枝野幸男6/27党首討論:安倍晋三の子宝に恵まれない話から自身の不妊治療話に引き込んでどうする

2018-06-29 06:37:09 | 政治
 安倍晋三:従軍慰安婦強制連行否定2007年3月16日閣議決定

「政府が発見した資料の中には、軍や官憲がいわゆる強制連行を
直接示すような記述も見当たらなかった」
とする
“政府発見資料”とは如何なる資料か、公表すべき

 自民党幹事長二階俊博が6月26日の東京都内での講演後の質疑発言が問題視されている。「The Huffington Post」(2018年06月27日 15時36分)

 TBSラジオに依拠した発言の紹介となっている。

 講演参加者「自民党と政府が一体になって、早く結婚して早く子どもを産むように促進してもらいたい」

 二階俊博「大変、素晴らしいご提案だと思います。

 そのことに尽きると思うんですよね。しかし、戦前の、みんな食うや食わずで、戦中、戦後ね、そういう時代に、『子どもを産んだら大変だから、子どもを産まないようにしよう』といった人はないんだよ。この頃はね、『子どもを産まない方が幸せに送れるんじゃないか』と勝手なことを自分で考えてね。国全体が、この国の一員として、この船に乗っているんだからお互いに。
 だから、みんなが幸せになるためには、これは、やっぱり、子どもをたくさんを産んで、そして、国も栄えていくと、発展していくという方向にみんながしようじゃないかと。その方向付けですね。みんなで頑張ろうじゃないですか。

 食べるのに困るような家はないんですよ。実際は。一応はいろんなこと言いますけどね。今『今晩、飯を炊くのにお米が用意できない』という家は日本中にはないんですよ。だから、こんな素晴らしいというか、幸せな国はないんだから。自信持ってねという風にしたいもんですね」

 二階俊博の「食べるのに困るような家はないんですよ」と発言していることに関して記事は、〈「ひとり親世帯」の貧困率が50.8%となるなど経済協力開発機構(OECD)の調査でも、主要国で最悪レベル。

 途上国のような衣食住のままならない「絶対的貧困」の状態ではないが、最低限の衣食住環境で教育や余暇などにお金をかけられない「相対的貧困」は、日本の社会問題となっている。〉と批判を加えている。

 世界第3位の経済大国日本の現在の地位からすると、「食べるのに困るような家はない」、「『今晩、飯を炊くのにお米が用意できない』 という家は日本中にはない」状況を基準に「こんな素晴らしいというか、幸せな国はない」と価値づけるのは余りにも単細胞過ぎて情けない。日本国憲法第25条が保障している「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を満足に行使し得ていない国民が少なからず存在するということは経済大国の名に反するだけではなく、貧富の格差が厳然として存在していることの証明以外の何ものでもない。

 6月27日に党首討論が行われた。立憲民主党代表の枝野幸男が二階俊博の「子どもを産まない方が幸せに送れるは勝手な考え」なる発言を把えて、安倍晋三に質問した。「産経ニュース」(2018.6.27 17:24)記事から発言を参考にした。

 枝野幸男「昨日、自民党の二階(俊博)幹事長、『この頃、子供を産まない方が幸せじゃないかと勝手なことを考える』『食べるに困るような家は今はない』。こうした発言をされています。言うまでもありませんが、子供を産むか産まないかは、最も基本的な自己決定権の範疇(はんちゅう)です。これについてどう考えようと第三者が口を出すべきことではありません。また、子育て支援の不足や、多額の教育資金が必要であることなど、政治が十分な対応ができていないために子供を産み育てることを希望しながら、断念している方が少なからずいらっしゃるということについての自覚が欠如しているというふうに考えます。

 また、貧困の問題についても、『子ども食堂』の存在や低年金高齢者などに象徴される貧困家庭の実態を理解していないのではないかと言わざるを得ません。二階さんは総理とは別人格ですからこれについてのコメントは求めません。

 総理として、子供産まない方が幸せだというようなことを考えてる人は勝手な人だという認識を持ちでしょうか。そしてもう一つ、今の日本で食べるに困るような家庭はないというような認識をされているでしょうか。お答えください」

 安倍晋三「これはまさに子供を持つか持たないか、あるいは結婚するか結婚しないか、これはそれぞれが人生において、選択をすべきことでありですね、私たちがそれに対していちいち意見を言うべきではないと、こう思っているわけでございますし、事実、私の家庭もですね、残念ながら子宝には恵まれていないわけでございます。そういう中において、それぞれがさまざまな選択をとっていくということではないか。

 その中で私たちは希望出生率と実際の出生率の差を、があるのは事実でありですね、産みたいという思いを持っておられる方が産むことができるような社会を作っていくためにさまざまな政策を行い、先ほど議論となりました。来年の消費税の引き上げの際にはですね、まさに子供たち、そして、子育て世帯に思い切って支援を投入していくという判断をしたところでございます。そしてですね、また二階さんの発言でございますが、いちいち私がコメントすることは適当ではないのかと思うところでございますが、基本的にはですね、今申し上げたようにですね、この産むか産まないかの選択は本人の選択に委ねられているということでございます。また委ねられるべきだとこう考えております」

 枝野幸男「子供を産む、産まないという自己決定の話についての総理のご事情というのは実は我が家も長年、不妊治療に取り組まざるを得ない中で、わが家の場合、幸い10年弱で子宝に恵まれました。総理の今の子育てに対するご発言については総理の真摯(しんし)な思いだろうと受け止めたいというふうに思います」(以上)

 枝野幸男「子供を産む、産まないという自己決定の話についての総理のご事情というのは実は我が家も長年、不妊治療に取り組まざるを得ない中で、わが家の場合、幸い10年弱で子宝に恵まれました。総理の今の子育てに対するご発言については総理の真摯(しんし)な思いだろうと受け止めたいというふうに思います」

 枝野幸男は「子供を産むか産まないかは、最も基本的な自己決定権の範疇で、第三者が口を出すべきことではない」等々と言い、「二階俊博と安倍晋三は総理とは別人格だから、二階発言についてのコメントは求めない」が、「総理として、子供産まない方が幸せだというようなことを考えてる人は勝手な人だという認識を持っているか」と尋ねている。

 安倍晋三の認識を聞いてどうするのだろう。尤もらしい答弁に終止するのは分かりきったことで、分かりきっていることを前以って承知していなければならない。

 案の定、安倍晋三は子供云々、結婚云々は「それぞれが人生において、選択をすべきことであって、第三者があれこれ言うべきではない」といった当たり障りのない趣旨の答弁で済ましている。そして自身が「子宝には恵まれていない」ことを打ち明けて、その結果についての選択はそれぞれに任せるべきだといった発言をしている。

 枝野幸男が「子供を産むか産まないかは、最も基本的な自己決定権の範疇で、第三者が口を出すべきことではない」その他を批判している以上、口出しした二階俊博の与党自民党幹事長としての知性(物事を知り、考え、判断する能力)や資質(その人特有の行動や反応を決定する感情的、知的特質の複合体―「weblio類語辞典」)の程度を問題にしたことになる。

 自民党幹事長でありながら、そのような問題人物である二階俊博をその職務に任命したのは自民党総裁安倍晋三である。「二階さんは総理とは別人格ですからこれについてのコメントは求めません」などと言っている場合ではない。知性と資質を欠いた人物が自民党幹事長であること、それを任命したのが安倍晋三であることをなぜ追及しなかったのだろか。

 安倍晋三は「私は今、自民党総裁としてではなく、内閣総理大臣としてここに立っている。コメントは差し控えたい」と逃げるかもしれないが、「総理大臣として二階俊博はその発言から公党の幹事長を務めるに相応しい知性や資質をお持ちだと考えているか」ぐらいは尋ねるべきだったろう。

 問題とすべきは二階俊博の自民党幹事長としての知性と資質の程度が疑わしいことでありながら、本質的な問題について枝野幸男は何も理解していなかった。

 だから、安倍晋三が「私の家庭もですね、残念ながら子宝には恵まれていない」と打ち明けられると、枝野幸男は「実は我が家も長年、不妊治療に取り組まざるを得ない中で、わが家の場合、幸い10年弱で子宝に恵まれました」などと自身の不妊治療話に引き込むことになった。

 引き込んでどうするというのだろうか。僅かな時間も貴重な党首討論でありながら、ただそれだけの世間話程度で時間を費やすことになった。

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企業利益を代表する自民党でありながら、安倍晋三「高度プロフェッショナル制度」が企業に歓迎されていない現実

2018-06-28 10:38:08 | 政治
 安倍晋三:従軍慰安婦強制連行否定2007年3月16日閣議決定

「政府が発見した資料の中には、軍や官憲がいわゆる強制連行を
直接示すような記述も見当たらなかった」
とする
“政府発見資料”とは如何なる資料か、公表すべき

 「高度プロフェッショナル制度」とは「コトバンク」に次のように解説されている。

 〈専門職で年収の高い人を労働時間の規制の対象から外す新たな仕組み。年収1075万円以上のアナリストなどの専門職が対象。労働基準法は法定労働時間を超えて働かせる場合、割増賃金の支払いを義務づけているが、対象となる働き手は残業や深夜・休日労働をしても割増賃金が一切支払われなくなる。 (2017-07-12 朝日新聞 朝刊 1総合)〉

 首相官邸サイトの「アベノミクス 成長戦略で明るい日本に!」と題したページに「未来投資戦略2018(全体版)」なるPGF記事が案内されていて、「未来投資戦略2018 ―「Society 5.0」「データ駆動型社会」への変革―」(平成30年6月15日)と表題のついた記事中、ⅱ)生産性を最大限に発揮できる働き方の実現の見出しで、 「長時間労働の是正、健康確保」、「雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保」、「最低賃金の引上げ」、「多様な選考・採用機会の拡大」等々と並べた項目の一つ、「多様で柔軟なワークスタイルの促進」の中で高度プロフェショナル制度に触れている。

 文飾は当方。

 〈労働者が、健康を確保しつつ、自律的に働き創造性を最大限に発揮することを支援するため、高度プロフェッショナル制度を創設する。〉――

 要するに高度プロフェッショナル制度を創設した場合は「多様で柔軟なワークスタイルの促進」によって、「生産性を最大限に発揮できる働き方の実現」の可能性を謳っていることになる。

 自民党は企業の利益を第一番に代表する政党である。一般生活者の利益を言うとき、あくまでも企業利益を優先させて、その富を再分配する形での利益であって、企業利益あっての一般生活者の利益という順番を取っている。

 あるいは企業利益なくして一般生活者の利益なしの前者に重きを置いた姿勢でいることになる。

 ところが、このような富の再分配の原理が満足に機能していない典型例が円安と株高で大企業や富裕層が特大の利益を上げているにも関わらず、満足に一般生活者の実質賃金の向上となって回らず、その結果、個人消費が低迷する経済状況を招いている安倍晋三のアベノミクス政策であろう。

 いずれにしても安倍政権が実現を目指している高度プロフェッショナル制度は企業の利益を第一番に考えていることになる。と言うことは、企業側は安倍晋三の高度プロフェッショナル制度を大歓迎していることになる。大歓迎しなければ、自民党は企業の利益を第一番に代表する政党としての存在意義を失うことになる。

 大歓迎と思いきや、高度プロフェッショナル制度に関する「ロイター企業調査」(2018年6月21日 / 11:20)を見ると、大歓迎とは程遠い状況にあることが分かる。参考のために記事の画像を載せておいた。

 〈調査は、ロイターが資本金10億円以上の日本の中堅・大企業539社に調査票を発送。6月4日─15日に実施。回答社数は225社程度。〉となっている。

 ここで改めて断っておくと、高度プロフェッショナル制度は「多様で柔軟なワークスタイルの促進」によって、「生産性を最大限に発揮できる働き方の実現」の可能性を謳っている。

 記事は、〈高度プロフェッショナル制度は専門性が高く所得の高い労働者を労働時間規制の対象からはずし、自由な働き方で成果を上げてもらい、それに応じた給与を払うというもの。そのかわり、残業代も深夜・休日労働の割り増し賃金も支給されないことになる。ただし、年収は基準年間平均給与額(厚生労働省が定める)の3倍を上回ることとされている。〉と解説、「多様で柔軟なワークスタイル」について触れている。

 但しロイター企業調査を画像で見る限り、「働き方の柔軟性向上」に関しては60%も期待を掛けているが、「生産性向上」に向かうと考えている企業はたったの14%。また、「生産性向上」と深い繋がりを持つ「社員のモチベーション向上」はさらに少なくて7%のみ。

 「残業減少」の動機とする企業は同じく7%。

 記事は、〈「その他」の12%は「メリットはない」との回答が大勢を占めた。〉と書いている。

 また画像右側の調査結果、「高度プロフェッショナル制度の対象者は2年後には、従業員数全体のどの程度の割合となる見通しですか」の問いに対して主なところで、「1%未満」の見通しが64%。「10%未満」を合計すると、98%。10%以上の合計はたったの2%。

 と言うことは、厚生労働省が定めている基準年間平均給与額の3倍を上回る年収額を獲得して、高度プロフェッショナル制度に新規に対象者入りする労働者自体が早々に増えないと見ている企業が大半を占めていることになる。

 さらに「長時間労働削減の法制度化により、労働コストは前年より減少してきていますか」の問に対して「はい」が36%、「いいえ」が64%。

 労働コストの削減は企業にとっての最大メリットであり、この最大メリットに応えるのが企業の利益を第一番に代表する自民党の最大の存在意義となるが、逆に労働者にとっての最悪のメリットとなる。

 但し両者間に於けるこの利益相反関係に可能な限りバランスを与えるためには企業が労働コストの上昇によってある程度のマイナスを受けても、生産性向上によって労働コストの上昇を吸収可能とすることなのは断るまでもない。

 いわば上記PDF記事が、〈国内外の高度AI人材を積極的に確保するため、クロスアポイントメント制度の普及や大学等における適切な業績評価に基づく年俸制の導入等、幅広い企業や大学・研究機関等において海外と同程度の待遇(報酬)を実現するよう、人事・給与制度の効果的な見直しを促す。〉等々謳っている働き方改革での「待遇(報酬)」改善=労働コスト上昇は生産性向上を最大動機として実現可能としなければならないはずだが、安倍晋三の高度プロフェッショナル制度が「生産性向上」に向かう動機となり得ると考えている企業がたったの14%しか占めていない結果として、労働コストが減少していくと見ている企業が36%で、減少していかないと見ている企業が64%ということなのだろう。

 高度プロフェッショナル制度によって企業側には総体的に「生産性向上」も期待できない、「社員のモチベーション向上」も期待できないでは企業の利益を第一番に代表する自民党の存在意義に真っ向から反するだけではなく、一般生活者の利益にも反することを意味することになる。


 結果、記事は調査を、〈「高度プロフェッショナル制度」(高プロ)について、多くの企業が制度内容や効果を疑問視していることがわかった。〉、〈企業からは高プロ制度導入を積極的に評価する声はほとんどみられなかった。〉、〈企業側から見た壁として「対象者の給与が平均年収の3倍を保証するとなると、給与水準が高すぎて導入は難しい」(複数の企業)など、成果と労働コストのバランスの問題が挙げられた。〉等々、低評価することになったのだろう。

 「朝日新聞アンケート」(2018年6月21日20時23分)もロイター調査と似たような結果を伝えている。

 5月28日~6月8日に行った全国の主要100社に対するアンケート。

 「働き手の自由度や効率を高める」50社
 「労働時間が長くなる懸念がある」17社

 「法が成立した場合に採用するか」

 「採用したい」6社
 「採用するつもりはない」31社
 「わからない」51社

 〈「採用しない」と答えた企業からは、長時間労働を助長することへの懸念の声がめだった。〉

 50社が「働き手の自由度や効率を高める」としていることは、生産性向上の動機となると見ていることになる。だが、「採用したい」の6社に対して「採用するつもりはない」が31社、「わからない」が51社となっている趨勢からは高度プロフェッショナル制度導入が生産性向上のキッカケとなると見ていないことになる。

 この矛盾は安倍政権の「高度プロフェッショナル制度は働き手の自由度や効率を高める」としている宣伝文句のそのままの受け売りと疑うと、解くことができる。

 いずれにしても両調査から窺うことのできる結論は自民党が企業利益を第一番に代表する政党でありながら、安倍晋三の高度プロフェッショナル制度に関しては企業は自らの利益とは考えず、歓迎はしていないということである。

 ただでさえ安倍晋三はアベノミクスによって一般労働者に向かうべき富の再分配の蛇口を閉めて、その機能を劣化させている。企業が歓迎しない法律を強硬に施行した場合、富の再分配の元手をなお一層減らすことになって、高度プロフェッショナル制度対象労働者のみならず、一般生活者の利益にも悪影響を及ぼすことになる調査結果となっている。

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安倍晋三以下、ある意味人災殺人でありながら、9歳少女をブロック塀危険性警告の先駆者に仕立てている

2018-06-27 11:34:21 | 政治
 安倍晋三:従軍慰安婦強制連行否定2007年3月16日閣議決定

「政府が発見した資料の中には、軍や官憲がいわゆる強制連行を
直接示すような記述も見当たらなかった」
とする
“政府発見資料”とは如何なる資料か、公表すべき

 2018年6月18日7時58分頃発生の大阪府北部を震源とする最大震度6弱の地震で高槻市寿栄小学校のプール沿いのブロック塀が倒壊、その下敷きとなって9歳の同小学校女子児童が死亡した。

 ブロック塀は建築基準法違反の違法建築物であったことと建築基準法に基づいた3年に1度の定期検査が満足に行われていなかったこと、そして2015年11月の防災アドバイザーの当該ブロック塀の危険性の指摘に対して翌2016年2月に行った検査では建築士の資格のない職員が行っていたことなどが判明している。

 先ず建築基準法違反違法建築物であることについて。元々はプールの高さと同じ1.9メートルのブロック塀だったが、プールの目隠しのためにその上に1.6メートルの高さにまで嵩上げしていて、合計3.5メートルで、建築当時の高さ制限(3メートル)にも違反していただけではなく、2018年6月20日付「毎日新聞」記事によると、参考のために画像を引用転載しておいたが、上部ブロックの接合部は35センチ長さの鉄筋を下のブロックに13センチ、上のブロックに20センチ埋め込んだのみであった。

 この図だと、下のブロックにも通しの縦鉄が入ってないことになる。もし入っていたら、上の鉄筋と下の鉄筋を40センチから抱き合わせ状態に重ねて、接合部を頑丈にしなければならないが、抱き合わせた状態にはなっていない。

 倒壊した接合部のニュース画像は2018年6月19日の当「ブログ」に載せておいたが、鉄筋は少しは曲がっているが、折れ曲がった状態ではなく、同じ長さに切断したような状態で覗いているから、上のブロックに埋め込んだ20センチの長さの鉄筋部分が地震の揺れに持ちこたえることができずにすっぽりと抜けた状態になったということなのだろう。

 それだけ脆弱な工事方法だった。

 さらに塀の高さが1.2メートル超の場合は3.4メートル以下の間隔で設置が必要とされる、前後に倒れるのを防ぐ「控壁」が設置されていなかった。いわば脆弱の上に脆弱を積み重ねたような構造となっていた。

 3年に1度の法定定期検査だが、2018年6月22日付「毎日新聞」ネット記事は次のように伝えている。

 〈市教委は事故後、記録が残る過去2回の検査を委託した業者を対象に聞き取り調査を進めており、(6月)22日午後に途中経過を明らかにした。〉

 2014年2月の検査を実施した2017年とは別の業者はブロック塀を勝手に検査対象から外して2010年度の検査結果を写して市教委に報告。

 2017年1月の検査担当の業者はブロック塀を目視で確認し、安全と判断した。

 3年に1度の法定定期検査と銘打っていても、地震の発生を想定した危機管理に基づいて万が一の倒壊が倒壊だけで済まずに人命を巻き込んだ場合の重大性を些かも視野に置かない手抜き検査で済ましていた。

 防災アドバイザーの2015年11月の危険性の指摘に関して。「NHK NEWS WEB」(2018年2018年6月22日 11時14分)

 仙台市の吉田亮一氏が2015年11月にブロック塀倒壊死の寿永小学校で「防災教室」を開催し、全校児童や教職員などに対して過去の地震で崩れたブロック塀の写真を見せながら危険性を指摘、今回の地震で倒壊したプールのブロック塀について注意を促していた。

 吉田亮一氏「自分は昭和53年の宮城県沖地震を経験し、多くのブロック塀が壊れて被害が出るのを見てきた。学校周辺はブロック塀が多くあり注意が必要だと感じたので指摘した。守れたはずの命を守ることができず悔しい」

 吉田亮一氏の危険性の指摘に対しての高槻市教育委員会の対応。2018年6月22日付「朝日デジタル」

 2015年11月に防災アドバイザーからブロック塀の危険性を指摘された校長は高槻市教委に点検を依頼。市教委は翌2016年2月に市教委の職員が校長らの立ち会いのもとで点検を実施した。

 点検方法は目視や金属製の棒(打診棒)で叩いて劣化の度合いを確認するのが主だった。樽井教育長は「(コンクリート表面の)浮きやひび割れがなく問題がないと判断した」と説明。

 要するに病気治療で言うと、レントゲンやCTスキャン、MRI検査等の最新の医療機器が存在する時代に触診だけで済ませていた。

 しかも2016年2月の点検結果は市教委内で共有されず、記録にも残されなかったと記事は書いている。別の記事によると、点検した職員は建築士の資格もブロック塀工事の専門家でもなかったと伝えている。、

 この二つの事実から見えてくる事実は点検自体を重要視していなかったことと、学校からブロック塀の危険性の指摘を受けたから、無視することができずに事務的に資格のない職員に点検をさせたといったところなのだろう。

 点検した職員「建築基準法に違反しているという認識は、はなからなかった」

 建築基準法を満たしているブロック塀という固定観念での点検だったから、打診棒で叩いて、コンクリート表面の浮きやひび割れの存在箇所の確認のみを行い、無かったから、大丈夫だと診断した。

 専門家ではないということなら、少なくともブロック塀はどのような建築基準となっているのかを調べてから、点検に当たるべきだった。

 以上見てくると、高槻市寿永小学校のブロック塀倒壊に巻き込まれた9歳少女の死は明らかに人災が招いたある意味殺人であって、地震の揺れによる不可抗力からの死では決してないし、そのような死にしてはならないはずだ。

 防災アドバイザーの吉田亮一氏は昭和53年(1978年)の宮城県沖地震の経験からブロック塀の危険性に意を用いるようになったといったことを言っている。

 〈40年前の昭和53年6月に起きた宮城県沖地震では、宮城県と福島県で合わせて28人の死者が出ましたが、このうち9人は、倒れたブロック塀の下敷きになって亡くなり、その半数以上が、塀の近くで遊ぶなどしていた子どもたちでした。〉と2018年6月18日付「NHK NEWS WEB」が書いている。

 ネットを調べてみると、宮城県沖地震でのブロック塀倒壊による人的犠牲がブロック塀工事方法の規制強化のキッカケとなったと出ている。宮城県沖地震から40年も経過している。

 40年も経過しているのだから、9歳女子児童が建築基準法違反のブロック塀の倒壊で殺される前のとっくの昔に安全対策を講じていなければならなかった。 

 にも関わらず、多くのブロック塀が建築基準法違反のまま放置されている。このことは人災殺人の危険性の放置をも意味する。

 安倍晋三が6月21日に地震の地元を訪問、被害状況視察し、「発言」(首相官邸)している。9歳少女の倒壊死に関する箇所を抜粋。

 安倍晋三「「まず、今回の地震によってお亡くなりになられた方々の御冥福をお祈りし、御遺族の皆様に哀悼の意を表したいと思います。そして、全ての被災者の皆様にお見舞いを申し上げます。
先ほど、ブロック塀の倒壊によって幼い命が失われた悲惨な事故の現場を視察してまいりました。あと少しで安全な学校の敷地内に入れるという場所での悲惨な悲しい出来事でありました。御遺族の、御両親のお気持ちを思うと言葉もありません。本日、御葬儀が執り行われたと聞いておりますが、改めて、心から御冥福をお祈りしたいと思います。二度とこうした悲惨な出来事を起こしてはなりません。学校の安全を確保するため、まずは全国のブロック塀の緊急点検を行い、学校の安全を確保していきたい。子供たちの命をしっかりと守っていきたいと思います」

 少女の犠牲を「悲惨な悲しい出来事でありました」と言い、「二度とこうした悲惨な出来事を起こしてはなりません」から、「全国のブロック塀の緊急点検」と「学校の安全確保」に言及している。

 この発言には9歳少女の死がある意味ではブロック塀の安全性を放置してきたことによる人災が招いた殺人であって、地震の揺れによる不可抗力からの死としてはならないことの警告はどこにもなく、逆に少女の死を“二度とこうした悲惨な出来事を起こしてはならない”ことの対策のキッカケにしようとしている。

 いわばこの少女の死があったから、安全対策が取られることになったという物語を描くことになる。だが、このことは少女をブロック塀危険性警告の最初の人、先駆者に仕立てる物語ともなる。

 公明党代表の山口那津男も安倍晋三と同じ趣旨の発言をしている。「朝日デジタル」(2018年6月23日19時25分)

 一部抜粋。

 山口那津男「(大阪北部地震でブロック塀が倒れ、女児が死亡した大阪府高槻市の小学校などを視察した後に)ブロック塀が建築基準法に違反する状況の中で起きたことを深刻に受け止めないとならない。同様のことが二度と起きないよう、学校の通学路や校内の設備、施設の安全性の総点検を早急に行う必要がある。公共性の高いものは国、地方が連携をしながら安全策の確保に急ぐべきだ」

 9歳女子児童が死亡する前に対策を終えていなければならなかったにも関わらず、そのことには触れずに少女の死を「同様のことが二度と起きない」キッカケとなった人――ブロック塀危険性警告の先駆者に安倍晋三と同様に仕立てることと同じである。

 このような先駆者仕立ては1978年の宮城県沖地震から40年間、ブロック塀の安全性に留意して全性を確保してこなかった自分たちの責任を棚上げすることでもある。人災殺人とした場合、自分たちに責任が回ってくるから、先駆者仕立てで幕引きを図ろうということなのだろう。

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沖縄全戦没者追悼式:安倍晋三は沖縄戦没者の“無念”を引き継ぐ県民のそれを経済発展で代償させるつもりでいる

2018-06-25 11:11:37 | 政治
 安倍晋三:従軍慰安婦強制連行否定2007年3月16日閣議決定

「政府が発見した資料の中には、軍や官憲がいわゆる強制連行を
直接示すような記述も見当たらなかった」
とする
“政府発見資料”とは如何なる資料か、公表すべき

 毎年6月23日に沖縄で「全戦没者追悼式」が行われた。この6月23日は沖縄防衛第32軍司令官牛島満中将と同参謀長の長勇中将が糸満の摩文仁で自決した日で、この日を日本軍の組織的戦闘終結の節目と看做して沖縄慰霊の日が制定されたと言う。

 そしてこの6月23日を以って毎年、「全戦没者追悼式」が糸満市摩文仁の平和祈念公園で行われることになったという。

 太平洋戦争で唯一、日本国内の一般住民が地上戦を体験した沖縄戦での死者は軍民合わせて20万人余、そのうち沖縄県民約9万4000人、約4人に1人の県民が犠牲になったと言われていて、日本軍12万近くの兵士に対して米軍55万人近くの兵士、内死者約1万2千余という死者数の比率からも明確な兵士の数と共に兵器の点でも圧倒的に優る米軍の攻勢に日本軍は敗走に敗走を重ね、追い詰められて我が子を先に殺して親が後を追う等々の集団自決者数が700人以上、一説に1000人以上にのぼるとされている。

 1994年6月29日付「朝日新聞」≪ルポ 沖縄戦 語り部の五十年3 重い荷物背負い続け生きる≫

 〈渡嘉敷島の惨劇は、米軍も知っていた。『沖縄戦アメリカ軍戦時記録』(上原正稔訳編)には、ニューヨーク・タイムズの記事を引用したつぎのような報告が記載されている。

 「ようやく朝方になって、小川に近い狭い谷間に入った。すると、「オーマイゴッド」、何ということだろう。そこは死者と死を急ぐ者たちの修羅場だった。この世で目にした最も痛ましい光景だった。ただ聞こえてくるのは瀕死の子どもたちの泣き声だけであった。

 木の根元には、首を絞められて死んでいる一家族が毛布に包まれて転がっていた。小さな少年が後頭部をV字型にざっくり割られたまま歩いていた。まったく狂気の沙汰だ。

 何とも哀れだったのは、自分の子どもたちを殺し、自らは生き残った父母らである。彼らは後悔の念から泣き崩れた。自分の娘を殺した老人は、よその娘が生き残り、手厚い保護を受けている姿を目にし、咽(むせ)び泣いた」〉――

 沖縄の日本軍は集団自決を強制していないと主張しているが、「天皇陛下のため、お国のために命を捧げる」ことの奉仕の要求、あるいは「生きて虜囚の辱を受けず、死して罪禍の汚名を残すこと勿れ」の捕虜を恥ずべきこととし、死を潔しとした戦陣訓の教えと天皇と国家を最もよく代表する存在としてその教えの体現者を任じていた軍人たちの振舞いが民間人を心理的にコントロールすることになり、日本人が持つ集団性と相まって“命の生き剥がし”に向かわせた強迫性が集団自決となって現れたということであろう。

 悲惨な戦争の真只中に投げ込まれて生き抜いた者たちが戦争で死した者たちの命が如何に敢えなく無にされ、無意味な戦争であったかを学び、その悲惨さへの悔恨と反省から、学んだことを忘れないためにも6月23日を慰霊の日とし、毎年繰返して全戦没者を追悼することになったと言うことなのだろう。

 いわば沖縄の全戦没者追悼式は以上のことを意図し、目的とした式典と言うことになり、スピーチする者もこの意図と目的に添わなければならない。

 では、先ず翁長沖縄県知事の「スピーチ」産経ニュース/2016.6.23 14:20)を見てみる。

 「私たち県民が身を以って体験した想像を絶する戦争の不条理と残酷さは時を経た今でも忘れられるものではありません。この悲惨な戦争の体験こそが平和を希求する沖縄の心の原点であります」と言って、生き残った者たちが学習することになった戦争の無意味さを糧とした平和の尊さを訴えると同時に、〈日米安全保障体制の負担は国民全体で負うべき〉であるにも関わらず、〈国土面積の0.6%にしかすぎない本県に米軍専用施設の約74%が集中〉している過度の偏在を訴えているのは、その裏に安全保障上の危険性を過度の偏在相応に受けかねない恐れを自ずと組み入れていて、そのことがかつての沖縄戦と同様の「不条理と残酷さ」に取って代わられかねないと見ているからだろう。

 最後に、〈本日慰霊の日にあたり、犠牲になられた全ての方々に心から哀悼の誠をささげるとともに、平和を希求してやまない沖縄の心を礎として未来を担う子や孫のために誇りある豊かさを作り上げ、恒久平和に取り組んでいく決意をここに宣言いたします。〉とスピーチ、悲惨な戦争で多くの命が無にされていった者たちを慰霊し、追悼すると同時にかつての時間と未来の時間との連続性――無意味な戦争とムダな死の連続性を断ち切ることを誓っている。

 対して同じ沖縄全戦没者追悼式の安倍晋三の「スピーチ」(首相官邸/6月23日)を見てみる。

 安倍晋三「平成30年沖縄全戦没者追悼式が執り行われるに当たり、沖縄戦において、戦場に斃(たお)れた御霊(みたま)、戦禍に遭われ亡くなられた御霊に向かい、謹んで哀悼の誠を捧(ささ)げます。

 先の大戦において、ここ沖縄は、苛烈を極めた地上戦の場となりました。20万人もの尊い命が無残にも奪われ、この地の誇る豊かな海と緑は破壊され、沖縄の地は焦土と化しました。多くの夢や希望を抱きながら斃れた若者たち、我が子の無事を願いながら息絶えた父や母、平和の礎(いしじ)に刻まれた全ての戦没者の無念を思うとき、胸の潰れる思いです」

 安倍晋三のスピーチは毎年と同じように過剰なまでに戦争の犠牲を描き出している。だが、「多くの夢や希望を抱きながら斃れた若者たち」にしろ、「我が子の無事を願いながら息絶えた父や母」にしろ、無意味な戦争を歴史の舞台としたムダな死だったからこそ、死の瞬間に芽生えることになった“無念”という抑えがたい情念であり、そうではあっても、死者たちと一緒にあの戦争の真只中に立たされて死者の“無念”を近くに見、生き抜くことができた沖縄県民にとっては死者だけの“無念”で終わるはずはなく、自らの“無念”として戦後73年経過しても生き続けている進行形にあるはずである。

 だが、安倍晋三のスピーチは生き残った沖縄県民がかつての戦争と多くの死に抱く無意味さやムダであったことの“無念”に対する視点を完璧に欠いている。“無念”が死者に限られた情念と見ていることから生じている死者を追悼するときの常套句の単なる寄せ集めとなっていて、心の底から沖縄県民の“無念”を考えていないから、このようなおかしなことが起きているのだろう。

 おかしなことはこればかりではない。

 安倍晋三「今、沖縄は、美しい自然、東アジアの中心に位置する地理的特性をいかし、飛躍的な発展を遂げています。昨年、沖縄県を訪れた観光客の数はハワイを上回りました。今や、沖縄は、かつての琉球の大交易時代に謳(うた)われたように、『万国津梁(しんりょう)』、世界の架け橋の地位を占めつつあります。アジアと日本をつなぐゲートウェイとして、沖縄が日本の発展を牽引(けんいん)する、そのことが現実のものとなってきたと実感しています。この流れを更に加速させるため、私が先頭に立って、沖縄の振興を前に進めてまいります」

 沖縄全戦没者追悼式がかつての無意味な戦争とその戦争によって多くが無に帰した悲惨さの経験に対する悔恨と反省に立ち、無に帰した者たちへの慰霊と教訓として無意味な戦争の連続性を断つ誓いを意図し、目的としているにも関わらず、そのこととは無関係に沖縄県民の“無念”を沖縄の経済発展によって代償し、全てをチャラにしようとする発言となっている。

 いわば沖縄県民の“無念”に応えることと沖縄の経済発展に応えることは別次元の異なる問題でありながら、経済発展が沖縄県民の“無念”を解消する特効薬であるかのような物言いとなっている。

 浦添市の中学校3年生の女子生徒が沖縄全戦没者追悼式で「生きる」時事ドットコム)と題した詩を朗読した。

 その一節で次のように誓っている。

 〈私が生きている限り、

 こんなにもたくさんの命を犠牲にした戦争を、絶対に許さないことを。

 もう二度と過去を未来にしないこと。〉・・・・・・

 戦争という歴史の無意味さの連続性を断ち切って、〈もう二度と過去を未来にしない〉ためには死者から生者が受け継いだ戦争の無意味さに対する“無念”を過去・現在・未来に亘って連続性ある情念として生かし続けることを動機としなければならない。

 “無念”さを忘れたら、戦争に対する拒絶反応を失うということである。

 この動機こそを沖縄全戦没者追悼式の糧としなければならないはずだが、日本の首相安倍晋三はそのような精神は持ち合わせていない。経済発展が全てを解決する糧だと思い込んでいる。

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加計孝太郎2018年6月19日記者会見:ウソや不誠実さの存在は逆に面会は事実であることを物語っている

2018-06-22 11:53:02 | 政治
 安倍晋三:従軍慰安婦強制連行否定2007年3月16日閣議決定

「政府が発見した資料の中には、軍や官憲がいわゆる強制連行を
直接示すような記述も見当たらなかった」
とする
“政府発見資料”とは如何なる資料か、公表すべき

 中村愛媛県知事による2018年5月21日参議院提出の加計学園関係の文書に一つに2015年2月25日に安倍晋三と加計学園理事長加計孝太郎が15分程度の面会を行い、獣医学部について話し合ったことが記載されていた。

 対して加計学園は参議院提出5月21日5日後の5月26日に〈当時は、獣医学部設置の動きが一時停滞していた時期であり、何らかの打開策を探しておりました。そのような状況の中で、構造改革特区から国家戦略特区を用いた申請に切り替えれば、活路が見いだせるのではないかとの考えから、当時の担当者が実際にはなかった総理と理事長の面会を引き合いに出し、県と(今治)市に誤った情報を与えてしまったように思うとのことでした。その結果、当時の担当者の不適切な発言が関係者の皆さまに、ご迷惑をお掛けしてしまったことについて、深くおわび申し上げます。〉といった面談を否定するコメントを発表した。

 対して中村愛媛県知事が5月29日に「これだけの問題なら最高責任者が説明するのが当然。それが学園の信頼を確保することになる」、あるいは「一般論として、偽りなら謝罪、説明し、責任者が記者会見するのが世の中の常識」と加計孝太郎本人の県への説明や記者会見での説明を求めたところ、加計孝太郎本人ではなく、加計学園事務局長渡邉良人が5月31日午前、海外出張で中村知事不在中の愛媛県庁を訪れて謝罪、その後記者団に、「3年前のことだから、覚えていなかったが、2015年4月2日に首相官邸を訪れて柳瀬秘書官に面会したメンバーから言えば、そういうことを言うのは自分しかいない」などと不確かな証言で済ましている。

 要するにコメントどおりに安倍晋三と加計孝太郎との面会は“活路を見い出すための誤った情報”で通したことになる。

 中村愛媛県知事は渡邉良人の愛媛県庁訪問・謝罪に対して6月1日、「ウソを1回ついたら、またウソをつかなければならなくなる。1カ所が崩れると、ほかとの辻褄や整合性が問題になるケースがある。問題になっているのは経営のコンプライアンスだ。トップの方が丁寧に説明した方がいい」(NHK NEWS WEB)と加計孝太郎本人の記者会見説明を求めた。

 この中村知事の要求に対して加計孝太郎本人は音無しの構えでいたが、2週間以上も過ぎた6月19日になって加計孝太郎本人が突如として記者会見を開いた。但し地元記者限定の記者会見だったという。

 この6月19日は愛媛県が文書を参議院に提出した5月21日から約1カ月、渡邉良人の愛媛県庁訪問・謝罪の6月1日から2週間以上経過した余りにも後手の対応であることにプラスすること地元記者限定の記者会見という措置は正々堂々とした姿を窺うことができないばかりか、逆に不誠実や後ろ暗さを見ないわけにはいかない。

 この記者会見の動画をネットで探したところ、「日テレNEWS24」から「前編」「後編」を見つけて、文字化してみた。但し記者の質問の声が響いて殆ど聞き取りにくく、一応聞き取ることができた会話は何度も聞き返してやっと纏めることができたが、ところどころしか聞き取れないところは大体のことを書き記し、文字に起こすことができない箇所はクエスチョンマークに置き換えることにした。加計孝太郎の発言で質問の大まかな内容を推量するしかなかった。
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 2018年6月19日加計孝太郎記者会見 

 加計孝太郎「ただいまご紹介いただきました加計でございます。本日は緊急報告会見を開きましたけど、多数の報道関係者の皆様方にお集まりを頂きまして、誠にありがとうございます。

 (老眼鏡をかけて原稿を読む)それでは先ず報告会見の前に昨日大阪府北部を震源とする震度6弱の地震発生につきまして大阪府を中心に犠牲になられた方々のご冥福をお祈りするとともに被害に遭われた方々に心よりお見舞いを申し上げたいと思います。

 それでは報告会見を始めさせて頂きます。先ず愛媛県が国会に提出された文書を巡り学園職員が起こしました不適切な言動につきまして愛媛県民、今治市民に加えて愛媛県関係者、今治市関係者の皆様方に多大なるご迷惑・ご心配をおかけ致しましたことを学園の代表者として深くお詫びを申し上げる次第であります。

 また大学生・保護者の皆様方、学園関係者並びに多くの皆様方に多大なご心配をおかけしてしまいました。本当に申し訳ございませんでした。重ねて心よりお詫びを申し上げます。(一礼)

 本日理事会を開催し、コンプライアンスを正常に行うために当該職員の処分並びに監督者である私の処分は合わせて決定致しましたのでご報告を致します。処分内容につきましては当時の学園担当者に対し本日付けで月額給与の10%を6カ月減給する処分と致します。また私自身も最終責任者としての監督責任を明らかにするため、給与の月額10%、12カ月間、自主返納することと致します。

 加えて二度とこのようなことが起きないよう、学園内のコンプライアンスの徹底を図るため、コンプライアンス推進室を活用し、弁護士などの助言を受けながら、ガバナンスを強化していくこともご報告をさせて頂きます。

 本学園としては感染症対策や獣医師の育成など地元に貢献できる大学作りをしていくため、今後とも教育と研究に更に真摯に取り組んで参る所存でありますので、どうぞ、今後とも宜しくお願い申し上げます。

 司会「続きまして岡山理科大学長の柳沢康信より獣医学部の目指すところと現場につきましてご報告させて頂きます」、

 柳沢康信「今紹介頂きました岡山理科大学学長の柳沢です。どうかよろしくお願いします。あの、皆さんご存知のように岡山理科大学獣医学部は国家戦略特区の枠組みで日本で52年ぶりに認められた特別な使命を帯びた獣医学部です。近年でエボラ出血熱やデング熱、ジカ熱やサーズ(SARS・重症急性呼吸器症候群)など多くの感染症は動物由来だということが明らかになり、動物から人にうつる病気に獣医師が関わるようになりました。動物から人にうつる病気に対してこれまでの日本の獣医学教育では対象は動物で観察していましたが、今後は人との関連や人への応用を視野に入れた獣医学教育の研究を行い、今日的な課題に応えていく必要があります。

 このような認識に立って獣医学部では動物と人の健康を科学するということをキャッチフレーズにしております。獣医学部は獣医学科と獣医保健看護学科の二つの学科で構成されております。6年制の獣医学部では第3分野、公共獣医事分野、医事連携獣医分野の三つの専門分野の獣医師をほぼ同数ずつ社会に配置することを目指しています。

 先ず第一科学分野では生命科学の研究に獣医学的な見地から取り組み、薬学などと連携しながら、動物実験の研究成果を人の治療に結びつける、いわゆるトランスレーショナルリサーチ分野で活躍できる人材を養成します。

 また公共獣医事分野では感染症防護や食品の安全性確保など国際的な視野で危機管理対応のできる公務員獣医師を養成します。医事連携獣医分野では、医学と獣医学は共通であるという認識に立つ臨床面で動物と人との両方に応用できる診断治療法の確立や創薬、医療機器などの開発に貢献できる人材を養成します。

 一方、4年制の獣医保健学科では獣医師と連携できる実践的な能力を有する人材ベテリナリーパラプロフェッショナル、VPPと呼ばれていますが、このような獣医関連専門家を養成いたします。

 獣医学部の専任教員の数は二つの学科を併せて87名と国内では最大級の規模で、施設や設備も充実したものになりました。4月3日に186名の新入生を今治キャンパスに迎えて2カ月半が経ちました。学生たちは一言で言うと、明るくて積極的であります。

 獣医学部の1期生として新しい大学を自分たちの手で創り上げようとする意欲は満々であります。吉川獣医学部長によると、彼らは知的好奇心が強く、授業が終わった後の質問も、これまでに経験したことがないくらい多いということであります。

 今後、愛媛県や今治市の協力を得ながら、彼らが世界に通用する獣医学人材に育つよう、一致団結して教育、環境を整えていきたいと考えています。

 報道機関の皆さんにも温かく見守っていただきますよう、お願いを申し上げます。(深く一礼)

 司会「ハイ、引き続きまして皆様からのご質問をお受けいたします。限られた時間ではありまので予めご承知おき願います。先ず最初に山陽新聞社様、代表質問をお願い致します」

 山陽新聞社記者「加計学園が2015年2月25日の首相との面会がなかったことを5月26日のコメントで発表し、首相自身も面会を否定しているが、改めて受け止めをお聞きしたいことと、同じ5月26日に発表したコメントで当時の担当者が愛媛県などに実際にはなかった面会と会食をしているという誤った情報を与えてしまったと釈明しているが、このような情報は担当者に伝えるよう何らかの指示があったのかを含めてお聞きしたいと思います」

 加計孝太郎「それはまあ、記録を調べさせて頂きましたところ、私の方は3年も前のことでございますので、記憶にもございませんですし、記録にもありませんでした。

 そしてまたもう一つのご質問でありますけれども、担当者が、あー、そこ、そのようなことを言ったという誤解をいうようなことを言ったことにつきましては、ま、事を前に進めようとして言ったんだということの報告は受けております」

 司会「そうしましたらば、各社からの質問をお受けいたします。質問される方は、会社名と名前を付けた上でご指名をお願いします」

 記者「なぜこのタイミングで緊急会見を開いたのか」

 加計孝太郎「先ずですね、この記者会見を開かせて頂いたのは、あー、先程申し上げましたように理事会の中でですね、私を含めた処分をして頂いたと、ま、その報告をさせて頂くということで緊急記者会見を開かせて頂きました」

 記者「先程指示はなかった、御本人が渡邉事務局長が勝手にやったという認識でよろしいですか」

 加計孝太郎「ハイ、そうです」

 記者「?????」(「どういった理由で」とでも聞いたのだろうか)


 加計孝太郎「先程申し上げましたように本人が事を前に進めるために申し上げたということでございます」

 記者「色んな所で“加計ありき”だったのではないかと、獣医学部新設について。これについて理事長はどういうふうに?」

 加計孝太郎「国家戦略特区につきましても、構造改革特区につきましても、特には、まあ、我々が最後にやりました国家戦略特区につきましては、国家戦略特区法の第3条にあります自治体とですね、あの、民間事業者がお互いに一緒に密な関係にしながらやりなさいというふうに書いてありますでの、それはそういうことになります」

 記者「安倍首相との個人的な・・・」

 加計孝太郎「それはありませんですね」

 記者「今回の件でですね、国会等世間を騒がせていることに結果的になってしまっていると思うんですが、そのことにつていお考えをお願いします」

 加計孝太郎「(頭を下げながら)大変申し訳ないと思っております」

 記者「??したいみたいなことはなかったですか」

 加計孝太郎「それは私共あくまで申請者側でございますので、我々の一貫した態度と致しましてはですね。非常に謙虚な態度で上げたい(?)と思っていましたので、そういうことでお許しを頂きたいと思っております」

 記者「事務局長からですね、報告を受けたのはいつ?」

  加計孝太郎「それはちょっと記憶にございませんけれど、大分前のことであります」

 記者「そのときに事実を確認されなかったのですか。虚偽に関わったということは」

 加計孝太郎「それは分かりませんですね」

 記者「2015年の2月25日前後に安倍首相と面会や会食はなかったのですか」(よく聞こえない)

 加計孝太郎「それはありません」

 記者「安倍首相と???」

 加計孝太郎「我々は基本的にはですね、何十年来の友達ですし、仕事のことはもう話すのはやめようということのスタンスでやっております。リラックスするためにお会いしておりますから、仕事の話だとか、勿論政治の話は色々と聞いたことはございますけども、こちらの話なんかは余り興味はないと思います」

 記者「獣医学部の話などは(?????)」

 加計孝太郎「(首を振って)ありません」

 記者「総理が獣医学部について初めて知ったということですが」(殆ど聞き取れない)

 加計孝太郎「私は悪いですけど、知りませんですね、それは」

 記者「獣医学部については総理から何にも話が――」

 加計孝太郎「余りございません」

 記者「今もですか」

 加計孝太郎「ハイ、ハイ」

 記者「柳瀬秘書官とはどうですか」

 加計孝太郎「それは色んな会合ではお会いしたと思いますけれども、そんな話は一切しておりません」

 (二、三聞き取れない。加計孝太郎が「ハイ、ハイ」と頷くだけだから、質問の内容を窺うことができない。)

 記者「(加計学園事務局長がか、愛媛県庁を訪れて謝罪したが)愛媛県の中村知事がなぜもっと早く対応しなかったのかとおっしゃっておりますけれども」

 加計孝太郎「早くお伺いしようとは思ってったんですけども、こちらのスケジュール等でお会いすることができませんでした」
 
 記者「????(聞き取れない)」


 加計孝太郎「それはしたいと思っています」

 記者「それから今後国会から招致の要請があれば、加計理事長、どうします」

 加計孝太郎「それは私が決めることではございませんので、お待ちしております」

 記者「理事長ご自身が愛媛県に謝罪に行くことはあるんですか」

 加計孝太郎「大変申し訳ないと思っておりますし、謝罪に行くことを許されれば、参りたいと思います」

 記者「いつ頃の予定ですか」

 加計孝太郎「それはまだ分かりません」

 記者「(全然聞き取れないが、渡邉事務局長の虚偽情報発信の目的を聞いたのか)」

 加計孝太郎「まあ、前に進めるためにやったという事実しか伺っておりませんので、ま、虚偽の発言と言えば虚偽の発言になんだろうと思いますけれども、前に進めるためにあくまでもやったというふに聞いております。申し訳なかったと思っています」

 記者「前に進めるためであれば」

 加計孝太郎「(遮るって)いや、だから、そんなことはありません」

 他の記者に代わる。

 記者「(入学式についての質問)このような騒動がある中で改めて学園歌の6番を作詞されましたが」

 加計孝太郎「やはりですね、思いを、熱い想いがございまして、今治さんとは、前加戸知事さんの時代から、獣医学部はお互いにやろうとの熱い気持があったものですから、あの、私自身が、それを書いたっていうことについては非常に何か面映い気が致しますけれども、加戸知事さんの方がよかったかなあと思ったり、ま、これからもそういう機会があれば、加戸先生か色んな方々に、今治の人に作詞をお願いできないかなと思っております」

 記者「そんな中でこのような騒動になっていますけれども、ご自身として何でこのような騒動になっているとお考えですか」

 加計孝太郎「うーん、私はちょっと不徳の致すところでありますけれども、たまたま総理と仲がよかたということでこのような騒動になったんだと思います。申し訳ないと思っています」

 記者「????」

 加計孝太郎「これは先程申し上げましたように私共は申請をして、それを受ける方であろますから、そういう態度でずっと貫き通したいなと思っております」

 記者「これまで理事長は総理に対して獣医学部の話は一切していない」

 加計孝太郎「ハイ、しておりません」

 記者「???、一切していない?」

 加計孝太郎「ハイ」

 記者「??????}

 加計孝太郎「それがそういう場合があったとしてですから、仮にですから(?)、ちょっとお答えすることはできません」

 記者「今、仲が良かったというお話がおっしゃったんですが、仲がいいと言うだけで、こんな騒動に繋がらなかったと思うんですが」

 加計孝太郎「思いませんでした」

 記者「前から疑いの目が向けられるんではないかと――」

 加計孝太郎「(首を振って)全く思いませんでしたね」

 記者「?????」

 加計孝太郎「そういうふうに考えております」

 記者「加計学園の職員の方が?????」

 加計孝太郎「ないです」

 記者「ない?」

 加計孝太郎「ハイ」

 記者「??????」

 加計孝太郎「修正(?)、業務については全くなかったと聞いております」

 記者「助成金を交付されていたと思うんですが、????(「返還を求められているようなことは」とでも聞かれたのか。」

 加計孝太郎「今んところございません」

 記者「(名前の確認)」

 加計学園関係者「北村ヨシヒコです」

 記者「??????」

 加計孝太郎「それはまだ検討させて頂きます」

 記者「?????」

 加計孝太郎「これからはそういうことは気をつけて、コンプライアンスに十分気をつけてやっていきたいと思っております」

 記者「?????」

 加計孝太郎「ハイ、ハイ」

 記者「2月25日に会われていないということをおっしゃっておりますが、会ったという前提で資料が出てきたという話もあるので、本当に担当者にあるかないか(確認したのですか?)」

 加計孝太郎「ハイ、(?)記憶にもないし、記録にもございません」

 記者「今回の処分で国民の方が納得されると思いますか」

 加計孝太郎「それは我々がコメントすることじゃないと思います」

 記者「事務局長が理事長を忖度して、事務局長が勝手にそういうこと(虚偽面会情報の吹き込み)をやってしまったということは関係ないんですか」

 加計孝太郎「申し訳ございませんでした」

 記者「それについて、なぜそんなことをしたかをちゃんと理事会で???}

 加計孝太郎「これから気をつけます」

 記者「?????}

 加計孝太郎「それも併せてやりたいと思っています」

 会見終了。

 質疑の第一印象はどうとでも答えることができるどうでもいい質問の繰返しが多かった。

 発言の順不同で疑問に思ったことを書き記す。

 記者が「なぜこのタイミングで緊急会見を開いたのか」と質問したのに対して、加計孝太郎は「先ずですね、この記者会見を開かせて頂いたのは、あー、先程申し上げましたように理事会の中でですね、私を含めた処分をして頂いたと、ま、その報告をさせて頂くということで緊急記者会見を開かせて頂きました」と答えている。

 加計学園側の説明では2015年2月25日の安倍晋三と加計孝太郎との面会は誤った情報だとしている。対して中村愛媛県知事はニセの情報を流したと把えて、最高責任者の説明、若しくは責任者の記者会見を「世の中の常識」として求め、世間もその要求に賛同していた。

 当然、加計孝太郎の記者会見は中村愛媛県知事の要求に謙虚に応える目的を備えていなければならないはずだが、ニセ情報を流したことの処分が目的だったとしている。

 この目的を違えている態度には不誠実さだけではなく、不届きささえ感じない訳にはいかない。

 また記者たちも、なぜニセ情報を流すに至ったかに質問を集中しなければならなかったはずだが、全然集中しきれていない散漫な質問で終わっている。

 記者が加計学園事務局長の渡邉良人がいわゆるニセ情報を愛媛県と今治市に吹き込んだのは「何らかの指示があったのか」と質問したのに対して加計孝太郎は「記録を調べさせて頂きましたところ、私の方は3年も前のことでございますので、記憶にもございませんですし、記録にもありませんでした」と答えている。

 と言うことは、記憶と記録にないと言っているだけのことで、指示の可能性は残されることになる。記者はこのぐらいの言い返しをしなければならないはずだ。

 また同じ記者の「実際にはなかった面会と会食をしているという誤った情報を与えてしまったと釈明しているが」の文言に反応して加計孝太郎は
「事を前に進めようとして言ったんだということの報告は受けております」と答えている。

 加計孝太郎は加計学園事務局長の渡邉良人がニセ面会・ニセ会食情報を流した目的は、“事を前に進める”ためだと、4度発言している。

 当然、理事長としてニセ情報を愛媛県と今治市に吹き込み、信じ込ませれば、どう事を前に進むと考えたのか、その意図を事務局長渡邉良人に聞かなければならない立場にあるのだから、聞いたのかと尋ね返さなければならなかったはずだ。

 目的には意図が存在する。意図の存在しない目的はない。ブログに何度か書いているが、今治市と愛媛県には獣医学部新設と認可に関して何の権限も握っていない。“事を前に進める”ためには権限を握っている関係機関、あるいは関係部署にまでそのニセ情報を浸透させ、活用しなければ、“事を前に進める”については何の役にも立たないことになる。

 当然、どう前に進むと考えたのか、その意図と同時に実質的にはどの機関、どの部署でニセ情報を役立たせようと考えていたのか、渡邉良人事務局長に問い質したのかと加計孝太郎に質問しなければならないはずだったが、記者の誰もそのような質問はしていない。

 要するに加計孝太郎は最高責任者である理事長の立場にある者のコンプライアンス(法令遵守、あるいは業務遂行上の社会的規範遵守)の観点から、渡邉良人に問い質さなければならないことを問い質しもせずに「本人が事を前に進めるために申し上げたということでございます」、あるいは「前に進めるためにやったという事実しか伺っておりません」、さらには「前に進めるためにあくまでもやったというふに聞いております」だけで済ませている。

 いわば加計学園のコンプライアンスを守るために求められる秩序の徹底を図りもせずに加計孝太郎は「学園内のコンプライアンスの徹底を図る」などと言っている。

 この行動が伴わない有言不実行には記者会見の目的を中村愛媛県知事の要求に謙虚に応えることに置いていたのではなく、ニセ情報を流したことの処分の発表を目的としていた不誠実さや不届きさにプラスする不誠実さや不届きさしか見えてこない。

 記者が「事務局長からですね、報告を受けたのはいつ?」と尋ねられると、加計孝太郎は「それはちょっと記憶にございませんけれど、大分前のことであります」と答えている。

 中村愛媛県知事が参議院に加計学園関係の文書を提出したのは5月21日で、加計学園が面談を否定するコメントを発表したのが5月26日。

 面会が事実でないなら、そのことを一番よく知っているのは一方の当事者である加計孝太郎本人なのだから、報告を受ける側としてではなく、5月21日から5月26日までの6日間の間に渡邉良人事務局長に対して報告を求める側としての行動を取らなければならなかったはずであるし、取ったはずである。

 例え渡邉良人の方からやって来て、「これこれこういうわけです」と加計孝太郎に説明したとしても、上司である以上、報告を求める側に自分を立たせていなければならない。でなければ、上司としての積極的な立場を蔑ろにすることになる。

 にも関わらず、自身を受け身の報告を受けた側に位置させ、しかもこの問題がずっと尾を引いていたにも関わらず、この記者会見の6月19日からたった1カ月程度前のことを「記憶にはない」、「大分前のこと」とする。

 この発言には明らかに誤魔化しが存在する。

 記者から次に事務局長から報告を受けたときに虚偽に関わったことの事実確認を行ったのかと問われると、加計孝太郎は「それは分かりませんですね」と答えている。

 事務局長から報告を受けた日時を「記憶にない」と答えた手前、その際に事実確認を行ったと答えた場合、前後の発言に記憶上の整合性が取れなくなることから、同じ記憶にないこととするために「分からない」と答えたのだろう。

 だが、「前に進めるためにやったという事実しか伺っておりません」と事実確認したことを認めている。

 これは一つのウソが次のウソを重ねることによって生じる典型的な矛盾そのものである。

 渡邉良人事務局長の報告としてニセ面会情報は「前に進めるためにやった」と加計孝太郎が発言したことに対して記者が「前に進めるためであれば」と問いかけると、加計孝太郎は「いや、だから、そんなことはありません」とたちどころに遮っている。

 面会否定の理由付けにニセ情報で事を前に進めようとしたことを自分たちの事実としている。加計孝太郎は「ニセ情報で前に進むことはなかった」いう意味で、「いや、だから、そんなことはありません」と否定することになったのだろうか。
 
 だとしても、ニセ情報で“事を前に進める”ことを意図したことまで抹消することはできない。結果的にニセ情報で“事を前に進める”ことができなかったとしても、その意図を獣医学部認可に権限を持つ部署・機関のいずれかにまで吹き込もうと企んだのか、あるいは吹き込むことができたのかできなかったのか、その経緯を明らかにしなければ、ニセ面会情報・ニセ会食情報としていること自体が限りなく疑わしく、限りなくウソに見えてくる。

 加計孝太郎は「我々は基本的にはですね、何十年来の友達ですし、仕事のことはもう話すのはやめようということのスタンスでやっております。リラックスするためにお会いしておりますから、仕事の話だとか、勿論政治の話は色々と聞いたことはございますけども、こちらの話なんかは余り興味はないと思います」と発言しているが、安倍晋三は異なる国会答弁をしている。

 2017年7月24日の衆議院予算委員会。これは「Huffingtonpost」で知り得た情報。 

 安倍晋三「先程御答弁いたしましたように、加計さんとは政治家になるずっと前からの友人関係であります。しかし、彼が私の地位や立場を利用して何かをなし遂げようとすることは一度もなかったわけであります。

 彼はチャレンジ精神を持った人物であり、時代のニーズに合わせて新しい学部や学科の新設に挑戦していきたいという趣旨のお話は聞いたことがございます。しかし、今まで彼もさまざまな学部・学科をつくってきたわけでございますが、そういうことも含めて具体的に、何かを今つくろうとしている、ですから、今回でいえば、獣医学部をつくりたい、さらには今治市にといった話は一切ございませんでした」

2018年4月26日午後参院予算委。これは自身で気づいていたこと。

 片山大介(日本維新の会)「これ何度も出てる質問なんですけど、総理が加計学園の獣医学部設置について知った日にち、これ1月20日と言ってます。これ改めての質問になるんですけども、この1月20日まで全く聞いたことすらない、ということでいいのか、いや、頼まれたことはなかったかもしれないですけども、これ全く、それまで聞いたこともないというのは、なかなか、これは違和感があるし、やはりそれも国民の皆さんも思っていると思います。

 これについて明確なご意見」

 安倍晋三「国民の皆様はですね、私の友人であるから、そういう話はしているんではないかというふうに思われるかもしれません。ま、しかし、この加計氏はですね、えー、理事長になれてからは様々な学部をつくっておられます。看護学部、あるいは薬学部等々もつくっておられますが、そのたびごとに何か私が依頼を受けたり、あるいはそういう話を聞いたことも、これは殆んどないわけでございまして、いわば友人同士の、えー、会話に於いてですね、お互いの興味が一致する点については話は、これ段々盛り上がっていくということも(ふっと笑いを漏らす)あるわけでございますが、この点について私が何回も述べてきた通り、それが事実でございまして、実際に彼が獣医学部をつくりたいという話を聞いたことは実際ないわけであります。

 ただ、様々なことに挑戦していきたいという趣旨の話は聞いたことはございますが、具体的な話を聞いていないのは事実でございます。これまで繰返し答弁してきた通り、私が加計学園の計画について知ったのは昨年の1月の20日であります。

 えー、但し先程申し上げましたように長年の友人が関わる話であり、えー、片山議員のご指摘のように国民の皆さんから疑念の目が向けられことは尤もなことだろうと、このように思います」

 安倍晋三は事実でないことことを話すとき、簡潔に述べて切り上げることができない傾向にあるが、加計孝太郎が言っているように決して「こちらの話なんかは余り興味はないと思います」といった態度は見せているどころではなく、「お互いの興味が一致する点については話は、これ段々盛り上がっていく」会話の盛り上がりを表現している。

 以上記者会見から窺うことのできる数々のウソや不誠実さ・矛盾の存在は逆に安倍晋三と加計孝太郎の面会も会食もニセ情報などではなく、事実あったことであることを物語ることになる。

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中国が安倍政権を倒すために北朝鮮に対して「拉致は解決済み」のブレーキを掛けているということではないか

2018-06-21 11:25:38 | 政治
 安倍晋三:従軍慰安婦強制連行否定2007年3月16日閣議決定

「政府が発見した資料の中には、軍や官憲がいわゆる強制連行を
直接示すような記述も見当たらなかった」
とする
“政府発見資料”とは如何なる資料か、公表すべき

 2018年6月18日付「NHK NEWS WEB」記事、その他が同6月18日の参議院決算委員会で自民党滝波宏文(東京大学法学部卒、46歳、福井県選挙区)の質問に答えて拉致問題解決に向けた日朝首脳会談の開催に決意を示したといった趣旨のことを伝えていたから、その箇所だけテキスト化してみた。

 「2018年6月18日参議院決算委員会」

 滝波宏文「これまで政府は拉致問題の解決なくして北朝鮮問題の解決なしとの覚悟で取り組んできたと考えますが、拉致問題の早期解決に向けての決意つについて安倍総理にお伺いします」

 安倍晋三「先般の米朝首脳会談に於いて我が国にとって何よりも重要な拉致問題ついての私の考え方を直接金正恩国務委員長に伝えてくれたことは大きな成果であったと考えますし、トランプ大統領に改めて感謝申し上げたいと思っています。

 また先日拉致被害者ご家族皆様と面会し、米朝首脳会談の結果について私から直接皆様にお話を致しました。ご家族の切なる思いを改めて伺いました。ご家族の積年の無念の思いを何としても安倍内閣で拉致問題を解決をしたいと決意をしております。

 また特定失踪者も含めて誰を拉致しているかを知ってるのは北朝鮮であります。北朝鮮には知っている全てのことを話し、全ての拉致被害者を一日も早く日本に帰国させて欲しいと考えています。

 これには大きな決断が必要となりますが、金正恩国務委員長には米朝首脳会談を実践した指導力があります。日朝でも改なスタートを切り、拉致問題について互いの相互不信を取り除き、殻を破って一歩踏み出したい。そして解決したいと決意をしております。

 最後は私自身が金正恩国務委員長と向き合い、日朝首脳会談を行わなければなりません。そしてこれを行う以上は拉致問題の解決に資する会談としなければならないと考えております」

 2日前の6月16日に日テレの「ウェークアップ!ぷらす」に出演して喋った内容とほぼ同じ繰返しとなっている。

 「安倍内閣で拉致問題を解決をしたい」という強い決意を実現するためには「最後は私自身が金正恩国務委員長と向き合い、日朝首脳会談を行わなければならない」

 但し「拉致問題の解決に資する会談としなければならない」と会談開催に条件を付けている。「資する」とは「役立つ」という意味だから、首脳会談開催条件は「拉致問題の解決に役立つ会談」のみに限定して、“拉致問題の解決に役立たない会談”は開いても意味はないからと除外の自己規制をかけている。

 一方で「安倍内閣で」と拉致解決に並々ならぬ強い決意を示し、その一方で、“拉致解決に役立たない日朝首脳会談”は開いても意味はないとする前者の強い決意に対する後者の自己規制は自己否定的な論理矛盾そのものを孕んでいる。

 なぜこのような論理矛盾を露出させているかと、拉致解決そのものよりも拉致解決を自己の外交成果とし、手柄として記憶と記録に供したい願望を優先させているからだろう。

 でなければ、如何なる条件もつけずに金正恩との日朝会談開催を漕ぎつけて、失敗を恐れずにその場所勝負の形で拉致解決の直接交渉を行い、解決に向けた何らかの糸口を探ろうとするはずだ。

 だが、解決のお膳立てができていない会談はお断りだといった他力本願な態度を取っている。

 安倍晋三が「拉致問題は安倍政権のうちに解決しなければならない問題だ。全ての被害者の家族がお子さんたちをしっかり抱きしめることができる日が来るまで私の使命は終わらない」と常々発言していることも、自己の外交成果・手柄を先に置いた名ゼリフということになる。

 あるいは常日頃から「拉致問題は安倍内閣の最重要課題であり、自分の責任で何としても拉致されているすべての国民を日本に取り戻して家族と会わせて解決する」との発言も同類に堕す。

 2018年6月12日シンガポールで開催の「米朝首脳会談」でトランプが金正恩に対して拉致解決の提起を行った際、金正恩は「拉致問題は解決済み」という態度は取らなかったとされているが、3日後の6月15日夜に放送された北朝鮮国営ピョンヤン・ラジオ放送が「日本は既に解決された拉致問題を引き続き持ち出し、自分たちの利益を得ようと画策している。国際社会が一致して歓迎している朝鮮半島の平和の気流を必死に阻もうとしている」(NHK NEWS WEB)と日本を批判、「拉致問題は解決済み」の態度を改めて示すことになった。

 安倍晋三が言っているように北朝鮮が拉致問題を完全解決すれば、小泉純一郎と金正日の間で2002年9月17日に締結された日朝平壌宣言に基づいて日本からの戦争賠償に代えた経済協力や無償資金協力等々を柱とした過去の清算を活用すれば、北朝鮮経済の建て直しに役立たせることができる。

 日本の資金を使った北朝鮮経済の建て直しと拉致解決の放置を天秤に掛けた場合、拉致解決放置の選択肢はあり得ず、北朝鮮経済建て直しの選択肢こそが北朝鮮の最大の国益に適うはずだが、その天秤を常識的に機能させていない理由は何なのだろうか。

 過去に「拉致問題は解決済み」の態度を一旦は引っ込めながら、それを蒸し返したのは北朝鮮が行っていたミサイル発射実験や核実験に対して日本が安保理非常任理事国として対北朝鮮制裁の主導的役割を演じていたことへの反発が発端となっていたはずだ。

 但しここに来て、トランプとの核廃棄に向けた協議がどのような形で着地点を迎えようとも、トランプからの拉致解決の提起は日本との拉致解決に向けた協議を開始する絶好の機会となり、交渉次第で核廃棄協議とは別に北朝鮮経済の建て直しの果実を僅かにでも手に入れることができる可能性は(核完全廃棄に応じれば、最大限の果実となって跳ね返ってくる)否定できないはずだが、「拉致問題は解決済み」の態度を改める気配を見せない。
 
 安倍晋三が今年9月総裁選で3選の栄誉に浴したとしても、北朝鮮が「拉致問題は解決済み」の態度を取り続けた場合、安倍内閣の手による拉致の解決は望み薄めとなり、拉致問題を安倍政権の解決事項としていたことも、拉致被害者と家族との再会を自身の使命としていたことも、拉致問題を安倍内閣の最重要課題に位置づけていたことも、全て大言壮語となって、安倍晋三は総裁3選をフイにする失態を犯すことになって、下手をすると物笑いの対象になりかねない。

 米朝首脳会談が決まったのは韓国大統領府の鄭義溶(チョン・ウィヨン)国家安保室長が訪米、核・ミサイル実験の停止を提示する内容と米朝首脳会談を提案する金正恩の親書をトランプに渡し、トランプはその提案を受諾した2018年3月9日である。

 一方、金正恩は米朝首脳会談に備えて3月26日に北京を訪れて習近平と中朝首脳会談を開き、中国を後ろ盾にすることに成功している。

 それ以来、5月7、8の両日に大連市で2回目の中朝首脳会談を開き、6月12日の米朝首脳会談7日後の6月19日にも北京で習近平国家主席と3回目の会談を立て続けに行っている。

 最近、習近平中国と安倍政権は経済問題では関係改善が進んでいるが、軍事的には仮想敵国関係にあると言っていい。特に中国の軍事的利用を視野に入れた南シナ海進出に強硬に反対して、常々「法の支配に基づく自由で開かれた海洋秩序が国際社会の安定と繁栄の基礎である」ことを訴え、それは同時に中国批判となるが、各国を訪れてはそれらの首脳とその訴えの確認を交わしている。

 尖閣諸島に関してもお互いに自国の固有の領土だと対立し合っている。

 習近平としては日本の首相の中では格段に軍事色の強い安倍晋三は不都合な存在で、その3選を望んでいないはずだ。だが、森友学園・加計学園の政治スキャンダルにどうにか持ちこたえて、3選の勢いをどうにか失わずにいる。

 となると、安倍晋三に拉致解決の外交成果、あるいは手柄を与えた場合、3選は疎か、今後3年間、自身の外交能力に過剰な自信を持ち、軍事的に反中国姿勢を強めていく可能性は否定できず、少なくとも目障りな存在であり続けることになる。

 逆に例え3選を果たして今後3年間首相の座に就くことになったとしても、今がチャンスと見られている拉致解決に成功しなければ、安倍晋三の外交能力に対する評価を地に落とすことも可能となる。総裁選3選の目を潰すキッカケとならない保証はない。

 北朝鮮からしたら、拉致問題を解決すれば、日本の資金を活用した経済の立て直しのチャンスが出てくるにも関わらず、「拉致問題は解決済み」だとしてそのチャンスに飛びつかいない理由をあれやこれや考えると、どうも中国が安倍政権を倒すために北朝鮮に対して「拉致は解決済み」のブレーキを掛けているということではないかという考えに辿り着いた。

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大阪府北部地震寿栄小学校ブロック塀倒壊9歳女の子の死に見る安倍晋三以下の大人たちの怠慢な安全管理

2018-06-19 11:54:31 | 政治
 安倍晋三:従軍慰安婦強制連行否定2007年3月16日閣議決定

「政府が発見した資料の中には、軍や官憲がいわゆる強制連行を
直接示すような記述も見当たらなかった」
とする
“政府発見資料”とは如何なる資料か、公表すべき

 6月18日、NHKが朝のニュースでその終わり際に大阪府北部を震源とする震度6弱の地震の発生を緊急放送した。発生7時58分頃。緊急放送はそれ以後続くことになった。

 自治会の防災担当の役員をしていたとき、震度5弱だと家具のズレ、棚の食器類の落下等の発生の可能性が生じ、震度5強だと、家具等の転倒が発生、物につかまらないと歩行困難となり、震度6だと、物につかまっても、行動に支障が生じるということを調べて、防災訓練時の参考とした。

 震度6弱だということなら、それ程の人的犠牲は生じないのではないのかと単純に考えた。昨日の時点で死者は3人、今朝になって1人増えていることを知り、4人となっていた。いくら少ない犠牲であっても、その近親者にとっては気持の収まりのつかなさはいつまでも残ることになるのだろうが、あくまでも「大震災」と名前をつけられることになる災害との比較で、数の点では少人数で済んでいる。

 ところがである、少人数の死者で済んだものの、そこに理不尽な犠牲を強いられた9歳の女の子が含まれていた。

 死因は自身が通っている小学校のプールと通学路を遮る高さ3.5メートルのブロック塀のプールの高さより1.6メートルある上部分が長さ40メートルに亘って倒壊、いわばブロック塀がほぼ上下真っ二つに割れて、その下敷きとなった。

 問題は地震の激しい揺れが建築基準を満たしているブロック塀の強度を上回った結果のある意味止むを得ない倒壊なのか、建築基準を満たしていなかったことによる強度不足が招いた倒壊なのかである。

 鉄筋が入っていない疑いがあると報じているマスコミ記事もあったが、ニュース画像を点検してみると、鉄筋が切断された状態で入っているのが見える画像を見つけた。(左掲) 

 と言うことは、鉄筋がサビなどによって劣化、強度不足に陥って真っ二つの倒壊を招いた疑いが出てくるものの、鉄筋が入っているという点では、それが定められた太さと本数であるなら、建築基準を満たしていることになる。

 但し他のニュース画像を見ても、ブロック塀を背後から支えて倒壊防止の大部分の役目を果たす控壁(ひかえかべ)の痕跡はどこにも見当たらない。この点、建築基準法を満たしていない疑いがあるが、例え建築基準法を満たしているという固定観念のもとブロック塀を当たり前に立ち続けている工作物と看做していたとしても、ブロック塀の持ち主は劣化の程度を確認する定期点検は欠かすことはできない。

 6月18日夜、ブロック塀の持ち主に当たる高槻市教育委員会が記者会見を行った。「NHK NEWS WEB」(2018年2018年6月19日 0時04分)

 〈建築基準法では高さが2.2メートルを超すブロック塀をつくることは認められておらず、教育委員会は法律に違反していたことを認め〉、〈業者に委託して3年に1度、学校内の設備を点検していたが、ブロック塀については、点検の項目になかった〉と報じている。

 ブロック塀そのものが高さ制限を超える建築基準法違反の状態になっていただけではなく、いつまでも立ち続けるとの固定観念に囚われてのことなのだろう、定期点検を怠っていた。

 大人たちの怠慢な安全管理が地震の問題だけでは片付けることはできない9歳の女の子の理不尽な死を招いた。

 大人たちの怠慢な安全管理はこれだけではない。「NHK NEWS WEB」(2018年2018年6月18日 17時32分)

 文部科学省が補助金を出して耐震化工事を進めてきた対象は、〈あくまで校舎や体育館などの建築物〉であって、ブロック塀やフェンスは対象外となっていると記事は書いている。

 ブロック塀については次のように伝えている。〈文部科学省が作成している学校施設の指針では、「十分な耐用性や地震時の安全性を確保するよう設計することが重要」などと記載されていますが、具体的な耐震の基準などは示されておらず、各教育委員会の判断に委ねられているのが実情です。〉――

 いわば文科省は建物の安全性を主として考えた補助金の支出という形を取っていて、建物以外は通り一遍の指示を出すのみで、各教育委員会、各学校任せにし、任されたその一つである寿栄小学校を管理する高槻市教育委員会は文科省の通り一遍の指示を超える子どもたちの安全を考えた自律的・積極的な安全管理を施すことはしなかった。

 大人たちの怠慢の連鎖としか言いようがない。9歳の女の子はその犠牲となった。

 6月18日、官房長官菅義偉は全国の小中学校の通学路にあるブロック塀の安全点検を文部科学省に指示した。そして安倍晋三は6月18日の関係閣僚会議で、「小学校のブロック塀が崩れ、幼い命が失われる事態となりました。災害発生時における学校の安全確保についても万全を期して頂きたいと思います」と指示している。

 何らかの痛ましい犠牲が起きてからでないと、指示を出さないことも、大人たちの怠慢な安全管理のうちに入る。

 ブロック塀の危険性は大きな地震が起きて倒壊するたびに指摘され、そのうち喉元通れば熱さ忘れるで、その危険性は打ち捨てられる。〈1978年の宮城県沖地震で犠牲となった28人のうち、ブロック塀や石塀、門柱の倒壊による死者は18人だった。〉と6月19日付「河北新報」は伝えている。

 一頃、小型の金属探知機でブロック塀の鉄筋の有無の検査が流行った記憶がある。鉄筋が入っていないなら、その危険性は格段のものがあり、入っていても、コンクリートはただでさえ水を吸い、吸うごとに徐々にコンクリートは劣化して尚更に水を吸って、鉄筋にまで到達してそれを錆びらせるか、あるいはひび割れでも生じようものなら、それが奥の方にまで到達した場合、そこから簡単に水が染み込んで鉄筋を腐らせることもあり、倒壊の危険性を拡大させることになる。

 2016年3月18日の参院予算委員会で、「通学路の交通車両からの安全確保」についての質疑が行われている。

 小野次郎(当時維新の党)「総理、春は、就学、進学、そして転校など、子供さんの環境が大きく変わる季節です。2012年4月には、京都府亀岡市でたくさんの方が亡くなったり負傷する交通死亡事故もありました。

 通学路の安全確保に関する法律案を我々野党は2012年以来5回にわたって国会に提出してきました。子供の安全というのを考えていくと、交通事故だけじゃないということが分かってくるんです。鉄道の線路の危険があったり水路の危険があったり、裏に畑があるんだけどそっちは防犯灯が付いていなかったりして何か痴漢が出るとか変質者が出るとか、だから仕方なく交通量の多い大通りを渡らなきゃいけない、いろんな安全が一体になって子供さんの環境をつくっているということが分かりました。

 我々は、そういったヒアリング、皆さんからのお話も伺った上で、各学区ごとにヒヤリ・ハットマップを共同で作成するなど、行政の目線でやるんじゃなくて、現場目線、生活目線で、お子さん自身や保護者が対等な立場から危険箇所の確認とか改善策の提案を行政当局にできるという画期的な安全協議会の設置をこの法律案で規定しています」

 安倍晋三「子供たちの安全については、大人がしっかりと責任を持っていかなければならないと思います。

 通学路の安全については、平成25年以降、毎年度通知を出しまして、市町村ごとに教育委員会、学校、保護者、警察、道路管理者などによる協議会を設置をすること、そして、協議会においては安全確保のための基本方針の策定や定期的な通学路の点検を行うことなどを求めているところでありまして、その結果、昨年度末の時点では全体の約8割の市町村において協議会が設置をされています。また、各学校においても、児童生徒に対する安全教育を行うとともに、交通安全、災害、防犯などの観点から通学路の安全点検を行っています。

 政府としても、安全教育や通学路の安全確保、関係機関の連携等についてモデル的に取り組む地域、学校を支援し、その成果を全国に広げることとしておりまして、今後とも、これらの施策によって子供たちの命を守り、安全を確保するための取組を進めていきたいと思っています」

 やれ通学路安全の協議会設置だ、約8割の市町村で協議会が設置された、安全確保のための基本方針の策定や定期的な通学路の点検だ、そして「今後とも、これらの施策によって子供たちの命を守り、安全を確保するための取組を進めていきたいと思っています」と約束しているが、2年も経って今更ながらに通学路の安全確保のためのブロック塀の安全点検を全国の小中学校に指示を出さなければならないというのは、安全確保が徹底していなかったことの証明でしかない。

 安全確保の指示は出すだけで役目を終えるわけではない。指示が指示通りに実行されているかどうかの確認を適宜行わなければ、指示が無いに等しくなるだけではなく、安全確保そのものが無いに等しくなって、たちまち怠慢な安全管理と化す。それを行うのは大人であって、その犠牲を今回のように理不尽にも子どもがときに受けることになる。

 その痛ましさを犠牲が生じる前に考えなければ、いつまで経っても同じことをくり返すことになる。

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安倍晋三の真の外交能力は金正恩の「拉致は解決済み」を如何に克服できるかどうかにかかっている

2018-06-18 11:09:36 | 政治
 安倍晋三:従軍慰安婦強制連行否定2007年3月16日閣議決定

「政府が発見した資料の中には、軍や官憲がいわゆる強制連行を
直接示すような記述も見当たらなかった」
とする
“政府発見資料”とは如何なる資料か、公表すべき

 2018年6月16日放送の日本テレビ「ウェークアップ!ぷらす」「安倍首相生出演 拉致問題解決への道筋は?」を流していた。安倍晋三は2018年6月12日シンガポールで開催の「米朝首脳会談」の意義について2点挙げている。

 安倍晋三「最初はですね。金正恩委員長も緊張した面持ちでしたが、後半はリラックスした雰囲気だったですね。そして意味としては二つあって、金正恩委員長が米国のトランプ大統領に完全な非核化、直接約束をしたということ。

 もう一点はトランプ大統領から私が大統領に話した拉致問題について私の考えを金正恩委員長に明確に伝えたという点であります。その二点に意義があります」

 安倍晋三はあとの方で、「最大、世界最強の軍事力を持っているアメリカの大統領にですね、書面で金正恩委員長は非核化、完全な非核化という約束をしました」と述べている。

 金正恩が米朝共同声明に「完全な非核化」の文言を書き記したことを以って「完全な非核化」は「約束」だとの保証を与えている。共同声明でのこの「約束」に反して番組が解説で北朝鮮メディアが非核化について両首脳が段階的、同時行動の原則を遵守することで一致したと報じていることを取り上げて、この認識のズレは今後米朝の間で火種になる可能性があると紹介しているにも関わらず、あるいはかつては北朝鮮に対して「対話の努力は時間稼ぎに利用された」と言って圧力政策一辺倒に傾いていた強硬姿勢から比べて何という楽天主義への転換だろうか。北朝鮮の行動にあれ程懐疑的だったのに、いとも簡単に「約束」は約束として守られるという性善説にかぶれてしまったようだ。

 安倍晋三にとっての米朝首脳会談のもう一つの「意義」、「トランプ大統領から私が大統領に話した拉致問題について私の考えを金正恩委員長に明確に伝えた」ことを挙げている。

 伝えられた金正恩はトランプの会見発言やその他によると、番組も解説し、既に各報道によって明らかにされているが、金正恩は拉致問題を巡る日本との対話にオープンな姿勢を示したこと、「拉致問題は解決済み」という従来の見解を米朝会談では示さなかったことが明かになっている。

 と言うことは、「拉致問題について私の考え」は米朝首脳会談の場で金正恩にトランプから直接伝わったことになる。伝わった上で、拉致問題を巡る日本との対話にオープンな姿勢を示し、「拉致問題は解決済み」という従来の見解を取らなかったと解釈できる。

 では、「拉致問題について私の考え」とは具体的に何を指すのだろうか。そのことが理解できる発言を次に挙げて見る。

 安倍晋三「米朝首脳会談の後ですね、電話に於いて『安倍さんから言われたことについては金正恩委員長に伝えましたよ』という話を頂きました。そしてそのときの委員長の対応等についての詳細な話がございました。

 中味については詳細を申し上げることはできない、今後の交渉にも関わることでございますから、できないのでありますが、大切なことは初めてアメリカの大統領を通して金正恩委員長、最高指導者にどのように拉致問題について考えているか、どのように解決をしていきたいという考え方が伝わったと言うことだと思います」
 
 安倍晋三「今まさにですね、これから日本も米国がスタートしたように信頼関係を醸成していきたいと、こう考えております。今、ここで話をしたこと、私の決意等についても北朝鮮側に伝わったと思います。その反応はどう出てくるかということを先ず待ちたいと、期待を持って待ちたいと思ってます」

 要するに安倍晋三が国会答弁や記者会見、その他で発言している「拉致問題を解決しなければ、北朝鮮の未来を描くことはできない」、「拉致、核、ミサイル問題の解決なしに人類全体の脅威となることで拓ける未来などあろうはずはない」、「拉致問題を解決しなければ北朝鮮の将来はない」といった発言で表している認識が「拉致問題について私の考え」と言うことになり、日本の報道を介して金正恩に伝わっていると確信していることになる。

 この「私の考え」について安倍晋三が「拉致問題が前進しなければ」、あるいは「具体的な成果が見込めなければ」日朝首脳会談は開く意味がないといった趣旨の発言していることから、この番組でも、「最終的にはですね、私自身が金正恩委員長と向か合わなければならない。日朝首脳会談を行わなければならないと考えています。ただ勿論、ただ闇雲に首脳会談を行うのではなくて、拉致問題の解決に資する会談としなければならないと思います」と同じ姿勢を表明しているが、3日前の6月15日の当ブログに、〈拉致問題の前進や具体的な成果が見込めないからと言って、日朝首脳会談を回避するのではなく、「拉致問題は安倍内閣の最重要・最優先の課題で、拉致問題は安倍内閣が解決をする」と機会あるごとに偉そうに言っている手前もあり、“拉致解決なくして北朝鮮の未来はない”とする自身の考えを金正恩に伝えるためにだけでも首脳会談を開く責任を有しているはずだ。〉と書いたが、見当違いの指摘であって、首脳会談を開かずとも、安倍晋三の拉致に関する「考え」は安倍晋三から金正恩にとっくの昔に既にしっかりと伝わっていると見ていることになり、後は金正恩の対応次第ということになる。

 だから、拉致被害者全員の帰国のためにはあとは「金正恩委員長がですね、大きな決断をすることが求められます」と、この番組での相手任せの発言となったのだろう。

 ところが、6月15日夜、国営の対外向けラジオ、ピョンヤン放送が、この番組でも取り上げているが、「日本は既に解決された拉致問題を引き続き持ち出し、自分たちの利益を得ようと画策している。国際社会が一致して歓迎している朝鮮半島の平和の気流を必死に阻もうとしている」(NHK NEWS WEB)との日本政府非難の論評を流したという。

 と言うことは、安倍晋三の「拉致問題についての考え」が金正恩に十分に伝わっているとの見方を取ったとしても、米朝会談でトランプから拉致問題の解決を提起されたのに対して「拉致問題は解決済み」という従来の見解を取らずに拉致問題を巡る日本との対話にオープンな姿勢を示したことは全て偽りであって、金正恩からしたら、そのような姿勢は外交辞令だと言うかも知れないが、実際には安倍晋三の「拉致問題についての考え」は金正恩の腹に何も応えていなかったと解釈しなければならないことになる。

 だからこそのピョンヤン放送の「拉致問題は解決済み」の再主張ということなのだろう。

 勿論、日本政府に対する牽制という意味合いもあるかも知れない。いつの日かの時点で拉致解決の交渉に入るスケジュールを組んでいる可能性は必ずしも否定できない。

 と言うことは、当面の牽制ということになるが、当然、牽制が解けるのを待つのではなく、自らの外交能力に恃んで北朝鮮に積極的に働きかけて「拉致問題は解決済み」を克服しなければならないことになる。

 ましてや牽制ではなく、実際に「解決済み」と決めているなら、尚更に北朝鮮側のその決定事項を克服できるかどうかに安倍晋三の真の外交能力がかかっていることになる。「拉致問題の解決に資する会談としなければならない」などと自身の成果だけを考えて開催か否かを選択するのではなく、拉致被害者にとっての成果をこそ視野に入れて「ただ闇雲に」首脳会談開催を目指して、その場で金正恩と対決し、自身の外交能力を賭けて拉致被害者の全員帰国を果たすべきだろう。

 拉致被害者の全員帰国をスケジュールに入れることができない日朝首脳会談の回避は自身の外交経歴にキズがつくことへの回避でもある。

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安倍晋三の日朝首脳会談開催条件を拉致問題前進に置くのは自身の発言をウソにする最大の責任逃れ

2018-06-15 10:33:52 | 政治
 安倍晋三:従軍慰安婦強制連行否定2007年3月16日閣議決定

「政府が発見した資料の中には、軍や官憲がいわゆる強制連行を
直接示すような記述も見当たらなかった」
とする
“政府発見資料”とは如何なる資料か、公表すべき

 2018年6月12日のシンガポールで開催の「米朝首脳会談」でトランプが金正恩に拉致問題解決の提起を行った際、金正恩が従来から取ってきた「拉致問題は解決済みだ」との態度を示さなかったことから、大きな前進だと見て、安倍晋三は日朝首脳会談実現に意欲を示すことになった。

 ところが、2018年2018年6月14日付「時事ドットコム」記事によると、日朝関係筋が明らかにしたこととして同首脳会談で金正恩が安倍晋三との会談に応じる意向を示していたことが分かったと伝えている。

 もしこのことが事実なら、トランプは安倍晋三との電話会談でこの情報をも伝えていたことになり、安倍晋三の日朝首脳会談実現に向けた意欲は金正恩が「拉致問題は解決済みだ」との態度を示さなかったことだけではなく、会談に応じる意向を示していたことがより直接的な動機となっていたのではないかと窺うことができる。

 日本と共に北朝鮮も参加する2018年6月14、15日のモンゴル・ウランバートルで開催の国際会議「ウランバートル対話」を日朝首脳会談開催に向けた動きを本格化させると同時に相手の出方を探る好機と見たのだろう、派遣した外務省幹部が北朝鮮当局者と接触、短時間意見交換したと2018年6月14日22時04分配信の「時事ドットコム」記事が伝えている。

 どのような内容の意見交換と結果なのか、記事は、〈日本側は、拉致問題について2国間交渉によって早期解決を目指す立場を伝えた。北朝鮮側の反応について、外務省幹部は「(従来の姿勢と)大きな変化はなかったようだ」と語った。〉とのみ紹介している。

 記事が解説している「従来の姿勢」とは、「拉致問題は解決済み」という姿勢のことなのは断るまでもない。

 この記事配信前に安倍晋三は首相官邸で拉致被害者家族会と面会している。「首相動静」を見ると、時間は午後1時33分から同2時19分までの46分の面会となっている。家族会に対してどのような発言をしたのか、2018年6月14日 14時23分配信の「NHK NEWS WEB」記事から見てみる。

 蛇足だが、家族会との面会の終了時間が14時19分。記事配信を面会途中時間から計算すると、27分でネット記事は配信されたことになる。終了時間後の配信だとすると、たったの4分で配信されたことになるが、4分は早過ぎるように思える。現在では発言を携帯で録音して、音声をメール添付してそのまま送信ができるようになっているから、出来事発生からかなりの短時間でネット記事は配信できる。

 安倍晋三「今回の米朝首脳会談では、まずは核の問題について、キム委員長が朝鮮半島の完全な非核化をトランプ大統領に明確に約束したという意味では大きいだろうと思う。米朝首脳会談が、北東アジアの平和と安定に向けた一歩であると感じている。

 米朝首脳会談を機会として捉え、あとはまさに日本の問題として日本が北朝鮮に直接向き合い、拉致問題を解決していく決意だ。もちろん日朝の首脳会談は、拉致問題が前進していくものにならなければならず、そうしたことも踏まえながら対応していきたい」

 要するに当事国である「日本の問題として」拉致解決に向けた金正恩との日朝首脳会談に意欲を示す一方で、北朝鮮側が拉致解決に積極的な姿勢を見せない限り日朝首脳会談は開く意味がないとの趣旨の発言となっている。

 だとすると、モンゴル・ウランバートルで外務省幹部が北朝鮮当局者と接触、拉致問題の早期解決に向けた日本の立場を伝えたのに対して相手の姿勢が従来と「大きな変化はなかったようだ」と言うことなら、日朝首脳会談は直ちには開かれない状況にあるとみることができる。

 但しウランバートルでの日朝接触と意見交換の外務省に入った結果報告が首相官邸を通じて拉致被害者家族会との面会前に安倍晋三に伝えられていたのかどうかは分からない。伝わっていたなら、「日朝の首脳会談は、拉致問題が前進していくものにならなければならない」との発言は自身の外交失点を回避するために当然の内容ということになるが、例え伝わっていなかったとしても、2014年9月19日の「内外情勢調査会」で北朝鮮に対して「今後とも、『対話と圧力』、『行動対行動』の原則を貫きながら、全ての拉致被害者の帰国という具体的な成果につながっていくよう、全力を尽くしてまいります」と発言しているし、10日後の2014年9月29日の 所信表明演説でも、「北朝鮮が、拉致被害者を含む全ての日本人に関する包括的、全面的調査を開始しました。全ての拉致被害者のご家族が、ご自身の手で肉親を抱きしめるその日まで、私たちの使命は終わりません。今回の調査が、全ての拉致被害者の帰国という具体的な成果につながっていくよう、『対話と圧力』『行動対行動』の原則を貫き、全力を尽くしてまいります」(文飾当方)と発言、拉致解決の最大・最終目標を「全ての拉致被害者の帰国という具体的な成果」に置いている関係から、それを見込むことができない日朝首脳会談は、当然、回避されることになるために、伝わっている伝わっていないは関係ないことになる。

 とは言うものの、「拉致問題が前進しなければ」、あるいは「具体的な成果が見込めなければ」日朝首脳会談は開く意味がないといった趣旨の発言は拉致解決に向けてこれまで言ってきた自身の別の発言を裏切るものとなる。

 2015年4月26日午後の拉致被害者家族会や支援団体「救う会」主催の「国民大集会」

 安倍晋三「大切なことは『拉致問題を解決しなければ、北朝鮮が未来を描いていくことはできない』ということを、北朝鮮にしっかりと理解させていくことだ。ご家族と被害者の方々が抱き合う日が訪れるまで私の使命は終わらない。『対話と圧力』『行動対行動』の原則を貫き、引き続き全力を尽くす」(NHK NEWS WEB/2015年4月26日 17時42分)


 2015年3月20日の参議院予算委員会外交・安全保障集中審議。

 中原自民党副幹事長「国際社会で北朝鮮の人権侵害問題に注目が集まれば拉致問題への関心も高まる。北朝鮮が拉致問題を解決しないかぎり、国際圧力は続くということを理解させるべきだ」

 安倍晋三「すべての拉致被害者のご家族がご親族をその手で抱きしめる日がやってくるまで、我々の使命は終わらない。国際的にも拉致問題に対する理解が深まるなかで、この問題を解決しなければ、北朝鮮の未来を描くことはできないという認識に北朝鮮側が立つよう強く求めていく。北朝鮮の特別調査委員会が正直かつ迅速に調査結果を日本側に報告するよう強く求めていく」(NHK NEWS WEB/2015年3月20日 12時50分)

 これはほんの一例に過ぎない。2015年4月4日、安倍晋三は拉致被害者家族と首相官邸で面会している。

 安倍晋三「大切なことは、拉致問題を解決しないと、北朝鮮は未来を描くことが困難だと認識させることです。すべての拉致被害者が再び日本の地を踏むことができるよう全力を尽くしたいと思います。

 拉致問題が解決しない限り我々の使命は終わらない。家族も被害者も高齢化しており、一刻の猶予もゆるさないとの認識のもと交渉していきたいと思います」(救う会全国協議会) 

 2017年9月20日の第72回国連総会に於ける安倍晋三一般討論演説。北朝鮮の核実験やミサイル発射に対して「対話による問題解決の試みは一再ならず無に帰した」と強く批判した上で次のように続けている。

 安倍晋三「議長、ご列席の皆様、北朝鮮はアジア・太平洋の成長圏に隣接し、立地条件に恵まれています。勤勉な労働力があり、地下には資源がある。それらを活用するなら、北朝鮮には経済を飛躍的に伸ばし,民生を改善する途があり得る。
 そこにこそ、北朝鮮の明るい未来はあるのです。

 拉致、核、ミサイル問題の解決なしに人類全体の脅威となることで拓ける未来などあろうはずはありません。北朝鮮の政策を変えさせる。そのために私たちは結束を固めなければなりません」

 2017年9月25日の「この解散は『国難突破解散』であります」と命名した解散記者会見。

 安倍晋三「北朝鮮には勤勉な労働力があり、資源も豊富です。北朝鮮が正しい道を歩めば、経済を飛躍的に伸ばすこともできる。しかし、拉致、核・ミサイル問題の解決なくして、北朝鮮に明るい未来などあり得ません。北朝鮮にその政策を変えさせなければならない。そのための圧力であります。

 圧力の強化は北朝鮮を暴発させる危険があり、方針転換して対話をすべきではないかという意見もあります。世界中の誰も紛争などを望んではいません。しかし、ただ対話のための対話には、意味はありません」

 その他にも、「日本が要求している拉致の問題について答を出さなければ、あなたの政権、あなたの国は崩壊しますよ」とか、「北朝鮮に圧力をかけて、この問題を解決しなければ北朝鮮の将来はないと、そう考えるようにしなければならない」とか発言している。

 これらの発言を見て既にお分かりと思うが、拉致に関しての全ての発言は“拉致解決なくして北朝鮮の未来はない”といった自身の考えで統一している。

 だとすると、日朝間の実務者協議の結果、拉致問題の前進や具体的な成果が見込めないからと言って、日朝首脳会談を回避するのではなく、「拉致問題は安倍内閣の最重要・最優先の課題で、拉致問題は安倍内閣が解決をする」と機会あるごとに偉そうに言っている手前もあり、“拉致解決なくして北朝鮮の未来はない”とする自身の考えを金正恩に伝えるためにだけでも首脳会談を開く責任を有しているはずだ。

 自民党宮城県連の県議と国会議員を首相公邸に招いて昼食会を行った3日前の6月13日も、「拉致問題は安倍内閣の最重要課題であり、自分の責任で何としても拉致されているすべての国民を日本に取り戻して家族と会わせて解決する」(NHK NEWS WEB)と発言している。

 日朝首脳会談の開催条件を拉致解決という“成果”に置いていたのでは一歩も前に進まない恐れが出てくるし、その恐れが現実のものとなった場合、偉そうに言っている自身の発言をウソにすることにもなるし、当然、最大の責任逃れとなる。

 要するに日朝首脳会談を開いて金正恩直接にか、あるいは日朝実務者協議を開いて北朝鮮の実務者から金正恩に伝わる間接的な方法で“拉致解決なくして北朝鮮の未来はない”の安倍晋三自身の考えを最終的に金正恩に認識させることができるか否かの外交能力に拉致解決はかかっていることになる。

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トランプの拉致提起に金正恩が「拉致は解決済み」を口にせずを以って安倍晋三が萩生田光一に代弁させた「大きな前進」

2018-06-14 11:42:21 | 政治
 安倍晋三:従軍慰安婦強制連行否定2007年3月16日閣議決定

「政府が発見した資料の中には、軍や官憲がいわゆる強制連行を
直接示すような記述も見当たらなかった」
とする
“政府発見資料”とは如何なる資料か、公表すべき

 2018年6月12日、シンガポールで歴史上初めての「米朝首脳会談」が開催され、安倍晋三は会談内容の詳細を知るために同日、トランプと電話会談を行った。翌6月13日、安倍晋三の腰巾着、自民党幹事長代行萩生田光一が安倍晋三と会談。会談後の対記者談発言。

 「NHK NEWS WEB」(2018年6月13日 16時26分)

 萩生田光一「トランプ大統領が単に拉致問題を提起しただけではなく、今まで『拉致問題は解決済みだ』と公の席で言ってきたキム・ジョンウン委員長からそういう反応がなかった。

 これは大きな前進だ。北朝鮮とこれからさらに話をするという確認ができたと思う。日本が前面に出て、しっかり拉致問題の解決に向けた努力をしてもらいたい」

 記事解説。〈キム委員長がトランプ大統領との会談で拉致問題は解決済みだという従来の見解を示さなかったことを明らかにしました。〉

 要するにトランプが安倍晋三に前以って依頼されていたとおりに米朝首脳会談で金正恩に対して日本との間で懸案事項となっている拉致問題を取り上げ、その解決を図るべきだと問題提起した。対して金正恩はトランプに北朝鮮が従来の立場としてきた「拉致問題は解決済み」との態度は取らずに首脳会談後のシンガポールでの記者会見でトランプが「拉致問題は安倍総理大臣にとって大事な問題だ。この問題を提起した。彼らは取り組んでいく。共同声明には記されなかったが、取り組んでいくことになる」(NHK NEWS WEB)と発言していることから、「日本との間で解決のための交渉に取り組んでいく」とでも応じたのだろう。

 金正恩のこのような反応を以って萩生田光一は「北朝鮮とこれからさらに話をするという確認ができたと思う」と発言することになったはずだ。

 但し安倍晋三はトランプとの電話会談後に首相公邸で記者団から質問を受けた会見(首相官邸サイト)では金正恩が「拉致問題は解決済み」との態度を取らなかった云々については何も触れていない。

 安倍晋三「拉致問題についてでありますが、まず私から拉致問題について、米朝首脳会談においてトランプ大統領が取り上げていただいたことに対して、感謝申し上げました。

 やり取りについては、今の段階では詳細について申し上げることはできませんが、私からトランプ大統領に伝えた、この問題についての私の考えについては、トランプ大統領から金正恩委員長に、明確に伝えていただいたということであります。

 この問題については、トランプ大統領の強力な支援を頂きながら、日本が北朝鮮と直接向き合い、解決していかなければいけないと決意をしております」――

 トランプの問題提起に対して金正恩が「拉致問題は解決済み」の態度を取らなかったことを萩生田光一が「大きな前進だ」と解釈したのは安倍晋三解釈の受け売りであろう。安倍晋三が「大きな前進」と見ていないのに腰巾着の方で「大きな前進」と吹聴するのは分を超えることになる。

 安倍晋三はトランプとの電話会談後に記者たちに「大きな前進」と見る希望を披露せずに萩生田光一の口を通して「大きな前進」とする自らの希望をなぜ示すことになったのだろう。答は一つ、その希望が単なる希望的観測で終わった場合、“外交の安倍”をウリにしている手前、カッコつかないことになるからだろう。

 一方で“外交の安倍”の金箔が剥げ落ちないよう用心し、その一方で同じく“外交の安倍”を自任している自尊心から拉致解決に何らかの希望を拉致被害者家族や国民に示さないと立場がなくなることからの窮余の策が萩生田光一の口を通して「大きな前進」と言わしめたということかもしれない。

 果たして金正恩がトランプの拉致問題提起に対して「拉致問題は解決済み」とは発言しなかったことを以って安倍晋三の見立てどおりに「大きな前進」と解釈可能だろうか。

 拉致解決の真の障害は、拉致被害者の生存が条件となるが、そのような条件下で北朝鮮側が「拉致問題は解決済み」という態度を取っていることが原因となっているのではなく、安倍晋三側が北朝鮮の完全非核化に向けて国連安保理決議の厳しい経済制裁履行の音頭を取っていることに加えて日本も独自の経済制裁を課していることが原因であって、その結果として「拉致問題は解決済み」という態度を誘発させているということであろう。

 要するに原因と結果を正しく理解していないようだ。

 正しく理解した上で、結果に過ぎない「拉致問題は解決済み」という態度を取り下げるよう求めていくためには安倍政権側が拉致解決の真の障害となっている原因たる北朝鮮に対する完全非核化要求と経済制裁等を用いた圧力政策の放棄以外に方法はないはずだ。

 もし安倍晋三が自らの完全非核化要求の対北朝鮮圧力一辺倒政策がトランプの対北外交政策を大いなる力として北朝鮮側の軍事的暴発を誘発させることなく成功して完全非核化が実現すると見ているなら、成功こそが拉致解決の真の障害をなしている原因そのものの除外を意味することになり、障害の結果として北朝鮮側が態度として示していた「拉致問題は解決済み」を無効とすることができる。

 いわば原因を先に解決することで、結果の無効を待たなければならない。しかし米朝首脳会談後の共同声明は非核化に向けた具体的行動や検証方法には触れていないという。金正恩が真に完全非核化の意思があるのかどうかも明らかとはなっていない。

 原因の解決を成すまでには道のりは遠いということである。当然、金正恩が「拉致問題は解決済み」の態度を示さなかったからと言って、安倍晋三がそのことを以って拉致解決に向けた「大きな前進」だと腰巾着萩生田光一に代弁させること自体、甘い考えであり、早計に過ぎる。

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