ケイの読書日記

個人が書く書評

辻村深月 「かがみの孤城」 ポプラ社

2020-02-01 16:44:19 | 辻村深月
 辻村深月は稀代の書き手。泣きました!!!

 中一の女の子・こころは、中学校に入学してすぐ、クラスのボス的な女の子に目を付けられ、嫌がらせをされて学校に行けなくなる。毎日、家の中でウツウツとしているこころは、自分の部屋の姿見が光っているのを見つけ、手を伸ばすと、鏡の向こうに引きずり込まれてしまう。
 そこは…かがみの孤城だった! そこには、こころ以外にも6人の少年少女がいて、彼らも何かの事情で不登校になっているようだ。彼らのお目付け役は、オオカミのお面をかぶった小さな女の子「オオカミさま」。オオカミさまは、こころたちに【願いの部屋】に入るカギを探し出し、扉を開けて願いを叶えろと告げる。

 こうやって少年少女たちの冒険が始まる…といったロールプレイングゲームみたいな展開を期待するが(最後は冒険ファンタジーと言う展開になる)最初のうちはお互いを知らないから腹の探り合いで、叶えたい願いはあるが消極的。かがみの孤城に行ったり行かなかったり。なにしろ、こころたちの現実世界でも時間は進行していて、嫌な子はますます嫌な子になって大変なのだ。

 ここらへんのこころの心情を思うと胸が潰れる。大規模中学に入学したこころは、今までの友達と離れ、不安の中にいる。近所に萌ちゃんと言う子が引っ越してきて同じクラスになり、こころは仲良しが出来たと喜んでいたが、クラスのボス・真田さんグループが萌ちゃんに何か言ったらしい。こころが話しかけると、迷惑そうな顔をする。ひとりぼっちになったこころ。実は真田さんが好きな男の子が、どうも小学校の頃こころを好きだったらしく、嫌がらせが始まったんだ。
 その男の子から、自転車置き場で「あのさぁ、オレ、お前みたいなブス、大嫌いだから」と言われた。どうも真田さんが、その男の子に言わせたらしい。

 数日たって、こころが家で宿題をやっていると、その子たちが10人くらいでこころの家に来た。他のクラスの子もいる。真田さんの友人たち。勝手に庭に入り、どんどん戸を叩き「出て来いよ。いるんだろ」「裏に回ろうよ。窓から姿、見えるかも」「しめようよ」 恐ろしい。私でも身がすくむ。もし見かけたら110番通報すると思う。その翌日から、こころは学校を休み始めた。

 表面的には、真田さんたちが家に来た。それだけだ。乱暴な言葉を言ったかもしれないが、家を壊された訳でも、こころを殴った訳でもない。ただ、1人対10人、1人対多数。これが全てを物語る。1人じゃ闘えない。お父さんお母さんがついてるという人がいるだろう。でも、大人じゃダメなんだ。同年代の子じゃないと! 誰が一人でも同年代の子が彼女の味方についていたら、こころちゃんは頑張れたと思う。それが、かがみの孤城で出会った6人なんだ!!

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