マスコミ記事や「Wikipedia」を利用して、民主党野田内閣(2011年9月2日~2012年12月26日)がマニフェストに書いてなかった消費税増税法を含む社会保障・税一体改革関連法案(以下「消費税増税法案」と記載)成立過程と、その際の混乱を振り返ってみることにする。
2011年12月29日、野田佳彦、民主党税制調査会会合に出席、社会保障と税の一体改革を目指すことを伝え、消費税率を引き上げる具体的な時期や幅を盛り込んだ素案の取り纏めの協力を依頼。
2012年3月30日、野田内閣、消費税増税法案を閣議決定。
2012年3月30日、野田内閣、衆議院に消費税増税法案等の法案を提出。質疑開始。
2012年3月31日、小沢一郎氏、消費税増税法案が閣議決定されたことについて「増税の前にやるべきことがある」と批判。
2012年6月21日、民主党・自民党・公明党の三党間で修正協議。消費税増税法案等の合意を見る。
2012年6月26日、衆議院本会議で消費税増税法案等三党の賛成により可決。小沢グループ、採決で反対票を投じる。
2012年7月2日、小沢氏、同調50人議員と共に民主党に離党届提出。翌3日、民主党は反党行為と見做して小沢氏37人を除籍処分とする方針を決定
2012年7月9日、小沢氏を含む37人の議員の除籍処分を原案通りに確定。
2012年7月11日、小沢氏、グループ議員と共に新党「国民の生活が第一」を結党、代表に就任。
2012年8月7日、「国民の生活が第一」が消費税増税に反対する他の野党(日本共産党、社会民主党、みんなの党、新党きづな、新党日本、新党大地・真民主)と共に衆議院に内閣不信任決議案を、参議院に首相問責決議案を提出。
2012年8月8日、野田・谷垣・山口3党首会談。内閣不信任決議案・問責決議案の否決と参議院での消費税増税法案等の法案の可決・成立の協力を求め、協力の見返りに「(一体改革)関連法案が成立した後、近いうちに国民の信を問う」と解散を約束。
2012年8月10日、参院本会議で消費税増税等の法案が可決・成立。
2012年9月26日、自民党総裁選で谷垣の後任として安倍晋三を自民党総裁に選出。
2012年11月14日、野田・安倍党首討論
野田佳彦、野田内閣提出の衆議院議員定数削減法案への今国会中の成立を求め、「御決断をいただくならば、私は今週末の16日に解散をしてもいいと思っております。ぜひ国民の前に約束してください」
安倍晋三が野田佳彦の解散の言質を得て、衆議院議員定数削減法案に今国会中の成立を約束。
2012年11月16日、野田佳彦は午前の閣議で衆議院の解散を閣議決定、午後の衆議院本会議で解散執行。「近いうち」発言から、ちょうど100日経っていた。
2012年12月26日、野田民主党は衆議院選挙で単独で絶対安定多数の確保となる294議席を獲得した野党第一党の自民党に大敗して政権の座を奪われる。
こう見てくると、野田佳彦は最初は消費税増税法案の成立協力の見返りに解散を約束したものの、成立後、きっぱりと約束を果たさず、自公から解散を盛んに迫られると、自身の成果の一つに加えたい欲が働いのか、衆議院議員定数削減法案まで加えた。
だが、消費税の5%から8%への増税は2014年4月1日にその約束は果たされたが、安倍晋三は8%から10%への約束は今以て果たさず、衆議院議員定数削減法案の成立についも現在もその約束を果たしていない。
野田佳彦が消費税率の引き上げを目指して民主党税制調査会会合に出席した2011年末から年が明けた2112年1月当時の内閣支持率と消費税増是についての賛否、さらに谷垣禎一、山口との3党首会談で「関連法案が成立した後、近いうちに国民の信を問う」と解散を約束した2012年8月当時の内閣支持率と消費税増税についての賛否を見てみる。
毎日新聞が2012年1月22日、23日に行った世論調査。
「野田内閣支持する」32%(前回12月比-6ポイント)
「野田内閣を支持しない」44%(前回12月比+10ポイント)
野田内閣発足以来、初めての逆転現象だという。
消費税増税
「賛成」37%
「反対」60%
朝日新聞社が2012年8月4、5日に実施した世論調査。
内閣支持率
「野田内閣支持する」22%(前月7月比-3ポイント)
「野田内閣を支持しない」58%(前回7月比±0ポイント)
「消費税増税」
「賛成」42%(前月7月比±0)
「反対」48%(前月7月比-1ポイント)
野田内閣の人気は急降下しているが、消費税増税に対する国民の姿勢は拒絶反応を弱めている。これは自公も消費税増税の姿勢ていて、民主党と共に増税を図ることにしていたことから、社会保障政策の財源捻出の必要性を認識するようになっていたからではないか。
だとしても、国民の野田内閣を見る目は厳しさを増して、ブレーキがかからない状態となっている。
また、社会保障政策の財源捻出の必要性から消費税増税に止むを得ないとしていたとしても、表向きの容認であって、内心は違っている世論調査がある。
東京の人材派遣会社がインターネットを通じて仕事を探している主婦350人から聞いた調査で、2012年8月7日付の「NHK NEWS WEB記事が伝えていた。
消費税を増税した場合の生活への影響。
「生活に影響がある」96%
影響があるとした主婦に対するその具体的対策(複数回答)。
「出費を減らすことになりそう」79%
「収入を増やさないといけない」65%
「生活設計を見直すことになりそう」32%
世論調査からも窺うことができる政権運営の厳しい環境にも関わらず、野田佳彦は2012年8月8日の谷垣・山口との3党首会談で、参議院での消費税増税法案等の法案の可決・成立の協力を求めて、協力の見返りに「(一体改革)関連法案が成立した後、近いうちに国民の信を問う」と解散を約束した。
だが、世論の動向から解散しても勝算がないことは気づいていたのだろう。「近いうちに」の約束を果たすことができずにずるずると時間稼ぎをし、「近いうちとはいつのことだ」と散々せっつかれた果てに衆議院議員定数削減法案今国会成立の約束と自身は死んで、相手は生き残るような無理心中をする形で2012年11月16日に解散に追い込まれた。
国民が何よりも腹を立てていたのは2009年総選挙の際の民主党マニフェストには消費税増税は選挙に勝利して政権を担当しても4年間は増税しないと約束してあったのだから、解散するか、衆議院の任期満了を待って次の総選挙で消費税増税を問うべきを、そうはせずに衆議院の任期内に法案だけは通しておこうとしたした、一種の詐欺紛いのことをしたからであろう。
一騒動も二騒動もあった野田消費税増税法案の成立だったが、安倍晋三は2014年4月に5%から8%への約束を果たしたものの、8%から10%への増税は約束を2度破り、2016年6月の時点で8%凍結のままで7月の参院選に臨もうとしている。
そしてマニフェストに書いてなかったにも関わらず消費税5%から8%増税成立に向けて突っ走って様々な騒動を引き起こした張本人たる民主党を始め、他の野党もこぞって消費税増税反対もしくは延期の声を一斉に上げていて、与野党共に現時点では増税反対、延期の姿勢で足並みを揃えている。
そして国民の多くもこの姿勢を支持している。
与野党の多くの国民を交えたこの延期あるいは反対に向けた現在の足並みの揃えは2012年7月当時、民主党の小沢一郎氏が増税反対の姿勢を強行に貫き、孤立することになった状況からすると、政治の皮肉を見ないわけにはいかない。