安倍晋三の東京五輪1年程度延期はアスリートファーストで決めたことか、自らの任期内開催を優先させた自己利害の自己都合なのか

2020-03-30 11:03:08 | 政治
 2020年東京オリンピック・パラリンピックの延期を余儀なくさせた原因は新型コロナウイルスの世界的な感染拡大であることは誰もが承知しているはずである。当然、延期の期間は世界的な感染拡大の終息の時期か、終息に近い時期を予測して判断しなければならない。

 このことも誰もが承知しているはずであり、誰もが承知していなければならない。1年後にオリンピックを開催しても、世界的な感染がやまなければ、延期が無駄となって、開催が困難となり、さらに延期するか、あるいは中止するか、改めて決めなければならなくなる。

 つまり3月24日夜の安倍晋三とIOCトーマス・バッハ会長との間の電話会談で1年程度の延期を決めたということは来年の夏には新型コロナウイルスの世界的な感染拡大が終息しているか、終息とまでいかなくても、一定程度以上に収まっていて、どの国でも人の移動が制限を受けることなく自由に行われていることを予測してのこととなる。人の移動の自由はアスリートたちの練習の自由を保障する。

 人の移動の制限の解除は世界中どこでも、オリンピックが延期開催される時期よりも何ヶ月も前でなければ、アスリートたちは本番で最高のパフォーマンスを目指すための前以ってのトレーニングを困難とするか、不可能とすることになる。オリンピック・パラリンピックがスポーツに於ける世界の祭典である以上、主催国日本のアスリートだけが十分にトレーニングできればいいということにはならない。

 また、終息か、終息に近い状況を迎えることができてこそ、オリ・パラの開催を安倍晋三が自らの発言を勇ましく見せる効果的な言葉の一つとして使っている「人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証」とすることができる。

 3月25日の参院予算委員会で立憲民主党の田島麻衣子が1年延期を「来年9月にある自民党総裁の任期に合わせたものですか」と質問したところ、五輪相の橋本聖子が「全く関係することではありません」と否定したと「asahi.com」記事が伝えていた。You Tubeから動画を探し出して確かめてみた。一部抜粋。この日の委員会には安倍晋三は出席していない。

 田島麻衣子「先ず東京オリンピック・パラリンピックの延期について橋本大臣に伺います。延期を1年程度と決めたのはなぜなのですか。それについて客観的な根拠はありますか」

 橋本聖子「昨夜ですけど、安倍総理とバッハ会長との電話会談が行われました。コロナウイルスの感染を受けて開催するのは困難な状況にある。安倍総理の方からバッハ会長に対して1年程度の延期を提案させて頂いたということであります。そしてすぐにバッハ会長からは100パーセント同意をするということで、その後のIOCの理事会で1年程度の延期ということが決定されたということであります」

 橋本聖子が1年延期の「客観的な根拠」を述べずじまいだったから、田島麻衣子が再度尋ねると、安倍晋三が1年延期を提案して、IOCが協議をして決定した、その決定に添って政府として粛々と勘案をしていくといった趣旨の答弁、1年程度の延期決定としたIOC協議を1年とした「客観的な根拠」としているが、安倍晋三がトーマス・バッハに提案の「1年程度」がそもそもの始まりなのだから、安倍晋三の胸の内にあった「1年程度」という年数に対する「客観的な根拠」について答えなければならないが、そのようには答えていない。

 安倍晋三の「1年程度」が私的な利害からの計算ではなく、公的な利害に立った計算であるなら、明確に答えることができた「客観的な根拠」のはずだが、答えることができないのだから、「客観的な根拠」の程度が知れることになる。

 田島麻衣子は「1年程度」が安倍晋三の私的な利害に立った計算と見たのだろう。

 田島麻衣子「来年9月にある自民党総裁の任期に合わせたものですか」  

 橋本聖子「全く関係することではありません。来年のオリンピック東京大会、パラリンピック東京大会に向けてIOC、そして組織委員会等が様々な競技日程というものを考えながら、IOCの理事会で決定に至ったということであります」

 IOCが提案して安倍晋三が受け入れた「1年程度」というわけではないのだから、IOCの協議や決定に関係しない場所から「客観的な根拠」を明らかにしなければならないが、IOCが協議・決定した「1年程度」に「客観的な根拠」を置くゴマカシで凌いでいる。

 安倍晋三は3月24日夜のトーマス・バッハとの電話会談後に首相官邸で「囲み会見」を開いている。

 安倍晋三「先程、森会長、小池都知事、橋本大臣同席の下に、バッハIOC会長と電話会談を行いました。まず、改めて、東京オリンピック・パラリンピックの中止はないということについて、バッハ会長と確認いたしました。

 そしてその上で、開催国日本として、東京五輪について、現下の状況を踏まえ、世界のアスリートの皆さんが、最高のコンディションでプレーでき、そして、観客の皆さんにとって、安全で安心な大会とするために、おおむね一年程度、延期することを軸として、検討していただけないか、という提案をいたしました。

 バッハ会長から、100パーセント同意する、という答えをいただきました。そして遅くとも2021年の夏までに東京オリンピック・パラリンピックを開催するということで合意いたしました。今後、人類が新型コロナウイルス感染症に打ち勝った証として完全な形で東京オリンピック・パラリンピックを開催するために、IOCバッハ会長と緊密に連携していくということで、一致したところであります。日本は日本として、開催国の責任をしっかりと果たしていきたいと思います。

 先ずは現下のこの感染症の広がりの状況を見る中において、これは、年内ということは難しいだろうということにおいて、1年程度ということにいたしました。その上において、遅くとも2021年の夏までにということで合意をしたところであります。そして、この目標の上において、しっかりと会場等の対応について、調整をしていくことになると思いますし、この後、IOCの理事会が開催されると思います。」

 安倍晋三は「1年程度」としたことの理由を二つ口にしている。

 「世界のアスリートの皆さんが、最高のコンディションでプレーでき、そして、観客の皆さんにとって、安全で安心な大会とするため」が一つ目。「現下のこの感染症の広がりの状況を見る中において、これは、年内ということは難しいだろうということにおいて、1年程度ということにいたしました」が二つ目。

 だが、この一つ目も二つ目も、新型コロナウイルスの世界的な感染状況の趨勢、成り行きにかかっている。当然、安倍晋三の方から提案した「1年程度」の延期で新型コロナウイルスの世界的な感染は「人類が新型コロナウイルス感染症に打ち勝った証として、完全な形で東京オリンピック・パラリンピックを開催」できる状況にまで終息していると見ていることになる。

 では、このことの「客観的な根拠」は?安倍晋三自身の口から確かめてみる。 

 2020年3月27日参院予算委員会

 石橋通宏「先ず安倍総理に伺います。東京オリンピック・パラリンピックの延期、1年程度ということを先ず最初に言われたそうですが、その根拠を教えてください」

 安倍晋三「東京大会を延期する期間についてではですね、世界のアスリートが万全のコンディションでプレーを行い、そして観客にとって安全で安心な大会としていくためには世界に於ける感染の広がりを勘案するとですね、数ヶ月程度の時間では困難であり、ある程度の時間を要せざるを得ないと考えたところであります。

 他方で例えば2年といった余りにも長期な延期となれば、これはもはや2020年東京大会へのモメンタム(勢い)が失われ、別の大会のようになってしまうという懸念があったのであります。そのため先日(3月24日)のIOCバッハ会長との電話会談に於いて私から概ね1年程度の延期を提案し、遅くとも2021年の夏までとの合意に至ったところでございます」

 石橋通宏「東京で開催する以上は東京のモメンタムは失われないんじゃないですか」

 安倍晋三「これはアスリートの皆さんがですね、2020年をめがけて最高のコンディションも作ってきているところでございます。そしてそれがまた2年後ということになればですね、これはまた、かなり、初めから遣り直さなきゃなんないということにも繋がってくるわけでございまして、そん中に於いてですね、様々な疑問があるということは承知をしておりますが、先程申し上げた理由でですね、私から1年程度を軸として検討して貰えないかということを申し上げたところでございます」

 石橋通宏「来年の秋ではダメなんでしょうか」

 安倍晋三「1年程度を軸としてということを私が申し上げ、そしてバッハ会長からは、遅くともですね、夏までにとというお話があり、最終的にですね、遅くとも夏までにということで合意がなされたところでございます」

 石橋通宏「ちょっと根拠が分からないんですが、真夏で昨年も大問題になったマラソンの札幌開催等も決めたわけです。真夏にやるんですか」

 安倍晋三「それはですね、また今IOCに於いてですね、具体的な時期については議論がなされていくものと承知をしておりますが、IOC組織委員会に於いてですね、最終的な調整がなされていくものと考えております」

 石橋通宏「バッハ会長は夏に限定していない、2021年なら、全ての選択肢がテーブルにあると発言されていますが、その通りでよろしいですか」

 安倍晋三「バッハ会長、今申し上げましたように遅くとも2021年の夏までに大会を開催するということで合意をしたところであります。具体的な開催時期については今後IOC大会組織委員会、東京都の間で検討し、決定されることになるわけでございますが、なおバッハ会長は遅くとも2021年の夏までにとの内容として2021年の夏季の前、または夏季と発言したと承知をしております」

 石橋通宏「確認ですが、先程世界のアスリートをという話もありましたが、専門家、有識者のご判断、ご助言は頂いたのでしょうか」

 安倍晋三「いわば専門家と言う方々の助言は頂いていないところございますが、これはある程度、この判断を、政治的に判断をしなければいけないわけであります。それぞれですね、それぞれ、いわば1年、2年、あるいは半年に於いて、それぞれのご意見があるわけでございますが、どっかで判断をしなければいけないと考えたところでございます」

 石橋通宏「しかしIOCのバッハ会長もWHOの判断を云々と仰ってましたよね。IOCはWHOと相談されたのでしょうか」

 安倍晋三「いわばIOCがWHOとですね、相談しているかどうかということについてはIOCがWHOと連携をしながらというふうにおっしゃっているというふうに承知をしているところでございます。いわば私の提案を、の上にですね、バッハ会長は遅くても来年の夏までにという判断をされた、ということではないかと思います」

 石橋通宏「よく分かりませんが、今日、脇田専門家会議座長、(国立感染症)研究所所長に来て頂いております。ありがとうございます、お忙しい中。

 今世界的な広がりが拡大しています。途上国も含めて、欧米がかなり広がっていますが、南アフリカ等でも広がりを見せているということで大変懸念されますが、現在は欧米を中心とした世界的な広がりの状況をどう見ておられるのか、教えてください」

 脇田隆字「新型コロナウイルス感染症につきましては昨年度末から中国湖北省、武漢市から流行が始まり、中国では流行が終息しつつあるもののの、現在で欧米を中心とした世界的な流行となり、3月26日時点で世界全体の感染者数は41万4279名。死亡者数は1万8440名となってございます。今のところ世界的な流行の終息はなかなか予測は難しいという状況でございます。

 石橋通宏「現時点で予測は難しい。過去の大きな世界的な感染症と比較をして今後の展開の予測、終息までの予測、どんな状況なんでしょうか」

 脇田隆字「今ご質問の過去に流行した主な感染症との比較でございます。あのサーズにつきましては感染者数が8096名、死亡者数774名、マーズにつきましては感染者数が2494名、死亡者数が858名となっております。で、サーズ、マーズにつきましては日本の感染者はございませんでした。

 で、サーズはですね、平成14年11月に初めて確認をされまして、終息宣言まで8か月がかかっております。それから新型インフルエンザにつきましては平成21年4月に初めて確認をされ、終息宣言まで1年4ヶ月を要していますで、マーズついては未だに中東地域に於いて流行が継続していると言うことを承知しております。

 終息までの期間ということでございますけども、現在の感染状況を踏まえますと、我が国に於いても流行の終息等の見通しについて考える段階にはまだないというふうに考えております。

 一方で武漢に於ける強力な外出禁止、あるいは交通遮断による都市封鎖による流行の封じ込め、及びこれまでの日本の流行状況などの解析から。この新型コロナウイルス感染症に対する有効な対策も徐々に明らかになってきております。今ではお願いしてますとおり、密閉・密集・密接な場所を徹底的に避けるということによりクラスターの発生を予防して、また、現在国内の複数地域で発生しているクラスターを早期発見をして早期対応する。そしてクラスターの連鎖による感染拡大を防止することをやります。

 また大規模イベントを自粛して頂くことによりましてメガクラスターの発生を回避すること、さらに医療体制の強化によりまして、患者の重症化予防に取り組んでいくということがこの感染対策と非常に重要だと思っております」

 石橋通宏「重ねてお聞きしますが、心配なのは途上国です。これから広がりがある。医療体制、先程言われたような体制が取れない。そういったところにこれからさらに感染が拡大していく。過去の感染症と比較しても、1年、2年の話ではない懸念、あるんじゃないでしょうか」

 脇田隆字「只今の委員のご質問でございますけども、途上国の感染状況の把握というのは、これ、さらに検査の状況等がなかなか報告もされないという難しい状況になっておりますので、今後の見通しについてもなかなか難しいと考えおります」

 石橋通宏「総理、聞いておられたと思います。分からないんです。1年なのか、2年なのか。とりわけこれから途上国、南米、そして南アフリカ含めて広がっていたときに来年になるか分からない。終息するか分からない。その状況で本当に来年の夏って断言できるんでしょうか。

 橋本大臣。アスリートの皆さんのことを第一に考えたときに途上国でこれから本当にいつ終息できるか分からない。それからアスリートの皆さんがもう一度、準備をされる。そういったときに本当に世界の全てのアスリートの皆さんのことを考えたときに1年以内にできるんでしょうか。ご意見をお願いできないでしょうか」

 橋本聖子「アスリートからの観点ということでお聞きを頂いたというふうに思いますけれども、4年に一度のこの大会に向けて万全を期して4年サイクルで準備をしているというのがアスリートであります。ただ、今回のこの世界的にコロナウイルスが拡大しているという状況を踏まえて先週アスリートからも、大変な懸念が示されていたところでありまして、先ずは1年程度の延期というふうにに決定をしたことによって各国アスリートから1年程度という延期が示されたけれども、そのことに於いて先ずは示されたことに、あの、アスリートたちは世界各国から称賛の声が上がっておりました。その中でアスリートたちが、今後どのように準備をしていくかというふうに考えたときには終息から次へのアプローチと言いますか、準備期間というものを十分に取っていきたいというふうに考えるのは、当然だというふうに思っております。

 ただ、1年以上ということになりますと、やはり総理のお話がありましたとおり、もはや2022年、20年の大会から1年が限界であって、その以上のということになりますと、当然別のものとして、あるいは選考委員会ですとか、そういったことも遣り直さなければいけないというような新たな問題が生じていくということになりますと、IOCが決定をした、先ずは1年程度の延長・延期というのがアスリートたちが望ましいというふうに現段階では考えていることだと思います」、

 石橋通宏「先程来の話でとりわけ途上国、これから感染が広がっている国々のアスリートの皆さん、どういう対応できるのか、そのことを考えれば、いや、十分な体制を取って、十分な万全の体制をアスリートの、世界のですよ、世界の、そうすれば、そのことを本当に考えれば、1年以内にできるのかと言われれば、先程脇田座長にも言って頂きました、『分からい』。だから来年の秋、2年という選択肢も、本来であれば、しっかり専門家のご意見を聞いて、議論すべきでは、なかったのか、いうふうに強く思います。

 是非、世界のアスリートのためと言われれるのであれば、総理、そのことも含めて、ちゃんとした議論をして頂きたい。そのことは改めて追及していきたいと思います」

 石橋通宏は安倍晋三に延期期間を「1年程度」とした根拠を尋ねたが、安倍晋三はIOC会長のトーマス・バッハとの電話会談後の囲み会見とほぼ同じ内容を述べたのみである。いわば世界のアスリートのコンディショニング(スポーツパフォーマンスを最大限に高めるために、筋力やパワーを向上させつつ、柔軟性、全身持久力など競技パフォーマンスに関連するすべての要素をトレーニングし、身体的な準備を整えること)の問題、そして現在の感染状況から見て、早期の開催(=年内の開催)は困難であることを根拠にした「1年程度」であり、新型コロナウイルスの世界的な感染状況が終息か、終息に近い状況となることを見通して根拠づけた「1年程度」ではないことを結果的に明らかにしている。

 しかもこの「1年程度」は専門家の助言に基づいた延期幅というわけではなかった。

 石橋通宏「確認ですが、先程世界のアスリートをという話もありましたが、専門家、有識者のご判断、ご助言は頂いたのでしょうか」

 安倍晋三「いわば専門家と言う方々の助言は頂いていないところございますが、これはある程度、この判断を、政治的に判断をしなければいけないわけであります。それぞれですね、それぞれ、いわば1年、2年、あるいは半年に於いて、それぞれのご意見があるわけでございますが、どっかで判断をしなければいけないと考えたところでございます」

 新型コロナウイルスの世界的な感染状況の今後を専門家の助言に基づいた疫学的な見地から判断した上での「1年程度」ではなく、オリンピックの延期開催をいつにするかに関係した政治的判断のみで感染状況の今後を占うことも、処理することもできないことを棚に上げて、いわば世界的な感染状況から離れた政治的判断で「1年程度」とするに至ったと、安倍晋三は間接的に証言したことになる。

 要するに感染状況の今後の見通しとは無関係の政治的判断であることだけは分かった。当然、政府、あるいは安倍晋三個人の利害に関わる政治的判断ということになる。

 と言うことなら、「1年程度」の延期の根拠を「世界のアスリートの皆さんが、最高のコンディションでプレーでき、そして、観客の皆さんにとって、安全で安心な大会とするため」に置いていることも、「世界のアスリートが万全のコンディションでプレーを行い、そして観客にとって安全で安心な大会としていくため」としていることも、自分たちの利害を隠し、その利害を綺麗事とするためにアスリートや観客をあざとく利用していることになる。

 石橋通宏は新型コロナウイルスの世界的な感染状況との関係から延期幅を「1年程度」とすることが疫学的な知見に基づいて妥当かどうか、国立感染症研究所所長であり、政府の新型コロナウイルス感染症対策本部新型コロナウイルス感染症対策専門家会議座長である脇田隆字の口を借りて証明しようと試みた。

 脇田隆字の答は過去に流行したサーズ、マーズ、新型インフルエンザ等の感染規模、感染期間、人体への感染の影響等で得た知見との比較で、「今のところ世界的な流行の終息はなかなか予測は難しいという状況でございます」、あるいは「終息までの期間ということでございますけども、現在の感染状況を踏まえますと、我が国に於いても流行の終息等の見通しについて考える段階にはまだないというふうに考えております」であった。

 脇田隆字のこの答からも、延期の「1年程度」が感染状況の今後の見通しとは無関係の政治的判断であることが分かる。

 確かに2年延期とか、中止とかは2020年の7、8月を目標にトレーニングを積んでいたアスリートに新たな困難をもたらす。年齢的な困難さに直面するアスリートもいるだろうし、年齢的な困難さは体力的な困難さとなって振り掛かってくる。それらの困難さを排除できたとしても、若手の台頭によって活躍の勢力図が変わってしまうということもあり得る。

 但しこれらの困難さを全て回避できたとしても、新型コロナウイルスの世界的な感染が終息か、終息に近い状況を迎えなければ、開催そのものが困難となる。そしてこのことを考慮に入れない、政府の利害からの「1年程度」という政治的判断だとしたら、コロナウイルスの世界的な感染によって急失速している経済をオリンピック景気でV字回復させることを狙ったのか、安倍晋三個人の利害からの政治的判断だとしたら、田島麻衣子が3月25日の参院予算委員会で五輪相の橋本聖子を追及したように時期的に見ても、いくら本人が否定しても、「来年9月にある自民党総裁の任期に合わせた」個人の利害に基づいた政治的判断から外すことはできない。

 安倍晋三は2020年3月28日の夕方6時から首相官邸で新型コロナウイルスの感染拡大防止に向けた政府の取り組みを説明する記者会見を開いている。

 「記者会見」

 NHK松本記者「東京オリンピック・パラリンピックの開催が1年程度、延期になったということですが、開催には新型コロナウイルスの感染終息が前提となると思います。

 先ほど総理は長期戦への覚悟を語っていらっしゃいましたけれども、長い闘いでも、やはり出口が必要だと思います。その出口となる終息の見通しあるいは目標、これを示すべきだと考えますけれども、いかがお考えでしょうか。

 また、その延期によって、政治スケジュールのほうが流動化したという指摘もあります。来年秋には総理の自民党総裁としての任期、また衆議院議員の任期も満了します。衆議院解散の判断は、オリンピックと同様、感染の終息が前提となるのか。また、その終息した場合に、年内にも行い得るのか、お考えをお聞かせください」

 安倍晋三「まず、オリンピックを遅くとも来年の夏までに開催するということで、バッハ会長と合意をしました。おおむね1年間、延期をしていくということなのですが、この判断、決断については、先般、G20においても、共同声明において、この決断を称賛すると強い支持が表明されたところでありますが、一方、ではいつこのコロナとの闘いが終わるのか、終息するのか。今、答えられる、現時点で答えられる世界の首脳は一人もいないのだろうと。私もそうです。答えることは残念ながらできません。

 と同時に、オリンピックを開催するためには、日本だけがそういう状況になっていればいいということではなくて、正に世界がそういう状況になっていかなければならないわけであります。

 そこで、先般のG7やG20でも強く主張したところでありますが、まずは治療薬とワクチンの開発に全力を挙げるべきだ。先ほど申し上げました、今、治療薬については、日本は相当、今、進んでいる。治験等に向けて進んでいると思います。同時に、またワクチンについても、CEPI(感染症流行対策イノベーション連合)やGavi(Gaviワクチンアライアンス)を通じて、国際社会とともにワクチンの開発を急いでいます。そういうものが出てくることによって、ある程度、終息に向かってめどをただしていきたいと、こう思っているところであります。

 そして、その後のスケジュールについてお話がございました。確かに来年、自民党の総裁としての私の任期も来ますし、衆議院の任期等が来ますが、今は我々はそういうことを一切、頭の中には置かず、頭から外して、この感染症との闘いに集中したいと思っています」

 NHKの松本記者は「開催には新型コロナウイルスの感染終息が前提となる」と言い、「出口となる終息の見通しあるいは目標、これを示すべきだと考えますけれども」と要請した。

 対して安倍晋三は「いつこのコロナとの闘いが終わるのか、終息するのか。今、答えられる、現時点で答えられる世界の首脳は一人もいないのだろうと。私もそうです。答えることは残念ながらできません」との物言いでいつ終息するのか見通すことはできないと答弁しながら、「オリンピックを開催するためには、日本だけがそういう状況になっていればいいということではなくて、正に世界がそういう状況になっていかなければならないわけであります」と、日本だけではない、世界的な感染の終息を開催の条件としている。

 つまり安倍晋三は開催の条件を世界的な終息だとしながら、自身を含めて世界の首脳はコロナウイルスの世界的な感染がいつ終息するかは誰も見通せていないと悲観論を展開、いわば開催の条件をクリアするのはいつの頃か不明であるとしながら、早々に「1年程度」の延期で開催を決める政治的判断を行った。

 矛盾しているということだけではない。ここには矛盾を矛盾でないとする強引さしか見えてこない。この強引さはかなりの強度なもので、何しろいつ終息するか見通すことができなのに「1年程度」の延期ということで開催を決めたのだから、「1年程度」という政治的判断がオリンピック景気を狙った政府の利害よりも、自民党総裁の任期内に合わせた安倍晋三個人の利害に基づいた自己都合の政治的判断の開催であることの方が濃厚となる。

 少なくとも新型コロナウイルスの世界的な感染の終息か、終息に近い状況を見通した延期期間でない以上、アスリートの最高のパフォーマンスを望み、そのパフォーマンスに観客が歓迎することに根拠を置いた「1年程度」ではないことだけは断言できる。

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安倍晋三の東京オリンピック「完全な形で」発言はアスリートのことを考えない自己都合だけを優先させた開催願望

2020-03-23 14:06:31 | 政治
 新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、2020年3月16日夜、G7=主要7か国の首脳による緊急のテレビ会議が行われ、安倍総理大臣は、治療薬の開発を加速し、世界経済への影響を食い止めるためG7の結束を呼びかけ、東京オリンピック・パラリンピックの完全な形での開催を目指す考えを示し、各国首脳の支持を得たと2020年3月17日付マスコミが一斉に伝えていた。文飾当方。

 「G7首脳テレビ会議」(外務省/2020年3月16日)  

 3月16日(月曜日)23時から約50分間,安倍晋三内閣総理大臣はG7首脳テレビ会議に出席したところ,概要は以下のとおりです。今回の会合は,仏からの提案を受けて,本年のG7議長国米国の呼びかけで開催されました。G7首脳間でテレビ会議が行われるのは初めてです。また,会合後,首脳宣言(英語(PDF)別ウィンドウで開く/仮訳(PDF)別ウィンドウで開く)が発出されました。

1 参加したG7首脳は,新型コロナウイルス感染症に関し,各国内の経済状況や感染拡大防止策について意見交換を行いました。
2 安倍総理からは,1点目として,現下の厳しい状況を収束させるためには,治療薬の開発が重要であり,G7の英知を結集させ,開発を加速させることが必要であること,2点目として,経済に悪影響がある中,G7が協調して必要十分な経済財政政策を実施するという力強いメッセージを出すべきであるとの点を述べ,G7の賛同を得ました。また,今回の首脳間のテレビ会議は非常に有意義であり,必要に応じ再度開催することで一致しました。
3 また,安倍総理は,東京オリンピック・パラリンピックについて,人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証として,完全な形で実施したいと述べ,G7の支持を得ました。
4 参加したG7首脳間では,新型コロナウイルス感染症への対応に際し,国際社会が一丸となった取組が求められていることを確認し,首脳間で率直な意見交換を行い,G7として引き続き協力することで一致しました。

【参考】G7首脳テレビ会議出席者
 日:安倍総理,米:トランプ大統領,独:メルケル首相,加:トルドー首相,伊:コンテ首相,英:ジョンソン首相,仏:マクロン大統領,EU:ミシェル欧州理事会議長,フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長

 我が日本の偉大なる総理大臣安倍晋三は〈東京オリンピック・パラリンピックについて,人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証として,完全な形で実施したいと述べ,G7の支持を得た。〉

 現時点では人類は未だに新型コロナウイルスに打ち勝っていない。当然、「打ち勝った」は過去完了形の事実提示ではなく、未来完了形の事実提示としなければならない。未来完了形の事実提示である以上、その「証」は今後のいずれかの時点で〈打ち勝った〉結果として手に入れることを予定していなければならないことになる。

 でなければ、「人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証として」と発言することはできない。

 要するに新型コロナウイルスの終息宣言となる。東京オリンピックの日程は7月24日~8月9日(パラリンピックは2020年8月25日~ 2020年9月6日)だということだから、開催のための準備もあることから、最低限6月中の終息宣言でなければならない。しかもオリンピックもパラリンピックも世界的なスポーツの一大祭典だから、日本だけの終息宣言ではなく、世界的な終息宣言ということでなければならない。「打ち勝った」主語を「日本人」ではなく、「人類」に置いていることからも、世界的な終息宣言ということになる。

 安倍晋三の「人類」を主語に使った勇ましい宣言に反して日本だけが終息、日本以外の各国の感染が終息しないままに世界的規模で感染が引き続いていた場合の状況下でオリンピック開催ということなら、日本は外国人アスリートに対しても観戦目的で入国する外国人訪日客に対しても、入国後2週間の指定場所での隔離・観察期間を置くといった措置を取らざるを得なくなって、そうした場合、外国人アスリートから見ても、観戦目的の入国外国人観戦客から見ても、一定の制約を課せられることになる以上、4年毎通りの「完全な形」「実施」ということにはならないはずだ。

 観戦目的の入国外国人は2週間の隔離・観察期間後に陰性と確認されなければ、各競技場に入れないことになるし、特に外国人アスリートに対しては2週間隔離した状態でそれぞれに十分にトレーニングできる場所と機会を提供しなければならない。場所はともかく、個人競技ならまだしも、団体競技であるサッカーの11人、ラグビーの15人などが2週間の隔離・観察期間中、メンバー同士がお互いに接触せずに1メートルから2メートルの間隔を常に置いた状態でのトレーニングを強いられることになれば、十分なコンディショニング(スポーツパフォーマンスを最大限に高めるために、筋力やパワーを向上させつつ、柔軟性、全身持久力など競技パフォーマンスに関連するすべての要素をトレーニングし、身体的な準備を整えることと定義される。 NSCAジャパン)の機会を提供したことになるのだろうか。

 要するに安倍晋三の言う「完全な形で実施」は最低限6月中の世界的な終息の状況下でなければ、実現不可能となる。果たして安倍晋三が勇ましく掲げた6月中の世界的な終息は可能だろうか。

 この電話会議を伝えた2020年3月17日付「NHK NEWS WEB」記事では、外務省の「打ち勝った証として」となっているところが、「全力で準備を進めており、人類が新型コロナウイルスに打ち勝つ証しとして完全な形での開催を目指したい」と述べたとなっている。

 未来完了形ではなく、明確な完了時期を示さない未来進行形となっていて、発言としてはある程度妥当性を持つことになる。当然、「完全な形での開催」にしても時期が不特定となり、安倍晋三のこの発言から延期を示唆ものだとか、延期の伏線だと伝えるマスコミも現れた。

 だが、発言が未来完了形であろうと、未来進行形であろうと、安倍晋三は人類が新型コロナウイルスに打ち勝つであろう根拠は何一つ示していない。ワクチンを開発したとも言っていないし、例え開発していたとしても、臨床試験開始から実用化までには1年以上かかるとされていて、今年夏のオリンピック開催にまでは間に合わない。

 あるいは既存の対感染症ワクチンが新型コロナウイルスにも有効であることが証明されたと発言しているわけでもない。打ち勝つであろう根拠は何一つ示さないままに発言が実質的にこの夏の開催であろうと、一定期間を置いた延期であろうと、「完全な形での開催」を宣言した。

 オリンピックそのものはIOCや国や自治体が運営する。だが、各競技そのものはアスリートたちのパフォーマンスによって成り立っている。アスリートたちは自分たちのパフォーマンスを最大限・最善の形で見せるためにオリンピックの場合は7月24日から8月9日にかけた期間に、パラリンピックの場合は8月25日から9月6日かけた期間に照準を合わせて精力的にコンディショニングに取り組んでいるはずである。

 要するに東京オリンピックとパラリンピックに関わるアスリートたちのコンディショニングは前回のリオオリンピックが終了した時点から開始されていたと見ても過言ではない。当然、このようなアスリートたちのコンディショニングがオリンピックという実際の舞台で形を取るパフォーマンスに応えるためには「完全な形での開催」は照準通りに期間をずらしてはならないことになる。少しでもずらせば、アスリートの立場からしたら、「完全な形での開催」は崩れる。

 要するに最低限、安倍晋三の6月中の世界的な終息宣言通りに終息しなければ、「完全な形での開催」は不可能となる。無理に開催可能とするなら、アスリートたちのコンディショニングやパフォーマンスを現在以上に犠牲にしなければならない。

 3月16日のG7首脳テレビ会議から3日目の3月19日の参議院総務委員会での東京五輪に関わる安倍晋三の発言を2020年3月19日付「NHK NEWS WEB」記事が取り上げている

 G7首脳テレビ会議で完全な形での開催を目指す考えを示し、各国首脳から賛同を得たことを説明してから。

 安倍晋三「『完全な形』と申し上げたが、まず、アスリートと観客にとって安全で安心できるものでなければならない。そして、規模は縮小せずに行う、かつ、観客にも一緒に感動を味わっていただきたいということだ」

 片山虎之助(維新の会共同代表)「東京オリンピックは、ことし7月24日に始まるが、『完全』の中に時期のことも入るのか」

 安倍晋三「延期や中止については、一切言及はしていない。大切なことは、完全な形で、オリンピック・パラリンピックを日本で開催をすることだ」

 中止ならなおさら、延期にしても、アスリートたちからしたら、「完全な形での開催」を崩すことになることを認識して発言しているのかどうか分からないが、安倍晋三自身の認識としては延期と中止は「完全な形」から外していることになる。

 だが、「完全な形での開催」「人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証として」実現することになるのだから、「完全な形での開催」自体が6月中の世界的な終息宣言でなければならない。

 だが、6月中に終息させるまでの期間中、新型コロナウイルスの世界的規模での感染の危険性にアスリートたちが曝されている危険性については触れていない。もし触れていたなら、記事は伝えるだろうし、安倍晋三自身も、「延期や中止については、一切言及はしていない」と言い切ることはできない。

 「完全な形での開催」が安倍晋三の発言どおりに実現したなら、結果的に安倍晋三の利害とこの夏に照準を合わせているアスリートたちの利害は一応は一致することになるが、ここにきて一部アスリートたちの利害に狂いが生じていることを伝える報道が目につくようになった。利害の狂いは照準の狂いに原因を発している。照準に狂いがなければ、五輪が延期も中止もなく、「完全な形での開催」が実行されさえすれば、利害の狂いにしても生じない。

 2020年3月18日付のNHK NEWS WEB記事が「東京オリンピック “予定どおり開催へ” 方針に疑問の声も」と題してIOC委員やアスリートの声を伝えている。

 ヘイリー・ウィッケンハイザー女史(女子アイスホッケーなどのカナダ代表としてオリンピックに出場したIOCの委員)「今回の危機はオリンピックよりも大きい。IOCが開催に向けて進もうとしていることは、人間性の観点から無神経で無責任だ。

 オリンピックを中止すべきかどうか、今の時点では誰も分からない。ただ、IOCが開催に向かって進むのは、練習している選手や世界中の多くの人たちにとって正しくないことは確かだ」

 新型コロナウイルスの世界的な感染拡大の影響下にあるアスリートや観客の立場に立って、東京五輪の強行開催はアスリートや観客に対して人間性の観点から問題があると訴えている。

 エカテリニ・ステファニディ選手(2016年リオデジャネイロ大会陸上女子棒高跳び金メダル選手、ツイッターで)「IOCは大会に向けて練習しなければならない私たちや家族、公衆の健康を脅かしたいのか。あなたたちはまさに今、私たちを危険にさらしている」

 要するに東京五輪に向けて万全な練習を心がけるなら、国や自治体のコロナウイルス感染防止対策によって受けることになる様々な制約は練習の障害となる。その障害を無視して万全な練習を優先させれば、そうしたいが、感染の危険に曝されて、その心配だけではなく、万が一感染することになったなら、自身や家族、第三者の健康を脅かすことになると、思うようにならない練習と感染拡大の状況の間で気持ちが立ち往生している姿を覗かせている。

 2020年3月21日付「NHK NEWS WEB」記事が、〈イギリス陸上競技連盟のニック・カワード会長は、イギリスの新聞「デイリーテレグラフ」のインタビューに対し、東京オリンピックについて「政府が感染拡大を防ぐ策を講じる中、練習施設が閉鎖されたことで、選手たちはストレスを感じている。予定どおり開催できないと決めるべきだ」と述べ、延期するべきだという考えを示し〉、さらに、〈「選手たちの意見が表に出始めるようになれば、延期という決定が速やかに出されると信じている」と述べた。〉と伝えている。

 こういった声を受けてのことか、あれ程通常通りの開催を主張していたトーマス・バッハを会長に頂いていたIOC=国際オリンピック委員会は2020年3月22日に大会の延期を含めた具体的な検討を組織委員会などと共に始め、4週間以内に結論を出すと発表したと2020年3月23日付「NHK NEWS WEB」記事が伝えている。

 通常通りの開催から方針転換を見せなければならなかった背景として記事は、〈新型コロナウイルスの世界規模での感染拡大を受けて東京オリンピック・パラリンピックの代表選考に関わる大会が相次いで中止や延期となるなど影響が広がり、選手や競技団体、それに複数の国のオリンピック委員会から延期を求める声があがっていた。〉ことを挙げている。

 但し、〈一方で、「大会の中止は何の問題解決にもならず、誰の助けにもならない」と強調し、大会の中止は検討しないことも理事会で決まった。〉と伝えている。

 今朝(2020年3月23日)のNHK中継の参院予算委員会で自民党の佐藤正久が最初の質問に立ち、冒頭、IOCのこの方針転換を取り上げて、「人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証として,完全な形で実施したい」としていた安倍晋三の認識を尋ねた。

 この質疑に関しては「2020年3月23日 9時53分」の時点で「NHK NEWS WEB」が既に記事にしていたから、利用することにした。

 安倍晋三「私の考え方については、昨晩、組織委員会の森会長にも話をし、森会長からIOCのバッハ会長にも話をしたと承知している。IOCの判断は、私が申し上げた『完全な形での実施』という方針に沿うものであり、仮に、それが困難な場合には、アスリートのことを第一に考え、延期の判断も行わざるをえないと考えている。

 今後、IOCとも協議を行うことになるが、トランプ大統領をはじめG7各国の首脳も、私の判断を支持してくれるものと考えている。もちろん、判断を行うのはIOCだが、中止は選択肢にはないという点は、IOCも同様だと考えている」

 記事はG7テレビ会議で安倍晋三が〈東京オリンピック・パラリンピックについて,人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証として,完全な形で実施したい」と述べ,G7の支持を得た。〉としている部分については触れていないが、テレビ中継の質疑では佐藤正久に対して「打ち勝った証として、完全な形で実施したいと述べて、G7の支持を得た」と発言している。

 要するに「打ち勝った証として」と、未来完了形で発言、「打ち勝つ証として」と未来進行形では述べてはいない。但し「打ち勝った証」が6月中の世界的な終息宣言となることについては3月16日のG7首脳テレビ会議から6日経過した翌日の3月23日朝になっても気づいていない。

 つまり6月中の世界的な終息宣言となることを前提としてこそ、通常通りの「完全な形で実施」を訴えることができるはずだが、その前提を考えることもできずに、「IOCの判断は、私が申し上げた『完全な形での実施』という方針に沿うものであり」と、さも新型コロナウイルスが6月中に世界的に終息するかのようなストーリーで「完全な形で実施」の方針を安倍晋三が求めたのに対して、その方針にIOCの判断が添っているかのように自身の「完全な形で実施」を正当化している。

 この正当化はあくまでも6月中の世界的な終息を視野に入れていたものでなければ、「人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証として,完全な形で実施したい」は何の根拠もない口先だけの言葉となるが、結果として様々な事情によって6月中の終息が実現できたとしても、オリンピック期間に照準を合わせなければならない最大限・最善のパフォーマンスを見せるためのアスリートたちのコンディショニングの困難さは終息するまでの期間内は引き続くことになって、不満足なコンディショニングは最大限・最善のパフォーマンスを望むことができない要因となり、このような要因を強いられた場合、これも「完全な形で実施」から外れることになる。

 となると、「完全な形で実施」が「困難な場合には、アスリートのことを第一に考え、延期の判断も行わざるをえないと考えている」はアスリートたちのコロナウイルスの世界的な感染状況下でのコンディショニングの困難さを視野に入れていた発言に見えるが、最初から視野に入れていたなら、終息がいつとなるかは別問題として、通常通りの「完全な形で実施」は口にできるはずはなかった。

 この言葉を口にしたこと自体がアスリートが抱えることになる制約を何ら考えることもなく、決められたとおりに五輪を開催したいという、何の障害もないままに一つのレガシイとして記憶されることを望んだ自己都合優先の発言に過ぎないことになる。

 自己都合でなければ、期間どおりの「完全な形で実施」が6月中の世界的な終息宣言となることに気づくはずだし、「完全な形で実施」を言う前にアスリートたちのコロナウイルス感染状況下でのコンディショニングの困難さにも気づいて、「完全な形で実施」を言わずに、期限を設けて、〈フランスのオリンピック委員会の会長がロイター通信の取材に対し、東京オリンピックが予定どおり開催されるためには5月末までに感染拡大のピークを過ぎていることが目安になるという考えを示した。〉と「NHK NEWS WEB」が伝えているが、一定の期限を設けて、「アスリートのコンディショニングの問題もあるから、それまでの間に開催か延期かを判断することになるだろう」と発言していたはずである。

 どちらも気づかなかった。自己都合を優先させた東京五輪の期日通りの開催願望に過ぎなかったからだ。

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安倍晋三の新型コロナウイルス感染「多くは軽症」発言から見る危機感と現状認識の希薄さ マスク準備、検査体制遅れに現れている

2020-03-16 12:27:50 | 政治

 2020年3月9日参院予算委員会 

 自民党の武見敬三が新型コロナウイルス感染に関して質問に立ち、安倍晋三をお神輿のごとくにヨイショ、ヨイショと担いだ。担がれた安倍晋三は心地よかったはずだ。

武見敬三「今世界はまさに新型コロナウイルスの感染拡大で、これを如何にすべての国々がお互いに協力をしながら、この感染拡大を抑止して、一人でもその健康を害し、命を落とすことがないように今必死になって、多くの国々が国境を越えて協力をしようとしてるところであります。

 このようなときに今朝、北朝鮮が弾道ミサイルと思わしきものを発射したというニュースが入ってきて、おりまして、私は、びっくり致しました。こうした国際社会の困難な状況の中にこのような弾道ミサイルなどを発射する、というのは、これはもう言語道断であって、それを私は厳しく非難をしたいものがあります。是非、総理のご所見を伺っておきたいと思います」

 安倍晋三「本日7時34分から7時35分頃、北朝鮮の東岸から複数発の弾道ミサイルと見られるものが発射され、日本海海上に落下したものと推測されますが、詳細は分析中であります。なお、いずれも落下したのは我が国の排他的経済水域EEZ外と推定されます。また付近を航行する航空機や船舶への情報提供を行ったところ、現時点に於いてこれらへの被害報告等の情報は確認されていません。

 私からは本件について直ちに報告を受け、情報収集・分析に全力を挙げ、国民に対して迅速・的確な情報提供を行うこと、航空機・船舶等の安全確認を徹底すること、不測の事態に備え、万全の体制を取ることの3点について速やかに指示を行ったところであります。また政府に於いては北朝鮮情勢に関する官邸対策室に於いて情報を集約すると共に緊急参集チームを招集し、対応について協議を行いました。

 さらにこのあと、国家安全保障会議を開催し、情報の集約及び対応について協議を行う予定であります。今般の北朝鮮の行動は我が国と地域の平和と安全を脅かすものであり、これまでの弾道ミサイル等の度重なる発射も含め、我が国を含む国際社会全体にとっての深刻な課題であります。政府としては引き続き米国等とも緊密に連携しながら、必要な情報の収集・分析及び警戒・監視に全力を挙げ、我が国の平和と安全の確保に万全を期してまいります。

 武見敬三「それではこの新型コロナウイルスに関わる課題に入らせて頂きたいと思います。我が国はこの感染症と如何に戦うか。これはもうグローバルヘルスと言われる分野の中でも最も世界で大きく、優先度の高い課題として認識されております。

 この分野で我が国は実は、安倍総理、非常に大きな中心的役割を担ってきました。2014年に西アフリカでエボラ出血熱が発生をし、そしてこれを踏まえて、2015年に今度はユニバーサルヘルスカバレッジ(「すべての人が、適切な健康増進、予防、治療、機能回復に関するサービスを、支払い可能な費用で受けられる」ことを意味し、すべての人が経済的な困難を伴うことなく保健医療サービスを享受することを目指すこと―ネット知識)がこの持続可能な開発目標の中に位置づけられました。そしてその後最初のG7のサミットというのが、実は我が国がホストしたG7伊勢志摩サミットでした。

 従ってその伊勢志摩サミットの中で総理ご自身の極めて強いイニシアチブで三つの重要な議題のうちの一つをこうした保健医療の分野に位置づけて、そして三つの大きな柱を基本とする、この伊勢志摩フレームワークというのをお出しになった。

 第一がこうしたエボラ出血熱のような危険な感染症に対して世界が協力して如何にそうした感染症に対して戦う、そうした体制を整えるか。二つ目は今度はユニバーサルヘルスカバレッジというものを如何に効果的に達成するか。3つ目は常にこのボディブローのように危険な感染症の中でも危険な感染症として湧き上がってきているAMRという多剤耐性菌にどう対処するかでありました。

 そして我が国はまさにこのユニバーサルヘルスカバレッジを達成するプロセスの一環としてこの危機管理というものに関わるこのプリベンション(事前予防や一時予防)とプリペアドネス(preparedness・準備)と言う、まさに準備と予防というものに焦点を当てて、そしてこの危機管理に於ける体制づくりの準備と予防の分野というのは平時に於いて行われるものであって、そしてそれはまさにユニバーサルヘルスカバレッジを達成する一部である。そしてこのユニバーサルヘルスカバレッジと危機管理の体制強化というのはまさにこの予防と準備というものを通じて結ばれていて、この2本柱をしっかりと世界で充実させていこうという、そういう大きな方針を世界に総理、示されました。

 これはまさにグローバルヘルスの分野では今もう金字塔になっている。そして、その中で日本は中心的役割を果たしました。今日に於いてもその重要な役割を果たしていることに何ら変わりはありません。加えて21世紀に入ると、様々な感染症が実は発生しました。アジアでもサーズが発生をし、それからマーズという中東呼吸器症候群というのようなものも発生をしました。

 そしてさらには5年程前ですか、H1N1という豚インフルエンザというのが新型インフルエンザとして発生しました。しかしこれらの状況を翻ってみたときに我が国に於ける罹患者の数、そして特に亡くなった方、死亡者数というのは極端に少なかった。世界の多くの国々がびっくり仰天しまして、何で日本だけ、こんな感染症が蔓延したときにこのように死亡者数を少なく抑えることができたのかいうことを調べた結果、これはまさに我が国の地域医療を中心とする医療制度というものが実に良く出来ていて、そしてアクセスがしやすくて、そしてまた同時に質が非常に高い、こういった強靭な保健システムというのが日本にしっかりあるから、こうした感染症が拡大したときにも、そこが底力を発揮して、しっかりとその死亡者数等を抑え込むことができるんだという点で非常に高い評価を我が国は得ています。これは基本、全く今日においても変わりがありません。

 その上で我が国に於いてさらに残された課題というのはそうした強靭な保健システムというものを踏まえて、さらに強固な、こうした危機管理体制を如何に構築していくかということが我が国の課題であるというふうに私は考えます。で、その途上でまさに今回の新型コロナウイルスの感染の拡大が始まったと思いますが、こうした状況認識についての総理のご初見を先ずは伺っておきたいと思います」

 安倍晋三(殆ど原稿読み)「武見委員に於かれましてはユニバーサルヘルスカバレッジについてまさにこの考え方は日本そして世界でリードしてこられますことにまさに敬意を評したいと思います。

 そして今回の新型コロナウイルスへの対応に当たっては現在、私を本部長として全閣僚メンバーとする対策本部を設置をし、同本部とそのもとに置かれた専門家会議の元、政府一丸となって対応に当たっております。国立感染症研究所に於いて実地疫学専門家の養成を行うと共に今般の対応に当たっても、クルーズ船を含む複数の事例に於いて専門家の派遣を行っております。

 ご指摘の通り、今後ですね、さらにこの組織を強化をして、そういう努力をしていくことは大変重要であろうと、こう思っております。今般の事案対応も踏まえつつ、今後感染症の危機管理体制の不断の見直しを進め、危機管理への対応力をですね、高めていきたいと考えています」

 武見敬三「そして我が国のこの新型コロナウイルス関わる今までの対応というものについて私自身は非常に不当にさまざまな批判が、その内外でも起きていることを非常に残念に思います。その中で実際に我が国の中でこうした罹患されて入院治療をした方々といったものが実際、どのようにその後、その症状いうものが回復をされておられるのか、実はなかなか今までその情報の公開がありませんでしたが、それを実はちょっと調べさせて頂いて、先週金曜日の時点のこのデータ情報であります。これ厚労省などから聞いて作ったものでありますけれども、(パネル提示)これ見ますと、大体ですね、この国内事例で407のPCR検査の陽性者がいて、既にもうそのうち76名退院されておられました。

 またクルーズ船に関してみれば、656名、陽性者が出たうちに既に退院された方が245名。従って、この両者も合わせても、既に321名、まさに300名を超える方々がこうした我が国の治療を受けて、実際に元気に退院されて、日常生活に戻られております。

 こうした力こそが実は我が国が国際社会の中で評価しているところでございまして、こうしたまさに的確な情報というものを私は内外にしっかりと発信していくことが私は必要だと思っております。総理のご初見を伺っておきたいと思います」

 安倍晋三(殆ど原稿読み)「この新型コロナウイルスについてはですね、多くの国民のみなさんが様々な不安を感じておられるんだろうと思います。我が国に於いても、連日感染者が確認されている状況には、状況にあり、政府としては感染拡大の防止のために対策を徹底していく考えであります。

 なお、委員ご指摘の通り、クルーズ船を含めこれまで日本国内で陽性と判定された方々のうち、3月7日時点で325人となっている、あの、これ、ほんのちょっと違うのは、今日さらに、最新は325人の患者が既にですね、回復をして、そして退院をしておられることも事実でございます。

 あの、これはあまり報道されてないところもございますので、ま、こうしたこともですね、しっかりと発信をしていきたいとこう思っております。一時重症状態だった方が軽症・中程度に改善されている方も、まあ、20名程度おられるわけでございます。

 専門家によればですね、このウィルスに感染しても多くは軽症であると共に治癒する例も多いとのことであります。委員ご指摘のとおり、このような感染後の状況も国民の皆様に適切に情報発信していくことはこの感染症を正しく理解をして頂く上でも、大変重要ではないかと思っております。引き続き、私も含めて、国民の皆様への正しく分かりやすい情報発信に努めていく考えでございます」

 武見敬三が新型コロナウイルス関わる安倍政権の対応に対して内外で不当な批判が様々に起きている、先週金曜日の時点に於けるPCR検査407名の感染陽性者に対して既に76名も退院している、クルーズ船での集団感染でも656名の陽性者に対して既に退院者が245名、合計300名を超えて退院、日常生活戻に戻っている、「こうした力こそが実は我が国が国際社会の中で評価している」点だ、このような評価点は「内外にしっかりと発信していくことが必要だ」云々の文言で内外の不当な批判に反して安倍晋三陣頭指揮の政府対応の成果だとばかりにヨイショしている。

 対して安倍晋三は一時重症状態だった罹患者のうち20名程度が軽症・中程度に改善、専門家の話として新型コロナウィルス感染者の多くは軽症で、多くが治癒していると、武見敬三のヨイショに応じている。但し「多くは軽症」という状況は新型コロナウィルス自体が持つ特徴的傾向であって、安倍晋三陣頭指揮の政府対応の成果とは関係しないし、当然、武見敬三が指摘しているように安倍晋三陣頭指揮の政府対応に基づいた国際社会の中での日本の評価点とすることはできない。

 中国で感染確認の5万5924人のデータに基づいたWHO派遣の各国専門家と中国保健当局の専門家による2020年2月20日までの中国現地調査の分析結果を2020年2月29日付記事として伝えている「NHK NEWS WEB」は安倍晋三が言う「多くは軽症」を、〈感染者のおよそ80%は症状が比較的軽く、肺炎の症状がみられない場合もあったということです。〉と、特徴的傾向の一つとして示している。

 だが、安倍晋三は武見敬三が新型コロナウイルスの特徴的傾向を安倍晋三陣頭指揮の政府対応の評価点としていることに対して「これはあまり報道されてないところもございますので、ま、こうしたこともですね、しっかりと発信をしていきたいとこう思っております」の文言で、安倍晋三陣頭指揮による政府対応の成果に位置づけ、なおかつマスコミがこの点について報道に熱心でないことに暗に不満を示して、より発信されるべきだと訴えている。

 新型コロナウィルス感染者の80%程度が軽症者で、一定程度の入院で済み、程なくして日常生活に無事戻ることができるパターンが固定化されていて、新たな感染者が出た場合でも、そのパターンが繰り返されることを常識とすることができたとしても、一人でも重症者が存在し、死者が出ている以上、「多くは軽症」だと片付けることはできない。一度ブログに利用した、《医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド》(一般社団法人 日本環境感染学会/ 2020年2月13日)には次のような下りがある。文飾当方。

 〈発生状況

 国内の感染者数は増加していますが、軽症例や無症候病原体保有者が多くを占めています。〉

 〈臨床的特徴(病態、症状)

 新型コロナウイルスは呼吸器系の感染が主体です。 ウイルスの主な感染部位によって上気道炎、気管支炎、および肺炎を発症すると考えられます。本ウイルスに感染した方全員が発症するわけではなく、無症状で経過してウイルスが排除される例も存在すると考えられます。〉(一部抜粋)

 ブログに次のように書いた。

 〈本人が知らないままにウイルスを抱え込んだとしても、発症しないままに過ごして、知らないままにウイルスが消滅してしまう例があると言うことは、本人は無事であったとしても、ウイルスを抱え込んでいる間、そのウイルスに第三者が感染、発症する例もあることを意味することになる。

 特に体力が低下している高齢者や、高齢者ではなくても、何かの病気治療中で体力が万全ではない中高年層がコロナウイルス感染の症状が出ていない、いわば野放し状態となっている無症候病原体保有者と何らかの接触をした場合、ヒトからヒトへの感染が起こり得る可能性は否定できないばかりか、一人の発症から感染経路を辿る作業にしても、感染元が無症候病原体保有者で、既にウイルスを消滅させていた場合は事前の感染者が特定不可能となって、感染元を一人ひとり探し当てて、入院隔離するなりして感染拡大を阻止するローラー作戦にしても、全てがうまくいかないことになって、感染経路を辿る作業が往々にして迷路に迷い込むことになりかねない。〉・・・・・・

 このことは2020年2月23日付「asahi.com」記事も専門家の指摘として伝えている。

 国際医療福祉大の和田耕治教授(公衆衛生)は「無症状でもウイルスを排出している可能性を指摘する報告もある。心配な人は、2週間程度は家族と別の部屋で過ごしたり、食事は離れてとったりするなどの対策を念のためとってほしい。手洗いの徹底も大事だ」

 それゆえに新たな感染者が出るたびに住居地の自治体は新規感染者の感染経路を辿るべく、その行動歴を洗い、濃厚接触者の有無を探し歩いて、濃厚接触者と思しき人物に行き当たったなら、検査を指示しなければならない。検査の結果、陽性なら、入院を求めると同時に今度はその陽性者の感染経路を辿るために行動歴を洗い、濃厚接触者の有無を探し歩いて、濃厚接触者と思しき人物に行き当たったなら、検査を指示する繰り返しに出る。

 そしてこの繰り返しは新規感染者が複数人出たとしても、新型コロナウィルスの特徴的傾向として「多くは軽症」だと分かっていても、新たな感染が止まらない限り続けなければならない。

 そしてこの感染が止まらない状況は、断わるまでもなく、その状況に応じた自治体の繰り返しの作業にとどまらない。感染防止のための人の移動制限は経済の停滞・縮小に向かい、特に不特定多数の人間を相手に商売や業務を行う何らかの営業体内に小規模の集団感染でも発生した場合は、他への感染を防ぐ観点から一定期間の休業を迫られることになり、そういった休業が各地に続くと、経済の停滞・縮小にととどまらずに、国民生活の停滞・縮小を必然化することになる。

 そして日本の現状は、日本は日本としてそのとおりの事実を招いている。「多くは軽症」だなどと言っている場合ではないし、新型コロナウィルスの特徴的傾向に過ぎない「多くは軽症」を感染症対策の功績と位置づけて、そのような日本の「力こそが実は我が国が国際社会の中で評価している」といった誇りは経済と国民生活の停滞・縮小を余りにも蔑ろにしている。

 現状の新型コロナウイルス感染に関わる安倍晋三と武見敬三の以上の認識はコロナウイルスに対する危機感と現状認識の希薄さなくして招くことはない。勿論、日本経済が感染でダメージを受けていることへの発言はあるが、「多くは軽症」で片付けることができる理由は経済の状況については経済の話題のみとし、感染状況については感染の話題として別個に取り上げて、双方を総合的に関連付けて議論する発想がないからだろう。その結果として危機感と現状認識の希薄さが現れることになる。

 安倍晋三のこの危機感と現状認識の希薄さは改正新型インフルエンザ対策特別措置法成立2020年3月13日の翌日の3月14日の「記者会見」発言からも窺うことができる。

 安倍晋三は冒頭発言で感染の現状を「国家的な危機」と位置づけている。

 安倍晋三「現時点において感染者の数はなお増加傾向にあります。しかし、急激なペースで感染者が増加している諸外国と比べて、我が国では増加のスピードを抑えられている。これが、専門家の皆さんが今週発表した見解です。
 WHO(世界保健機関)が今週、パンデミックを宣言しましたが、人口1万人当たりの感染者数を比べると、我が国は0.06人にとどまっており、韓国、中国のほか、イタリアを始め、欧州では13か国、イランなど中東3か国よりも少ないレベルに抑えることができています。」

 安倍晋三「現時点において感染者の数はなお増加傾向にあります。しかし、急激なペースで感染者が増加している諸外国と比べて、我が国では増加のスピードを抑えられている。これが、専門家の皆さんが今週発表した見解です」

 安倍晋三「未知の部分が多い新型コロナウイルス感染症でしたが、皆さんの御協力を頂き、これまでの対策を進める中で、多くのことが分かってきました。
 これまでのデータでは感染が確認され、かつ、症状のある人の80パーセントが軽症です。重症化した人でも半数ほどの人は回復しています。クルーズ船も含めれば、感染者の4割以上、600人に及ぶ方々が既に回復し、退院しておられます。他方、お亡くなりになった方は、高齢者の皆さんや基礎疾患のある方に集中しています」
 
 安倍晋三「感染力に関しても、これまで感染が確認された方のうち、約8割の方は他の人に感染させていません。つまり、人から人へ、次から次に感染が広がるわけではありません。
 他方でスポーツジムやライブハウスなど、特定の場所では集団での感染が確認された事例が報告されています」――

 以上の冒頭発言からは「国家的な危機」は見えてこない。どこが「国家的な危機」だと言いたくなる。

 新型コロナウイルス感染の現状に原因を置いて、「国家的な危機」だと切迫的に捉えていながら、「国家的な危機」の二次的原因となっている経済と国民生活の停滞・縮小には触れないままに諸外国と「人口1万人当たりの感染者数を比べると、我が国は0.06人にとどまっている」、「症状のある人の80パーセントが軽症」、「重症化した人でも半数ほどの人は回復」、「クルーズ船も含めれば、感染者の4割以上、600人に及ぶ方々が既に回復」、「感染力に関しても、これまで感染が確認された方のうち、約8割の方は他の人に感染させていません。つまり、人から人へ、次から次に感染が広がるわけではありません」云々とまるで重症者も死者も一人も出ないような、危機感と現状認識の希薄さを曝け出すことができる。

 だが一方で、「新型コロナウイルス感染症が経済全般にわたって甚大な影響をもたらしています。とりわけ、中小・小規模事業者の皆さんにとっては、事業存続にも関わる重大な事態であると認識しています」と、密接に関連しているはずの感染の状況と経済及び国民生活の停滞・縮小を別個に捉えて、論じている。

 この認識も危機感と現状認識の希薄さから出ている。

 この希薄さは感染症に必需品となるマスクの充当にも現れている。日本国内で出回るマスクの7割は中国製で、中国からの出荷が滞っていることに対してマスク不足を予見しなければならなかったにも関わらず、新型コロナウイルス感染症対策本部がマスクメーカー及びマスク卸売販売業者の団体に対してマスクの増産等について要請したのは2020年2月13日の「新型コロナウイルス感染症に関する緊急対応策」によってであり、今年度予算の予備費103億円からマスク増産への補助として4億5000万円を充てている。

 この増産要請はいずれはマスクが品薄となることを見込んだものではなく、既に品薄状況を受けた要請だとマスコミは伝えている。

 この品不足状況に対して安倍晋三が月内に月6億枚以上のマスク供給を確保すると表明し、それに応えたのか、防衛相の河野太郎は2020年3月6日の記者会見で自衛隊保有のマスク155万枚のうち突発的な大規模災害に備えて3週間後に新規マスクを自衛隊に返納してもらう前提で100万枚を拠出する方針を表明、6日後の3月12日に35万枚を、残り65万枚は3月13日午前中に自衛隊のトラック2台で都内の倉庫に搬入、その後全国の医療関係者や介護関係者に配布されるとマスコミが伝えていた。

 そして河野太郎3月6日の表明4日後の2020年3月10日付の「新型コロナウイルス感染症に関する緊急対応策第2弾について」(厚生労働省医政局地域医療計画課)で、マスクに関わる次の対策を打っている。

◆需給両面からの総合的なマスク対策
・ネット等での高額転売目的のマスク購入を防ぐため、マスクの転売行為を禁止
・布製マスク2,000万枚を国で一括購入し、 介護施設等に緊急配布
・ 医療機関向けマスク1,500万枚を国で一括購入し、 必要な医療機関に優先配布
・ マスクメーカーに対する更なる増産支援

 この要請の3日後の2020年3月14日付「NHK NEWS WEB」記事が、「京都や大阪の大規模病院でもマスク不足が深刻」と題して次のように伝えている。

 〈複数の病院関係者によりますと、京都市の京都大学医学部附属病院では、今月に入って医師や看護師に対し、病院から支給されるマスクが制限されるようになり、ほとんどの部署で毎日1人1枚から1週間に1枚程度になったということです。

 新型コロナウイルスの感染者を受け入れる病院には指定されていませんが、高度な医療を行う病院で多くの入院患者がいて、マスク不足の中で感染症対策が十分なのか、働く人たちから懸念の声が上がっているということです。〉・・・・・

 マスク不足だけではない、検査体制の不備・不足も予見しなければならなかったはずだが、その構築の遅れも国民の不安を掻き立てた。

 肝心な必要性を予見した前以っての対応ではなく、後手後手の対応のみからも、危機感と現状認識の希薄さしか浮かんでこない。

 この程度の危機感と現状認識の希薄さしか持ち合わせてないにも関わらず、安倍晋三は記者質問に対する答弁で、「国内の感染の状況については、様々な手を打った結果、現時点では爆発的な感染拡大には進んでおらず、一定程度、持ち応えているのではないかというのが専門家の皆様の評価であろうと思います。今後とも、依然として警戒を緩めることができない状況でありますが、国民の健康、命を守るために全力を尽くしていきたいと思っています」と、各自治体の努力の成果を自らの成果のように刷り込んで、「国民の健康、命を守るために全力を尽くしていきたいと思っています」と国民の健康と命を請け合っている。

 危機感と現状認識の希薄さの上に請け合っている国民の健康と命に過ぎない。要するに実の伴わない、上辺だけの言葉で成り立たせた「国民の健康と命」が実態だということである。

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安倍晋三は長期政権で獲ち取ることになる政治成果を金字塔としたいがために失敗・不都合な事実から目を逸らす裸の王様と化している

2020-03-09 12:09:40 | 政治
 安倍晋三は新型コロナウイルスの感染が徐々に拡大する中、2020年2月27日に唐突に全国全ての小学校、中学校、高等学校、特別支援学校の2020年3月2日から春休みまでの臨時休校を要請した2日後の2月29日に感染拡大防止策を巡っての「記者会見」を開いた。冒頭発言後の質疑を二つ取り上げてみる。

 NHK松本記者「チャーター機、クルーズ船対応と、これまで対応が続いてきました。しかしですね、国内では感染拡大の状況が見られます。これまでとは違うフェーズの状況だと言えると思いますが、対応は依然続くとは思いますが、ここに至るまでの政府の対応として反省すべき点についてどのようにお考えでしょうか。

 また、政治は結果だとよく言われます。この結果責任についてのお考えもお聞かせください」

 安倍晋三「今回のウイルスについては、いまだ未知の部分が多い中、専門家の皆様の御意見も踏まえながら、前例に捉われることなく、国民の健康と安全を守るために必要な対策を躊躇なく講じてきたところであります。

 現在、国内では、連日、感染者が確認され、そういう状況でありますが、今が正に感染の拡大のスピードを抑える、抑制するために重要な時期であります。国内の感染拡大を防止するため、あらゆる手段を尽くしてまいります。

 未知のウイルスとの闘いはとても厳しいものであります。その中で、現場の皆さんはベストを尽くしていただいているものと思います。同時に、それが常に正しい判断だったかということについて、教訓を学びながら自ら省みることも大切です。私自身も含めてですね。その上で、そうした教訓を学びながら、未来に向かっていかしていきたいと考えています。

 その上で、私はこれまでも、政治は結果責任であると、こう申し上げてきました。私自身、その責任から逃れるつもりは毛頭ありません。内閣総理大臣として、国民の命と暮らしを守る。その大きな責任を先頭に立って果たしていく。その決意に変わりはありません」

 NHKの松本記者は特にクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」号内新型コロナウイルス集団感染に関わる政府対応を標的にしてのことなのだろう、「反省すべき点」についてどう考えるのかと尋ねた上に結果責任まで俎上に載せた。

 要するに政府対応は正当ではなかったとする否定的立場から結果責任を取るのかどうなのかと迫った。対して安倍晋三は政府対応が「常に正しい判断だったかということについて、教訓を学びながら自ら省みることも大切です」と言いながら、政府対応の正当性如何に関しては触れないまま、つまり「省みることも」せずに、そのような教訓は何一つ役に立たないはずだが、「教訓を学びながら、未来に向かっていかしていきたいと考えています」と尤もらしさだけを政府対応に装わせている。

 当然、「前例に捉われることなく、国民の健康と安全を守るために必要な対策を躊躇なく講じてきたところであります」云々も正当性如何の判断を依拠させていない「対策」ということになって、以後の政府の対応自体にしても信用できないことになる。

 政府対応の正当性如何について何一つ省みていないことは次の質問に対する答弁にも現れている。 

  AP通信山口記者(記者)「クルーズ船の『ダイヤモンド・プリンセス』では700人以上の乗客・乗員が感染するなど、検疫や船内での感染予防対策にも課題があると指摘されました。
 引き続き、国内でも感染が拡大する中、東京オリンピックを控え、特に日本としての危機管理能力が、今、試され、国際社会から注目されていると思うのですが、これまでのところで得られた教訓はどういうことであり、これを今後どのようにいかしていかれるかということを教えてください」

 安倍晋三「ダイヤモンド・プリンセス号については、多数かつ多様な国籍の方々が乗船する大型客船内でのウイルス集団感染という、初めて直面する事態への対応が求められたところであります。

 クルーズ船の乗客や乗員の皆様に対しては、船内で感染が初めて確認された2月5日から、順次、全員にPCR検査を行うとともに、14日間の健康観察期間を設定し、感染拡大防止に最大限の措置を講じてきました。

 こういった状況の中で、チャーター便対応で得られた知見や、そして船内での感染拡大防止が有効に行われていたという専門家の御指摘も踏まえて、発症がなく観察期間を終了した方々について下船をしていただくという判断をしたところであります。

 国内における感染拡大を受けて、政府においては今が正に感染の流行を早期に収束させるために重要な時期であると認識をしています。対策の基本方針を踏まえて、時々刻々と変化する状況を踏まえながら、地方自治体や医療関係者、事業者、そして国民の皆様と一丸となって、先手先手で必要な対策を総動員して、躊躇なく実施をしてまいる所存でございますが、オリンピック・パラリンピックを控えているところでございますが、バッハ会長がですね、IOCからは、日本の迅速な対応について評価を得ているところであります。

 バッハ会長も、2020年東京大会が成功するよう全力を注ぐと発言をしておられます。我々は、この状況をなるべく早期に克服をし、アスリートの皆さん、観客の皆さんが安心して臨める、安全な大会、そのための準備をしっかりと進めていきたいと、こう考えています」

 AP通信の山口記者にしても、「700人以上の乗客・乗員が感染するなど、検疫や船内での感染予防対策にも課題があると指摘されました」との発言で「ダイヤモンド・プリンセス」号の集団感染に関わる政府対応の正当性如何を否定的立場から俎上に載せた。

 その上で東京オリンピックを控えている現在、「日本としての危機管理能力」が試されているが、これまでの政府対応から学んだ教訓は何かということと、その教訓の危機管理への活かし方を尋ねた。要するに安倍晋三がNHKの松本記者に講釈を垂れた教訓話に信を置いていなかったことになる。

 ところが安倍晋三はNHKの松本記者に対してと同じように政府対応の正当性如何に自ら自身がまともに向き合う謙虚な姿勢を見せることなく、「船内での感染拡大防止が有効に行われていたという専門家の御指摘」を根拠に政府対応の正当性のみを主張、さらに「バッハ会長がですね、IOCからは、日本の迅速な対応について評価を得ているところであります」と、その評価を基に政府対応の正当性を二重に保証、東京オリンピックに向けた自らの危機管理能力に太鼓判を押している。

 政府は「ダイヤモンド・プリンセス」号感染対応では安倍晋三を陣頭指揮に「船内で感染が初めて確認された2月5日から」「14日間の健康観察期間を設定」、その期間内に検査で陽性が出た乗客・乗員は順次病院等に搬送、14日目の2月19日から検査で陰性の乗客を順次下船させていったが、この「14日間の健康観察期間」後の陰性を下船の絶対条件とするためには14日間内に感染ゼロと見ていなければならないし、事実、感染ゼロと見ていた。

 当たり前のことがだ、14日間内の感染の可能性を疑っていたなら、例え下船させたとしても、一定の場所に隔離した上で陰性判定からさらに「14日間の健康観察期間」を設けて、感染の有無を再確認しなければならなかった。

 だが、安倍晋三陣頭指揮の日本政府はそのような措置は取らずに下船後、新幹線やタクシー、その他の思い思いの交通手段を使った帰宅を許可した。その中から、2020年3月6日現在、〈健康観察終了後に下船した乗客・乗員(下船時PCR検査陰性)で、その後PCR検査陽性が判明した6名(但し、外国のチャーター機で帰国後に陽性が判明した者は含まない)。〉と、「厚労省」は下船後の陽性化を伝えている。

 つまり2月5日からの「14日間の健康観察期間」の初期にではなく、中盤から終盤にかけて感染した乗客・乗員が存在していて、14日終了後に陽性反応が出る量のウイルスに成長、各症状が出て、病院の診察を受け、陽性と確認されるに至った。

 この状況は安倍晋三の「感染拡大防止に最大限の措置を講じてきました」の言葉をウソにする。

 「ダイヤモンド・プリンセス」号から自国の乗客を引き取った外国政府は下船後に「14日間の健康観察期間」を設けて、その期間内に陰性から陽性に転じた乗客も出ている。

 厚労相の加藤勝信は陰性の乗客を公共交通機関等を用いて帰宅させた理由を2020年2月15日の「記者会見」で述べている。

 加藤勝信「国立感染研究所は、武漢からのチャーター便1便から3便までのPCR検査の結果、565人が陰性、また陽性の1名についてもウイルス排出量は陰性に近いレベルであったことを踏まえ、14日間の健康観察期間中に発熱その他の呼吸器症状が無く、かつ、当該期間中に受けたPCR検査の結果が陰性であれば、14日間経過後に公共交通機関等を用いて移動しても差し支えないとの見解を示したところであります」

 要するに武漢からの帰国者の例に習って、「ダイヤモンド・プリンセス」号の陰性乗客に関しても同じ方法を取るに至った。集団で隔離させておきながら、「14日間の健康観察期間」中の感染の危険性を些かも疑っていなかった。
 このようなノー天気な危機管理であったにも関わらず、安倍晋三は「船内での感染拡大防止が有効に行われていたという専門家の御指摘」を錦の御旗に自己の危機管理能力を正当化し、さらに「バッハ会長がですね、IOCからは、日本の迅速な対応について評価を得ているところであります」云々とバッハ会長の評価まで取り込んで、自らの正当化の傍証とする。

 何事も自分の目と頭で批判と向き合って、自身の対応の正当性如何を冷静に検証、改めるべき問題点と改めなくてもいい問題点を仕分けして、改めるべき問題点に至った原因を明らかにし、その原因を次の一手の教訓とするのではなく、教訓は口ばかりで、全てを正当化する。自身にも至らない点があるということを素直に認めることができなくて、欠点のない政治家、総理・総裁であることの自己顕示一辺倒に偏った姿勢を貫く。

 このような自己顕示一辺倒の姿勢は自己愛性パーソナリティ障害真っ只中に自己を存在させていることに起因している。自己愛性パーソナリティ障害の自分は優れていて間違いのない偉大な存在だとする思い込みが強いる余裕のない姿勢が国会質疑で批判を受けると、総理大臣でありながら、自席から総理大臣にあるまじきヤジを自らに誘発させることになる。

 また、自己愛性パーソナリティ障害者は常に性善説に立って自己を評価する。自分を自分で性善説で捉えるから、始末に悪い。

 立憲民主党の参議院議員牧山ひろえが船内で乗員が提供した飲食物や乗客の散歩が集団感染の要因の一つとなったのではないかと質した質問主意書に対して3月6日、安倍晋三議長の閣議が、「今回のクルーズ船に関する政府の対応については、今後しっかりと検証していく」としていながらも、乗員は国立感染症研究所などが作成した感染予防策に基づき、飲食物の調理から乗客への提供に至るまで、常にマスクを着けるなどの適切な措置を取っていたとし、乗客に対しては専門家の了解を得て厚生労働省が作成した「船内行動における注意事項」を示し、定期的に散歩などの軽い運動を勧めるとともに乗客同士は2メートルの間隔を取るよう周知していたとする政府答弁書を閣議決定したと、2020年3月6日付
「NHK NEWS WEB」
記事が伝えているが、政府答弁書のこの内容も、下船後の陽性反応の続出から容易に判断できる「14日間の健康観察期間」内の船内集団感染をなかった話にして、安倍晋三率いる政府対応の瑕疵を無視する性善説で成り立たせている。

 安倍晋三が自己愛性パーソナリティ障害を患っていて、自分自身を性善説で立たせている以上、どのような検証であろうと、同根の性善説に立たせた検証しか期待できないはずだ。

 政府答弁書は「ダイヤモンド・プリンセス」号の乗員は「飲食物の調理から乗客への提供に至るまで、常にマスクを着けるなどの適切な措置を取っていた」として船内感染を否定しているが、乗員はマスクだけではなく、手袋までして客室に待機させた乗客に対してルームサービスを行っている。

 ところが、クルーズ船内で船内業務に当たっていた検疫官1人と災害派遣医療チーム(DMAT)の30代男性看護師1人を感染せいている。《クルーズ船内で医療救護活動に従事されている皆様へ》(厚労省/2020年2月14日)と題した記事には検疫官が感染に至った原因を挙げている。

・マスクと手袋を着用していたものの、交換頻度が十分でなかったこと
・手袋を着用したまま目や鼻、口などの粘膜を触れた可能性があること
・検体採取時に使用し汚染物質が付着した可能性のある防護服に必要な感染防護をしないまま接触した可能性があること

 そして結論として、〈厳しい業務スケジュールの中、基本的な感染防護策が徹底されていなかったことが、その後の疫学調査により判明しております。〉としている。

 この検疫官だけではなく、災害派遣医療チーム(DMAT)の30代男性看護師にしても、ウイルス感染に関わるそれなりの専門性を身に着け、その専門性に従って行動していたはずである。いくら忙しくても、この行動基準から離れてはならない。にも関わらず、基本的な感染防護策を徹底することができずに感染させてしまった。

 乗員は常にマスクを着けて適切な措置を取っていた。「厚労省」サイトには、〈乗員については、ほぼすべてに対して講習を行い、症状がない状態で勤務中の乗員に対しても、業務中は必ずマスクと手袋を着用する、手指をアルコール消毒する手指衛生を行う、食事を離れてとる、船内の乗員の各居室への消毒用アルコールの設置など衛生環境の整備を行うことなどを徹底してきました。〉と、講習まで行ってマスクだけではなく、手袋の着用、その他の徹底を謀ったとしているが、感染に対する専門家であるにも関わらず、基本的な感染防護策を徹底できなかった検疫官と看護師が存在することを考えると、乗員たちが果たして俄仕込みの講習だけで、どれ程の専門性を身に着け、どれ程の専門性に従って行動できたとすることができたのか、甚だ疑わしい。

 クルーズ船内ではオープンデッキのある客室乗客のみオープンデッキへの外出が許され、窓やバルコニーのない部屋に滞在する乗客はグループ分けをして時間限定の散歩を許されていて、外出時はゴム手袋とマスクの着用が義務付けられていたというが、乗員が客室にムールサービスに訪れる際も、乗客はゴム手袋とマスクを着用していたのだろうか。手袋をしたまま皿に触れたり、ナイフとフォークを手に取って食事をしたのだろうか。

 乗員が客室から出ていくとき、ドアノブに触れる。乗員が去ってから、そのドアノブを手袋を着用したままアルコールで消毒するよう指導したのだろうか。そしてその手袋の交換頻度を決めて、決められたとおりに交換するように指示していたのだろうか。手袋の着用中はその手袋を着けたまま、目や鼻、口などに触れないように厳しく注意していたのだろうか。

 そうしていたという報道は目に触れないから、そうしていたとは思えないが、いずれにしても陰性で下船後に陽性反応が出た乗客・乗員が存在していたということは「14日間の健康観察期間」中に集団感染が発生していたことは否定できない。

 だが、安倍晋三は常に性善説に立って自己を評価する自己愛性パーソナリティ障害にも災いされて、「船内での感染拡大防止が有効に行われていたという専門家の御指摘」を百万の味方につけて、集団感染から目を背けている。

 自己愛性パーソナリティ障害という姿自体が周囲からの批判や反対を受け入れることができず、事実を見る目を持たない「裸の王様」の姿を取っていることを示しているが、批判に曝される程に自己性善説を失いたくない防御本能から「裸の王様」の度合いを深めていく。

 このことは長期政権にも関係しているはずだ。誰にも真似ができないような任期期間中の政治成果と共に長い任期を記録付けるためにも、いつの日かは任期の終わりを告げる事情についても、誰にも批判されない、惜しまれる終わりを望む関係から、批判を恐れ、批判から退陣に追い込まれることを恐れて、ますます自分自身を性善説に立たせた自己愛性パーソナリティ障害にはまり込んでいく。

 このことは4月に予定していた中国の習近平主席の国賓訪日の延期を3月5日に正式に決定してから、中国と韓国からの日本人を含めた入国者の航空便を成田と関西の2空港到着に限定、中韓発給済みビザ効力の停止を翌日の3月6日に閣議決定と続けざまに発表した水際対策からも読み取ることができる。

 コロナウイルスの感染拡大阻止を優先させていたなら、もっと早い時期に決定すべきをこれらの水際対策だが、習近平訪日延期を境に矢継ぎ早に決定していることはコロナウイルス対策よりも習近平訪日を優先させていたことの何よりの証明であろう。

 いわば習近平国賓訪日を安倍晋三の政治史に残すべき政治的成果として何よりも優先させていた。だが、延期が決まって、批判が高まっているコロナウイルス感染防止の不手際をマイナスの政治成果としない用心から堰が切れたように次々と海外向け水際対策を打ち出すことになった。

 このように国民の生命や生活に影響するコロナウイルスの感染防止よりも習近平訪日を優先させたということは記者会見で「専門家の皆様の御意見も踏まえながら、前例に捉われることなく、国民の健康と安全を守るために必要な対策を躊躇なく講じてきたところであります」と発言していることとは裏腹に習近平訪日が自身の政治史に刻むことになる政治的金字塔に目が奪われていたことを示す。

 安倍晋三が自身の自己愛性パーソナリティ障害が深く関わっていることになる「裸の王様」でなければ、国民の生命・生活よりも自らの政治的金字塔に目が奪わることはない。

 2020年3月1日のNHK「日曜討論」で新型ウイルスに関する「政治の対応」を議論していたが、冒頭、自民党参議院幹事長の世耕弘成が「批判とか糾弾をしている段階ではなくて、行政政府がその能力を存分に発揮できるよう、サポートするべき時期だというふうに思っています」と、安倍晋三に対する批判封じに出たが、間違いは間違いで受け止め、批判は批判として受け止めて、受け止めたマイナスの情報を教訓として活かさなければ、裸の王様が下着姿で街を歩いていることに気づかない振りをした臣下たちのように安倍晋三の取り巻きたちの方からタダでさえ「裸の王様」である安倍晋三の「裸の王様」であることの存在性を一層高めることになる。

 結果、批判には目を向けない「裸の王様」として跋扈させることになる。自己愛性パーソナリティ障害の重症にも繋がり、国民の迷惑となる。
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安倍晋三の小中高特別支援臨時休校策はコロナウイルス対策初動対応の不手際から目を逸らさせるビックリ箱 子どもは親から引き離すのが得策

2020-03-02 12:37:33 | 政治
 安倍晋三が新型コロナウイルス感染拡大防止策の一つとして全国全ての小学校、中学校、高等学校、特別支援学校の2020年3月2日から春休みまでの臨時休校を要請した。

  「第15回新型コロナウイルス感染症対策本部」(首相官邸サイト/2020年2月27日)

 安倍晋三「一昨日、決定した対策の基本方針でお示ししたとおり、感染の流行を早期に終息させるためには、患者クラスターが次のクラスターを生み出すことを防止することが極めて重要であり、徹底した対策を講じるべきと考えております。

 北海道では、明日から道内全ての公立小・中学校が休校に、また、千葉県市川市でも、市内全ての公立学校が休校に入ります。このように、各地域において、子どもたちへの感染拡大を防止する努力がなされていますが、ここ1、2週間が極めて重要な時期であります。このため、政府といたしましては、何よりも、子どもたちの健康・安全を第一に考え、多くの子どもたちや教職員が、日常的に長時間集まることによる感染リスクにあらかじめ備える観点から、全国全ての小学校、中学校、高等学校、特別支援学校について、来週3月2日から春休みまで、臨時休業を行うよう要請します。なお、入試や卒業式などを終えていない学校もあろうかと思いますので、これらを実施する場合には、感染防止のための措置を講じたり、必要最小限の人数に限って開催したりするなど、万全の対応をとっていただくよう、お願いします。

 そして2日後の2月29日に午後6時から物々しく記者会見を開いて、学校休校を含めた政府の今後の感染拡大防止対策についての説明を行った。今週発表の専門家の見解は感染拡大のスピード抑制は可能な現状にあるというもので、それゆえにこの一、二週間が終息に持っていけるかどうかの、いわばタイムリミットで(安倍晋三は「瀬戸際」という言葉を使った。)、この2週間程度を国内の感染拡大防止ためにあらゆる手を尽くす機会であると判断、その手の一つとして休校を挙げた。

 安倍晋三の独りよがりな休校に関する発言だけを取り上げてみる。

 「2020年2月29日安倍晋三記者会見」(首相官邸サイト/2020年2月29日)

 安倍晋三「集団による感染を如何に防ぐかが極めて重要です。大規模感染のリスクを回避するため、多数の方が集まるような全国的なスポーツ、文化イベントについては、中止、延期又は規模縮小などの対応を要請いたします。スポーツジムやビュッフェスタイルの会食で感染の拡大が見られる事例がありました。換気が悪く、密集した場所や不特定多数の人が接触するおそれが高い場所、形態での活動も当面控えていただくとともに、事業者の方々には、感染防止のための十分な措置を求めたいと思います。

 そして、全国すべての小学校、中学校、高等学校、特別支援学校について、来週月曜日から春休みに入るまで、臨時休業を行うよう要請いたしました。子供たちにとって3月は学年の最後、卒業前、進学前の大切な時期です。学年を共に過ごした友達との思い出をつくるこの時期に、学校を休みとする措置を講じるのは断腸の思いです。卒業式については、感染防止のための措置を講じ、必要最小限の人数に限って開催するなど、万全の対応の下、実施していただきたいと考えています。

 学校が休みとなることで、親御さんには御負担をおかけいたします。とりわけ、小さなお子さんをお持ちの御家庭の皆さんには、本当に大変な御負担をおかけすることとなります。それでもなお、何よりも子供たちの健康、安全を第一に、多くの子供たちや教職員が日常的に長時間集まる、そして、同じ空間を共にすることによる感染リスクに備えなければならない。どうか御理解をいただきますようにお願いいたします。

 万が一にも、学校において子供たちへの集団感染のような事態を起こしてはならない。そうした思いの下に、今回の急な対応に全力を尽くしてくださっている自治体や教育現場の皆さんにも感謝申し上げます」
      ・・・・・・・・・・・・・・・
 【質疑応答】

 朝日新聞東岡記者「全国の小学校、中学校、高校などへの臨時休校の要請についてお伺いいたします。

 総理は27日に突然、発表しましたけれども、その日のうちに政府からの詳しい説明はありませんでした。学校や家庭などに大きな混乱を招きました。まず、説明が遅れたことについて、どうお考えになるかについてお伺いします。

 それから、今回の要請については与党内からも批判が出ています。国民生活や経済への影響、そして感染をどこまで抑えることができるかなどについて、どのような見通しを持っているのか、教えてください」

 安倍晋三「今回の要請に伴い、子供たちにとって学年の最後、卒業前、進学前の大切な時期に学校を休みとする、その決断を行わなければならないというのは、本当に断腸の思いであります。また、親御さんにも、地方自治体にも、あるいはまた教育関係者の皆様にも、大変な御負担をおかけすることとなります。

 それでもなお、これからの一、二週間が急速な拡大に進むのか、あるいは終息できるのかの瀬戸際との状況の中で、何よりも子供たちの健康、安全が第一である。学校において子供たちへの集団感染という事態は、何としても防がなければならない。そうした思いで決断をしたところであります。

 いわば、専門家の皆様も、あと一、二週間という判断をされた。いわば、判断に時間をかけているいとまはなかったわけでございます。十分な説明がなかった。与党も含めてですね、それは確かにそのとおりなのでありますが、しかし、それは責任ある立場として判断をしなければならなかったということで、どうか御理解を頂きたいと思います。

 その上で、これに伴う様々な課題に対しては、私の責任において、万全の対応を行ってまいります。今が正に感染拡大のスピードを抑制するために極めて重要な時期であります。国内の感染拡大を防止するためのあらゆる手を尽くしたい。尽くしていく考えであります。

 国民の皆様には、本当に大変な御苦労をおかけをいたすところでございますが、改めて、お一人お一人の御協力を深く深くお願い申し上げたいと思います」

 安倍晋三は「集団による感染を如何に防ぐかが極めて重要です」と強調している。だが、「ダイアモンド・プリンセス」号では集団感染を防ぐことができず、野放し状態に放置しておいて、よく言うよと言いたい。この失敗を成功に転ずることができるかどうか、その成否が、「今が正に感染拡大のスピードを抑制するために極めて重要な時期」と言っている発言の実効性を占うことになる。

 一方で安倍晋三は休校に関する十分な説明がなかったことを認めてはいるものの、この説明の中に第一番に入っていなければならない全国一律の休校が何が何でも必要とすることの合理的根拠の提示は完全に抜け落ちていて、どこを探しても見当たらない。記者会見の中で「危機にあっては、常に最悪の事態を想定し、あらかじめ備えることが重要です」と発言しているが、学校内の最悪の事態として集団感染を想定したことの合理的根拠についても触れずじまいとなっている。

 合理的根拠の提示を抜け落としたまま、あるいは触れずじまいのまま、学校での集団感染のリスクを言い、リスク回避を理由として休校に持っていくこの非合理性は
直視できる者は存在するだろうか。

 集団感染に関わる合理的根拠の提示があって初めて、全国一律の休校を必要とする、続いての合理的根拠の正当性が自ずと証明される。

 集団感染を最悪の事態として想定したことの合理的根拠を何ら提示しないままの冒頭発言の「万が一にも、学校において子供たちへの集団感染のような事態を起こしてはならない」の発言は、質疑応答での「学校において子供たちへの集団感染という事態は、何としても防がなければならない。そうした思いで(休校を)決断をしたところであります」の発言にしても、単に言葉だけで言っていることになる。

 これはオオカミ少年が「オオカミが来た、オオカミが来た」と言葉だけで脅して、村人を右往左往させたのと同類と化す。

 この記者会見から11日を遡る2020年2月18日付「BBCニュース」、《新型ウイルスで中国が初の大規模調査 「80%以上は軽度」》と題する記事は、〈中国の衛生当局は17日、新型コロナウイルスによる「COVID-19」に関する、初の大規模調査の結果を公表した。症例7万件以上について調べた〉としていて、うち〈中国全土の感染者4万4672人について細かく分類した〉発症例を分析別に纏めている。

◾感染者の80.9%は軽度に分類され、13.8%が重度、4.7%が致命的
◾致死率が最も高かったのは80歳以上で14.8%
◾9歳までの子どもに死者はいない。39歳までの致死率は0.2%と低い
◾致死率は40代が0.4%、50代が1.3%、60代が3.6%、70代が8%と、年齢層が上がるにつれ徐々に上昇
◾男女別では、男性(致死率2.8%)が女性(同1.7%)よりも死亡する確率が高い
◾既往症別の危険度では、心臓病が1位で、糖尿病、慢性呼吸疾患、高血圧が続く――

 「BBCニュース」記事は、〈9歳までの子どもに死者はいない。〉としているが、同じ内容を伝えている2020年2月19日付〈AFP〉記事は画像で10歳~19歳は死者1名と伝えている。
 当然、日本政府は中国の衛生当局に対して報道発表ではない、より詳しい分析内容の報告を求めたはずである。あるいは報道発表前に日本政府に対して報告があったのかもしれない。

 前者・後者いずれであっても、10歳~19歳の死者1名の死亡時の詳しい健康状態を問い合わせたはずである。「BBCニュース」が、〈既往症別の危険度では、心臓病が1位で、糖尿病、慢性呼吸疾患、高血圧が続く〉と分析内容を伝えている関係からも、既往症(今は直っているが、以前かかったことのある病気)、あるいは基礎疾患(ある病気や症状の原因となる病気。例えば、高血圧症・高脂血症・糖尿病は虚血性心疾患の基礎疾患とされる。)の有無について詳しく問い合わせたはずであるし、詳しい説明を受けたはずである。

 例え10歳~19歳死者1名の健康状態が良好、あるいは頑強の部類に入ったとしても、9歳以下の感染者数416人は全感染者数感染者数44672人に対して感染率は0.9%。10~19歳の感染者数549人は全感染者数感染者数44672人に対して感染率は1.2%で、この感染者数・感染率からは安倍晋三が言う学校での集団感染という状況は到底、見えてこない。

 致死率は高齢者程高くなっているが、19歳以下の感染者数・感染率が低いということ自体、感染が19歳以下には波及しにくいことを示していて、30歳以上から69歳までの感染者数が非常に多いということは19歳以下とは逆に感染が波及しやすいことを物語っているはずだ。

 この原因は年代別感染者数の多い少ないを見ると、思い当たることになる。感染者数のピークは50~59歳で、両隣の40~49歳と60~69歳がほぼ肩を並べていて、30~39歳が40~49歳と60~69歳に迫っている。この傾向からはこの年代が外出の機会と大人同士が群れる機会の多さとの比例を窺うことができる。

 つまり外出の機会と大人同士が群れる機会の多い大人同士は感染しやすいことの一つの証明となる。

 一方、19歳以下にしても、19歳以下同士で学校や幼稚園・保育園、あるいは託児所で群れる機会は多いものの、外出範囲は大人よりも狭くて、感染者数・感染率が低いということは19歳以下同士の感染、子どもから子どもへの感染が低いことを物語っていることになる。

 このことは子どもが家で父親や母親から感染することになる現実からも説明がつく。親が新型コロナウイルスを外から家に持ち帰って、子どもにうつすという例が少なからず生じているからである。インフルエンザの場合は逆で、幼児や子供が罹ると、母親や父親、あるいは兄弟・姉妹にうつって、家中が患者化するという事例が現実化している。

 子どもが新型コロナウイルスへの感染率の低いことは専門家が既に指摘していることだが、2020年2月29日付《WHO調査報告書 症状の特徴・致死率など詳しい分析明らかに》と題したと「NHK NEWS WEB」記事は感染者の各症状と共に、〈子どもの感染について報告書では多くが家庭内での濃厚接触者を調べる過程で見つかったとしたうえで、調査チームが聞き取りを行った範囲では、子どもから大人に感染したと話す人はいなかったと指摘しています。〉と伝えていて、子どもから大人への感染例をゼロとしているが、あくまでも「調査チームが聞き取りを行った範囲」の限定付きだから、ゼロを絶対とすることができないが、少なくとも子どもから子どもへの感染と共に子どもから大人への感染が少ない、それも非常に少ないということは指摘できる。

 但し大人から子どもへの感染が現実に存在する以上、学校教室での教師から生徒である子どもへの感染は決してゼロだとは断言できない。だからと言って、こういった予想のもとに安倍晋三が2月29日の記者会見で次の発言をしたのかどうかは疑わしい。

 安倍晋三「学校が休みとなることで、親御さんには御負担をおかけいたします。とりわけ、小さなお子さんをお持ちの御家庭の皆さんには、本当に大変な御負担をおかけすることとなります。それでもなお、何よりも子供たちの健康、安全を第一に、多くの子供たちや教職員が日常的に長時間集まる、そして、同じ空間を共にすることによる感染リスクに備えなければならない。どうか御理解をいただきますようにお願いいたします」

 要するに「多くの子供たちや教職員」が日常的に長い時間に亘って時空を共にすることが学校での集団感染リスクとなる。その備えが臨時休校だということになるが、子どもから子どもへの感染例の少なさを考慮に入れた場合、教師から子どもへの感染のリスクを家庭での大人から子どもへの感染リスクよりも低く抑えることは不可能ではない。

 新型コロナウイルスの感染予防は接触感染を防ぐために手と日常的に手が触れる場所の消毒と飛沫感染を防ぐためのマスク着用、さらに2 メートル程度の対人距離の確保が求められているが、消毒実施やマスク着用は勿論、対人距離確保は教員室では確保が難しければ、空いている教室を第2教員室、あるいはさらに増やして第3教員室として、教師を2箇所、3箇所に分散することで2メールの対人距離確保の用に供すれば、感染リスク抑制の一つの手となる。

 そのほかにマスクを付けたままの教師同士の会話はマスクの中に唾が付着することになり、その唾が物に触れたり他者に触れることを防ぐために禁止して、パソコンやスマホのメールで会話をすれば、感染リスク抑制の一手となる。

 教室での教師から生徒への感染リスクの低減は頻繁な消毒実施やマスク着用は当然のこととして、最後尾の生徒の席を背後の壁につけて、それより前の席を順次下げていき、最前列の生徒と教師との距離を2メートルに向けて可能な限り取ること、教師は授業中、通路を巡回することを禁止して、教卓から離れずにいること、生徒との会話は頭に固定して、口元でフリーハンズで使うのことができる小型マイクと、マイクとつながっていて、首から下げることのできる手のひらサイズの小型スピーカーを用いれば、小声で話しても全生徒に伝わり、唾がマスク内に貯まることを防ぎ、当然、マスクから溢れる恐れを少なくできるといったことを実行することで可能となる。

 さらに政府は公立小中高の熱中症対策として2018年度補正予算に822億円を計上、2019年年9月1日現在で設置率は78.4%。2019年度末には9割に達する見込みだとしていたが、未設置の教室は早急に全て設置して、30℃以上の環境ではウイルスの生存期間はより短くなるということだが、30℃も温度を上げることができないものの、今の時期の教室を暖房し、一定時間ごとに全ての窓を全開にして、空気を入れ替えるようにすれば、密閉空間でウイルス量が多い場合は高まるとされている感染リスクを抑えることができる。

 窓を開ける際には温度を少し高めにすれば、窓を開け放す時間を長めに取ることもできる。

 この空気の入れ替えは生徒同士が対人距離を2メートル以上に保つことができなくても、生徒から生徒への感染の確率が低いことと併せて、感染リスクを低減する十分な要件となり得る。

 様々なことを工夫すれば、学校での感染は防ぐことができる。にも関わらず、安倍晋三は合理的根拠の提示もなしに学校での集団感染の危険性を言い立てて、突然の学校休校に持っていって、さも新型コロナウイルス対策に有効・有能に取り組んでいるかのようなポーズを取った。

 オオカミ少年が「オオカミが来た、オオカミが来た」と言葉だけで脅して、村人を右往左往させたように突然の休校で保護者や学校関係者を右往左往させただけではなく、学校を管轄する自治体までをも右往左往させた。

 この強制的右往左往は新型コロナウイルス対策に有効・有能に取り組んでいるかのようなポーズを見せようとしたことの結果ではあるが、「ダイアモンド・プリンセス」号の感染対応でヒトからヒトへの感染を軽く見て、結果的に集団感染を招いた初動対応の不手際から目を逸らさせるために必要としたポーズであり、そのポーズを有効たらしめるために用意した休校という名のビックリ箱の提供なのだろう。

 でなければ、休校とすることの合理的根拠を提示できるはずである。

 人々の目はすっかり休校とその影響を受けて右往左往する関係者に向けられることになって、「ダイアモンド・プリンセス」号の集団感染からはすっかり目が背けられることになっている。

 「ダイアモンド・プリンセス」号の感染対応で集団感染を招く原因となったヒトからヒトへの感染への軽視の例を一つだけ挙げてみる。

 2020年2月5日に船内で感染が初めて確認された。既に中国でヒトからヒトへの感染が始まっている感染状況を鑑みて、クルーズ船の寄港地であった鹿児島県や沖縄県に対してヒトからヒトへの感染の危険性を重視、乗客・乗員との接触者の健康状況を把握するよう要請、、確認しなければならなかった。

 ところが沖縄県で最初の感染者となった60代のタクシー運転手の女性の場合は2月1日に那覇に寄港した際に4人の乗客を乗せ、2月5日から咳がひどくなるなどの症状が出て、2月13日から感染症の指定医療機関に入院。沖縄県が検査を行った結果、2月14日に陽性が判明した。

 もし厚労省が船内で感染が初めて確認された2020年2月5日の時点で早急に沖縄県に対して確認を要請していたなら、2月5日に既に咳がひどくなっていたのだから、直ちに感染有無の検体採取、検査へと進まなければならなかったはずだが、2月5日の咳の発症から13日の感染症指定医療機関への入院までに8日もかかっている。このように8日も日を置かなければならかったということはヒトからヒトへの感染を軽視していたことの結果としか証明できない。

 例え結果的に陽性であったとしても、危機管理として感染の危険性が高い濃厚接触対象者としての扱いだけはしなければならなかったにも関わらず、そのような扱いは何もしていなかった。

 「ダイアモンド・プリンセス」号の感染対応でヒトからヒトへの感染の危険性に敏感であったなら、船の寄港地に対してもこの危険性のアンテナを張り巡らしていたはずであるが、張り巡らしてはいなかった。

 寄港地でのこの軽視はクルーズ船での軽視と対応しているはずで、この軽視が既に触れたように集団感染の原因となった。

 安倍晋三としたら、消去してしまいたい事実であり、ビックリ箱に替えることで、消去紛いを強行したということなのだろう。

 子供の感染を防ぐためには学校を休校にして子どもを親と密着させるよりも、逆に親や大人からひ離す方が得策であるはずである。

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