現代の虚無僧一路の日記

現代の世を虚無僧で生きる一路の日記。歴史、社会、時事問題を考える

2/3 親鸞

2009-02-02 08:56:49 | 五木寛之
2/3 中日新聞連載中の五木寛之『親鸞』。
さて、子供の治療の結末は、範宴(後の親鸞)が、
背中の腫れ物の芯を吸い出して、快方に向かう。

私も「医学書」でザクロのように口の開いた腫れ物を
見た記憶がある。五木寛之の『親鸞』では、人々は
「黒面法師の祟りじゃ」と怖れおののくが、法螺房は
「肉の中の芯を吸い出せば治る」と、範宴にやらせる。
医学的に正しい処方かは判らぬが、「臍下丹田に力を
込めて吸うのだ。龍が滝の水を吸い上げるように、
できものの芯をわが腹中に収めるように、精神集中して、
口先でなく全身で吸え」と。

この件(くだり)に感銘した。私は「吸江流尺八一路」
を名乗っている。門下生に「尺八は吹くものに非ず、
吸うものだ」と教えている。吹くことに気をとられている
うちは素人。「吸うことを体得して一人前」と教えている。
ライブでもコンサートでも、楽譜通りにただ尺八を吹く
だけでは素人。会場の空気を吸い尽くして、聴衆が
望む音を導き出して、心からの拍手が得られる。

範宴の所作もまさに、大勢の聴衆が見守る中での
パホーマンス。美しい女将の見つめる目、「吸うのよ」
という言葉を場面に添えているところも憎い。そして
「汚れたわが身を懺悔し、仏の甘露と信じて吸え」の
法螺房の叱咤も効いている。

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2/2 親鸞

2009-02-02 06:53:14 | 五木寛之
2/2 中日新聞掲載の五木寛之『親鸞』。
六角堂に集まる貴賎上下の老若男女。
背中に奇妙な腫れ物ができた男の子を
治療する法螺房。その子の膿を口で吸
い出す。そして親鸞に「やってみるか」と。

「ここに集まっておるあわれな衆生は、
みな仏のみ光を求めておるのじゃ。
救世観音に祈るより、この子の腫れ物を
吸いだすことのほうが、よほど仏の心に
かのうておる」と。

経典を読み、厳しい修行に独り取り組ん
だからといって、衆生の苦しみを解くこと
ができない。それを如実に突きつけられた
親鸞の苦悩だ。

それは一休も同じだった。衣食住になに
ひとつ不自由しない良家の子弟ばかりの
五山の僧侶たち。金と権力で階級を上る
ことしか頭にない。相次ぐ戦乱と飢饉に
飢え苦しむ衆生を助ける気などさらさら
無い官寺に、一休もあいそをつかした。
親鸞は一休より400年前、天台の聖地
比叡山に幻滅する。

その親鸞を宗祖とする浄土真宗も、今は
金まみれ。五木寛之は、仏教の原点を、
鋭く仏教界に突きつけている。

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2/1 日曜日

2009-02-02 06:52:38 | 虚無僧日記
2/1 雲ひとつ無い快晴だが、昨日に引き続き風が強い。
栄に出る。不況のせいか、寒さのせいか人通りが少ない。
三越、松坂屋、丸栄の3Mが軒を連ねるが、売上大幅
ダウンで苦境に立たされているとか。私も3時間吹いて
200円。名古屋に移動する。地下鉄代は660円になる。
元をとらねばと頑張る。

この冬一番の寒さを感じる。手足の感覚が無くなる。
夜8時を過ぎてようやく一人二人といれてくださる。
年配の男性が近づいてきた。「一路さんですか」と。
「新聞で見た。虚無僧にあこがれてる」と。こういう
出会いがあるとうれしい。元気が出、寒さも忘れる。

夜9時を過ぎると、スキーやスノーボードを持った若者
ばかりになる。これから夜行バスで雪山に行くのだ。
ここよりもっと寒い所でも、遊びとなると寒さを感じない
のだから、「熱い寒い」も心の持ちようひとつ。

地下鉄代の600円は超えたので、帰ろうとすると、黒い
セーターの男が近づいてきた。以前無心されて、ゲ箱の
中の200円をあげた男だ。「この前はどうもありがとう
ございました」と、お礼を言った後、また「ギョーザ代
だけでも」と無心してきた。服装はまともだからホーム
レスではない。お笑いタレントに似た顔の調子いい男だ。
ゲ箱の中の半分を渡す。

彼にやるくらいなら、毎朝会うホームレスにもあげたいと
思っていたら、居た。「食事はどうしているんですか」と
聞くと、「もうすぐ(店が閉店になると、売れ残りの)
弁当やパンを100円で分けてくれる所がある」とのこと。
彼は足が悪いから、そこへ行くのも大変そうだ。ゲ箱の
中のお金を渡そうとすると、「逆だ、私の方が差し上げ
なくてはならないのに」という。遠慮深い。ますます気に
いって「皆様の浄財ですから」と450円を横に置いてきた。

すると風もやみ、温かくなってきた。心が温かくなったのか。
懐は寒くなったが、私には帰る家がある。彼らはこの寒さの
中、一晩過ごさねばならない。人間ってたくましい。

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