ケイの読書日記

個人が書く書評

群ようこ 「かもめ食堂」

2016-12-20 10:42:19 | 群ようこ
 「かもめ食堂」っていうタイトルの、のんびりした映画があったなぁ私は見てないけど、などと思いつつ手に取ったら、びっくり! その映画の原作なんだ、この本は。

 サチエは、小さい頃から食堂を開きたいなぁと思っていた。宝くじで1億円当たり、東京ではなくフィンランドの首都ヘルシンキで店を開く。父親が合気道の道場を開いていて、そこにフィンランド青年が稽古に来たことがあり、フィンランドという国に好意を持っていたのだ。
 見知らぬ東洋人の女の子が(東洋人はうんと若く見える。サチエは38歳だが、15歳くらいに見えるらしい)店を開いても、地元の人は最初は遠巻きに眺めるだけで、誰も客として来ない。
 そこに、日本アニメが大好きというトンミ君が現れ、かもめ食堂お客の第1号となる。

 トンミ君は、良い所もあるし、役に立つこともあるが、ずーずーしいのだ! 無料のコーヒー1杯で何時間もねばり、時々そのコーヒーにお湯を足してもらって飲んでいる。すごい!! アンタ、店に客がいないの、分からない? 誰か友達連れて来いよ!

 そのかもめ食堂に、ひょんなことからミドリさんとマサコさんがお手伝いに来て、店は開店2か月で繁盛し始める。
 ミドリさんは、失業し親族にも冷たくされたので、頭にきて「国立ムーミンフィンランド専門学院へ留学する」と宣言し、日本を出国。(そんな名称の学校はありません) マサコさんは、お勤めせず両親の介護をしていたが、その両親が相次いで他界し、何をしていいか分からなくなる。そんな時、弟が事業に失敗し帰ってきたので、親と一緒に住んでいた家を追い出され、彼女も怒りに任せ出国。「エアーギター選手権」で印象に残っていたフィンランドにやって来た。

 このミドリさんやマサコさんの抱える問題は、現代日本の縮図みたいなもので、なかなか深刻な問題だが、そこは群ようこさん、くすっと笑える展開になっている。


 サチエが泥棒に襲われたりする場面もあるが、群ようこの小説のほとんどがそうなように、たいしたヤマ場もなく、まったりと話は終わる。明日はもっと良い日になるよねっていう期待を持たせて。

 それにしても、フィンランドって刺激が少なそう、そして寒そう!! 地球儀で見ると、北極の隣じゃん! いくら日本映画の舞台となった所でも、行ってみたいと思わないなぁ。申し訳ないけど。

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2 コメント

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Unknown (コウイチ)
2016-12-24 15:46:12
かもめ食堂、映画で見ました。
原作の小説だとやはり各登場人物に詳細な設定があるんですね。映画だとロハスでゆったりした映像をただ楽しむというだけの感じだったような記憶があります。フィンランドという距離感が日本の片田舎より幻想的でリアリティであって良いのかもしれませんね
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コウイチさんへ (kei)
2016-12-26 10:17:10
 小説では、フィンランドにきて3か月くらいで話は終わっているので、冬の寒さは書かれていません。映画ではどうですか?
 厳冬のさなかだと、北極より気温が寒い時もありそう。寒い所には寒い所の良さがあるんでしょうが、私には無理。
 ミドリさんは40歳くらい、マサコさんは50歳くらいなので、冬はこたえると思うよ。
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