ケイの読書日記

個人が書く書評

山田風太郎「戦中派不戦日記(昭和20年4月~6月)

2009-07-23 14:00:15 | Weblog
 昭和20年4月30日の日記に
「独、ついに米英軍に無条件降伏を申し出たりとの報道あり。されど、米英、ソ連にもまた同様に降伏せよと、拒絶したりと。
 ソ連のモロトフ、サンフランシスコに於いて横車を押しまくる。勝者と敗者の運命の光と惨めさ。ヒトラー総統の心中、実に一大地獄たらん。」という記述がある。
 
 そうか、ドイツは早々と無条件降伏をしたんだ。となると、ドイツと戦っていたソ連は、もうそっちに兵力を向ける必要は無い。ということは『日ソ不可侵条約』を反故にしてソ連が南下するのは必至。
 そういう事を、風太郎は日記のあちこちに書いている。
 そんな一医学生でもわかる理屈を、どうして日本の軍部は分からなかったんだろうか?

 中国東北部にいる民間人に「ソ連が南下してくる可能性大」との認識があれば、引き上げてくる時の阿鼻叫喚の大混乱は、少しは避けられたんじゃないだろうか?


 今まで奇跡的に残っていた風太郎の下宿先も、5月24日の大空襲で焼き払われる。風太郎が生きているのが不思議なくらいのすざましい大規模な空爆。

 B29から落ちてくるのは、焼夷弾といってクラスター爆弾の一種。親爆弾が空中で開き、子爆弾がばらまかれる、その音はザァーァッと豪雨のようらしい。
 爆弾が集中豪雨のように降ってくるんだ!! あらゆる所で人が死に火災がおき、とうてい消し止める事など出来ない。
 東京一面どころか、横浜から東京一帯、灰燼と化す。

 それでも『家は焼けても心は焼けぬ!起て!日本人!』という立て札が…。
ああ、イラクの人に見せてやりたい。
コメント (2)
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