日本の首相菅義偉は緊急事態宣言を発出するたびに、あるいはまん延防止等重点措置をいずれかの地域に適用するたびに「しっかり感染防止に努めていきたいと思います」、「一日も早く感染拡大収束に努めていきたい、このように思っています」等々と公約するが、実際に感染が一定程度収まって緊急事態宣言を、あるいはまん延防止等重点措置を解除すると、再び感染拡大が始まって、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の発出に逆戻りをする繰り返しとなっていて、菅義偉の「感染拡大防止」や「感染拡大収束」はその場凌ぎの「思い」だけで終わらせている。
緊急事態宣言下にあってもなくても、まん延防止等重点措置下にあってもなくても、いずれの状況下ではマスクをし、手洗いに励んでいる点についてはほぼ変わりはないが、唯一の大きな違いは人流の抑制を受けているかいないかである。となると、緊急事態宣言、まん延防止等重点措置が解除されると感染が拡大する傾向は確かにマスク着用も手洗い励行もそれなりに感染防止に役立っているだろうが、決定的に役立っている要因は人流の抑制であって、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の解除と同時に人流の抑制が解除されることによって感染が再び拡大していく原因となっていることを示している。
このことは誰もが承知していることだろうが、要するに緊急事態宣言とまん延防止等重点措置の発出と解除が感染拡大と感染縮小のメカニズムを伴うことになっている。つまり発出から程なくして感染縮小が始まり、解除から程なくして感染拡大が始まる。新型コロナウイルス感染症対策担当大臣である西村康稔が2021年4月23日の衆議院議院運営委員会で緊急事態宣言とまん延防止等重点措置の発出に際しての国会説明で、「この新型コロナウイルスは何度も流行の波が起こるわけであります。諸外国を見ていてもそうであります。そして起こるたびに大きくなってくれば、ハンマーで叩く。つまり措置を講じて抑えていく。その繰り返しを行っていく。何度でもこれを行っていくことになります」と発言していたことがこのことに当たる。
このハンマーは感染拡大を叩くだけではなく、経済に打撃を与えるハンマーともなっている。
当然、唯一の効果的な感染防止策は人流の効果的な抑制にかかっている。何のことはない、人流の抑制が自動的に3密回避という状況をつくり出すことに直結しているからである。人と人の出会う機会が減れば、感染の機会も減る。但し家庭内感染が感染場所の人数として一貫して多いのは家庭内は狭い空間の中に恒常的な人員で構成されていることが原因して人流の抑制が効かないからだろう。3密回避のためにカネ持ちなら、子どもをホテルでの生活に切り替えることができるが、一般家庭では、「感染から守るために外で寝ろ」と強制することはできない。
新型コロナウイルス感染拡大を受けて東京、大阪、兵庫、京都の4都府県知事が要請、菅政権は3回目の緊急事態宣言を2021年4月25日に要請自治体に発出、発出期間を5月11日とした。だが、5月11日を前に感染が減らず、5月7日になって期限を5月31日まで延長。愛知県と福岡県を5月12日から対象地域に加えることを決定した。ところが思うような感染抑止に繋がらず、5月28日になって5月31日までの期限を6月20日にまで延長することを決め、さらに埼玉県、千葉県、神奈川県、岐阜県、三重県に発出していたまん延防止等重点措置も同じ6月20日までの延長と決めた。
感染拡大を受けて発出した緊急事態宣言もまん延防止等重点措置も人流の抑制を基本的な重点策としていながら、感染抑止のハンマーとしての効果が出なかった原因は従来株よりも感染力の強い変異株の広がりと宣言慣れ(重点措置慣れ)、あるいは宣言疲れ(重点措置疲れ)から人流の抑制が思うように実現できなかったことだと言われている。
但し変異株がいくら感染力が強くても、徹底的な人流の抑制を実現できていたなら、人から人への距離は遠くなって、その遠さに応じて感染の機会も減ることになるから、やはり感染防止の鍵を握るのは人流の抑制を如何に徹底できるかにかかっている。
菅義偉が2021年5月28日、緊急事態宣言とまん延防止等重点措置の延長決定を伝える「記者会見」を首相官邸で開いた。ここでは菅内閣のコロナの感染が広がる社会状況下での東京オリンピック・パラリンピック開催に向けた動きについて取り上げる。
菅義偉は冒頭発言で「感染を防止し収束へ向かわせる切り札が、ワクチンです」と断言している。要するに菅義偉は西村康稔が緊急事態宣言や重点措置の発出と解除に合わせて感染拡大と感染縮小の波を繰り返すと国会で発言していた、その波を断ち切る「切り札」がワクチンだと宣言したことになる。
ところが日本のワクチン接種率は低く、菅義偉自身、続けて「接種回数は1日に40万回から50万回となり、これまでに1,100万回を超える接種が行われました」と発言しているが、この回数は1回接種と2回接種が混じっていて、平均すると、500万人にしか接種していないことになる。中国は全体で6億回を超え、アメリカは約3億回に迫っている。
菅義偉は東京オリンピック・パラリンピックの選手や大会関係者へのワクチン接種や一般の国民と交わることがないようにすること、つまり一般国民と選手や大会関係者との人流の抑制を図ることで「安心・安全の大会とする」と発言しているが、オリンピック・パラリンピックだけが「安心・安全」で、日本社会がコロナの感染によって「安心・安全」でなくてもいいという道理とはならないはずだから、当然、東京オリンピック・パラリンピック大会の開催はワクチン接種人口にかかってくることになる。日本社会が「安心・安全」の中でオリンピック・パラリンピックの開催が「安心・安全」という関係を取らなければならないということである。日本社会が「安心・安全」でない中でオリンピック・パラリンピックだけが「安心・安全」という両者関係には合理性は見い出し難い。
勿論、ワクチン接種が進まなくても、緊急事態宣言とまん延防止等重点措置のみで感染を徹底的に抑えることができて、東京オリンピック・パラリンピックの開催期間中、日本社会が一定程度以上の社会経済活動が可能となる状況を獲得できていたなら、両者共に「安心・安全」ということになって、開催は一定程度の合理性を備えることになるが、緊急事態宣言とまん延防止等重点措置の発出と解除が感染拡大と感染宿所の波を特性としている以上、今回の緊急事態宣言とまん延防止等重点措置を延長期限の6月20日に解除できて人流の抑制を解いた場合、オリンピック・パラリンピック開催期間の2021年7月23日から2021年9月5日までの約1カ月半の間に感染拡大の波が襲うことにならないかが問題となる。これまでの経緯から言っても、西村康稔の国会発言から言っても、感染拡大の波はどこかで襲うことになる。
質疑応答から菅義偉の東京オリンピック・パラリンピック開催要件を見てみる。文飾は当方。
清水東京新聞・中日新聞記者「東京五輪・パラリンピックについて伺います。IOCのコーツ調整委員長は、先週、緊急事態宣言下でも五輪を開催できると明言されました。開催国の総理大臣として、緊急事態宣言下でも五輪を開催できるとお考えでしょうか。
また、各種世論調査では、この夏の五輪開催に反対の声が多数です。国民の命を守ることに責任を持っているのはIOCではなく日本政府ですので、国民が納得できるよう、感染状況がどうなれば開催し、どうなれば開催しないか、具体的な基準を明示すべきではないでしょうか。お考えを伺います。
なお、記者会見での総理の御回答が正面からお答えいただけなかったり、曖昧なものが多くて、見ている国民の方が不満を抱いていたりしています。是非明確にお答えいただけるようお願い申し上げます」
菅義偉「まず、国民の命と健康を守るのは、これは当然、政府の責務です。
オリンピックについて様々な声があることは承知しています。そうした声に耳を傾けながら、指摘をしっかり受け止めて取り組んでいるところです。まず当面は、緊急事態宣言を解除できるようにしたいと思います。そうした中で、選手や大会関係者の感染対策をしっかり講じて安心して参加できるようにするとともに、国民の命と健康を守っていく、これがまずは前提です。
そうした中にあって、具体的な対策を3点申し上げます。第1に、入国する大会関係者の絞り込みです。当初は18万人が来日する予定でしたけれども、オリンピックが5万9,000人、パラリンピックが1万9,000人まで絞っております。更に削減を要請いたします。
次に、ワクチンの接種です。入国する選手や大会関係者の多くはワクチン接種が行われ、ワクチンが広く行き渡るよう日本政府の調整の結果として、ファイザーからIOCを通じて、日本人を始め各選手団にはワクチンが無償で提供されることになっています。
そして、日本国民との接触、これの防止です。海外の報道陣を含めて、大会関係者は組織委員会が管理するホテルに宿泊先を集約し、事前に登録された外出先に限定し、移動する手段は専用のバスやハイヤーに限定します。また、入国前に2回、入国時に加え、入国後3日目までは全員毎日検査し、その後も定期的に検査いたします。こうした関係者と一般国民が交わることがないように、完全に動きを分けます。外出して観光したり街中へ出入りすることはない。こうした対策により、テスト大会も国内で4回開催いたしました。大会期間中、悪質な違反者については国外退去を求めたいと思っています。
この3つの対策について、組織委員会、東京都、政府と、水際対策を始め国民の安全を守る立場から、しっかり協力して進めていきたい、このように考えています」
清水東京新聞・中日新聞記者「緊急事態宣言下でもできるとお考えでしょうか」
菅義偉「テスト大会も国内で4回開催しています。今、申し上げましたように、こうしたことに配慮しながら準備を進めております」
菅義偉は「国民の命と健康を守るのは、これは当然、政府の責務」云々を決り文句として国民の命と健康の保障を常々謳っているが、必ずしも守ることができていないことに心砕いていない。入院先が見つからず、自宅療養中に亡くなる感染者は後を絶たないし、感染を恐れて家に閉じこもる結果、健康を害する高齢者も後を絶たない。2021年5月29日時点で日本国内のコロナ累計死者数は1万2931人だと「NHK NEWS WEB」は伝えている。警察庁発表の2021年3月10日時点での東日本大震災死者数1万5899人(「Wikipedia」)にあと3000人と迫る死者数となっている。単なる数字ではなく、それぞれに持っていた生身の命のそれぞれの生き場を奪われて全てが消滅して生成される無の積み重ねを数字で表している。その積み重ねを止めることができないでいる。
清水記者の「緊急事態宣言下でもできるとお考えでしょうか」の問に対して菅義偉は4回のテスト大会の開催を挙げて、開催可能だとしている。だが、4回のテスト大会は緊急事態宣言に於ける感染拡大防止策の基本である人流の抑制の最大値である無観客で行われているから、外国人観客を受け入れないことを決めているが、日本人の観客にしても、入場させない、無観客で行うと答えて初めて合理的な整合性を持つが、整合性を与えずに発言する辺りは無責任そのもので、清水記者が言う通り、「正面からお答えない、曖昧な」答弁となっている。
2021年5月28日「NHK NEWS WEB」記事は組織委員会会長の橋本聖子が5月28日の記者会見で、「延長された宣言期間中の状況を見なければ、観客の上限を決めることは難しい。できるだけ早い段階で決めたいという思いがあったが、政府が示す宣言が解除されたあとの基準に沿って考えなければならない」と述べたと伝えている。
この入場を認める「観客の上限」を決めかねて、その決定を何度か延期させている。要するに東京オリンピック・パラリンピックの外の日本社会が緊急事態宣言やまん延防止等重点措置で人流の抑制を図っているのにオリ・パラの世界だけ人流を無制限にするわけにはいかなくて、そのバランスに苦慮しているということなのだろう。但し日本人観客を入場させる前提に立っていることに変わりはない。
感染状況次第で再度延長を行うこともあり得るし、感染が縮小して6月20日に解除できたからと観客人数を決めたとしても、解除と同時に人流の抑制が解かれて感染拡大に向かう波が1カ月後の開催時にどれ程の大きさになるかによって、決めた人数通りにはいかない可能性も出てくるが、こういったことを念頭に置いた発言なのかは疑わしい。
緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の発出と解除を受けた感染拡大と感染縮小の波を解消する役割を菅義偉以下、ワクチンの接種に期待している。そのための菅義偉の「ワクチンの接種です。入国する選手や大会関係者の多くはワクチン接種が行われ・・・」云々の言葉である。ワクチンの接種を受けて一定以上の人口が免疫を持つと、感染者が出ても他者への感染が減って流行を終わらせる集団免疫の構築は人口の約70%のワクチン接種が目安と言われているが、この記者会見の質疑で記者が感染率低下の線引を「日本国民の半分、50パーセントの接種」に置いて、50パーセント接種達成の明確な期限の提示を求めた。
対して菅義偉はイギリスの例を挙げて、「1回目を5割打ったら大体ものすごい効果が出たということで、今、マスクなしにしていますけれども」と言いつつ、「日本はまずは高齢者の方にしっかり2回打ちたい」とその点を優先させることを強調して、50パーセント接種達成の時期は計算できないことはないはずだが、計算せずに「今、具体的に申し上げることは控えます」と体よく逃げている。
ワクチンは2回の接種が必要となっているが、菅義偉がイギリスでは1回の接種のみで効果が出たと言っていることと新型コロナウイルス感染症対策分科会会長の尾身茂もこの記者会見で接種が「半分ぐらいになると少しは効果が出てくる」と発言していることから、1回接種で50パーセント接種達成の時期を計算してみる。
菅義偉は「現在、1日40万回から50万回でありますけれども、6月に入って中旬以降は、打ち手も含めて100万に対応できるような、そうした体制が中旬以降にはできてくる。このように思っています」と6月中旬以降、1日100万回の接種は可能だと請け合っている。これまでは接種は16歳以上としていたが、「NHK NEWS WEB」記事によると、ファイザーが海外の臨床試験(治験)で12~15歳に成人と同じ方法でワクチンを接種しても、有効性や安全性に問題はなかったとしたことを受けて、厚労省が国内治験は行われないまま、その年令での接種を承認したことから、12歳以上の接種となる。
日本の2016年10月1日現在の推計全人口1億2693万3千人で、その50%は約6300万。この約6300万人の接種を12歳以上男女合計人口1億1453万7千人の中から行うことになる。7月末までに65歳以上高齢者3600万人+医療従事者400万人=4000万人の接種が完了していることを前提に計算すると、残る2300万人の接種が完了すれば、「日本国民の半分、50パーセントの接種」がほぼ達成できる
この2300万人に対する1日100万回接種を65歳以上高齢者3600万人+医療従事者400万人に対する接種7月末完了後の8月初めから開始と計算すると、少なくとも8月23日頃には50%接種は達成が可能となる。但し東京オリンピックは7月23日から始まるから、1カ月遅い50%接種達成と言うことになる。但し東京パラリンピックには1日遅れで間に合うことになる。
菅義偉の言うことをギリギリ信用して1日100万人接種を6月中旬以降達成可能だと見たとしても、「接種回数は1日に40万回から50万回となり、これまでに1,100万回を超える接種が行われました」の菅義偉の発言から5月28日時点で65歳以上高齢者だけで2500万人を残していることになり、1日100万回の接種となる6月中旬までの日数を20日間と多めに見て、1日50万回の接種で進めていった場合、50万回×20日間=1000万人の接種となるが、1500万人が残り、この1500万人を6月中旬から1日100万回で摂取していくと、必要日数は15日間で、かなり疑わしいが、6月中に65歳以上高齢者の接種は終えることができると見ることができる。7月初めから65歳以上高齢者以外の12歳からの半数と計算した残る未接種2300万人を1日100万回で接種を進めていくと、23日間で終えることになり、東京オリンピック開催の7月23日にギリギリ間に合うことができる。
要するに菅義偉が自身の言葉に一分も違わずに「6月中旬以降ワクチン接種1日100万回」を厳格に実現できたなら、東京オリンピック開催の7月23日までに日本人口の50%の接種が達成できて、それなりの集団免疫が獲得可能となり、日本社会自体が「安心・安全」となり、オリンピック・パラリンピック開催の「安心・安全」と合理的な両立性を獲得しうる。つまり日本社会が「安心・安全」でないのにオリンピック・パラリンピックの開催に関しては「安心・安全」だという非合理性は解消できる。
もし菅義偉が言う「ワクチン接種1日100万回」が「6月中旬以降」から大きくずれて、「日本国民の半分、50パーセントの接種」がオリンピック開催の7月23日までに間に合わなかったとしたら、延長した緊急事態宣言及びまん延防止等重点措置の解除に伴う感染拡大に向けた波が東京オリンピック・パラリンピックの開催時期とかぶさらないように解除の時期自体をコントロールしなければならない。コントロールに失敗して、開催期間中に延長を、あるいは再発出をせざるを得なくなって、人流の抑制の観点から国民の社会経済活動を制約した中でオリンピックだけが「安心・安全」だからと言って開催するのはどのような合理性も見い出し難く、最悪である。
とにかく質疑応答での菅義偉の答弁には誤魔化しが多い。記者が観客を入場させて競技を行った場合、人流の加速化を受けた新型コロナ感染拡大のリスクをどういうふうに分析してるのか問われて、「緊急事態宣言下でも野球やサッカーが一定の水準の中で感染拡大防止をしっかり措置した上で行っている」ことを例に感染者を出していないとする「事実」を以ってオリンピックでも入場制限をかけて行えば感染を防ぐことができる趣旨の発言をしているが、「人流」とは競技会場での観客のみを指すのではない。競技観戦のために飛行機やバスや電車等の交通機関で移動する、買い物に出かけることも「人流」に入り、オリンピック開催期間中、人を集めて競技の中継を観戦する「パブリックビューイング」会場が東京では11個所、各自治体で計15個所が設置されるということだが、このような会場設置自体が感染防止、あるいは感染抑止に抗う人流の促進に当たる。
また野球やサッカーの観客の中から感染者を出していないとしている事実はどこで、誰から感染させられたか分からない感染経路不明者が感染者の約半数を占めていること、感染しても無症状の割合が、2割とか、3~4割とか、5割とか、色々な説があるが、このように一定でないことが状況次第で違いが出てくることを示していて、無視できない、気づきにくい感染機会となっていることを考えると、野球やサッカーの観客の中から感染者は出していないは必ずしも断言できる事実とは言えなくなる。
菅義偉は2020年11月25日の衆院予算委員会で「先週(2020年11月)20日の日に専門家の分科会の提言においてGoToトラベルが感染拡大の原因であるとのエビデンスは現在のところは存在しない、こうしたこともご承知だと思います」と発言しているが、GoToトラベルに於ける観光地での人の密集だけではなく、出発点のまでの往復の交通機関での移動でも、人と人の接触の機会が多くなって、感染拡大防止の基本対策となっている人流の抑制に反する人流の促進――3密回避とは逆の人と人との接触機会の頻繁化となる以上、野球やサッカーの観客が置かれて状況と同じことを言うことができる。誰一人無症状者と接触していなかったと断言できないし、あるいは自身が無症状者として街のどこかで誰かに二次感染させていなかったとも断言できない。こういったことから感染経路不明の感染者が出てくることになるはずである。
感染の拡大を受けて緊急事態宣言かまん延防止等重点措置を発出して人流の抑制を図り、その効果による感染の縮小を受けてこれらを解除、人流の抑制をも解除するが、人流の増加によって再び感染が拡大していくという循環を取る以上、どのような場所の人流も感染に無関係とすることはできない。
緊急事態宣言下にあってもなくても、まん延防止等重点措置下にあってもなくても、いずれの状況下ではマスクをし、手洗いに励んでいる点についてはほぼ変わりはないが、唯一の大きな違いは人流の抑制を受けているかいないかである。となると、緊急事態宣言、まん延防止等重点措置が解除されると感染が拡大する傾向は確かにマスク着用も手洗い励行もそれなりに感染防止に役立っているだろうが、決定的に役立っている要因は人流の抑制であって、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の解除と同時に人流の抑制が解除されることによって感染が再び拡大していく原因となっていることを示している。
このことは誰もが承知していることだろうが、要するに緊急事態宣言とまん延防止等重点措置の発出と解除が感染拡大と感染縮小のメカニズムを伴うことになっている。つまり発出から程なくして感染縮小が始まり、解除から程なくして感染拡大が始まる。新型コロナウイルス感染症対策担当大臣である西村康稔が2021年4月23日の衆議院議院運営委員会で緊急事態宣言とまん延防止等重点措置の発出に際しての国会説明で、「この新型コロナウイルスは何度も流行の波が起こるわけであります。諸外国を見ていてもそうであります。そして起こるたびに大きくなってくれば、ハンマーで叩く。つまり措置を講じて抑えていく。その繰り返しを行っていく。何度でもこれを行っていくことになります」と発言していたことがこのことに当たる。
このハンマーは感染拡大を叩くだけではなく、経済に打撃を与えるハンマーともなっている。
当然、唯一の効果的な感染防止策は人流の効果的な抑制にかかっている。何のことはない、人流の抑制が自動的に3密回避という状況をつくり出すことに直結しているからである。人と人の出会う機会が減れば、感染の機会も減る。但し家庭内感染が感染場所の人数として一貫して多いのは家庭内は狭い空間の中に恒常的な人員で構成されていることが原因して人流の抑制が効かないからだろう。3密回避のためにカネ持ちなら、子どもをホテルでの生活に切り替えることができるが、一般家庭では、「感染から守るために外で寝ろ」と強制することはできない。
新型コロナウイルス感染拡大を受けて東京、大阪、兵庫、京都の4都府県知事が要請、菅政権は3回目の緊急事態宣言を2021年4月25日に要請自治体に発出、発出期間を5月11日とした。だが、5月11日を前に感染が減らず、5月7日になって期限を5月31日まで延長。愛知県と福岡県を5月12日から対象地域に加えることを決定した。ところが思うような感染抑止に繋がらず、5月28日になって5月31日までの期限を6月20日にまで延長することを決め、さらに埼玉県、千葉県、神奈川県、岐阜県、三重県に発出していたまん延防止等重点措置も同じ6月20日までの延長と決めた。
感染拡大を受けて発出した緊急事態宣言もまん延防止等重点措置も人流の抑制を基本的な重点策としていながら、感染抑止のハンマーとしての効果が出なかった原因は従来株よりも感染力の強い変異株の広がりと宣言慣れ(重点措置慣れ)、あるいは宣言疲れ(重点措置疲れ)から人流の抑制が思うように実現できなかったことだと言われている。
但し変異株がいくら感染力が強くても、徹底的な人流の抑制を実現できていたなら、人から人への距離は遠くなって、その遠さに応じて感染の機会も減ることになるから、やはり感染防止の鍵を握るのは人流の抑制を如何に徹底できるかにかかっている。
菅義偉が2021年5月28日、緊急事態宣言とまん延防止等重点措置の延長決定を伝える「記者会見」を首相官邸で開いた。ここでは菅内閣のコロナの感染が広がる社会状況下での東京オリンピック・パラリンピック開催に向けた動きについて取り上げる。
菅義偉は冒頭発言で「感染を防止し収束へ向かわせる切り札が、ワクチンです」と断言している。要するに菅義偉は西村康稔が緊急事態宣言や重点措置の発出と解除に合わせて感染拡大と感染縮小の波を繰り返すと国会で発言していた、その波を断ち切る「切り札」がワクチンだと宣言したことになる。
ところが日本のワクチン接種率は低く、菅義偉自身、続けて「接種回数は1日に40万回から50万回となり、これまでに1,100万回を超える接種が行われました」と発言しているが、この回数は1回接種と2回接種が混じっていて、平均すると、500万人にしか接種していないことになる。中国は全体で6億回を超え、アメリカは約3億回に迫っている。
菅義偉は東京オリンピック・パラリンピックの選手や大会関係者へのワクチン接種や一般の国民と交わることがないようにすること、つまり一般国民と選手や大会関係者との人流の抑制を図ることで「安心・安全の大会とする」と発言しているが、オリンピック・パラリンピックだけが「安心・安全」で、日本社会がコロナの感染によって「安心・安全」でなくてもいいという道理とはならないはずだから、当然、東京オリンピック・パラリンピック大会の開催はワクチン接種人口にかかってくることになる。日本社会が「安心・安全」の中でオリンピック・パラリンピックの開催が「安心・安全」という関係を取らなければならないということである。日本社会が「安心・安全」でない中でオリンピック・パラリンピックだけが「安心・安全」という両者関係には合理性は見い出し難い。
勿論、ワクチン接種が進まなくても、緊急事態宣言とまん延防止等重点措置のみで感染を徹底的に抑えることができて、東京オリンピック・パラリンピックの開催期間中、日本社会が一定程度以上の社会経済活動が可能となる状況を獲得できていたなら、両者共に「安心・安全」ということになって、開催は一定程度の合理性を備えることになるが、緊急事態宣言とまん延防止等重点措置の発出と解除が感染拡大と感染宿所の波を特性としている以上、今回の緊急事態宣言とまん延防止等重点措置を延長期限の6月20日に解除できて人流の抑制を解いた場合、オリンピック・パラリンピック開催期間の2021年7月23日から2021年9月5日までの約1カ月半の間に感染拡大の波が襲うことにならないかが問題となる。これまでの経緯から言っても、西村康稔の国会発言から言っても、感染拡大の波はどこかで襲うことになる。
質疑応答から菅義偉の東京オリンピック・パラリンピック開催要件を見てみる。文飾は当方。
清水東京新聞・中日新聞記者「東京五輪・パラリンピックについて伺います。IOCのコーツ調整委員長は、先週、緊急事態宣言下でも五輪を開催できると明言されました。開催国の総理大臣として、緊急事態宣言下でも五輪を開催できるとお考えでしょうか。
また、各種世論調査では、この夏の五輪開催に反対の声が多数です。国民の命を守ることに責任を持っているのはIOCではなく日本政府ですので、国民が納得できるよう、感染状況がどうなれば開催し、どうなれば開催しないか、具体的な基準を明示すべきではないでしょうか。お考えを伺います。
なお、記者会見での総理の御回答が正面からお答えいただけなかったり、曖昧なものが多くて、見ている国民の方が不満を抱いていたりしています。是非明確にお答えいただけるようお願い申し上げます」
菅義偉「まず、国民の命と健康を守るのは、これは当然、政府の責務です。
オリンピックについて様々な声があることは承知しています。そうした声に耳を傾けながら、指摘をしっかり受け止めて取り組んでいるところです。まず当面は、緊急事態宣言を解除できるようにしたいと思います。そうした中で、選手や大会関係者の感染対策をしっかり講じて安心して参加できるようにするとともに、国民の命と健康を守っていく、これがまずは前提です。
そうした中にあって、具体的な対策を3点申し上げます。第1に、入国する大会関係者の絞り込みです。当初は18万人が来日する予定でしたけれども、オリンピックが5万9,000人、パラリンピックが1万9,000人まで絞っております。更に削減を要請いたします。
次に、ワクチンの接種です。入国する選手や大会関係者の多くはワクチン接種が行われ、ワクチンが広く行き渡るよう日本政府の調整の結果として、ファイザーからIOCを通じて、日本人を始め各選手団にはワクチンが無償で提供されることになっています。
そして、日本国民との接触、これの防止です。海外の報道陣を含めて、大会関係者は組織委員会が管理するホテルに宿泊先を集約し、事前に登録された外出先に限定し、移動する手段は専用のバスやハイヤーに限定します。また、入国前に2回、入国時に加え、入国後3日目までは全員毎日検査し、その後も定期的に検査いたします。こうした関係者と一般国民が交わることがないように、完全に動きを分けます。外出して観光したり街中へ出入りすることはない。こうした対策により、テスト大会も国内で4回開催いたしました。大会期間中、悪質な違反者については国外退去を求めたいと思っています。
この3つの対策について、組織委員会、東京都、政府と、水際対策を始め国民の安全を守る立場から、しっかり協力して進めていきたい、このように考えています」
清水東京新聞・中日新聞記者「緊急事態宣言下でもできるとお考えでしょうか」
菅義偉「テスト大会も国内で4回開催しています。今、申し上げましたように、こうしたことに配慮しながら準備を進めております」
菅義偉は「国民の命と健康を守るのは、これは当然、政府の責務」云々を決り文句として国民の命と健康の保障を常々謳っているが、必ずしも守ることができていないことに心砕いていない。入院先が見つからず、自宅療養中に亡くなる感染者は後を絶たないし、感染を恐れて家に閉じこもる結果、健康を害する高齢者も後を絶たない。2021年5月29日時点で日本国内のコロナ累計死者数は1万2931人だと「NHK NEWS WEB」は伝えている。警察庁発表の2021年3月10日時点での東日本大震災死者数1万5899人(「Wikipedia」)にあと3000人と迫る死者数となっている。単なる数字ではなく、それぞれに持っていた生身の命のそれぞれの生き場を奪われて全てが消滅して生成される無の積み重ねを数字で表している。その積み重ねを止めることができないでいる。
清水記者の「緊急事態宣言下でもできるとお考えでしょうか」の問に対して菅義偉は4回のテスト大会の開催を挙げて、開催可能だとしている。だが、4回のテスト大会は緊急事態宣言に於ける感染拡大防止策の基本である人流の抑制の最大値である無観客で行われているから、外国人観客を受け入れないことを決めているが、日本人の観客にしても、入場させない、無観客で行うと答えて初めて合理的な整合性を持つが、整合性を与えずに発言する辺りは無責任そのもので、清水記者が言う通り、「正面からお答えない、曖昧な」答弁となっている。
2021年5月28日「NHK NEWS WEB」記事は組織委員会会長の橋本聖子が5月28日の記者会見で、「延長された宣言期間中の状況を見なければ、観客の上限を決めることは難しい。できるだけ早い段階で決めたいという思いがあったが、政府が示す宣言が解除されたあとの基準に沿って考えなければならない」と述べたと伝えている。
この入場を認める「観客の上限」を決めかねて、その決定を何度か延期させている。要するに東京オリンピック・パラリンピックの外の日本社会が緊急事態宣言やまん延防止等重点措置で人流の抑制を図っているのにオリ・パラの世界だけ人流を無制限にするわけにはいかなくて、そのバランスに苦慮しているということなのだろう。但し日本人観客を入場させる前提に立っていることに変わりはない。
感染状況次第で再度延長を行うこともあり得るし、感染が縮小して6月20日に解除できたからと観客人数を決めたとしても、解除と同時に人流の抑制が解かれて感染拡大に向かう波が1カ月後の開催時にどれ程の大きさになるかによって、決めた人数通りにはいかない可能性も出てくるが、こういったことを念頭に置いた発言なのかは疑わしい。
緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の発出と解除を受けた感染拡大と感染縮小の波を解消する役割を菅義偉以下、ワクチンの接種に期待している。そのための菅義偉の「ワクチンの接種です。入国する選手や大会関係者の多くはワクチン接種が行われ・・・」云々の言葉である。ワクチンの接種を受けて一定以上の人口が免疫を持つと、感染者が出ても他者への感染が減って流行を終わらせる集団免疫の構築は人口の約70%のワクチン接種が目安と言われているが、この記者会見の質疑で記者が感染率低下の線引を「日本国民の半分、50パーセントの接種」に置いて、50パーセント接種達成の明確な期限の提示を求めた。
対して菅義偉はイギリスの例を挙げて、「1回目を5割打ったら大体ものすごい効果が出たということで、今、マスクなしにしていますけれども」と言いつつ、「日本はまずは高齢者の方にしっかり2回打ちたい」とその点を優先させることを強調して、50パーセント接種達成の時期は計算できないことはないはずだが、計算せずに「今、具体的に申し上げることは控えます」と体よく逃げている。
ワクチンは2回の接種が必要となっているが、菅義偉がイギリスでは1回の接種のみで効果が出たと言っていることと新型コロナウイルス感染症対策分科会会長の尾身茂もこの記者会見で接種が「半分ぐらいになると少しは効果が出てくる」と発言していることから、1回接種で50パーセント接種達成の時期を計算してみる。
菅義偉は「現在、1日40万回から50万回でありますけれども、6月に入って中旬以降は、打ち手も含めて100万に対応できるような、そうした体制が中旬以降にはできてくる。このように思っています」と6月中旬以降、1日100万回の接種は可能だと請け合っている。これまでは接種は16歳以上としていたが、「NHK NEWS WEB」記事によると、ファイザーが海外の臨床試験(治験)で12~15歳に成人と同じ方法でワクチンを接種しても、有効性や安全性に問題はなかったとしたことを受けて、厚労省が国内治験は行われないまま、その年令での接種を承認したことから、12歳以上の接種となる。
日本の2016年10月1日現在の推計全人口1億2693万3千人で、その50%は約6300万。この約6300万人の接種を12歳以上男女合計人口1億1453万7千人の中から行うことになる。7月末までに65歳以上高齢者3600万人+医療従事者400万人=4000万人の接種が完了していることを前提に計算すると、残る2300万人の接種が完了すれば、「日本国民の半分、50パーセントの接種」がほぼ達成できる
この2300万人に対する1日100万回接種を65歳以上高齢者3600万人+医療従事者400万人に対する接種7月末完了後の8月初めから開始と計算すると、少なくとも8月23日頃には50%接種は達成が可能となる。但し東京オリンピックは7月23日から始まるから、1カ月遅い50%接種達成と言うことになる。但し東京パラリンピックには1日遅れで間に合うことになる。
菅義偉の言うことをギリギリ信用して1日100万人接種を6月中旬以降達成可能だと見たとしても、「接種回数は1日に40万回から50万回となり、これまでに1,100万回を超える接種が行われました」の菅義偉の発言から5月28日時点で65歳以上高齢者だけで2500万人を残していることになり、1日100万回の接種となる6月中旬までの日数を20日間と多めに見て、1日50万回の接種で進めていった場合、50万回×20日間=1000万人の接種となるが、1500万人が残り、この1500万人を6月中旬から1日100万回で摂取していくと、必要日数は15日間で、かなり疑わしいが、6月中に65歳以上高齢者の接種は終えることができると見ることができる。7月初めから65歳以上高齢者以外の12歳からの半数と計算した残る未接種2300万人を1日100万回で接種を進めていくと、23日間で終えることになり、東京オリンピック開催の7月23日にギリギリ間に合うことができる。
要するに菅義偉が自身の言葉に一分も違わずに「6月中旬以降ワクチン接種1日100万回」を厳格に実現できたなら、東京オリンピック開催の7月23日までに日本人口の50%の接種が達成できて、それなりの集団免疫が獲得可能となり、日本社会自体が「安心・安全」となり、オリンピック・パラリンピック開催の「安心・安全」と合理的な両立性を獲得しうる。つまり日本社会が「安心・安全」でないのにオリンピック・パラリンピックの開催に関しては「安心・安全」だという非合理性は解消できる。
もし菅義偉が言う「ワクチン接種1日100万回」が「6月中旬以降」から大きくずれて、「日本国民の半分、50パーセントの接種」がオリンピック開催の7月23日までに間に合わなかったとしたら、延長した緊急事態宣言及びまん延防止等重点措置の解除に伴う感染拡大に向けた波が東京オリンピック・パラリンピックの開催時期とかぶさらないように解除の時期自体をコントロールしなければならない。コントロールに失敗して、開催期間中に延長を、あるいは再発出をせざるを得なくなって、人流の抑制の観点から国民の社会経済活動を制約した中でオリンピックだけが「安心・安全」だからと言って開催するのはどのような合理性も見い出し難く、最悪である。
とにかく質疑応答での菅義偉の答弁には誤魔化しが多い。記者が観客を入場させて競技を行った場合、人流の加速化を受けた新型コロナ感染拡大のリスクをどういうふうに分析してるのか問われて、「緊急事態宣言下でも野球やサッカーが一定の水準の中で感染拡大防止をしっかり措置した上で行っている」ことを例に感染者を出していないとする「事実」を以ってオリンピックでも入場制限をかけて行えば感染を防ぐことができる趣旨の発言をしているが、「人流」とは競技会場での観客のみを指すのではない。競技観戦のために飛行機やバスや電車等の交通機関で移動する、買い物に出かけることも「人流」に入り、オリンピック開催期間中、人を集めて競技の中継を観戦する「パブリックビューイング」会場が東京では11個所、各自治体で計15個所が設置されるということだが、このような会場設置自体が感染防止、あるいは感染抑止に抗う人流の促進に当たる。
また野球やサッカーの観客の中から感染者を出していないとしている事実はどこで、誰から感染させられたか分からない感染経路不明者が感染者の約半数を占めていること、感染しても無症状の割合が、2割とか、3~4割とか、5割とか、色々な説があるが、このように一定でないことが状況次第で違いが出てくることを示していて、無視できない、気づきにくい感染機会となっていることを考えると、野球やサッカーの観客の中から感染者は出していないは必ずしも断言できる事実とは言えなくなる。
菅義偉は2020年11月25日の衆院予算委員会で「先週(2020年11月)20日の日に専門家の分科会の提言においてGoToトラベルが感染拡大の原因であるとのエビデンスは現在のところは存在しない、こうしたこともご承知だと思います」と発言しているが、GoToトラベルに於ける観光地での人の密集だけではなく、出発点のまでの往復の交通機関での移動でも、人と人の接触の機会が多くなって、感染拡大防止の基本対策となっている人流の抑制に反する人流の促進――3密回避とは逆の人と人との接触機会の頻繁化となる以上、野球やサッカーの観客が置かれて状況と同じことを言うことができる。誰一人無症状者と接触していなかったと断言できないし、あるいは自身が無症状者として街のどこかで誰かに二次感染させていなかったとも断言できない。こういったことから感染経路不明の感染者が出てくることになるはずである。
感染の拡大を受けて緊急事態宣言かまん延防止等重点措置を発出して人流の抑制を図り、その効果による感染の縮小を受けてこれらを解除、人流の抑制をも解除するが、人流の増加によって再び感染が拡大していくという循環を取る以上、どのような場所の人流も感染に無関係とすることはできない。