ケイの読書日記

個人が書く書評

加賀乙彦 「不幸な国の幸福論」

2015-10-09 21:34:34 | Weblog
 こういった人生の指南書みたいな本は好きではないが、加賀乙彦だから読んでみた。
 「足るを知る」とか「自分の人生の主人公になる」などなど、こういった人生を考える本に書かれてある定番が、ここにも書かれてある。そんな事、分かってるって!分かっていても、出来ないから困っているんでしょう!とブツブツ言いながら読み進める。
 とにかく、すごーーーく博学な人の本なんだから、人生論を期待するんじゃなくて、トリビアを期待して読めばいいんだ。

 すると…あったあった、こういったトリビアが。
 スウィフトの『ガリバー旅行記』というと、小人の国が有名だけど、巨人の国、空飛ぶ島の国、降霊術の国、などなど、いろんな国にカリバーは行っている。
 その中で、不死の国があるそうだ。全員が不死という訳ではなく、一時代に数人、死なない人間が生まれてくる国。不死と聞くと、その国の人たちは皆、不死人間になりたがると思うでしょう? でも、その逆で不死の人間を忌み嫌い、自分の身内から不死人間が現れないよう願っている。
 なぜなら、彼らは不死ではあるけど、不老ではないから。味覚も記憶も好奇心も愛情も、生きる喜びすべてを失い、世間から厄介者扱いされ、老いさらばえた体で、ただ生き続けるだけ。こうなると、一種の刑罰だよね。
 
 しかし、ここで一つの疑問が。作者のスウィフトはもちろんキリスト教徒だろうが、キリスト教では、最後の審判にパスした善人は天国で永遠の命を得るんじゃなかったっけ?
 それなのに、永遠の命を、こんな否定的に書いて、教会から問題視されなかったのかな?
 なんにせよ、人が死なないという事は、人が生まれないという事。そうじゃないと、地球上が人間で溢れてしまう。ということは、天国って人が生まれないんだね。
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