ケイの読書日記

個人が書く書評

畑野智美 「神さまを待っている」 文藝春秋

2019-10-08 09:22:08 | 畑野智美
 久しぶりに本を読んで真剣に考えた。私が、この人の立場になったら…どうするだろうって。

 文具メーカーで派遣社員として働いていた26歳の愛は、派遣切りにあい失業する。家賃が払えなくなり、ネットカフェ難民に。マンガ喫茶で寝泊まりして、菓子パンでお腹を満たし、日雇いのアルバイトを始める。しかし生活は苦しくなるばかり。
 困り果てた愛は、マンガ喫茶で出会った、同い年の女の子と『出会い喫茶』でお金を稼ぐ道を選ぶ。

 うーん、この愛さんは静岡出身で、実家では母親が亡くなり父親が再婚したので、なかなか帰りづらいのだ。父親との仲も悪い。頭を下げて拝み倒せば、小額のお金だったら用立ててくれるかもしれないが、そうはせず、ネットカフェ難民になる選択をした。
 でも、客観的にみれば、仲が悪いといっても父親は、大学4年間の学費と入学金・授業料そして家賃を払ってくれた。800万円はくだらないだろう。それを考えれば、食費や水道光熱費・衣料費といった生活費を自分で工面するのは仕方がないだろう。
 愛さんには、奨学金の返済義務はないので、他の人と比べてもラクなはずだ。

 就職氷河期で、卒業間際まで就職活動をしたが、正社員として就職できなかった。派遣切りにあい、職安でアルバイトではなく正社員の職を探すが、ない。あっても面談で落とされる。90日間の失業保険の出ている時は正社員を探すのもいいが、切れてしまうのに正社員に固執するのは…どうかねぇ。
 若い女性の場合、派遣も正社員も、条件的にはさほど差が無いように思えるけど…。むしろブラック企業に正社員で入ってこき使われるより、派遣でキッチリ定時に帰り、ちょっとアルバイトした方が、心身とも健やかでいられると思うが。

 愛さんはコミュニケーションに難がある訳じゃなく、友人も多い。(で、結婚式に多くよばれ、ご祝儀貧乏)だから、友達に「ルームシェアしたい子、いないかな?」「短期のアルバイト、ない?」などと、声を掛けてみれば良かったのに。
 見栄はって「文具メーカーで働いてたんだけど、貯金もあるから、しばらく休む。海外でも行こうって考えてる。」なんて周りに言うから誰も助けてくれないんだよ。探せば、ルームシェアしたい子、必ずいると思うよ。

 先ほど実家の話を書いたが、愛さんの母親が生きていても、20代後半の独身女にとって実家はそんな安泰な場所でない。相手もいないのに「ねぇ、結婚はどうするの?」ぶらぶらしていると「いい加減働きなさい。ご近所の目が…」と小言の嵐。子どもやダンナを連れて帰省しているならともかくね。
 そもそも地方には仕事が少ない。東京23区で気に入った仕事がないのに、地方にある訳がない。
 そして愛さんは、母親と大喧嘩して家を飛び出し、東京に舞い戻ることになるだろう。
 
 正社員になれればいいけど、なれなくても長く働き続け継続的に収入を得て、出費を抑える生活を心がけるのが良いんじゃない?

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