ケイの読書日記

個人が書く書評

「猫のエルは」 文:町田康 絵:ヒグチユウコ

2019-10-18 08:44:22 | その他
 文を書いた町田康さんも、絵を描いたヒグチユウコさんも、両方とも有名な人なので名前は知っていたが、読んだり見たりしたのは初めて。これで長年の宿題が済んだような気になってる。
 
 猫をモチーフにした短編が5編収められている。その中の一つ、『ココア』が、とても素敵。
 ある男が大酒を飲んでひっくり返り、目を覚ますと、猫の国にいた。そこでは、人間は猫ほどの大きさに縮小し、言葉はなく、にゃあにゃあと発声するだけ。かわりに猫は、少し変だけど人間の言葉をしゃべり、この世界の主人である。
 人間はノラ人間として、公園やマンションの植え込みやビルの隙間ですきっ腹を抱え、ゴミを漁る。猫たちに捕まり虐待される人間もいる。
 その男も、乱暴な猫に捕まり、いじめられ、もう死ぬんだと意識が遠のいていったが…。目が覚めると別の猫に助けられていた。
 ココア。男が人間の世界にいた時、男と22年間一緒に暮らした猫である。ずいぶん前に死んでしまったけど。

 猫の恩返し。(そういえばジブリにそういう名の作品があったような。観てないけど。)
 
 ココア猫が、冷蔵庫を開け(どうやって開けるんだ)笹かまぼこを取り出し、男に食べさせる。この笹かまぼこを持った猫のイラストが、かわいい。しかし、そうした平穏な暮らしは続かなかった。
 
 マンションの管理人のおっさん猫がやってきて「このマンションは、人間の飼育禁止だから、すぐ処分してくれ。できないならこっちでやる」と通告したのだ。
 男に近づく管理人のおっさん猫。その時、おっさん猫めがけて、黒い矢のようなものが飛んだ!ココアが体当たりしたのだ! 頑張れ、ココア!!!
 男に「玄関のドアを閉めていきますが、何があっても絶対に開けないでください」といって闘うため、管理人のおっさん猫を追いかけていくココア。なんてカッコいいんだよ。まるで高倉健みたいじゃないか。
 不覚にも、私はここで、すこし涙ぐんでしまった。

 最終的に男は、元の世界に戻る。でも、こういう猫の恩返しの話を読むと、我が家の13歳のみぃ太郎の事を想う。ああ、来世でみぃ太郎とまた会う事はあるだろうか?恩返しを期待しちゃダメ?

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 畑野智美 「神さまを待って... | トップ | 「金時計」 ポール・アルテ 平岡... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

その他」カテゴリの最新記事