ケイの読書日記

個人が書く書評

歌野晶午「死体を買う男」

2014-03-21 14:14:42 | Weblog
 サナダさんがブログで紹介していて、面白そうだったので読んでみた。Very good!!
 マトリョーシカのように二重構造になっていて、その作中作品に、江戸川乱歩や詩人の萩原朔太郎が登場する。
 
 詩人の萩原朔太郎って…もちろん名前は知ってるけど、高校の国語の教科書に載ってたかな? 猫が鳴いてる詩があったような気がする。中原中也だったら、少しは覚えているんだけど。詩集など、全く興味ないので、キレイさっぱり忘れてるね。


 自分の才能に限界を感じ、創作に行き詰った乱歩は、南紀白浜で自殺しようと試みるが、そこで1人の学生に助けられる。ところが、数日後、その自殺を止めたはずの彼が、首つり自殺をとげた。本当に自殺なのか? 不審に思った乱歩は、朔太郎も巻き込み、事件の真相を突き止めようとする。
 朔太郎がホームズ役、江戸川乱歩がワトソン役。

 調べてみたが、実際、萩原朔太郎ってミステリが大好きで、江戸川乱歩と親交があったんだってね。(「人間椅子」や「パノラマ島奇譚」がお気に入りらしい)
 それに音楽も好きで、マンドリンの演奏会も開いているし、作曲もしたらしい。こういう所が、ヴァイオリンがプロ級と言われるホームズに似てる。

 だから、歌野晶午が想像力をふくらませ、こういった作品を書いたのだろう。

 文体も、少し乱歩に似せようと、擬音やカタカナを多用してるが、すっごくライト。コメディと言ってもいいくらい。
 墓を掘り返すシーンがあるが、本物の乱歩だったら、恐ろしくて、背後を何度も振り返りつつ読むだろうが、この作品はちっとも怖くない。

 古典的な双子を使ったトリックで、こじんまりとまとまっている。でも、朔太郎と乱歩のキャラで読ませる。二人の会話が、掛け合い漫才みたいで、御手洗と石岡を思い出すなぁ。
コメント
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