ケイの読書日記

個人が書く書評

米原万理「嘘つきアーニャの真っ赤な真実」

2006-07-24 17:38:13 | Weblog
 先日、若くして病死なさったロシア語会議通訳の米原万里さんは、1960~1964年プラハにあるソビエト学校で学んだそうです。

 米原さんのお父さんは、日本共産党の幹部で、そこを代表してプラハにある「平和と社会主義の諸問題」編集局で働いていました。そこの職員の子どもは、ほとんどプラハにあるソビエト学校に通っていました。

 その時の同級生が、ソビエト崩壊後、激動の東欧でどのように生きたかを綴ったノンフィクション。

 
 日本の共産党は政権政党ではないので、ソ連が崩壊しても大きな影響を受けなかったけれど、ソ連の衛星国では大混乱だったでしょう。



 ルーマニア人のアーニャの父親は、チャウシェスク政権の幹部だったが、チャウシェスク処刑後も失脚せず、一応は実権のない名誉職についている。
 しかし子どもたちは皆、祖国を捨て、イスラエル、アメリカ、イギリスへ行って帰国する意思は無いらしい。

 北朝鮮でもそうだけど、外国に出国できるのは恵まれた共産党幹部の家族だけ。
 考えてみれば、国に一番貢献しなければならないはずの立場の人が、一番先頭に立って祖国を見限っている。


 また(今はもう解体してしまったが)ユーゴスラビアのヤスミンカの半生も波乱に満ちている。
 ユーゴスラビアに民族紛争がおこり、今まで同国人として仲良くやっていた人々が、分離独立を求め殺しあう。
 ヤスミンカはボスニアムスリムだったので、生命の危険さえ感じる立場に。

 
 民族ってそんなに大事なものだろうか?色々考えさせられる1冊だった。
コメント
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