ケイの読書日記

個人が書く書評

東川篤哉「謎解きはディナーのあとで③」

2013-01-19 13:49:16 | Weblog
 シリーズ第3作なので、飽きが来るだろうかとも思ったが、トリックの方は本当にクオリティが高い。

 特に第4話。被害者の小柄な老婦人が、幼児用の小さな椅子(よくファミレスで見かける。脚立に似た台座の上に小さな座面と小さな背もたれがついているアレ)に座らされている所を発見された。もちろん死体で。
 一体なぜ、犯人は死者をそんな奇妙な姿にしたのか?死者を辱めるため? そこには、そうせざるを得ない必然があって、それが事件を解くカギになっている。

 他には第6話。被害者を殴り殺した木刀には、被害者の指紋しか付いていなかった。なぜ?空き巣なら手袋をしていて当たり前だが、空き巣とは考えられない状況があって…。

 この小説も、エラリー・クインの「読者への挑戦状」ではないが、麗子刑事の語る事件部分と、影山執事の解決部分がハッキリ区別されている。
 麗子の話だけ読んでいると、こんな少ないデータで犯人が分かる訳ないだろ!とぶーたれるが、影山の謎解きは本当に見事で、そうだ!どうして私はそこに気が付かなかったんだろうと反省しきりです。

 他、麗子と影山の掛け合い漫才も、影山の毒舌も絶好調!

 ただ、こういったトリックをメインにする本格推理物では仕方ないかもしれないが、動機や犯人の心の葛藤がほとんど書かれていないのが残念。第5話の女子大生殺しなど、動機部分こそ読みたかったのに。
 まあ、そういう所は、社会派推理小説にお任せすればいいかな。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする