ケイの読書日記

個人が書く書評

三浦しをん「三四郎はそれから門を出た」 ポプラ文庫

2017-12-05 16:18:50 | 三浦しをん
 みっしり詰まった読書エッセイ。三浦しをんが読書家だという事は知っていたが、そうとう重度の活字中毒者だ。
 彼女が1日のうちにする事といったら「起きる。何か読む。食べる。何か読む。食べる。仕事をしてみる。食べる。何か読む。食べる。何か読む。寝る。」らしい。
 あとがきにも記述がある。「オシャレの追及に励むのは来世にまわし、今生では思う存分、読書しようと思う。…世の中にこんなに本があるのに、顔なんか洗ってる場合じゃない。」そうだ。すごいなぁ。


 本を文章を文字を読みたい、というだけでなく、本を手元に置いておきたい人らしいので、本がどんどん増殖する。夜中にこっそり本のヤツ、子どもでも産んでるんじゃないか?!と疑いたくなるほど。
 文筆業だから本の増殖は宿命で、あとは古本屋に売るなり、廃品回収に出すなり、背の高い機能的な本棚を買うなりするのが正解だろうが、三浦さんはしない。本で家具をつくるらしい。同じ幅や厚みの本をキュッと縛り、並べてベッドにしたりテーブルにしたりするらしい。ホントかよ!!!!!
 彼女は本棚ではなく、押し入れの中に、束ねた本を重ねて収納する。この方がたくさん本が入るそうだ。しかし…読みたい本を取り出す時が一苦労だろうね。


 もちろん本の収納という番外編よりも、本の読書エッセイの方に、うんとページはさかれている。さすが、三浦しをん、エッセイを読んで、ああ、この本を読んでみたいと思わされる率が高い。
 特にこの本、ヘルガ・シュナイダー著『黙って行かせて』は絶対に読みたい!これは自伝的小説らしく、ヘルガは第2次大戦が終わった時、10歳にもなってなかった。でも彼女は、戦争は大人たちがやったことで私には関係ないといえなかった。彼女の母親はナチで、かってアウシュヴィッツの看守としてユダヤ人を殺しまくっていたから。
 ユダヤ人側から見たアウシュヴィッツはよくあるが、旧ナチ党員からみたアウシュヴィッツってどうなんだろうか?自己弁護一色なんだろうか?

 青木富貴子「731」も紹介されている。これは…日本人として読まなきゃいけないとは思うが、度胸が無い。731部隊が満洲でいったい何をしたのか? 戦争が終結した後、彼らは戦犯になるのを避けようと何をしたのか? あと10年くらいしたら読めるかもしれない。


 他にも、三浦さんの身辺雑記エッセイも多数。彼女の家族って仲が良いんだ。ご両親と三浦さんと弟さん。特に弟さんはエッセイや小説のネタによくなってくれてるみたいで、ありがたいだろう。そうだ、群ようこさんも、弟ネタで稼いでいたなぁ。独身の弟って、イジりやすいんだろうな。

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