ケイの読書日記

個人が書く書評

奥泉光「桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活」

2011-10-17 11:25:22 | Weblog
 クワコーこと桑潟幸一は、千葉にある『たらちね国際大学』の准教授。

 准教授なんて私の身内や友人にいないし、犯罪学の火村英生くらいしか知らないので、その生態がわからない。
 ほとんど女子しかいない大学の先生だから、クワコーはモテモテだろうな、さぞスタイリッシュな生活をおくっているだろう、と想像し読み進めたが…クワコー悲惨。クワコーかわいそー。顧問となっている文芸部のパシリではないか!!

 少子化の影響で、たらちね国際大学も毎年定員割れが続いて、学生さんはお客様、決してご機嫌を損ねないように、上司から言い渡されているのである。
 しかもクワコー、他の大学から移ってきて1年目という事が影響しているのか、月額手取りで110350円! 大学教師として10年のキャリアがある40歳なのに。 手当てが全く付かない。ボーナスも出るかどうかわからない。
 いくらなんでもひどくない?

 しかし、作者の奥泉光は、近畿大学の現職教授らしいから、この数字にまったく根拠が無いわけでもあるまい。


 文芸部には、ジンジンこと神野仁美という、黒のTシャツ・黒のジーンズ・黒のニット帽をかぶっている部員がいて、彼女は家賃が払えなくてアパートを追い出され、大学の敷地内に段ボールとブルーシートで家を作って住んでいる。
 このホームレス女子大生の推理力や行動力が抜群なのだ!

 クワコーの周りで起きるミステリアスな事件(研究室で起きる怪奇現象・盗まれた手紙や書類)をスラスラ解決。しかも解決したのはクワコー先生という事にしてあるので「クワコー名探偵」という評判が一部にはある。

 地味な事件だけど、推理部分はキチンとしている。でもこの本の面白さは、クワコーVS文芸部員の掛け合い漫才にあるね。
 続編が出たら是非読みたいです。

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