ケイの読書日記

個人が書く書評

中野京子 「怖い絵2」 朝日出版社

2019-10-04 08:29:51 | その他
 前作の「怖い絵」が評判良かったのだろう、続編が出ている。『レディ・ジェーン・グレイの処刑』みたいな首切り場面を描いた作品は確かに怖いが、えっ!?この絵のどこが怖いの?という作品もいっぱいある。

 ピカソ『泣く女』。有名だからほとんどの人が知っていると思うが、怖いというより滑稽な感じがするなぁ。
 キュビズム(立体をいったん分解し、さまざまな角度から再構築する描法)って本当にわけわからん。そんなことして何の意味がある?! それだったら、顔の向こう側に鏡を置いて、その鏡の中に描くという構図にすればいいのに。
 写真が一般的になり、写実ではどう考えても負ける絵画の悪あがきなんだろうか? 反戦画のゲルニカも、私には悲惨さは伝わってこない。全然分からない。分かっている事は、若い頃のピカソはハンサムで、女性にすごくモテたという事。その上、絵描きなんだから最強だよね。ハゲたオッサンになっても、おじいさんになっても、女をとっかえひっかえできた。ずいぶん自分勝手な人だったらしいが、そこが良かったんだろう。

 カレーニョ・デ・ミランダ『カルロスⅡ世』を初めて見た。一目見ると分かる。この人、長くないなって。若いし、素晴らしく豪華な服を着て胸には勲章もぶら下げ、腰には剣を差しているが、宮廷画家が5割増しに描いても、顔色は悪く無表情。不治の病に罹っているような風情。背後に、大鎌を持った死神がいてもおかしくない。

 新しい下賤の血を王家に入れるより、古く濁った高貴の血を選んで血族結婚を繰り返していたから、こうなっちゃうんだろうね。
 なまじっかスペインが大国になったので、プリンセスなら誰でもいいという訳にはいかない。格下すぎる王室や、非カトリックの国の王女とは結婚できないんだ。
 いとこ婚ならまだしも、叔父姪・叔母甥の婚姻を何代も繰り返すと、呪われた子が生まれる。

 日本の平安時代の貴族たちも、異腹の兄弟姉妹だったら婚姻OKだったらしい。すごいなぁ。でも実際、奔放な寝所のおかげで、父親が違っている事も多く(失礼!私の勝手な解釈!)それほど弊害は多くなかったかも。

 江戸幕府などは「腹は借り物」といって、朝廷からお嫁に来た高貴な女性には子どもを産ませず(朝廷の発言力を強めない)下賤の娘を高位の武家の養女にして、大奥に入れていたという。この方が血の澱みを防げたんだろう。

 それにしても、スペイン王家のお妃さまは、真面目な人ばかりだったんだね。平安時代のお姫様のように、寝所にちょいちょい男を招き入れていれば、丈夫な子が生まれていただろうに。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 群ようこ 「じじばばのるつ... | トップ | 畑野智美 「神さまを待って... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

その他」カテゴリの最新記事