ケイの読書日記

個人が書く書評

三浦しをん 「むかしのはなし」 幻冬舎文庫

2018-12-23 11:33:32 | 三浦しをん
 日本の昔話を、三浦しをんが現代風にアレンジした短編集と思って読んだが、どうも日本昔話は関係ないような気がするなぁ。
 それより「3ヵ月後に隕石がぶつかって地球が滅亡し、抽選で選ばれた人だけが脱出ロケットに乗れる」というSFでよくある、重苦しい状況が全編を流れている。どうする?!人類!

 先日読んだ、たもさんの『カルト宗教 信じてました』の中でも、小学生のたもさんが、世界の滅亡を心底恐れていたことが描かれている。彼女の小学校の頃、ノストラダムスの大予言が流行っていて、小学校の教室では、その話でもちきりだった。
 それが、「エホバの証人」の教義 ハルマゲドンで世界は滅亡し、エホバを信じる人たちだけが生き残る という教えに関心を向けさせる引き金になったのだ。

 でも、世界中のほとんどの人が死んで、エホバの証人だけが生き残った世界で「神さま、ありがとうございます。ほとんどの人は死んでしまったけど、私は生き残ることができました」なんて神さまに感謝する事ができるんだろうか?周囲には累々と死体が積み重なっているのに?
 自分たちだけが生き延びて、そんなに嬉しい?

 
 3ヵ月後に隕石がぶつかって地球が滅亡する…案外、地球と運命を共にしたいと思う人が多いんじゃないかな? そう考えるのは、私が年を取ったから?
 1000万人しかロケットに乗れないとしたら、若い人に乗ってもらいたい。特に出産可能な若い女性。そして、子どもたち。高度な技術や能力を持った若者。年寄りは、船長みたいに船と運命を共にするのよ。今までお世話になった地球とともに。

 そうそう、この中の第5編「たどりつくまで」に興味深い箇所があった。
 地球が滅亡するまで、あと2か月という中で、1人のタクシードライバーが淡々と働く。客はうんと少なくなったが、それでもいるので車を走らせる。仕事を終え部屋に戻ってもすることは特にない。パソコンで営業日誌を付けるが、翌日にそれを観葉植物に読み聞かせるのだ。
 地球が滅亡することを植物は知らない。植物を不安にさせたくない。毎日、声という名の空気の振動を植物に与える。

 いいなぁ、この習慣!! あまりにも静的だけど。自分の老後を考える。我が家のみい太郎が死んだ後の事を考える。猫でも20年近く長生きすることがあるから、次の猫は気楽に飼えないよ。植物にシフトするか…。だっこして、ふわふわの毛に触る事はできないけど。

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