしていないらしい。


 秋本芳徳「確認できる範囲で返金を行わせて頂いた次第でございます」

 黒岩宇洋「えー、タクシーチケットは先方から貰ったのか、お土産もタダで貰ったのか、事実をお答えください」

 秋本芳徳「飲食代やタクシー代も当初はご負担を頂きました。事後的に返金をさせて頂きました」

 黒岩宇洋「総理、人から食事や飲食をご馳走になって、お土産までタダで貰って、タクシーチケットまで出して貰う。これ、我々は接待と言うんですが、総理、如何ですか」

 総務省役人に対して接待主が当初から利害関係者であると承知していたという言質を取らない限り、「我々は接待と言うんです」は蚊に刺された程度の打撃しか与えない。

 菅義偉「私自身、全く承知しておりません。それが息子であれ、誰であれ、それに関連してご指摘のような不適切なことがあったかどうかについてはしっかりと関係者の中で対応して貰いたいというふうに思います」

 菅義偉にとって長男の対総務省官僚接待疑惑がどのような形であれ、自身と関連付けられることは認めるはずはない。となると、やはり把握しているという「全体像」がどの程度に把握しているのか、どのような意味づけをしているのか、問わなければならないことになるが、黒岩宇洋は問わないままに遣り過している。

 黒岩宇洋「会食、お金を返したと言いますが、これ一般的にですと、皆さん聞いてください。モノを盗りました、あとで返しました、無罪放免。そんな話が通るんだったら、刑法も何も要らなくなっちゃう。お返しになったと言いますが、局長、いくら返したんですか」

 秋本芳徳「お答え致します。具体的な返額の妥当性も含めて、現在、調査を受けている最中でございまして、この場でのお答えを差し控えさせて頂きたいと思っています」

 黒岩宇洋「返したからいいでしょうと言っても、いくら返したのか、それも言えないと。これ、この接待の疑惑に対して何をどう説明しようとしているのか。

 じゃあ、これ、局長にお聞きしますけども、この一緒に会食をした総理のご長男はこれは総務省にとっての利害関係者ですか」

 秋本芳徳「お答え致します。今ご指摘の点も含めて、今後(国家)公務員倫理審査会(人事院設置)等に於いて調査が進められると承知をしておりまして、この場でのお答えは差し控えさせて頂きたいと思っております」

 秋本芳徳が「当初出席者の中に利害関係者がいないと認識しておりました」と答弁したときに素早く食いついて、「事後に取材を受ける過程で出席者の中に東北新社の社員であると共に利害関係者であると思われる子会社の社長等を兼ねている方がいることが判明いたしました」と既に答弁していることを根拠に利害関係者であることを既成事実に持っていかなければならなかったはずだが、その機を逸した以上、この発言を再度持ち出して、「お答えは差し控えさせて頂きたい」を無効にすべきだったが、その機会さえ逃してしまった。

 黒岩宇洋「局長ね、おととい2月2日ですよ。局長は12月10日飲食したんだけれども、これは利害関係者と割り勘で飲んだときにのみに提出する1万円以上、会費がかかった届け出を事務次官宛に出しているじゃないですか。

 これ、利害関係者と飲んだときだけ出す届けですよ。何で出したんですか]

 「国家公務員倫理教本」(国家公務員倫理審査会)

 1万円を超える飲食の届出(倫理規程第8条) 自分で費用を負担するなど、利害関係者の費用負担によらずに利害関係者と共に飲食をする場合において、自分の飲食に要する費用が1 万円を超える場合は倫理監督官へ事前に届け出なければなりません。

 ただし、やむを得ない事情により、事前に届出ができなかった場合は、事後速やかに届出を行わなければなりません。
 
 なお、届け出る内容は、各府省等の倫理監督官が定めています。


 秋本芳徳「お答え致します。先ず基幹放送事業者として認定を受けております放送事業者につきましては利害関係者に該当を致します。会食相手の一部の方は役員を兼務していおられましたことから、外形上、利害関係者に該当する疑いがあると考えまして、事後的な報告を行わせて頂きました。
 
 但し利害関係者に該当するか否かにつきましては個別の判断を要するということで今後、総務省の大臣官房、そして人事院、公務員倫理審査会による事実確認が行われると認識おりまして、私はその調査を受ける立場(うまく誤魔化していると思ったのか、フッと笑う)でございます。その調査に真摯に対応してまいりたいと思います」

 あくまでも「当初出席者の中に利害関係者がいないと認識しておりました」の既成事実化を目論んでいる。黒岩宇洋はこの既成事実化を如何に破るかに追及の成否がかかることになる。

 黒岩宇洋「どうも私、事前の説明を聞くと、要は東北新社は直接、放送事業の許認可権は(利害関係者に)該当しないと。その子会社、これは総理のご長男が取締役をしている。これは登記簿にも載っておりますけども、ここは利害関係者だと。

 要は東北新社、親会社だったら、利害関係者ではないですよという説明のようなんです。ここで人事院、事務局長、人事審査会の事務局長に来て頂いていますが、これね、利害関係者とは何ですかと、これは倫理規定に定義はしっかりとされています」

 ここで黒岩は「国家公務員倫理規程」を持ち出して、2条に1号から8号まであるの、1号の1から5まではどうのと関係もしない講釈を垂れるムダを費やしから、目的としていた6を持ち出して、必要とする質問を行う。取り上げて、書き記す価値もないから、省くことにした。

 黒岩宇洋「そこで確認しますけども、この所管する業界というのはこれは役所用語で言うところの所掌する業界という理解でよろしいでしょうか」

 荒井仁志(国家公務員倫理審査会事務局長)「お答え致します。倫理規定2条1項6号に於ける各省が所管をする事務のうち、事業の発達・改善・調整に関する事務に関してその相手方となる事業者を利害関係人とするでございます。いわゆる省庁が所管する事業に於いて事業を行う企業といったものとなります」

 要するに黒岩は「省庁に於ける利害関係者とはどのような定義となっているのか」ということと、特定の業者に限定した場合の東北新社、あるいはその子会社は総務省にとって利害関係者に当たるのかどうかを聞くだけで済んだ。

 黒岩宇洋「ちょっとペーパー読まれたんでね、私、事前に人事院に確認して、所管と所掌と一緒かと。一緒だと、要は所管とは簡単に言ったもので、本来は所掌と。そうすると、総務省の設置法、これ第4条、所掌事務というのは96項まであるんですよ。総務省の所掌事務第4条の60号にですね、『電気通信業及び放送業の発達、改善及び調整に関すること』

 許認可とか免許とか何も書いていない。『放送業の発達、改善及び調整に関すること』。これは所掌ですよ。所管です。業界って、こんなに広いんです。で、今申し上げた東北新社の定款を取り寄せると、この定款、総則ですね、第2条、これ目的です。第9項にもっと細かく書いてある。放送法に基づき基幹放送事業及び一般放送事業と。
 
 これをやるんだと。こうなると、明らかに総務省の所管は放送業であって、この東北新社は放送業を営んていると。これは間違いなく政治倫理規定が指名している、これは利害関係者です。利害関係者から接待を受けるのはこれは政治(倫理)規定違反、アウトなんです。懲戒対象、国家公務員法倫理規定法違反です。

 総理ね、総理聞きますけども、総理も総務大臣をやっているわけですから、この放送業のエキスパートですよ。この業界の人だったら、東北新社というだけで、当然ね、もうCSチャンネルやっていると。そういう業者だって、もうこれ、ある意味、常識じゃないですか。如何ですか」

 「Wikipedia」によると、黒岩宇洋は中退しているものの東大に入っている。頭がいいと、回りくどい質問をしなければ気が済まないらしい。

 菅義偉「それは分かりません」

 黒岩宇洋「今日、時間ないんで、あれですけど、そもそもね、総理は総務大臣のときに息子さんを20代半ばに総務大臣秘書官に採用しましたね。任命しましたね。その事実関係をお答えください」

 菅義義偉「任命をしました」

 黒岩宇洋「総理ね。総理はここのところ世襲批判をしていますけども、世襲でも選挙を通らなければ、バッジは付けられないですよ。だけども、総務大臣秘書官というのは任命したら、すぐそのまま25歳でも政務秘書官ですからね、私は世襲より遥かに甘いことをやっている。どうも総理は言っていることとやっていることと真逆のような気がする。

 国民に対してもこんなに厳しいことを言いながら、今日聞いていても、自分の親族や家族や、そしていま一番近いと言われている総務省を庇っているとしか思えない。どうも言っていることとやっていることに逆だ。

 で、今申し上げたとおり、総理のご子息は総務大臣政務秘書官という総務省の重責のポストを経てから、この東北新社に行ったわけですから、これは当然、総理だって東北新社のことは息子を含めて、企業ですから、これが分からなかったというのは国民の当たり前とかけ離れていると言わざるを得ないでしょう。

 この倫理規定違反、今後も詰めていきますけども、そこで総理、やっぱり国民にとって非常に不思議な話。総務省のナンバーツーって言ったら、なかなか会うことができない、一般の国民は、我々国会議員だって本当に相手が忙しければ、局長クラスでも30分で退席ですよ、それが年末に1週間で3回、10月にはナンバーツーの総務省審議官が2時間45分も会食している。

 何でこの人達はこんなに総理のご子息とここまで会食したのか。思い当たる理由、目的をお答えください」

 菅義偉「先ずですね、秘書官にすることにどうしてここはルールの元に秘書官にしてるんです。世襲制限というのは私は言い続けてきました。息子3人いますけども、政治家には誰もしません。これは了解をしています。それと今40代ぐらいですよ。私は殆ど会っていないですよ。それは私は全く承知していませんが、それが息子であれ、誰であれ、それがご指摘なようなことがあったら、あったかどうかというのはやはりしっかり調査して貰う必要があるだろうというふうに思います。

 いずれにしろ、私自身は自分の政治信条として世襲制限するということはずっと言い続けてきましたから、そこはやり遂げますし、秘書官やったのは10年以上前のことですよ。東北新社の社長というのは私も秋田の同じ出身ですから、先輩で、もうお亡くなりになりましたけども、そういう色んなご縁があって、応援して貰っていることは事実でございますけども、それと今の私の長男のことと決めつけるというのはそれはいくら何でもおかしいんじゃないですかね。

 私、完全、別人格ですからね。そこは是非ご理解をして頂きたいと思います。私の長男にもやはり家族がいますし、プライバシーも、勿論、これもあると思いますよ。それを長男は長男で会社の一社員ですから、そういう中で言われているような不適切なことがあるかどうかについてこれから総務省の政治倫理ですか、審査会でそこはしっかりと対応して貰いたいと思います」

 菅義偉は現在でも東北新社から「応援して貰っている」。つまり菅義偉と東北新社は深い関係にある。当然、総務省役人は菅義偉が持つ首相としての権威のいくらかを東北新社の子会社の社長をしている菅長男に纏わせて、菅義偉に対する忖度と同時に菅長男に対する忖度を併せ持つ可能性は生じる。と言うことは「別人格ですからね」だけでは済まない問題を抱えていることになる。

 黒岩宇洋「今いみじくも東北新社の社長とのご縁まで仰った。それで先程東北新社は何をしている会社か知りませんと。これがね、国民の当たり前とはかけ離れていると言っているんですよ。

 それでね、私は接待を受けた3人のこの今回のご長男と会食した目的っていうのを総務省から先程返ってきた先ずナンバーツーと言われる総務省審議官、これね、内外の通信事業の動向等に意見交換を行うため、まあ、ちょっと尤もらしいけれども、やっぱりさっき言ったように2時間40分ですよ。で、次に2番目、吉田審議官、ナンバースリーの方、親睦を図るため。今日来ている流通行政局長に至って、本人または親が東北出身者の懇親会。

 こんなものにですよ、今申し上げた接待となったら、懲戒処分となる、自分の身の危険を侵してまで4回も、12月に週3回、しかもコロナ禍でこんなに自粛しているときに駆けつけるというのは一般感覚で言ったら、どうも、今、総理はサラリーマンみたいなことを仰ってますが、やっぱり総理大臣や総務大臣を経験している方の影響が大きいかもしれません。

 こういう疑念を抱かれるから、今日、そういったことはないということをはっきりとみなさんに、これからもですけども、国民の皆さんにまでお伝え頂きたいと思います」

 黒岩宇洋は「やっぱり総理大臣や総務大臣を経験している方の影響が大きいかもしれません」と口にした以上、総務省役人による菅義偉への忖度の力学が働いた菅長男からの接待受諾であり、総務省役人側からの忖度と接待の反対給付としての菅長男に対する放送事業に関わる何らかの便宜供与ではないのかとはっきりとした形の疑惑へと持っていくべきだった。

 菅義偉「いま私は東北新社のことはずっと知っておりますけども、先程の質問はみんなが知っているということじゃなかったですか。私は今ウソを言ったような言い方じゃないですか。

 じゃあ、私自身もですよ、ご指摘のような不適切なことがあったら、それは長男から電話があったときにそれはそうした会社から色んなことを聞かれたら、そこは事実に基づいてしっかり対応するということは申し上げました。

 そういう中で先程東北新社の内容について私は皆さんのことを聞かれたと思いましたよ。東北新社を知っていらっしゃる方は非常に少ないと思いますよ。何をやってらっしゃるか、そこは私が知らないって言ったわけじゃないですから、そこは違ったと思います」

 黒岩宇洋「それは誤解です。私もしっかりと総理宛の質問、これは文、写してきています。この道のエキスパートですから、総理はご存知ですねと私は質問したつもりですし、私は行き違いの齟齬があったら、それは私としては遺憾だと思いますが、少なくとも総理とか私が言ってきた一般の人など(のことについては)、誰も聞いていないですよ。総務省で放送行政を担っている人なら、誰でも分かっているでしょうとそう言ったわけですよ。その人達が分かりませんでしたと(?)。

 総理ね、今後利害関係者かどうかということも同僚議員が詰めていくと思いますが、先ずね、お話聞いて、局長仰った、こういった肩書、公務員ですよ、ホントにね、倫理規定というのは国民に不審や疑念をいだかれないということですごーく厳しくできている。そんな中で平気でこれ1万円以上ですよ、そんなおカネを払わずに飲み代、食べ物代、チケット代、タクシーチケット代、お土産、これご馳走されている。これ適切だと思いますか」 

 菅義偉「まあ、総務省に於いて既に調査開始ということでありますから、国民の皆さんから疑念を抱かれるようなことは絶対しないというルールに基づいてしっかりと対応する必要があるというふうに思います。

 私自身は全く承知しておりませんので、今言われているような総務省に於いてご指摘の会社とどのようなことがあったのかですね、事実を確認をして、ルールに基づいて対応すべきだというふうに思います」

 菅義偉はあくまでも一般論で片付けることを願い、菅長男と総務省役人との間の特定の問題だとすることを避ける巧妙な答弁で片付けようとしている。

 黒岩宇洋「今の質疑をしていてもですね、本当に不可解な分からないことだらけだったと思います。そして残念ながら、総理ですね、国民の当たり前からかけ離れているんじゃないかというのが卒直な印象です。で、今後ですね、この話は総理が主導して速やかに事案解明して頂くことを強く要請して質問を終わらせて頂きます」

 秋本芳徳は接待主に支払ってもらった飲食代等の返金額について「具体的な返額の妥当性も含めて、現在、調査を受けている最中でございまして、この場でのお答えを差し控えさせて頂きたいと思っています」、あるいは黒岩宇洋の総務省にとって菅長男は利害関係者に当たるのかの問に対して「今後(国家)公務員倫理審査会(人事院設置)等に於いて調査が進められると承知をしておりまして、この場でのお答えは差し控えさせて頂きたいと思っております」と答弁拒否しているが、2021年2月10日付「asahi.com」記事がこういった答弁は正当性がないということを2021年2月10日の衆院予算委員会での立憲民主党今井雅人の質問に対する人事院の答弁によって裏付けられたといった趣旨のことを伝えていた。その遣り取りを文字起こししてみた。

 2021年2月10日衆院予算委員会

 今井雅人「総務省の接待疑惑の件で色々と伺わせて頂きたいのですけども、国家公務員倫理審査会というのがありますね。法律(国家公務員倫理法)を読ませて頂きました。規定(国家公務員倫理規程)も色々読ませて頂きました。事前にレクを色々と遣り取りさせて頂いておりますけども、この倫理審査会の元で任意で各省庁にこれからこういう調査をしますという端緒(の報告)が行って、調査(開始の通知)が来て、それから(調査結果の)報告が来る。

 こういう流れだと思いますが、この調査をしている間に国会に(各省庁は調査に関係する事柄の)説明してはいけないという規定がどこにも見当たりません。そういう規定があるのかないのか。そして(人事院は)今回の事案に関してですね、総務省に対して調査の間は今回は説明しないようにというようなご指導をされたかどうか、教えて下さい」

 荒井均(人事院設置国家公務員倫理審査会事務局長)「お尋ねの根拠にお答え致します。倫理法理の中に調査中であることを理由に調査の対象となっている本人が自ら調査している内容について対外的に発言することを禁止した規定はないものと承知をしております。

 また、倫理審査会の方からこのようなご指導を申し上げたことはございません。いずれにしましても、倫理審査会に於いて倫理基準に応じてしっかりと調査を致すことが重要であり、倫理審査会と致しましては任命権者の報告を受けた上で疑義があると考える場合、倫理法に定められた権限に基づき、意見を述べ、再検討を求めるなど的確に対処してまいりたいと思います」

 今井雅人は人事院設置の国家公務員倫理審査会事務局長の荒井均の保証を得て、参考人として出席している総務省官僚に対して「今後お答えできませんなどと言わないで欲しい」と釘を差してから、秋本芳徳総務省情報流通行政局長に菅義偉の長男菅正剛(せいごう)といつから知り合いになったのかと尋ねる。

 秋本芳徳「私が記憶している限り菅正剛さんと知己を頂いたのは2015年以降のことでございます」

 今井雅人「年に1回程食事をされていると伺ってましたが、これは2015年当時から、毎年1回ぐらいは食事をされていたのですか」

 秋本芳徳「2015年以降、年に1回程度でございます」

 今井雅人「最初はどういう場でお会いしたのでしょうか。2015年ですね」

 肝心なことを聞くことができないから、文字起こしやめた。

 上記2月4日の衆院予算委員会で同じ秋本芳徳が黒岩宇洋の質問に答えて「当初出席者の中に利害関係者がいないと認識しておりましたため、自己分の負担を行っていませんでした。事後に取材を受ける過程で出席者の中に東北新社の社員であると共に利害関係者であると思われる子会社の社長等を兼ねている方がいることが判明いたしましたため先ず確認できる範囲での返金を行っています」と答弁したことを今井雅人は頭に入れていなかったらしい。

 要するに2015年当時から総務省官僚は接待主が東北新社子会社社長の菅正剛であり、総務省とは利害関係者であることを承知していて、接待を受けていたが、そのことを隠すために黒岩宇洋の追及にウソを重ねていた。ウソを重ねるについてはただ単に利害関係者から接待を受けていたことを隠すためだけでは済まない。接待に対する反対給付として不正な利益供与、あるいは便宜供与を与えていたからこそ、ウソの積み重ねが必要となる。接待側も何らかの不正利益供与・便宜供与を期待していなければタダで飲み食いさせる接待は行わない。

 問題となるのは総務省側が菅長男と菅義偉を切り離して接待を受け、利益供与等を図ったのか、菅長男の背後に控えている菅義偉への忖度が働いた利益供与なのか、はっきりとさせなければならない。

 また秋本芳徳は2月4日の衆議院予算委員会で黒岩宇洋に対して「お答え致します。具体的な返額の妥当性も含めて、現在、調査を受けている最中でございまして、この場でのお答えを差し控えさせて頂きたいと思っています」、「お答え致します。今ご指摘の点も含めて、今後(国家)公務員倫理審査会(人事院設置)等に於いて調査が進められると承知をしておりまして、この場でのお答えは差し控えさせて頂きたいと思っております」の答弁拒否ができなくなった。その点追及がしやすくなったはずである。このことを 今日、2021年2月15日に開催される衆議院予算委員会で活かすことができるかどうかである。既にNHKで中継放送が始まっている。菅長男接待問題を詰めるために野党はどういった追及の仕方をするのだろうか。鮮やかに詰めることができれば、菅内閣支持率低下に対応して野党の党支持率は少しは上げることができるはずである。

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森喜朗を女性蔑視の権威主義とオリンピズムの根本原則を同居させたままオリ・パラ開催に関わらせるのは日本の恥を世界に曝す行為

2021-02-08 10:38:08 | 政治
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 東京オリ・パラ大会組織委員会会長の森喜朗が2021年2月3日の報道陣オンライン公開の日本オリンピック委員会(JOC)評議員会で女性蔑視発言をしたとマスコミが一斉に報じた。マスコミやSNSで批判が出尽くしている感があるが、遅まきながら、批判に参入することにした。当方は野次馬根性からの参入。

 「日刊スポーツ」(2021年2月4日7時15分)(一部抜粋)

 森喜朗「これはテレビがあるからやりにくいんだが、女性理事を4割(JOCが評議員会理事の女性比率を4割以上とする目標を定めていること)というのは、女性がたくさん入っている理事会、理事会は時間がかかります。これもうちの恥を言います。ラグビー協会は倍の時間がかかる。女性が今、5人か。女性は競争意識が強い。誰か1人が手を挙げると、自分もやらなきゃいけないと思うんでしょうね、それでみんな発言されるんです。結局、女性はそういう、あまり私が言うと、これはまた悪口を言ったと書かれるが、必ずしも数で増やす場合は、時間も規制しないとなかなか終わらないと困る。そんなこともあります。

 私どもの組織委にも、女性は何人いますか。7人くらいおられるが、みんな弁えておられる。みんな競技団体のご出身で、国際的に大きな場所を踏んでおられる方ばかり、ですからお話もきちんとした的を射た、そういうご発言されていたばかりです」

 前段の趣意を解説すると、森喜朗は男性の発言はそれなりに意味があり、価値があるが、女性の発言は意味も価値もないと女性の存在を否定的に見ていて、そのことを女性に対する全体的な価値観としていることになる。だから、女性理事を増やした場合は時間規制して、意味も価値もない発言を最小限に抑えなければならないという答を引き出すことになっている。

 その一方で後段では東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の女性委員はきちんとした的を射た発言をみんな弁えているとの物言いで、意味・価値ある発言を心がけていると評価している。

 後段に重きを置いて森喜朗の女性に対する評価を素直に解釈すると、女性を個別的な価値観で捉えていて、つまり意味・価値ある発言を専らとする女性も存在すれば、意味・価値のない発言に終始している女性も存在しているというふうに女性の存在全体を否定的な価値観で捉えていないように見えるが、だとしたら、女性理事の定員を増やした場合、どんな女性が入ってくるのか分からないのだから、「女性がたくさん入っている理事会、理事会は時間がかかります」と女性を個別的な価値観で捉えることができず、全体的に否定的な価値観で見る評価は口を突いて出てこないことになるが、実際にはそのような評価、否定的な価値観が口を突いて出た。

 大体が「女性がたくさん入っている理事会」云々の発言自体、女性の存在全体を否定的な評価・価値観で捉えている言葉以外の何ものでもない。後段の一見、女性の存在を個別的な価値観で評価しているように見える発言は前段の女性の存在全体に対する森喜朗自身の否定的な価値観を正しいと証明する比較上持ち出した便宜的な評価に過ぎないと見なければ、前後の整合性が取れない。

 前段の否定と女性委員がきちんと的を射た発言をみんな弁えているとしている後段の肯定との間に整合性を与えるとしたら、森喜朗が自身をかつて総理を務め、通産大臣も文部大臣も歴任し、日本ラグビー協会の会長も名誉会長も務めた人間だとしている権威を自身に纏わせていて、その権威を力に下を従わせ、下は森喜朗という上の権威に従う権威主義の力学が意思決定の場では働くことを望んでいるものの、一方ではその権威主義の力学が思うように機能せず、「誰か1人が手を挙げると、自分もやらなきゃいけないと思う」と見る状況が生じ、その一方で権威主義の力学がうまく機能して、結果的に女性が思うように発言できない雰囲気が誘発している女性委員の弁えた態度と解釈しなければならない。

 なぜなら、女性という存在を男性に対するのと違って、ケースバイケースで肯定・否定を混じえた個別的な価値観で捉えることができずに頭から否定的な価値観で捉えて、女性の存在そのものの全体的な価値観と看做す評価を一度でも下している以上、男性の権威は認めて、女性の権威は認めずに、その事実によって女性よりも男性を上の存在に置く、あるいは女性を男性よりも下の存在に置く権威主義から発している森喜朗の態度ということになるからだ。

 こういった権威主義を言葉を変えて言うと、男尊女卑、あるいは男性優位・女性下位、あるいは男性優越主義の思想ということになる。

 森喜朗が持つ経歴上からも、性が男であるという点からも、自分を上に置いて何様と見るその権威主義の力学が自ずと意思決定の場で支配的となり、特に女性は発言は慎重になったり、遠慮がちになったりした場合は森喜朗から見たら、そのような態度は「弁えている」と評価を受けることになり、森喜朗を何様と見ない、それゆえに森自身を上に置く権威主義から自由な女性が自分の意見は自分の意見として闊達に述べた場合は森喜朗から見たら、自身の権威が蔑ろにされ、自身に対するリスペクトのない態度と映って、「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかります」と意味・価値のない発言として処理することになるのだろう。

 男の側が自身の判断に従って女性を個別的な価値観で捉え、相手に応じて肯定・否定の評価を使い分けるのではなく、女性の存在全体を否定的な価値観で統一する一方的な評価は男を上の権威に置いた権威主義なくして成り立たないだけではなく、このような権威主義的な性向を人格の一部としていなければ、森喜朗の前段の発言は出てこない。明らかに自身の権威を上に置いた、あるいは男の権威を上に置いた女性蔑視発言そのものとなる。

 つまり男尊女卑、あるいは男性優位・女性下位、あるいは男性優越主義といった権威主義の性向は既に森喜朗の人格の一部そのものとなっている。

 2021年2月2日に森喜朗は自民党本部で開かれた党スポーツ立国調査会の合同会議に出席、東京パラ・オリンピックを「新型コロナウイルスがどうであろうと、必ずやり抜く」と発言したということだが、この発言も開催と新型コロナウイルスの感染を受けた社会状況との兼ね合いを考えずにオリンピックそのものと自身の役目・活動そのものを最上位に権威づけて、それを全てとし、社会の感染状況は眼中に置かない権威主義からの発想でしかない。

 森喜朗は自身の女性蔑視発言に対する謝罪記者会見を2021年2月4日に行った。森喜朗の男の権威を上に置き、女性の権威を無視する権威主義の性向は既に人格の一部となっているのだから、謝罪したからと言って、その権威主義の性向は人格からそう簡単にはスッポリと抜け落ちるわけではない。自らの権威主義の性向が余程のダメージを受けるような経験をしなければ、終生、抜け落ちない頭の古さに支配されていると見るべきだろう。要するに謝罪会見は自身の男尊女卑等の権威主義の性向を自らの人格から剥がす儀式とはならず、批判に幕を降ろすことが目的の儀式で終わるのは目に見えている。

 「森喜朗謝罪会見・発言詳細」 (NHK NEWS WEB/2021年2月4日 19時17分)
“不適切な表現であった”

森会長
「きのうJOCの理事会の後で私がご挨拶をしました。それをお聞きの方々もいらっしゃると思いますので、これ以上詳細のことは申し上げません。今わざわざお集まり頂いてご心配頂いていることに恐縮しております。きのうのJOC評議員会の発言につきましては、オリンピック・パラリンピックの精神に反する不適切な表現であったとこのように認識しています。そのためにまず深く反省をしております。そして発言致しました件につきましては撤回したい、それから不愉快な思いをされた方についてはお詫びを申し上げたい。以上であります」

“引き続き献身して努力していきたい”

森会長
「オリンピックパラリンピックにおきましては、男女平等が明確に謳われております。アスリートも運営スタッフも多くの女性が活躍しておりまして大変感謝しています。私は組織委員会のことを申し上げたことでないことは皆さんご承知頂いていると思いますので、私も組織委員会については非常に円満にうまくいってると注釈で申し上げたことも聞いておられたと思います。次の大会まであと半年になりまして関係者一同頑張っております。その中で責任者である私が皆さんのお仕事に支障があるようなことがあってはいけない、そう考えてお詫びをして訂正撤回をすると申し上げたわけです。世界のアスリートを受け入れる都民国民、IOCをはじめ国際的な関係者にとってもオリンピック・パラリンピック精神に基づいた大会が開催できますように、引き続き献身して努力していきたいと思っています」

(以下は質疑応答。)

“辞任の考えない”

(質問)
今回の発言で国内外から大きな批判。会長の中で辞任をしなければいけない考えはあったか。

(森会長)
辞任するという考えはありません。私は一生懸命献身的にお手伝いして7年間やってきたわけで、自分からどうしようという気持ちはありません。皆さんが邪魔だと言われれば、おっしゃるとおり老害が粗大ゴミになったのかもしれませんから、そしたら掃いて貰えばいいんじゃないですか。
“知ってる理事会の話をした”

(質問)
IOCはオリンピックにおける男女平等を掲げている。日本もジェンダーバランスを同じようにしていこうと努力している中での発言だったが、大会のトップとして世界にどのように説明していきたいか。

(森会長)
私は組織委員会の理事会に出たわけじゃないんですよ、JOCの理事会に僕は名誉委員という立場だったからそこで挨拶をした。私は自分なりに整理をしていたつもりです。組織委員会の理事会と一緒にしておられる方もいるが、それは皆さんの報道のしかただと思いますが。あくまでもJOCの評議会に出て私は挨拶をしたということだ。

それは1つは山下さん(JOCの山下会長)が、今度の改革は大変大きな改革で、JOCが人事の改革をするのに大変な苦労をしている、最初から理事会で相当な突き上げをくらったりして難航しておられると相談があったものですから。山下さんの最初の大きな仕事としては、最も成功して貰わないといけない仕事、そこが人事のことですから、そのことはよくできたということを私はよく評価して山下さんにお礼を申し上げることを、そこで発言をしたんです。

ですが政府から来ているガバメントに対してはあまり数字にこだわるとなかなか運営が難しくなりますよと、そういう中で私の知ってる理事会の話をしてああいう発言になったということです。

特定の女性を念頭においたものではない

(質門)
女性の話が長いという発言については、ラグビー協会の特定の女性理事を念頭においたものではないか。

(森会長)
一切頭にありませんし、今回の理事会でどういう人が理事で誰がどう話したかというのは、私は一切知りません。
IOCへの説明“必要ない”

(質問)
発言についてIOCから問い合わせはあったか。

(森会長)
私は分かりませんが、職員は毎日毎日きょうもこれから、いつも会議が始まりますから、そういう話はあるかもしれません。

(質問)
森会長からご説明される意思はあるのか。

(森会長)
それは必要はないでしょ。今こうしているんだから。

“誤解生むといけないので撤回”

(質問)
五輪の理念に反する発言。辞任しないことが大会への批判になるのでは。

(森会長)
ご心配頂いたのはありがとうございます。誤解を生むといけないので撤回します。そう申し上げています。

“オリンピック精神に反すると思うから…”

(質問)
会長は国民から理解を得られる大会をと言っていた。オリンピックの理念に反する発言だったと思うが、ご自身が何らかの形で責任を取らないというのは大会の開催の批判を強めてしまうものではないかと思うが、どうお考えか。

(森会長)
ご心配いただいたのであればありがとうございます。誤解を生むといけないので撤回しますと申し上げている。オリンピック精神に反すると思うからとそう申し上げた。
“数字にこだわって無理しないほうがいい”

(質問)
女性登用についての基本的な考え方を伺いたい。会長はそもそも多様性のある社会を求めているわけではなく、ただ文科省がうるさいから登用の規定が定められてるという認識でいらっしゃるのか。

(森会長)
そういう認識ではありません。僕は数字にこだわって何名までにしないといけないというのは、あんまりそれにこだわって無理なことはしないほうがいいな、ということを言いたかったわけです。

(質問)
きのうの文科省のうるさいからというのは、数字がという意味か。

(森会長)
うるさいからというのは、ガバナンスを守るためにみんな大変苦労されているようです。私はいま、どこの連盟にも関係をしておりませんからね。いろいろな話が入ってくるので、総括して会議の運営は難しいですよというのを申し上げた。
“密をどう避けられるかという話の例” 

(質問)
聖火リレーで愛知で走る予定だったタレントの田村淳さんが森会長の直近の発言で何があってもオリンピックをやるということを田村さんは解釈されて、理解不能だと聖火ランナー辞退した。どう受け止めているか。

(森会長)
きのうのことに合わせて報道されたんでしょうが、これはきのうの会合じゃないと思いますよ。おとといの自民党のことで、そのときにリレーについてはどうなってますか、という質問があったから、われわれ直接やるものではないが、各県がやっておられる実行委員会にお願いして基本的には密を避けてやっているんだと。

その中で、例えば人気のあるタレントさんは、できるだけ人がたくさん集まるところはご遠慮していただくほうがいいかなと思ってると。誰が走るかとか、何キロ走るかは僕らが決めることではないので、実行委員会が考えること。

僕らが県に言えるのは、できるだけ密は避けてくださいと、タレントさんがくるとみんな集まってくる、そうすると密になるからどう避けられるだろうという話の例で、密じゃないところといえば、それじゃあ田んぼで走るしかないね、空気がこもらないし、それしかないですねという意見もありますということを紹介しただけで、組織委員会がするということを言ったわけではない。

それもこれも実行委員会でお考えをいただき、決めていただきたいとその例で申し上げただけで。

“私は誰が走るか一切知りません”

(質問)
著名人のランナーに継続して走っていただきたいという思いは。

(森会長)
私は走ってくださいとか走って下さるな、とかを言う立場じゃありません。お決めいただいた人たちは、所定の手続きをされてこちらに持ってこられるんだろうと思います。私は誰が走るか一切知りません。

“私も”話が長いほう

(質問)
基本的な認識だが女性は話が長いと思っているのか。

(森会長)
最近女性の話を聞かないから、あんまりわかりません。

(質問)
東京都の小池知事が会見で「話が長いのは人によります」と発言されていた。

(森会長)
私も長いほうなんです。

(質問)
国会議員でも、女性の割合をあらかじめ決めておこうという話も盛り上がっている。

(森会長)
それは民意が決めることじゃないですか。

(質問)
会長ご自身は賛成か反対か。

(森会長)
賛成も反対もありません。国民が決めることだと思います。

“責任が問われないとは言っていない”

(質問)
冒頭誤解を招く発言とか不適切という発言があったが、どこがどう不適切だと会長はお考えなのか。

(森会長)
男女を区別するような発言をしたということです。

(質問)
オリンピック精神に反するという話もされてましたが、そういった方が組織委員会の会長をされるのは適任なのか。

(森会長)
さあ、あなたはどう思いますか?

(質問)
私は適任じゃないと思うんですが。

(森会長)
じゃあそのように承ります。

(質問)
会長としての発言ではないので責任が問われないという趣旨の発言も…。

(森会長)
責任が問われないとは言ってませんよ。場所をわきまえてちゃんと話したつもりです。

(質問)
組織委員会としての場じゃないから、あの発言はよかったということなのか。

(森会長)
そうじゃありませんよ。ちゃんと全部見てから質問してください。

“場所、時間、テーマとかに合わせて話すことが大事”

(質問)
わきまえるという表現を使われていたが、女性は立場を控える立場だという認識か。

(森会長)
そういうことじゃありません。

(質問)
じゃあなぜああいう発言になったのか。

(森会長)
場所だとか時間だとかテーマだとかにそういうものに合わせて話すことが大事じゃないんですか。そうしないと会議は前に進まないんじゃないですか。

(質問)
それは女性と限る必要はあったのか。

(森会長)
だから私も含めてと言ったじゃないですか。

(質問)
先ほど女性がいると会議が長くなるという発言を誤解と表現したと思うが、これは誤った認識だということではないのか。

(森会長)
去年から各協会や連盟は、人事に苦労しておられたようです。私は昔は全体を統括する体協、今のスポーツ協会の会長をしておりましたから団体の皆さんとも親しくしております。そういう皆さんたちはいろいろ相談にも来られます。その時になかなか大変ですということでした。

特に山下さんのときは、JOCの理事をかなり削って女性の枠を増やさないといけないということで大変苦労したという話をしておられて、理事の中で反対もあって大変だったけど何とかここまでたどりついた苦労話を聞いたからです。

“聞いたことを思い出して言っている”

(質問)
競技団体から女性が多いと会議が長いという話が上がってるということか。

(森会長)
そういう話はよく聞きます。

(質問)
それはどういう競技団体から。

(森会長)
それは言えません。

(質問)
実際データがあるとか根拠に基づいた発言ではなかったと受け止めたが、どうか。根拠のある発言とは思えないが。

(森会長)
僕はそういうこと言う人はどういう根拠があっておっしゃったかわかりませんけども、自分たちが女性の理事をたくさん選んだけども、結果としていろんなことがあったということを聞いたことを思い出して言っているんで、そういうことで苦労されますよということを申し上げたんです。

“謙虚に受け止めている”

(質問)
今回の発言で皆さん怒っている。オリンピックを運営するトップの方が女性を軽視する発言をされたことについて、皆さん怒っています。森会長の率いる大会を見たくないという声もネットなどで上がっています。それについてどう受け止めているのか。

(森会長)
謙虚に受け止めております。だから撤回をさせていただきますと言っておるんです。

【オリンピック・パラリンピックの精神】

オリンピック・パラリンピックの精神は、IOCの「オリンピック憲章」などで定められ、人種、肌の色、性別、性的指向などを理由にしたいなかる差別も否定しています。

憲章はIOCや競技団体だけでなく、森会長がトップを務める大会組織委員会も守る義務があります。

また、憲章では「男女平等の原則を実践するため、あらゆるレベルと組織において、スポーツにおける女性の地位向上を促進し支援する」とIOCの役割について記していて、IOCは女性の参加比率を高める取り組みとして、東京大会から男女の混合種目を柔道やトライアスロンなどで増やしていました。
競技団体 女性理事の割合 目標40%以上

スポーツ庁は2019年6月に競技団体が守るべき規範、「スポーツ団体ガバナンスコード」をまとめ、役員の体制については、女性理事の割合の目標を40%以上とすることが明記されています。

そして、競技の普及・発展などのために女性の視点や考え方を積極的に取り入れることが求められるとしていますが、スポーツ庁が調査した国内の107の競技団体の女性理事の割合は、2019年3月の時点で15.6%と、低い水準にあるということです。

スポーツ庁によりますと、この規範は競技団体を統括する立場のJOCにも適用されるとしています。スポーツ庁は「競技団体からは人材が不足しているという声もあり、女性役員育成のための研修を開くなどの支援をしている。すぐに達成が難しい場合でも、段階的に割合を増やしていくなどの方法はある。今後も目標達成へ向けてサポートしていきたい」としています。

 記者「IOCはオリンピックにおける男女平等を掲げている。日本もジェンダーバランスを同じようにしていこうと努力している中での発言だったが、大会のトップとして世界にどのように説明していきたいか」

 森喜朗「私は組織委員会の理事会に出たわけじゃないんですよ、JOCの理事会に僕は名誉委員という立場だったからそこで挨拶をした。私は自分なりに整理をしていたつもりです。組織委員会の理事会と一緒にしておられる方もいるが、それは皆さんの報道のしかただと思いますが。あくまでもJOCの評議会に出て私は挨拶をしたということだ」

 記者は森喜朗の発言が見せることになった男女差別・女性蔑視を問題にした。対して森喜朗は発言場所のレベルに合わせて発言に現れている問題のレベルを下げ、発言場所から言って問題ではないかのように見せかけている。つまり話にならないくらいに問題の本質と向き合っていないし、向き合おうともしていない。至って頭の古い人間だから、致し方がないのだろう。自分の発言が女性蔑視に当たると気づいていないのかもしれない。

 結果、女性という存在を個別的な価値観で捉えることができずに女性全体を否定的な価値観で評価・判断する、自らの人格の一部として根付かせているいる男尊女卑の権威主義的性向に何ら気づいていないことを発言の端々に見せることになる会見となっている。

 「オリンピック・パラリンピックの精神に反する不適切な表現であったとこのように認識しています」とは言っているが、自身の女性蔑視が自身の人格のどのような性向に起因しているのかは考えることも気づくこともないのだから、謝罪のために口にする都合上の言葉に過ぎない。このことは次の発言に現れている。

 「その中で責任者である私が皆さんのお仕事に支障があるようなことがあってはいけない、そう考えてお詫びをして訂正撤回をすると申し上げたわけです」

 皆さんのお仕事に支障があってはいけないから、それとの関係で謝罪する。勿論、皆さんのお仕事に支障を及ぼす。だが、その原因は自身の女性の存在を蔑ろにする発言にあるのだから、その発言との関係で謝罪しなければならないのだが、自分が本質的にどのような発言をしたのか、そのことに直視するつもりも、直視もできないから、仕事との関係での謝罪で誤魔化すことになる。

 このことは次の発言とも関連する。「オリンピックパラリンピックにおきましては、男女平等が明確に謳われております」。問題発言が男性に権威を置き、女性の権威は認めない権威主義を骨格として、男尊女卑や男性優位・女性下位、あるいは男性優越主義などの考え方からの女性の在り様に対する蔑視であることとを結びつけることができないのだから、深刻な思いとは程遠い、表面的な認識に過ぎない。

 記者は「五輪の理念に反する発言。辞任しないことが大会への批判になるのでは」と尋ねているが、単に五輪の理念に抵触する男女不平等の考え方に基づいた発言とするのではなく、女性の存在を男性の存在よりも劣ると見る権威主義に基づいた女性差別発言は五輪の理念に反するのではないかと質問していたなら、「ご心配頂いたのはありがとうございます。誤解を生むといけないので撤回します。そう申し上げています」などと通り一遍の口先だけの謝罪を受け取ることはなかったかもしれない。

 記者「基本的な認識だが女性は話が長いと思っているのか」

 森喜朗「最近女性の話を聞かないから、あんまり分かりません」

 「女性がたくさん入っている理事会、理事会は時間がかかります」と女性の会話の能力・知能という点で男よりも劣ると決めつけていながら、自身の発言にあまりも不正直で、もはや論外である。

 問題とすべき本質的な事柄はただ一つ、東京大会組織委員会会長の立場でオリンピック・パラリンピックの開催に関わっている以上、上記記事にあるように人種、肌の色、性別、性的指向などを理由にした如何なる差別をも否定要素としていなければならない「五輪の理念」(オリンピズムの根本原則)を上っ面の知識としているのではなく、自身の人格の一部としていなければならないことに反して女性の存在を劣ると見ている森喜朗の性差別的な権威主義的性向が人格の一部となっているということである。

 ところが、上っ面の知識ともしていなかった。だから、ポロリと権威主義的性向が顔を覗かせてしまう。

 森喜朗の自身の発言に不正直であることからも理解できるようにこの手の人格が容易には変えようがない以上、日本オリンピック委員会(JOC)会長山下泰裕が「本人が謝罪されて、発言を撤回されております。色んな意見があることは分かっていますけど。(職務を)最後まで全うして頂きたいと思っています」(時事通信)とその地位を擁護するのはオリンピック憲章、その理念に砂をかける思惑としかならない。

 山下泰裕がJOC会長としてオリンピック憲章、その理念を擁護することを自らの姿勢としなければ、会長としての使命を失うことになる関係から言うと、その理念とは相容れない、性差別的な権威主義にまみれた森喜朗をオリンピックに関わる職務から排除してこそ、理念の擁護に添う姿勢となる。だが、山下泰裕だけではなく、オリンピックの運営に関わる多くが単なる失言と捉えていて、その失言の裏にある根深い問題に気づかずに謝罪し、発言を撤回すれば済む軽い問題へと矮小化している。

 要するに森喜朗と同様に東京オリンピック・パラリンピックが無事開催されさえすればいいと、祭典そのものを最上位に権威づけ、その開催を最重要課題としているがために森喜朗の発言が男性を上に権威づけ、女性の権威を蔑ろにした権威主義の思想から出た根深い問題だと突き詰めもせずに単なる失言と片付け、謝罪すればシャンシャンと手を打つことができると軽く考えているのだろう。

 IOCも同じ穴のムジナである。2021年2月5日付「asahi.com」記事によると、IOCの広報担当者が朝日新聞の取材に対して2月4日、「ジェンダーの平等はIOCの根本原則で、将来を見据えた五輪ムーブメントの長期計画、アジェンダ2020でも重要な柱に据えてきた。森会長は発言について謝罪した。これでIOCはこの問題は終了と考えている」とメールで回答したと伝えている。

 東京オリンピック・パラリンピックが無事開催されさえすればいいとしているからこそ、謝罪で問題解決とすることができる。欧米のマスコミの批判とは正反対のオリンピック開催至上命令としている。

 森喜朗が東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会会長としてオリ・パラの開催に関わっている以上、オリンピック憲章にある「オリンピズムの根本原則」、〈6. このオリンピック憲章の定める権利および自由は人種、肌の色、性別、性的指向、言語、宗教、政治的またはその他の意見、国あるいは社会的な出身、財産、出自やその他の身分などの理由による、いかなる種類の差別も受けることなく、確実に享受されなければならない。〉の決まり事を単なる頭の理解ではなく、人格に根付かせ、常々行動として表現していなければならない。ところが、人格に根付かせることができていないことから行動として表現できず、自らの人格の一つとして抱え込んだ男尊女卑、あるいは男性優位・女性下位、あるいは男性優越主義の考え方に基づいた権威主義の赴くままに「オリンピズムの根本原則」の「6」に抵触する女性蔑視を発言という形で行動することになった。

 女性差別を露わにした発言を謝罪し、撤回したとしても、森喜朗の中で女性差別の権威主義的性向が消えてなくなるわけではなく、腹の底で持ち続けることになり、結果として森喜朗の中で「オリンピズムの根本原則」と女性蔑視の権威主義を同居させたままオリ・パラの開催に関わり続けさせることになる。そのことに目をつむるのは日本の恥を世界に曝す以外の何ものでもない。

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菅義偉の「個々の研究についてはコメントを差し控えています」の答弁をそのままスルーさせる野党追及の甘さ加減

2021-02-01 11:50:48 | 政治
 安倍政権も菅政権も、コロナ対策として「感染拡大の防止と社会経済活動の両立」を公約としてきた。GO toキャンペーン等の社会経済活動の推進によって各業種の経済状況が向上しても、感染も拡大したなら、「両立」とした公約は破綻する。言わずもがなのことだが、感染も抑え、社会経済活動も活発化させることによって両立は公約として立派に成り立つ。

 2020年11月18日、厚生労働省の発表によると1日の新規陽性者数が2000人を初めて超えて、2179人と過去最多を更新した。同11月18日の東京都の新規感染者は8月1日の472人を上回って、過去最多の493人を記録した。いわゆる第3波の到来と言われた。

 年が明け、菅政権は2021年1月7日に感染拡大が著しい1都3県に緊急事態宣言を再発令した。翌2021年1月8日、東京都の新規陽性者は2392人を記録、過去最多となったが、増減を繰り返しながら、徐々に下降線を辿っていき、東京都の場合は2021年1月29日は868人、2021年1月30日は769人、2021年1月31日は633人と低い人数で推移していくまでになった。

 緊急事態宣言とは飲食店等の営業時間短縮、テレワークの拡大、不要不急の外出の自粛等の要請を柱としていて、これら全ては人の移動制限をベースとしている。人の移動制限こそが自動的で確実な3密回避状態を作り出す。逆に人の移動制限を解き、移動を活発化すれば、いくら気をつけていたとしても、3密回避に緩みが生じて、感染は拡大に向かう。

 あるいは人の移動制限の解除が人々を開放的な気分に否応もなしにいざなうことになって、そのような気分が多くの行動に波及して、コロナに対する警戒感を緩めてしまうといったことも起こり得て、そのことが感染を拡大する要因の一つとなっているのかもしれない。

 2021年1月26日衆議院予算委員会

 大西健介(立憲民主党)「今日も西浦先生、お呼びしましたけども、今日も来て頂くことができなかったですけども、これ、西浦先生はですね、Go toトラベルについてそれが開始されたあとに旅行に関する新型コロナウイルス感染者が最大6から7倍増加したという分析結果を発表されています。

 で、第2波は8月中旬までに減少に転じていたが、初期のGo to事業が感染拡大に影響を及ぼした可能性があると、こういう指摘をされているわけですけども、同じようにこういう指摘をしっかりと踏まえればですね、きのう総理はこの委員会でGO toトラベルは然るべき時期に再開したいと言っていましたけども、この科学的知見をまさにちゃんと踏まえて頂いていくと、再開するとまたぶり返すんじゃないか。またリバウンドするんじゃないか。

 また少なくともですね、再開する場合には今までと同じ形じゃなくて、遣り方を見直さなければいけないと思うのですけれども、菅総理、きのうは然るべきときに再開すると、言ってましたけども、これ、GO toトラベルはやっぱり影響するんだと、西浦先生言ってますけども、これ、どう受け止められますか」

 菅義偉「いずれにしろ一つ一つの研究結果についてコメントすることは差し控えたいと思います」

 大西健介「やっぱりね、私何度も言ってますけども、都合のいいとこだけつまみ食いだけするんでなくて、ちゃんと受け止めてほしいんですよ。

 それで先程の西浦教授のシミュレーションに戻ると、これ、緊急事態宣言発令の前日に開かれた厚生労働委員長のアドバイザリーボードでこのシミュレーションを西浦教授、しっかりと説明してるんですよ。ところがですね、なぜかその資料そのものが非公開という扱いにわざわざしてるんですよ。

 で、なぜ非公開にするのか。それこそ政権の方針と異なる都合の悪いデータに背を向ける行為じゃないかと私は思うんですけど、総理如何でしょうか」

 田村憲久「これはですね、アドバイザリーボードを開く前日に西浦先生が出したいというお話がアドバイザリーボードにお話がありました。それに関しましてはですね、中身(内容?)の精査もございますし、そういう意味で公表しなくてもいいというご理解を頂く中に於いてですね、そこで資料として、参考資料として出して頂いということであります」

 大西健介「今の答弁よく分からないのですけども、別に資料ですから、先程言われたように別に一つ一つの科学的研究にはコメントしないみたいな話がありましたけども、それが絶対正しいかどうか分かりませんけども、一つの材料として議論するために会議をしているのにわざわざ非公表にすると先生にわざわざ話して非公開にしていいですかと言わなきゃいけない。

 そこまで出したくないということは何なんでしょうか。田村大臣、どうしてわざわざ出さないということを言わなきゃいけないのか。そのまま出せばいいんじゃないですか」

 田村憲久「様々な資料がですね、アドバイザリーボードには出される場合があります。その場合は表に出すもの、一定の時間を置いてから表に出すもの。色んなものがありまして、その中に関してですね、今回の資料に関してはですね、ご本人の了解を得た上で、まあ、公開しなかったということであります」

 大西健介「今の答弁に関してもあんまりよく分からない。結局、政権の方針と違うようなデータは出したくないということなんかなあと受け止めてしまいます」

 結局のところ、菅義偉の「研究結果についてコメント差し控え」をスルーさせてしまった。田村憲久が答弁しているように本人の了解を得た非公開で済ませることができる問題ではないことに大西健介は気づかなかった。西浦教授のGo toトラベルが感染拡大の要因となったとしている分析結果を追及材料と決めた時点で菅政権のGO toトラベルに関する答弁を頭に入れておかなければならなかったのだが、そのように準備する心がけさえ持たなかった。

 2020年11月25日予算委員会。

 枝野幸男「政府は、GO toトラベルが感染拡大させたというエビデンスはないと繰り返して仰っていますが、じゃ、何でこの時期にこんなに急増していると認識をされているのか。その原因、理由をはっきりできなければ対策を打てないはずだと思います。なぜ今こんなに急増しているんですか」

 厚労相の田村憲久は専門家の方々に色々と確認しているが、GO toトラベルが感染増加の要因だとは明確な断定はできないが、人の動きというものが増えてきていること、気温の低下が感染増加の要因となっているとの趣旨の答弁をしている。

 要するに人の移動ということに関してはGO toトラベルがそれを活発化させて、感染増加の要因となっていることだけは認めている。
 
 枝野幸男「人の移動が活溌になれば、感染が広がる。GO toトラベルは人の移動を政府が推奨した、勧めていた、これは間違いないですね。今も勧めているんですよね、全面中止じゃないですから。総理」
 
 菅義偉「先ず政府の仕事は国民の命と暮らしを守ることで、そうした中でGoToトラベル、今日まで約4千万人の人にご利用頂いていております。そして現実的にコロナの陽性になった方は180人であります。元々このGoToトラベルを進めるに当たって、当然、政府の分科会のみなさんに意見を聞きながら進めさせて頂いております。まさにこのGoToトラベルによって地域経済を支えていると、これ、事実でないでしょうか。

 そして先週(11月)20日の日に専門家の分科会の提言においてGoToトラベルが感染拡大の原因であるとのエビデンスは現在のところは存在しない、こうしたこともご承知だと思います。先ず専門家委員会のみなさんから20日の日に提言を頂いた。その提言を尊重し、感染拡大地域に於いてGoToトラベルの運用のあり方について早急に検討して頂きたいということでありましたので、私たちは20日の翌日にコロナ対策の全体会合を開いて、新たに感染拡大防止のために予防措置として医療体制を守るために一部の地域に一時的にそうした方向を決定したということでございます」

 田村憲久の答弁と異なって、「GoToトラベルが感染拡大の原因であるとのエビデンスは現在のところは存在しない」とGoToトラベル感染拡大説を否定している。

 GO toトラベルによって「コロナの陽性になった方は180人」。この180人は症状が出てPCR検査の結果、陽性と判定された数なのか、GO toトラベルそのものには関係していない濃厚接触者をPCR検査にかけて陽性とされた人数をプラスした180人なのだろうか。2次感染、3次感染をカウントしていくと、GO toトラベル以外への影響が広がっていき、問題が大きくなることから、GO toトラベルそのものに関係していない濃厚接触者のうちの陽性者はカウントしないことにしているのか、はっきりしたことは公表していない。

 但しGO toトラベル中に感染したものの、症状が出ずに自分が感染していることに気づかない無症状ウイルス保有者はPCR検査を受ける動機がないことを考えると、GO toトラベル終了後に知らないままに市中感染させ、感染経路不明となったケースは絶対ないとは言い切れないから、GoToトラベルでの感染者数にカウントされないことだけは確かである。要するに180人を180人だけで終わらせることはできない。

 いずれにしても菅内閣は政府分科会の意見を受けて、「GoToトラベルが感染拡大の原因であるとのエビデンスは現在のところは存在しない」とするGoToトラベル感染拡大説を否定する態度を取り続けている。

 であるなら、初期のGo to事業が感染拡大に影響を及ぼした可能性があるとしている西浦教授の分析と菅内閣の「GoToトラベルが感染拡大の原因であるとのエビデンスは現在のところは存在しない」とする主張が真っ向から対立することになるのだから、菅義偉の「いずれにしろ一つ一つの研究結果についてコメントすることは差し控えたいと思います」の発言をそのままスルーさせてしまうのは策がなさ過ぎる。

 「西浦教授の分析結果が正しいのか、政府のGo to関連政策が感染拡大に関係しないとしている主張が正しいのか、導き出すことが国民に与える安心材料となるのだから、説明責任が伴うことになって、コメントしないとするのは無責任過ぎないか」と攻めることもできるはずである。野党の追及の甘さがこの場面にも出たとしか思えない。

 大西健介に続いて質問に立った同じ立憲民主党の奥野総一郎も大西健介と同様の質問をしている。「西浦先生の研究結果によると、GO toトラベルに関する新型コロナウイルス感染者が最大6倍から7倍増加したとの分析結果を発表した。この研究通りとすると、GO toトラベルはやめなければいけなかった。この研究についてどう思うか。GO toトラベル停止は遅れたと思うか」と追及した。

 西村康稔(経済再生、担新型コロナ対策等担当大臣)「先ほど総理も答弁されましたけど、一つ一つの研究については答弁することは私共しておりません。いろんな研究を私共は見ております。この件についてご質問でありますので、申し上げればですね、研究者自身、西浦先生自身が書かれていますけども、これは旅行や観光等の行動履歴を分類しており、GO toトラベルの利用者か否かを分析したものではない。

 それから、これは(Go toトラベル開始の)7月22日から26日は4連休を挟んでおりますので、そもそも観光が活溌な時期であることなどから、著者自身がですね、我々の分析は観光キャンペーンと日本に於けるコロナ発生率との因果関係を断定するには余りにも単純化し過ぎているというふうにご自身が書かれておりますので、私たちは様々な研究を受け止めながらですね、対応してまいりたいと思います」

 西村康稔の答弁を理解するためにこの衆院予算委員会前日の2021年1月25日付の「NHK NEWS WEB」記事を参考にする。

 西浦教授の分析は京都大学のグループの形で国際的な医学雑誌「ジャーナルオブクリニカルメディシン」に発表した研究論文だという。2020年5月から8月にかけて24の県から報告された新型コロナウイルスの感染者約4000人を分析、約20%・約800人が発症前に旅行していたり、旅行者と接触したりするなど旅行関連とみられる感染者だったとしている。

 GO toトラベルが開始されたのは2020年7月22日。それから8月にかけた感染者となると、新型コロナウイルスの潜伏期間は1~14日間程だが、WHOの報告によると、感染してから症状を発症するまでの平均期間は平均5~6日程度としているから、GO toトラベルの利用者の感染が入っていないとは言い切れないが、GO toトラベルであっても、GO toトラベル以外の旅行であっても、人の移動によって成り立たせているのだから、人の移動制限が3密状態回避の自動的で確実な方法となることに反して気をつけているつもりでも、3密回避に緩みを誘い込む要因となることを考えると、人の移動を推奨することになるGO toトラベルのみを感染と関連付けないで済ますことはできない。

 このことは次のことが証明する。安倍政権が2020年5月25日に最初の緊急事態宣言の全国解除後、つまり人の移動制限を解除後、暫くは落ち着いていた新規感染者数が6月末頃から増えていって、いわゆる第2波を迎えて8月1日を挟んで頂点を迎えたのは2020年7月22日のGO toトラベルの開始による人の移動の推奨もさることながら、緊急事態宣言全国解除による人の移動制限解除が感染拡大への発端と見なければ、第2波の説明がつかないことになる。

 西浦教授の分析は期間ごとの発生率を比較する手法で詳しく分析した結果、「GO toトラベル」が始まった2020年7月22日から7月26日までの5日間での旅行に関連した感染者は、と言うことはGO toトラベル以外の旅行と言うことなのだろうが、127人、発生率は前の週の5日間と比べて1.44倍に高くなっていたことが分かった上に旅行の目的を観光に限定すると、発生率は前の週の5日間の2.62倍になっていたとの分析結果を記事は伝えている。

 この傾向を前提とすると、GO toトラベルであっても、GO toトラベル以外の旅行であっても、観光を目的としているなら、人の移動と共に観光施設内での飲食を伴い、3密に対する意識を薄れさせる機会が二重三重に待ち構えている状況を考えると、GO toトラベルだけを西浦教授の分析から除外することはできない。

 西村康稔の西浦教授の分析は「旅行や観光等の行動履歴を分類しており、GO toトラベルの利用者か否かを分析したものではない」と答弁していることに対応する説明が記事の最後のところで、〈地域によって公開情報に差があることなどから、今回の分析だけでは「GO toトラベル」が感染拡大につながったかどうかを決めることはできない。〉と記載されているが、続けて、GO toトラベルが〈少なくとも初期の段階では感染の増加に影響した可能性があるとしていて、グループでは今後、感染の抑制と経済活動の回復のバランスが取れた政策を探るためにも、さらに科学的な証拠が必要だとしている。〉との解説がなされている以上、菅内閣は自らが「GO toトラベルが感染拡大させたというエビデンスはない」としている分析と西浦教授の分析のどちらがより妥当性があるのかを、国民に対する安心材料とするためにも実証しなければならない立場にあることになる。

 当然、西村康稔の「一つ一つの研究については答弁することは私共しておりません」も、菅義偉の「一つ一つの研究結果についてコメントすることは差し控えたい」も、正当性ある国会答弁とは言えなくなる。

 また西村康稔が「これは(Go toトラベル開始の)7月22日から26日は4連休を挟んでおりますので、そもそも観光が活溌な時期であることなどから、著者自身がですね、我々の分析は観光キャンペーンと日本に於けるコロナ発生率との因果関係を断定するには余りにも単純化し過ぎているというふうにご自身が書かれておりますので、私たちは様々な研究を受け止めながらですね、対応してまいりたいと思います」と答弁していることは、「4連休の観光が活溌な時期」は人の移動も活溌な時期と重なるのだから、注意していても3密維持にどうしても油断が生じるケースとなり得て、これらのことを抜きに、いわばGoToトラベル感染拡大説の否定理由とするには自己都合な解釈となる。

 もし菅内閣が「GoToトラベルが感染拡大の原因であるとのエビデンスは現在のところは存在しない」を絶対的分析として掲げ続けるなら、枝野幸男が「政府は、GO toトラベルが感染拡大させたというエビデンスはないと繰り返して仰っていますが、じゃ、何でこの時期にこんなに急増していると認識をされているのか。その原因、理由をはっきりできなければ対策を打てないはずだと思います。なぜ今こんなに急増しているんですか」と追及したようにGoToトラベル開始以降の感染拡大の傾向が何を原因としているのか、その明確なエビデンスを示さなければならない。その分析結果が西浦教授の分析結果と異なる、正当性あるエビデンスを示し得たとき、西浦教授の分析を如何ようにもコメントしないとすることができる。
 
 菅義偉は奥野総一郎との遣り取りの中でGO toトラベルに関わる人の移動について見落としてはいけない答弁を行っている。

 菅義偉「当初は移動によって感染はしないという見解を頂いて、私共はスタートしました。しかし確かに去年の12月14日ですけど、まあ、あの、コロナ感染の拡大し始めて、確か、あー、医師会の会長がエピデンスはないけれども、そういう脇を甘くしていると、そういう発言があったと思います。そういう中で私は12月14日に年末年始についてGO toトラベルを全国一切、一斉にですね、停止するという決断をさせて頂きました。

そういう意味に於いて全体としてはですね、その間の意見を聞きながら、そこは行ってきたところありです。それは分科会の方針でもありましたので、そうしたことについては私自身決断をして行いました。そして一つのGO toトラベルが12月8日に私が発令したときに尾身会長もここまでは想定外のことだったということも言っていたということもこれは事実であります」

 次の発言箇所、「一つのGO toトラベルが12月8日に私が発令したときに」の意味が素直に取れないが、菅内閣は2021年1月末までの予約で終了するとしていたGoToトラベル事業を2021年6月末まで延長する方針を固め、その政策と1兆311億円の予算を「追加経済対策」に盛り込んだ日付が「12月8日」で、「新たなGO toトラベルを」と言うべきところを、「一つのGO toトラベルが」と言い間違えてしまったのだろう。発言自体に覇気がなく、言葉をスムーズに押し出すこともできないから、リーダーとしての雰囲気がどこからも見えてこない。
 
 発言の趣意は政府分科会の専門家は人の移動を推奨することになるGoToトラベルを始めても、感染は拡大しないと見ていた。菅義偉もその見解に従い、2020年7月22日にGoToトラベルをスタートさせた。ところが第2波を迎えることになり、その第2波の鎮静が高止まりの状態で落ち着き、11月に入って再び拡大傾向へと移行、第2波を遥かに超える感染者数で第3波を迎え、新規感染者数が増加傾向にある中でGoToトラベル事業の延長を2020年12月8日に決定。

 その際、尾身会長は「移動によって感染はしないという見解」に反したことになったからだろう、「ここまでは想定外のことだった」と言っていた。要するに人の移動促進によって感染者数がこれ程までに拡大するのは想定外だったと驚いた。勿論、人の移動を推奨するのはGoToトラベルやGoToイート等、GoTo関連のイベントだけではない。既に触れたように人の移動制限の解除が人々を開放的な気分に否応もなしにいざなって、そういった気分が多くの行動に波及し、コロナに対する警戒感を緩めて、感染が収まらない状況を作り出しているという可能性は否定できない。

 菅義偉はGoToトラベル事業の延長を決定した2020年12月8日の3日後の12月11日午後のインターネット動画番組に出演、GoToトラベルの全面的な一時停止について「まだ、そこは考えていない」と述べたものの、さらに3日後の12月14日に年末年始についてGO toトラベルを全国一斉停止に踏み切らざるを得なかった。

 菅義偉も尾身茂も、遅まきながら、人の移動が感染を拡大する要因になると気づいた。となると、GoToトラベル自体が直接的にか、あるいは開放的な気分を醸し出すキッカケとなって、間接的に感染の原因としていたなら、GoToトラベルが〈少なくとも初期の段階では感染の増加に影響した可能性がある〉としている西浦教授の分析に対して西村康稔の「一つ一つの研究については答弁することは私共しておりません」も、菅義偉の「一つ一つの研究結果についてコメントすることは差し控えたい」もなおさらに許されないことになる。

 だが、奥野総一郎は「当初は人の移動による感染はないと見ていたと仰ってましたけど、では、今どう思われているのか、このことは大事なことだと思いますね。人の移動がもし感染拡大に、西浦先生の論文もそうですけども、関係しているとすれば、早急なGO toの解除と言うか、執行というのは避けるるべきだということになりますし、過去の反省、なぜ今こうなっているのかという分析が非常に重要だと思います」等、人の移動と感染を仮定の関係に置いて追及するのみで、直接的に関係付けて、「コメントの差し控えは許されないのではないのか」と追及することはなかった。

 この奥野総一郎の問い質しに対する続きは次のようになっている。

 菅義偉「やはり飲食店ですね。今8時から時間短縮させて頂いています。そこの部分が甘かったんではないかなあというふうに思っています。当時は確か10時ぐらいに首都圏については、そういう状況だったというふうに思っています」

 奥野総一郎「今のご答弁だったと、人の動きは関係していないと。飲食が原因だと。会食が原因だと。まあ、そう言いながら、自ら会食をされていたわけですけどね、ということになったわけです」

 追及が甘いのは大西健介だけではなく、奥野総一郎もその一人となる。飲食店にしても、人の移動によって成り立っている。営業時間の短縮要請は人の移動制限の求めに他ならない。

 2021年1月29日、東京、埼玉、千葉、神奈川の1都3県の知事がオンラインで意見交換をし、2月7日が期限となっている緊急事態宣言が延長された場合、つまり新規感染が予定通りに抑制されなかった場合、休業要請などの強い措置を検討せざるを得ないと決めたということだが、飲食店に対する休業要請は飲食店そのものへの人の移動のシャットアウトを意味することになる。

 要するに菅義偉は飲食店に関係する人の移動が感染の大きな要因の一つとなっているということを明かしたことになる。奥野総一郎は「そう言いながら、自ら会食をされていたわけですけどね」などと言っている場合ではない。

 飲食店への人の移動が感染に関係しているなら、GoToトラベルも人の移動によって成り立っているのだから、飲食店程には密な距離を維持しなくても、GoToトラベルが感染に関係しないとは言えなくなる。180人の感染者にとどまらずにGoToトラベル中に感染し、ウイルス保有者になったものの、無症状であったためにカウントから免れ、PCR検査を受ける機会も持たずに市中で2次感染させていた疑いは払拭しきれない。

 あるいはGoTo関連のイベントを受けた人の移動が人々の気分を開放的な方向に持っていって、コロナに対する警戒心を緩め、感染拡大の一因となったということも決して否定しきれない。

 要するに人の移動と感染は密接な相関関係にある。人の移動が活溌化すれば、感染は拡大する。人の移動を抑えれば、感染は縮小する。このことを誰もが当然のこととして認識する必要がある。認識していたなら、菅義偉の「当初は移動によって感染はしないという見解を頂いて、私共はスタートしました」などと言った発言は口が裂けでも出てこないし、「コメント差し控え」の発言も許されないことになるし、その手の発言をスルーさせることもなくなる。

 2021年2月1日の朝のNHKニュースで菅内閣は医療提供体制の逼迫状況の点から緊急事態宣言を延長する方向で調整に入ったと伝えていたが、解除に障害となる点を全てクリアして解除されて人の移動も再開された場合、緊急事態宣言再発令によって現在減少傾向にある新規陽性者は人の移動と感染が密接な相関関係にある以上、再び増加傾向を取ることになる。そしてこの繰り返しは国民の大多数がワクチンを接種するまで続くことになる。

 この繰り返しの波の頭を少しでも抑えるためには感染して、ウイルス保有者となりながら、無症状なためにPCR検査を受けないままに市中に放し飼いの状態に置くことになる、その多くが新規陽性者の半数前後を占めている感染経路不明と考えられる無症状感染者を如何に効率よくPCR検査の網にすくい取るかにかかってくることになるはずである。

 だが、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会会長を務めている尾身茂も菅義偉もこの視点に欠けている。

 2021年1月27日参院予算委 徳永エリ

 徳永エリ(立憲民主)「尾身会長は若い人たちの協力が不可欠なんだというふうに仰ってます。先日ですね、『20代から50代へのみなさんへ』ということで、今実行を拡散して欲しいということでメッセージを出されました。このメッセージを出された思いを尾身会長にお伺いしたいと思います」

 尾身茂「実は先生方、ご承知のようにこれはウイルスのせいで、誰のせいでもありませんが、特に若い人は感染しても無症状であったり、まあ、症状が軽いということが分かっています。当然のことですけども、若い人は我々高齢者に比べて活動がアクティビティが高いのですので、これは本当に強調させて頂きますが、ご本人たちのせいではなくて、まあ、気がつかない内に感染を、二次感染をして、それがですね、実は先程西村大臣が高齢者施設で多いという話がございましたがけども、実はその結果、この感染が少し時間差があって、高齢者施設とか、あるいは医療、あるいは家庭に、そういうことがほぼはっきりと分かってきました。

 そういう中で、勿論、若い人は我々高齢者に比べて重症化する率が少しないんですけども、それでも何人かの人は後遺症があるということが分かっているので、そういう意味では既に多くの人も、若い人も、多くの人が協力して頂いているわけですけども、我々の実感はですね、若い人の一部になかなか、これ、我々、努力不足ということがあったかもしれませんけども、メッセージが伝わらないっていうことも、これも明らかにあって、従って若い人にテレビとかラジオとか、社会意見だけでは、新聞やテレビを見ない人が結構多いということが分かっているので、どうしても最近のツイッターだとか、ラインだとか、フェースブックのSNSで使う、活用して貰う。

 我々ではなくて、若い人が若い人に伝えて頂くということが大事だと思って、まあ、そういうメッセージを有志の会(ツイッターアカウント「コロナ専門家有志の会」)のネットワークを使って、お願いしたわけですけども、そういう中で、まあ、若い人がちょっとしたことを気をつけるだけで、マスクをする、3密を避ける、食事は家族か、同居する人というようなこと、ほんのちょっとしたことをするだけでですね、ご自身の命を守り、それからおじいちゃん、おばあちゃん高齢者の命を守るだけではなくてですね、日本の医療を救う。

 是非、これから彼らの時代ですから、日本の医療を救う立役者になって頂きたいという思いでこのメッセージを出して頂くことにしました」

 徳永エリ「しっかり知識を得てですね、正しく恐れるということが大事なんだなというふうに思います。今、無症状感染者というお話がありましたけど、無症状感染者と約2割がですね、スーパースプレッダーという方がいると。他
者への感染が極めて強いということで、中国の天津で一人で160人に感染させたと、この事例が発表されましたよね。このスーパースプレッダーについて尾身会長、お伺いしたいと思います」

 尾身茂「実はこれは日本がずっと、いわゆるクラスター、(聞き取れない。「集団感染」?)これは世界で恐らくクラスター班を中心に最も早くそれを見つけたグループだと思いますけども、実は例えば5人に感染した人がいるとしますよね、5人のうち、4人が2次感染させない。そのうちの1人だけが2次感染、他の人に感染させて、その人がいわゆる我々が前から言っている3密のような場所ですね、非常に狭い場所、ひどい狭い空間、換気の悪い空間に行くと、爆発的に感染するということがまあ、当初から分かっていて、それをスーパースプレッダーイベントということで、これが実はほかの疾患、インフルエンザだとか、そういう疾患とまったく違う今回の特徴なんで、そういう意味でこれ、クラスター、クラスターと言っている。

 そういう意味でこれはもう(2020年の)2月、3月のところから日本の、まあ、クラスター班が突きつめたことですけども、この今の現象、大体大まかに言って5人に1人だけが2次感染して、その人がそういう場所に行って、感染させ、それから高齢者ということで、それが現在でも全く当てはまるということが分かっています」

 徳永エリ「と言うことは自分が無症状であってもですね、多くの人たちに感染させる可能性があるんだと、家族や知人や友人や大事な人たちに感染させて、命を奪うことになりかねないんだということをしっかりとメッセージとして発信して頂きたいんです。(若い人たちは)知らないですよ。ちゃんと伝えてください」

 感染の原理には詳しく、そのことについて力説しているが、では2次感染誘発予備軍を如何にPCR検査の網にかけて隔離へと持っていき、次なる感染を可能な限り防ぐかという方法論への視点は常に欠いている。徳永エリが言っているように「正しく恐れる」だけでは事は片付かない。

 尾身茂は前のブログでも紹介したことだが、「PCR検査を増やした結果、感染を抑えられたという証拠がない」とか、「感染拡大の防止には役立たない」と言って、PCR検査に非常に消極的である。

 そのせいなのだろう、「若い人は感染しても無症状であったり、まあ、症状が軽いということが分かっている」が、「マスクをする、3密を避ける、食事は家族か、同居する人というようなこと、ほんのちょっとしたことをするだけでですね」と、2次感染の危険性は省いて、その程度のことをするだけで、「ご自身の命を守り、それからおじいちゃん、おばあちゃん高齢者の命を守るだけではなくてですね、日本の医療を救う」ことになると請け合っている。請け合えなかったから、「ここまでは想定外のことだった」などと口にすることになったはずだ。まるで第2波も第3波も現実の出来事ではなく、遠い世界の出来事であるかのようだ。

 最後にこのブログのテーマに関係しないが、2021年1月27日の参院予算委員会で菅義偉に「少し失礼じゃないでしょうか」と言わしめた蓮舫の追及がワイドショー番組で評判の悪い捉え方をされているので、的を得ているのかどうか見てみることにした。

 2021年1月27日参院予算委員会

 蓮舫「実際に症状が急変して亡くなられたとか、あるいは病院先を捜して、確認している、カウントされている方は急変して亡くなられたとか、そういう方たちの事例で何かありますか」

 田村憲久「お亡くなりになられた方にはご冥福をお祈り申し上げるわけでありますけども、自宅療養、あるいは宿泊療養中に生じた死亡事例について都道府県を通じて把握している限りでありますけども、1月25日時点でありますけども、12月1日から1月25日間の事例でありますが、東京都8例を含めて、12都府県で計29名。うち自宅療養中の方が27名。宿泊療養中の方が2例ということであります」

 蓮舫「この29人の命、どれだけ無念だったでしょうかね。総理、その思い分かりますか」

 菅義偉「えー、そこは大変申し訳ない思いであります」

 蓮舫「もう少し言葉ありませんか」

 菅義偉「心から申し上げましたように大変申し訳ない思いであります」

 蓮舫「そんな答弁だから、言葉が伝わらないんですよ。そんなメッセージだから、国民に危機感が伝わらないんですよ。あなたには総理としての自覚や責任感、それを言葉で伝えようとする、そういう思いはあるんですか」

 菅義偉「少し失礼じゃないでしょうか。私は少なくとも総理大臣として昨年の9月16日に就任してから、何とかコロナ対策、1日も早い安心を取り戻したい日本(?)そのものに、そういう思いで全力で取り組んできたんです。まあ、そういう中で必死の中で取り組んでくる中で、私自身ができることはさせて頂いてきています。

 兎に角緊急事態宣言、あと出しだとの色んなことの批判はあります。だが、この緊急事態宣言を発するについてもですね、衆参の付帯決議、これは国民のみなさんにいろんな制約を課すものであるから、できる限り慎重にやるということも付いています。そしてまたそれを決めるときに専門家のみなさんに相談して決めるということも書かれています。そうした中で私自身、まさに迷いに迷って、悩みに悩んで判斷させて頂きました。

 その言葉が通じないという、それは私に要因があるかもしれませんけれども、私自身は精一杯これに取り組んでいるところであります」

 自民席から拍手。

 蓮舫「その精一杯は否定しません。ただ伝える努力は足りないと言っているんです。私はやっぱりこの総理のもとでね、特措法を改正して、入院拒否に刑事罰を科すなんて言うことは絶対たやっちゃあいけないと改めて思った。
 兎に角入院先を捜す。それを優先させなければ、(刑事罰は)やってはいけないと思います」

 菅義偉はコロナ禍でも、「政府の仕事は国民の命と暮らしを守ることだ」を看板にしてきた。だが、そのように言うことができるのは自らの政治が守ることが実践できている状況を作り出していなければならない。現実問題として少なくない国民が死に見舞われ、仕事を失ったり、立ち行かなくなったりしているし、それが現在進行形の形を取って、その数を増やし、延々と続いている。政治が満足に守ることが実践できていない状況にある以上、一国の首相として口にすべきは実践できていないことへの謝罪であろう。

 だが、蓮舫の「この29人の命、どれだけ無念だったでしょうかね。総理、その思い分かりますか」の問い質しに対して「そこは大変申し訳ない思いであります」は一国の首相として言葉を違えている責任の重さから言うと、「少し失礼じゃないでしょうか」の部類に入る、蓮舫が言っていることと異なるが、余りにも自覚も責任感も軽い言葉となる。

 当然、菅義偉自身は「私自身は精一杯これに取り組んでいるところであります」とは言っているが、それを証明するにはコロナ感染防止に見るべき何らかの成果を上げていなければならない。野党の追及態度は精一杯取り組んでもいない、何の成果も上げていないと見ている立場からのものなのだから、一貫性を持たせて、蓮舫は「その精一杯は否定しません」などと言うべきではく、「精一杯取り組んでいるようには見えません」と突き放すべきだったろう。

 「ただ伝える努力は足りない」と言うことなら、実際の仕事は満足にこなしていることになって、蓮舫の追及は矛盾することになる。蓮舫は頭はいいが、才気が勝ち過ぎていて、相手の欠点を追及することには長けているが、追及の種が何かの実に結びつくような仕掛けはなかなか見当たらない。要するに威勢だけはいい。

 ワイドショー番組で総理に対してリスペクトがないとか、失礼な言い方だとか批判されているが、リスペクトは成果があって初めて獲得し得る。菅義偉が与党議員からリスペクトを受けるの単なる立場上の形式的な敬意であって、与野党から実質的なリスペクトを受けるには見るべき何らかの成果が必要になる。だが、感染拡大防止も社会経済活動の促進についても成果は見えてこない。当然、菅義偉は内閣総理大臣と野党の一議員とでは責任と範囲の大きさも重さも桁違いに違うと自覚して、成果を出すことを一矢を報いる方法としなければならない。

 成果を出していないのに「全力で取り組んできた」とか、「必死の中で取り組んでくる中で、私自身ができることはさせて頂いてきた」と言っても、言うだけ虚しい。

 蓮舫にしたら、ここで菅義偉のを遣り込めて、内閣支持率をさらに下げ、遠くない時期に行われる総選挙を少しでも有利に運ぼうという魂胆もあったに違いない。

コメント (1)
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